特許第5874695号(P5874695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874695重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874695
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20160218BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20160218BHJP
   A62D 3/33 20070101ALI20160218BHJP
   A62D 101/08 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/22 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/24 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/28 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/43 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/47 20070101ALN20160218BHJP
   A62D 101/49 20070101ALN20160218BHJP
【FI】
   B09B3/00 304G
   B09B3/00 304Z
   B09B3/00 301M
   B09B3/00 301Z
   C02F11/00 GZAB
   C02F11/00 H
   C02F11/00 J
   C02F11/00 C
   A62D3/33
   A62D101:08
   A62D101:22
   A62D101:24
   A62D101:28
   A62D101:43
   A62D101:47
   A62D101:49
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-160680(P2013-160680)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-29948(P2015-29948A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2014年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕之
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−128273(JP,A)
【文献】 特開平08−192128(JP,A)
【文献】 特開2008−049210(JP,A)
【文献】 特開2013−017981(JP,A)
【文献】 特開2006−187773(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001719(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/12
C02F 11/00−11/20
A62D 3/30−3/38
A62D 101/08−101/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属類を含有する固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加および混練して混練物を作製する工程と、
前記混練物を固化させる工程とを含み、
前記重金属類は、フッ素、またはフッ素と鉛、六価クロム、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀およびホウ素からなる群から選択される少なくとも1種とであり、
前記固形廃棄物にはセメントが添加され
前記固形廃棄物には、リン酸および/またはリン酸塩がさらに添加され、
前記リン酸は、オルトリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ピロリン酸およびこれらのリン酸の重縮合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記リン酸塩は、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種と前記リン酸との塩である、固形廃棄物に含有されている重金属類の不溶化方法。
【請求項2】
前記固形廃棄物への前記高炉スラグの添加量は、前記固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜100質量部であり、
前記固形廃棄物への前記鉄塩の添加量は、前記固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜10質量部である、請求項1に記載の固形廃棄物に含有されている重金属類の不溶化方法。
【請求項3】
前記固形廃棄物への前記リン酸および/またはリン酸塩の添加量は、前記固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜10質量部である、請求項1または2に記載の固形廃棄物に含有されている重金属類の不溶化方法。
【請求項4】
前記固形廃棄物には、鉱酸および/または鉱酸塩がさらに添加さ
