【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種の材料変更、設計変更、設定調整等が可能である。
【0032】
(実施例1)
図4に、本実施形態の一つとして光電変換半導体素子(太陽電池)の例を示す。本実施例においては、トップ太陽電池としてAl
0.3Ga
0.7As光吸収層を有するセル301、ボトム太陽電池としてCIGSe半導体層を有するセル302からなる2つの太陽電池を接合した場合を示す。GaAs系太陽電池301は、p型GaAsバッファ層303、p型Al
0.3Ga
0.7As光吸収層304、n型GaAsエミッタ層305、n型GaAsコンタクト層306、およびn型電極AuGeNi 307からなる。n型電極は、太陽光を受光するために、櫛型状の形態を有している。CIGSe系太陽電池302は、ガラス基板308上に、Mo電極309、CIGSe半導体層310、CdSエミッタ層311、ZnO透明伝導層312からなっている。ここで、CIGSe系太陽電池302表面には、ナノ粒子313の配列がなされている。本実施例では、Pdのナノ粒子を用いた。
【0033】
Pdナノ粒子313は、ブロック共重合体としてポリスチレン−ポリ-2-ビニルピリジンを薄膜化し、それをテンプレートとして用いることによりCIGSe系太陽電池302上に配列させた。すなわち、総分子量265000g/molのポリスチレン−ポリ-2-ビニルピリジン(ポリスチレン分子量:133000g/mol、ポリ-2-ビニルピリジン分子量:132000g/mol)の0.5重量%オルトキシレン溶液をCIGSeセル302の表面にスピンコーティングし、薄膜形成した。次に、この太陽電池302を1mMのNa
2PdCl
4水溶液に300秒浸した。水洗後、このセルをアルゴンプラズマ処理することにより、有機分子で覆われていない平均サイズ50ナノメートルのパラジウムナノ粒子313を整列配置させた。本配置におけるパラジウムナノ粒子間の平均配列間隔は100ナノメートルであった。この後、本実施例では圧着により接合させた。すなわち、水をCIGSe系セル302上に滴下しGaAs系セル301をセットして、表面張力を用いて両素子を仮接合させた。この後に、150 ℃加温状態で30分以上加圧し、素子間にPdナノ粒子313を存在させた状態で接合させた。
【0034】
前記太陽電池に関しては、GaAs系およびCIGSe系太陽電池に特に制限されることなく、たとえばInP、もしくは、GaSb基板上等に積層された1接合、または、2接合以上からなる太陽電池、Si結晶太陽電池、アモルファスSi太陽電池、微結晶Si太陽電池、有機太陽電池、増感型太陽電池、カルコパイライト系材料を用いた太陽電池、その他太陽電池の組み合わせが挙げられる。
また、前記接着手法に関しては、圧着に特に制限されることなく、例えばプラズマやイオンビームを用いた表面活性化による素子の直接接合全般に適用できる。
また、導電性ナノ粒子に関しては、Pdに特に制限されることなく、Au、Ag、Pt、Ni、Al、Zn、In等の金属ナノ粒子、またはZnO、In
2O
3等の導電性を有する金属酸化物ナノ粒子などが可能である。
また、導電性ナノ粒子のサイズに関しては、50ナノメートルに制限されることなく、10-200ナノメートルの範囲において適用できる。
また、導電性ナノ粒子の配置間隔に関しては、100ナノメートルに制限されることなく、ナノ粒子サイズの2倍以上10倍以下の距離が離れていれば差し支えない。
【0035】
つぎに、本実施例による、太陽電池動作について説明する。
図5には、太陽電池のIV特性を示す。
図5中(a)は、本発明実施例に従い製作された太陽電池の特性、(b)にはPdナノ粒子を介在させない接合構造での特性を示す。これより、(a)では、開放電圧1.62V、曲線因子0.53が得られており、2接合セルでの予測特性(開放電圧1.92V)に合致する特性が得られている。一方、(b)ではIV特性が大きく劣化している様子が伺える。つまり、開放電圧は1.65Vであるが、曲線因子が0.23にまで低下している。各特性より接合抵抗を見積もると、従来構造では200Ωcm
2以上であり、本発明構造では10Ωcm
2である。すなわち、接合抵抗の違いが、IV特性の改善につながっている。
【0036】
(実施例2)
図6に、本実施形態の一つとして光電変換半導体素子(太陽電池)の例を示す。本実施例においては、トップ太陽電池としてGaAs系光吸収層を有するセル501、ボトム太陽電池としてInP系半導体層を有するセル502からなる2つの太陽電池を接合した場合を示す。GaAs系太陽電池501は、p型GaAsバッファ層503、p型GaAs光吸収層504、n型GaAsエミッタ層505、n型Ga
0.51In
0.49P/p型Ga
0.51In
0.49P (506/507)トンネル層、p型Ga
0.51In
0.49P光吸収層508、n型Ga
