【文献】
田村 奈央,データセンターのネットワークを変える 新技術「イーサネットファブリック」,日経NETWORK 第146号,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0014】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
(実施の形態1)
まず、本実施の形態1による通信システムの説明に先だって、
図8および
図9を用いて、その前提として検討した事項について述べる。
【0017】
《ボックス型ファブリックシステムの概要》
図8は、本発明の前提した検討したボックス型ファブリックシステムの構成例を示す概略図である。
図8に示すように、ボックス型ファブリックシステムは、ボックス型スイッチ装置である複数(ここでは3個)のポートスイッチSWP1〜SWP3と、ボックス型スイッチ装置である複数(ここでは2個)のファブリックスイッチSWF1,SWF2を備える。SWF1,SWF2は、SWP1〜SWP3の間の通信経路を構築する。
【0018】
ポートスイッチSWP1〜SWP3のそれぞれは、ファブリックスイッチSWF1,SWF2のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続される。すなわち、SWP1のポートP1およびポートP2は、SWF1のポートP1およびSWF2のポートP1のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続される。また、SWP2のポートP1およびポートP2は、SWF1のポートP2およびSWF2のポートP2のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続され、同様に、SWP3のポートP1およびポートP2は、SWF1のポートP3およびSWF2のポートP3のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続される。各ポートスイッチと各ファブリックスイッチのそれぞれは、特に限定はされないが、例えば同一構成のボックス型スイッチ装置で実現され、その内部設定によってポートスイッチとして機能するかファブリックスイッチとして機能するかが選択可能となっている。
【0019】
また、ボックス型ファブリックシステムでは、例えば1個のポートスイッチ(例えばSWP1)は、複数のファブリックスイッチSWF1,SWF2との間で複数(ここでは2本)の通信回線(第1通信回線)を介して接続され、その接続元となるポートP1,P2に対してリンクアグリゲーションを設定することができる。本明細書では、このリンクアグリゲーションが設定されたポート(ここではP1,P2)の集合体をリンクアグリゲーショングループLAGと呼ぶ。リンクアグリゲーション(リンクアグリゲーショングループLAG)を設定する場合、そのLAG内で負荷分散を実現できる。
【0020】
例えば、ポートスイッチSWP1からポートスイッチSWP3に向けてフレームを送信する場合、当該フレームは、所定の規則に基づいてSWP1のポートP1からSWF1を介してSWP3に向かう通信経路とSWP1のポートP2からSWF2を介してSWP3に向かう通信経路に適宜分散される。当該所定の規則としては、特に限定はされないが、例えば、フレーム内のヘッダ情報(より具体的には送信元および/または宛先のMAC(Media Access Control)アドレスや、加えて送信元および/または宛先のIPアドレス等)を用いて演算を行う方式が挙げられる。なお、リンクアグリゲーショングループLAGが設定されたポートは論理的(仮想的)に1個のポートとして機能するため、例えば、ポートスイッチSWP1のポートP1に入力されたブロードキャストフレームがSWP1のポートP2から出力されるといった信号の折り返しは生じない。
【0021】
《ボックス型ファブリックシステムとマルチシャーシスリンクアグリゲーションの組み合わせ》
図9は、
図8のボックス型ファブリックシステムにマルチシャーシスリンクアグリゲーションを適用した場合の構成例を示す概略図であり、併せてその問題点の一例を説明する図である。
図9では、
図8の構成例に加えて、ポートスイッチSWP1とポートスイッチSWP2がそれぞれ冗長向けポートPrを備えており、SWP1,SWP2は、当該Pr間が共通通信回線で接続されることでマルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定されている。本明細書では、このマルチシャーシスリンクアグリゲーションが設定されたSWP1,SWP2の集合体をマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGと呼ぶ。