前記鉱酸は、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記鉱酸塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種と前記鉱酸との塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形廃棄物に含有されている重金属類の不溶化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法に関し、詳しくは、焼却灰などの固形廃棄物中に含まれる有害重金属類を、効果的に不溶化して無害化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭ボイラやバイオマスボイラなどから排出される焼却灰を土木資材としてリサイクルすることが検討されている。しかしながら、焼却灰には、石炭やバイオマス燃料に由来する重金属類が含まれており、焼却灰中の重金属類の含有量が、たとえ土壌汚染対策法の基準(たとえば環境省告示第19号)を満足していても、溶出基準(たとえば環境省告示18号)を超えて重金属類が焼却灰から溶出する場合がある。焼却灰からは、とくに鉛、六価クロム、ヒ素、セレン、フッ素およびホウ素などの有害物質が溶出するが、これらを完全に不溶化する技術は、これまで確立されていない。
【0003】
また、焼却灰を土木資材として使用するためには、焼却灰を採石と混練して作製した再生骨材と水とを混練して造粒して成形体が形成できることが必要である。さらに再生骨材は、数年後にそれらが目的を終えて再び別用途に利用される可能性を考慮して、細かく粉砕されても、重金属や他の有害物質の溶出しないことが必要である。
【0004】
このように重金属や他の有害物質を含有する焼却灰を土木資材として利用する場合には、(i)固化・造粒できること(固化性能)と、(ii)重金属類や他の有害物質が溶出しないこと(重金属類等の不溶化性能)との二点が要求される。これに対して、特許文献1には、鉛、六価クロム、ヒ素およびセレンを含有する灰をリン酸系重金属固定化剤により不溶化処理する方法が開示されている。また、特許文献2には、ポルトランドセメントと高炉スラグと石膏とを含む重金属汚染土壌用セメント系処理材であって、六価クロムおよび水銀などの有害重金属で汚染された土壌、汚泥および廃棄物などからの有害重金属の溶出を抑制するセメント系処理材、およびそれを用いた重金属汚染土壌などの固化不溶化方法が開示されている。しかしながら、特許文献1および2の方法を組み合わせても、上記の固化性能と、重金属類の不溶化性能を同時に満足することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3271534号公報
【特許文献2】特開2007−222694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の状況下になされたもので、重金属類を含有する固形廃棄物を十分に固化し、固形廃棄物中に含まれる重金属類を効果的に不溶化して固形廃棄物を無害化する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下、[1]〜[5]のとおりである。
【0008】
[1]重金属類を含有する固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加および混練して混練物を作製する工程と、混練物を固化させる工程とを含み、固形廃棄物にはセメントが添加されない、重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法。
[2]固形廃棄物への高炉スラグの添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜100質量部であり、固形廃棄物への鉄塩の添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜10質量部である、上記[1]に記載の重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法。
[3]固形廃棄物には、リン酸および/またはリン酸塩がさらに添加される、上記[1]または[2]に記載の重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法。
[4]固形廃棄物へのリン酸および/またはリン酸塩の添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、0.1〜10質量部である、上記[3]に記載の重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法。
[5]固形廃棄物には、鉱酸および/または鉱酸塩がさらに添加される、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の重金属類を含有する固形廃棄物の無害化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重金属類を含有する固形廃棄物を十分に固化し、固形廃棄物中に含まれる重金属類を効果的に不溶化して固形廃棄物を無害化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の固形廃棄物の無害化方法は、重金属類を含有する固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加および混練して混練物を作製する工程と、混練物を固化させる工程とを含み、固形廃棄物にはセメントが添加されない。以下、本発明の固形廃棄物の無害化方法を詳細に説明する。
【0011】
(A)重金属類を含有する固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加および混練して混練物を作製する工程
[重金属類を含有する固形廃棄物]
本発明の重金属類を含有する固形廃棄物は、重金属類を含有する固形の廃棄物であればとくに制限されない。本発明の重金属類を含有する固形廃棄物には、たとえば、石炭ボイラやバイオマスボイラなどの清掃作業時にボイラ設備から排出される焼却灰、沈積物、付着物および滞留物、ごみ焼却炉などの焼却炉設備の解体作業時に発生するレンガ、集塵器の集塵板および濾布、煙道構成物、スラッジ、ならびに排水処理残さなどが挙げられる。本発明の固形廃棄物が含有する重金属類には、たとえば、鉛、六価クロム、ヒ素、セレン、カドミウムおよび水銀などの有害な重金属ならびにフッ素およびホウ素などの重金属以外の有害物質などが挙げられる。
