特許第5874731号(P5874731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5874731太陽熱集熱管用ガラス、太陽熱集熱管用ガラス管、および太陽熱集熱管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874731
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】太陽熱集熱管用ガラス、太陽熱集熱管用ガラス管、および太陽熱集熱管
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20160218BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20160218BHJP
   F24J 2/24 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C03C3/091
   C03C3/093
   F24J2/24 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-535945(P2013-535945)
(86)(22)【出願日】2012年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2012051058
(87)【国際公開番号】WO2013046732
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2014年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-218551(P2011-218551)
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 優作
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 誠
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−059037(JP,A)
【文献】 特開2005−020225(JP,A)
【文献】 特開平02−140556(JP,A)
【文献】 特表2011−522770(JP,A)
【文献】 特開2011−042565(JP,A)
【文献】 特開平08−067529(JP,A)
【文献】 特開2004−251612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準の質量%表示で、SiOを65〜80%、Alを3〜10%、Bを12〜18%、LiOを0〜3%、NaOを1〜8%、KOを1〜8%、CaOを0〜3%、MgOを0〜3%、BaOを0〜3%、SrOを0〜3%、ZnOを0〜3%、ZrOを0〜3%、SnOを0〜1%、Sbを0〜3%およびFeを0〜0.06%含有し、前記LiO、NaOおよびKOの合計含有率が5〜10%であり、かつFを0〜2質量%含有することを特徴とする太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項2】
AlおよびKOの合計含有率が6.5質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項3】
CaO、MgO、BaOおよびSrOの合計含有率が0〜1質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項4】
0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300が、45〜58(×10−7/℃)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項5】
ガラス転移点Tgと0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300との比Tg/α0/300が、9.5〜11.5(×10)であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項6】
肉厚3mmで測定される900〜1200nmの波長域の光の透過率平均が91%以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項7】
Fe2+の酸化物基準の含有率が0.006質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項8】
JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するアルカリ金属元素の処理液中の濃度が、2ppm未満であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項9】
JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するSi元素の処理液中の濃度がが、2ppm未満であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項10】
失透消失温度におけるガラスの粘度ηがlogη(単位:Pa・s)>5であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の太陽熱集熱管用ガラスからなることを特徴とする太陽熱集熱管用ガラス管。
