(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の信号線導体と、前記信号線導体の周囲に設けられる絶縁体と、前記絶縁体の周囲に設けられる外部導体とを備えたケーブルアッシーを準備するケーブルアッシー準備工程と、
シグナルパッドおよびグラウンドパッドが設けられる回路基板を準備する回路基板準備工程と、
前記外部導体に接続される本体部、および前記グラウンドパッドに接続されるグラウンドパッド接続部を有し、前記本体部には、前記一対の信号線導体が互いに対向する側とは反対側にある前記絶縁体にそれぞれ差し込まれ、前記本体部を前記外部導体に固定するための一対の差し込み固定部が設けられるグラウンド用導体を準備するグラウンド用導体準備工程と、
前記信号線導体の長手方向端部に、前記シグナルパッドに接続されるシグナルパッド接続部を形成する接続部形成工程と、
前記差し込み固定部を前記絶縁体に差し込んで、前記グラウンド用導体を前記ケーブルアッシーに固定するグラウンド用導体固定工程と、
前記シグナルパッド接続部および前記グラウンドパッド接続部を、前記シグナルパッドおよび前記グラウンドパッドにそれぞれ臨ませて電気的に接続する接続工程と、
を備える、差動信号伝送用ケーブルの回路基板への接続方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1は第1実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルと回路基板との接続構造を示す斜視図を、
図2は
図1のA矢視図を、
図3は差し込みピンが設けられる部分に対応した差動信号伝送用ケーブルの断面図をそれぞれ表している。
【0021】
図1ないし
図3に示すように、第1実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル10は、一対の信号線導体11を備えている。各信号線導体11のうちのいずれか一方には差動信号としてのプラス側信号が伝送され、各信号線導体11のうちのいずれか他方には差動信号としてのマイナス側信号が伝送されるようになっている。各信号線導体11は、例えば、その表面に錫めっき処理が施された軟銅線(Tinned Annealed Copper Wire)によって形成され、各信号線導体11は絶縁体12によって被覆されている。
【0022】
絶縁体12は、差動信号伝送用ケーブル10に柔軟性を持たせるために、例えば、発泡ポリエチレン(Foamed Poly-Ethylene)によって形成され、その断面形状は略楕円形形状に形成されている。絶縁体12は、各信号線導体11を所定間隔で平行に並ぶよう保持しており、各信号線導体11の周囲には、略同等の肉厚となるよう絶縁体12が配置されている。ここで、絶縁体12の材料である発砲ポリエチレンの溶融温度は[110℃〜120℃]に設定されている。
【0023】
ただし、絶縁体12は、図示のような断面形状が略楕円形形状のものに限らず、例えば、各信号線導体11をそれぞれ別個に被覆するよう断面形状が円形形状の絶縁体であっても良い。さらには、絶縁体12の断面形状を、一対の長さが等しい平行線と一対の半円形形状とからなる、例えば、陸上競技場のトラック(Track)に略等しい形状としても良い。
【0024】
各信号線導体11の長手方向に沿う大部分は絶縁体12の内部に配置されており、各信号線導体11の長手方向端部(
図1中左側)は、絶縁体12の外部に露出されている。各信号線導体11の露出部分はシグナルパッド接続部11aとなっており、当該シグナルパッド接続部11aは、それぞれ回路基板20のシグナルパッド22にはんだ接続により電気的に接続されている。なお、各シグナルパッド接続部11aの表面には、上述のように錫めっき処理が施されているため、はんだ濡れ性が向上しており、よって質の良いはんだ接続、つまり、はんだフィレットの成形が可能となっている(
図2の網掛け部分参照)。
【0025】
各シグナルパッド接続部11aは、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に接続する前に予め段付き形状にフォーミングされるようになっている。ここで、各シグナルパッド接続部11aの断面形状は円形形状となっているため、フォーミング時に応力集中することが無い。したがって、各シグナルパッド接続部11aは折損等すること無くフォーミングし易くなっている。
【0026】
絶縁体12の周囲には、外来ノイズの影響を抑制するために外部導体13が設けられている。外部導体13は、例えば、シート状の銅箔によって形成され、絶縁体12の周囲全体を被覆するようになっている。ただし、外部導体13としては、銅箔に限らず他の金属箔であっても良く、さらには軟銅線等の金属細線を編み込んだ編組シートであっても良い。
【0027】
外部導体13の長手方向に沿う大部分はシース14によって被覆されており、外部導体13の長手方向端部(