【0012】
[高炉スラグ]
本発明の高炉スラグは、高炉で銑鉄を作製するときに副生する鉱滓である。高炉スラグの主成分は、たとえば、CaO、SiO2、Al23およびMgOである。高炉スラグには、溶融状態のスラグに加圧水を噴射して急冷することによって製造された高炉水砕スラグおよび高炉水砕スラグを徐冷して結晶化させた高炉徐冷スラグが挙げられる。高炉水砕スラグは、硫酸塩などの刺激剤により水和活性が高まる潜在水硬性を有するので、好ましい高炉スラグは高炉水砕スラグである。
【0013】
[鉄塩]
本発明の鉄塩は、2価以上の鉄塩が好ましく、2価の鉄塩がより好ましい。好ましい鉄塩には、たとえば、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、臭化第二鉄、臭化第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸第一鉄、水酸化第二鉄、水酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一鉄、炭酸水素第二鉄、炭酸水素第一鉄、炭酸第二鉄および炭酸第一鉄などの無機第一鉄塩または無機第二鉄塩、ならびにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、または重合体と錯体形成された有機第一鉄または第二鉄化合物などが挙げられ、これらは、1種を単独で、または2種以上を混練して用いることができる。より好ましい鉄塩は、塩化第一鉄および/または硫酸第一鉄であり、さらに好ましい鉄塩は硫酸第一鉄である。
【0014】
[添加]
高炉スラグおよび鉄塩を本発明の固形廃棄物に添加する。高炉スラグおよび鉄塩を固形廃棄物に添加した後、固形廃棄物を混練してもよいし、高炉スラグおよび鉄塩を固形廃棄物に添加しながら、固形廃棄物を混練してもよい。
【0015】
固形廃棄物への高炉スラグの添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、好ましくは0.1〜100質量部であり、より好ましくは1〜30質量部であり、固形廃棄物への鉄塩の添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.8〜5.4質量部である。固形廃棄物への高炉スラグの添加量および鉄塩の添加量がこれらの範囲内であると、固形廃棄物は十分固化するとともに、固形廃棄物中に含まれる重金属類を十分に不溶化することができる。
【0016】
[混練]
本発明の混練は、高炉スラグおよび鉄塩を添加した、重金属類を含有する固形廃棄物を混練できれば、とくに限定されない。たとえば、コンクリートの作製に使用する混練器を使用して、高炉スラグおよび鉄塩を添加した固形廃棄物を混練してもよい。また、高炉スラグおよび鉄塩を添加した固形廃棄物を混練するとき、水を添加してもよい。添加する水には、たとえば、水道水、蒸留水およびイオン交換水などが挙げられる。添加する水の割合は、固形廃棄物100質量部に対して、たとえば0〜100質量部であり、好ましくは0〜50質量部である。
【0017】
[混練物]
本発明の混練物は、重金属類を含有する固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加および混練することによって作製され、重金属類を含有する固形廃棄物、高炉スラグおよび鉄塩を含む。
【0018】
[セメント]
本発明では、固形廃棄物に高炉スラグおよび鉄塩を添加することによって、混練物はセメントを添加しなくても混練物は固化する。また、本発明では、セメントを使用してなくても、固化した混練物の重金属類の溶出を減少させることができる。さらに、固形廃棄物にセメントを添加した場合に比べて、固化した混練物からの重金属類の溶出を少なくすることができる。したがって、本発明の固形廃棄物にセメントを添加しない。
【0019】
セメントには、たとえば、セッコウ、石灰およびマグネシアセメントなどの気硬性セメントならびにポルトライドセメント類、アルミナセメント、高炉セメント、高硫酸塩スラグセメントおよび石灰スラグセメントなどの水硬性セメントが挙げられる。したがって、本発明では、セッコウ、石灰、マグネシアセメント、高炉セメント、高硫酸塩スラグセメントおよび石灰スラグセメントを固形廃棄物に添加しない。なお、高炉スラグは、高炉セメントの成分、ポルトランドセメントの添加物およびコンクリート用混和材料などとして使用されるが、それ自体、セメントとして使用されない。したがって、本明細書において高炉スラグはセメントに含まれない。
【0020】
[リン酸および/またはリン酸塩]
リン酸および/またはリン酸塩を本発明の固形廃棄物に、さらに添加してもよい。これにより、固化した混練物からの重金属類の溶出をさらに少なくすることができる。リン酸およびリン酸塩には、たとえば、オルトリン酸、ポリリン酸、メタリン酸およびピロリン酸などのリン酸、これらのリン酸の重縮合物、ならびにこれらのリン酸の塩などが挙げられる。これらのリン酸の塩には、たとえば、リチウム、カリウム、ナトリウムおよびアンモニウムとリン酸との塩が挙げられる。固形廃棄物へのリン酸および/またはリン酸塩の添加量は、固形廃棄物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.75〜1.5重量部である。固形廃棄物へのリン酸および/またはリン酸塩の添加量がこの範囲内であると、固化した混練物からの重金属類の溶出をより一層減少させることができる。
【0021】
[鉱酸]
たとえば、固形廃棄物が高いアルカリ度を有する場合、鉱酸および/または鉱酸塩を本発明の固形廃棄物に、さらに添加してもよい。ここで、アルカリ度とは、重金属類を含有する固形廃棄物のアルカリ成分の残存状態を示す指標であり、具体的には、以下に示す方法による酸消費量として、炭酸カルシウム換算量(mg−CaCO3/g−固形廃棄物)で表すことができる。
