特許第5876427号(P5876427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5876427光ネットワークシステム、局側終端装置、及び加入者側終端装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876427
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】光ネットワークシステム、局側終端装置、及び加入者側終端装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20160218BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20160218BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 B
   H04L12/44 107
   H04B9/00 272
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-32747(P2013-32747)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-165558(P2014-165558A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】田所 将志
(72)【発明者】
【氏名】久保 尊広
(72)【発明者】
【氏名】西原 晋
(72)【発明者】
【氏名】氏川 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】野村 紘子
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 直人
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
【審査官】 森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−124206(JP,A)
【文献】 特開2002−026951(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0088536(US,A1)
【文献】 特開2000−174767(JP,A)
【文献】 特開2005−006020(JP,A)
【文献】 特開2010−074466(JP,A)
【文献】 特開2006−042365(JP,A)
【文献】 特開2004−040336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0094385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04B 10/272
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と複数の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)とを光伝送路で接続し、前記ONUから前記OLTへの上り信号をDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)アルゴリズムに基づく送信制御することが可能な光ネットワークシステムであって、
前記OLTは、上り信号を受信可能な受信時間の一部又は全部を、前記DBAアルゴリズムに基づく送信制御された上り信号を受信する非自由競争通信時間帯(CFP:Contention Free Period)といずれの上り信号も受信可能な自由競争通信時間帯(CAP:Contention Access Period)に設定可能であり、
前記ONUは、配下の端末から低遅延を要求する上り低遅延データを受信したとき、前記上り低遅延データを前記OLTが前記CAPに受信するように送信する
ことを特徴とする光ネットワークシステム。
【請求項2】
前記OLTは、前記受信時間を前記CFP又は前記CAPに設定、あるいは前記受信時間を前記CFPと前記CAPに設定することを特徴とする請求項1に記載の光ネットワークシステム。
【請求項3】
前記OLTは、前記受信時間を前記CFPと前記CAPに設定する場合に前記CFPと前記CAPとの順及び切換時刻を変更できることを特徴とする請求項2に記載の光ネットワークシステム。
【請求項4】
前記ONUは、前記上り低遅延データを前記OLTが前記CAPに受信するように送信した後、前記上り低遅延データを一定時間保管しておき、送信した前記上り低遅延データが他のデータと衝突した場合に保管している前記上り低遅延データを再送することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ネットワークシステム。
【請求項5】
前記ONUは、前記上り低遅延データを再送する場合、前記DBAに従い前記CFPにて再送することを特徴とする請求項4に記載の光ネットワークシステム。