【請求項12】
外径が60mm以上であることを特徴とする請求項11記載の太陽熱集熱管用ガラス管。
【請求項13】
請求項11または12記載の太陽熱集熱管用ガラス管を具備することを特徴とする太陽熱集熱管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱管用ガラス、並びにそのようなガラスを用いた太陽熱集熱管用ガラス管および太陽熱集熱管に関する。
【背景技術】
【0002】
トラフ型と称する太陽熱発電設備が知られている。このトラフ型太陽熱発電設備においては、熱媒を通す金属(ステンレス鋼)からなる内管と、ガラスからなる外管の2重構造の集熱管が使用されている。内管と外管の間は、輻射熱による熱の損失を抑えるため、その端部を封止することによって真空に保たれており、その端部の封止には、ガラス−金属接合が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような集熱管の外管を構成するガラス材料には、太陽光を効率良く透過させる高い光透過性とともに、高い耐候性が要求される。また、上述した内管と外管間の封止性に優れることも重要である。従来、内管と外管間の封止に用いられているガラス−金属接合の金属は、コバール合金(Fe−Ni−Co系合金)であり、封止性を高めるためには、ガラスの熱膨張係数をコバール合金に近付ける必要がある。さらに、生産性に優れ、安価に製造できることも要求される。ここで「コバール」とは、Fe−Ni−Co系合金を指すWestinghouse Ele. Corp.社の商標名であり、本明細書においては、東芝社製KOV(商品名)など同等の他社製品を包含する意味で用いる。
【0004】
生産性に優れるガラス管の製造方法として、ダンナー法が知られている。この方法は、溶融させた硝材を円筒スリーブに巻き付け、ブローエアーを挿入しながら引いて管を形成するもので、従来、比較的口径の小さい蛍光管やLCDテレビのバックライト等の製造に使用されてきた。このようなダンナー法を上記集熱管の外管の製造に使用することができれば、生産性の向上、製造コストの低減が期待できる。
【0005】
しかしながら、集熱管の外管は、口径が120mmもしくはそれ以上あり、ダンナー法を適用した場合には、失透が発生しやすい。これは、口径が大きくなると、ガラスが円筒スリーブ上に滞在する時間が長くなり、また、管を膨らませるブロー圧も高くなるため、円筒スリーブ先端付近でのガラスの温度が低くなることによる。このため、ダンナー法を適用するには、このような失透の問題を解決する必要がある。
【0006】
ちなみに、従来は、溶融させたガラスを収容したタンクから環状に下に向けて引き出すダウンドロー法が、ダンナー法より成形温度が高く、失透の影響を受けにくいことから、集熱管の外管の製造に使用されている。しかしながら、ダウンドロー法は生産性の点でダンナー法より劣り、したがって製造コストも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,562,655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生産性に優れるダンナー法を適用して管成形でき、かつ光透過性、耐候性、封止性等の太陽熱集熱管に要求される特性を備えた太陽熱集熱管用ガラス、並びにそのようなガラスを用いた太陽熱集熱管用ガラス管および太陽熱集熱管の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化物基準の質量%表示で、SiOを65〜80%、Alを3〜10%、Bを12〜18%、LiOを0〜3%、NaOを1〜8%、KOを1〜8%、CaOを0〜3%、MgOを0〜3%、BaOを0〜3%、SrOを0〜3%、ZnOを0〜3%、ZrOを0〜3%、SnOを0〜1%、Sbを0〜3%およびFeを0〜0.06%含有し、前記LiO、NaOおよびKOの合計含有率が5〜10%であり、かつFを0〜2質量%含有することを特徴とする太陽熱集熱管用ガラス(以下、本発明の太陽熱集熱管用ガラスということがある)を提供する。
【0010】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、AlおよびKOの合計含有率が6.5質量%以上であるものを提供する。
【0011】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、CaO、MgO、BaOおよびSrOの合計含有率が0〜1質量%であるものを提供する。
【0012】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300が、45〜58(×10−7/℃)であるものを提供する。
【0013】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、ガラス転移点Tgと0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300との比Tg/α0/300が、9.5〜11.5(×10)であるものを提供する。
【0014】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、肉厚3mmで測定される900〜1200nmの波長域の光の透過率平均が91%以上であるものを提供する。
【0015】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、Fe2+の酸化物基準の含有率が0.006質量%以下であるものを提供する。