【0022】
重金属類を含有する固形廃棄物のアルカリ度(pH8.3における酸消費量)が、炭酸カルシウム換算で20mg/g以上の場合には、鉱酸および/または鉱酸の塩を固形廃棄物に添加することが好ましい。
【0023】
酸消費量は、たとえば、以下の方法で測定できる。
固形廃棄物を粉砕して1g採取し、それに脱塩水を1000mLを加えて1時間撹拌し、撹拌後の溶液を50mL採取し、フェノールフタレインを指示薬として、溶液のpHが8.3になるまで、0.02N−H2SO4溶液を用いて滴定する。溶液のpHが8.3になるまでに要した0.02N−H2SO4溶液の量に相当するアルカリ量を炭酸カルシウムで換算した値が酸消費量である。
【0024】
鉱酸および鉱酸塩には、たとえば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素酸およびこれらの塩が挙げられる。これらの中では、好ましい鉱酸は硫酸であり、好ましい鉱酸塩は硫酸塩である。硫酸塩には、たとえば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸第二鉄(III)および硫酸アルミニウムなどが挙げられ、これらは、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。より好ましい鉱酸塩は硫酸アルミニウムである。
【0025】
重金属類を含有する固形廃棄物のアルカリ度と、鉱酸および/または鉱酸の塩の割合とが、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
鉱酸および/または鉱酸の塩の添加率(質量部)=〔固形廃棄物のアルカリ度(mg/g)×0.1〕−(1〜10) (1)
【0026】
(B)混練物を固化させる工程
混練物は、たとえば、養生することによって固化される。混練物を十分に固化させるために、養生時間は、好ましくは1日以上であり、より好ましくは3日以上である。養生方法には、たとえば、気中養生、水中養生、湿布養生、蒸気養生および封緘養生などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0028】
[評価方法]
なお、実施例および比較例の評価では、次の評価方法を実施した。
(1)pH
昭和48年2月17日環境庁告示13号「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法」の溶出試験に準拠して、試料液イ(溶媒のpH:6.3)を調製し、試料液のpHを測定した。
【0029】
(2)各成分の溶出量
混練物を1日養生させた後、2mm以下に粉砕して、平成3年環境庁告示第46号に従い、溶出試験を実施し、各成分の溶出量を測定した。なお、各成分の溶出基準値は、以下のとおりである。
【0030】
(溶出基準値)
鉛(Pb):0.01mg/L以下、六価クロム(Cr(VI)):0.05mg/L以下、
フッ素(F):0.8mg/L以下、ホウ素(B):1.0mg/L以下
【0031】
(3)コーン指数(kN/m2
約5cmの立方体に混練物を成形し、1日養生させて固化した固形物に対して、山中式土壌硬度計、コーンペネトロメーターを用いてコーン指数を測定し、固形物の強度を求めた。なお、コーン指数の合格値は800kN/m2超である。
【0032】
[試料(実施例1〜4および比較例1〜8)の作製]
表1および表2に示す組成の混練物を固化して実施例1〜4および比較例1〜8を作製した。表1に示す固形廃棄物1のアルカリ度(炭酸カルシウム換算)は35mg/gであり、表2に示す固形廃棄物2のアルカリ度(炭酸カルシウム換算)は110mg/gであった。ただし、比較例1および比較例5は固形廃棄物1および固形廃棄物2であり、比較例1および比較例5は、高炉スラグおよび鉄塩などの添加薬剤が添加されておらず、混練もされていない。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
[結果]
上述の評価方法による実施例1〜4および比較例1〜8の評価結果を表3および表4に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
比較例1は全く固化せず、比較例2は十分に固化しなかった。また、比較例1では、鉛およびフッ素の溶出量が溶出基準値を超えていた。比較例2では、鉛の溶出量は溶出基準値以下であったが、フッ素の溶出量は溶出基準値を超えていた。比較例3は、十分固化したが、鉛および六価クロムの溶出量が溶出基準値を超えていた。比較例4は、十分固化したが、六価クロムの溶出量が溶出基準値を超えていた。一方、実施例1および2は、十分固化し、成分の溶出量もすべて溶出基準値よりも小さかった。これより、実施例1および2は、セメントを使用せずとも十分に固化し、セメントを使用する場合に比べて成分の溶出量を少なくできることがわかった。また、実施例2のフッ素の溶出量が実施例1のフッ素の溶出量よりも小さいことから、固形廃棄物にリン液をさらに添加することによってフッ素の溶出量を減少させることができることがわかった。
【0039】
比較例5は全く固化せず、比較例6は十分に固化しなかった。また、比較例5および6では、鉛およびフッ素の溶出量が溶出基準値を超えていた。比較例7は、十分固化したが、鉛、六価クロムおよびフッ素の溶出量が溶出基準値を超えていた。比較例8は、十分固化したが、六価クロムの溶出量が溶出基準値を超えていた。一方、実施例3および4は、十分固化し、成分の溶出量もすべて溶出基準値よりも小さかった。これより、実施例3および4は、セメントを使用せずとも十分に固化し、セメントを使用する場合に比べて成分の溶出量を少なくできることがわかった。また、実施例4のフッ素の溶出量が実施例3のフッ素の溶出量よりも小さいことから、固形廃棄物に硫酸アルミニウム液をさらに添加することによってフッ素の溶出量をさらに減少させることができることがわかった。