【0022】
更に、
図9では、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGが設定されるポートスイッチSWP1,SWP2に対してユーザスイッチSWU1,SWU2が接続されている。ユーザスイッチSWU1は、ポートP1,P2がSWP1,SWP2のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続され、この通信回線の接続元となるP1,P2にリンクアグリゲーショングループLAGを設定する。ユーザスイッチSWU2も同様に、ポートP1,P2がSWP1,SWP2のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続され、この通信回線の接続元となるP1,P2にLAGを設定する。
【0023】
ユーザスイッチSWU1から送信されるフレームは、リンクアグリゲーショングループLAGに伴い、所定の規則に基づいてSWU1のポートP1側かポートP2側に適宜分散されて送信される。同様に、ユーザスイッチSWU2から送信されるフレームも、LAGに伴い、所定の規則に基づいてSWU2のポートP1側かポートP2側に適宜分散されて送信される。マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGが設定されるポートスイッチSWP1,SWP2は、例えば、冗長向けポートPr間で互いの状態や、アドレステーブル(FDB:Forwarding DataBase)の情報等の送受信を行い、論理的(仮想的)に1台のスイッチとして機能する。このようなマルチシャーシスリンクアグリゲーションを用いると、負荷分散による通信帯域の向上に加えて耐障害性の向上が図れる。例えば、SWP1に障害が生じた場合でも、SWU1,SWU2からの送信トラフィックをSWP2側に集約して転送することが可能になる。
【0024】
ここで、
図8に示したようなボックス型ファブリックシステムでは、ポートスイッチSWP1とポートスイッチSWP2との間で、ファブリックスイッチSWF1を介する通信や、あるいはファブリックスイッチSWF2を介する通信を行うことが可能である。しかしながら、
図9に示すようにマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGが設定された場合、MLAGが設定されたSWP1,SWP2は論理的に1台のスイッチとして機能するため、信号の折り返しの問題が生じ得る。
【0025】
具体的には、例えば、ポートスイッチSWP1のポートP1からファブリックスイッチSWF1のポートP1に向けてブロードキャストフレーム等が送信され、これに応じてSWF1がポートP2およびポートP3から当該ブロードキャストフレームを転送した場合を想定する。この場合、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループMLAGとSWF1との関係に着目すると、
図9内の破線で示されるように、論理的に1台のスイッチ(SWP1,SWP2)から送信されたフレームがSWF1を介して同じ1台のスイッチ(SWP1,SWP2)に折り返されることになる。また、例えば、SWP1のポートP2からファブリックスイッチSWF2のポートP1に向けてブロードキャストフレーム等が送信された場合も同様であり、
図9内の破線で示されるように、MLAGとSWF2との関係において信号の折り返しが生じることになる。
【0026】
《本実施の形態による通信システムの構成および動作》
図1は、本発明の実施の形態1による通信システムにおいて、その構成例および主要な動作例を示す概略図である。
図1に示す通信システムは、前述した
図9と同様の構成を備え、複数(ここでは2個)のファブリックスイッチ(ネットワーク中継装置)SWF1,SWF2と、複数(ここでは3個)のポートスイッチ(ネットワーク中継装置)SWP1〜SWP3と、ユーザスイッチSWU1,SWU2を備える。前述したように、SWF1,SWF2,SWP1〜SWP3は、それぞれ、ボックス型スイッチ装置によって実現され、全体としてボックス型ファブリックシステムを構成する。また、SWP1,SWP2は、冗長向けポートPr間が共通接続回線で接続されることでマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(言い換えればドメイングループ)MLAGを構成し、これによって論理的(仮想的)に1台のスイッチとして機能する。
