(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
酸化第二銅は、顔料、塗料、触媒、陶磁器の着色剤や銅めっき液の補給用銅源などに使用されているが、その製造方法は、湿式法と乾式法の二つ大別される。
【0003】
湿式法は、例えば、特許文献1に記載されるように、塩化第二銅や硫酸銅の水溶液に水酸化ナトリウムを反応させて水酸化銅を生成させた後、加熱する方法である。
より詳細には、塩化第二銅を含むプリント基板のエッチング廃液を苛性アルカリで中和し、その中和した銅溶液と苛性アルカリ水溶液とを、温度40〜50℃に保持した水溶液中に同時に滴下混合して、その混合した水溶液のpHを弱酸性から弱アルカリ性の範囲に維持しながら銅の水和物を生成させる。次いでpH12〜13に調製し、70〜80℃の温度に30分間保持した後、水洗、固液分離して酸化第二銅を製造する方法が特許文献1に提案されている。
しかし、不純物として塩化ナトリウム(NaCl)が副生することから、不純物除去のために水洗工程が必要であること、さらには水洗しても完全に除去することは困難である、といった問題を抱えている。
【0004】
また、特許文献2には、硫酸銅水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを30℃以下の温度で反応させて水酸化第二銅を生成し、次に60〜80℃の温度に加熱、熟成して酸化第二銅を形成する製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献1、2に示す湿式法で製造された酸化第二銅粉末は、銅めっき液への溶解性が優れているものが多い。
しかし、この方法で得られた酸化第二銅粉末は、不純物としてNaやSO
4体でのSの残留濃度が高い問題があり、めっき液の硫酸銅水溶液を使用すると、その不純物などに起因するめっき不具合といった問題が生じ易かった。
【0006】
一方、乾式法は、非特許文献1に記載されるように、硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅、水酸化銅などを空気中で、600℃程度で熱分解する方法であり、湿式法に比べて生産性が高く、金属銅を原料とした場合、高純度の酸化第二銅が得られる利点がある。
しかし、乾式法では、その熱分解温度が高いため、得られた酸化第二銅粉末は、焼結の影響でめっき液への溶解速度が極めて遅くなってしまう問題が生じていた。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の酸化第二銅微粉末の製造方法は、熱処理により得られた酸化第二銅粗粉末を粉砕処理する高純度酸化第二銅微粉末
の製造方法であり、酸素含有雰囲気下で一次熱処理して、酸化第二銅粗粉末を得る工程と、得られた酸化第二銅粗粉末を粉砕して一次熱処理酸化第二銅微粉末を得る工程と、その一次熱処理酸化第二銅微粉末を酸素含有雰囲気下で二次熱処理する工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0019】
さらに、このような一次熱処理した酸化第二銅粗粉末を粉砕処理して得られる一次熱処理酸化第二銅微粉末を二次熱処理することで得られた酸化第二銅微粉末は、一次熱処理酸化第二銅微粉末に比べて硫酸銅水溶液への溶解時間が短い特長を有している。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。
[酸化第二銅微粉末の製造方法]
(1)酸化第二銅粗粉末の形成
酸化第二銅粗粉末は、原料とする銅粉を酸素含有雰囲気下で最高温度を350℃〜800℃とした熱処理を行う(銅粉から形成する場合)か、硫酸銅を酸素含有雰囲気下で最高温度を700℃〜1000℃とした熱処理を行う(硫酸銅から形成する場合)ことで形成することができる。
以下、「銅粉から形成する場合」と「硫酸銅から形成する場合」とに分けて詳細に説明する。
【0021】
<銅粉から形成する場合>
銅粉を熱処理する場合、原料の銅粉は、特に限定せず、例えば電解銅粉、アトマイズ銅粉、化学還元銅粉を用いることができる。その銅粉の粒径は、価格や酸化速度の観点から5μm〜100μm以下が好ましい。
【0022】
熱処理における最高温度が350℃未満では酸化に長時間を要したり、異相が混在してしまったりする。
特に、問題となるのが異相であり、異相のうち酸化第一銅は、硫酸銅水溶液であるめっき液に溶解しない。そのため、異相の存在はめっき液の溶解性やめっき液の特性に悪影響を与えると考えられる。
一方、最高温度の上限は、媒体攪拌ミルや気流式ミルでの粉砕性の点から800℃が好ましく、熱処理の最高温度が、800℃を超えると、酸化第二銅粗粉末が焼結し粉砕しにくくなる。なお、雰囲気は適宜選択できるが、大気中で熱処理しても良い。
【0023】
<硫酸銅から形成する場合>
硫酸銅を熱処理する場合、酸素含有雰囲気下で、最高温度を700℃〜1000℃とした熱処理を行うことで、酸化第二銅粗粉末を得ることができる。なお熱処理時に生成するSO
