(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリコン基板を収納した基板キャリアをエッチング処理液に浸漬して該シリコン基板表面にテクスチャを形成するテクスチャ形成方法であって、上記基板キャリアは、シリコン基板の配列方向に直交する方向に沿って配置されてシリコン基板の両端部を保持する両側板とこれら両側板間を連結する連結板とを有し、内部に互いに隣接し、裏面が対向する2枚一組のシリコン基板を並列配置して収納する上下端部が開放され上下方向に液体が流通可能な収納部と、シリコン基板の上方に配置され収納部からのシリコン基板の浮き上がりを押さえる押さえ板部を有する基板浮き押さえ部材とを備え、上記収納部は両側板に上記2枚一組のシリコン基板を組ごとに保持する保持溝を有し、上記基板浮き押さえ部材の押さえ板部は収納部から浮き上がったシリコン基板と接触する部分に上記2枚一組のシリコン基板の上端部が挿入される押さえ溝を有しており、上記基板キャリアをエッチング処理液に浸漬したときには、収納部内でエッチング反応により浮き上がったシリコン基板の上端部が2枚一組のシリコン基板の組ごとに上記押さえ溝に挿入され、この組ごとに2枚のシリコン基板の対向する裏面同士が該2枚のシリコン基板の間でエッチング処理液が流通しないように近接又は密着すると共に、隣接する2枚一組のシリコン基板の組同士がエッチング処理液が流通可能に離間した状態となってエッチング処理を行うことを特徴とするテクスチャ形成方法。
上記基板キャリアを洗浄液に浸漬し、シリコン基板それぞれの下端部が保持部材の保持溝に挿入されて該シリコン基板が互いに洗浄液が流通可能に離間した状態となって基板洗浄処理を行うことを特徴とする請求項3記載のテクスチャ形成方法。
【背景技術】
【0002】
半導体シリコン基板を用いた太陽電池では、基板表面にテクスチャと呼ばれる微細なピラミット型の凹凸を形成することが多い。このテクスチャは4つの(111)面に囲まれた四角錐形状をしており、テクスチャ面における反射光を2回、3回にわたり太陽電池に再入射させることで、反射率を低下させることができる。これにより短絡電流が増加し、太陽電池の性能は大きく向上する。
【0003】
このようなテクスチャはいわゆる異方性エッチングによって形成される。異方性エッチングとは、単結晶シリコンがタイヤモンド結晶構造をもち、アルカリ溶液中における(111)面のエッチレートが他の結晶面に比べて極めて小さい値を示すことから、高い結晶面方位選択性を有するエッチングである。具体的には、60〜100℃に加熱した濃度が数質量%〜数十質量%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液中にシリコン基板を数十分間浸漬させることで1〜20μm程度の大きさのテクスチャを形成するものである。
【0004】
しかしながら、上記処理のみでは面内に均一なテクチャ形成を行うことはできない。これはエッチング処理前のシリコン基板に自然酸化膜や有機物、更にはスライス時のスラリーやワイヤーソーの砥粒等が残存するためである。そのため、上記対策としてシリコン基板を異方性エッチングする前に、スライス時のスラリーやワイヤーソーの砥粒等を界面活性剤等を用いて洗剤洗浄除去したり、自然酸化膜や有機物を除去したりすることができるRCA洗浄等の洗浄処理を施すことが一般的である。このような洗浄工程にはスライス時に生じるダメージ層を除去するために、基板表面を数ミクロンエッチングするダメージ層エッチング工程を含むこともある。
【0005】
また、異方性エッチング処理後においても基板洗浄を実施するのが一般的である。これは、基板に付着しているエッチング処理液の残液を洗浄除去するだけでなく、その後に控える高温熱処理時の不純物汚染を極力減らすために、エッチング後の基板を極力クリーンな状態にしておく必要があるためである。
つまり、太陽電池用基板のテクスチャ形成工程では異方性エッチング処理工程に加え、その前後に基板洗浄処理を連続的に実施するプロセスが一般的である。
【0006】
このようなテクスチャ形成工程においては、
図1に示すように、複数枚のシリコン基板(以下、基板)11を基板キャリアの収納部13に収納し、所定の処理液で満たされた処理槽10に浸漬させて処理する方法が一般的である。
【0007】
この基板キャリアの収納部13は、その両側板に基板11の両端部を保持する基板保持溝(以下、保持溝)14が通常、一定間隔で複数設けられており、基板下端部に当接するように支持棒15を収納部13下部に設けること等により、複数枚の基板を略平行に一枚ずつ並列配置させて処理できるようになっている。また、収納部13の上下端は開放され、処理液が上下方向に流通可能となっている。
【0008】
ここで、アルカリ溶液などでシリコン基板をエッチング処理すると、大量の水素が発生する。そのため、上述したダメージ層エッチングや異方性エッチング処理時には、基板がこの水素の浮力により浮き上がり、
