【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定の組成式で表される2次元層状構造を有する結晶性アルミノボレートに、アルカリ土類金属とリチウムをドープした酸化物は、比較的安価な原料を用いて簡単な方法によって合成可能な材料であって、良好なリチウムイオン導電性を示すことを見出した。更に、該アルミノボレートは、軽元素のみからなる骨格構造を有することから、単位体積当たりの重量が低く、高エネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池の固体電解質として有用であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果、完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記のリチウム含有結晶性アルミノボレート及びその用途を提供するものである。
項1. 組成式:Li
2x(M
11−0.5yM
2y)
1−xAl
2B
2O
7(式中M
1はアルカリ土類金属であり、M
2はLi以外のアルカリ金属である。xは0.125〜0.5の範囲の数値であり、yは0〜0.5の範囲の数値である)で表され、2次元層状骨格構造を有することを特徴とするリチウム含有結晶性アルミノボレート。
項2. M
1が、Ca及びSrからなる群から選ばれた少なくとも一種である、項1に記載のリチウム含有結晶性アルミノボレート。
項3. 項1又は2に記載のリチウム含有結晶性アルミノボレートからなる全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質。
項4. 項3に記載の固体電解質を電解質として含む全固体リチウムイオン二次電池。
【0010】
以下、本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートについて具体的に説明する。
【0011】
リチウム含有結晶性アルミノボレート
本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートは、
組成式:Li
2x(M
11−0.5yM
2y)
1−xAl
2B
2O
7
(式中M
1はアルカリ土類金属であり、M
2はLi以外のアルカリ金属である。xは0.125〜0.5の範囲の数値であり、yは0〜0.5の範囲の数値である)で表される2次元層状骨格構造を有する化合物である。
【0012】
上記組成式において、M
1で表されるアルカリ土類金属としては、Ca,Sr,Ba等を例示できる。M
2で表されるLi以外のアルカリ金属としては、K、Na等を例示できる。上記組成式中、xはリチウム元素の比率を示すものであり、0.125〜0.5の範囲の数値であり、好ましくは0.125〜0.25の範囲の数値である。yは、M
1で表されるアルカリ土類元素の一部を置換するM
2の比率を示す数値であり、0〜0.5の範囲の数値であり、好ましくは、0〜0.25の範囲の数値である。
【0013】
上記組成式で表される本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートは、2次元層状骨格構造を有する化合物であり、具体的には、Al
2O
78-多面体(2つのAlO
45-四面体が互いに頂点を共有する)の6つの頂点のそれぞれがBO
33-を介して他のAl
2O
78-多面体と平面上に結合した式Al
2B
2O
72-で表される2次元層状骨格構造を母体として、その層状骨格構造の隙間又は層状骨格構造間に、Li、M
1及びM
2が挿入されたものであり、母体とする式Al
2B
2O
72-で表される2次元層状骨格構造と同様の結晶構造を有するものである。
【0014】
上記した組成式で表されるリチウム含有結晶性アルミノボレートは、従来知られていない新規な化合物であり、良好なリチウムイオン導電性を示す物質である。該リチウム含有結晶性アルミノボレートがリチウムイオン導電性を示す理由については明確ではないが、Al
2B
2O
72-で表される2次元層状骨格構造を母体とすることから、この層状骨格構造の隙間をリチウムイオンが移動することによるものと推定される。
【0015】
リチウム含有結晶性アルミノボレートの製造方法
本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートは、例えば、目的とするリチウム含有結晶性アルミノボレートの元素成分比率と同様の元素成分比率となるように原料物質を混合し、焼成することによって製造することができる。
【0016】
焼成温度及び焼成時間については、目的とする酸化物が形成される条件とすれば良く、特に限定されないが、例えば800〜1100℃程度の温度範囲とすればよい。焼成時間については、上記した条件を満足する化合物が得られるまで焼成すればよいが、通常、6〜24時間程度とすればよい。
【0017】
尚、原料物質として炭酸塩や有機化合物等を用いる場合には、焼成する前に予め仮焼きして原料物質を分解させた後、焼成して目的の複合酸化物を形成することが好ましい。例えば、原料物質として炭酸塩を用いる場合には、800℃程度で仮焼きした後、上記した条件で焼成すれば良い。
【0018】
焼成手段は特に限定されず、電気加熱炉、ガス加熱炉等任意の手段を採用できる。焼成雰囲気は、通常、酸素気流中、空気中等の酸化性雰囲気中とすればよいが、原料物質が十分量の酸素を含む場合には、例えば、不活性雰囲気中で焼成することも可能である。
【0019】
焼成による上記した化合物の生成反応を効率よく進行させるために、原料粉末を加圧成形体として焼成することが好ましい
原料物質としては、焼成により酸化物を形成し得るものであれば特に限定されず、酸化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシド化合物等を用いることができる。また本発明の複合酸化物の構成元素を二種以上含む化合物を使用してもよい。
【0020】
リチウム含有結晶性アルミノボレートの用途
上記した通り、本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートは、リチウムイオン導電性を有する材料であって、軽元素のみからなる骨格構造を有するために単位体積当たりの重量が小さく、高エネルギー密度を有する全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質として有用な物質である。
【0021】
本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートを固体電解質として用いる全固体リチウムイオン二次電池の構造については特に限定はなく、従来公知のものと同様でよい。基本的な構造としては、リチウムイオン導電性の固体電解質層を挟んで、正極層と負極層が積層された構造であって、本発明のリチウム含有結晶性アルミノボレートを固体電解質とすればよい。