特許第5876414号(P5876414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876414潜在性硬化剤組成物及び一液硬化性エポキシ樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876414
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】潜在性硬化剤組成物及び一液硬化性エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20160218BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160218BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20160218BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   C08G59/40
   C08L63/00 A
   C08L61/06
   C08K5/315
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-528597(P2012-528597)
(86)(22)【出願日】2011年8月11日
(86)【国際出願番号】JP2011004551
(87)【国際公開番号】WO2012020572
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2010-180844(P2010-180844)
(32)【優先日】2010年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100087631
【弁理士】
【氏名又は名称】滝田 清暉
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】小川 亮
(72)【発明者】
【氏名】横田 謙介
(72)【発明者】
【氏名】正宗 葉子
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−006991(JP,A)
【文献】 特開平11−015005(JP,A)
【文献】 特開2007−079588(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/003208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08G 59/00−59/72
C08K 3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)活性水素基を有するアミン化合物と(b)ポリグリシジル化合物を反応させて得られる付加反応物、及び、(B)フェノール樹脂を含有してなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物であって、前記フェノール樹脂が、2核体を10〜40質量%含有すると共に、その数平均分子量(Mn)が900〜2000、重量平均分子量(Mw)が2500〜5000であって、分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜4.0であることを特徴とする潜在性硬化剤組成物。
【請求項2】
前記(a)活性水素基を有するアミン化合物が、少なくとも3級アミノ基を1個以上有するアミン化合物を含む、請求項1に記載された潜在性硬化剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも3級アミノ基を1個以上有するアミン化合物が、下記一般式(I)で表されるジアルキルアミノアルキルアミン、又は下記一般式(II)で表されるイミダゾール化合物である、請求項2に記載された潜在性硬化剤組成物;
一般式(I):
但し、上記一般式(I)中のR及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基を表すか、又は、R及びRが結合して酸素原子又は窒素原子を含むことのできるアルキレン基を表し、nは1〜6の整数を表す。
一般式(II):
但し、上記一般式(II)中のR〜Rは、水素原子、置換基を有することのできるアルキル基又はアリール基を表す。
【請求項4】
前記少なくとも3級アミノ基を1個以上有するアミン化合物が、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−アミノエチルピペラジンの中から選ばれた少なくとも一種である、請求項2に記載された潜在性硬化剤組成物。
【請求項5】
前記(B)フェノール樹脂が、フェノールとホルムアルデヒドから得られるフェノール樹脂である、請求項1〜4の何れかに記載された潜在性硬化剤組成物。
【請求項6】
ポリエポキシ化合物及び請求項1〜5の何れかに記載された少なくとも1種の潜在性硬化剤組成物を含有してなることを特徴とする、一液硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
ポリエポキシ化合物、シアン酸エステル及び請求項1〜5の何れかに記載された少なくとも1種の潜在性硬化剤組成物を含有してなることを特徴とする一液硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエポキシ化合物及び/又はシアン酸エステルと共に使用するのに適した潜在性硬化剤組成物に関し、特に、アミン化合物とポリグリシジル化合物とを反応させて得られる付加反応物、及び分子量の最適化されたフェノール樹脂を含有してなる、常温では安定で、加熱時に硬化剤として機能する潜在性硬化剤組成物、及び該潜在性硬化剤組成物を含有してなる一液硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、各種基材への接着性に優れており、また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させてなる硬化物は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性等が比較的優れているため、広い産業分野で応用されており、特に、塗料や接着剤の分野で賞用されている。
【0003】
従来のエポキシ樹脂組成物は、使用直前に硬化剤や硬化促進剤を添加する二成分系が主流であった。この二成分系のエポキシ樹脂組成物は、常温又は低温で硬化させることができるという特徴を有しているが、その反面、使用直前に計量、混合しなければならない上に使用可能な時間が短いため、自動機械への適用が困難であるなど、その使用条件が制限されるという欠点を有している。このような欠点を解消するために、一液硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
