(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(12)中のdが0<d≦0.5であり、eが0≦e≦0.3であり、gが0<g<0.8であり、hが0≦h≦0.5であることを特徴とする請求項9に記載の高分子化合物。
膜厚10〜100μmである光硬化性樹脂層が支持フィルムと保護フィルムで挟まれた構造を有する光硬化性ドライフィルムであって、前記光硬化性樹脂層が請求項11に記載の化学増幅型ネガ型レジスト材料によって形成されたものであることを特徴とする光硬化性ドライフィルム。
開口幅が10〜100μmであり、かつ、深さが10〜120μmである溝及び孔のいずれか又は両方を有する基板に請求項12に記載の光硬化性ドライフィルムの光硬化性樹脂層が積層されてなるものであることを特徴とする積層体。
前記現像工程の後に、前記現像によりパターン化された皮膜を温度100〜250℃において後硬化する工程を含むことを特徴とする請求項15又は請求項16に記載のパターン形成方法。
前記基板が、開口幅が10〜100μmであり、かつ、深さが10〜120μmである溝及び孔のいずれか又は両方を有する基板であることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載のパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、再配線を加工する際に用いられる微細なパターン形成が可能でかつ電気・電子部品保護用皮膜に有用な化学増幅型ネガ型レジスト材料は、基板上に予め加工されたCu配線上を被覆することや基板上に存在するAl電極を被覆することがある。また、配線、電極を施された基板はSiNのような絶縁基板もあって、そのSiN基板を広く覆う必要もある。しかしながら、化学増幅型ネガ型レジスト材料の被覆膜層とこれら基板の密着性が未だ十分でなく、レジスト材料の被覆膜層が基板から剥がれてしまう問題がしばしば発生する。
【0010】
また一方、電気・電子部品保護用皮膜に有用な化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いたパターニングの際、現像に用いられる現像液は有機溶剤であることが多い。露光部は架橋反応などによって現像液の有機溶剤に対し不溶となり、未露光部は現像液の有機溶剤に対して良好に溶解することでパターンを得る。
【0011】
しかしながら、有機溶剤現像は現像後の廃液の処理、環境に対する負荷などを考慮した場合、好ましくないと考える向きがある。また、有機溶剤現像液は高価であることから、リソグラフィーパターニングにおいて安価でかつ汎用的に用いられる2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ水溶液による現像が好まれる。
【0012】
2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を用いた現像の場合、近年用いられるネガ型レジスト材料のいくつかは、露光部と未露光部の現像液に対する溶解性の差が小さく、いわゆる溶解コントラストの差が小さいことがある。溶解コントラストが小さい場合、微細なパターンの形成の要求に対し、良好なパターン形成を期待できないことがある。また、溶解コントラストが小さい場合、パターンを露光転写、形成する際使用するマスクに対し、忠実にパターンを基板上に形成できなくなるおそれがある。従って、アルカリ水溶液の現像液を用いてできる限り大きな溶解コントラストを得ること、すなわち解像性を向上させることがレジスト材料に求められている。
【0013】
さらに、配線を加工する際に用いられる微細なパターン形成が可能でかつ電気・電子部品保護用皮膜に有用な化学増幅型ネガ型レジスト材料は、未露光部において、現像液のアルカリ水溶液に十分に溶解することが重要である。すなわち、未露光部の現像液のアルカリ水溶液に対する溶解性が乏しい場合、レジスト材料の基板上における被覆膜厚が厚いときなど、パターンの底部に溶け残りやスカム、基板上パターンの裾において裾引きといったパターン劣化が発生することがある。これらスカムや裾引きは、再配線を施す工程の電気回路、配線の断線など弊害となることがあり、発生を抑止する必要がある。
【0014】
従って、チップの高密度化、高集積化に伴い再配線技術におけるパターンの微細化が可能でかつ電気・電子部品保護用皮膜に有用な化学増幅型ネガ型レジスト材料でありながら、基板上密着性の飛躍的な改善が望まれており、2.38%TMAH水溶液のような汎用的に用いられるアルカリ水溶液の現像液でパターニング可能で、さらなる解像性能の向上が期待でき、パターン底部に裾引きやスカムを発生しない系の早急なる構築が望まれている。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる化学増幅型ネガ型レジスト材料のベース樹脂として好適に用いられる高分子化合物及びこの高分子化合物を用いた化学増幅型ネガ型レジスト材料を提供することを目的とする。
また、上記化学増幅型ネガ型レジスト材料をスピンコート法によって簡便に基板上に塗布し微細なパターンを形成する方法を提供することを別の目的とする。
さらに、上記化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いた光硬化性ドライフィルム及びその製造方法、上記の光硬化性ドライフィルムを基板に積層させた積層体、並びに凹凸を持つ基板上であっても、光硬化性ドライフィルムを使用し、幅広い膜厚にわたるレジスト層を施し、微細なパターンを形成する方法を提供することを別の目的とする。