【請求項6】
前記OLTは、再送の前記上り低遅延データを受信する専用スロットを発生させることを特徴とする請求項5に記載の光ネットワークシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の光ネットワークシステムが備えるOLT。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の光ネットワークシステムが備えるONU。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動光ネットワークにおける送信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロードバンドサービスの普及とともにFTTHの導入が進められている。FTTHの主な形態としてPON(Passive Optical Network)方式が挙げられる。PON方式は図1のように1つの局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)10と、1つ以上の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)20と、OLT10とONU20を接続する光スプリッタ30から構成されており、OLT10および、OLT10から光スプリッタ30までの光ファイバ伝送路40を複数のONU20で共用できるため経済的な構成となっている。PONに用いる通信方式として特徴的なものとして動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)アルゴリズムが挙げられる。
【0003】
図2は、DBAの動作を説明する図である。まず、DBAは、ONUに対してONUに備えられたキュー内のデータ量をREPORTメッセージにより報告させる。そして、ONUから受信したREPORTメッセージをもとにONU内のキューのデータ量を監視し、アルゴリズムにより各ONUへ送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う。最後に、上り帯域の割当結果をGATEメッセージによりONUに通知する。
【0004】
図1に示すように、PONは、光ファイバ伝送路40および1対nの光スプリッタ30(nは自然数)を介して、1つのOLT10内に収容されるOSU(Optical Subscriber Uni)50と複数のONU20とのポイントツーマルチポイントの通信を行うネットワークである。ギガビットクラスのPONの代表的な規格として、IEEE 802.3にて標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)がある。また、IEEE 802.3av検討グループにおいて、10ギガビットクラスの10GーEPONの標準化が行われた。
【0005】
図3は、EPONにおけるONU20の機能ブロック図である。上り主信号は、UNI(User Network Interface)21、キュー管理手段22、PON信号処理手段23、及びPON−IFポート24を介してOSUへと流れる。一方、OSUからの下り主信号は、PON−IFポート24、PON信号処理手段23、キュー管理手段22を介してUNI21へと流れる。ONU20は、上り方向に対して複数のキューを備え、各キュー内のデータ量を監視するキュー監視手段25を有している。また、ONU20は、PON信号処理手段23に、OLT10に対してキュー内のデータ量を報告するMPCP(Multi−Point Control Protocol)部26と、OLT10と保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM(Operations,Administration and Maintenance)部27を有している。
【0006】
図4は、EPONにおけるOSU50の機能ブロック図である。下り主信号は、SNI(Service Node Interface)ポート51、キュー管理手段52、PON信号処理手段53、UNIポート54を介してONU20へと流れる。一方、上り主信号は、PON−IFポート54、PON信号処理手段53、キュー管理手段52を介してSNIポート51へと流れる。PON信号処理手段53は、ONU20に対してONU20内のキューのデータ量をREPORTメッセージにより報告させ、上り帯域の割当結果をGATEメッセージによりONUに通知するMPCP部55と、ONU20から受信した報告メッセージをもとにONU20内のキューのデータ量を監視し、DBAアルゴリズムにより各ONU20へ送信順番および送信可能なデータ量の割当を行う帯域割当部56と、ONU20と保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM部57が具備されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0007】
