(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876426
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】光通信システムにおける時刻同期方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20160218BHJP
【FI】
H04L12/44 200
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-32746(P2013-32746)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165557(P2014-165557A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】久保 尊広
(72)【発明者】
【氏名】田所 将志
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
【審査官】
浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−005070(JP,A)
【文献】
特開平01−296739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
H04L 12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局舎光終端装置と複数の加入者光終端装置とを備えるPONシステムと、
前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期主装置と、
前記時刻同期主装置の接続されている加入者光終端装置とは異なる前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期従属装置と、
を備える光通信システムの時刻同期方法であって、
前記局舎光終端装置が、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期主装置から前記時刻同期従属装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させ、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期従属装置から前記時刻同期主装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させるパケット遅延ゆらぎ補正手順を有する光通信システムの時刻同期方法。
【請求項2】
前記パケット遅延ゆらぎ補正手順において、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットの前記時刻同期従属装置への送信タイミングが前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間の経過時と一致するように、前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを遅延させるとともに、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットの前記時刻同期主装置への送信タイミングが前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間の経過時と一致するように前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを遅延させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項3】
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、ディスカバリーゲートとDBAサイクルを考慮した最も長い遅延時間と等しくなるように定められていることを特徴とする請求項2に記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項4】
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、前記局舎光終端装置が予め保持していることを特徴とする請求項2又は3に記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項5】
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、前記局舎光終端装置から前記加入者光終端装置へ送信するGrantメッセージを用いて定められていることを特徴とする請求項2に記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項6】
前記パケット遅延ゆらぎ補正手順において、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットについて前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの遅延時間が予め定められた閾値よりも長いときは当該パケットを廃棄し、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットについて前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの遅延時間が予め定められた閾値よりも長いときは当該パケットを廃棄する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項7】
