特許第5874976号(P5874976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5874976領域ごとに異なる繊維で形成された用紙及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5874976
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】領域ごとに異なる繊維で形成された用紙及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/50 20060101AFI20160218BHJP
   D21F 1/48 20060101ALI20160218BHJP
   B42D 25/351 20140101ALI20160218BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20160218BHJP
【FI】
   D21H21/50
   D21F1/48 Z
   B42D15/10 351
   B42D15/10 360
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-104526(P2012-104526)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231257(P2013-231257A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】濱田 仁美
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−108449(JP,A)
【文献】 特開平10−138673(JP,A)
【文献】 特開平05−098599(JP,A)
【文献】 特表2003−525770(JP,A)
【文献】 特開2012−035601(JP,A)
【文献】 特表2005−525474(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/072419(WO,A1)
【文献】 特開2012−020403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/00− 21/56
B42D 25/351
B42D 25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の繊維を含む第1の領域と、前記第1の領域内の所望の位置に、前記第1の繊維とは異なる第2の繊維を少なくとも含む第2の領域を有し、
前記第1の領域又は前記第2の領域のどちらか一方は、セルロース微小繊維から成る半透明又は透明な領域であることを特徴とする用紙。
【請求項2】
請求項1記載の用紙の偽造防止用紙としての使用。
【請求項3】
少なくとも第1の繊維を含む第1の領域と、前記第1の領域内の所望の位置に、前記第1の繊維とは異なる第2の繊維を少なくとも含む第2の領域を有し、前記第1の領域又は前記第2の領域のどちらか一方は、セルロース微小繊維から成る半透明又は透明な領域であることを特徴とする用紙の作製方法において、
抄紙機のワイヤー上に、前記第1の領域を形成するための前記第1の繊維を供給する工程と、前記第1の領域内に開口部を形成する工程と、前記開口部に前記第2の領域を形成するための前記第2の繊維を供給する工程を少なくとも有することを特徴とする用紙の作製方法。
【請求項4】
前記開口部を形成する工程は、開口部形成器による手段又は突起部を設けたワイヤーによる手段であることを特徴とする請求項記載の用紙の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の同一平面上において、異なる領域ごとに、異なる繊維で形成された用紙及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな用途に使用される用紙であるが、その使用用途に応じて、利便性、意匠性、機能性等、多種多様な工夫が成されている。
【0003】