図1中左側)は、シース14の外部に露出されている。ここで、シース14は、例えば、耐熱PVC(Heat Resistant Polyvinyl Chloride)によって形成され、差動信号伝送用ケーブル10を保護する外皮として機能している。
【0028】
図4(a),(b)はグラウンド用導体の詳細構造を説明する斜視図を表している。
【0029】
外部導体13の外部に露出した部分、つまり外部導体13の端部には、導電性に優れた銅等の金属板材により所定形状に形成されたグラウンド用導体15が装着されている。グラウンド用導体15は、
図4に示すように、本体部15a,一対の差し込みピン15b,一対のグラウンドパッド接続部15cを備えている。
【0030】
本体部15aは、略長方形形状の金属板材を外部導体13の周囲形状と同じ形状に湾曲させることで、断面が略円弧形状に形成されている。ここで、本体部15aは、グラウンド用導体15を外部導体13へ装着する前に予め湾曲されるものであり、これにより従前のように絶縁体12等が弾性変形するのを防止しつつ、外部導体13に対して確実に電気的に接続できるようにしている。
【0031】
本体部15aの外部導体13側、つまり湾曲した本体部15aの内側には、一対の差し込みピン15bが一体に設けられている。各差し込みピン15bは、本体部15aの長手方向両側寄りにそれぞれ配置され、各信号線導体11の長手方向と交差する方向に延びる針金状に形成されている。ここで、各差し込みピン15bは、本発明における差し込み固定部を構成している。
【0032】
各差し込みピン15bは、
図2および
図3に示すように、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12に差し込まれており、これにより本体部15aは外部導体13に固定されている。ここで、各差し込みピン15bは、断面が円形形状に形成されており、その先端側は絶縁体12に容易に差し込めるよう先細り形状となっている。ただし、各差し込みピン15bの断面形状は円形に限らず、各差し込みピン15bに必要とされる強度に応じて、三角形や四角形等の多角形形状にしても良い。また、各差し込みピン15bの強度が十分であれば、各差し込みピン15bをより細く形成して、先細り形状を省略することもできる。
【0033】
各差し込みピン15bは、外部導体13を貫通して絶縁体12に差し込まれるようになっている。ここで、外部導体13はシート状の銅箔により形成され、かつ各差し込みピン15bは先細りの針金状に形成されているため、絶縁体12への各差し込みピン15bの差し込み抵抗は小さくて済む。したがって、外部導体13へのグラウンド用導体15の装着過程において、各差し込みピン15bが屈曲変形するような不具合が生じることは無く、グラウンド用導体15を外部導体13に容易に装着することができる。
【0034】
図3に示すように、各差し込みピン15bの絶縁体12に対する差し込み位置は、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。つまり、差動信号伝送用ケーブル10の略楕円形形状の長軸方向に沿う、各信号線導体11と各差し込みピン15bとの間の距離をL1とし、各差し込みピン15bと外部導体13との間の距離をL2としたときに、L1>L2の関係を満たす位置に差し込まれている。また、各差し込みピン15bの先端側は、本体部15aから高さ寸法Hの分だけ突出されており、グラウンド用導体15の外部導体13への装着状態のもとで、絶縁体12を貫通しないようになっている(
図3参照)。
【0035】
このように、各差し込みピン15bの絶縁体12に対する位置関係や突出高さ関係を設定することにより、グラウンド用導体15の外部導体13に対する固定強度を確保しつつ、各差し込みピン15bと各信号線導体11とを可能な限り遠ざけている。したがって、グラウンド用導体15が外部導体13から外れるのを防止しつつ、外来ノイズが各信号線導体11に影響しないようになっている。
【0036】
ただし、グラウンド用導体15の外部導体13に対する固定強度が十分に得られるのであれば、各差し込みピン15bの本体部15aからの突出高さを短くしても良い。各差し込みピン15bの突出高さを短くすることにより、各差し込みピン15bと各信号線導体11との距離をより遠ざけることができる。したがって、外来ノイズが各信号線導体11に影響しない範囲において、距離L1と距離L2との関係をL1<L2とすることもできる。
【0037】
本体部15aの長手方向両側寄りには、一対のグラウンドパッド接続部15cが一体に設けられている。各グラウンドパッド接続部15cは、断面形状が各信号線導体11と同じように円形形状となっている。また、各グラウンドパッド接続部15c長さ寸法は、各シグナルパッド接続部11aの長さ寸法と略同じ長さ寸法に設定されている。ここで、各グラウンドパッド接続部15cの断面形状を円形形状とすることで、各シグナルパッド接続部11aと同様に、フォーミング時に応力集中するのを防止している。
【0038】