前記予め定められた閾値は、ディスカバリーゲートの影響でDBAサイクルを考慮して定められた遅延時間であることを特徴とする請求項6に記載の光通信システムの時刻同期方法。
【請求項8】
局舎光終端装置と複数の加入者光終端装置とを備えるPONシステムと、
前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期主装置と、
前記時刻同期主装置の接続されている加入者光終端装置とは異なる前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期従属装置と、
を備える時刻同期システムであって、
前記局舎光終端装置が、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期主装置から前記時刻同期従属装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させ、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期従属装置から前記時刻同期主装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させるパケット遅延ゆらぎ補正機能を有する時刻同期システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、passive optical network(PON)を介した時刻同期装置間の時刻同期方式に関する。
【背景技術】
【0002】
パケット通信を利用した時刻同期技術は、Ethernet(登録商標)をはじめとするパケット通信の普及とともに年々需要が高まっている。例えば、パケット通信を利用したモバイルバックホールではハンドオーバー機能や通信品質の向上のためにパケット通信による時刻同期技術が必要となる。また、Ethernet化が見込まれている変電所間のネットワークにおいても、計測装置間のパケット通信による時刻同期技術は、変圧器の故障や地絡を検知し系統事故が起きた箇所を即時に遮断するため必要となることが予想される。
【0003】
モバイルバックホールや変電所間のネットワークにおける有力な時刻同期技術としてIEEE1588 v2が標準化されている(例えば、非特許文献1参照。)。IEEE1588 v2では、PTP(Precision Time Protocol)により時刻同期主装置(以下、時刻同期マスタと称する。)と時刻同期従属装置(以下、時刻同期スレーブと称する。)間の往復の伝搬遅延が等しいという前提のもとで伝搬遅延を算出し、時刻同期マスタと時刻同期スレーブの時刻タイマの絶対値を同期させている。
【0004】
一方、IEEE802.3 ahで規定されているGE−PON(Gigabit Ethernet−Passive Optical Network)のネットワークでは、加入者光終端装置であるONUから局舎光終端装置であるOLTへ向かうパケットがOLTからONUへ向かうパケットに比べ、PONにおける動的帯域割り当て(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)やディスカバリープロセスに起因した遅延ゆらぎを持つ。このためPONを介したネットワークでは、IEEE1588 v2による時刻同期の精度が劣化する。この課題を解決するため、IEEE802.1 ASでは、OLTとONU間の時刻同期にMPCP(Multi−Point Control Protocol)を利用し、PONを介したネットワークにおいてもPTPにより精度の高い時刻同期を実現している(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE1588 v2
【非特許文献2】IEEE802.1AS
【非特許文献3】IEEE802.3ah、P218 Table 57−11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、IEEE802.1 ASは時刻同期させるネットワークの端末がすべてPTPを解釈する機能を実装していることが必要であるため、現在運用されている光アクセスネットワークでIEEE802.1 ASによる時刻同期を実現させようとすると、ONU、OLTなどのネットワーク装置すべてにPTPを解釈する機能を付与することが必要となる。そこで、IEEE1588 v2とIEEE802.1 ASを併用して既存の光アクセスネットワークの時刻同期を実現する方法が考えられるが、PTPに準拠していないOLTなどでは、PONのDBAやディスカバリープロセスによるパケット遅延ゆらぎの影響を受けて時刻同期精度が劣化する。
【0007】
この問題を解決するため、伝搬遅延を算出するための時刻同期パケットを、別途測定し保持しているPON区間の伝搬遅延時間の2倍保持し時刻同期装置へ送り返すことで、PON区間のパケット遅延ゆらぎを受けない時刻同期が可能となる。しかし、時刻同期マスタと時刻同期スレーブがONU配下に存在する場合は、PTPを解釈する機能をONUが持つことになり、OLTに比べて非常に多くのネットワーク装置を交換する必要がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、PTPを解釈しない加入者光終端装置を含むPONシステムにおいて、PTPを解釈する局舎光終端装置を設置することで、PTPによる時刻同期方式を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ONUに機能を追加することなく、OLT側にPTP機能とONUまでの遅延時間を保持する機能を有することで、PTPによる時刻同期方式を実現することを可能とする。