【0027】
ポートスイッチSWP1は、ファブリックスイッチSWF1,SWF2のそれぞれに対して異なる通信回線を介して接続され、当該通信回線の接続元となるポートP1,P2にリンクアグリゲーションLAGを設定する。同様に、SWP2は、SWF1,SWF2のそれぞれに向けた異なる通信回線の接続元となるポートP1,P2にLAGを設定し、SWP3も、SWF1,SWF2のそれぞれに向けた異なる通信回線の接続元となるポートP1,P2にLAGを設定する。また、ユーザスイッチSWU1は、SWP1,SWP2のそれぞれに向けた異なる通信回線の接続元となるポートP1,P2にLAGを設定する。同様に、ユーザスイッチSWU2も、SWP1,SWP2のそれぞれに向けた異なる通信回線の接続元となるポートP1,P2に、LAGを設定する。
【0028】
ファブリックスイッチSWF1,SWF2は、ポートスイッチSWP1〜SWP3の間の通信経路を構築する。例えば、SWF1は、SWP1側から受信したフレームの宛先MACアドレスを検出し、自身のアドレステーブル(FDB)内で当該MACアドレスとポートP3が関連付けられている場合、当該フレームをP3からSWP3に向けて転送する。この際、実際には、SWP1は、例えばユーザスイッチSWU1に接続された図示しない端末(例えばサーバ)等からのフレームをSWU1を介して受信し、それをSWF1に向けて転送し、SWP3は、SWF1側から受信したフレームを自身に接続された図示しない端末(例えばサーバ)等に転送する。
【0029】
このような構成において、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGが設定されるSWP1,SWP2のそれぞれは、自身が同一のMLAGの構成要素であることを示す同一のドメイン識別子を含んだ制御フレーム(制御信号)CFDをSWF1,SWF2に向けてそれぞれ送信する。一方、SWF1は、この同一のドメイン識別子を含んだCFDを受信した複数のポート(ここではP1,P2)に対してサブリンクSLKを設定し、同様に、SWF2も、この同一のドメイン識別子を受信した複数のポート(ここではP1,P2)に対してサブリンクSLKを設定する。SWF1,SWF2のそれぞれは、SLKを設定した複数のポートを論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。
【0030】
これによって、例えば、ポートスイッチSWP1のポートP1からファブリックスイッチSWF1のポートP1に向けてブロードキャストフレーム等が送信された場合、これに応じてSWF1は、当該ブロードキャストフレームをポートP3から転送し、ポートP2からは転送しない。例えば、ブロードキャストフレーム(あるいはマルチキャストフレーム)等は、受信したポート以外のポートから同時に送信される。したがって、SWF1のP1,P2を1個のポートとして機能させることで、当該P1とP2の間で(すなわちMLAGとSWF1との関係において)信号の折り返しは生じなくなる。また、ポートスイッチSWP1のポートP2からファブリックスイッチSWF2のポートP1に向けてブロードキャストフレーム等が送信された場合も同様に、SWF2のP1,P2を1個のポートとして機能させることで、当該P1とP2の間で(すなわちMLAGとSWF2との関係において)信号の折り返しは生じなくなる。
【0031】
以上のように、
図1の通信システムを用いることで、マルチシャーシスリンクアグリゲーション(装置冗長)の適用に伴い耐障害性の向上が図れると共に、当該適用によって生じ得る信号の折り返しを防止でき、ポートスイッチとファブリックスイッチとの間の通信帯域の低下等を抑制することが可能になる。なお、
図1では、3個のポートスイッチSWP1〜SWP3と2個のファブリックスイッチSWF1,SWF2を備えた構成例を示したが、勿論、これに限定されるものではなく、ポートスイッチやファブリックスイッチの数は適宜変更することが可能である。また、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGの数も、例えば、
図2に示されるように適宜変更することが可能である。
【0032】
図2は、
図1の通信システムを拡張した構成例および動作例を示す概略図である。
図2に示す通信システムは、