ただし、各グラウンドパッド接続部15cの断面形状を円形形状とせずに、各グラウンドパッド接続部15cの断面形状が正方形形状となるようにしても良い。また、各グラウンドパッド接続部15cの双方の根元部分に、当該根元部分の強度を高める幅広部(図示せず)を設けても良い。さらには、各グラウンドパッド接続部15cの断面形状は、円形形状や正方形形状(四角形)に限らず、三角形や五角形以上の多角形形状としても良い。この場合、多角形形状の1つの面が、グラウンドパッド23に対して面接触するよう形成するのが好ましい。
【0039】
各グラウンドパッド接続部15cは、
図2に示すように、各信号線導体11を挟んで鏡像対称となるよう配置されている。このように、各信号線導体11を挟んで鏡像対称となるよう各グラウンドパッド接続部15cを配置することで、各信号線導体11を流れる電気信号がそれぞれバランスされて、差動信号伝送用ケーブル10の電気的特性の安定化が図られている。
【0040】
各グラウンドパッド接続部15cの先端部は、
図1に示すように、それぞれ回路基板20のグラウンドパッド23に、はんだ接続により電気的に接続されている。ここで、各グラウンドパッド接続部15cの表面には、各シグナルパッド接続部11aと同様に錫めっき処理が施されている。したがって、はんだ濡れ性が向上しており、質の良いはんだ接続、つまり、はんだフィレットの成形が可能となっている(
図2の網掛け部分参照)。
【0041】
各グラウンドパッド接続部15cは、差動信号伝送用ケーブル10を回路基板20に接続する前に、各シグナルパッド接続部11aと同様に予め段付き形状にフォーミングされるようになっている。なお、これらのフォーミングは同時に容易に行うことができ、ひいては回路基板20のシグナルパッド22やグラウンドパッド23へのはんだ接続の作業性を向上させている。
【0042】
また、
図1および
図2に示すように、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cは、差動信号伝送用ケーブル10の側方から見た時に略重なるようになっている。これにより、高周波域(Ghz帯)における電気的特性の劣化、つまり、特性インピーダンスの劣化やスキュー特性の劣化等を抑制している。
【0043】
図1および
図2に示すように、差動信号伝送用ケーブル10が電気的に接続される回路基板20は、樹脂製の基板本体21を備え、当該基板本体21の表面部21aには、一対のシグナルパッド22と一対のグラウンドパッド23とが形成されている。各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23は、差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cに対応して、一列に並んで配置されている。
【0044】
各シグナルパッド22は、基板本体21の表面部21aに形成された一対のシグナルライン24にそれぞれ電気的に接続され、これらの各シグナルライン24を通じて差動信号が伝送されるようになっている。一方、各グラウンドパッド23は、基板本体21の表面部21aから裏面部21bに向けて貫通するスルーホール25の一端部にそれぞれ電気的に接続されている。また、各スルーホール25の他端部は、裏面部21bに形成された全面グラウンド26に電気的に接続されている。
【0045】
ここで、各シグナルパッド22,各グラウンドパッド23,各シグナルライン24および全面グラウンド26は、他の回路パターン(図示せず)とともに、基板本体21の表面部21aおよび裏面部21b上に同時に形成されるようになっている。
【0046】
次に、以上のように形成した差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0047】
図5は
図1の差動信号伝送用ケーブルの組み立て手順を説明する説明図を表している。
【0048】
[ケーブルアッシー準備工程]
まず、
図5に示すように、別の製造工程で製造されたケーブルアッシーCAを準備する。ここで、ケーブルアッシーCAとは、所定間隔で平行に並べられた一対の信号線導体11と、信号線導体11の周囲に設けられる絶縁体12と、絶縁体12の周囲に設けられる外部導体13と、外部導体13の周囲に設けられるシース14とを備え、グラウンド用導体15を装着していないサブアッセンブリの状態を指している。
【0049】
[回路基板準備工程]
次に、
図1および
図2に示すように、別の製造工程で製造された回路基板20、つまり、各シグナルパッド22,各グラウンドパッド23,各シグナルライン24,各スルーホール25,全面グラウンド26および他の回路パターンが形成された回路基板20を準備する。
【0050】
[グラウンド用導体準備工程]
さらに、
図4に示すように、別の製造工程で製造されたグラウンド用導体15を準備する。つまり、外部導体13に接続される本体部15a,および一対のグラウンドパッド接続部15cを有し、本体部15aには、一対の信号線導体11が対向する側とは反対側に位置する絶縁体12に差し込まれ、本体部15aを外部導体13に固定するための一対の差し込みピン15bが設けられるグラウンド用導体15を準備する。
