特許第5875330号(P5875330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5875330
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20160218BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   B24B45/00 Z
   H01L21/78 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-243509(P2011-243509)
(22)【出願日】2011年11月7日
(65)【公開番号】特開2013-99799(P2013-99799A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−015548(JP,A)
【文献】 実開昭61−124368(JP,U)
【文献】 実開昭53−024994(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0053364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、を備えた切削装置であって、
該切削手段は、
モータにより回転駆動されるスピンドルと、
該スピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと、
該切削ブレードを挟持して該スピンドルに固定するマウントと、を具備し、
該マウントは、該スピンドルの先端部に取り付けられると共に該切削ブレードが装着される後ろマウントを含み、
後ろマウントと該切削ブレードとの双方に、該スピンドルの回転中と停止中とで模様が変わることで該スピンドルの回転を認識させる認識マークが形成されていることを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットとを備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハを個々のデバイスに分割する切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハの分割予定ラインを切削する切削ブレードを回転可能に支持した切削ユニットとを具備しており、ウエーハを高精度に個々のデバイスに分割することができる。
【0003】
切削ユニットは、スピンドルハウジング中に回転可能に収容されたスピンドルと、スピンドルを駆動するモータと、スピンドルの先端に着脱可能に装着される切削ブレードと、切削ブレードを挟持してスピンドルに固定するマウントとから構成される。
【0004】
最近の切削装置では、スピンドルが40000rpm〜60000rpm等の非常に高速で回転される。切削加工を継続すると切削ブレードが磨耗するか或いは破損して、新たな切削ブレードに交換する必要が生じる。この交換作業等のメンテナンスの際には、オペレータは切削ブレードが固定されたスピンドルの周辺に手を伸ばして作業を行う必要がある。
【0005】
このようなメンテナンス作業が行われる際には、通常は、切削装置に備えられた安全装置が作動するため、オペレータが切削ブレード等の周辺に手を伸ばす際に、スピンドルが停止状態とされることでオペレータの安全が確保されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−248618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、装置メーカーのメンテナンス担当者等が安全装置を何らかの理由により意図的に解除して、メンテナンスを行う場面が生じることが想定される。この際、スピンドル及びスピンドルに装着された切削ブレードが回転しているような場合には、メンテナンス担当者やオペレータが切削ブレード等の周辺に手を伸ばすことは避けなければならない。
【0008】
ところが、スピンドルや切削ブレードが回転しているか否かについては、従来の構成では一見して判断することが困難なものであったため、メンテナンス担当者やオペレータが誤って回転しているスピンドルや切削ブレードに接触して怪我をする恐れがあった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スピンドルが回転中であることを目視で容易に認識できる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段とを備えた切削装置であって、該切削手段は、モータにより回転駆動されるスピンドルと、該スピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと、該切削ブレードを挟持して該スピンドルに固定するマウントと、を具備し、該マウントは、該スピンドルの先端部に取り付けられると共に該切削ブレードが装着される後ろマウントを含み、後ろマウントと該切削ブレードとの双方に、該スピンドルの回転中と停止中とで模様が変わることで該スピンドルの回転を認識させる認識マークが形成されていることを特徴とする切削装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切削装置によると、スピンドルが回転中と停止中とで模様が変わる認識マークがマウントと切削ブレードの少なくとも何れか一方に形成されているため、メンテナンス担当者又はオペレータはスピンドルの回転を目視で容易に認識できるため、メンテナンス担当者やオペレータが誤って回転中のスピンドルや切削ブレードで接触して怪我をする恐れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】切削装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】ハブブレードを有する切削ユニットの分解斜視図である。
図3】ワッシャーブレードを有する切削ユニットの分解斜視図である。
図4】ワッシャーブレードが装着されたスピンドル先端部分の側面図である。
図5図5(A)は円形基台に認識マークを有するスピンドル停止中のハブブレードカバー(切削ブレード)の正面図、図5(B)はスピンドル回転中の切削ブレードの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウエーハ等のウエーハをダイシングして個々のチップ(デバイス)に分割することのできる本発明実施形態に係る切削装置2の斜視図が示されている。
【0014】
切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。装置上部には、オペレータに対する案内画面や後述する撮像ユニットによって撮像された画像が表示されるCRT等の表示モニタ6が設けられている。
【0015】
ウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着されている。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介してフレームFに支持された状態となり、図1に示したウエーハカセット8中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット8は上下動可能なカセットエレベータ9上に載置される。
【0016】
ウエーハカセット8の後方には、ウエーハカセット8から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット8に搬入する搬出入ユニット10が配設されている。ウエーハカセット8と搬出入ユニット10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハWを一定の位置に位置合わせする一対の位置合わせバー14が配設されている。