図1の構成例に対して、更にポートスイッチSWP4およびユーザスイッチSWU3,SWU4が加わった構成となっている。ポートスイッチSWP4は、ポートスイッチSWP3と共に同一のマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ[2])MLAGが設定される。SWU3,SWU4は、SWP3,SWP4との間で、SWU1,SWU2とSWP1,SWP2の間の接続関係と同様にして接続される。ファブリックスイッチSWF1,SWF2のそれぞれは、SWP4が追加されたことに伴い
図1の構成例から更にポートP4が追加されている。SWP4のポートP1は、SWF1のP4に対して通信回線を介して接続され、SWP4のポートP2は、SWF2のP4に対して通信回線を介して接続される。
【0033】
このような構成において、
図1の場合と同様に、SWP1,SWP2のそれぞれは、同一のMLAG(ドメイングループ[1])が設定されていることを示す同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[1])を含む制御フレーム(制御信号)CFD1をSWF1,SWF2に向けてそれぞれ送信する。
図2では更に、SWP3,SWP4のそれぞれも、別の同一のMLAG(ドメイングループ[2])が設定されていることを示す別の同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[2])を含む制御フレーム(制御信号)CFD2をSWF1,SWF2に向けてそれぞれ送信する。
【0034】
SWF1,SWF2のそれぞれは、
図1の場合と同様に、同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[1])を含む制御フレーム(制御信号)CFD1を受け、CFD1を受信したポートP1,P2にサブリンク(サブリンク[1])SLKを設定する。
図2では更に、SWF1,SWF2のそれぞれは、別の同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[2])を含む制御フレーム(制御信号)CFD2を受け、CFD2を受信したポートP3,P4に別のサブリンク(サブリンク[2])SLKを設定する。
【0035】
これにより、ファブリックスイッチSWF1,SWF2のそれぞれにおいて、ポートP1,P2は論理的に1個のポートとして機能し、ポートP3,P4も論理的に1個のポートとして機能する。その結果、SWF1,SWF2のそれぞれとMLAG(SWP1,SWP2)との関係に加えて、SWF1,SWF2のそれぞれとMLAG(SWP3,SWP4)との関係においても、信号の折り返しが生じなくなる。
【0036】
《ファブリックスイッチ(ネットワーク中継装置)の概略》
図3は、
図1の通信システムにおいて、そのファブリックスイッチの主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図3に示すファブリックスイッチ(ネットワーク中継装置)SWFは、例えば、フレーム転送制御部FFCTLと、制御フレーム管理部CFCTLと、データベース管理部DBCTLと、複数のポート(P1,P2,P3,…)等を備えている。ポートP1,P2,P3,…はポートスイッチ向けポートであり、
図1のSWF1を例とすると、P1,P2,P3にはそれぞれポートスイッチSWP1,SWP2,SWP3が接続される。なお、ここでは、3個のポートスイッチ向けポートP1,P2,P3が代表的に示されているが、4個以上のポートスイッチを備える場合には、これに応じて4個以上のポートが備わる。
【0037】
制御フレーム管理部CFCTLは、制御フレーム生成部(制御信号生成部)CFGと制御フレーム解析部(制御信号解析部)CFAを備え、これらを適宜管理する。CFGは、各種制御フレームを生成し、フレーム転送制御部FFCTL(制御信号送信部)は、当該生成された制御フレームを各ポート(P1,P2,P3,…)から送信する。CFAは、各ポート(P1,P2,P3,…)を介してFFCTL(制御信号受信部)によって受信された制御フレームを対象に、当該制御フレームの内容を解析(判別)する。なお、制御フレーム(制御信号)は、端末(例えばサーバ)等からの実データ信号を含むユーザフレームと異なり、通信システムの設定や監視等を行うための管理用のフレームである。
【0038】
データベース管理部DBCTLは、アドレステーブルFDBとリンクテーブルLDBを備え、これらを管理する。アドレステーブルFDBには、各ポートと各ポートに接続される端末(サーバ)等のMACアドレスとの対応関係が登録される。リンクテーブルLDBには、リンクアグリゲーショングループLAGやサブリンクSLKの設定状態が登録される。例えば、