【0016】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するアルカリ金属元素の処理液中の濃度が、2ppm未満であるものを提供する。
【0017】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するSi元素の処理液中の濃度が、2ppm未満であるものを提供する。
【0018】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスであって、失透消失温度におけるガラスの粘度ηがlogη(単位:Pa・s)>5であるものを提供する。
【0019】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスからなる太陽熱集熱管用ガラス管(本発明の太陽熱集熱管用ガラス管ということがある)を提供する。
【0020】
本発明の太陽熱集熱管用ガラス管であって、ダンナー法により製造されたものを提供する。
【0021】
本発明の太陽熱集熱管用ガラス管であって、外径が60mm以上であるものを提供する。
【0022】
本発明の太陽熱集熱管用ガラス管を具備する太陽熱集熱管(本発明の太陽熱集熱管ということがある)を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生産性に優れるダンナー法を適用して管形成でき、しかも光透過性、耐候性、封止性(金属との接合性)等の太陽熱集熱管用途に要求される諸特性を十分に備えた太陽熱集熱管用ガラス、並びにそのようなガラスを用いた太陽熱集熱管用ガラス管および太陽熱集熱管が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
まず、本発明の太陽熱集熱管用ガラスの組成について説明する。なお、ガラス組成の説明は、F成分以外は酸化物基準の質量%表示含有量を用いて行う。
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、SiO、Al、B、NaOおよびKOを必須成分として含有するものである。
【0026】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスの必須成分であるSiOは、ガラスの網目形成成分、つまり骨格を構成する成分である。含有量が65%未満ではガラスの化学的耐久性が低下する。化学的耐久性の低下は、ウエザリング、ヤケ等を発生させ、光透過率を低下させる要因となる。また、太陽熱集熱管用ガラス管では、通常、太陽光を効率よく透過させるため、表面に反射防止膜が形成されるが、ウエザリング、ヤケ等の発生によって反射防止膜が劣化する。したがって、65%以上含有させる。好ましくは68%以上であり、より好ましくは70%以上である。また、含有量が80%超ではガラスの粘性が増大し溶融性、加工性が低下する。したがって、含有量は80%以下とする。好ましくは78%以下であり、より好ましくは75%以下である。
【0027】
Alは、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分である。含有量が3%未満では分相が発生し成形性に問題が生じるとともに、ガラスの化学的耐久性が低下する。したがって、3%以上含有させる。好ましくは4%以上であり、より好ましくは4.5%以上である。また、含有量が10%超では脈理が発生するなど、溶融性に問題が生じる。したがって、含有量は10%以下とする。好ましくは8%以下であり、より好ましくは7%以下である。
【0028】
は、ガラスの溶融性を向上させるとともに、粘度を調整する作用を有する成分である。含有量が12%未満では溶融性が低下するとともに、ガラス転移点が上昇し、コバール合金との接合性(封止性)が低下する。また、ガラスの溶融温度が高くなり、ガラス中にFe成分を含有する場合、ガラスの光透過率を低下させるFe2+の含有量を多くする原因となる。したがって、12%以上含有させる。好ましくは13%以上であり、より好ましくは14%以上である。また、含有量が18%超では均質なガラスが得られにくくなり、ガラスの化学的耐久性が低下する。したがって、含有量は18%以下とする。好ましくは17%以下であり、より好ましくは16%以下である。
【0029】
NaOおよびKOは、いずれも融剤として作用し、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、熱膨張係数を調整するために必要な成分でもある。この目的のためには、NaOおよびKOのいずれか一方でも、含有量が1%未満であると溶融性が低下し、また熱膨張係数も低下する。したがって、それぞれ1%以上含有させる。好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上である。また、NaOおよびKOのいずれか一方でも、含有量が8%超では熱膨張係数が大きくなりすぎるとともに化学的耐久性が低下する。したがって、それぞれの含有量を8以下とする。好ましくは7%以下であり、より好ましくは6.5%以下である。
【0030】
但し、NaOおよびKOと、後述する任意成分のLiOとの合計含有量が5%未満であると溶融性が低下し、また熱膨張係数も低下する。したがって、NaO、KOおよびLiOを合計量で5%以上含有させる。好ましくは6%以上であり、より好ましくは7%以上である。また、NaO、KOおよびLiOの合計含有量が10%超では熱膨張係数が大きくなりすぎるとともに化学的耐久性が低下する。したがって、NaO、KOおよびLiOの含有量を合計量で10%以下とする。好ましくは9.5%以下であり、より好ましくは9%以下である。