0.51In
0.49Pエミッタ層509、n型GaAsコンタクト層510、およびn型電極AuGeNi 511からなる。n型電極は、太陽光を受光するために、櫛型状の形態を有している。InP系太陽電池502は、InP基板512上に、p型InPバッファ層513、p型In
0.91Ga
0.09As
0.2P
0.8光吸収層514(バンドギャップエネルギー1.2eV)、n型In
0.91Ga
0.09As
0.2P
0.8エミッタ層515、n型InP層516からなっている。ここで、InP系太陽電池502表面には、ナノ粒子配列517がなされている。本実施例では、Auのナノ粒子を用いた。なお、InGaAsP組成は設計的要素であり、目標特性に応じて自在に組成を調整できるものである。
【0037】
Auナノ粒子517は、ブロック共重合体としてポリスチレン−ポリ-2-ビニルピリジンを薄膜化し、それをテンプレートとして用いることによりInP系太陽電池502上に配列させた。すなわち、総分子量183500g/molのポリスチレン−ポリ-2-ビニルピリジン(ポリスチレン分子量:125000g/mol、ポリ-2-ビニルピリジン分子量:58500g/mol)の0.3重量%トルエン溶液をInP系太陽電池502表面にスピンコーティングし、薄膜形成した。次に、この太陽電池502を1mMのKAuCl
4水溶液に600秒浸した。水洗後、このセルをアルゴンプラズマ処理することにより、有機分子で覆われていない平均サイズ10ナノメートルのAuナノ粒子517を整列配置させた。本配置におけるAuナノ粒子間の平均間隔は30ナノメートルであった。この後に、本実施例では、圧着により接合させた。すなわち、水をInP系セル502に滴下しGaAs系セル501をセットして、表面張力を用いて両素子を仮接合させた。この後に、150℃加温状態で30分以上加圧し、素子間にAuナノ粒子517を存在させた状態で接合させた。
【0038】
つぎに、本実施例による、太陽電池動作について説明する。
図7には、太陽電池のIV特性を示す。
図7中(a)は、本実施例に従い製作された太陽電池の特性、(b)にはAuナノ粒子を介在させない接合構造での特性を示す。これより、(a)では、開放電圧2.90V、曲線因子0.69が得られており、3接合セルでの予測特性(開放電圧2.97V)に合致する特性が得られている。一方、(b)ではIV特性が大きく劣化している様子が伺える。つまり、開放電圧は2.56Vであるが、曲線因子が0.45にまで低下している。各特性より接合抵抗を見積もると、従来構造では200Ωcm
2以上であり、本発明構造では20Ωcm
2以下である。すなわち、接合抵抗の違いが、IV特性の改善につながっている。
なお、本実施例ではInP基板512上にInGaAsP光吸収層514を有する構造をボトムセルとして用いたが、Ge基板上に同様にInGaAsP光吸収層あるいはInGaAs歪み光吸収層を形成した構造においても適用できる。
【0039】
(実施例3)
図8に、本実施形態の一つとして光電変換半導体素子(太陽電池)の例を示す。本実施例においては、トップ太陽電池としてアモルファスSi光吸収層を有する太陽電池701、ボトム太陽電池として結晶Si系半導体層を有する太陽電池702からなる2つの太陽電池を接合した場合を示す。アモルファスSi太陽電池701は、ZnO透明導電層703、n型アモルファスSi層704、i型アモルファスSi光吸収層705、p型アモルファスSi層706、フッ素ドープSnO
2透明導電層707、およびガラス基板708からなる。結晶シリコン太陽電池702は、Al電極709上に、n型結晶Si層710、p型結晶Si層711、ITO透明導電層712からなる。ここで、結晶Si太陽電池702表面には、ナノ粒子配列713がなされている。本実施例では、Ptのナノ粒子を用いた。
【0040】
Ptナノ粒子713は、ブロック共重合体としてポリスチレン−ポリ-4-ビニルピリジンを薄膜化し、それを鋳型として用いることにより結晶シリコン系セル上に配列させた。すなわち、総分子量39000g/molのポリスチレン−ポリ-4-ビニルピリジン(ポリスチレン分子量:20000g/mol、ポリ-4-ビニルピリジン分子量:19000g/mol)の0.6重量%トルエン溶液を結晶Si太陽電池702表面にスピンコーティングし、薄膜形成した。次に、この太陽電池702を1mMのNa
2PtCl
4水溶液に1800秒浸した。水洗後、このセルをアルゴンプラズマ処理することにより、有機分子で覆われていない平均サイズ20ナノメートルのPtナノ粒子712を整列配置させた。本配置におけるPtナノ粒子間の平均間隔は40ナノメートルであった。この後に、本実施例では、圧着により接合させた。すなわち、水を結晶シリコン系セル702に滴下しアモルファスシリコン系セル701をセットして、表面張力を用いて両素子を仮接合させた。この後に、150℃加温状態で30分以上加圧し、素子間にPtナノ粒子712を存在させた状態で接合させた。
