【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(測定装置)
実施例及び比較例における分析には、以下の装置・条件で行った。
透過型電子顕微鏡観察:JEM−1010型(日本電子(株)製)印加電圧100KV
レーザー回折法粒子径測定:SALD−7000型((株)島津製作所製)、試料1gを純水で200倍希釈し測定
比表面積測定:窒素吸着法表面積測定装置モノソーブ機(ユアサアイオニクス(株)製)
重量分析:試料を磁器製ルツボに約2g入れ精秤後、110℃で乾燥後の重量より固形分を算出
X線粉末回折同定:粉末X線回折装置RINT Ultima型((株)リガク製)
元素分析:全自動元素分析装置CHNS/Oアナライザー2400(パーキン・エルマー社製)
【0029】
(実施例1)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水300gを仕込み、サンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)9.3gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、12時間サンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを500rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は9℃であった。これにより、pH7.1、電導度84μS/cm、110℃乾燥時の固形分が4.8質量%の白色スラリーが310g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉の元素分析を行ったところ、炭素10.37質量%、水素1.35質量%、窒素12.05質量%、酸素28.20質量%であった。また、この110℃乾燥粉を1000℃で熱分解させて酸化亜鉛にした後の重量測定を行って、110℃乾燥粉のZnの有効成分量を求めたところ48.03質量%であった。また110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、
図1に示すように、原料のシアヌル酸及び酸化亜鉛に帰属される回折ピークは観察されず、塩基性シアヌル酸亜鉛の回折ピークが観察された。これらの結果より、110℃乾燥粉は、Zn
5(C
3N
3O
3)
2(OH)
3・3H
2Oの塩基性シアヌル酸亜鉛であると決定された。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜200nm、短軸が10〜15nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は103nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが59m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。なお、表1の軸比(長軸/短軸)は、塩基性シアヌル酸亜鉛微粒子20個における平均値である。また、透過型電子顕微鏡観察した写真を
図2に示す。
【0030】
(実施例2)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水300gを仕込み、サンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)9.3gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、8時間サンドグラインダー容器を0℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は16℃であった。これにより、pH7.1、電導度109μS/cm、110℃乾燥時の固形分が4.8質量%の白色スラリーが311g得られた。また、得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜300nm、短軸が10〜20nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は155nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが49m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例3)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水300gを仕込み、サンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを2000rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを2000rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)9.3gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、8時間サンドグラインダー容器を−5℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを2000rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は23℃であった。これにより、pH7.0、電導度120μS/cm、110℃乾燥時の固形分が4.8質量%の白色スラリーが305g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜400nm、短軸が20〜30nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は175nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが32m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。また、透過型電子顕微鏡観察した写真を
図3に示す。
【0032】
(実施例4)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水290gを仕込み、サンドグラインダー容器を20℃の水道水で冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)9.2gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を20℃の水道水で冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)14.5gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は3.2質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、10時間サンドグラインダー容器を20℃の水道水で冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は40℃であった。これにより、pH6.8、電導度148μS/cm、110℃乾燥時の固形分が7.5質量%の白色スラリーが300g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜300nm、短軸が20〜30nmであり、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50が188nm、70℃乾燥後の比表面積Swが26m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。
【0033】