図1の状態では基板11が収納部13から飛び出してしまう。そこで、これを防ぐためにエッチング処理工程では、例えば
図2に示すような基板浮き押さえ部材90を収納部13の上に配置して処理することが通常行われている。
【0009】
この基板浮き押さえ部材90は、
図3に示すように、4辺の骨格辺91a、91b、91c、91dにより四角形の骨組みを形成しており、骨格辺91b、91dの間にはシリコン基板の配列方向に延びる押さえ板部92が複数本(
図3では2本)形成されている。更に、4本の骨格辺が交差する角の部分には垂直方向下向きに長さ数mm〜数cmの突起93a、93b、93c、93dが形成されている。この突起93a、93b、93c、93dは、
図2に示すように、基板浮き押さえ部材90を収納部13上に配置する際、収納部13上部の四隅に設けられた保持穴13aに挿入して基板浮き押さえ部材90を収納部13に固定するためのものである。
【0010】
上記収納部13及び基板浮き押さえ部材90からなる基板キャリアを用いて上記テクスチャ形成処理を行うと、基板11が収納部13から飛び出すことなく太陽電池用シリコン基板を得ることができる。なお、この方法でテクスチャ形成処理を行うと、基板の表面と裏面に対し同一の処理が施されるため、表面、裏面共に同一のピラミット形状のテクスチャが形成された太陽電池用シリコン基板となる。
【0011】
しかしながら、太陽電池セルの特性からは、受光面は(111)面を主面としたテクスチャ形状、裏面は(100)面を主面とした平坦形状であることが望ましい。これは、表面再結合速度が(111)面よりも(100)面の方が小さく、テクスチャ形状を必要としない裏面においては極力表面再結合速度を小さくすることで開放電圧を増加させることができるためであり、このような基板を用いることで高効率の太陽電池を得ることができる。
【0012】
上述したような受光面がテクスチャ形状、裏面が平坦形状を持った太陽電池用シリコン基板を得るためには、例えば
図4に示したような仕切り板を持ったキャリアを用いてテクスチャ形成を行う方法が開示されている(例えば、特開2006−294752号公報(特許文献1)参照)。これは基板キャリア81に仕切り板82を設けることで、近接物となる仕切り板82がある面とない面とで処理液の流速が異なりエッチング速度が異なることを利用している。
しかしながら、この方法を用いると、エッチング前後における基板洗浄を十分に行うことができず、太陽電池の特性を低下させてしまうという問題があった。また、キャリアが仕切り板を持つため、キャリアに収納できる基板の枚数が少なくなってしまい生産性が低下してしまう問題もあった。
【0013】
また、この方法の他にも、特表2011−512687号公報(特許文献2)では、2つの基板を重ね合わせてテクスチャ形成することにより、片面のみ選択的にエッチングする方法を開示しているが、この方法を用いても、そのままでは基板を重ね合わせた面に対して洗浄を十分に行うことができず、太陽電池特性の低下を防ぐことはできない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るテクスチャ形成方法及び太陽電池の製造方法について図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
本発明に係るテクスチャ形成方法は、シリコン基板を収納した基板キャリアをエッチング処理液に浸漬して該シリコン基板表面にテクスチャを形成するテクスチャ形成方法であって、上記基板キャリアは、シリコン基板の配列方向に直交する方向に沿って配置されてシリコン基板の両端部を保持する両側板とこれら両側板間を連結する連結板とを有し、内部に互いに隣接し、裏面が対向する2枚一組のシリコン基板を並列配置して収納する上下端部が開放され上下方向に液体が流通可能な収納部と、シリコン基板の上方に配置され収納部からのシリコン基板の浮き上がりを押さえる押さえ板部を有する基板浮き押さえ部材とを備え、上記収納部は両側板に上記2枚一組のシリコン基板を組ごとに保持する保持溝を有し、上記基板浮き押さえ部材の押さえ板部は収納部から浮き上がったシリコン基板と接触する部分に上記2枚一組のシリコン基板の上端部が挿入される押さえ溝を有しており、上記基板キャリアをエッチング処理液に浸漬したときには、収納部内でエッチング反応により浮き上がったシリコン基板の上端部が2枚一組のシリコン基板の組ごとに上記押さえ溝に挿入され、この組ごとに2枚のシリコン基板の対向する裏面同士が該2枚のシリコン基板の間でエッチング処理液が流通しないように近接又は密着すると共に、隣接する2枚一組のシリコン基板の組同士がエッチング処理液が流通可能に離間した状態となってエッチング処理を行うものである。
【0021】
図5に、本発明に係るテクスチャ形成方法の手順の一例を示す。
図5は、本発明に係るテクスチャ形成方法に関する概略工程図であり、太陽電池用基板を得るためのテクスチャ形成工程の一例を示している。