例えば、用紙の幅方向において、異なる原料又は異なる色の原料を使用して、縞状の用紙を抄造する抄造機が開示されている。これは、抄造帯の上方に用紙から離間して、仕切板を抄造帯の幅方向に複数設けているため、原料供給槽から供給されたスラリー状の原料は、各仕切板間において、抄造帯近傍のものは用紙の幅方向に移動することなく急速に脱水されてシート状になりつつ搬送され、抄造帯から離れているものは沈殿してから抄造帯に近づいて脱水されて搬送されることになる。これにより、抄造帯近傍におけるスラリー状の原料の密度等の均一化を図ることができる。また、仕切板間に、色や材料等が異なるスラリー状の原料を供給することが可能となり、用紙の幅方向において、色や材料の異なる縦縞状で一体となった用紙を得ることができるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、用紙は、紙幣、切手、印紙、株券、債券、商品券を含む有価証券類又はIDカード、通行証、登録証、入場券、旅券、出入国証を含む身分、権利、資格を証明する証書類に幅広く使用されており、このように使用される用紙には、容易に偽造ができないようにさまざまな工夫が施されている。
【0005】
用紙の一部に積層する形態で偽造防止策を施す技術としては、インキに蛍光材料又は光学材料等を含ませた凹版印刷やオフセット印刷等により印刷層を基材に形成すること又はホログラム等の金属箔等を基材に貼付することで機能性を付与する技術が挙げられる。
【0006】
一方、用紙上又は用紙内の用紙自体に偽造防止策を施す技術としては、すかし、スレッド、混抄、多層紙等が挙げられる。
【0007】
この用紙自体に偽造防止策を施す技術として、透明領域を有する用紙が開示されている。そのうちの一つとして、透明な高分子樹脂フィルムを一定の幅に、直線状にスリットしたもの(スレッド)を紙層中に抄き入れ、用紙の表裏に部分的に露出させた偽造防止用紙が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
その他の透明領域を有する用紙として、透明化剤を含浸させて透明部を形成した不織布を中間層として上下層で抄き込み、上下層に窓開き部を設けることで、多層紙の表裏に透明部を露出させた多層紙が挙げられる(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、用紙自体に透明性を持たせるものとして、微小繊維が開示されている。これは、微細繊維状セルロースを含む水系懸濁液を、多孔性の基材上でろ過により脱水し水分を含んだシートを形成し、水分を含んだシートを加熱蒸発させることにより得られる微細繊維状セルロースシートである(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2009/072419号公報
【特許文献2】特許第4161417号公報
【特許文献3】特開2009−013531号公報
【特許文献4】特開2010−168716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の技術は、用紙の異なる領域ごとに、異なる繊維で形成された用紙を作製することが可能であるが、抄造ゾーン(ワイヤー上)を幅方向に区割するようにして搬送方向に延出する形状の仕切板を用いて領域分けを行うため、異なる繊維の位置及び形状は、抄紙方向に依存するものであった。
【0012】
さらに、用紙上の異なる領域が抄紙方向に依存するため、所望の位置に、異なる繊維で形成された複数の異なる領域を有する用紙を作製することはできなかった。
【0013】
特許文献2に記載の技術は、用紙の偽造防止策として一部に透明フィルム(スレッド)による透明領域を有しているものであるが、透明フィルムと紙では接着性が悪いため接着剤を使用しなければならず、層間剥離の問題があった。フィルムへは水性材料による印刷や表面加工が難しいため、印刷や表面加工方式も限定された。また、透明フィルムを一定の幅に直線状にスリットしたもの(スレッド)を使用するため、やはり抄紙方向に依存するものであり、所望の位置及び形状で透明領域を形成できるものではない。さらには、フィルムによる透明部は均一な光学特性(光透過性)を有し、紙や繊維からなる基材のように地合による個体差がないため、フィルム貼付や透明インキの印刷により偽造できる可能性があった。
【0014】
特許文献3に記載の技術は、透明部を繊維からなる基材(不織布)で作製するため、特許文献2の問題を一部解決するものではあるが、上下層を紙層とし中間層を不織布とする多層構造であるため、層間剥離の問題があり、はがして偽造される可能性があった。
【0015】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、抄紙方向に依存することなく所望の位置及び形状で、同一平面上に異なる繊維で形成された複数の異なる領域を有する用紙であり、更に、従来の多層紙における透明窓ではなく、単層紙において紙質の透明窓を有する用紙及びその作製方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明における用紙は、少なくとも第1の繊維を含む第1の領域と、第1の領域内の所望の位置に、第1の繊維とは異なる第2の繊維を少なくとも含む第2の領域を有することを特徴とする。