【0010】
本発明による光通信システムの時刻同期方法は、
局舎光終端装置と複数の加入者光終端装置とを備えるPONシステムと、
前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期主装置と、
前記時刻同期主装置の接続されている加入者光終端装置とは異なる前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期従属装置と、
を備える光通信システムの時刻同期方法であって、
前記局舎光終端装置が、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期主装置から前記時刻同期従属装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させ、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期従属装置から前記時刻同期主装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させるパケット遅延ゆらぎ補正手順を有する。
【0011】
本発明による時刻同期システムは、
局舎光終端装置と複数の加入者光終端装置とを備えるPONシステムと、
前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期主装置と、
前記時刻同期主装置の接続されている加入者光終端装置とは異なる前記加入者光終端装置の少なくとも1つに接続された時刻同期従属装置と、
を備える時刻同期システムであって、
前記局舎光終端装置が、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期主装置から前記時刻同期従属装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させ、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを判別し、当該パケットに対して前記時刻同期従属装置から前記時刻同期主装置への伝搬遅延が一定になるように遅延させるパケット遅延ゆらぎ補正機能を有する。
【0012】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記パケット遅延ゆらぎ補正手順において、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットの前記時刻同期従属装置への送信タイミングが前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間の経過時と一致するように、前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットを遅延させるとともに、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットの前記時刻同期主装置への送信タイミングが前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間の経過時と一致するように前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットを遅延させてもよい。
【0013】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、ディスカバリーゲートとDBAサイクルを考慮した最も長い遅延時間と等しくなるように定められていてもよい。
【0014】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、前記局舎光終端装置が予め保持していてもよい。
【0015】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間及び前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの最大遅延時間は、前記局舎光終端装置から前記加入者光終端装置へ送信するGrantメッセージを用いて定められていてもよい。
【0016】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記パケット遅延ゆらぎ補正手順において、
前記時刻同期主装置から送信された前記時刻同期従属装置宛のパケットについて前記時刻同期主装置から前記局舎光終端装置までの遅延時間が予め定められた閾値よりも長いときは当該パケットを廃棄し、
前記時刻同期従属装置から送信された前記時刻同期主装置宛のパケットについて前記時刻同期従属装置から前記局舎光終端装置までの遅延時間が予め定められた閾値よりも長いときは当該パケットを廃棄してもよい。
【0017】
本発明による光通信システムの時刻同期方法では、
前記予め定められた閾値は、ディスカバリーゲートの影響でDBAサイクルを考慮して定められた遅延時間であってもよい。
【0018】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PTPを解釈しない加入者光終端装置を含むPONシステムを介した時刻同期において、PTPを解釈する局舎光終端装置を設置することで、PTPによる高精度な時刻同期方式を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一実施形態に係る光通信システムの構成例を示す。
【
図2】時刻同期マスタと時刻同期スレーブ間の遅延時間の算出例を示す。
【
図3】第一実施形態に係る局舎光終端装置の機能ブロックの一例を示す。
【