図5に示すように、半導体インゴットをスライスして半導体基板(シリコン基板)を切り出した後に、つぎの工程を順番に行う。
(工程1:スライス後の洗浄)まずこのシリコン基板を洗剤洗浄等やRCA洗浄等の洗浄処理を行うことにより、基板表面に付着しているスラリーやワイヤーソーの砥粒、更には自然酸化膜や有機物の除去を行う。
(工程2:ダメージ層エッチング)次に、前記シリコン基板をエッチングして、前記スライスにより生じた基板表面のダメージ層の除去を行う。
(工程3:異方性エッチング)次いで、アルカリ性水溶液に前記シリコン基板を浸漬することにより、異方性エッチングを行い、表面にテクスチャ構造を形成する。
(工程4:エッチング後の洗浄)その後、前記異方性エッチング処理液の残液を除去し、その後の高温熱処理時におけるシリコン基板への不純物汚染を極力減らすために、更にRCA洗浄等といった洗浄処理(エッチング後の洗浄)を実施する。
(工程5:乾燥)そして、基板を乾燥することで太陽電池用基板を得る。
【0022】
また、本発明では上記テクスチャ形成工程における一連の処理を
図6に示す基板キャリアを用いて行う。
本発明で用いる基板キャリアは、
図6に示すように、シリコン基板11の配列方向に直交する方向に沿って配置されてシリコン基板11の両端部を保持する両側板13bとこれら両側板13b間を連結する連結板13cとを有し、内部に互いに隣接し、裏面が対向する2枚一組のシリコン基板11を並列配置して収納する上下端部が開放され上下方向に液体が流通可能な収納部13と、シリコン基板11の上方に配置され収納部13からのシリコン基板の浮き上がりを押さえる押さえ板部22を有する基板浮き押さえ部材20とを備える。
【0023】
ここで、収納部13は耐薬品性、耐熱性に優れた例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の樹脂材料からなり、両側板13b、連結板13c及び底部の支持棒15から構成される上下端部が開放され上下方向に液体が流通可能な容器であり、
図6に示すように、互いに対向する両側板13bの内面には、それぞれシリコン基板11の両端部を保持する基板保持溝(以下、保持溝)14´がシリコン基板11の基板面に対して垂直方向、即ちシリコン基板11の並列配置方向に一定間隔で複数、かつ両側板の対向する位置に設けられている。
【0024】
また、保持溝14´の溝幅は、
図1の従来の基板キャリアの保持溝14の溝幅よりも広く、1つの保持溝14´に2枚のシリコン基板11の端部をまとめて所定間隔で離間した状態で挿入可能で、該2枚のシリコン基板11を洗浄及びリンス可能に保持する。また、エッチング処理時には保持溝14´において2枚一組のシリコン基板11の基板同士が近接又は密着するように移動可能である。例えば、板厚tのシリコン基板11を保持する場合、保持溝14´の溝幅は2t+2mm〜2t+5mm程度である。その溝幅が狭すぎると、シリコン基板11それぞれが離間した状態となった基板洗浄処理時に、シリコン基板11間(特に、2枚一組のシリコン基板11における基板間)で洗浄液がスムーズに流通せずにシリコン基板11の基板面を均一に処理できないおそれがあり、広すぎると収納枚数が少なくなり処理効率が低下する場合がある。
【0025】
また、隣接する保持溝14´のシリコン基板11並列配置方向の間隔は、エッチング処理時及び基板洗浄処理時において2枚一組のシリコン基板11の隣接する組同士のシリコン基板11間でエッチング処理液及び洗浄液がスムーズに流通するように互いのシリコン基板11を離間して並列配置するものであり、
図1の従来の基板キャリアにおける保持溝14の間隔と同じ程度でよく、例えば2〜8mmである。
【0026】
また、収納部13は、シリコン基板11それぞれを互いにその間で液体が上下方向に流通可能に所定間隔で離間させて保持する溝を収納部底部に有することが好ましい。
図6においては、支持棒15にシリコン基板11を一枚ずつ所定間隔で保持する保持溝を設けるとよい。これにより、洗浄処理のときにはシリコン基板11が浮き上がらないことから、シリコン基板11の下端部が支持棒15の保持溝に挿入されてシリコン基板11間が洗浄液を流通可能に所定間隔で離間された状態で保持されるため、各シリコン基板11の表裏面に洗浄液が十分に供給されて良好な洗浄を行うことができる。なお、エッチング処理時にエッチング反応により浮き上がったシリコン基板11の下端部は支持棒15の保持溝から外れて保持溝14´の溝幅の範疇においてフリーの状態となる。
【0027】
基板浮き押さえ部材20は、例えば
図7に示すように、線材からなる4辺の骨格辺21a、21b、21c、21dにより四角形の骨組みと、骨格辺21b、21dの間に架け渡されシリコン基板11の配列方向を長手とする帯状部材である複数の押さえ板部22とを有する。なお、
図7では2本の狭幅の押さえ板部22を配置しているが、エッチング液や洗浄液が処理時に基板キャリアを底部から上方に抜けるようにその処理に支障なく流れる範囲であれば押さえ板部22の本数や押さえ板部22の幅に制約はない。