【0017】
本発明における用紙は、第1の繊維又は第2の繊維のどちらか一方は、セルロース微小繊維であり、セルロース微小繊維から成る領域は、半透明又は透明であることを特徴とする。
【0018】
本発明における用紙は、偽造防止用紙として使用可能であることを特徴とする。
【0019】
本発明における少なくとも第1の繊維を含む第1の領域と、第1の領域内の所望の位置に、第1の繊維とは異なる第2の繊維を少なくとも含む第2の領域を有することを特徴とする用紙の作製方法において、抄紙機のワイヤー上に、第1の領域を形成するための第1の繊維を供給する工程と、第1の領域内における所望の位置に所望の形状の開口部を形成する工程と、開口部に第2の領域を形成するための第2の繊維を供給する工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0020】
本発明における用紙の作製方法は、開口部を形成する工程が、開口部形成器による手段又は突起部を設けるワイヤーによる手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
抄紙方向に依存されることなく、所望の位置に異なる繊維で形成された複数の異なる領域を有する用紙であるため、偽造防止効果としても有用である。
【0022】
親和性のある繊維同士を使用することで、異なる繊維間(領域間)の結合は、同一繊維同士の結合と同様に、繊維の絡み合い及び繊維同士の水素結合や化学結合等によって結合するため強固なものとなり、剥離しない。また、異なる繊維が多層構造ではなく、同一平面上に形成されるため、層間剥離しない。
【0023】
全ての領域は、繊維から形成されるため、例えば、それが透明な領域であっても、用紙独特の風合い(地合、手触り感など)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態における用紙の平面図を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における用紙の作製方法を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における用紙の作製方法を示す図である。
図4】本発明の実施例1における用紙の平面図を示す図である。
図5】本発明の実施例2における用紙の平面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0026】
まず、用紙の構成について説明を行う。
【0027】
図1に、本発明における用紙の平面図を示す。本発明における用紙(1)は、少なくとも第1の繊維を有する領域A(2)と、領域A(2)内に少なくとも第2の繊維から成る領域B(3)を有する。領域B(3)は、領域A(2)内の所望の位置に所望の形状で設けられ、また、領域A(2)を形成する第1の繊維と領域B(3)を形成する第2の繊維は、異なる繊維である。
【0028】
領域A(2)は、第1の繊維以外の繊維を有していても良く、領域B(3)も第2の繊維以外の繊維を有していても良い。両方の領域が二種類以上の繊維を有して形成されている場合、領域A(2)と領域B(3)が有している繊維が一種類でも異なっていれば、本発明においては、領域A(2)と領域B(3)は、異なる繊維で形成されているという。例えば、領域A(2)は第1の繊維及び第3の繊維から成り、領域B(3)は第2の繊維と第3の繊維から成る場合、両方の領域は第3の繊維を有しているが、それぞれその他に第1の繊維と第2の繊維を有しているため、領域A(2)と領域B(3)は、異なる繊維で形成されていることとなる。なお、領域A(2)内の所望の位置に設けられた領域B(3)に関しては、領域A(2)と領域B(3)は重複している領域が存在するわけではなく、あくまでも同一平面上に異なる領域として存在している状態のことである。よって、領域A(2)が第1の繊維のみから成り、領域B(3)が第2の繊維のみで成ることもあり得る。
【0029】
さらに、それぞれ異なる二種類の繊維から成る二つの領域に限定される必要はなく、第3の繊維から成る領域C(4)等、三つ以上の領域を有していてもよい。この場合も、領域C(4)は、領域A(2)と領域B(3)とは別の所望の位置に所望の形状で設けられる。領域C(4)を形成する第3の繊維は、第1の繊維及び第2の繊維とは異なる繊維である。
【0030】
ここでいう異なる繊維とは、原材料が異なる繊維、着色や化学修飾等を施すことにより機能が異なる繊維、繊維長分布が異なる繊維、繊維幅分布が異なる繊維等、まったく同じ繊維同士以外は、すべて異なる繊維とする。
【0031】
また、各繊維からなる領域の形状は、図1(a)に示すように有意味情報を持った図柄形状による領域でもよく、図1(b)に示すように有意味情報を持たない、例えば、抄紙方向と直交する横縞状の領域としてもよい。