【0041】
つぎに、本実施例による、太陽電池動作について説明する。本実施例に従い製作された太陽電池の特性とPtナノ粒子を介在させない接合構造での特性を比較したところ、前者では、開放電圧1.45V、曲線因子0.63が得られており、2接合セルでの予測特性(開放電圧1.5V)に合致する特性が得られた。一方、後者ではIV特性が大きく劣化している様子が伺えた。つまり、開放電圧は1.40Vであるが、曲線因子が0.25にまで低下した。各特性より接合抵抗を見積もると、従来構造では100Ωcm
2以上であり、本発明の実施例構造では10Ωcm
2以下である。すなわち、接合抵抗の違いが、IV特性の改善につながっている。
【0042】
以上の実施例1−3で示したとおり、本発明構造では、導電性ナノ粒子のモノレイヤーを各種太陽電池接合界面に配列し、かつその状態で接合させることにより、界面での光透過性を損なうことなく接合抵抗を大幅に改善したことにより、良好な太陽電池特性が得ることができる。ただし、本発明の用途は太陽電池に限定されず、導電性および光透過性を必要とする半導体素子の接合に関して幅広く適用可能である。
【0043】
(実施例4)
図9に、本実施形態の一つとして光電変換半導体素子(太陽電池)の例を示す。本実施例においては、トップ太陽電池としてGaAs系光吸収層を有するセル901、ボトム太陽電池としてInP系半導体層を有するセル902からなる2つの太陽電池を接合した場合を示す。GaAs系太陽電池901は、p型GaAsバッファ層903、p型GaAs光吸収層904、n型GaAsエミッタ層905、n型InGaPエミッタ層906、n型GaAsコンタクト層907、およびn型電極AuGeNi 908からなる。n型電極は、太陽光を受光するために、櫛型状の形態を有している。InP系太陽電池902は、InP基板909上に、p型InPバッファ層910、p型In
0.83Ga
0.17As
0.37P
0.63光吸収層911(バンドギャップエネルギー1.15eV)、n型In
0.83Ga
0.17As
0.37P
0.63エミッタ層912、n型InP層913からなっている。ここで、InP系太陽電池902表面には、ナノ粒子配列914がなされている。本実施例では、Agのナノ粒子を用いた。なお、InGaAsP組成は設計的要素であり、目標特性に応じて自在に組成を調整できるものである。
【0044】
Agナノ粒子914は、微小凸部が形成されたポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるスタンプを用いる転写手法によりInP系セル上に配列させた。すなわち、直径230ナノメートル、高さ200ナノメートルの円柱構造が中心間距離460ナノメートルで6角形状配列したPDMSスタンプ上に、電子ビーム蒸着により厚さ50ナノメートルのAg薄膜を形成した。次に、このAg薄膜付スタンプを3-メルカプトプロピルトリメトキシシランSAM膜を表面に有するInP系太陽電池902に室温にて5分間、凸部分のみを接触させAgナノ粒子構造を転写し、その後セルをアルゴンプラズマ処理することにより、
図3に示したように有機分子で覆われていない直径230ナノメートル、高さ50ナノメートルのAgナノ粒子(円柱状)914を整列配置させた。本配置におけるAgナノ粒子の中心間距離は460ナノメートルであった。この後に、本実施例では、GaAs系セル901とInP系セル902を圧着により接合させた。すなわち、水をInP系セル902に滴下しGaAs系セル901をセットして、表面張力を用いて両素子を仮接合させた。この後に、150℃加温状態で30分以上加圧し、素子間にAgナノ粒子914を存在させた状態で接合させた。
【0045】
つぎに、本実施例による、太陽電池動作について説明する。本実施例に従い製作された太陽電池の特性を計測したところ(
図10参照)、開放電圧1.3V、短絡電流14.8mA、発電効率11.8%が得られ、2接合セルでの予測特性(開放電圧1.5V、短絡電流11.7mA、発電効率11%)を上回る特性が得られた。つまり、先述の実施例1−3でみられたようにAgナノ粒子が2つのセルを導電接続させているのみならず、本例ではボトムInP系セルに対して有効な光閉じ込め効果をもたらしているため、予測特性を大きく上回る短絡電流値が得られ、結果としてセル全体の発電効率が向上している。
【0046】
以上の実施例4で示したとおり、本発明構造では、導電性ナノ粒子のモノレイヤーを太陽電池接合界面に配列し、かつその状態で接合させることにより、異なる太陽電池間の導電接続を実現し、かつ接合界面で素子特性に有利に働く光学特性の設計が可能となり、良好な太陽電池特性が得ることができる。ただし、本発明の用途は太陽電池に限定されず、導電性および界面での光学特性設計を必要とする半導体素子の接合に関して幅広く適用可能である。