図5は、DBAアルゴリズムを説明する図である。ONUがOLTに対し上り主信号を送信する場合、REPORT/GATEのやり取りによるOLTからの指示により、ONUは指定された割り当て時間(タイムスロット)に指定された量のデータを送信する。ONUに割当られるタイムスロットは各ONUから送信されるREPORT内の送信要求データをOLTが考慮し、タイムスロットの割当を行う。この一連の流れが帯域割当周期を繰り返すことでそれぞれのONUは保持する上りデータをOLTへ送信する(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0008】
また、各ONUの送信する割り当て時間(タイムスロット)を帯域割当周期内で固定し、決まった時間に決められた容量まで上りデータを送信する固定帯域割当(FBA:Fixed Bandwidth Allocation)アルゴリズムも存在する(例えば、非特許文献1を参照。)。図6は、FBAアルゴリズムを説明する図である。このアルコリズムではOLT配下に存在する各ONUの上り進行の送信する順番は固定されているため、GATE/REPORTのやり取りは不要になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】BANDWIDTH ALLOCATION FOR MULTISERVICE ACCESS ON EPONS(Yuanqiu Luo and Nirwan Ansari, New Jersey Institute of Technology,IEEE Optical Communications, February 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、研究が進められているスマートグリッドやスマートコミュニティなどではエネルギー制御を一般の通信回線を通じて行う試みがなされている。高度なエネルギーの制御では、送配電区間における電力に供給状況をリアルタイムで監視し、供給電力が不安定化した場合、直ちに該当する送配電系を極めて短い時間(数十ミリ秒レベル)で系統に隔離し、電力の不安定化が拡大することを防ぐ必要がある。これは不安定要素の検出、通知、隔離系の算出、迂回経路算出、関係する電力ノードへの通知等、一連の動作を行う必要があるため、通信時間に割当られる許容時間は極めて短くなる。次に、変電所内や変電所間で自動化を行う場合、複数の装置を同時に制御する必要があるため、時刻同期技術が重要になる。これは通信機器に要求される性能として、同期の信号の到着時間のゆらぎ(ジッタ)の少ないものが望まれることを意味している。このように、今後、光ネットワークシステムには極めて低遅延が求められる信号が存在するようになる。
【0011】
しかしながら、DBAアルゴリズムを用いた上り通信ではOLT−ONU間で必ずGATE/REPORTのやり取りを行う必要がある。このため、ONUが上り信号を送信するタイミングは、UNIへ上り信号が入り、REPORT(送信要求)を行い、OLTからの(GATE)送信許可を受信してからでないと該当信号をOLTへ送信することができない。この動作により、最小でも1周期以上の帯域割当周期分の遅延が生じる。
【0012】
さらに、ユーザ間の公平制御などを行う場合、各ユーザの公平性を維持するため各ONUに割り当てられるタイムスロットは決まったタイムスロットに割り当てがあるとは限らず、送信周期内の後半にタイムスロットが割り当てられることもある。このような場合にも、上り信号の遅延が大きくなる。
【0013】
このように、DBAアルゴリズムを用いた場合、GATE/REPORTによる遅延で遅延許容時間が1帯域割当周期以下での通信サービスを提供できないという課題がある。
【0014】
一方、FBAアルコリズムは、GATE/REPORTのやり取りは不要のため、DBAアルゴリズムと異なり、1周期分の帯域割当周期を待つこと無く、上り信号をOLTへ送信することができる。
【0015】
しかし、1タイムスロットの大きさが固定されているため、これを超える長さ(大きさ)のデータは送信できない。また、任意の送信タイミングでも送信することはできないため、ONUは自分の割り当てられたタイムスロット直後にUNIがデータを受信した場合、次のタイムスロットまで送信できず、1周期待つという遅延が生ずる。また、通信していないONUの帯域も確保する必要もあることから、空きスロットが発生し、帯域利用効率が低下するという課題もある。
【0016】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明は、低遅延が求められる信号に対応できるとともに帯域利用効率の低下を防ぐことができる光ネットワークシステム、OLT、及びONUを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、いずれのONUからの上り信号も受信可能とする時間とDBAアルゴリズムに従った上り信号を受信する時間とを複合的に運用するアルゴリズムを採用することとした。
【0018】
具体的には、本発明に係る光ネットワークシステムは、1のOLTと複数のONUとを光伝送路で接続し、前記ONUから前記OLTへの上り信号をDBAアルゴリズムに基づく送信制御することが可能な光ネットワークシステムであって、