図4】第一実施形態に係る光通信システムの遅延時間算出のためのチャート図である。
【
図5】第二実施形態に係る局舎光終端装置の機能ブロックの一例を示す。
【
図6】第三実施形態に係る局舎光終端装置の機能ブロックの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0022】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一の様態における光通信システムの構成を表している。
図1において、時刻同期システムは、時刻同期マスタ82、時刻同期スレーブ83、PONシステム81、上位コアネットワーク84から構成されている。PONシステム81は、加入者光終端装置20、局舎光終端装置10を備える。時刻同期マスタ82、時刻同期スレーブ83、加入者光終端装置20の台数は例示であって、ここで説明した台数に限定されるものではない。
【0023】
時刻同期スレーブ83は、時刻同期マスタ82と時刻同期スレーブ83間の遅延時間を算出するため、
図2のように時刻同期マスタ82から時刻同期スレーブ83へ送ったSyncメッセージの送信時刻t
1と受信時刻t
2および時刻同期スレーブ83から時刻同期マスタ82へ送ったDelay−Reqメッセージの送信時刻t
3と受信時刻t
4を用いて、[(t
2−t1)+(t
4−t
3)]/2により<mean Path Delay>を計算する。
【0024】
図3は、局舎光終端装置10の機能ブロックを示している。局舎光終端装置10は、加入者光終端装置側インタフェース11、PTPパケット識別部12、PTPパケット遅延付加部21、最大遅延量保持部13、スイッチ部14、上位コアネットワーク側インタフェース15、から構成されている。PTPパケット遅延付加部21がパケット遅延ゆらぎ補正機能を有し、パケット遅延ゆらぎ補正手順を実行する。
【0025】
加入者光終端装置20から加入者光終端装置側インタフェース11へ到着したパケットは、PTPパケット識別部12によりPTPパケットとそれ以外のパケットに分けられる。PTPパケットはPTPパケット遅延付加部21を通過してスイッチ部14に入力され、PTP以外のパケットはPTPパケット遅延付加部21を通らずにスイッチ部14に入力される。
【0026】
PTPパケット遅延付加部21は、最大遅延量保持部13で保持されている時刻同期装置(マスタ、スレーブ)から局舎光終端装置までの最大遅延量をもとに、個々の到着PTPパケットに対して所定の遅延ΔTを付加した後、PTPパケットをスイッチ部14へ入力する。ここで、所定の遅延ΔTは最大遅延量t
maxから到着PTPパケットの遅延量を差し引いた遅延である。
【0027】
スイッチ部14では、PTPパケット識別部12からの入力、PTPパケット遅延付加部21からの入力、上位コアネットワーク側インタフェース15からの入力の3つの入力と、加入者光終端装置側インタフェース11への出力、上位コアネットワーク側インタフェース15への出力の2つの出力を備える。スイッチ部14は、PTPパケット遅延付加部21から入力されたPTPパケットを加入者光終端装置側インタフェース11へ出力する。このときのPTPパケットの宛先は、送信元が時刻同期マスタ82であれば時刻同期スレーブ83であり、送信元が時刻同期スレーブ83であれば時刻同期マスタ82である。
【0028】
図4は、本発明の第一の様態における光通信システムの遅延時間算出のためのチャート図である。時刻同期マスタ82から時刻t
1に送信されたPTPパケットは、局舎光終端装置10に時刻t
aに到着し、時刻t
aに所定の遅延ΔTを付加した時刻t
bに局舎光終端装置10から送信され、時刻t
2に時刻同期スレーブ83に到着する。ここで、本実施形態では、所定の遅延ΔTが付加されているため、t
bは以下の式(1)により求められる。
(数1)
t
b=t
a+{t
max−(t
a−t
1)}+t
x …(1)
【0029】
ここで、t
maxは
図3の最大遅延量保持部13で保持している時刻同期マスタ82から局舎光終端装置10の間の最大遅延量であり、パケットの遅延をモニタリングし一定時間蓄積した実測値の中から最大の量を逐次代入する方式と、固定値をあらかじめ設定しておく方式が考えられる。t
xは局舎光終端装置10内での処理遅延である。
【0030】
式(1)の右辺を計算するとt
1+t
max+t
xとなり、t
bはPTPパケットが局舎光終端装置10への到着時刻t
aによらない値となる。よってPTPパケットが時刻同期スレーブ83へ到着する時刻t
2もt
aによらない値となり、PONのDBAやディスカバリープロセスによるパケット遅延ゆらぎの影響を補償することができる。時刻同期スレーブ83から時刻t
3に送信されたPTPパケットが時刻同期マスタ82に到着する時刻t
4も同様にしてパケット遅延ゆらぎの影響を補償することができる。
【0031】
本方式で得られたt
1、t
2、t
3、t
4から算出される<mean Path Delay>は、加入者光終端装置20から局舎光終端装置10へ転送されるPTPパケットが受けるパケット遅延ゆらぎの影響を補償することで加入者光終端装置20に接続された時刻同期マスタ82と時刻同期スレーブ83による高精度な時刻同期を実現することができる。
【0032】
(第二実施形態)
図5は、本発明の第二の様態における光通信システムの局舎光終端装置10を表している。
図5において局舎光終端装置10は、加入者光終端装置側インタフェース11、PTPパケット識別部12、PTPパケット処理部22、最大遅延量保持部13、スイッチ部14、上位コアネットワーク側インタフェース15、から構成されている。PTPパケット処理部22がパケット遅延ゆらぎ補正機能を有し、パケット遅延ゆらぎ補正手順を実行する。