【0051】
なお、上述の[ケーブルアッシー準備工程],[回路基板準備工程]および[グラウンド用導体準備工程]は、それぞれ別の製造工程で製造されるため、その順番は入れ替えても構わない。
【0052】
[接続部形成工程]
ケーブルアッシーCA,回路基板20およびグラウンド用導体15を準備した後は、
図5に示すように、ケーブルアッシーCAの長手方向端部を順次段剥きする処理を施す。具体的には、ケーブルアッシーCAの長手方向端部から所定長さの分、絶縁体12および外部導体13を取り除いて各信号線導体11の長手方向端部を露出させる。これにより回路基板20の各シグナルパッド22(
図1参照)に電気的に接続される各シグナルパッド接続部11aを形成する。さらには、外部導体13の長手方向端部から所定長さの分、シース14を取り除いて外部導体13を露出させる。これにより、接続部形成工程が完了する。ここで、外部導体13の露出部分の長さは、グラウンド用導体15の本体部15aの短手方向に沿う長さ寸法に合わせるようにする。
【0053】
[グラウンド用導体固定工程]
次に、
図5の矢印M1に示すように、段剥きして外部導体13が露出した部分に、グラウンド用導体15を臨ませる。このとき、外部導体13の略楕円形形状の短軸方向に沿う一方側(図中上側)から、各差し込みピン15bの先端側を外部導体13に向けて臨ませる。そして、各信号線導体11が延びる方向と各グラウンドパッド接続部15cが延びる方向とを一致させるよう、外部導体13にグラウンド用導体15を位置決めする。その後、外部導体13に向けてグラウンド用導体15の本体部15aを所定圧で押圧することで、各差し込みピン15bを、外部導体13を介して絶縁体12に差し込む。これにより、差動信号伝送用ケーブル10が完成する。
【0054】
ここで、本体部15aの長手方向両側寄りに各差し込みピン15bをそれぞれ配置しているため、グラウンド用導体15の本体部15aは、外部導体13に対して回転する等ふらつくことが無く、安定した状態のもとで外部導体13に装着されるようになっている。
【0055】
[接続工程]
次に、完成した差動信号伝送用ケーブル10の各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cを、一括して段付き形状にフォーミングする。そして、フォーミングした各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cの先端部を、回路基板20の各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23にそれぞれ臨ませて、合計4箇所を接続治具(はんだごて等)で電気的に接続する。これにより、接続工程が完了し、差動信号伝送用ケーブル10の回路基板20への接続作業が終了する。
【0056】
ここで、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cの先端部を電気的に接続するため、接続治具の熱(例えば200℃〜400℃)は絶縁体12に伝達し難くなっている。したがって、接続時に生じる熱によって絶縁体12が溶融するようなことは無い。ただし、電気的な接続に用いる接続治具としては、はんだごて等に限らず、レーザー溶接等の他の接続治具を用いることもできる。
【0057】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル10およびその回路基板20への接続方法によれば、グラウンド用導体15の本体部15aに、一対の信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12にそれぞれ差し込まれ、本体部15aを外部導体13に固定するための一対の差し込みピン15bを設けたので、従前のような加締め加工による加締め力が絶縁体12には負荷されない。したがって、絶縁体12が弾性変形されるのを抑制することができ、ひいては各信号線導体11間の距離を設計寸法通りにできる。よって、製品毎に安定した電気的特性を得ることができる。また、差し込みピン15bが一対の信号線導体11に対応して一対設けられるので、電気的特性が不安定になるのを防止しつつ、本体部15aをがたつくこと無く外部導体13に固定することができる。
【0058】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
図6は第2実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルの
図3に対応した断面図を、
図7は第2実施の形態に係るグラウンド用導体を示す斜視図を、
図8は
図6のグラウンド用導体に対応して設けられる補強部材を示す斜視図をそれぞれ表している。
【0060】
図6ないし
図8に示すように、第2実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル30は、第1実施の形態に比して、グラウンド用導体31の構造と、補強部材32を備えた点とが異なっている。グラウンド用導体31の本体部15aには、一対の差し込みピン(差し込み固定部)31aが一体に設けられており、各差し込みピン31aは、第1実施の形態の各差し込みピン15b(