このような一液硬化性エポキシ樹脂組成物を得るためには、室温では反応しないが、加熱したときに硬化反応を開始する性質を有する硬化剤である、いわゆる潜在性硬化剤が必要である。このような潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、及びイミダゾール類等が提案されている。
【0005】
しかしながら、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、又はグアナミン類をエポキシ樹脂と混合したものは、貯蔵安定性には優れているものの、150℃以上の高温で長時間硬化させなければならないという、実際の使用には不向きな硬化条件を必要とするという欠点を有している。また、これらと硬化促進剤を併用して硬化時間を短縮することも広く行われているが、この場合には貯蔵安定性が著しく損なわれるという欠点が生じる。
【0006】
一方、二塩基酸ジヒドラジドやイミダゾール類を使用した場合には、比較的低温で硬化するものの貯蔵安定性が乏しい。三フッ化ホウ素アミン錯塩を使用した場合には、貯蔵安定性に優れると共に硬化時間も短いという長所があるものの、耐水性に劣る上、金属を腐食する等、それぞれに欠点を有している。
【0007】
更に、ポリアミン化合物にエポキシ化合物を反応させて得られるアダクト変性アミンである、イソホロンジアミンのエポキシ付加物を潜在性硬化剤として使用することも提案されている(特許文献1)が、これだけ使用した場合には貯蔵安定性が劣る。そこで、イミダゾール化合物とポリエポキシ化合物及びフェノールノボラックとの反応生成物を潜在性硬化剤として使用することが提案されている(特許文献2)が、この場合には接着性に劣るものしか得らないという欠点がある。
【0008】
更に、半導体の封止や成形等の用途において、既存のエポキシ樹脂を単独又は混合して用いただけでは不十分な場合には、エポキシ樹脂とシアン酸エステルを混合してなる、高耐熱性のシアン酸エステル−エポキシ複合樹脂組成物が多用されている。このような複合樹脂に対する硬化剤としてアミン系硬化剤を使用することも提案されている(特許文献3)が、この場合にも、十分な貯蔵安定性が得られないという欠点があった。
【0009】
特に、小型モーターやアクチュエーター等の電子部品に関する用途においては高い接着性が求められているが、これらの要求を満たす、エポキシ樹脂やエポキシ−シアン酸エステル複合樹脂を用いた一液硬化性樹脂組成物に対して好適な潜在性硬化剤は、未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−147417号公報
【特許文献2】米国特許第4066625号公報
【特許文献3】特開昭60−250026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の第1の目的は、保存安定性に優れると共に、硬化性及び接着性にも優れた一液硬化性樹脂組成物用として好適な、潜在性硬化剤組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、保存安定性に優れると共に、硬化性及び接着性にも優れた一液硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の諸目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、アダクト変性ポリアミン化合物と分子量が最適化されたフェノール樹脂の混合物を潜在性硬化剤として使用すると共に、ポリエポキシ化合物及び/又はシアン酸エステルを含有する、一液硬化性樹脂組成物が、良好な保存安定性、硬化性及び接着性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、(A)(a)活性水素基を有するアミン化合物と(b)ポリグリシジル化合物を反応させて得られる付加反応物、及び、(B)フェノール樹脂を含有してなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物であって、前記フェノール樹脂が、2核体を10〜40質量%含有すると共に、その数平均分子量(Mn)が900〜2000、重量平均分子量(Mw)が2500〜5000であって、分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜4.0であることを特徴とする潜在性硬化剤組成物、及び、該潜在性硬化剤組成物を含有してなる一液硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の潜在性硬化剤組成物を、ポリエポキシ化合物及び必要に応じてシアン酸エステルを更に組み合わせて使用する事によって、保存安定性、硬化性、及び接着性に優れた一液硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の潜在性硬化剤組成物は、(A)成分である、(a)活性水素基を有するアミン化合物と(b)ポリグリシジル化合物を反応させて得られる付加反応物、及び、(B)成分であるフェノール樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂用硬化剤組成物である。
【0016】
上記(a)成分として使用される活性水素基を有するアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン等のアルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−3,6−ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のグアナミン類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等のイミダゾール類;シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジアリルアミノエチルアミン、N,N−ベンジルメチルアミノエチルアミン、N,N−ジベンジルアミノエチルアミン、N,N−シクロヘキシルメチルアミノエチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミノエチルアミン;N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジアリルアミノプロピルアミン、N,N−ベンジルメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジベンジルアミノプロピルアミン、N,N−シクロヘキシルメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミノプロピルアミン;N−(2−アミノエチル)ピロリジン、N−(3−アミノプロピル)ピロリジン;N−(2−アミノエチル)ピペリジン、N−(3−アミノプロピル)ピペリジン;N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−(3−アミノプロピル)モルホリン;N−(2−アミノエチル)−N’−メチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)ピペラジン;N−(3−アミノプロピル)−N’−メチルピペリジン;4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンジルアミン、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンジルアミン、4−(N,N−ジイソプロピルアミノ)ベンジルアミン;N,N,−ジメチルイソホロンジアミン、N,N−ジメチルビスアミノシクロヘキサン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N’−エチル−N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N’−エチル−N,N−ジメチルプロパンジアミン、N’−エチル−N,N−ジベンジルアミノプロピルアミン;N,N−(ビスアミノプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビスアミノプロピルエチルアミン、N,N−ビスアミノプロピルプロピルアミン、N,N−ビスアミノプロピルブチルアミン、N,N−ビスアミノプロピルペンチルアミン、N,N−ビスアミノプロピルヘキシルアミン、N,N−ビスアミノプロピル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ビスアミノプロピルシクロヘキシルアミン、N,N−ビスアミノプロピルベンジルアミン、N,N−ビスアミノプロピルアリルアミン、ビス〔3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3−(N,N−ジイソプロピルアミノプロピル)〕アミン、ビス〔3−(N,N−ジブチルアミノプロピル)〕アミン等があげられる。
【0017】
本発明においては、低温硬化性を良好にする観点から、上記のアミン化合物の中でも、少なくとも3級アミノ基を1個以上有するアミン化合物を使用する事が好ましく、硬化物の耐熱性の観点からは、特に、下記一般式(I)で表されるジアルキルアミノアルキルアミン、又は、下記一般式(II)で表されるイミダゾール化合物を使用する事が好ましい。
【0018】
一般式(I)
但し、一般式(I)中のR及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1〜8のアルキル基であるか、又は、R及びRが結合して酸素原子又は窒素原子を含むことのできるアルキレン基を表し、nは1〜6の整数を表す。
【0019】
一般式(II)
但し、一般式(II)中のR〜Rは、水素原子、置換基を有することのできるアルキル基又はアリール基を表す。
【0020】
前記一般式(I)中のR及びRで表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル等の基があげられる。
【0021】
前記一般式(II)中のR、R及びRで表される炭素原子数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ビニル、アリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、アミノメチル、アミノプロピル等の基があげられる。
【0022】
また、R、R及びRで表されるアリール基としては、フェニル、ナフチル等の基があげられる。これらのアリール基は上記したアルキル基によって1乃至4個置換されていても良い。
【0023】
前記(a)成分である、一般式(I)で表されるアミン化合物の内、例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、アミノプロピルモルホリン、アミノエチルピペリジン、1−(2−アミノエチル)−4−メチルピペラジン等があげられる。
【0024】
前記(a)成分である、一般式(II)で表されるイミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−アミノプロピルイミダゾール等があげられる。
【0025】
本発明における(A)成分に使用される、(b)成分であるポリグリシジル化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエン等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。
【0026】
本発明における前記(a)成分のポリアミン化合物と(b)成分であるポリグリシジル化合物との反応は、(a)成分のポリアミン化合物の活性水素が1当量となる量に対し、(b)成分のエポキシ当量が0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.5当量となる比率で行われる。使用する(b)成分のエポキシ当量を0.5当量未満とした場合には、本発明の一液硬化性樹脂組成物の保存安定性が不十分となるおそれがあり、2当量を超えて使用した場合には、本発明の一液硬化性樹脂組成物の硬化性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0027】
本発明において使用される(B)成分であるフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類から合成されるフェノール樹脂である。上記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール、テルペンフェノール、フェノール化ジシクロペンタジエン等があげられ、前記アルデヒド類としてはホルムアルデヒドがあげられる。
【0028】