図1のファブリックスイッチSWF1を例とすると、ポートP1,P2にサブリンクSLKが設定されていることを示す情報等が登録される。また、
図2のSWF1を例とすると、ポートP1,P2にサブリンクSLKが設定され、ポートP3,P4に別のサブリンクSLKが設定されていることを示す情報等が登録される。
【0039】
フレーム転送制御部FFCTLは、各ポート(P1,P2,P3,…)と制御フレーム管理部CFCTLとの間の制御フレームの送受信を制御する機能を備える。FFCTLは、更に、データベース管理部DBCTLの各テーブル(FDB,LDB)内の情報に基づいて、各ポート(P1,P2,P3,…)間でのフレーム(例えばユーザフレーム)の転送を制御する機能を備える。
【0040】
図4は、
図3のファブリックスイッチにおける主要な動作例を示すフロー図である。
図4では、まず、
図3の制御フレーム生成部(制御信号生成部)CFGが、自身のファブリックスイッチに予め設定されたファブリックスイッチ識別子を含む制御フレームを生成し、当該制御フレームをフレーム転送制御部FFCTLを介して全ポート(P1,P2,P3,…)から送信する(ステップS100)。当該ステップS100の処理によって、例えば、当該ファブリックスイッチ識別子を受信したポートスイッチは、その受信したポートにファブリックスイッチが接続されていることを認識することができる。
【0041】
次いで、
図3のフレーム転送制御部FFCTLは、各ポート(P1,P2,P3,…)からフレームを受信した際、それが制御フレーム(制御信号)であるか否かを判別し、制御フレームである場合には、制御フレーム解析部(制御信号解析部)CFAに通知する。これを受けて、CFAは、当該制御フレーム内におけるドメイン識別子の有無を判別する(ステップS101)。ここで、CFAは、ドメイン識別子が有る場合、当該ドメイン識別子ならびにその受信したポートをデータベース管理部DBCTLに通知する。DBCTL(リンク設定部)は、当該ドメイン識別子と受信したポートの関係をリンクテーブルLDBに登録し、当該ポートを対象に、ドメイン識別子毎にサブリンクSLKを設定する(ステップS102)。すなわち、前述した
図2のSWF1の例では、同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[1])を受信したポートP1,P2にSLKを設定し、別の同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[2])を受信したポートP3,P4に別のSLKを設定する。
【0042】
《ポートスイッチ(ネットワーク中継装置)の概略》
図5は、
図1の通信システムにおいて、そのポートスイッチの主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図5に示すポートスイッチ(ネットワーク中継装置)SWPは、前述した
図3の構成例と比較して、データベース管理部DBCTL内にマルチシャーシスリンクアグリゲーション情報MLGIが加わった点と、ポートとして、ファブリックスイッチ向けポートP1,P2,…、ユーザスイッチ向けポート(ユーザポート)Pu1,Pu2,…、冗長向けポートPrを備えた点が異なっている。これ以外の構成に関しては、
図3と同様であるため、以下、
図3との違いに着目して説明を行う。
【0043】
図1のポートスイッチSWP1を例とすると、
図5のファブリックスイッチ向けポートP1,P2には、それぞれファブリックスイッチSWF1,SWF2が接続され、ユーザポートPu1,Pu2には、それぞれユーザスイッチSWU1,SWU2が接続され、冗長向けポートPrにはポートスイッチSWP2が接続される。なお、ここでは、2個のファブリックスイッチ向けポートP1,P2が代表的に示されているが、3個以上のファブリックスイッチを備える場合には、これに応じて3個以上のポートが備わる。また、ここでは、2個のユーザポートPu1,Pu2が代表的に示されているが、3個以上のユーザスイッチを備える場合には、これに応じて3個以上のポートが備わる。
【0044】
冗長向けポートPrは、