前記OLTは、上り信号を受信可能な受信時間の一部又は全部を、前記DBAアルゴリズムに基づく送信制御された上り信号を受信する非自由競争通信時間帯(CFP:Contention Free Period)といずれの上り信号も受信可能な自由競争通信時間帯(CAP:Contention Access Period)に設定可能であり、
前記ONUは、配下の端末から低遅延を要求する上り低遅延データを受信したとき、前記上り低遅延データを前記OLTが前記CAPに受信するように送信する
ことを特徴とする。
【0019】
本光ネットワークシステムは、ONUからOLTへ上り信号を送信する際に、帯域割当周期内、若しくは特定の任意の帯域割当周期に、自由に信号を送信可能な時間帯(CAP)と動的に帯域を割り当てる時間(CFP)を設け、複合的に上り送信手段を運用できるアルゴリズムを用いる。このアルゴリズムにより、低遅延が要求される上りデータをREPORT/GATE不要、又はタイムスロット待ち不要の低遅延で通信し、他の低遅延性が要求されない上りデータをDBAによる通信を行うことで、低遅延かつ帯域利用効率の高い上り通信が可能になる。従って、本発明は、低遅延が求められる信号に対応できるとともに帯域利用効率の低下を防ぐことができる光ネットワークシステムを提供することができる。
【0020】
本発明に係る光ネットワークシステムの前記OLTは、前記受信時間を前記CFP又は前記CAPに設定、あるいは前記受信時間を前記CFPと前記CAPに設定することを特徴とする。低遅延が求められる信号の多少に応じて上り信号の送信周期(OLTの受信時間)をCAP、CFP、又はCAP/CFPに柔軟に設定可能であるため、帯域利用効率を高めることができる。
【0021】
本発明に係る光ネットワークシステムの前記OLTは、前記受信時間を前記CFPと前記CAPに設定する場合に前記CFPと前記CAPとの順及び切換時刻を変更できることを特徴とする。低遅延が求められる信号の多少に応じて上り信号の送信周期(OLTの受信時間)内のCAP/CFP比率を柔軟に設定可能であるため、帯域利用効率を高めることができる。
【0022】
CAPでは、ONUは自由に上り信号を送信できるため、他のONUからの上り信号と衝突することもある。このような事態に備え、本発明に係る光ネットワークシステムの前記ONUは、前記上り低遅延データを前記OLTが前記CAPに受信するように送信した後、前記上り低遅延データを一定時間保管しておき、送信した前記上り低遅延データが他のデータと衝突した場合に保管している前記上り低遅延データを再送することを特徴とする。再送することで衝突が生じても遅延を最小限にデータを伝送することができる。
【0023】
この場合、前記ONUは、前記上り低遅延データを再送する場合、前記DBAに従い前記CFPにて再送することであってもよいし、前記OLTは、再送の前記上り低遅延データを受信する専用スロットを発生させることであってもよい。
【0024】
上記目的を達成するためのOLTは、上記光ネットワークシステムが備えるOLTである。また、上記目的を達成するためのONUは、上記光ネットワークシステムが備えるONUである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、低遅延が求められる信号に対応できるとともに帯域利用効率の低下を防ぐことができる光ネットワークシステム、OLT、及びONUを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】光ネットワークの構成を説明する図である。
図2】DBAの動作を説明する図である。
図3】ONUの機能ブロックを説明する図である。
図4】OSUの機能ブロックを説明する図である。
図5】DBAの動作を説明する図である。
図6】FBAの動作を説明する図である。
図7】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。
図8】本発明に係る光ネットワークが行う信号転送シーケンスを説明する図である。
図9】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。自由競争時間の長さが固定時間割り当て構成である。CAP送信タイミングが決まっているためONUはCAPの時間を毎回確認する必要がない。システムの構造を簡素化が可能である。
図10】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。送信周期内の自由競争時間帯の長さが動的に変化する構成である。
図11】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。送信周期内の自由競争時間帯、非自由競争時間帯の開始・終了時間が常に一定の構成である。
図12】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。自由競争時間帯/非自由競争時間帯の開始時間が任意に可変できる構成である。