【0032】
本発明における用紙(1)を形成する繊維とは、木材繊維、非木材繊維、合成繊維等のことであり、特に限定はない。ただし、異なる繊維間を繊維同士の絡み合いや化学結合等によって結合するため、親和性のある繊維同士を使用する方が望ましい。
【0033】
異なる繊維間(領域間)の結合は、同一繊維同士の結合と同様に、繊維の絡み合い及び繊維同士の水素結合や化学結合等によって結合する。合成繊維においては、熱融着性繊維やバインダー繊維による熱融着接合も含む。
【0034】
木材繊維は、各種木材を原料とするKP、SP等の化学パルプ、GP、TMP、CTMP等の機械パルプ、古紙再生パルプ等を、非木材繊維は、ケナフ、麻、イネ、麦、バガス、アバカ、木綿、ミツマタ、竹等の植物繊維を適宜選択して使用できる。合成繊維は、レーヨン、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート等の繊維を適宜選択して使用できるが、木材繊維や非木材繊維と共に使用する場合には、親水性な木材繊維や非木材繊維と親和性がある方が望ましい。
【0035】
木材繊維や非木材繊維は、叩解処理により繊維のフィブリル化を促進してから使用することもできる。繊維同士の絡み合いをより強固にするためには、叩解処理により適度なフィブリル化を行った方が良い。
【0036】
これらの繊維を水に分散させて、繊維懸濁液を調製する。これを紙料という。これに、分散剤、サイズ剤、定着剤、紙力剤、水溶性高分子、てん料、顔料、色材等の内添材料を適宜加えてもよい。
【0037】
また、少なくとも一種類の繊維に、セルロース微小繊維を使用することもできる。この場合、セルロース微小繊維からなる領域は、繊維間の空隙が少なく、光の散乱が抑えられるため、半透明又は透明となる。
【0038】
本発明におけるセルロース微小繊維とは、主としてセルロースから成る繊維であり、特に植物由来の天然セルロースを原料として用いたものが好ましく、繊維幅2nm〜10μm未満の微小なセルロース繊維に解繊されたものをいう。
【0039】
ここでいう解繊とは、セルロース系の繊維をミクロ又はナノフィブリル数本単位まで解きほぐすことである。通常、植物から得られるセルロース系の繊維は、セルロース分子30〜50本から成り、繊維幅が約2〜5nmのセルロースナノフィブリルの集合体である。セルロースミクロフィブリルは無数の水素結合により強固に結合されているが、物理的又は化学的な処理を施すことで、繊維状のままセルロースミクロ又はナノフィブリル数本単位に解きほぐすことが可能である。
【0040】
解繊する方法として、物理的方法では、高圧ホモジナイザーやグラインダーによる機械的せん断力でミクロフィブリル化する方法や、乾式ボールミルによる機械的粉砕に有機溶媒を添加することで微粒化処理する方法等がある。また、化学処理による方法では、硫酸処理によりセルロース繊維の非結晶部分を除く方法や、酸化処理により結晶性セルロースミクロフィブリル表面のみにカルボキシル基を導入して高分散させる方法等がある。これらの方法は、すべて公知の手法であり、本発明において用紙を作製するために行う解繊も公知の手法で行うこととする。
【0041】
セルロース繊維の繊維幅が10μm以上になると、一般的なパルプ繊維の繊維幅である10〜30μmと同じオーダーとなり、微小繊維特有の特性を得られない。よって、ここでいう微小繊維とは、セルロースナノフィブリル単位の約2nmから10μm未満の繊維をいい、特に2nm〜1μm未満の繊維の使用が好ましく、更に好ましくは2nm〜100nm未満の繊維である。ただし、解繊する方法によっては、平均繊維幅が10μm未満であっても、繊維幅10μm以上の繊維が多少含まれる場合もあるが、本発明の範囲であり、平均繊維幅が10μm未満であればよい。
【0042】
セルロース微小繊維は、主としてセルロースから成る繊維で構成されているが、そのセルロースから成る繊維については、特に限定されるものではなく、各種木材を原料とするKP、SP等の化学パルプ、GP、TMP、CTMP等の機械パルプ、古紙再生パルプ等のパルプを適宜選択して使用でき、それらを粉砕した粉末状セルロース、化学処理により精製した微結晶化セルロース等も使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、麦、バガス、アバカ、木綿、ミツマタ、竹等の非木材を使用することもできる。
【0043】
セルロース微小繊維は、水に分散させて、セルロース微小繊維分散液を調製する。これに、セルロース微小繊維の分散状態をあまり阻害しない粉末、微粒子、又は水性液体、例えば、分散剤、サイズ剤、定着剤等、水溶性高分子等を加えることが可能である。