本発明で使用する(B)成分であるフェノール樹脂は、2核体を10〜40質量%含有することが必要であり、その数平均分子量(Mn)は900〜2000、好ましくは950〜1500、重量平均分子量(Mw)は2500〜5000、好ましくは3000〜4000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜4.0、であることが必要である。上記数平均分子量(Mn)は950〜1500であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は3000〜4000であることが好ましく、分子量分布(Mw/Mn)は2.5〜3.5であることが好ましい。上記の範囲を超えるフェノール樹脂を使用して得られる潜在性硬化剤組成物を使用した場合には、ポリエポキシ化合物と組み合わせて得られる一液硬化性エポキシ樹脂組成物の安定性が低下したり、接着性が低下したりするので好ましくない。
【0029】
上記(B)成分であるフェノール樹脂の使用量は、(A)成分である付加反応物100質量部に対して150質量部以下であることが好ましく、特に10〜100質量部であることが好ましい。150質量部を超えて使用しても無駄であるばかりでなく、硬化性に悪影響を与えるおそれがあるので好ましくない。
【0030】
上記(B)成分であるフェノール樹脂は、単に配合することもできるが、前記(a)成分である活性水素化合物のブロック剤として反応させて使用することもできる。
【0031】
本発明の潜在性硬化剤組成物には、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸を含有させることもできる。
【0032】
本発明の潜在性硬化剤組成物は、取り扱いを容易にするために種々の溶剤に溶解して使用することが出来る。このような溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリル等があげられる。
【0033】
上記有機溶剤の使用量は、固形分の合計量100質量部に対して0〜200質量部であり、30〜150質量部使用することが好ましい。有機溶剤の使用量が200質量部を越えると、揮発して有害である上、発火等の危険も生じるため好ましくない。
【0034】
本発明の潜在性硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物及び/又はシアン酸エステルを主成分とする主剤と組み合わせて使用される。
【0035】
上記のポリエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物があげられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものでも、多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0036】
また、本発明で使用するポリエポキシ化合物は、エポキシ当量が100〜2000であるものが好ましく、特に、150〜1500のものが好ましい。エポキシ当量が100未満のものを使用した場合には硬化性が低下するおそれがあり、2000よりも大きいものを使用した場合には、十分な塗膜物性が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0037】
上記のポリエポキシ化合物は、取り扱いを容易とするために種々の溶剤に溶解して用いることができる。この場合に使用する溶剤としては、前述した溶剤の他、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等の高沸点パラフィン系溶剤等があげられる。
【0038】
上記有機溶剤の使用量は、ポリエポキシ化合物100質量部に対して0〜200質量部であるが、特に30〜150質量部使用することが好ましい。上記有機溶剤の使用量が200質量部を越えた場合には、揮発して有害である上、発火等の危険も生じるため好ましくない。
【0039】
また、本発明で使用するポリエポキシ化合物を主とする主剤には、反応性あるいは非反応性の希釈剤を使用することもできる。反応性希釈剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、p−第三ブチルフェノール、p−第三アミルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノール、或いは、テルペンフェノール等のモノグリシジルエーテル化合物があげられる。一方、非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール等があげられる。
【0040】
本発明の一液硬化性樹脂組成物中における、ポリエポキシ化合物と本発明の潜在性硬化剤組成物の使用量は、前者のエポキシ当量と後者の活性水素当量が等しくなる用に使用することが好ましいが、その量は必要に応じて任意の範囲で変更することができる。
【0041】
本発明の潜在性硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物を主体とする主剤と組合せて、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料或いは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバブルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材等に使用する粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料;積層板、半導体封止材等の電気・電子材料等、広範な用途に使用することができる。
【0042】
また、本発明の潜在性硬化剤組成物は、上記ポリエポキシ化合物と共にシアン酸エステルを主成分とする主剤と組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0043】
本発明で使用することのできるシアン酸エステルは特に限定されることはないが、例えば、下記一般式(1)
で表される化合物、又は、
下記一般式(2)
で表される化合物が挙げられる。
但し、前記一般式(1)中のR1は、非置換又はフッ素置換の2価の炭化水素基、又は、-O-、-S-、若しくは単結合を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に非置換又は1〜4個のアルキル基で置換されているフェニレン基を表し、一般式(2)中のnは1以上の整数、R4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0044】
また、前記一般式(1)又は(2)の化合物におけるシアネート基の一部がトリアジン環を形成したプレポリマーも、シアン酸エステルを主成分とする主剤として使用することができる。上記プレポリマーとしては、例えば、前記一般式(1)で表される化合物の全部又は一部が3量化したものが挙げられる。
【0045】
本発明で使用するシアン酸エステルを主成分とする主剤としてより好ましいものは、下記一般式(3)