図13】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。送信周期内に自由競争時間帯と非自由競争時間帯が複数存在する構成である。
図14】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。送信周期内に自由競争時間帯と非自由競争時間帯が複数存在する構成である。
図15】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。送信周期毎に自由競争時間帯が存在する複合帯域割り当て構成である。
図16】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。特定の送信周期に自由競争時間帯が存在する複合帯域割り当て構成である。
図17】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。任意の送信周期にのみ複合帯域割り当て(CAP+CFP)が存在し、それ以外の送信周期は自由競争時間帯しかない構成である。
図18】本発明に係る光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。任意の送信周期にのみ複合帯域割り当て(CAP+CFP)が存在し、それ以外は非自由競争時間帯となる構成(図16の逆)である。
図19】本発明に係る光ネットワークが行う信号転送シーケンスを説明する図である。再送を次の送信周期の非自由競争時間帯に行う構成である。
図20】本発明に係る光ネットワークが行う信号転送シーケンスを説明する図である。再送を次の送信周期の非自由競争時間帯に行う構成である。例えば、再送用の臨時非自由競争時間帯を送信周期の先頭もしくはその付近に設ける。
図21】再送判断を行うためのデータ照合プロセスとバッファ解除プロセスを説明する図である。再送無しの場合、OLTはGate、OAM等を用いて再送不要の情報をONUへ送信し、ONUはこれを元に該当データをキューから削除する。
図22】本発明に係る光ネットワークが行う信号転送シーケンスを説明する図である。再送を次の送信周期の自由競争時間帯に行う構成である。高優先(低遅延)データがCAP区間で衝突した場合、未受信通知(Grant)を元に、再度CAP区間で送信を行なう。
図23】本発明に係る光ネットワークが行う信号転送シーケンスを説明する図である。再送を行わない構成である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0028】
以下に説明する実施形態の光ネットワークシステムについて、IEEE標準のEPONである1G−EPONおよび10G−EPONを例に挙げて説明する。光ネットワークシステムの基本構成は図1のようになる。ONUの基本構成は図3のように、OSUの機能構成例は図4の通りになる。
【0029】
OLTのOSUにおいて、上り主信号は、PON信号処理手段53、キュー管理手段52を介してSNIポート51へと流れる。ONU20のキュー管理手段22では、UNI21から入力される上りデータを、優先度や属性で判定し、そのまま自由に上り送信データを出力できる自由送信キュー、もしくはGATE/REPROTによるデータ送信するDBAキューにバッファする。
【0030】
ONU20の自由送信キューにバッファされたデータは、OLT10から通知された自由送信時間帯に任意のタイミングで該当データを送信する。自由送信時間帯に複数のONU20が上り信号を送信し、信号が衝突する可能性もあるため、その場合は、低遅延な再送手段で該当データを送信する。
【0031】
一方、ONU20のDBAキューにバッファされたデータの場合、OLT−ONUでGATE/REPROTのやり取りを行い、OLT10から与えられた送信許可のタイミングで該当データを送信する。
【0032】
(第一の実施形態)
本実施形態の光ネットワークシステムは、1のOLT10と複数のONU20とを光伝送路40で接続し、ONU20からOLT10への上り信号をDBAアルゴリズムに基づく送信制御することが可能な光ネットワークシステムであって、
OLT10は、上り信号を受信可能な受信時間の一部又は全部を、DBAアルゴリズムに基づく送信制御された上り信号を受信するCFPといずれの上り信号も受信可能なCAPに設定可能であり、
ONU20は、配下の端末から低遅延を要求する上り低遅延データを受信したとき、上り低遅延データをOLT10がCAPに受信するように送信する。
【0033】
本光ネットワークシステムの基本的な構成は、図1の通り、PONシステムの構成で、OLT10と複数のONU20が光スプリッタ30を介して接続されている。本実施形態は主にONU20からOLT10に対してデータを送信する実施方法について説明する。図7は、本光ネットワークが行う帯域割当アルゴリズムを説明する図である。OLT10は、ONU20に対して、上りデータを受信可能な時間、すなわちONUが送信可能な時間帯(送信周期)が自由競争時間帯(CAP)と非自由競争時間帯(CFP)に分けられていることを、予めGateやOAM、その他の制御信号を用い、各ONU20に対し通知する。例えば上りの送信周期はTを設定し、自由競争時間帯をt、非自由競争時間帯をT−tとする。これらの時間帯はMPCPによって各ONU20に通知される。