【0017】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送ユニット16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送ユニット16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数のクランプ19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0018】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0019】
アライメントユニット20は、ウエーハWの表面を撮像する顕微鏡とCCDカメラを有する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、表示モニタ6に表示される。
【0020】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削ユニット24が配設されている。切削ユニット24はアライメントユニット20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0021】
切削ユニット24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像ユニット22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0022】
切削加工の終了した被加工物を保持したチャックテーブル18がホームポジションに戻された後、搬送ユニット25で被加工物がチャックテーブル18上から吸着されてスピンナ洗浄ユニット27に搬送され、スピンナ洗浄ユニット27でスピン洗浄及びスピン乾燥される。
【0023】
図2を参照すると、ハブブレード(切削ブレード)28が装着された切削ユニット24の分解斜視図が示されている。スピンドルハウジング30の先端部分には小径部34及び大径部36を有するブレード取付部32が配設されている。スピンドル26の先端部はブレード取付部32から突出し、先端に向けてテーパ形状に形成されており、雌ねじ27が形成されている。
【0024】
38はボス部40と、ボス部40とを一体的に形成されたマウントフランジ42とから構成される後ろマウント(ブレードマウント)であり、後ろマウント38のボス部40には雄ねじ44が形成されている。更に、後ろマウント38は装着穴45を有している。
【0025】
後ろマウント38は、装着穴45をスピンドル26の先端部に挿入して、締結ボルト48をスピンドル26の雌ねじ27に締結して締め付けることにより、スピンドル26の先端部に取り付けられる。
【0026】
切削ブレード28はハブブレードと呼ばれ、円形ハブ52を有する円形基台50の外周にニッケル母材中にダイヤモンド砥粒が分散された切刃54が電着されて構成されている。
【0027】
切削ブレード28の円形基台50の外周縁には複数の認識マーク56が形成されている。この認識マーク56は例えば黒、赤、青等円形基台の色と大きく異なる色で色付けされているのが好ましい。色付けに代えてカラーシールやテープを貼着するようにしてもよい。
【0028】
後ろマウント38のマウントフランジ42の前側には、複数の認識マーク46が形成されている。認識マーク46は色付けされているのが好ましい。色付けに代えてカラーシールやテープを貼着するようにしてもよい。後ろマウントにも認識マークを形成することで切削ブレード28を外した状態での作業中にも作業者が後ろマウント38の回転を認識できる。
【0029】
切削ブレード28の装着穴51を後ろマウント38のボス部40に挿入し、ハブブレード押さえナット58をボス部40の雄ねじ44に螺合して締め付けることにより、切削ブレード28がスピンドル26の先端部に取り付けられる。
【0030】
ハブブレード押さえナット58は複数の認識マーク60を有している。これらの認識マーク60は色付けされているのが好ましい。色付けに代えてカラーシールやテープを貼着するようにしてもよい。本実施形態では、後ろマウント38とハブブレード押さえナット58とでハブブレード28を挟持するマウントを構成する。
【0031】
図3を参照すると、ワッシャーブレード28Aを有する切削ユニット24の分解斜視図が示されている。図2を参照して説明したように、後ろマウント38は装着穴45をスピンドル26の先端部に挿入して、締結ボルト48をスピンドル26の先端に形成された雌ねじ27に螺合して締め付けることにより、スピンドル26の先端部に固定される。
【0032】
ワッシャーブレード(切削ブレード)28Aはその全体が電鋳された切刃(電鋳砥石)から構成されている。ワッシャーブレード28Aは複数の認識マーク62を有している。認識マーク62は色付けされているのが好ましい。色付けに代えてカラーシールやテープを貼着するようにしてもよい。
【0033】
ワッシャーブレード28Aの装着穴29を後ろマウント38のボス部40に挿入し、前マウント64の装着穴65を後ろマウント38のボス部40に挿入して、後ろマウント38と前マウント64でワッシャーブレード28Aを挟持する。
【0034】
そして、前マウント押さえナット58を後ろマウント38のボス部40に形成された雄ねじ44に螺合して締め付けることにより、ワッシャーブレード28Aは後ろマウント38と前マウント64に挟持された状態でスピンドル26の先端部に固定される。本実施形態では、後ろマウント38と前マウント64でワッシャーブレード28Aを挟持するマウントを構成する。
【0035】
図4に示すように、ワッシャーブレード28Aは外周側の使用領域W1と使用領域W1の内側の余裕領域W2を有しており、認識マーク62は余裕領域W2にのみ形成されるのが好ましい。ワッシャーブレード28Aは切削加工に伴い磨耗していくので、使用領域W1は被加工物の厚みより長く設定されている。
【0036】
ワッシャーブレード28Aでは、加工に伴いワッシャーブレード28Aが磨耗していったときでも、被加工物の厚みばらつきによって後ろマウント38及び前マウント64が被加工物に切り込まないように、所定の余裕領域W2を設定するように後ろマウント38及び前マウント64でワッシャーブレード28Aを挟持するようにしている。
【0037】
図3に示した実施形態ではワッシャーブレード28Aのみ認識マーク62を形成しているが、前マウント64及び前マウント押さえナット58にも認識マークを形成するようにしてもよい。更に、図2に示した実施形態と同様に、後ろマウント38にも認識マークを形成するようにしてもよい。
【0038】
次に、図5を参照して、本発明の切削装置の作用について説明する。図5(A)を参照すると、スピンドル26が停止中の切削ブレード(ハブブレード)28の正面図が示されている。
【0039】
複数の認識マーク56はスピンドル26が回転していないため、個別の認識マーク56として認識される。よって、メンテナンス担当者又はオペレータは認識マーク56によりスピンドル26の停止中を確認することができ、ブレード交換等の作業を行うことができる。
【0040】
一方、スピンドル26が回転中には、図5(B)に示すように、認識マーク56は円環状に連続したものとして認識される。よって、メンテナンス担当者又はオペレータが円環状の認識マーク56を視認したときには、スピンドル26が回転中であると確認でき、時間が経過してスピンドル26が回転を停止してから、図5(A)の状態を確認し、切削ブレード28の交換等の作業を進めることができる。
【0041】
尚、図2に示した実施形態では、後ろマウント38に認識マーク46が形成されているが、これは切削ブレード28を外したときにスピンドル26が回転中か停止中かを確認できるようにしたものである。
【符号の説明】
【0042】
2 切削装置
18 チャックテーブル
24 切削ユニット
26 スピンドル
28 切削ブレード(ハブブレード)
28A 切削ブレード(ワッシャーブレード)
38 後ろマウント
46,56,60,62 認識マーク
48 締結ボルト
58 押さえナット
図1
図2
図3
図4
図5