(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)に示される組成のニッケル塩溶液の加水分解により得られるニッケル含有水酸化物をアルカリ金属水酸化物水溶液に懸濁させ、攪拌しつつ、加熱して溶融状態として90〜180℃に30分以上2時間以下で溶融状態に保持し、次いで冷却し、水と接触させてアルカリ金属水酸化物を溶解してニッケル含有水酸化物を分離回収することを特徴とする請求項1記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
前記アルカリ金属水酸化物水溶液中のアルカリ金属水酸化物の量が、アルカリ金属水酸化物水溶液に添加されるニッケル含有水酸化物1mol当たりアルカリ金属水酸化物1mol以上とすることを特徴とする請求項3記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのうち少なくとも1種であることを特徴とする請求項3又は4記載のニッケル含有水酸化物の製造方法。
前記焙焼してニッケル含有酸化物を得るに際して、前記ニッケル含有水酸化物と、所望量の水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの内の少なくとも1つとを混合して焙焼することを特徴とする請求項6記載のニッケル含有酸化物の製造方法。
【背景技術】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質に用いられる平均粒径が3μm以下の単分散の一次粒子であるリチウム複合ニッケル酸化物を製造するために用いる単分散の一次粒子であるニッケル含有水酸化物、ニッケル含有酸化物、およびこれらの製造方法の提供に関する。
【0002】
リチウムイオン二次電池は、リチウムコバルト酸化物を主流とし、その市場を大きく伸ばしてきた。しかし近年では、リチウムコバルト酸化物はその物自体の有する限界容量に限りなく近い領域に達しており、今後の映像、音楽、通信等に要求されるよりハイパワーな電子機器への利用が難しいため、正極活物質を従来のリチウムコバルト酸化物からリチウム複合ニッケル酸化物に切替えた新しい高容量リチウムイオン二次電池が市場に出始めている。ただし、この新たな高容量リチウムイオン二次電池は従来のリチウムコバルト酸化物のように成熟した材料でないため、今現在市場に出ている粉体形状はサブミクロンの一次粒子の集合体である球状あるいは楕円状の二次粒子であり、HEVに代表とされるハイレートを要する電池には向いていない。したがって、従来の球状リチウム複合ニッケル酸化物では得られないハイレート特性の更なる向上として全く形状の異なる材料が必要とされてきている。
こうした材料として検討されているものに、平均粒径数μmの一次粒子が凝集して二次粒子を構成しているニッケル水酸化物を用いて作成したリチウム複合ニッケル酸化物がある。
【0003】
しかし、通常ニッケル塩溶液の加水分解により得られる水酸化ニッケルは、ゲル状であり、含水率が高く、製造時に混入する不純物の除去時の洗浄工程などにおいて脱水が困難となる。また、乾燥時強く凝集しガラス状形態を取り、そのままでは、微細な粒子として得られない。従って、通常、ニッケル水酸化物粉を得るためにはガラス状形態のニッケル水酸化物を、粉砕機を用いて粉砕しなければならず、平均粒径が数μmのニッケル水酸化物の製造は非常に困難となっている。また、このようにして得たニッケル水酸化物を用いて焼成して得たリチウム複合ニッケル酸化物は極めて硬い凝集塊となり、ピンミルやジェットミルなどの機械粉砕をしても機械が傷むだけで凝集塊はそれほど崩れず、効率よく平均粒径数μmのリチウム複合ニッケル酸化物を得られない。
【0004】
こうした中、平均粒径1〜5μmの一次粒子が緻密に連接して、ほぼ球状の二次粒子を構成しているニッケル水酸化物を特定の条件で合成し、これを用いてリチウム複合ニッケル酸化物を得る提案が特許文献1にある。特許文献1では、このような構造を持つニッケル水酸化物をリチウム化合物と混合後、所定温度で焼成することにより、内部に空隙を有するリチウム複合ニッケル酸化物凝集体を得、これを正極活物質とすれば、正極活物質としての比容量が高く、かつ電極プレス性に優れ、正極活物質層への高密度充填が可能なことから、電池の高容量化および高出力化に大いに寄与できるとしている。
【0005】
そして、前記した平均粒径が1〜5μmの一次粒子が緻密に連接して、ほぼ球状の二次粒子を構成しているニッケル水酸化物を得る具体的な方法として、電気伝導率が80mS/cm〜150mS/cmとなる30〜50℃のニッケル溶液を調整し、軸流型傾斜パドル2段翼付きの反応槽を用いて、攪拌翼の回転数を100rpm〜150rpmとし、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを添加して、反応系のpHが11.1〜11.5になるようにすることを提案している(特許文献1段落25〜30参照)。
【0006】