【0028】
基板浮き押さえ部材20は、更に4本の骨格辺が交差する角の部分には垂直方向下向きに長さ数mm〜数cmの突起23a、23b、23c、23dが形成されている。この突起23a、23b、23c、23dは、
図6に示すように、基板浮き押さえ部材20を収納部13上に配置する際、収納部13上部の四隅に設けられた保持穴13aに挿入して基板浮き押さえ部材20を収納部13に固定するためのものである。
【0029】
また、押さえ板部22は、基板浮き押さえ部材20が収納部13の上部に配置された際に、シリコン基板11の上方であって、エッチング処理時に浮き上がったシリコン基板11と接触する部分となる複数の押さえ溝22mを有する。
【0030】
押さえ溝22mは、押さえ板部22の下面(収納部13側の面)においてシリコン基板11側に向いてシリコン基板11の配列方向に直交する方向を長手とし、2枚一組のシリコン基板11の上端部が挿入される凹形状の溝であって、収納部13に収納された2枚一組のシリコン基板11の組ごとに設けられている。即ち、押さえ板部22においてその長手方向(シリコン基板11の配列方向)に所定の溝幅をもつ複数の押さえ溝22mが略等間隔で形成されている。
【0031】
これにより、後述するように基板キャリアをエッチング処理液に浸漬したときに、基板キャリアの収納部13内でエッチング反応により浮き上がったシリコン基板11の上端部が2枚一組のシリコン基板11の組ごとに押さえ溝22mに挿入され、この組ごとに2枚のシリコン基板11の対向する裏面同士が該2枚のシリコン基板11の間でエッチング処理液が流通しないように近接又は密着すると共に、隣接する2枚のシリコン基板11の組同士がエッチング処理液が流通可能に離間した状態とすることができる。なお、本発明で組ごとの2枚のシリコン基板11の対向する裏面同士が2枚のシリコン基板11の間でエッチング処理液が流通しないように近接した状態とは、エッチング処理後にシリコン基板11の裏面が太陽電池の裏面として表面再結合速度を小さくできるようにある程度の平坦性が得られればエッチング処理液が若干流通する状態も含み、例えば2枚のシリコン基板11の間隔が好ましくは1mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。
【0032】
また、押さえ溝22mは、溝の上底部側に行くほど溝幅が狭くなることが好ましい。
図8に押さえ溝22mの断面形状の具体例を示す。
図8(a)は断面形状がU字型であり、
図8(b)は断面形状がV字型である。また、押さえ溝22mの上底部側に行くほど溝幅が狭くなり、上底部の溝幅がある程度狭くなっていれば、
図8(c)、(d)に示すように上底部が平坦な面となっていてもよい。このとき、押さえ溝22mの最もシリコン基板11側となる開口幅(溝幅)Wmは、収納部13における2枚のシリコン基板11の配置間隔以上の幅であることが好ましい。
【0033】
上記構成の基板浮き押さえ部材20用の材料としては、耐薬品性、耐熱性に優れた、例えばPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PPS(ポリフェニルフサルファイド)、FEP(テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)等のフッ素樹脂やポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂材料の他、SiC、セラミックス、石英等といった材料を用いることができる。また、骨格辺21a、21b、21c、21dとして、金属棒を主原料として骨格を作製し、その表面を例えばPTFE等の耐薬品性、耐熱性に優れたフッ素樹脂でコーティングしたものを用いることが望ましい。これにより、基板浮き押さえ部材20自体を十分重くしてエッチング処理時にシリコン基板11に浮力が生じてもシリコン基板11と共に基板浮き押さえ部材20が浮き上がることを防ぐことができる。また、押さえ溝22mを有する押さえ板部22は上記樹脂材料の成形品とするとよい。なお、テクスチャ形成工程で用いる処理液が全て中性又はアルカリ性の水溶液である場合には、金属製の浮き押さえであっても例えばステンレス鋼のように表面が酸化膜で保護された金属棒を主原料して作製したものであれば、その表面コーティングを省略してもよい。
【0034】
本発明のテクスチャ形成方法によれば、
図6に示すように、シリコン基板11を収納した基板キャリアをエッチング処理液に浸漬して該シリコン基板11表面にテクスチャを形成するとき、エッチング処理時にエッチング反応により水素ガスが大量発生してシリコン基板11の下端部が支持棒15の保持溝から外れて浮き上がるが、シリコン基板11の上端部が基板浮き押さえ部材20に当接してシリコン基板11の飛び出しが抑えられる。また、基板キャリア内で浮き上がったシリコン基板11の上端部が2枚一組のシリコン基板11の組ごとに押さえ溝22mに挿入され、この組ごとに2枚のシリコン基板11の互いに向き合った板面(裏面)同士が該2枚のシリコン基板11の間でエッチング処理液が流通しないように近接又は密着すると共に、隣接する2枚のシリコン基板11の組同士がエッチング処理液が流通可能に離間した状態となる(配置状態B)。このとき、押さえ溝22mの断面形状として溝の上底部側に行くほど溝幅が狭くなるようにしておくと、