(実施例5)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水290gを仕込み、撹拌ディスクを1500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いて撹拌ディスクを1500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)9.3gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、撹拌ディスクを1500rpmで回して5時間分散した。この時のスラリー温度は50℃であった。これにより、pH8.2、電導度176μS/cm、110℃乾燥時の固形分が4.8質量%の白色スラリーが300g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜200nm、短軸が20〜40nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は623nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが25m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例6)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水298gを仕込み、サンドグラインダー容器を10℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを2000rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)4.3gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を10℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、塩基性炭酸亜鉛粉末(酸化亜鉛成分74.8質量% 堺化学(株)製)9.0gを投入した。酸化亜鉛換算量/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は1.4質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、8時間サンドグラインダー容器を10℃のチラーで冷却しながら撹拌ディスクを1500rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は30℃であった。これにより、pH6.3、電導度556μS/cm、粘度198mPa・s、110℃乾燥時の固形分が3.5質量%の白色スラリーが310g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜300nm、短軸が20〜40nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は303nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが30m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例7)
純水24kgと酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)1.88kgを容積200Lの混合用タンクに投入し、ディスパーで攪拌混合後、酸化亜鉛換算濃度が7.69質量%のスラリー26kgを調製した。次に有効容積10.66Lで内壁がウレタン樹脂の横型ビーズミル(アシザワファインテック(株)製パールミルPM25TEX−H)にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ66kgを仕込んだ。チラーを着けた循環タンクに純水144kgを仕込んだ後、パールミルのディスクを周速10m/秒で回し、供給速度5kg/分で純水をパールミルに供給しながら純水を循環させた。循環開始後にシアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)1.19kgを投入した。シアヌル酸粉末を投入後、循環スラリーの温度が32℃になるようにチラーで調節した後、酸化亜鉛換算濃度が7.69質量%の酸化亜鉛スラリー24.5kgを5分割して10分かけて添加した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は0.7質量%であった。酸化亜鉛スラリーの添加後もパールミルのディスクを周速10m/秒で回しながら供給速度5kg/分でスラリーを15時間循環し、分散した。またこの間も循環スラリー温度は32℃になるようにチラーで調節した。これにより、pH6.8、電導度67μS/cm、粘度51mPa・s、110℃乾燥時の固形分が1.8質量%の白色スラリーが166kg得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜600、短軸が25〜50nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は310nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが51m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。また、透過型電子顕微鏡観察した写真を
図4に示す。
なお、パールミルを用いるかわりに、有効容積10.66Lで内壁がウレタン樹脂の横型ビーズミル(アシザワファインテック(株)製システムゼータLMZ25)を用い、実施例7と同様の操作を行ったところ、実施例7と同様の塩基性シアヌル酸亜鉛微粒子が得られた。
【0036】
(実施例8)
容積1Lで内壁がウレタン樹脂のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水290gを仕込み、撹拌ディスクを1500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いて撹拌ディスクを1500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)11.2gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は3.0、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、撹拌ディスクを1500rpmで回して5時間分散した。この時のスラリー温度は23℃であった。これにより、pH7.8、電導度98μS/cm、110℃乾燥時の固形分が5.6質量%の白色スラリーが300g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が100〜300nm、短軸が15〜20nmで、レーザー回折法粒子径測定による平均粒子径D
50は152nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが40m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0037】
(比較例1)
純水900gを仕込んだ1リットルのビーカーをマグネットスターラー付のホットプレート上に置き、攪拌子で攪拌しながらシアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)18.9gを投入した。続いて酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)30.0gを投入した後、混合スラリーを攪拌子で攪拌しながらホットプレートで70℃に保持して8時間攪拌した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.1質量%であった。得られたスラリーを70℃で乾燥し、得られた粉末についてX線粉末回折分析を行ったところ、酸化亜鉛とシアヌル酸の回折ピークのみ検出され、塩基性シアヌル酸亜鉛の回折ピークは検出されなかった。
【0038】
(比較例2)
純水900gを仕込んだ1リットルのビーカーをマグネットスターラー付のホットプレート上に置き、攪拌子で攪拌しながらシアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)18.9gを投入した。続いて酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)30.0gを投入した後、混合スラリーを攪拌子で攪拌しながらホットプレートで煮沸するまで加熱した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.1質量%であった。100℃煮沸下で8時間攪拌した後、pH7.1、電導度46μS/cm、粘度500mPa・s、110℃で乾燥した時の固形分が6.8質量%の白色スラリーが716g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が2000〜20000nm、短軸が200〜500nmで、レーザー回折法による平均粒子径D