より具体的には、撹拌機、軸流型傾斜パドル2段翼およびpH計を備えた反応槽と、アルカリ剤供給ポンプと、濾過装置を備えたタンクと、洗浄機と、乾燥機とを含む製造装置を用いて行われる。反応槽では、上記条件に基づいて、ニッケル水酸化物の合成が行われる。反応槽には、原料になるニッケル塩水溶液およびニッケル以外の金属元素を含有する塩の水溶液が、たとえば、連続的に供給される。反応槽内で生成するニッケル水酸化物は、水と共にオーバーフローし、濾過装置を備えたタンクに供給される。アルカリ剤供給ポンプは、pH計による測定結果に応じて反応槽内にアルカリ剤を供給する。濾過装置を備えたタンクは、ニッケル水酸化物を含む水を濾過により固液分離する。洗浄機は、濾過装置を備えたタンクにおいて分離されたニッケル水酸化物を水洗する。乾燥機は、ニッケル水酸化物を乾燥させるとしている。
【0007】
しかしながら、前記した方法は、通常の水酸化ニッケルを製造する方法と比較し、極めて限定された装置と条件を必要とするという問題がある。
以上述べたように、未だ従来の球状リチウム複合ニッケル酸化物では得られないハイレート特性の更なる向上として全く形状の異なるリチウム複合ニッケル酸化物は提供されていない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)平均粒径が3μm以下の単分散状態のニッケル含有水酸化物一次粒子およびその製造方法
本発明の、ニッケル含有水酸化物は一般式(1):NiM(OH)
2で表され、式中のMは、Co、Alのうち少なくとも1種以上の元素を示すものであり、動的光散乱法測定による平均粒径が3μm以下、好ましくは1μm以上、2μm以下の単分散の一次粒子である。本発明のニッケル含有水酸化物の粒径を3μm以下とするのは、これを用いて得るリチウム複合ニッケル酸化物の粒径を3μm以下とするためである。
【0022】
本発明のニッケル含有水酸化物を300〜900℃で焼成してニッケル含有酸化物を得ても、粒成長はほとんど起きず、また凝集して二次粒子を生成することもない。焼成物を解砕することにより簡単に平均粒径3μm以下の単分散状態のニッケル含有酸化物一次粒子を得ることが可能である。
本発明のニッケル含有水酸化物の表面状態がこのように安定な理由は明確ではないが、下記する製造方法が特別な表面状態の形成に関わっているものと推定している。
【0023】
本発明のニッケル含有水酸化物を得るには、通常の方法、例えば加水分解法により得られた従来のニッケル含有水酸化物(以下、単に「ニッケル含有水酸化物原料」と示す。)をアルカリ金属水酸化物水溶液に懸濁させ、加熱して攪拌しつつ100〜180℃に30分以上2時間以下に保持し、次いで冷却し、水と接触させてアルカリ金属水酸化物を溶解して本発明の平均粒径が3μm以下の単分散状態のニッケル含有水酸化物一次粒子を分離回収する。
【0024】
用いることができるニッケル含有水酸化物原料は、組成が前記一般式(1)に合致していればよく、粒子形状には拘らない。例えば、背景技術で示したニッケル塩溶液の加水分解により得られるゲル状の水酸化ニッケルを乾燥し、得たガラス状の凝集体を粉砕したもので良い。
【0025】
本発明の方法においてアルカリ金属水酸化物の水溶液中にニッケル含有水酸化物原料を投入し、加熱し、液中の水分を揮発させ、アルカリ金属水酸化物浴中に溶解させるが、これはニッケル含有水酸化物原料内部にまでアルカリ金属水酸化物を浸入させ、その上で溶融状態とすることによりニッケル含有水酸化物原料を完全に融解させるためである。固形のアルカリ金属水酸化物とニッケル含有水酸化物原料とを混合して溶融しても良いが、この場合、往々にしてニッケル含有水酸化物原料が完全に融解せず、本発明の方法より効率が悪い。
【0026】
加熱温度は、アルカリ金属水酸化物とニッケル含有水酸化物とが均一な融液を構成する温度であれば良く、アルカリ金属水酸化物として水酸化ナトリウムを用いた場合には、90〜180℃、好ましくは140〜180℃とすることが望ましい。90℃未満では、アルカリ金属水酸化物によるニッケル含有水酸化物原料二次粒子を一次粒子に崩壊、あるいは溶解させることは可能であるものの、一次粒子を単分散状態で成長させる際に、結晶成長速度が遅く、目的の大きさの結晶に成長させるのに非常に長い時間を要し生産性を欠く。一方、180℃を越えると結晶成長が急激に進み粒径制御が困難になるほか酸化が起こりやすく価数の安定性を損なうためである。
【0027】
本発明では、均一な融液を得た後、その温度で30分以上、2時間以下の範囲で融液を保持する。こうすることにより融液中でニッケル含有水酸化物の粒成長を促す。30分未満では粒の成長が十分ではなく、単分散の微細な一次粒子は得られない。また、2時間以上保持すると粒子が大きくなりすぎ、平均粒子径が3μmを超えるようになるので好ましくない。
【0028】
ニッケル含有水酸化物原料に添加するアルカリ水酸化物量は、ニッケル含有水酸化物原料1mol当たり1mol以上、好ましくは2.5mol以上とする。完全に融解させるためである。
用いうるアルカリ水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を単独、もしくは混合して用いることができるが、取り扱いやすさ、安価であることより水酸化ナトリウムが好ましい。
【0029】
(2)平均粒径が3μm以下の単分散状態のニッケル含有酸化物一次粒子およびその製造方法