図9(a)に示すように、浮き上がったシリコン基板11の上端部が2枚一組のシリコン基板11の組ごとに押さえ溝22mに確実に当接し、シリコン基板11が更に浮き上がってそれらの基板上端部が押さえ溝22mの傾斜面に沿って上底部側にスムーズに移動して、
図9(b)に示すように、この組ごとに2枚のシリコン基板11の互いに向き合った板面(裏面)同士が近接又は密着すると共に、隣接する2枚のシリコン基板11の組同士が離間した状態とすることができる。これにより、シリコン基板11それぞれにおいてシリコン基板11同士が密着又は近接した面(裏面)と密着していない面(表面)とでエッチング処理液の流速が変化し、エッチング速度に差が生じることから一方の面がテクスチャ形状となり、他方の面が比較的平坦な面となったシリコン基板が得られる。
【0035】
また、上記太陽電池用基板を得るためのテクスチャ形成工程において工程1や工程4のようにシリコン基板11を収納した基板キャリアを洗浄液に浸漬してシリコン基板11表面の洗浄処理を行うときには、シリコン基板11に浮力が生じないことから、自重でシリコン基板11が収納部13内で沈降し、シリコン基板11の下端部がそれぞれ支持棒15の保持溝に挿入されてシリコン基板11それぞれが基板間が洗浄液が流通可能に離間した状態で保持される(配置状態A)。これにより、各シリコン基板11の表裏面に洗浄液が十分に供給されてシリコン基板11を均一に洗浄することができる。
【0036】
このような基板浮き押さえ部材20を用いた本発明のテクスチャ形成方法は、太陽電池作製工程におけるテクスチャ形成工程において有効に利用することができる。以下に、本発明のテクスチャ形成方法を適用した本発明の太陽電池の製造方法を説明する。ただし、本発明の太陽電池の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0037】
まず、高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素がドープされたp型単結晶シリコンインゴットを直方体に切り出したものから、基板厚さ150〜250μmにスライスしたp型単結晶基板(シリコン基板)を得る。
次に、切り出したシリコン基板を
図6に示す基板キャリアに収納する。
切り出したシリコン基板に付着したワイヤーソーの砥粒や研磨剤を除去するための洗浄を行う(スライス後の洗浄)。この洗浄は、用いる研磨剤によるが、溶媒として水を用いた揺動洗浄、シャワー洗浄、超音波洗浄等とすることができる。この際、洗浄効果を一層上げるために必要に応じて界面活性剤等を数質量%加えることが好ましい。
更に、基板に形成されている自然酸化膜や有機物を除去するための洗浄を行う。前記目的を達成する洗浄方法としては例えばRCA洗浄が挙げられる。具体的には、過酸化水素水とアンモニアを混合した混合液による洗浄(SC−1洗浄)と過酸化水素水と塩酸を混合した混合液による洗浄(SC−2洗浄)を行うことであり、目的に応じてSC−1洗浄とSC−2洗浄間やSC−2洗浄の後に数質量%程度のフッ化水素酸に浸漬させてもよく、更にはSC−1洗浄、SC−2洗浄どちらか一方の処理のみを行ってもよい。
SC−1洗浄の場合、薬液の混合比は純水1に対して、25質量%アンモニア水溶液の体積で、0.01〜0.25、30質量%過酸化水素水の体積で0.01〜0.25であることが好ましく、また、液温は60〜90℃であることが好ましい。
SC−2洗浄の場合、薬液の混合比は純水1に対して、35質量%塩酸水溶液の体積で、0.01〜0.25、30質量%過酸化水素水の体積で0.01〜0.25であることが好ましく、また、液温は60〜90℃であることが好ましい。
エッチング処理前にこれらの表面洗浄処理工程を行うことにより、次工程のダメージエッチング及び異方性エッチングを面内均一かつ安定的に行うことができる。
【0038】
なお、これら洗浄処理時は、
図6に示すように、シリコン基板11それぞれの下端部が自重により基板キャリアの収納部13底部の支持棒15のそれぞれの保持溝に収まった状態(配置状態A)で処理されるため、基板浮き押さえ部材20を用いたとしても、シリコン基板11同士の密着は起らず、基板浮き押さえ部材20を用いない場合と何ら変わらない洗浄効果を得ることができる。
【0039】
次に、基板キャリアをアルカリ性水溶液に浸漬してシリコン基板11をエッチングし、前記スライスにより生じた基板表面のダメージ層を除去する(ダメージ層エッチング)。ダメージ層の除去には、70〜100℃に加熱した10〜50質量%の水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液でダメージエッチングを行うことができる。また、フッ酸と硝酸等を混合した混酸を用いてもよい。