【0031】
AlおよびKOは、失透消失温度を低減させ、ダンナー法におけるガラス管の成形において、失透が発生するリスクを低減させる成分でもある。AlおよびKOの含有量が合計量で6.5%未満であると失透消失温度が高くなり、ガラス管の成形において失透発生が懸念される。したがって、AlおよびKOは合計量で6.5%以上含有させることが好ましい。より好ましくは7.0%以上であり、より一層好ましくは7.3%以上であり、特に好ましくは7.5%以上である。また、AlおよびKOの含有量が合計量で12%を超えるとガラスのバッチコストが上昇し、またガラスを溶解するのが困難となる。したがって、AlおよびKOの含有量は合計量で12%以下とすることが好ましい。より好ましくは11%未満であり、特に好ましくは10.5%未満である。
【0032】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスには、必要に応じて、LiO、CaO、MgO、BaO、SrO、ZnO、ZrO、SnO、Sb、Fe、TiO等を含有させることができる。
【0033】
Feは、含有量が0.06%超では光透過率が低下するおそれがある。したがって、含有量は0.06%以下とする。好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.04%以下である。また、含有量は上記理由により0%、つまり含有しないことが好ましいが、0.005%未満であるとガラス原料が高価となりガラスのコストが大幅に高くなる。したがって、0.005%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.007%以上であり、特に好ましくは0.01%以上である。
【0034】
LiOを含有させることにより、ガラスの粘性を向上させることができる。含有量が3%超では失透が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0035】
CaOを含有させることにより、高温における粘度を低下させ、溶融性を向上させることができる。また、ヤング率を向上させることもできる。含有量が3%超では分相が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%、すなわち実質的に含有させないことが好ましい。
【0036】
BaOを含有させることにより、高温における粘度を低下させ、溶融性を向上させることができる。また、ヤング率を向上させることもできる。含有量が3%超では分相が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%、すなわち実質的に含有させないことが好ましい。
【0037】
MgOを含有させることにより、高温における粘度を低下させ、溶融性を向上させることができる。また、ヤング率を向上させることもできる。含有量が3%超では分相が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%、すなわち実質的に含有させないことが好ましい。
【0038】
SrOを含有させることにより、高温における粘度を低下させ、溶融性を向上させることができる。また、ヤング率を向上させることもできる。含有量が3%超では分相が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%、すなわち実質的に含有させないことが好ましい。
【0039】
但し、CaO、BaO、MgOおよびSrOの合計含有量が1%超では、ガラスの分相を促進してしまい、耐候性が悪くなるおそれがある。したがって、CaO、BaO、MgOおよびSrOの含有量を合計量で1%以下とすることが好ましい。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0%、すなわち実質的に含有させないことが好ましい。
【0040】
ZnOを含有させることにより、ガラスの化学的耐久性を向上させることができる。含有量が3%超では失透が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0041】
ZrOを含有させることにより、ガラスの化学的耐久性を向上させることができる。含有量が3%超では失透が生じやすくなる。したがって、含有量は3%以下とする。好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下である。
【0042】
SnOを有させることにより、ガラスのソラリゼーションを抑制し、またガラス中の泡を抑制することができる。含有量が1%超では失透が生じやすくなる。したがって、含有量は1%以下とする。好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.2%以下である。SnOは、酸化剤としての作用も有する。
【0043】
Fを含有させることにより、軟化点を低下させ、溶融性を向上させることができる。含有量が2%超では分相が生じやすくなる。したがって、含有量は2%以下とする。好ましくは1%以下である。
【0044】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、溶融にあたって一般に使用されている清澄剤を使用して溶融することができる。清澄剤としては、例えばSb、As、NaCl、NaSO、NaNO、SnO等が挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。