3(SO
2+1/2O
2)の除去は、分解反応を促進する効果を有している。
【0024】
熱処理温度が、700℃未満では、完全に熱分解せず、異相が混在してしまう。
この熱処理における最高温度の上限は、媒体攪拌ミルや気流式ミルでの粉砕性の点から1000℃が好ましい。
【0025】
原料に銅粉を用いる場合および硫酸銅を用いる場合、共に熱処理設備は、温度制御と酸素含有雰囲気の制御ができればよく公知の管状炉やボックス炉、ロータリーキルン等を用いることができる。また熱処理設備には発生ガスの回収を行う公知のガス回収装置を備えることで、環境への負荷も少なくできる。さらに、発生する粉塵などについても同様である。
【0026】
熱処理における最高温度に至るまでの昇温条件および最高温度からの降温条件共に、異相の有無や粉砕性を考慮して適宜選択できる。
すなわち、原料をその最高温度下の炉内に投入して短時間に昇温させてもよいし、温度を徐々に上昇させてもよいし、段階的に上昇させてもよい。また、降温の際も同様である。
さらに、原料を炉内へ供給するには、原料を雰囲気の気流と共に炉内へ導入してもよいし、キャリアガスにより炉内へ導入してもよいし、耐熱性の容器に入れた原料を炉内に導入してもよい。
【0027】
熱処理時間は、原料に銅粉を用いる場合、硫酸銅を用いる場合共に、その熱処理時間は、適宜選択でき、酸化第二銅粗粉末の異相の有無や粉砕性から適宜選択されるものである。
【0028】
(2)粉砕処理と一次熱処理酸化第二銅
微粉末
一次熱処理酸化第二銅微粉末は、酸化第二銅粗粉末を粉砕したものである。
この粉砕処理での嵩密度、タップ密度、比表面積および平均粒子径の粉末特性が、二次熱処理された酸化第二銅微粉末の粉末特性を決めるものである。なお、後述する二次熱処理は、一次熱処理酸化第二銅微粉末を焼結させることはない。
【0029】
酸化第二銅粗粉末の粉砕処理には、媒体攪拌ミルや気流式ミルを用いることが望ましい。この媒体攪拌ミルを用いると、下記段落[00
38]の(1)式で求めた平均粒子径が1100nmを越えた粒子ができる可能性を低減できる。
媒体攪拌ミルは、ビーズなどの粉末砕媒体と酸化第二銅粗粉末と溶媒を含むスラリーに攪拌により運動エネルギーを与え、酸化第二銅粗粉末同士の衝突や粉末砕媒体と酸化第二銅粗粉末のせん断応力により微粉末を得る装置である。
媒体攪拌ミルの攪拌機構は、ビーズのせん断応力が酸化第二銅粗粉末に効率よく伝達されれば良く、その機構や形状は特に限定されない。
【0030】
粉末砕媒体であるビーズ径は、目的とする酸化第二銅微粉末の最終粒子径によって選択することが一般的であるが、好ましくは直径1mm以下である。直径1mm以下であれば、粒子を微細に砕く効率が高くなる。
さらに、ビーズ径は、小さいほど粉砕スピードが速く、粉砕される酸化銅粉末の粒子径も小さくなる。特に、めっき液への溶解性が高い粒子径に粉砕するには、特に直径0.3mm以下のビーズが好ましい。
ビーズの材質は、特に限定されないが、例えば比重が小さいガラスビーズや比重が大きいZrO
2ビーズ、YSZビーズが挙げられる。比重が大きいビーズでは、粉末砕効率が高く、摩耗が少なく、特に好ましい。
【0031】
媒体攪拌ミルは、特に限定されず、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。
一方、気流式ミルは、高速のジェット気流中で酸化第二銅粗粉末を相互に衝突させることにより、微粉末を得る装置である。
なお、湿式媒体ミルを用いても気流式ミルを用いても、粉砕条件は、特に限定されるものではなく、得られる酸化第二銅微粉末が所望の比表面積や平均粒子径となるように適宜選択すればよい。
【0032】
溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、水、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテルなどのエーテル類、エステル類、またはアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソブチルケトンなどのケトン類といった各種の有機溶媒が使用可能である。
【0033】
さらに、酸化第二銅微粉末の使用目的に応じて、このスラリーには、適宜公知の消泡剤や分散剤や酸化第二銅微粉末の表面を被覆する化合物などを添加しても良い。
【0034】
(3)二次熱処理
上記の工程を経て得られた一次熱処理酸化第二銅微粉末を、酸素含有雰囲気下で熱処理して二次熱処理酸化第二銅微粉末を形成する。
その熱処理温度は200℃〜800℃が望ましく、熱処理時間は0.5時間〜3時間が望ましいが、最終的に完全なCuOの形態となるように両者は適宜選択される。
この酸素含有雰囲気下での二次熱処理により、得られた酸化第二銅微粉末のめっき液への溶解性がさらに高くなるのは、一部酸素欠損の状態(CuO