図1の例では、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGが設定されるポートスイッチSWP1,SWP2に備わっている。ただし、例えば、ポートスイッチSWP1〜SWP3を同一構成のボックス型スイッチ装置で実現する場合、SWP3は特にPrを備える必要はなく、この場合、内部設定によって、Prをユーザポートやファブリックスイッチ向けポートとして使用することも可能である。また、各ポートの割り付け(例えばファブリックスイッチ向け、ユーザスイッチ向け等)は、内部設定によって適宜変更することが可能であり、
図5の基本的な機能構成は
図3の機能構成と同様であるため、ファブリックスイッチとポートスイッチを同一構成のボックス型スイッチ装置で実現することも可能である。
【0045】
図5のマルチシャーシスリンクアグリゲーション情報MLGIには、予め設定され、自身にマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGが設定されていることを示すドメイン識別子等が含まれている。例えば、
図2の通信システムを例とすると、ポートスイッチSWP1,SWP2内のMLGIには、同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[1])が含まれ、ポートスイッチSWP3,SWP4内のMLGIには、別の同一のドメイン識別子(ドメイン識別子[2])が含まれる。
図5の制御フレーム生成部(制御信号生成部)CFGは、このMLGI内のドメイン識別子を参照し、当該ドメイン識別子を含んだ制御フレーム(制御信号)を生成する。また、当該ドメイン識別子を含んだ制御フレーム(制御信号)は、フレーム転送制御部FFCTL(制御信号送信部)を介して所定のポート(ここではファブリックスイッチ向けポートP1,P2)から送信される。
【0046】
図6は、
図5のポートスイッチにおける主要な動作例を示すフロー図である。まず、
図4のステップS100に示したように、各ファブリックスイッチSWFがファブリックスイッチ識別子を含む制御フレームを送信した場合を想定する。この場合、
図6において、
図5のフレーム転送制御部FFCTLは、各ポートからフレームを受信した際、それが制御フレームであるか否かを判別し、制御フレームである場合には、制御フレーム解析部CFAに通知する。CFAは、当該制御フレーム内におけるファブリックスイッチ識別子の有無を判別し、当該識別子が有る場合、当該識別子ならびにその受信したポートをデータベース管理部DBCTLに通知する。これによって、
図5のポートスイッチSWPは、ファブリックスイッチSWFが接続されているポートを認識する(ステップS200)。
【0047】
次いで、データベース管理部DBCTLは、前述した制御フレーム解析部CFAからの通知を受けて、例えば、ファブリックスイッチ識別子を受信した各ポートに同一のリンク識別子等を割り当て、各ポートとリンク識別子とファブリックスイッチ識別子の関係等をリンクテーブルLDBに登録する。これによって、
図5のポートスイッチSWPは、例えば、
図8等で述べたように各ポートにリンクアグリゲーショングループLAGを設定する(ステップS201)。
【0048】
続いて、制御フレーム生成部(制御信号生成部)CFGは、マルチシャーシスリンクアグリゲーション情報MLGIを参照し(ステップS202)、自身にマルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGが設定されているか否か(すなわちMLGI内にドメイン識別子が含まれるか否か)を判別する(ステップS203)。MLAGが設定されている場合、CFGは、当該ドメイン識別子を含んだ制御フレーム(制御信号)を生成する(ステップS204)。そして、フレーム転送制御部FFCTL(制御信号送信部)は、リンクテーブルLDBを参照することでファブリックスイッチが接続される全ポートを認識し、ステップS204で生成された制御フレーム(制御信号)を当該全ポートから送信する(ステップS205)。
図3のファブリックスイッチSWFは、当該ステップS205に応じて
図4のステップS101以降の処理を行うことでサブリンクSLKを設定する。
【0049】
以上、本実施の形態1の通信システムを用いることで、代表的には、耐障害性の向上が図れ、また信号の折り返しを防止することが可能になる。なお、ここでは、ポートスイッチSWPおよびファブリックスイッチSWFのそれぞれをボックス型スイッチ装置で構成した。このボックス型スイッチ装置を用いたボックス型ファブリックシステムを用いることで、前述したようにポートスイッチおよびファブリックスイッチの両機能が1個の筐体内に格納されたシャーシ型スイッチ装置からなるシステムを用いる場合と比較して、各種有益な効果が得られる。ただし、必ずしもボックス型スイッチ装置の構成に限定されるものではなく、シャーシ型スイッチ装置の構成を用いた場合であっても、