で表される化合物、及びこれらのプレポリマーであり、本発明においては特に、4,4’−エチリデンビスフェニレンシアネート、2,2−ビス(4―シアナトフェニル)プロパン及びビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタンを主剤とすることが好ましい。
なお、前記一般式(3)におけるR5は、下記の基

又は、基:
であり、上記の基におけるnは4〜12の整数、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子又は非置換若しくはフッ素置換のメチル基、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は非置換若しくはフッ素置換のメチル基である。
【0046】
本発明においては、前記シアン酸エステルを単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
本発明の一液硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース、ケイ砂、セメント、カオリン、クレー、水酸化アルミニウム、ベントナイト、タルク、シリカ、微粉末シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、瀝青物質、金属粒子、金属で被覆された樹脂粒子等の充填剤若しくは顔料;増粘剤;チキソトロピック剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤;コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の常用の添加物を含有させてもよく、さらに、キシレン樹脂、石油樹脂等の粘着性の樹脂類を併用することもできる。
【0048】
本発明の一液硬化性樹脂組成物は、前記したように無溶剤一液型で使用することもできる。このように無溶剤とした場合には、例えば、VOCの発生を抑制することができるので、環境負荷を押さえた安全性の高い材料を提供することができるだけでなく、狭間部位に浸透させて硬化させる等、溶剤が使えない用途にも使えるようになるという利点が生じる。
【0049】
本発明の一液硬化性樹脂組成物は、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料、或いは接着剤等、広範な用途に使用することができる。特に、高い耐熱性と優れた接着性を有するため、半導体保護封止や電子部品接着等の、電子材料用途や自動車材料用途に好適に使用される。
【0050】
以下製造例及びに実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
[製造例1〜6]
フェノール樹脂(PR1〜PR6)の製造
温度計、撹拌装置、滴下装置及び冷却管を備えた4つ口セパラブルフラスコに、フェノール、50%ホルマリン水溶液及びシュウ酸を仕込んで加熱し、還流温度にて4時間反応させた。環流反応後、常圧で160℃まで昇温させた後3時間かけて濃縮し、更に、160℃に保持したまま20〜30トールとなるまで減圧し、留出物が出なくなるまで減圧濃縮して、下記〔表1〕に示す分子量分布をもった黄褐色のフェノール樹脂(PR1〜PR6)を得た。
得られた各試料0.01gをTHF10gに溶解した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(昭和電工(株)製のShodex GPC−101)を用いると共に、測定用サンプルカラムとして昭和電工(株)製のShodex KF−802、リファレンスカラムとして昭和電工(株)製のShodex KF−800RH、展開溶剤としてTHFを用い、RI検出器による測定値から、各試料の、ポリスチレン換算数平均分子量、同重量平均分子量及び分子量分布を算出した。
【0052】
【表1】
【実施例1】
【0053】
温度計、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、及び脱水装置を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g及びN,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gを仕込み、反応系を70〜75℃に昇温させ、アデカレジンEP−4100E((株)ADEKAの商品名;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)213gを滴下した。滴下終了後110〜130℃で1時間熟成し、110〜130℃、常圧で1時間、及び、175〜185℃、20〜30トールで1時間かけて脱溶剤を行った。次に175〜185℃で210gのフェノール樹脂PR1を、分割して仕込みながらフェノール樹脂を溶解させた。更に、180〜190℃、20〜30トールで1時間かけて減圧脱気を行い、硬化剤組成物(HC−1)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器(MP−S3、以下同様)を用いて測定したところ、融点は85℃であった。
【実施例2】
【0054】
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパンを74g使用した外は、実施例1と同様に反応させ処理をして、硬化剤組成物(HCH−1)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は91℃であった。
【実施例3】
【0055】
フェノール樹脂PR1の代わりにフェノール樹脂PR2を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応させ処理をして硬化剤組成物(HC−2)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は85℃であった。
【実施例4】
【0056】
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパン74gを使用したこと以外は、実施例3と同様に反応させ処理をして硬化剤組成物(HCH−2)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は90℃であった。
【実施例5】
【0057】
フェノール樹脂PR1の代わりにフェノール樹脂PR3を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HC−3)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は82℃であった。