本発明のニッケル含有酸化物は一般式(2):NiMOで表され、式中のMは、Co、Alのうち少なくとも1種以上の元素を示すものであり、動的光散乱法測定による平均粒径が3μm以下、好ましくは1μm以上、2μm以下の単分散の一次粒子である。本発明のニッケル含有水酸化物の粒径を3μm以下とするのは、これを用いて得るリチウム複合ニッケル酸化物の粒径を3μm以下とするためである。
【0030】
本発明のニッケル含有酸化物を得るに際して、本発明の単分散状態のニッケル含有水酸化物一次粒子を300〜900℃で焙焼する。
焙焼温度が300℃未満では酸化ニッケルのニッケル価数が安定せずその組成も安定していないため、特定の組成比を狙ったリチウムニッケル複合酸化物の合成が難しく、また900℃を越えると酸化ニッケルの結晶性が高くなりすぎて、リチウムニッケル複合酸化物に合成した際異相が発生するもしくは低結晶性の製品となる恐れがあるためである。
【0031】
また、例えば、単分散のニッケル含有水酸化物一次粒子を作成する際に、アルミニウムを添加しなかったにもかかわらず安全性を確保するためにAlをこの後の工程で入れることによりリチウムニッケルアルミ複合酸化物を得る場合、あるいはアルミニウム含有量を高めたい場合には、本発明の単分散のニッケル含有水酸化物一次粒子に、微粉砕した水酸化アルミニウムもしくは酸化アルミニウムを所望の量加え混合粉とし、これとリチウム化合物とを混合し焙焼しても良い。
【0032】
この際、ニッケル含有水酸化物を水に懸濁させた後、アルミン酸ナトリウムを所望の組成となるよう加え攪拌溶解させ、このスラリー中に更に硫酸を加え中和させることでニッケル含有水酸化物表面に水酸化アルミニウムを析出・付着させても良く、もしくは振動ミル等を用いて機械的にニッケル含有水酸化物表面に水酸化アルミニウムもしくは酸化アルミニウムを付着させても良い。
【0033】
さて、前記したように焙焼して得た焼成物は、焼成終了時は塊状の固まりとなっている。この固まりは単分散の一次粒子が軽く焼結したものであるため、ピンミルやハンマーミル等の機械粉砕機を用いて3μm以下の一次粒子に簡単に解砕できる。なお、ゴミ等の介在物がある場合には、例えば、超音波式振動篩を用いてゴミ等の介在物を除去することが好ましい。
【0034】
(3)平均粒径が3μm以下の単分散状態のリチウム複合ニッケル酸化物一次粒子および
その製造方法
リチウム複合ニッケル酸化物は一般式:LiNiMO
2で示され、式中Mは、Co、Alのうち少なくとも1種以上の元素を示す。そして、動的光散乱法測定による平均粒径が3μm以下の単分散の一次粒子である。これをリチウムイオン二次電池に用いると、単分散の一次粒子を充填することになり、間隙を有する二次粒子を充填する場合よりも充填密度を高くでき、かつ一次粒子間に間隙を持たせることができるため、リチウムイオンの移動も妨げられず、ハイレート特性が向上し、出力特性に優れた電池を得ることが出来る。
平均粒径を3μm以下、好ましくは1〜2μmとするのは、平均粒径が3μm以上では、リチウムイオン二次電池とした場合に、粒子が大きすぎて固相内拡散抵抗が高くなり、ハイレート条件下では期待する出力を得ることが出来なくなるためである。
【0035】
リチウム複合ニッケル酸化物を得るには、前記した本発明の平均粒径が3μm以下の単分散状態のニッケル含有水酸化物一次粒子、または平均粒径が3μm以下の単分散状態のニッケル含有酸化物一次粒子を用いる。これ以外を用いた場合には、単分散状態の平均粒径3μm以下の一次粒子としてリチウム複合ニッケル酸化物は得られがたい。
【0036】
本発明の単分散状態のニッケル含有水酸化物一次粒子やニッケル含有酸化物一次粒子とリチウム化合物とを混合し、得た混合物を680〜800℃で焙焼し、得られた焼成物を解砕して本発明のリチウム複合酸化物を得るが、この際に、用いるリチウム化合物としては、水酸化物、酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩のいずれかが好ましいが、より好ましくは合成の際に焼成で使用する炉や匣鉢を傷めず環境面でも負荷の低い、水酸化物もしくは酸化物が望ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で作製した微粒リチウム複合ニッケル酸化物については、その平均粒径、含有金属元素の分析、ハイレート放電特性について示す。
平均粒径の測定は日機装株式会社製ナノトラック粒度分布測定装置「型式 UPA−EX150」を用いて測定し、単分散かどうかは、この値とSEM観察結果とを比較して確認した。
ハイレート放電特性については、下記の電池作製により製造したコインセルを用いて0.1C充電、2C放電を行った際の放電容量値と規定し、各例で測定した値(2C電池容量)を、後述する従来例の値を100とした相対値として求めた。
【0038】
[電池作成]
活物質粉末90wt%にアセチレンブラック5wt%およびPVDF(ポリ沸化ビニリデン)5wt%を混合し、NMP(n−メチルピロリドン)を加えペースト化した。これを20μm厚のアルミニウム箔に乾燥後の活物質重量が0.05g/cm
2になるように塗布し、120℃で真空乾燥を行い、直径1cmの円板状に打ち抜いて正極とした。負極としてリチウム金属を、電解液には1モルのLiClO