図3参照)に比して、その長さ寸法が略2倍に設定されている。つまり、各差し込みピン31aは、外部導体13および絶縁体12を貫通する長さ寸法に設定されている。
【0061】
一方、補強部材32は、グラウンド用導体31と同様に銅等の金属板材により所定形状に形成され、本体部15aと同様に湾曲形状をなしている。補強部材32は、外部導体13をその短軸方向から挟むようにして、グラウンド用導体31と対向するよう配置されている。補強部材32の長手方向両側寄りには、各差し込みピン31aがそれぞれ挿通される一対の挿通孔32aが設けられている。
【0062】
そして、差動信号伝送用ケーブル30の組み立てにおいては、各差し込みピン31aを外部導体13および絶縁体12に差し込み、各差し込みピン31aの貫通した先端側を各挿通孔32aに挿通する。その後、
図6の矢印M2に示すように、各差し込みピン31aの先端側を補強部材32に沿わせて折り返し、これにより、外部導体13に対してグラウンド用導体31と補強部材32とが装着される。これにより差動信号伝送用ケーブル30が完成する。
【0063】
以上のように形成した第2実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態においては、各差し込みピン31aの長さ寸法を、絶縁体12を貫通する長さ寸法とし、絶縁体12を貫通した各差し込みピン31aの先端側を折り返したので、グラウンド用導体31が外部導体13から外れるのを確実に防止して、より安定した電気的特性を得ることができる。ただし、補強部材32は省略することもでき、この場合、各差し込みピン31aの先端側を外部導体13に沿わせて屈曲変形させれば良い。なお、各差し込みピン31aは細い針金状であるため、各差し込みピン31aを屈曲変形させる際に絶縁体12が変形するようなことは無い。
【0064】
次に、本発明の第3実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図9は第3実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルの
図3に対応した断面図を、
図10は第3実施の形態に係るグラウンド用導体を示す斜視図をそれぞれ表している。
【0066】
図9および
図10に示すように、第3実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル40は、第1実施の形態に比して、グラウンド用導体41の構造が異なっている。グラウンド用導体41の本体部15aには、一対の差し込み刃(差し込み固定部)41aが一体に設けられている。各差し込み刃41aは、先端側に刃先を有する板状に形成され、その刃先は本体部15aから各信号線導体11に向けてそれぞれ延ばされている。また、各差し込み刃41aの幅方向は、差動信号伝送用ケーブル40の略楕円形形状の短軸方向に向けられている。これにより、各差し込み刃41aは、図中矢印M3に示す方向から、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようになっている。
【0067】
ここで、各差し込み刃41aにおいても、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12にそれぞれ差し込まれるようになっている。さらには、各差し込み刃41aの絶縁体12に対する差し込み位置においても、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。
【0068】
以上のように形成した第3実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第3実施の形態においては、本体部15aから各信号線導体11に向けて延びる板状の差し込み刃41aとし、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようにしたので、第1実施の形態の各差し込みピン15bに比してその突出高さ寸法を低くすることができる。したがって、各差し込み刃41aの剛性を高めることができ、ひいては歩留まりをより向上させることが可能となる。
【0069】
次に、本発明の第4実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
図11は第4実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブルの
図3に対応した断面図を、
図12は第4実施の形態に係るグラウンド用導体を示す斜視図をそれぞれ表している。
【0071】
図11および