【0040】
次に、アルカリ性水溶液に前記シリコン基板を浸漬して異方性エッチングを行い、表面にテクスチャ構造を形成する。異方性エッチングするアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウム又は水酸化ナトリウムを含む水溶液とすることにより、基板表面に均一なテクスチャ構造を安定して形成することができる。
面内均一性の高い異方性エッチングを行うためには、60〜80℃に加熱した濃度数質量%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液にシリコン基板を10〜30分間程度浸漬するのが好ましく、数質量%の2−プロパノールを混合すると更に好ましい。
前記ダメージ層エッチングと異方性エッチング処理はそれぞれを分けて行う必要はなく、
図6に示すシリコン基板11を収納した基板キャリアを用いてダメージ層エッチングと異方性エッチングを単一の処理槽にて同時に行っても構わない。
【0041】
なお、上述したようにアルカリ溶液でシリコン基板11をエッチングすると、その際に大量の水素が発生する。そのため、上述したダメージ層エッチングや異方性エッチング処理時では、シリコン基板11がこの水素の浮力により浮き上がり、そのままでは基板キャリアの収納部13から飛び出してしまうところ、基板浮き押さえ部材20がこのようなシリコン基板11の浮きを押さえ、更にシリコン基板11の下端部が支持棒15の保持溝から外れると共に、基板浮き押さえ部材20の2本の押さえ板部22に設けられた押さえ溝22mに2枚一組のシリコン基板11の組ごとにその上端部が挿入され、この組ごとに2枚のシリコン基板11の対向する裏面同士が該2枚のシリコン基板11の間でエッチング処理液が流通しないように近接又は密着すると共に、隣接する2枚のシリコン基板11の組同士がこの2枚のシリコン基板11の間でエッチング処理液が流通可能に離間した状態(配置状態B)でエッチング処理される。これにより、一方の面(表面)がテクスチャ形状で、他方の面(裏面)が比較的平坦な形状のシリコン基板とすることができる。
【0042】
異方性エッチング後にはRCA洗浄を実施することが好ましい。RCA洗浄とは具体的には上述した通り、過酸化水素水とアンモニアを混合した混合液による洗浄(SC−1洗浄)と過酸化水素水と塩酸を混合した混合液による洗浄(SC−2洗浄)を行うことであり、目的に応じてSC−1洗浄とSC−2洗浄間やSC−2洗浄の後に数質量%程度のフッ化水素酸に浸漬させてもよく、更にはSC−1洗浄、SC−2洗浄どちらか一方の処理のみを行ってもよい。
【0043】
ここでの洗浄により、エッチング液の残渣を洗浄除去するだけでなく、その後に控える太陽電池の製造工程における高温熱処理時の不純物汚染を減らすことができる。なお、この洗浄処理時も、基板キャリアにおいてシリコン基板11の下端部が自重により収納部13底部の支持棒15の溝に収まった状態(配置状態A)で処理されるため、基板浮き押さえ部材20を用いたとしても、シリコン基板11同士の密着は起らず、基板浮き押さえ部材20を用いない場合と何ら変わらない洗浄効果を得ることができる。
【0044】
以上のように、
図6に示す基板キャリアを用いた本発明のテクスチャ形成方法によりテクスチャ形成を行うと、シリコン基板に浮力が発生するエッチング処理時のみ2枚一組のシリコン基板の組ごとに2枚の基板同士が近接又は密着し、隣接する2枚のシリコン基板11の組同士がこの2枚のシリコン基板11の間で離間した状態となって処理を行い、シリコン基板に浮力が発生しないエッチング処理前後の洗浄処理時にはシリコン基板同士の密着のない離間した状態で処理を行うことができるため、従来の洗浄効果を維持したまま、一方の面(表面)がテクスチャ形状で、他方の面(裏面)が比較的平坦な形状のシリコン基板を得ることが可能となる。
【0045】
このように本発明のテクスチャ形成方法により製造した太陽電池基板にPN接合及び電極形成等を行うことによって、太陽電池を製造する。本発明の太陽電池の製造方法において、これ以降の工程は従来公知の方法と同様でよく、例えばドーパント化合物を用いた熱拡散処理工程、リンガラス及びボロンガラスを除去するエッチング処理工程、反射防止膜及び表面保護膜形成工程、電極形成工程をこの順番で行うとよい。このとき、上記方法により作製したシリコン基板において、テクスチャが形成された面を受光面とし、比較的な平坦な形状の面を裏面とするとよい。
【0046】