4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液を用いた。ポリエチレンからなるセパレータに電解液を染み込ませ、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作成した。作成した電池は24時間程度放置し、OCVが安定した後カットオフ電圧4.3〜3.0Vで充放電試験を実施した。
【実施例1】
【0039】
塊状のNi
0.82Co
0.15Al
0.03(OH)
2の組成からなるニッケル含有水酸化物原料を粉砕して得た粉末1molを原料とし、これを反応槽内の水酸化ナトリウム水溶液(2.5mol/200cc)に懸濁させ十分攪拌させた後、反応槽の温度を140℃に保温し浴温が同温度に到達後30分保持し、その後冷却してニッケル含有水酸化物の粉末を得た。得られた粉末は平均粒子径1.6μmで単分散状態であった。また、組成はニッケル含有水酸化物原料と同じであった。
次に、得られた粉末を水酸化リチウム一水和物とスパルタンリューザーにてLi/(Ni+Co+Al)モル比=1.02となるよう混合し、760℃で炭酸ガス吸着設備と乾燥設備を通した工業用酸素気流中で24時間焼成を行った。得られた焼成物を解砕後、網目50μmの超音波篩で分級して粗大ゴミを除去し、篩下を真空乾燥して製品であるリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.818Co
0.149Al
0.033O
2で有り、平均粒子径は1.5μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
【実施例2】
【0040】
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して1molとし、反応槽の温度を100℃とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径0.7μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は0.6μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は126であった。
【実施例3】
【0041】
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して5molとし、反応槽の温度を180℃とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径2.9μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は2.9μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は115であった。
【実施例4】
【0042】
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して1molとし、反応槽の温度を100℃とし、保持時間を120分とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径1.3μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は122であった。
【実施例5】
【0043】
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して1.5molとし、反応槽の温度を140℃とし、保持時間を60分とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径1.7μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は1.7μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
【実施例6】
【0044】
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して5molとし、反応槽の温度を90℃とし、保持時間を120分とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径0.9μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は0.9μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は125であった。
【0045】
(比較例1)
本例は反応温度が高い場合の比較例に相当するものである。
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して2.5molとし、反応槽の温度を220℃とし、保持時間を60分とした以外は実施例1と同様にして平均粒子径5.2μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.820Co
0.151Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は5.1μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は98と低かった。