50は2620nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが5m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。また、透過型電子顕微鏡観察した写真を
図5に示す。
【0039】
(比較例3)
容積1Lでウレタン製のバッチ式サンドグラインダー容器にφ1mmの安定化ジルコニア製粉砕ビーズ1140gと純水300gを仕込み、サンドグラインダー容器を温浴で加熱しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)5.9gを投入した。続いてサンドグラインダー容器を温浴で加熱しながら撹拌ディスクを1500rpmで回し、酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)9.3gを投入した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は2.0質量%であった。酸化亜鉛粉末を投入後、5時間サンドグラインダー容器を温浴で加熱しながら撹拌ディスクを1500rpmで回して分散した。この時のスラリー温度は60℃であった。これにより、pH7.7、電導度220μS/cm、110℃で乾燥した時の固形分が4.8質量%の白色スラリーが300g得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が60〜120nm、短軸が20〜60nmであり、レーザー回折法による平均粒子径D
50は1500nm、70℃乾燥後の比表面積Swが27m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0040】
(比較例4)
500mLのポリエチレン製広口ビンに純水300g、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)4.3gおよび酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)6.7gを投入し、直径50mmのディスパー型攪拌羽根を用いて回転数3000rpmで12時間分散した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は1.4質量%であった。この時のスラリー温度は35℃であった。これにより、pH7.9、電導度35μS/cm、110℃で乾燥した時の固形分が3.5質量%の白色スラリーが得られた。得られた白色スラリーの110℃乾燥粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。得られた白色スラリーに含まれる微粒子は、透過型電子顕微鏡観察では長軸が1000〜1500nm、短軸が50〜100nmの凝集粒子で、レーザー回折法による平均粒子径D
50は2280nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swが44m
2/gの塩基性シアヌル酸亜鉛であった。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例5)
SUS製粉砕カッター羽根が装着されている小型粉砕機(Wander Blender WB−1 大阪ケミカル(株)製)に純水42g、シアヌル酸粉末(日産化学工業(株)製)7.1gおよび酸化亜鉛粉末(堺化学(株)製2種酸化亜鉛)11.0gを仕込み、カッター羽根を25000rpmで1分間回して粉砕した。酸化亜鉛/シアヌル酸のモル比は2.5、水に対するシアヌル酸濃度は16.9質量%であった。この操作を5回繰り返して、湿り気のある白色粉が得られた。操作直後のこの白色粉の温度は35℃であった。この白色粉についてX線粉末回折分析を行ったところ、実施例1と同様の回折パターンであった。この白色粉を純水に分散した後、透過型電子顕微鏡観察すると長軸が1000〜2000nm、短軸が60〜200nmで、レーザー回折法による平均粒子径D
50は20000nmであり、70℃乾燥後の比表面積Swは16m
2/gであった。結果を表1に示す。
【0042】
表1に示すように、酸化亜鉛や塩基性炭酸亜鉛とシアヌル酸と水とを、水に対してシアヌル酸濃度が0.1〜10.0質量%になるように配合した混合スラリーを、5〜55℃の温度範囲で分散メディアを用いた湿式分散を行った実施例1〜8では、レーザー回折法により測定した平均粒子径D
50が80〜900nmで比表面積が20〜100m
2/gである微細な塩基性シアヌル酸亜鉛が得られた。一方、湿式分散の温度が5〜55℃の範囲外である比較例1〜3や、分散メディアによる湿式分散ではなく剪断による湿式分散とした比較例4〜5では、レーザー回折法により測定した平均粒子径D
50が80〜900nmで比表面積が20〜100m
2/gである微細な塩基性シアヌル酸亜鉛を得ることはできなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
(応用実施例1)
実施例7で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛の110℃乾燥粉40mgおよびポリ乳酸樹脂(NW3001D、数平均分子量72,000、融点164℃、ネーチャーワークス製)4.0gを185℃に加熱した混練機(LABO PLASTOMILL 東洋精機(株))に入れ5分間、50rpmで混練した。冷却後、混練した樹脂を取り出し、テフロン(登録商標)シートと真鍮板で挟み、上部185℃、下部185℃に加熱したホットプレス機に入れ、フィルムの厚さが0.4mmになるように0.5kgfで加圧してフィルムを作成した。このフィルム状サンプルを小片に切り取り、100℃/分で200℃まで昇温してそのまま5分間保持し、その後、5℃/分で冷却するDSC測定(セイコー電子(株)製DSC−200)を行った。冷却時に観測されるポリ乳酸の結晶化に由来する発熱ピークの頂点から結晶化温度Tcを測定した。結果を表2に示す。また、得られたフィルムの可視光透過率を色差計(東京電色 TC−1800MK型)で求めた結果も表2に示す。
【0045】
(応用比較例1)
実施例7で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛を用いる代わりに、比較例2で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛を用いて、応用実施例1と同様の操作を行った。
【0046】
(応用比較例2)
塩基性シアヌル酸亜鉛をポリ乳酸樹脂に添加しない以外は、応用実施例1と同様の操作を行った。
【0047】
(応用実施例2)
実施例7で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛の110℃乾燥粉36mgおよびポリプロピレン樹脂(ノバテックPP MA3、数平均分子量111,000、融点165℃、日本ポリケム(株)製)3.6gを185℃に加熱した混練機(LABO PLASTOMILL 東洋精機(株))に入れ5分間、50rpmで混練した。冷却後、混練した樹脂を取り出し、テフロンシートと真鍮板で挟み、上部185℃、下部185℃に加熱したホットプレス機に入れ、フィルムの厚さが0.4mmになるように0.5kgfで加圧してフィルムを作成した。このフィルム状サンプルを小片に切り取り、100℃/分で200℃まで昇温してそのまま5分間保持し、その後、5℃/分で冷却するDSC測定(セイコー電子(株)製DSC−200)を行い、冷却時に観測されるポリプロピレンの結晶化に由来する発熱ピークの頂点から結晶化温度Tcを測定した。結果を表2に示す。また、得られたフィルムの可視光透過率を色差計(東京電色 TC−1800MK型)で求めた結果も表2に示す。
【0048】
(応用比較例3)
実施例7で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛を用いる代わりに、比較例2で得られた塩基性シアヌル酸亜鉛を用いて、応用実施例2と同様の操作を行った。
【0049】
(応用比較例4)
塩基性シアヌル酸亜鉛をポリプロピレン樹脂に添加しない以外は、応用実施例2と同様の操作を行った。
【0050】
この結果、表2に示すように、塩基性シアヌル酸亜鉛を添加することにより、結晶化温度が高くなり、塩基性シアヌル酸亜鉛が樹脂の結晶核剤として使用できることが分かった。また、実施例7の塩基性シアヌル酸亜鉛は、比較例2よりも顕著に小さい粒子であるため、実施例7を用いた応用実施例1や応用実施例2では、比較例2を用いた応用比較例1や応用比較例3よりも、可視光透過率が高かった。
【0051】
【表2】