ここで、PN接合の形成は、受光面側にリン等のn型不純物を熱拡散によって行うのが好ましいが、塗布拡散もしくはイオン注入法によって行ってもよい。更に、変換効率の高い太陽電池を得るためには、裏面に対してもボロン等のp型不純物を熱拡散させBSF(Back Surface Field)層を形成することが好ましい。BSF層の形成には塗布拡散もしくはイオン注入法によって行ってもよい。より具体的には例えば、まず受光面には、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法によりエミッタ層を形成する。裏面への拡散を防ぐため、裏面同士を重ね合わせた、2枚1組で拡散ボートに並べて気相拡散するのが好ましい。このとき、オキシ塩化リン雰囲気中で820〜880℃で数十分熱処理し、受光面にn型層を形成する。更に、裏面には、BBr
3を用いた気相拡散法によりBSF層を形成する。ここでも表面への拡散を防ぐため、表面同士を重ね合わせた、2枚1組で拡散ボートに並べて気相拡散するのが好ましい。このとき、BBr
3雰囲気中で900〜1000℃で数十分熱処理することで、裏面にp型層を形成する。
上記拡散処理後、拡散で形成されたリンガラス及びボロンガラスを数質量%のフッ酸水溶液に中に数分浸漬して除去する。
【0047】
次に、太陽光反射防止と表面保護のために、プラズマCVD法又はPVD法等により、厚さ80〜90nmの窒化シリコン膜を受光面及び裏面上に反射防止膜及び表面保護膜として形成することが好ましい。反射防止膜及び表面保護膜には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化セリウム、アルミナ、二酸化錫、二酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化タンタル等及びこれらの二種組み合わせた2層膜が使用され、いずれを用いてもよい。
【0048】
次に電極を形成する。電極の材料として銀や銅、アルミニウム等の金属が用いられるが、高い変換効率の太陽電池を得るには、銀を主原料とするのがよい。電極の形成方法としてはスパッタ法、真空蒸着法、スクリーン印刷法等いずれの方法でも可能であるが、低コストで高スループットのためにはスクリーン印刷法が好ましい。より具体的には、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合した銀ペーストを表面には櫛状、裏面は櫛状もしくは格子状に、スクリーン印刷した後、熱処理によって窒化シリコン膜をガラスフリットにより突き破り(ファイヤースルー)、電極とシリコン基板とを導通させる。
その他、必要に応じて、太陽電池の受光面から裏面に続いている拡散層を、機械的方法やレーザーなどにより分離してもよい。
【0049】
以上の工程を経ることにより、受光面がテクスチャ構造を有し、裏面が比較的平坦な形状を有する太陽電池を作製するこができ、これにより裏面の表面再結合速度が小さく変換効率の高い太陽電池を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
本発明の有効性を確認するため、本発明のテクスチャ形成方法及び太陽電池の製造方法を用いて実際に太陽電池を作製した。
まず、実施例1として、ホウ素ドープ(100)p型シリコン単結晶インゴットをスライスして、厚さ200μmのシリコン基板(比抵抗0.5Ω・cm、150mm擬似四角形のアズカットウエハ。以下、基板という。)を20枚用意し、
図6に示す基板キャリアに充填した。この基板キャリアの収納部13はPPS樹脂製であり、基板浮き押さえ部材20の骨格はステンレス製の金属棒の表面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされたものであり、押さえ溝22mを有する押さえ板部22はPTFE成型品である。押さえ溝22mは
図8(a)に示す形状とした。
また、比較例1として、上記と同じ基板20枚を、
図2に示す基板キャリアに充填した。この基板キャリアの収納部13もPPS樹脂製であり、基板浮き押さえ部材90の骨格もステンレス製の金属棒の表面がPTFEでコーティングされたものであり、押さえ板部92もPTFE成型品である。押さえ板部92のシリコン基板と接触する面は押さえ溝のない平坦な面とした。
【0052】
次に、上記のように基板を収納した基板キャリアそれぞれを用いて、
図5に示す工程図に従い、テクスチャ形成処理を行った。
まず、純水の体積1に対して、界面活性剤としてエクセムライトD−400(共栄社化学株式会社製)を体積で0.1添加した処理液に基板キャリアを5分間浸漬し、スライスによって基板表面に付着したスラリーやワイヤーソーの砥粒の洗浄除去を行った。更に、25質量%アンモニア水溶液と30質量%過酸化水素水と純水が、それぞれ体積比で1:1:10になるように混合し、70℃に加熱したアルカリ性水溶液に5分間浸漬し、基板表面の有機物の洗浄除去を行った。以上の洗浄処理では、実施例1、比較例1共に、基板それぞれが離間した状態で処理された。
次に、70℃に加熱した24質量%水酸化カリウム水溶液に4分間浸漬することにより基板表面のダメージ層を除去した。