【0046】
(比較例2)
本例は保持時間が短い場合の比較例に相当するものである。
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して2.5molとし、反応槽の温度を140℃とし、保持時間を20分とした以外は実施例1と同様にして行ったが単分散とならず原料凝集塊が多く残るニッケル含有水酸化物を得た。
【0047】
(比較例3)
本例は保持時間が長い場合の比較例に相当するものである。
水酸化ナトリウムの量をニッケル含有水酸化物原料粉末1molに対して2.5molとし、反応槽の温度を140℃とし、保持時間を150分とした以外は実施例1と同様にして長径4μmの単分散の板状ニッケル含有水酸化物を得た。
【実施例7】
【0048】
ニッケル含有水酸化物原料を、Ni
0.845Co
0.155(OH)
2の組成のものに変更した以外は実施例1と同様にして平均粒子径1.7μmで単分散のニッケル含有水酸化物を得た。
次に、これを用いて実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.845Co
0.155O
2で有り、平均粒子径は1.6μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は128であった。
【実施例8】
【0049】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物を、一度スラリー濃度300g/Lとなるよう純水に懸濁させ、これにNi
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるようアルミン酸ナトリウムを溶解させ更に硫酸で中和することで得られたAl(OH)
3が粒子表面に付着したニッケル含有水酸化物にし、水酸化リチウム一水和物と混合した以外は全て実施例7と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.822Co
0.149Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は1.6μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
【実施例9】
【0050】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物を、Ni
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるようAl
2O
3をメカノフュージョンにより粒子表面に付着したニッケル含有水酸化物にし、水酸化リチウム一水和物と混合した以外は全て実施例7と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は1.5μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は121であった。
【実施例10】
【0051】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物粉末を水酸化リチウム一水和物と混合する前にサブミクロンまで微粉砕したAl(OH)
3とNi
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるようにしたニッケル含有水酸化物にし、これと水酸化リチウム一水和物と混合した以外は全て実施例7と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.150Al
0.029O
2で有り、平均粒子径は1.5μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は119であった。
【実施例11】
【0052】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物を水酸化リチウム一水和物と混合する前に一度400℃大気雰囲気にて焙焼しニッケル含有酸化物に変更した以外は実施例1と同様の方法にてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.820Co
0.150Al
0.030O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は119であった。
【実施例12】
【0053】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物を水酸化リチウム一水和物と混合する前に一度900℃大気雰囲気にて焙焼しニッケル含有酸化物に変更した以外は実施例1と同様の方法にてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.151Al
0.028O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
【実施例13】
【0054】
実施例1で得られたニッケル含有水酸化物を水酸化リチウム一水和物と混合する前に一度650℃大気雰囲気にて焙焼しニッケル含有酸化物に変更した以外は実施例1と同様の方法にてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.151Al