【0033】
加入者光終端装置20から加入者光終端装置側インタフェース11へ到着したパケットは、PTPパケット識別部12によりPTPパケットとそれ以外のパケットに分けられる。PTPパケットはPTPパケット処理部22を通過してスイッチ部14に入力されるか、PTPパケット処理部22で棄却される。PTP以外のパケットはPTPパケット処理部22を通らずにスイッチ部14に入力される。
【0034】
PTPパケット処理部22は、t
1とt
aからPTPパケットが時刻同期マスタ82から局舎光終端装置10の区間に受けた遅延(t
a−t
1)を計算し、閾値t
sと比較する。(t
a−t
1)>t
sを満たすとき、PTPパケット処理部22は当該PTPパケットを棄却する。ここで閾値t
sは、PTPパケットが加入者光終端装置20から局舎光終端装置10へ転送される際にディスカバリープロセスの影響を受けて通常のDBAによる遅延よりも大きな遅延を受けたときに棄却できるような値に設定する。
【0035】
(t
a−t
1)<t
sを満たすPTPパケットは、最大遅延量保持部13で保持されている時刻同期装置(時刻同期マスタ82又は時刻同期スレーブ83)から局舎光終端装置10までの最大遅延量をもとに、個々の到着PTPパケットに対して所定の遅延ΔTを付加した後、PTPパケットをスイッチ部14へ入力する。スイッチ部14では、PTPパケット識別部12からの入力、PTPパケット処理部22からの入力、上位コアネットワーク側インタフェース15からの入力の3つの入力と、加入者光終端装置側インタフェース11への出力、上位コアネットワーク側インタフェース15への出力の2つの出力を備える。スイッチ部14は、PTPパケット処理部22から入力されたPTPパケットを加入者光終端装置側インタフェース11へ出力する。このときのPTPパケットの宛先は、送信元が時刻同期マスタ82であれば時刻同期スレーブ83であり、送信元が時刻同期スレーブ83であれば時刻同期マスタ82である。
【0036】
時刻同期マスタ82と時刻同期スレーブ83の間でやりとりされるPTPパケットのチャート図は
図4と同様で、加入者光終端装置20から局舎光終端装置10へ転送されるPTPパケットが受けるパケット遅延ゆらぎの影響を補償することで加入者光終端装置20に接続された時刻同期マスタ82と時刻同期スレーブ83による高精度な時刻同期を実現する。
【0037】
さらに、本発明の第二の様態における光通信システムは、ディスカバリープロセスによる影響を受けDBAのみの影響による遅延よりも大きな遅延を受けたPTPパケットを棄却することで、t
maxの値をディスカバリープロセスによる影響を受けたPTPパケットを含む値より小さくすることができるため、PTPパケット処理部22で付与する遅延量を減らすことができる。
【0038】
(第三実施形態)
図6は、本発明の第三の様態における光通信システムの局舎光終端装置10を表している。
図6において局舎光終端装置10は、加入者光終端装置側インタフェース11、PTPパケット識別部12、PTPパケット処理部22、最大遅延量保持部13、スイッチ部14、上位コアネットワーク側インタフェース15、から構成されている。
【0039】
局舎光終端装置10の加入者光終端装置側インタフェース11は、DBAに基づき加入者光終端装置20へGrantメッセージを送信する。さらに加入者光終端装置側インタフェース11は、加入者光終端装置20へ送信したGrantメッセージを、最大遅延量保持部13にも送信する。
【0040】
最大遅延量保持部13は、得られたGrantメッセージをもとに、各加入者光終端装置20から到着するPTPパケットに付与すべき所定の遅延ΔTを計算する。例えば、Grantメッセージに格納されているGrant #x Start timeを用いて、所定の遅延を次式にて求める。
(数2)
ΔT=
tmax−(T
Start time + T
propagation)−t
1
ここでT
Start timeは当該PTPが加入者光終端装置20から送信される時間、T
propagationは
加入者光終端装置20から局舎光終端装置10に至る伝送路の伝搬遅延であり(T
Start time+T
propagation)は推定t
aを意味する。個々のPTPパケットのt
1に関する情報は、例えば非特許文献3に示されているPDU(Protocol data unit)のVendor Specific information fieldを用いて加入者光終端装置20から局舎光終端装置10の最大遅延保持部13へ通達されているものとする。
【0041】
PTPパケットがPTPパケット処理部22に到着すると、PTPパケット処理部22は、最大遅延量保持部13であらかじめ計算した付与すべき所定の遅延ΔTをもとにPTPパケットに遅延を付与し、スイッチ部14へ送る。このため本発明の第三の様態における光通信システムは、PTPパケットがPTPパケット処理部22に到着してから付与すべき遅延量を計算する方式にくらべ、局舎光終端装置10内での処理遅延t
xが少なくなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、光通信ネットワークを利用した情報通信産業およびIP化された電力配電網制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10:局舎光終端装置
11:加入者光終端装置側インタフェース11
12:PTPパケット識別部
13:最大遅延量保持部
14:スイッチ部
15:上位コアネットワーク側インタフェース
20:加入者光終端装置
21:PTPパケット遅延付加部
22:PTPパケット処理部
81:PONシステム
82:時刻同期マスタ
83:時刻同期スレーブ
84:上位コアネットワーク