【0045】
なお、Sbは、0.1%含有させることでその効果が得られ、さらに、含有量が3%超では失透が生じやすくなる。したがって、Sbを使用する場合、含有量は0.1%以上3%以下とすることが好ましく、0.1%以上2%以下とすることがより好ましい。特に好ましくは0.1%以上1%以下である。Sbは、清澄剤として作用する他、酸化剤としての作用も有する。
【0046】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300が、45〜58(×10−7/℃)であることが好ましい。より好ましくは47〜56(×10−7/℃)であり、特に好ましくは48〜55(×10−7/℃)である。また、本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、熱膨張比、すなわち、ガラス転移点Tgと0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300との比であるTg/α0/300が、9.5〜11.5(×10)であることが好ましい。より好ましくは9.8〜11.3(×10)であり、特に好ましくは10〜11(×10)である。
【0047】
ガラス転移点Tgと0〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α0/300との比であるTg/α0/300を上記範囲とすることにより、太陽熱集熱管の封止に一般に使用されているコバール合金との良好な接続が得られ、太陽熱集熱管の封止性を高めることができる。
【0048】
すなわち、コバール合金の50〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数α50/300は約51×10−7/℃であり、ガラスとコバール合金との線膨張係数差が大きくなると、ガラス−金属接合部からのリークやクラックの発生原因となり、太陽熱集熱管の寿命が短くなる。平均線膨張係数α0/300を上記範囲とすることで、良好なガラス−コバール合金接合が可能となる。
【0049】
また、コバール合金の屈曲点は約430℃程度である。上記ガラスのガラス転移点Tgがこのコバール合金の屈曲点より大きいと、封止の際にガラスに加わる応力が大きくなる。この応力を緩和するためには、ガラスのガラス転移点Tgと線膨張係数αを調整する必要がある。ガラスの熱膨張比Tg/α0/300を、上記範囲とすることにより、封止時にガラスに加わる残留応力を低減でき、良好なガラス−コバール合金接合が可能となる。
【0050】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、また、肉厚3mmで測定される900〜1200nmの波長域の光の透過率平均が91%以上であることが好ましい。より好ましくは92%以上であり、特に好ましくは92.2%以上である。太陽光の強度は特に900〜1200nmの波長域で強く、したがってこの波長域の光透過率を大きくすることによって、太陽熱の集熱効率を高めることができる。
【0051】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、また、ガラス中のFe2+の含有率が0.006質量%以下であることが好ましい。すなわち、本発明の太陽熱集熱管用ガラスに含まれるFeイオンは、その価数状態によってはガラスに黄または緑の色を与える。Fe2+の場合にはガラスは緑〜青緑色を呈し、Fe3+の場合には黄色を呈する。ガラス溶融温度が高いほど、Fe原子の全量に対するFe2+の存在率は高くなるため、太陽光波長域における透過率は低下する。Fe2+の含有率を、0.006質量%以下とすることで、太陽光波長域の光透過率を大きくすることができ、太陽熱の集熱効率を高めることができる。Fe2+の含有率は、より好ましくは0.004質量%以下であり、特に好ましくは0.003質量%以下である。なお、ガラスにおけるFe2+の含有率は、ガラス中のFe全量に対するFe2+の存在率を測定し、ガラス中の酸化物基準のFe含有量とFe全量に対するFe2+の存在率とを乗じることで求めることができる。
【0052】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、また、JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するアルカリ金属元素の処理液中の濃度が、2ppm未満であることが好ましい。より好ましくは1ppm未満である。すなわち、太陽熱集熱管は、数十年という長期間に亘って野外に設置されるため、高い耐候性が求められる。特に、アルカリ成分がガラス表面に析出するとウエザリングの原因となり光透過率が低下する。JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するアルカリ金属元素の処理液中の濃度が2ppm未満になるようにすることによって、アルカリ成分のガラス表面への析出量を低減し、光透過率の低下を抑制することができる。