1−x)から完全なCuOの状態になるためと推察している。
【0035】
この二次熱処理温度が200℃未満では、一部酸素欠損の状態(CuO
1−X)が残留している可能性があり完全なCuOの状態になっていないと推定されるが、一部酸素欠損の状態(CuO
1−X)の残留が微量なため、X線回折では検出されなかったとみられる。
なお、この二次熱処理では、一次熱処理酸化第二銅微粉末を焼結させないことに留意しなければならない。そのため上記の熱処理温度、および熱処理時間が望ましい。
さらに、本発明の酸化第二銅微粉末の製造方法は、酸化第二銅粗粉末を粉砕した微粉末化した一次熱処理酸化第二銅微粉末を二次熱処理するので、完全なCuOの形態となりやすい。
【0036】
硫酸銅水溶液への溶解時間は、二次熱処理を実施することで短くなる。
そのため、本発明の酸化第二銅微粉末は、銅めっき用補給銅源としてより望ましい。具体的には、本発明の製造方法で得られた酸化第二銅微粉末の7gの溶解時間は、CuSO
4・5H
2Oを90g/L、H
2SO
4を220g/L、塩素イオンを60mg/L含み、攪拌されている1リットルの硫酸銅水溶液に投入した時に、2分以下で溶解する易溶性を有する。
【0037】
以上のようにして、得られる酸化銅微粉末は、二次熱処理の効果と、比表面積が1m
2/g〜50m
2/gで、かつ平均粒子径が20nm〜1100nmとなり、硫酸銅水溶液(めっき液)への溶解性が高くなる。なお、当該平均粒子径は、下記(1)式から求めた値である。
【0039】
[硫酸銅水溶液(めっき液)の銅イオン供給方法]
銅を電解めっきする際に用いる銅めっき液(硫酸銅水溶液)は、硫酸銅、硫酸および塩素イオンを含有し、pHは1よりも低いものが用いられることが多い。そして、この銅めっき液には、銅めっきの品質向上のため公知の添加剤が加えられている。
【0040】
一方、銅の電解めっきを行うと、めっき液中の銅が析出し、めっき液の銅の濃度が低下する。そこで、めっき液の銅濃度の低下を防ぐ為、陽極に銅を用いて陽極を溶解しながら銅電解めっきを行う方法と、陽極に導電性酸化物セラミック等で覆われたチタン等からなる不溶性陽極を用い、併せてめっき液へ銅を供給する機構を備えた不溶性陽極を用いる方法がある。
【0041】
この不溶性陽極を用いる方法の場合、めっき液へどのように銅を補うかが問題となる。
めっき液へ銅を供給するには、めっき液に銅または銅を含む化合物等の銅源が速やかに溶解することと、銅源が溶解することでめっき液のSO
42+イオンなどのバランスが崩れないこと、さらにめっき液に含まれる添加剤が分解しないことが要求される。
このような要求に対して、酸化第二銅微粉末は、めっき液のSO
42+イオンなどのバランスを崩すことなく、また、各種添加剤の分解も少ない利点を有するものである。
【0042】
さらに、めっき液への銅の供給は、めっき液中の銅が減少する都度、速やかに行う必要がある。
具体的には、攪拌されたCuSO
4・5H
2Oを90g/L、H
2SO
4を220g/L、塩素イオンを60mg/L含むめっき液に近似した水溶液1リットルに、酸化第二銅粉末7gを投入したときの溶解時間は、短いほどより望ましい。
本発明に係る酸化第二銅微粉末は、上記めっき液に近似した水溶液1リットルに投入すると2分以内に溶解する。
【0043】
また、めっき液に投入される酸化第二銅微粉末は、溶解残渣を生じてはならない。
特に酸化第一銅は、めっき液に溶解せずに残渣となることから生成を避けるべきものである。本発明の酸化第二銅微粉末の製造方法では、酸化第二銅粗粉末を製造する際の熱処理で異相となる酸化第一銅が生じにくい。
さらに、この熱処理の処理条件では、媒体攪拌ミルもしくは気流式ミルで微粉末化可能な酸化第二銅粗粉末が得られるので、結果的には、微粉砕によりめっき液へ速やかに溶解する酸化第二銅微粉末を得ることになる。したがって、めっき液の調整、すなわち硫酸銅水溶液への銅イオンの供給が可能となる。
【0044】
電解めっき装置で、本発明の硫酸銅水溶液への銅イオンの供給方法を実施するには、電解めっき装置のめっきを行うめっき槽と別に酸化第二銅微粉末を溶解する酸化第二銅溶解槽を設け、めっき槽と酸化第二銅溶解槽の間で水溶液(めっき液)を循環させればよい。
この酸化第二銅溶解槽は、めっき槽から供給された水溶液に酸化第二銅微粉末を溶解させて形成した水溶液を、めっき槽へ送り返す。使用する酸化第二銅溶解槽には、プロペラなどの攪拌機構を付属させることが好ましい。また、めっき槽と酸化第二銅溶解槽の間には、ゴミや異物等の除去のため公知の各種フィルターを備えても良い。
なお、本発明の硫酸銅水溶液への銅イオンの供給方法に用いる硫酸銅水溶液は、硫酸銅を水に溶解した水溶液でもよいし、硫酸に本発明に係る酸化第二銅微粉末を溶解させた水溶液でも良い。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例を比較例と共に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、酸化第二銅微粉末a、b、c、d、e、f、g、i、j、m、n、p、酸化第二銅粗粉末hについて比表面積および平均粒子径を測定した。