【0034】
非自由競争時間にはタイムスロットが設定されており、各ONU20のデータの送信要求量に応じ、OLT10がスロットの割当を該当のONU20に対して行う。図8は、第一の実施形態におけるOLT10とONU20の自由競争時間おける通信シーケンスと非自由時間帯における通信シーケンスを説明する図である。自由競争時間帯tではONU20は自由競争で送信設定されたデータaを任意の時間に送信する。このとき、ONU20からの上り信号はOLT10に到達するまで距離応じた時間を要するため、距離による遅延時間が明らかであり、かつ次周期の自由競争開始時間が明らかなとき、ONU20は該当上りデータが自由競争開始時間直後にOLT10到着することを予測し送信してもよい。
【0035】
一方、非自由競争時間帯によるデータ送信の場合(データb)、ONU20はOLT10に対し非自由競争時時間帯(T−t)での通信要求(REPORT)を行い、データbの容量などを通知する。OLT10はONU20に対し、GATEにてOLT10−ONU20間の伝送距離を考慮した送信タイミング(割当スロット)と送信容量の通知を行う。ONU20はOLT10からのGATEの内容に応じ、非自由競争時間帯に指定されたスロットにて上り信号(データb)の送信を行う。
【0036】
また、非自由競争時間帯に送信設定されたデータでも、極めて低遅延で送信する必要性に迫られた場合、ONU20は、非自由競争時間帯を待たずに自由競争時間帯で送信してもよい。この場合、OLT10の事前許可及び設定等が必要となる。例えば、ONU20は、当該データを自由競争時間帯で送信した直後に送信するREPORTに事後通達してもよい。次周期のDBAによる上り帯域利用効率の低下を防ぐことができる。
【0037】
また、自由競争時間帯はスロット単位で管理されても良く、その場合、ONU20は自由競争時間帯内に設定された特定または任意のスロットで送信する。また、自由競争時間帯は時間単位で管理されても良く、その場合、ONU20は自由競争時間内の特定または任意の時間に送信する。
【0038】
(第二の実施形態)
OLT10は、受信時間をCFP部分とCAP部分に設定する。そして、OLT10は、受信時間をCFP部分とCAP部分に設定する場合にCFPとCAPとの順及び切換時刻を変更できる。
【0039】
上述した自由競争時間帯及び非自由競争時間帯の長さ(割り当て時間)は図9のように1送信周期内で固定されていてもよい。この場合、それぞれの時間帯は固定されているため、OLT10はONU20への帯域割り当ての計算量負荷が少なくて済む。またはONU20も自由競争時間帯が固定されていることを前提に送信が行えるため、非自由競争時間帯の開始時間・終了時間の確認をせず、ONU20独自の判断で自由競争時間帯に、OLT10へ信号を送信できる。
【0040】
一方、図10のように1送信周期内で割り当てる自由競争時間帯および、非自由競争時間帯の割り当て時間を上り信号の状況によって任意に可変する構成でもよい。この場合、OLT10は状況に応じて変化した非自由競争時間の長さに応じたタイムスロットの計算が必要になるが、状況に応じた自由競争時間帯/非自由競争時間帯の変更が可能なため、上りトラヒックの送信頻度(自由競争用データ/非自由競争用データ)に最適な帯域の割り当てが可能になる。
【0041】
また、送信周期内の自由競争時間と非自由競争時間帯の順序は固定的に設定し、図11のように、送信周期内の自由競争時間帯と非自由競争時間帯の開始/終了時間を常に固定する単純な構成としてもよい。OLT10の送信制御負荷を低減させることができる。一方、図12のように状況に応じて送信周期内の自由競争時間帯と非自由競争時間帯の開始時間/終了時間を任意に変更してもよい。自由競争を用いて送信を行うデータの到着間隔がONU20の送信周期と一致しない場合がある。この場合、数送信周期間隔で非自由競争時間帯にONU20に到着し、次の送信周期の自由競争時間帯に送信するまでOLT10へ信号を送るまで待つ必要がある。しかし、該当データの到着間隔が判明していれば、図12のように送信周期内の自由競争時間帯と非自由競争時間帯の開始時間/終了時間を任意に変更することで、該当データをONU20でバッファすることなく低遅延でOLT10へ送信することができる。
【0042】
また、図13のように1つの送信周期に自由競争時間帯と非自由競争時間帯とを複数組設けたり、図14のように2つの非自由競争時間帯の合間に自由競争時間帯を設けたりしてもよい。特に、図13のように自由競争時間帯が複数存在する場合、例えば、同じデータを異なる自由競争時間帯に繰り返し、もしくは任意の自由競争時間帯に送信してもよい。先頭の自由競争時間帯では各ONU20が挙ってデータを送信するため、衝突する確率が高くなる。このため、その後の自由競争時間帯に設けられた自由競争時間帯に再度、同じデータを送信することで、より高い確率でデータをOLT10へ送信することができる。
【0043】
(第三の実施形態)