【0044】
また、半透明又は透明にするためには、セルロース微小繊維のみで領域を形成することとするが、セルロース微小繊維の分散状態を阻害しない範囲で他の繊維が含有されている場合であっても本発明の範囲とする。
【0045】
また、セルロース微小繊維分散液は、解繊された微小繊維同士が、すぐに水素結合で再結合しない程度の濃度である必要があり、固形分濃度0.1〜3%程度での使用が望ましい。ただし、分散液を強撹拌又は分散剤を添加することで、微小繊維同士を再分離させることができれば、3〜35%程度でも問題はない。
【0046】
これは、固形分濃度が35%以上の高濃度になると、撹拌又は分散剤を加えるのみでは、微小繊維同士の再結合を抑止できず、再解繊処理が必要となる可能性があるためであり、逆に、固形分濃度が0.1%以下の低濃度では、用紙作製時の脱水及び乾燥段階において、水分過多による乾燥不良等を起こす可能性があるためである。ただし、それらの問題が他の手段で回避できれば特に制限はない。
【0047】
本発明の第1の繊維から成る領域と、第2の繊維から成る領域を少なくとも有する用紙(1)を、他のシート層とすき合わせて多層紙として使用することもできる。他のシート層は、木材繊維、非木材繊維からなる紙や、不織布、フィルム等からなるもので、特に限定はない。
【0048】
前述したとおり、異なる繊維間(領域間)の結合は、繊維の絡み合い及び繊維同士の水素結合や化学結合等によって結合される。異なる繊維を接着剤等で単に貼り合わせて作製した用紙は、剥がして偽造することが容易であるのに対し、本発明の用紙(1)は、異なる繊維間が強固に結合して形成されているため偽造が非常に困難であり、偽造防止用紙として有用である。
【0049】
一つの領域をセルロース微小繊維で形成した場合、その領域は半透明となり透明窓としての効果を奏する。この透明窓は、フィルムには存在しない地合があり、更にフィルムには存在しない繊維独特の手触り感がある等、独特の風合いを有しているため、フィルム貼付や印刷による偽造が困難である。
【0050】
従来、多層紙においては紙質(不織布)の透明窓が存在したが、単層紙において紙質の透明窓を有する用紙はなかった。多層紙の場合、剥がしてから貼りあわせる等、偽造することが可能であったのに対し、単層紙の場合、剥がすことが困難であり、繊維間が強固に結合しているため、偽造が非常に困難である。
【0051】
また、本発明における用紙(1)上に、塗工や印刷を施すことも可能であり、セルロース微小繊維からなる透明窓の領域がある場合には、この領域上にも塗工や印刷が可能である。透明フィルムを用いた透明部の場合には、水性材料の塗工や印刷が難しいが、セルロース微小繊維からなる透明窓の場合、透明窓の領域とそれ以外の領域にかかるように印刷を施すことができ、印刷の図柄によって割印のような使い方をすることで、改竄防止の効果にもなる。
【0052】
次に、用紙の作製方法の説明を行う。
【0053】
図1(a)に示したような、図柄形状による領域を有する用紙を作製する方法の一例を図2に示す。図2(a)に示すように、抄紙機のワイヤー(5)上に、第1の紙料供給槽(図示なし)から領域A(2)を形成する第1の繊維を供給し、ワイヤー(5)上で紙層を形成する際に開口部(6)を形成する。
【0054】
開口部(6)を形成する方法は、空気圧又は液体噴射を利用した開口部形成器(7)による方法がある。開口部形成器(7)による方法は、ワイヤー部の上部に設置した開口部形成器(7)からの空気圧又は液体噴射により、第1の繊維から成る紙層に開口部(6)を形成する。
【0055】
次に、図2(b)に示すように、開口部形成器(7)設置位置より下流側のワイヤー部の上部に、可動式の第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)を設置しておき、開口部(6)に第2の繊維を第2の紙料供給槽(8)から流し込む又は紙料噴射装置(9)により噴射して挿入する。第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)は可動式でなくても良いが、可動式にすることで、第1の繊維の脱水状態に応じて、第2の繊維の挿入タイミングを調節できる。
【0056】
開口部形成器(7)、第2の紙料供給槽(8)、紙料噴射装置(9)にタイマーと制御装置を取り付け、噴射及び挿入のタイミングを設定することで、所定の間隔で自動的に開口及び第2の繊維の挿入を行うことができる。また、開口部形成器(7)と第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)の間に、光学的開口部検出センサ(図示なし)を取り付け、開口部(6)の位置検出信号を制御装置に送り、第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)からの紙料の挿入タイミングを制御することで、開口部(6)の位置に合わせて第2の繊維を挿入することもできる。
【0057】
また、二つの噴射口のある噴射ノズルを使用して、開口部形成と紙料の噴射挿入を、同一ノズルから行うことも可能である。先に開口部形成のための空気圧又は液体噴射を第1の噴射口から行い、一定のタイミング後に第2の噴射口から紙料を噴射する。この場合、ワイヤー部の上部に設置された開口部形成及び紙料噴射装置は、ワイヤーの進む速度に併せて稼働するものとする。
【0058】
次に、図2(c)に示すように、脱水が進行する過程で、第1の繊維及び第2の繊維における繊維同士の絡み合いや水素結合等によって繊維間が結合し、図2(d)に示すように、同一平面上に、第1の繊維から成る領域A(2)と、第2の繊維から成る領域B(3)を有する用紙(1)が作製される。
【0059】
その後、プレスロールでさらに脱水し、乾燥、カレンダ処理を行って、リール装置で巻き取られる。プレス及び乾燥過程で、繊維間の結合はさらに強固になる。
【0060】
図1(a)に示したような、図柄形状による領域を有する用紙を作製する方法の他の一例を図3に示す。図3(a)に示すように、あらかじめ抄紙機のワイヤー(5)上に突起部(10)を形成しておき、抄紙機のワイヤー(5)上に、第1の紙料供給槽(図示なし)から第1の繊維を供給する。
【0061】
その際、図3(b)に示すように、第1の繊維の紙料が突起部(10)の部分を避けて紙層を形成することにより、紙層に開口部(6)が形成される。ワイヤー部の上部に可動式の第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)を設置しておき、開口部(6)に第2の繊維を第2の紙料供給槽(8)から流し込む又は紙料噴射装置(9)により噴射して挿入する。第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)は可動式でなくても良いが、可動式にすることで、第1の繊維の脱水状態に応じて、第2の繊維の挿入タイミングを調節できる。
【0062】
第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)にタイマーと制御装置を取り付け、挿入のタイミングを設定することで、所定の間隔で自動的に第2の繊維の挿入を行うことができる。また、第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)設置個所より上流部に、光学的開口部検出センサ(図示なし)を取り付け、開口部(6)の位置検出信号を制御装置に送り、第2の紙料供給槽(8)又は紙料噴射装置(9)からの紙料の挿入タイミングを制御することで、開口部(6)の位置に合わせて第2の繊維を挿入することもできる。
【0063】
次に、図3(c)に示すように、脱水が進行する過程で、第1の繊維及び第2の繊維における繊維同士の絡み合いや水素結合等によって繊維間が結合し、図3(d)に示すように、同一平面上に、第1の繊維から成る領域A(2)と、第2の繊維から成る領域B(3)を有する用紙(1)が作製される。ただし、この方法の場合、第2の繊維から成る領域B(3)は、ワイヤーの突起部上に形成されるため、第1の繊維から成る領域A(2)よりも突起部の厚さ分薄くなる。
【0064】
紙層に開口部(6)を施す方法は、ワイヤー上の紙層に開口部(6)を形成でき、その後にその開口部(6)に、更に別の紙層を形成できる方法であれば、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【実施例1】
【0065】
本発明の実施例1について、図4を用いて説明する。実施例1では、同一平面上に、第1の繊維から成る領域と、第2の繊維から成る領域を有する用紙の例であり、第2の繊維にセルロース微小繊維を使用して、セルロース微小繊維による半透明の領域を作製し、半透明窓を有する用紙を作製した例を示す。
【0066】
領域A(2−1)を形成する第1の繊維は木材パルプ(LBKP)を使用し、領域B(3−1)を形成する第2の繊維は、セルロース微小繊維「セリッシュ100G(商品名)」(ダイセル化学工業株式会社製)を使用した。
【0067】
用紙の作製方法としては、図2で説明した開口部形成器(7)で開口部(6)を形成し、紙料を噴射する方法により作製した。まず、第1の紙料供給槽から、抄紙機のワイヤー上に領域A(2−1)を形成する木材パルプ(LBKP)の繊維懸濁液を供給し、紙料の流動性が低下した段階で、ワイヤーの上部に設置された開口部形成器(7)により、水噴射によって紙層に開口部(6)を形成した。その開口部(6)に、領域B(3−1)を形成するためのセルロース微小繊維懸濁液を、紙料噴射装置(9)により噴射挿入した。セルロース微小繊維の繊維懸濁液は、領域A(2−1)の領域に多量に流れ出さないように、流動性の低い状態となる濃度で挿入した。
