【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、表面性状測定機において、複数の表示レンジを切り替えて表示を行う場合、各表示レンジの処理系の特性等により、表示に誤差が生じることがある。
すなわち、表面性状測定機の各表示レンジでは、一つの測定値をレンジ毎のゲインで表示値に換算する。しかし、各レンジの増幅器に誤差があると、同じ測定値でも表示レンジ毎に異なる表示値になる可能性がある。例えば、10μmレンジで0.60μm表示だが、1μmレンジでは0.61μmと表示される等である。
【0008】
このようなレンジ間誤差に対しては、ユーザが表示レンジ毎に機器の調整を行うことで、誤差の解消が図られている。
一方、特許文献1のような自動的な表示レンジの切り替えを行う場合、切り替えの都度ユーザが調整を行うのでは自動化の効果が削がれる。そこで、特許文献2のような誤差の調整までを自動化できる技術が重要な意味をもつ。
ここで、特許文献2が解消しようとするレンジ間誤差は主にレンジ毎のオフセット量の誤差である。オフセット誤差はレンジ間誤差の代表的なものであるが、オフセット誤差の解消だけではレンジ間誤差の解消としては十分でないことが明らかとなっている。
【0009】
図8において、横軸の測定値に対して、縦軸の表示値が表示されるとすると、各々の関係は基本的に右上がりの比例関係となる。従来の表示レンジ切り替えでは、測定値が小さい場合には増幅率の高い表示レンジR1を利用し、測定値が大きくなるにつれて表示レンジR2,R3を切り替えて表示することが行われる。
各表示レンジR1〜R3にはレンジ間誤差が生じる。前述したように、レンジ間誤差の代表的なものとしてオフセット誤差があり、
図8のグラフにおいては各表示レンジの間に段差状に現れる。このオフセット誤差は、グラフの平行移動に相当するものであるが、実際のレンジ間誤差は、グラフの傾きとしても現れている。
従って、前述したオフセット誤差の解消だけでは、レンジ間誤差の部分的な解消にとどまってしまい、各表示レンジの全体で誤差を解消できる技術の開発が望まれていた。
【0010】
本発明は、各表示レンジの全体で誤差を解消できる表面性状測定機、その制御装置およびその調整方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レンジ間誤差の代表的なものであるオフセット誤差に加えて、別の代表的なレンジ間誤差であるゲイン誤差を補正することにより、各表示レンジの全体で誤差の解消を図るものである。
すなわち、前述した
図8において、各表示レンジでのグラフの傾きとして現れるのは各表示レンジでの増幅ゲインの変動であり、このゲイン誤差を補正することで各表示レンジの全体で誤差を解消しようとするのが本発明である。このために、本発明は、以下に示す構成を備える。
【0012】
本発明の表面性状測定機は、ワーク表面の変位を検出する変位センサと、測定結果を表示する表示装置と、前記変位センサからの検出信号を処理して測定結果を前記表示装置に表示する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記変位センサからの検出信号を処理して測定値として出力するセンサ回路と、異なる増幅率で前記測定値を増幅する複数のレンジアンプを含むレンジアンプ回路と、前記レンジアンプ回路で増幅されたアナログ信号をディジタル変換するAD変換器と、前記AD変換器で変換されたAD変換値を処理して前記レンジアンプに応じた複数の表示レンジで前記表示装置に表示するディジタル回路と、を有する表面性状測定機であって、
前記ディジタル回路は、前記AD変換器で変換されたAD変換値と前記表示レンジに応じた補正表示分解能の積を補正表示値として前記表示装置に表示させるものであり、
前記補正表示分解能は、
前記表示レンジの何れかを基準レンジとして選定し、前記表示レンジの各々に対して校正用測定値を設定し、
前記基準レンジに対応する前記レンジアンプに、前記測定値に代えて前記校正用測定値を順次入力し、前記表示装置に表示される表示値を基準表示値として取得し、