また、上記パターン形成方法により得られたパターンを、低温で後硬化して得られ、可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜によって保護された基板を提供することをさらに別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では、
カルボキシル基及びシロキサン鎖を含有する高分子化合物であって、少なくとも
(I)下記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物、
【化1】
(式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。aは1〜100の整数である。)
(II)下記一般式(2)で示されるフェノール類及び下記一般式(3)で示されるフェノール類のいずれか又は両方、及び
【化2】
(式中、bは1又は2であり、Xはbが1の場合2価の有機基を示し、bが2の場合3価の有機基を示す。また、bが1の場合、Xを介さずカルボキシル基がフェノールに直結してもよい。)
【化3】
(式中、cは1又は2であり、Yはcが1の場合水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の置換基を示し、cが2の場合Si、S、Oの原子を有してもよい2価の有機基を示す。)
(III)下記一般式(4)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類、
【化4】
(式中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、Zは炭素数1〜12の2価のアルキレン基、芳香族基を示す。)
を酸触媒下縮合することによって得られる高分子化合物を提供する。
【0017】
このような高分子化合物であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる化学増幅型ネガ型レジスト材料のベース樹脂となる。
【0018】
またこのとき、上記高分子化合物は、(IV)下記一般式(5)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類をさらに加えて、酸触媒下縮合することによって得られるものであることが好ましい。
【化5】
(式中、R
5は上記と同様であり、R
6は水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、又は芳香族基を示す。また、R
5とR
6は炭素数1〜15のアルキレン基によって連結してもよい。)
【0019】
このような高分子化合物であれば、より一層本発明の効果を向上させることができる。
【0020】
またこのとき、前記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物が、下記一般式(6)で示される化合物であることが好ましい。
【化6】
(式中、aは上記と同様である。)
【0021】
このような高分子化合物であれば、合成が容易であり、また化学増幅型ネガ型レジスト材料として用いた際、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングおいて現像液への溶解性が損なわれない。
【0022】
またこのとき、前記一般式(2)で示されるフェノール類が、下記一般式(7)で示される化合物のうちいずれかを示すものであることが好ましい。
【化7】
【0023】
またこのとき、前記一般式(3)で示されるフェノール類が、下記一般式(8)で示される化合物であることが好ましい。
【化8】
(式中、Wは下記一般式(9)で示される構造のうちいずれかを示す2価の有機基であり、
【化9】
R
8は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の置換基を示し、R
9は水素原子又はメチル基を示す。)
【0024】
本発明の高分子化合物に配合されるフェノール類としては、上記のようなものを好適に用いることができる。
【0025】
またこのとき、前記一般式(4)で示されるアルデヒド・ケトン類のひとつが、下記一般式(10)で示される化合物であることが好ましい。
【化10】
【0026】
またこのとき、前記一般式(5)で示されるアルデヒド・ケトン類のひとつが、下記一般式(11)で示される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式中、R
7は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。)
【0027】
本発明の高分子化合物に配合されるアルデヒド・ケトン類としては、上記のようなものが好適である。
【0028】
特に、前記一般式(5)で示されるアルデヒド・ケトン類のひとつが、ホルムアルデヒドであることが好ましい。
【0029】
またこのとき、前記高分子化合物が、下記一般式(12)で示される繰り返し単位を有し、質量平均分子量が3,000〜500,000のものであることが好ましい。
【化12】
(式中、R
1〜R
6、a、b、c、X、及びYは上記と同様である。d及びgは正数、e、f、及びhは0又は正数であり、d+e+f+g+h=1である。)
【0030】
このような高分子化合物であれば、高分子化合物自体の粘性率が適度であり、これを用いる化学増幅型ネガ型レジスト材料や光硬化性ドライフィルムの光硬化性樹脂層の粘性率を適度なものとすることができる。
【0031】
またこのとき、前記一般式(12)中のdが0<d≦0.5であり、eが0≦e≦0.3であり、gが0<g<0.8であり、hが0≦h≦0.5であることが好ましい。