0.028O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
【実施例14】
【0055】
得られたニッケル含有水酸化物を水酸化リチウム一水和物と混合する前に一度300℃大気雰囲気にて焙焼しニッケル含有酸化物に変更した以外は全て実施例1同様の方法にてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.03Ni
0.821Co
0.151Al
0.028O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は120であった。
ただし、本実施については合成するにあたり、組成の制御が非常に困難である。
【0056】
(比較例4)
得られたニッケル含有水酸化物を水酸化リチウム一水和物と混合する前に一度1000℃大気雰囲気にて焙焼しニッケル含有酸化物に変更した以外は全て実施例1と同様の方法にてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.819Co
0.149Al
0.032O
2で異相が確認でき、電池材料として用いることの出来ないものであった。
【実施例15】
【0057】
Ni
0.845Co
0.155(OH)
2の組成からなるニッケル含有水酸化物原料を用い、得られたニッケル含有水酸化物が平均粒径が1.7μmとなった以外は実施例1と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.844Co
0.156O
2で有り、平均粒子径は1.7μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は129であった。
【実施例16】
【0058】
実施例15で得られたニッケル含有水酸化物を、一度スラリー濃度300g/Lとなるよう純水に懸濁させ、これにNi
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるようアルミン酸ナトリウムを溶解させ更に硫酸で中和することで得られたAl(OH)
3が粒子表面に付着したニッケル含有水酸化物とし、これを用いた以外は実施例15と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.819Co
0.149Al
0.032O
2で有り、平均粒子径は1.5μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は121であった。
【実施例17】
【0059】
得られたニッケル含有水酸化物を、Ni
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるようAl
2O
3をメカノフュージョンにより粒子表面に付着させたニッケル含有水酸化物とし、これを用いた以外は実施例16と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.820Co
0.150Al
0.030O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は119であった。
【実施例18】
【0060】
得られたニッケル含有水酸化物粉末を水酸化リチウム一水和物と混合する前にサブミクロンまで微粉砕した水酸化アルミニウムとNi
0.82:Co
0.15:Al
0.03の組成になるよう混合した以外は実施例16と同様にしてリチウム複合ニッケル酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.818Co
0.151Al
0.031O
2で有り、平均粒子径は1.4μmで単分散状態であった。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求めたところ、2C電池容量(相対比)は118であった。
【0061】
(従来例)
Ni
0.82Co
0.15Al
0.03(OH)
2の組成になるよう硫酸ニッケルと硫酸コバルトを混合した水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液、アンミン錯塩を形成させるアンモニア水、pH調整用に苛性ソーダ等を同時に反応槽中に滴下してニッケル含有水酸化物を得る従来の晶析法にてニッケル含有水酸化物を得た。反応温度は50℃とし、pHは11とし、滞留時間を8時間とした。得られたニッケル含有水酸化物の組成はNi
0.82Co
0.15Al
0.03(OH)
2で有り、一次粒子が凝集して2次粒子を構成している球状のニッケル含有水酸化物であった。
これを用いた以外は実施例1と同様にしてリチウムニッケル複合酸化物を製造した。
得られたリチウム複合ニッケル酸化物の化学組成はLi
1.02Ni
0.821Co
0.149Al
0.030O
2で有り、一次粒子が凝集して二次粒子を構成したものであり、二次粒子の平均粒子径は11.1μmとなっていた。
このリチウム複合ニッケル酸化物を用いて電池を作成し、電池容量を求め、この値を100とし、他実施例の良否判定基準とした。