図9で述べたような信号の折り返しが生じ得るため、同様に適用して同様の効果が得られる。
【0050】
(実施の形態2)
《本実施の形態による通信システムの構成および動作(変形例)》
図7は、本発明の実施の形態2による通信システムにおいて、その構成例および主要な動作例を示す概略図である。
図7に示す通信システムは、前述した
図1の構成例と同様に、複数(ここでは2個)のファブリックスイッチ(ネットワーク中継装置)SWF1,SWF2と、複数(ここでは3個)のポートスイッチ(ネットワーク中継装置)SWP1〜SWP3と、ユーザスイッチSWU1,SWU2を備える。ただし、
図7の通信システムは、
図1の構成例と異なり、SWP1〜SWP3とSWF1,SWF2との間の各通信回線がそれぞれ一対の通信回線によって構成される。
【0051】
これに伴い、
図7のポートスイッチSWP1〜SWP3のそれぞれは、
図1における1個のポートP1の代わりに一対のポートP1a,P1bを備え、
図1における1個のポートP2の代わりに一対のポートP2a,P2bを備える。同様にして、
図7のファブリックスイッチスイッチSWF1,SWF2のそれぞれは、
図1における3個のポートP1〜P3の代わりに一対のポートを3個(P1a,P1b,P2a,P2b,P3a,P3b)を備える。例えば、SWP1のP1a,P1bはSWF1のP1a,P1bとの間で一対の通信回線を介して接続され、SWP1は自身のP1a,P1bにリンクアグリゲーショングループLAGを設定し、SWF1も自身のP1a,P1bにLAGを設定する。また、SWP1のP2a,P2bはSWF2のP1a,P1bとの間で一対の通信回線を介して接続され、SWP1は自身のP2a,P2bにLAGを設定し、SWF2も自身のP1a,P1bにLAGを設定する。SWP1〜SWP3とSWF1,SWF2の間のその他の通信回線も同様であり、
図1に示した1本の通信回線の代わりに一対の通信回線が備わり、当該一対の通信回線が一対のポートを用いて接続され、当該一対のポートのそれぞれにLAGが設定される。
【0052】
例えば、ファブリックスイッチSWF1を例とすると、SWF1は、ポートスイッチSWP1との間の一対のポートP1a,P1bに対してリンクアグリゲーショングループLAGを設定することでP1a,P1bを論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。また、SWF1は、ポートスイッチSWP2との間の一対のポートP2a,P2bに対してLAGを設定することでP2a,P2bを論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。これに加えて更に、SWF1は、SWP1との間の一対のポートP1a,P1b、およびSWP2との間の一対のポートP2a,P2bに対してサブリンクSLKを設定し、これらのポートを論理的(仮想的)に1個のポートとして機能させる。
【0053】
具体的なサブリンクSLKの設定方法は、実施の形態1の場合と同様である。すなわち、ポートスイッチSWP1は、ポートP1a,P1b,P2a,P2bからドメイン識別子を含む制御フレーム(制御信号)を送信し、ポートスイッチSWP2も、SWP1と同一のドメイン識別子を含む制御フレームをポートP1a,P1b,P2a,P2bから送信する。これにより、例えばファブリックスイッチSWF1は、ポートP1a,P1b,P2a,P2bから同一のドメイン識別子を持つ制御フレームを受信することになるため、これらのポートに対してサブリンクSLKを設定する。
【0054】
このような構成例を用いると、マルチシャーシスリンクアグリゲーショングループ(ドメイングループ)MLAGが設定されるポートスイッチSWP1,SWP2(論理的に1台のスイッチ)と例えばファブリックスイッチSWF1との間が、実質的にリンクアグリゲーションが設定された4本の通信回線によって接続されることになる。その結果、耐障害性の更なる向上等が図れると共に、実施の形態1の場合と同様に、このスイッチ間での信号の折り返しも防止できる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0056】
例えば、ここでは、主に、LANスイッチ(L2スイッチ)を用いた通信システムを例として説明を行ったが、L3スイッチを用いた通信システムであっても同様に適用することが可能である。