【0068】
その後、ワイヤー下部に設置された搾水ボックスにより紙料の水分が脱水され、木材繊維とセルロース微小繊維が絡み合いや水素結合によって結合した。プレスロールで更に脱水し、乾燥、カレンダ処理を行うことで、繊維間結合は更に強固になり、セルロース微小繊維からなる領域B(3−1)は半透明になった。
【0069】
図4(a)に、以上の作製手順により作製した用紙(1−1)の平面図を示す。用紙(1−1)は、同一平面上に、木材パルプ(LBKP)から成る領域(2−1)と、セルロース微小繊維から成る領域(3−1)を有しており、セルロース微小繊維から成る領域(3−1)は、透明フィルムとは異なる独特な風合と光学特性を持つ半透明窓となった。
【0070】
また、図4(b)に、図4(a)に示した用紙を用いた印刷物を示す。本実施例1における用紙(1−1)への印刷物として、商品券の例を示す。商品券は、前述の方法で作製して断裁した用紙に対し、その他の情報を付与することによって作製される。その他の情報としては、商品券の額面、番号及び図柄とし、オフセット印刷方式により額面と図柄の印刷を行うとともに、インクジェット印刷方式により番号の印刷を行った。
【0071】
番号の印刷に関しては、用紙の左上部と左下部に同じ番号印刷を行ったが、左下部のものは、一部がセルロース微小繊維から成る半透明窓の状態となっている領域(3−1)にかかるように印刷を行った。このように、従来のプラスチックによる透明窓の場合は、水性印刷を施すことが難しかったのに対し、本発明の用紙の設けられた半透明窓には、印刷品質の良い水性印刷を施すことが可能であり、偽造効果に優れた印刷物を作製することが可能である。
【実施例2】
【0072】
本発明の実施例2について、図5を用いて説明する。実施例2では、同一平面上に、第1の繊維から成る領域と、第2の繊維から成る領域と、第3の繊維から成る領域を有する用紙の例であり、第2の繊維にセルロース微小繊維を使用し、第3の繊維に着色繊維を使用して、白色と半透明と着色の領域を有する用紙(1−2)を作製した例を示す。
【0073】
領域A(2−2)を形成する第1の繊維は、木材パルプ(LBKP)を使用し、領域B(3−2)を形成する第2の繊維は、セルロース微小繊維「セリッシュ100G(商品名)」(ダイセル化学工業株式会社製)を使用し、領域C(4−2)を形成する第3の繊維は、木材パルプ(LBKP)を黄色に染色したものを使用した。
【0074】
用紙の作製方法としては、図3で説明したあらかじめ抄紙機のワイヤー上に突起部(10)を形成しておき、紙料を供給する方法により作製した。まず、あらかじめ抄紙機のワイヤー上に模様状の突起部を形成しておき、抄紙機のワイヤー上に、第1の紙料供給槽から領域A(2−2)を形成する木材パルプ(LBKP)の繊維懸濁液を供給した。その際、木材パルプ(LBKP)の繊維懸濁液が突起部の部分を避けて紙層を形成することにより、紙層に開口部(6)が形成された。
【0075】
木材パルプ(LBKP)の繊維懸濁液の流動性が低下し、開口部(6)が形成された段階で、その開口部に、領域B(3−2)を形成するセルロース微小繊維懸濁液と、領域C(4−2)を形成するための黄色に染色した木材パルプ(LBKP)の繊維懸濁液を噴射して挿入した。セルロース微小繊維と着色木材パルプの繊維懸濁液は、領域A(2−2)の領域に多量に流れ出さないように、流動性の低い状態となる濃度で挿入した。
【0076】
その後、ワイヤー下部に設置された搾水ボックスにより紙料が脱水され、木材繊維とセルロース微小繊維と着色木材繊維が、絡み合いや水素結合によって結合した。プレスロールで更に脱水し、乾燥、カレンダ処理を行うことで、繊維間結合は更に強固になり、セルロース微小繊維からなる領域B(3−2)は半透明になった。
【0077】
図5(a)に、以上の作製手順により作製した用紙(1−2)の平面図を示す。用紙(1−2)は、同一平面上に、木材パルプ(LBKP)から成る白色の領域(2−2)と、セルロース微小繊維から成る半透明の領域(3−2)と、黄色に染色した木材パルプ(LBKP)から成る黄色の領域(4−2)を有しており、白色、半透明、黄色の3色の領域を有する用紙(1−2)が作製された。
【符号の説明】
【0078】
1、1−1、1−2 用紙
2、2−1、2−2 第1の繊維からなる領域A
3、3−1、3−2 第2の繊維からなる領域B
4、4−2 第3の繊維からなる領域C
5 ワイヤー
6 開口部
7 開口部形成器
8 第2の紙料供給槽
9 紙料噴射装置
10 突起部
図1
図2
図3
図4
図5