前記表示レンジの各々に対応する前記レンジアンプに、それぞれ前記測定値に代えて前記表示レンジの各々に対応する前記校正用測定値を入力し、前記表示レンジの各々における前記AD変換値および前記表示装置に表示される表示値を取得し、
前記表示レンジの各々について、前記基準表示値を前記表示値で除してゲイン誤差率を計算し、前記表示値を前記AD変換値で除して表示分解能を計算し、前記表示分解能と前記ゲイン誤差率との積を補正表示分解能として記録したものである、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の表面性状測定機の制御装置は、ワーク表面の変位を検出する変位センサと、測定結果を表示する表示装置と、を備えた表面性状測定機に設置され、前記変位センサからの検出信号を処理して測定結果を前記表示装置に表示する表面性状測定機の制御装置であって、
前記変位センサからの検出信号を処理して測定値として出力するセンサ回路と、異なる増幅率で前記測定値を増幅する複数のレンジアンプを含むレンジアンプ回路と、前記レンジアンプ回路で増幅されたアナログ信号をディジタル変換するAD変換器と、前記AD変換器で変換されたAD変換値を処理して前記レンジアンプに応じた複数の表示レンジで前記表示装置に表示するディジタル回路と、を有し、
前記ディジタル回路は、前記AD変換器で変換されたAD変換値と前記表示レンジに応じた補正表示分解能の積を補正表示値として前記表示装置に表示させるものであり、
前記補正表示分解能は、
前記表示レンジの何れかを基準レンジとして選定し、前記表示レンジの各々に対して校正用測定値を設定し、
前記基準レンジに対応する前記レンジアンプに、前記測定値に代えて前記校正用測定値を順次入力し、前記表示装置に表示される表示値を基準表示値として取得し、
前記表示レンジの各々に対応する前記レンジアンプに、それぞれ前記測定値に代えて前記表示レンジの各々に対応する前記校正用測定値を入力し、前記表示レンジの各々における前記AD変換値および前記表示装置に表示される表示値を取得し、
前記表示レンジの各々について、前記基準表示値を前記表示値で除してゲイン誤差率を計算し、前記表示値を前記AD変換値で除して表示分解能を計算し、前記表示分解能と前記ゲイン誤差率との積を補正表示分解能として記録したものである、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の表面性状測定機の調整方法は、ワーク表面の変位を検出する変位センサと、測定結果を表示する表示装置と、前記変位センサからの検出信号を処理して測定結果を前記表示装置に表示する制御装置とを備え、前記制御装置が、前記変位センサからの検出信号を処理して測定値として出力するセンサ回路と、異なる増幅率で前記測定値を増幅する複数のレンジアンプを含むレンジアンプ回路と、前記レンジアンプ回路で増幅されたアナログ信号をディジタル変換するAD変換器と、前記AD変換器で変換されたAD変換値を処理して前記レンジアンプに応じた複数の表示レンジで前記表示装置に表示するディジタル回路と、を有する表面性状測定機を調整する表面性状測定機の調整方法であって、
前記表示レンジの何れかを基準レンジとして選定し、前記表示レンジの各々に対して校正用測定値を設定する手順、
前記基準レンジに対応する前記レンジアンプに、前記測定値に代えて前記校正用測定値を順次入力し、前記表示装置に表示される表示値を基準表示値として取得する手順、
前記表示レンジの各々に対応する前記レンジアンプに、それぞれ前記測定値に代えて前記表示レンジの各々に対応する前記校正用測定値を入力し、前記表示レンジの各々における前記AD変換値および前記表示装置に表示される表示値を取得する手順、
前記表示レンジの各々について、前記基準表示値を前記表示値で除してゲイン誤差率を計算し、前記表示値を前記AD変換値で除して表示分解能を計算し、前記表示分解能と前記ゲイン誤差率との積を補正表示分解能として記録しておく手順、
前記ディジタル回路では、前記AD変換器で変換されたAD変換値と前記表示レンジに応じた前記補正表示分解能の積を補正表示値として前記表示装置に表示させる手順、を含むことを特徴とする。
【0015】