図12に示すように、第4実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル50は、第1実施の形態に比して、グラウンド用導体51の構造が異なっている。グラウンド用導体51の本体部15aには、一対の差し込み刃(差し込み固定部)51aが一体に設けられている。各差し込み刃51aは、先端側に刃先を有する板状に形成され、その刃先は本体部15aから各信号線導体11に向けてそれぞれ延ばされている。また、各差し込み刃51aの幅方向は、差動信号伝送用ケーブル40の長手方向に向けられている。これにより、各差し込み刃51aは、図中矢印M4に示す方向から、外部導体13および絶縁体12に切り込みを入れながら絶縁体12に差し込まれるようになっている。つまり、第3実施の形態の各差し込み刃41aの幅方向に対して、各差し込み刃51aの幅方向は直交している。
【0072】
ここで、各差し込み刃51aにおいても、各信号線導体11が互いに対向する側とは反対側にある絶縁体12にそれぞれ差し込まれるようになっている。さらには、各差し込み刃51aの絶縁体12に対する差し込み位置においても、各信号線導体11と外部導体13との間であって、かつ各信号線導体11および外部導体13の中間点よりも外部導体13に近接した位置となっている。
【0073】
以上のように形成した第4実施の形態においても、上述した第3実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
次に、本発明の第5実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図13は第5実施の形態に係るグラウンド用導体を示す斜視図を表している。
【0076】
図13に示すように、第5実施の形態に係る差動信号伝送用ケーブル60は、複数本のケーブルアッシーCA(図示では3本)を纏めて接続し得るグラウンド用導体61を備えた点が異なっている。グラウンド用導体61は、3つの本体部15aをその長手方向に並べて一体化しており、各本体部15aの内側にはそれぞれ一対の差し込みピン15bが一体に設けられている。
【0077】
また、グラウンドパッド接続部15cは、各本体部15aに4つ設けられている。4つのグラウンドパッド接続部15cのうちの内側にある2つのグラウンドパッド接続部15cは、それぞれ共通のグラウンドパッド接続部15cとして機能し、隣り合う一対のケーブルアッシーCA用となっている。
【0078】
そして、差動信号伝送用ケーブル60の組み立てにおいては、第1実施の形態と同様に、図中矢印M5に示す方向から、グラウンド用導体61を各ケーブルアッシーCAに臨ませて、各差し込みピン15bを、各ケーブルアッシーCAの絶縁体12に差し込んで行う。ここで、各ケーブルアッシーCA間でクロストークが発生しないようにするために、隣り合うケーブルアッシーCA同士を接触させないようにする。
【0079】
ここで、図示はしないが、差動信号伝送用ケーブル60が接続される回路基板は、
図13に示すように、6つのシグナルパッド接続部11aと4つのグラウンドパッド接続部15cに対応して形成されたものが用いられる。つまり、差動信号伝送用ケーブル60に対応した回路基板は、6つのシグナルパッドと4つのグラウンドパッド23とを備えている。
【0080】
以上のように形成した第5実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
次に、本発明の第6実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
図14は第6実施の形態に係るグラウンド用導体を示す平面図を表している。
【0083】
図14に示すように、第6実施の形態においては、グラウンド用導体15の本体部15aに設けられる各差し込みピン(差し込み固定部)15bに対して、図中一点鎖線に示すように比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込みピン15bの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込みピン15bの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15cが延びる方向となっている。
【0084】
以上のように形成した第6実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、第6実施の形態においては、絶縁体12に対するグラウンド用導体15の抜け強度をより向上させることができ、ひいてはグラウンド用導体15と外部導体13とのより安定した電気的な接続が可能となる。ただし、各差し込みピン15bの傾斜角度は、絶縁体12への差し込み抵抗の増大を抑制するためにも、比較的緩やかな傾斜角度(例えば5°未満)とするのが望ましい。
【0085】
次に、本発明の第7実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1および第3実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図15は第7実施の形態に係るグラウンド用導体を示す平面図を表している。