【0053】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、また、JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するSi元素の処理液中の濃度が、2ppm未満であることが好ましい。より好ましくは1ppm未満である。すなわち、太陽熱集熱管が長期間に亘って野外に設置されることによって生ずる光透過率の低下は、前述したようにアルカリ成分に起因するものであるが、これらはガラスのネットワークが強固であれば抑制されるものである。SiOはガラスのネットワークを構成する成分であり、Si元素の溶出はネットワークが弱くなることを示しており、アルカリ成分の溶出のしやすさにつながる。JIS R3502に基づく溶出処理によって溶出するSi元素の処理液中の濃度を2ppm未満とすることによって、Si元素のガラス表面への析出量を低減し、これによりアルカリ成分の溶出を抑制することで、光透過率の低下を抑制することができる。
【0054】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、また、失透消失温度におけるガラス粘度ηがlogη>5であることが好ましい。これによって、ダンナー法を適用して、例えば外径60mm以上という大径のガラス管を成形しても、失透の発生を防止することができる。すなわち、ダンナー法によるガラス管の成形では、ガラスのスリーブ上の滞在時間が長いため、失透の問題がダウンドロー法より顕在化しやすい。特に、外径が60mm以上であるガラス管を製造する場合、失透が発生しやすい。この失透は特にスリーブ先端で発生しやすく、その場合、管の外形不良やスジの原因となる。具体的には、ダンナー法ではスリーブ先端部分のガラス粘度がlogη=5程度となるように制御されるため、ガラスの失透消失温度におけるガラスの粘度がlogη>5であると、そのようなスリーブ先端での失透の発生を抑制することができる。失透消失温度におけるガラスの粘度ηがlogη>5.5であるとより好ましい。なお、失透消失温度は、ここでは、8mm×8mm×8mmに加工したガラスサンプルを白金箔上に置き、電気炉内等で所定温度雰囲気に3時間保持した際、ガラスの白金箔との界面に失透が観察されない最低温度をいう。また、失透消失温度におけるガラスの粘度ηは、ガラスの粘性曲線より求めることができる。
【0055】
本発明の太陽熱集熱管用ガラス管は、上記太陽熱集熱管用ガラスから構成される。本発明の太陽熱集熱管用ガラス管は、ダンナー法で成形されることが好ましい。ダンナー法で成形することによって生産性を高め、製造コストを低減できる。また、ダンナー法で成形することによって、真円度の高いガラス管を製造することができる。
【0056】
なお、本発明の太陽熱集熱管用ガラスの製造方法は特に限定されず、例えば、種々の原料を得られるガラスが上記組成範囲となるように調合し、約1500〜1600℃で加熱溶融した後、脱泡、撹拌等により均質化し、所望の形状に成形すればよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記記載内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、例1〜23および例34〜39は実施例であり、例24〜33は比較例である。
【0059】
(例1〜33)
ガラスの組成比が表1〜表3に示すような組成となるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択し秤量混合した。次いで、この原料混合物を白金製るつぼに入れ、1500〜1600℃で4時間加熱溶融した。その後、十分に撹拌・清澄したガラスを矩形枠内に流し込み、徐冷して、ガラスブロックを得た。このガラスブロックから以下に示す評価項目に合わせて所望の形状に加工した測定用サンプルを作製した。なお、清澄剤には、酸化清澄の場合はSbを使用した。また、NaClを使用した場合は、弱還元性となるので、酸化剤としてNaNOおよび/またはKNOを併用した。
【0060】
得られた測定用サンプルについて、以下に示す方法で各種評価を行った。結果を表4〜6に示す。なお、表4〜6中の「−」は、測定評価等が未実施であったことを意味する。
【0061】
[平均線膨張係数α]
ガラスサンプルを直径5mm、長さ100mmのガラス丸棒に加工し、石英ガラス製縦形膨張計を用いて、0〜300℃におけるガラス試料と石英ガラスの長さの伸び差をダイヤルゲージで読み取り、石英ガラスの膨張係数を補正した結果を0〜300℃における平均線膨張係数α0/300とした。
[ガラス転移点Tg]
ガラスサンプルを4mm×4mm×20mmに加工し、熱機械分析計((株)リガク製、TMA8310型)を用いてガラス転移点Tgを測定した。
[熱膨張比Tg/α]
上記で測定した平均線膨張係数αおよびガラス転移点Tgから、熱膨張比Tg/αを算出した。
[溶融温度Tm]
ガラス粘度ηがlogη=1.5となる温度を測定し、泡抜けの起こる溶融温度Tmとした。粘度の測定には回転粘度計(ハーケ社製)を用いた。
[流動温度(成形温度)]
回転粘度計(ハーケ社製)で求めた高温のガラス粘性カーブと後述する軟化点からlogη=5.0における温度を算出して流動温度とした。この流動温度は、ダンナー法による成形性評価の指標となるものである。
[軟化点Ts]
ガラス軟化点Tsは、JIS R3103−1に準拠して測定した。直径0.65mm、長さ235mmの円形断面のガラス繊維を測定炉内に吊り下げて5℃/分で昇温したとき、自重で1mm/分の速度でのびる温度であり、ガラス粘度ηがlogη=6.65に対応する。この軟化点Tsは、ダンナー法による成形性評価の指標となるものである。
[失透消失温度、失透消失温度におけるガラス粘度]