この際、比較例1の基板キャリアを用いて処理された基板は、隣り合う基板同士は密着することなく離間した状態で処理されたのに対し、実施例1の基板キャリアを用いて処理された基板は、2枚一組のシリコン基板の組ごとに基板同士が密着し、組同士では離間した状態でダメージ層エッチング処理されていた。
その後、80℃に加熱した2質量%水酸化カリウム水溶液に2−プロパノールを混合した異方性エッチング液に10分間浸漬し、基板表面にテクスチャを形成した。
このテクスチャ処理時においても、比較例1の基板キャリアを用いて処理された基板は、隣り合う基板同士は密着することなく離間した状態で処理されたのに対し、実施例1の基板キャリアを用いて処理された基板は、2枚の基板の組ごとに基板同士が密着し、組同士では離間した状態で異方性エッチング処理されていた。
【0053】
異方性エッチング後は、25質量%アンモニア水溶液と30質量%過酸化水素水と純水が、それぞれ体積比で1:1:10に混合された、70℃に加熱したアルカリ性水溶液に5分間浸漬した後、更に35質量%塩酸と30質量%過酸化水素水と純水がそれぞれ体積比で1:1:10に混合された70℃に加熱した酸性水溶液に5分間浸漬し、エッチング液の残液除去と熱処理前の洗浄処理を行った。この洗浄処理においても、実施例1、比較例1共に、基板それぞれが離間した状態で処理された。
【0054】
ここまでの処理を行ったところで、実施例1及び比較例1の処理された基板を各2枚ずつ抜き取り、基板の表面及び裏面の分光反射率測定を行った。基板の中央部を波長400〜1100nmの範囲における反射率の平均値を表1に示す(2枚の平均値)。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果から、比較例1でテクスチャ処理された基板では、表面・裏面とも反射率の低い基板であったのに対し、実施例1でテクスチャ処理された基板では、表面の反射率が低く裏面の反射率が高い基板となっていた。
これは、比較例1の方法で処理された基板はダメージ層エッチング処理及び異方性エッチング処理時、隣り合う基板同士が密着することなく離間した状態で処理され、基板の表面及び裏面ともに均一な処理が施されて両面にテクスチャが形成されたのに対し、実施例1の方法で処理された基板は、2枚一組の基板の組ごとに基板同士が密着し、隣接する2枚一組の基板の組同士が離間した状態となって、基板の表面と裏面とでエッチング液の流速が異なる処理が施されたためである。即ち、実施例1の方法では表面と裏面とでエッチング液の流速が異なることによりエッチングレートが異なり、エッチング液の流速が早い片面(密着した2枚の基板における外側の面)では(111)面を主面とするテクスチャ形状が形成されたのに対し、エッチング液の流速が遅い片面(密着した2枚の基板における互いに密着した面)では(100)面を主面とする比較的平坦な面が形成されたためである。
【0057】
以下、実施例1及び比較例1の方法により得られた太陽電池用基板各18枚を用いて太陽電池を作製した。実施例1においては反射率の低い面を受光面、反射率の高い面を裏面として各処理を行った。
【0058】
まず、受光面側にオキシ塩化リンを用いた気相拡散法によりエミッタ層を形成した。裏面への拡散を防ぐため、裏面同士を重ね合わせ、2枚1組で拡散ボートに並べて、オキシ塩化リン雰囲気中で850℃にて20分間高温処理し、受光面側にn型エミッタ層を形成した。
次に、裏面にBBr
3を用いた気相拡散法によりBSF層を形成した。ここでも表面への拡散を防ぐため、表面同士を重ね合わせ、2枚1組で拡散ボートに並べて処理し、BBr
3雰囲気中で950℃にて30分間高温処理することで、裏面にp型BSF層を形成した。
拡散後、拡散で形成されたリン及びボロンガラスを2質量%のフッ酸水溶液に4分間浸漬させることで除去した。
その後、プラズマCVD装置を用いて基板の表面及び裏面に80nm程度のSiNx膜を堆積させ、表面に反射防止膜、裏面に表面保護膜を形成した。
次に、裏電極としてAg電極ペーストを櫛形パターン状にスクリーン印刷し乾燥した。次いで、表面にもAg電極ペーストを櫛形パターン状にスクリーン印刷し乾燥した。最後に780℃の空気雰囲気下で焼成し太陽電池を作製した。
【0059】
作製された太陽電池について25℃、100mW/cm
2、スペクトルAM1.5グローバルの擬似太陽光照射時の電気特性を測定した結果(各18枚の平均値))を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2の結果から、実施例1の方法により作製した太陽電池の方が比較例1の方法で作製した太陽電池に比べ、開放電圧が高くなり、それにより変換効率の高い太陽電池が作製されたことがわかる。
これは、比較例1では表面及び裏面ともに(111)面を主面とする基板を用いて太陽電池を作製したのに対し、実施例では表面は(111)面であるが、裏面が表面再結合速度の極めて小さい(100)面を主面とする基板を用い太陽電池を作製したためである。
【0062】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。