OLT10は、受信時間をCFP又はCAPに設定、あるいは受信時間をCFPとCAPに設定する。送信周期の構成は、図15のように毎送信周期、自由競争時間帯と非自由競争時間帯を設けた複合帯域割り当て構成とすることで自由競争送信とDBAによる非自由競争送信を毎送信周期行えるようにしてもよい。これにより、常に自由競争による通信、非自由競争による通信が安定して行うことができる。
【0044】
また、ONU20のUNIから受信する自由時間帯送信向けデータの受信頻度もしくは間隔によっては、図16のように、通常は送信周期全体を非自由競争時間帯に設定しておき、任意もしくは特定の送信周期を自由競争時間帯と非自由競争時間帯とに分けた設定でもよい。図16の場合は、低遅延データの送信頻度が粗の状態である。また、OLT10は自由競争時間帯にOLT10へ送信されてくるデータの頻度の統計情報を元に、自由競争時間帯の送信周期内の存在頻度を状況に応じ、任意に変更することで、非自由時間競争時間帯の時間を拡大し、OLT10への上り信号の送信効率を向上させることができる。一方、自由競争時間帯を利用した通信が多い場合は、自由競争時間帯を毎周期設けることにより、自由競争時間帯を確保し、送信時間を確保する。
【0045】
さらに自由競争によるデータ送信時頻度が多く、一方、非自由競争によるデータ送信頻度が少ない場合、図17のように、通常は送信周期全体を自由競争時間帯に設定しておき、任意もしくは特定の送信周期を自由競争時間帯と非自由競争時間帯とに分けた設定でもよい。自由競争によるデータ送信時間を増大させ、効率を向上させることができる。また、自由競争時間が拡大されることは、任意のタイミングで各ONU20から送信されるデータ同士が、光スプリッタ等で衝突し、データが破損する確率を低減する効果がある。
【0046】
逆に、自由競争時間帯による送信要求頻度が少なく、非自由競争時間帯のDBAを用いた送信要求が多い場合、図18のように、通常は送信周期全体を非自由競争時間帯に設定しておき、任意の送信周期のみ自由競争時間帯を含む構成とすることで、非自由競争時間帯による送信容量をより多く確保することができる。
【0047】
(第四の実施形態)
本実施形態は上記の実施形態で発生する自由競争時間帯での信号の衝突に関し、信号の再送および、自由競争時間に送信するデータのバッファ方法について説明する。ONU20は、上り低遅延データをOLT10がCAPに受信するように送信した後、上り低遅延データを一定時間保管しておき、送信した上り低遅延データが他のデータと衝突した場合に保管している上り低遅延データを再送する。
【0048】
図19は、上記の実施形態の自由競争時間帯において、2つ以上のONU20から送信された上り信号が光伝送路上で衝突し、データが破損した場合の再送手段(シーケンス)である。図19では1つのONU20について説明している。信号が衝突した場合、OLT10は、GATE、OAM、制御フレーム等で再送要求をONU20に対して行い、ONU20は該当データを確実に送信するためにDBAを用いた非自由競争時間帯に行う。OLT10からの再送要求を該当ONU20へGATEで送る場合、OLT10が再送データの容量を把握していれば、GATEに該当データの再送をONU20へ送信できるため、ONU20が再送シーケンス(REPORT/GATEのやりとり)を行うことなく、迅速にデータの再送を行うことができる。この場合、最も早い再送時間は、ONU20からのREPORTを受けた次の非自由競争時間帯に該当データの再送ができる。その場合、DBAアルゴリズムに従い、GATEの情報に、該当データを再送するための指定スロット(非自由競争時間帯)で行うように指示を行う。自由競争時間帯に送信されるデータは低遅延性が優先される場合があるため、割り当てるスロットは非自由競争時間帯内でも先頭に近い方が望ましい。
【0049】
また、非自由競争時間帯に再送が行われる場合、低遅延性重視の自由競争時間帯の後の設定になることがあるため、図20のように自由競争時間帯の前に、再送専用のため必要最小限の時間の再送専用非自由競争時間帯を臨時に設け、該当ONU20に通知し、再送させてもよい。これにより、確実かつ衝突による再送遅延を低減させることができる。
【0050】
[再送データの識別方法]
図21は、再送データの識別方法を説明する図である。OLT10による再送データの識別はONU20のREPORT(OAMや制御フレーム等でもよい)に直前の自由競争時間帯に送信したデータの識別子情報とOLT10情報が受信したデータの識別子を比較することで行う(図20のステップS11、S12、図21のステップS01)。OLT10がONU20から送られた識別子と自らや有する識別子情報が一致しない場合、若しくは再送が必要な識別子として分類される場合、該当データの再送が必要として判断し、これに対応するONU20のGATE等に該当する識別子のデータの再送要求もしくは指示する(図20のステップS13、図21のステップS02)。
【0051】
[ONU20の自由競争用データの保持/削除方法]