このような本発明では、制御装置による表示装置に対する測定結果の表示の際に、複数の表示レンジによる表示が行えるとともに、各表示レンジでの表示を行うレンジアンプのゲイン誤差の補正(ゲイン誤差補正)を行うことができ、各表示レンジで表示される測定結果を正確にすることができる。
すなわち、複数の表示レンジのうち、何れかを基準レンジとし、この基準レンジと他の表示レンジとのゲイン誤差率を計算し、このゲイン誤差率に基づいて各表示レンジの表示分解能を調整することで、基準レンジを基準にした各表示レンジのゲイン調整を行うことができる。
このようなゲイン誤差補正の結果、何れの表示レンジにおいても、基準レンジを基準にした補正表示分解能で表示が行われ、基準レンジに対するレンジ誤差を解消することができ、各表示レンジの全体で誤差を解消することができる。
【0016】
本発明において、表示レンジの各々に対応するレンジアンプについてAD変換値および表示値を取得する手順と、表示レンジの各々について補正表示分解能を記録する手順とは、各表示レンジ毎に各手順を順次行ってもよく、あるいは全ての表示レンジについてAD変換値および表示値の取得を行った後、全ての表示レンジについての補正表示分解能の記録をまとめて行ってもよい。
本発明において、基準レンジに対応するレンジアンプで基準表示値を取得する手順は、前述した表示レンジの各々に対応するレンジアンプについてAD変換値および表示値を取得する手順に先立って行ってもよいが、その後に行ってもよく、あるいは並行して行ってもよく、要するに表示レンジの各々について補正表示分解能を記録する手順で必要とされるデータが揃うように順序が考慮されていればよい。
【0017】
本発明の表面性状測定機において、前記センサ回路と前記レンジアンプ回路との間に、前記センサ回路からの前記測定値にレベルシフト量を加算するレベルシフト回路を有し、前記レベルシフト量は前記ディジタル回路からの前記表示レンジ毎のオフセット量で指定され、前記オフセット量は、前記表示レンジの各々で、前記センサ回路から出力される前記測定値を所定の基準電圧である状態で前記AD変換値が所定値となるように前記レベルシフト量を調整した際の前記レベルシフト量とされていることが望ましい。
【0018】
本発明の表面性状測定機の制御装置において、前記センサ回路と前記レンジアンプ回路との間に、前記センサ回路からの前記測定値にレベルシフト量を加算するレベルシフト回路を有し、前記レベルシフト量は前記ディジタル回路からの前記表示レンジ毎のオフセット量で指定され、前記オフセット量は、前記表示レンジの各々で、前記センサ回路から出力される前記測定値を所定の基準電圧である状態で前記AD変換値が所定値となるように前記レベルシフト量を調整した際の前記レベルシフト量とされていることが望ましい。
【0019】
本発明の表面性状測定機の調整方法において、前記表面性状測定機は、前記センサ回路と前記レンジアンプ回路との間に、前記センサ回路からの前記測定値にレベルシフト量を加算するレベルシフト回路を有し、前記レベルシフト量は前記ディジタル回路からの前記表示レンジ毎のオフセット量で指定されたものであり、
前記表示レンジの各々で、前記センサ回路から出力される前記測定値を所定の基準電圧である状態とし、この状態で前記AD変換値が所定値となるように前記レベルシフト量を調整し、この際の前記レベルシフト量を前記オフセット量とする手順を含むことが望ましい。
【0020】
このような本発明では、レンジアンプ回路からAD変換器に至る回路のオフセット調整を行うことができ、とくに表示レンジ毎つまりレンジアンプ毎のオフセット量を設定することで、表示レンジを切り替えた際にこれに対応するオフセット量を設定することができる。
【0021】
本発明において、所定の基準電圧としては例えば0ボルトを利用することができ、機器のグランドに接地することで簡単に基準電圧を得ることができる。この場合、AD変換値の所定値も0とすること、つまりAD変換値が0となるようにレベルシフト量を調整すればよい。
これらのオフセット調整は、前述した本発明のゲイン誤差補正の前に行われることが望ましい。ただし、オフセット調整前述したゲイン誤差補正の後であってもよく、あるいは並行して行ってもよい。