8mm×8mm×8mmのガラスサンプルを白金箔上に置き、種々の温度で3時間保持した状態でガラスの白金箔との界面を顕微鏡(倍率:200倍)で観察して、失透が観察されない最低温度を失透消失温度とした。また、回転粘度計(ハーケ社製)で求めた高温のガラス粘性曲線から、失透消失温度におけるガラス粘度を算出した。
[失透性]
上記失透消失温度および失透消失温度におけるガラス粘度の測定結果から、下記の基準により失透性を評価した。
A:失透消失温度におけるガラス粘度がlogη>5.0である
B:失透消失温度におけるガラス粘度がlogη≦5.0である
[アルカリ溶出量]
JIS R3502に基づく溶出処理を行い、処理液中に溶出したアルカリ金属元素(Li、Na、K)の量を原子吸光分析装置((株)島津製作所製、AA−6650型)を用いて測定した。
[Si溶出量]
上記処理液中に溶出した処理液中のSi量をICP測定装置((株)島津製作所製、ICPS−7500)を用いて測定した。
[光透過率]
両面光学研磨加工を施した厚さ3mmの板状のサンプルについて、900〜1200mmの波長域における平均の光透過率を、分光光度計(日本分光(株)製、U−4100)を用いて測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
表4〜表6から明らかなように、例1〜23のガラスは、いずれもその0〜300℃における平均線膨張係数α0/300がコバール合金の平均線膨張係数に近似しており、ガラス転移点Tg以下での膨張・収縮挙動がコバール合金と類似している。これは、例1〜23のガラスが、コバール合金との良好かつ信頼性の高い接合が得られることを示している。
【0069】
また、ガラス溶融温度Tmが高いと、ガラスを溶融する炉材の侵食が大きくなる。また、ガラス溶融温度Tmが高いとFe2+の含有率が多くなり、結果的に太陽光波長域の光透過率が下がることが懸念される。例1〜23のガラスは、溶融温度がいずれも1500℃未満と低く、したがって、ガラスを溶融する炉材の侵食が少なく、また、Fe2+の含有率も抑えられ、光透過率の低下が防止される。
【0070】
また、例1〜23のガラスは、いずれも失透消失温度におけるガラスの粘度がlogη>5となっている。これは、これらのガラスのダンナー法のスリーブ先端部分のガラスの粘度に対応するlogη=5となる流動温度が、失透消失温度より高いことを意味する。そのため、ダンナー法を適用しても失透のないガラス管を製造することができる。
【0071】
また、例1〜23のガラスは、アルカリ溶出量およびSi溶出量がいずれも2ppm未満と少ない。これは例1〜23のガラスが耐候性に優れていることを示している。
【0072】
このように例1〜23のガラスは、ダンナー法を適用しても失透のないガラス管の製造が可能であり、しかも、コバール合金に近似した膨張挙動を示し、耐候性、光透過性、特に太陽光波長域での透過性に優れている。したがって、太陽熱集熱管の用途に好適である。
【0073】
(例34〜39)
次に、ガラス中のFe2+の含有率と光透過率(波長900〜1200nmの平均透過率)との関係を調べた。以下に示す同一組成のガラスを異なる条件(溶融温度、溶融時間)で溶融した際のガラス(例34〜39)について、Fe2+の含有率と光透過率との関係を表7に示す。例34〜36で用いたガラス組成は、酸化物基準の質量%表示で、SiO:70.6%、Al:5.0%、B:15.5%、NaO:5.8%、KO:3.0%、Fe:0.015%からなる。また、例37〜39で用いたガラス組成は、酸化物基準の質量%表示で、SiO:70.6%、Al:5.0%、B:15.5%、NaO:5.8%、KO:3.0%、Fe:0.038%からなる。なお、ガラス中のFe2+の含有率は、以下の方法で求めた。また、光透過率は、前述の測定方法を用いて測定した。結果を表7に示す。
【0074】
[Fe2+含有率]
まず、ガラス中のFe2+を以下の方法で定量する。すなわち、ガラスサンプルを粉末に加工し、この粉末を湿式法で溶解し、この溶液にFe2+の選択的発色試薬であるビピリジルを添加、pHを調整後の吸光度から、予め作成した検量線を用いて定容液中のFe2+を定量する。また、ガラス中のFeを以下の方法で定量する。すなわち、ガラスサンプルを粉末に加工し、この粉末を湿式法で溶解し、この溶液中のFe3+を還元剤(塩酸ヒドロキシルアミン)を用いて還元(Fe3+→Fe2+)させた後、この溶液にFe2+の選択的発色試薬であるビピリジルを添加し、溶液中のFeを全てFe2+として発色させる。そして、pHを調整後の吸光度から、予め作成した検量線を用いて定容液中のFeを定量する。これらの定量結果から、Fe2+/Fe(Fe全量に対するFe2+の存在率)を算出する。吸光度は、吸光光度計((株)島津製作所製 UVmini−1240V)を用いて、波長522nmにて測定する。この後、上記Fe2+/Feと湿式法で求めたガラス中のFe含有量(酸化物基準の質量%)とを乗じることで、ガラス中のFe2+の含有率を算出する。
【0075】
【表7】
【0076】
上記の結果から、ガラス中のFe2+の含有率が少ないほど、高い光透過率が得られることがわかる。また、ガラス中のFe2+の含有率を0.006%以下とすることで、一定以上の光透過率が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の太陽熱集熱管用ガラスは、生産性に優れるダンナー法を適用して外径が大きく、かつ太陽熱集熱管に要求される特性を備えたガラス管を製造できるので、このような特性が要求される用途に好適であり、特に、トラフ型の太陽熱集熱管の外管の材料として有用である。