得られた酸化第二銅微粉末のうち、X線回折測定(XRD)でCuO単一相が確認された試料は、すべて黒色を呈し、電解重量分析の結果、CuO濃度は電解銅粉末を原料に用いたものが99.6重量%、CuSO
4・5H
2Oを原料に用いたもの98.6重量%であった。
【実施例1】
【0046】
三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)10gを、大気雰囲気下500℃の温度で3時間熱処理することによって酸化第二銅粗粉末aを得た。
図1に、原料の電解銅粉のSEM像を示す。
次に、作製した酸化第二銅粗粉末aが20重量%、残りを水が80重量%となるように秤量し、直径0.3mmのZrO
2ビーズを入れたペイントシェーカーで12時間粉砕処理した後、ビーズを分離した分散液を105℃で乾燥し、一次熱処理酸化第二銅微粉末aを得た。
その後、その一次熱処理酸化第二銅微粉末aを、大気雰囲気下500℃の温度で3時間熱処理することによって酸化第二銅微粉末aを形成した。その酸化第二銅微粉末aは、粉末X線解析の結果、
図2に示すようにCuO単一相であった。
図3に、酸化第二銅微粉末aのSEM像を示す。
【0047】
次に、めっき液組成として、CuSO
4・5H
2O:68g/L、H
2SO
4:228g/L、Clイオン:60mg/Lとなるように調製し、室温にてスターラーで攪拌しながら、7gの酸化第二銅微粉末aを添加したところ、12秒で溶解した。
【実施例2】
【0048】
実施例1において、ペイントシェーカーで粉砕した後の二次熱処理を、大気雰囲気下500℃の温度で1時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る酸化第二銅微粉末bを得た。すなわちペイントシェーカーでの粉砕時間を12時間、二次熱処理を処理温度500℃、処理時間1時間とした。酸化第二銅微粉末bは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、15秒で溶解した。
【実施例3】
【0049】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を6時間として一次熱処理酸化第二銅微粉末cを作製した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る酸化第二銅微粉末cを得た。すなわちペイントシェーカーでの粉砕時間を6時間、二次熱処理を処理温度500℃、処理時間3時間とした。酸化第二銅微粉末cは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、52秒で溶解した。
【実施例4】
【0050】
実施例1において、ペイントシェーカーでの粉砕時間を3時間として一次熱処理酸化第二銅微粉末dを作製した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る酸化第二銅微粉末dを得た。すなわちペイントシェーカーでの粉砕時間を3時間、二次熱処理を処理温度500℃、処理時間3時間とした。酸化第二銅微粉末dは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、53秒で溶解した。
【実施例5】
【0051】
CuSO
4・5H
2O:10gを、大気雰囲気下900℃の温度で4時間加熱することによって一次熱処理酸化第二銅粗粉末eを作製し得た以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る酸化第二銅微粉末eを得た。すなわちペイントシェーカーでの粉砕時間を12時間、二次熱処理を処理温度500℃、処理時間3時間とした。酸化第二銅微粉末eは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
図4に、酸化第二銅微粉末eのSEM像を示す。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、1分30秒で溶解した。
【実施例6】
【0052】
実施例1において、一次熱処理を処理温度800℃、処理時間0.5時間、さらに二次熱処理を処理温度800℃、処理時間1時間とした以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る酸化第二銅微粉末fを作製した。酸化第二銅微粉末fは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、2分で溶解した。
【実施例7】
【0053】