【実施例6】
【0058】
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパン74gを使用したこと以外は、製造例5と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HCH−3)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は88℃であった。
【0059】
[比較例1]
フェノール樹脂PR1の代わりにフェノール樹脂PR4を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HC−4)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は86℃であった。
【0060】
[比較例2]
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパン74gを使用したこと以外は、比較例1と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HCH−4)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は89℃であった。
【0061】
[比較例3]
フェノール樹脂PR1の代わりにフェノール樹脂PR5を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応させ処理をして硬化剤組成物(HC−5)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は95℃であった。
【0062】
[比較例4]
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパン74gを使用したこと以外は、比較例3と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HCH−5)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は91℃であった。
【0063】
[比較例5]
フェノール樹脂PR1の代わりにフェノール樹脂PR6を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応させ処理をして硬化剤組成物(HC−6)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は82℃であった。
【0064】
[比較例6]
N,N−ジエチルアミノプロピルアミン100gの代わりに1,2−ジアミノプロパン74gを使用したこと以外は、比較例3と同様に反応させ処理して硬化剤組成物(HCH−6)を得た。得られた硬化剤組成物を乳鉢ですりつぶし、ヤナコ社製の融点測定器を用いて測定したところ、融点は87℃であった。
【0065】
[実施例7〜9及び比較例7〜9]
上記実施例及び比較例において製造された硬化剤組成物を〔表2〕に示す組成で配合し、一液硬化性エポキシ樹脂組成物を製造し、以下の性能評価を行った。その結果を〔表3〕に示す。
【0066】
(硬化性)
表2にしたがって得られた一液硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化性を、製造直後にゲル化試験機(ホットプレート型ゲル化試験器GT−DS−SF:(株)ユーカリ技研製の商品名)を用いて測定した。このとき、糸を引かなくなった時点をゲル化時間とした。
【0067】
(反応開始温度)
SIIナノテクノロジーズ社製示差走査熱量計DSC6220を用いて、昇温速度10℃/分、走査温度範囲を25〜300℃として測定し、DSCチャートから読み取った発熱開始温度を、反応開始温度とした。
【0068】
(粘度)
表2にしたがって得られた一液硬化性エポキシ樹脂組成物を25℃で放置し、ブルックフィールドE型回転粘度計を用いて、5rpmで25℃における粘度を測定した。
【0069】
(接着性)
表2にしたがって得られた一液硬化性エポキシ樹脂組成物について、JIS K 6850に準拠した方法により、80℃で60分間硬化させた後の、鋼板/鋼板の剪断接着力を求めた。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
実施例の結果から明らかなように、活性水素基を有するアミン化合物とポリグリシジル化合物を反応させて得られる付加反応物、及び、フェノール樹脂を含有してなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物であって、その製造に際して使用したフェノール樹脂が、2核体10〜40質量%を含有し、数平均分子量(Mn)が900〜2000、重量平均分子量(Mw)が2500〜5000、分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜4.0である場合には、得られた潜在性硬化剤組成物を含有する一液硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化性、安定性、及び接着性が、極めて優れていることが確認された。
【0073】
これに対して、フェノール樹脂として2核体の含有量が10質量%未満のものを使用した場合(比較例1)、2核体が10質量%〜40質量%以下であっても、重量平均分子量が5000より大きく分子量分布が4.0より大きい場合(比較例2)には、接着性に劣る一液硬化性エポキシ樹脂組成物しか得ることができず、フェノール樹脂として2核体の含有量が40質量%より大きく、数平均分子量が900未満のものを使用した場合(比較例3)には、安定性に劣る一液硬化性エポキシ樹脂組成物しか得ることができないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の潜在性硬化剤組成物を、ポリエポキシ化合物、及び、必要に応じて更にシアン酸エステルを組み合わせて使用する事によって、保存安定性、硬化性、及び接着性に優れた一液硬化性樹脂組成物が得られるので、これを、自動機械を用いて、例えば、コンクリート、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、等に対する塗料或いは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、粘着壁紙、粘着床材等の粘着剤;含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料;積層板、半導体封止材等の電気・電子材料等、広範な用途に効率よく使用することができ、これによって産業の発展に寄与することができる。