【0087】
図15に示すように、第7実施の形態においては、上述した第3実施の形態に比して、本体部15aから延びて各差し込み刃(差し込み固定部)41aを通過する線分(図中一点鎖線)を基準として、各差し込み刃41aに比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込み刃41aの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込み刃41aの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15cが延びる方向となっている。
【0088】
以上のように形成した第7実施の形態においても、上述した第6実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0089】
次に、本発明の第8実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1および第4実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0090】
図16は第8実施の形態に係るグラウンド用導体を示す平面図を表している。
【0091】
図16に示すように、第8実施の形態においては、上述した第4実施の形態に比して、各差し込み刃(差し込み固定部)51aの幅方向(図中左右方向)に延びる線分(図中一点鎖線)を基準として、各差し込み刃51aに比較的緩やかな傾斜角度α°をつけた点が異なっている。つまり、各差し込み刃51aの本体部15aに対する配置角度が異なっており、各差し込み刃51aの傾斜方向は、各グラウンドパッド接続部15cが延びる方向に対して交差する方向となっている。
【0092】
以上のように形成した第8実施の形態においても、上述した第6実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0093】
次に、本発明の第9実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0094】
図17は第9実施の形態に係るグラウンド用導体を示す平面図を表している。
【0095】
図17に示すように、第9実施の形態においては、上述した第1実施の形態に比して、グラウンド用導体15の本体部15aに設けられる各差し込みピン(差し込み固定部)70の表面粗さを、グラウンド用導体15の他の部分の表面粗さよりも粗くした点(図中網掛部分)が異なっている。
【0096】
以上のように形成した第9実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、第9実施の形態においては、絶縁体12に対するグラウンド用導体15の抜け強度をより向上させることができ、ひいてはグラウンド用導体15と外部導体13とのより安定した電気的な接続が可能となる。ただし、各差し込みピン70の表面粗さは、絶縁体12への差し込み抵抗の増大を抑制するためにも、粗くし過ぎないようにするのが望ましい。
【0097】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、各シグナルパッド接続部11aおよび各グラウンドパッド接続部15cを、各シグナルパッド22および各グラウンドパッド23にはんだ接続する際に、それぞれ予め段付き形状にフォーミングするようにしたものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、各シグナルパッドおよび各グラウンドパッドが回路基板の端部に形成されている場合には、フォーミング作業を省略することもできる。これにより、製造工程の簡素化を図ることができ、製造コストを低減することが可能となる。また、各シグナルパッド接続部および各グラウンドパッド接続部をそれぞれ真っ直ぐの状態にすることができるので、さらに安定した電気的特性を得ることが可能となる。
【0098】
さらに、上記各実施の形態においては、回路基板20に差動信号伝送用ケーブル10,30,40,50,60を電気的に接続して、当該状態のもとで接続作業を終了したものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、回路基板と差動信号伝送用ケーブルとの接続部分を樹脂モールドで被覆するようにしても良い。この場合、金属部分を埃や水分等から保護することができるので、長期に亘って所定の電気的特性を維持することが可能となる。
【0099】
また、上記各実施の形態においては、グラウンド用導体15,31,41,51,61を、図中上方から被せるようにして外部導体13に装着するようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、回路基板20上のスペースに応じて、図中下方から(回路基板20側から)被せるようにして外部導体13に装着するようにしても良い。