実施例1の一次熱処理において、三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)の焼成を、大気雰囲気下500℃の温度で4時間として酸化第二銅粗粉末gを作製した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る酸化第二銅微粉末gを得た。すなわちペイントシェーカーでの粉砕時間を12時間、二次熱処理を処理温度500℃、処理時間3時間とした。酸化第二銅微粉末gは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、13秒で溶解した。
【実施例8】
【0054】
実施例1の一次熱処理において、三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)の焼成を、大気雰囲気下500℃の温度で3時間、ペイントシェーカーでの粉砕時間を3時間、二次熱処理を処理温度300℃、処理時間0.5時間として酸化第二銅粗粉末mを得た。すなわち酸化第二銅微粉末mは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、60秒で溶解した。
【実施例9】
【0055】
実施例1の一次熱処理において、三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)の焼成を、大気雰囲気下500℃の温度で3時間、ペイントシェーカーでの粉砕時間を12時間、二次熱処理を処理温度200℃、処理時間0.5時間として酸化第二銅粗粉末nを得た。すなわち酸化第二銅微粉末nは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、60秒で溶解した。
【0056】
(比較例1)
実施例1において、ペイントシェーカーを行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る酸化第二銅粗粉末hを作製した。すなわち酸化第二銅粗粉末hは、電解銅粉末を大気雰囲気下500℃の温度で3時間熱処理を行い、さらに大気雰囲気下500℃の温度で3時間熱処理をおこなった。酸化第二銅粗粉末hは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
図5に、酸化第二銅粗粉末hのSEM像を示す。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、溶解するまで1時間を要した。
【0057】
(比較例2)
実施例1において、ペイントシェーカー後の大気中での熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る酸化第二銅微粉末iを作製した。酸化第二銅微粉末iは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
図6に、酸化第二銅微粉末iのSEM像を示す。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、溶解するまで6分間を要した。
【0058】
(比較例3)
実施例1において、ペイントシェーカー後の熱処理を、N
2雰囲気下で500℃、1時間熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る酸化第二銅微粉末jを作製した。酸化第二銅微粉末jは粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、溶解するまで6分31秒を要した。
【0059】
(比較例4)
実施例1の一次熱処理において、三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)の焼成を、大気雰囲気下500℃の温度で3時間、ペイントシェーカーでの粉砕時間を3時間、二次熱処理を処理温度190℃、処理時間0.5時間として酸化第二銅粗粉末pを得た。
この酸化第二銅微粉末pは、粉末X線解析の結果、CuO単一相であった。
次に、実施例1と同様の方法でめっき液への溶解試験を行ったところ、溶解するまで10分を要した。
【0060】
(参考例)
実施例1において、三井金属
鉱業株式会社製電解銅粉(グレード:MF−D2)の焼成を、大気雰囲気下300℃の温度で4時間とした以外は、実施例1と同様にして参考例に係る酸化第二銅粗粉末kを作製した。酸化第二銅粗粉末kは、粉末X線解析の結果、CuOの他に、CuとCu
2Oの異相が認められたことから、ビーズミルでの粉砕やめっき液での溶解試験を行わなかった。
【0061】
以上、実施例1から実施例9、比較例1から比較例4、および参考例の結果をまとめて表1に示す。
表1から明らかなように、本発明の高純度酸化第二銅微粉末の製造方法による高純度酸化銅微粉末である実施例1から実施例9では、2分以内にめっき液である硫酸銅水溶液に溶解し、易溶性であることがわかる。一方、製造条件のいずれかが外れた比較例1から比較例4では、めっき液への溶解性を満足していないことは明らかである。
【0062】
【表1】