自由競争時間帯用データは信号衝突による再送に備えるため、データ送信後もONU20は該当データをバッファし続ける。この後に、ONU20は次の非自由競争時間による通信にREPORTをOLT10に対し送信するが、このREPORT内に自由競争時間帯に送信したデータの識別子を付与し送信する(図20のステップS11)。なお、REPORT以外にもOAMや、その他の制御信号を利用しても良い。OLT10は、このREPORTに添付された識別子と、同一送信周期内もしくは、任意の周期以内に自由競争時間帯で受信した信号の識別子と比較し(図20のステップS12、図21のステップS01)、REPORTで申告された信号が到着したか否かを判断する。OLT10は、受信した識別子と一致する場合、GATE(もしくはOAMや専用の制御信号でもよい)に該当データを受信した内容の情報を付与し、該当ONU20へ送信する。このGATEを受け取ったONU20は自由競争時間帯に送信したデータは衝突なくOLT10へ送信できたことを判断し、それまでキューにバッファしていた、自由競争時間帯に送信していた該当データを廃棄する(図21のステップS03)。
【0052】
[自由競争時間帯に再送する方法]
また、上記の再送タイミングを非自由競争時間帯ではなく、図22のように自由競争時間帯に再送させるようにしてもよい。特に自由競争時間帯の送信頻度が低く、再送で再び信号が衝突する可能性が低い場合などでは有効である。信号衝突検出/再送と該当ONU20へ通知(Gate,OAM 制御フレーム等による)するまでのプロセス、データのバッファ方法は上記の非自由競争時間帯での再送と同様となる。
【0053】
再送するタイミングは、再送要求の信号がONU20に到着したタイミングによる。例えば、自由競争時間帯に再送信号を受けた場合(図22のステップS23)、ONU20は受信直後にデータを再送するが、非自由競争時間帯に再送信号を受けた場合、次の自由競争時間帯まで待つ必要がある。再送が成功し、OLT10からの確認(識別子一致による)が得られた場合、キューにバッファされていた該当データは削除される。
【0054】
再度、衝突を起こしてしまった場合は、上記の再送手順を繰り返す。このとき、自由競争時間帯の再送において、何度も信号の衝突が発生する場合、非自由競争時間帯での再送に切り替えてもよい。逆に、非自由競争時間帯に再送することになっていても、自由競争時間帯による再送が適している場合、例えば再送での衝突確率が低く、自由競争時間帯で再送すぐに可能な場合は、ONU20に判断を委ね、自由競争時間帯に再送に切り替えてもよい。また、再送中止カウンタを設け、指定の回数、再送に失敗した場合、該当データの再送を中止し、データを廃棄してもよい。
【0055】
[衝突を無視する方法]
また、自由競争時間帯のデータ送信において、ONU20からの信号が衝突しても再送を行わない方法もある。これは同期信号など、低遅延による送信が重要で、ある一定の確率で信号が欠落しても、問題の発生しないデータ等が該当する。この場合、図23のように自由競争時間帯で該当データを送信した直後にキュー内のデータは削除してよいため、キューの効率的な利用が可能になる。状況に応じて、図20及び図22で説明した再送方法と組み合わせてもよい。
【0056】
以下は、本実施形態の光ネットワークシステムを説明したものである。
<課題>
OLT10とONU20のGATE−REPORTによる遅延を解消し、かつ、空きスロット発生による帯域利用効率の低下を防ぐための、PON通信方式、光ネットワーク終端装置および光加入者線終端装置を提供することにある。
【0057】
<手段>
(1):ONU20からOLT10への上り信号の伝送手段において、
自由競争時間及び動的帯域割り当てを複合的に運用する帯域割り当てができる光ネットワークシステム。
(2):一つの送信周期内において、自由競争時間帯もしくは非自由競争時間帯の開始時間・終了時間が任意に変更・変化する上り信号の送信手段を特徴とする光ネットワークシステム。
(3):送信周期の構成において、任意の送信周期を自由競争時間帯、非自由競争時間帯、自由競争時間帯および非自由競争帯の複合とする上り信号の送信手段を特徴とする光ネットワークシステム。
(4):自由競争時間帯におけるONU20からOLT10へ上り信号伝送において、信号が衝突した場合、該当信号の再送手段を特徴とする光ネットワークシステム。
【0058】
<効果>
本発明は、PONにおいて、DBAによる上り送信方法の他に自由に上り信号の送信を行える時間帯を設けることにより、迅速に送信が必要な信号を任意のタイミング(自由競争時間帯)で送信できるため、低遅延な通信が可能になる。
【符号の説明】
【0059】
10:OLT
20:ONU
21:UNIポート
22:キュー管理手段
23:PON信号処理手段
24:PON−IFポート
25:キュー監視手段
26:MPCP部
27:OAM部
30:光スプリッタ
40:光ファイバ伝送路
50:OSU
51:SNIポート
52:キュー管理手段
53:PON信号処理手段
54:PON−IFポート
55:MPCP部
56:帯域割当部
57:OAM部
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