【0032】
このような高分子化合物であれば、化学増幅型ネガ型レジスト材料に用いた際、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングおいて現像液への溶解性が適度であるため、レジスト材料の基板上における被覆膜厚が厚い場合であっても、パターンの底部に溶け残りやスカム、基板上パターンの裾において裾引きといったパターン劣化が発生することを抑制でき、良好なパターンが得られる。また、ネガパターンを得るために用いられる架橋反応において不溶化まで至らず、パターンを得ることができないといった問題の発生を抑制できる。また、光硬化性ドライフィルムに用いた際、成膜されたフィルムの粘着性が適度であり加工性が損なわれない。
【0033】
さらに、本発明では、
(A)上記のいずれかの高分子化合物、
(B)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、
(C)波長190〜500nmの光によって分解し、酸を発生する光酸発生剤、
(D)溶剤
を含有する化学増幅型ネガ型レジスト材料を提供する。
【0034】
このような化学増幅型ネガ型レジスト材料であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる。また、低温の後硬化により可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜となる。
【0035】
さらに、本発明では、膜厚10〜100μmである光硬化性樹脂層が支持フィルムと保護フィルムで挟まれた構造を有する光硬化性ドライフィルムであって、前記光硬化性樹脂層が上記の化学増幅型ネガ型レジスト材料によって形成された光硬化性ドライフィルムを提供する。
【0036】
このような光硬化性ドライフィルムであれば、幅広い膜厚及び波長領域において微細なパターン形成が可能であり、低温の後硬化により可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜となる。
【0037】
さらに、本発明では、
(i)上記の化学増幅型ネガ型レジスト材料を支持フィルム上に連続的に塗布し、光硬化性樹脂層を形成する工程、
(ii)前記光硬化性樹脂層を連続的に乾燥させる工程、
(iii)さらに、前記光硬化性樹脂層上に保護フィルムを貼り合わせる工程、
を含む光硬化性ドライフィルムの製造方法を提供する。
【0038】
このような光硬化性ドライフィルムの製造方法であれば、上記のような高品質な光硬化性ドライフィルムを製造することができる。
【0039】
さらに、本発明では、
開口幅が10〜100μmであり、かつ、深さが10〜120μmである溝及び孔のいずれか又は両方を有する基板に上記の光硬化性ドライフィルムの光硬化性樹脂層が積層されてなる積層体を提供する。
【0040】
このような積層体であれば、上記のようなパターンが充分に埋め込まれ、諸特性が良好な積層体とすることができる。
【0041】
さらに、本発明では、
上記の化学増幅型ネガ型レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト皮膜を形成する工程、
次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190〜500nmの高エネルギー線又は電子線でレジスト皮膜を露光する工程、
加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0042】
このようなパターン形成方法であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる。また、化学増幅型ネガ型レジスト材料の塗布をスピンコート法によって行うことができる。
【0043】
さらに、本発明では、
上記の光硬化性ドライフィルムから前記保護フィルムを剥離することにより露出した光硬化性樹脂層を基板に密着させる工程、
前記支持フィルムを介してもしくは前記支持フィルムを剥離した状態で、フォトマスクを介して前記光硬化性樹脂層を波長190〜500nmの高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程、
露光後の加熱処理を行う工程、
現像液にて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0044】
このようなパターン形成方法であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる。
【0045】
またこのとき、前記現像工程の後に、前記現像によりパターン化された皮膜を温度100〜250℃において後硬化する工程を含むことが好ましい。
【0046】
このようにして得られた硬化皮膜は、可撓性、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びソルダーフラックス液に対する薬品耐性に優れるため、このような硬化皮膜を保護用皮膜とした半導体素子は信頼性に優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止できる。
【0047】
またこのとき、前記基板が、開口幅が10〜100μmであり、かつ、深さが10〜120μmである溝及び孔のいずれか又は両方を有する基板であってもよい。
【0048】
このように、本発明の光硬化性ドライフィルムであれば、凹凸を持つ基板上であっても、幅広い膜厚にわたるレジスト層を施し、微細なパターンを形成することができる。
【0049】
また、本発明では、上記のパターン形成方法により形成されたパターンを硬化させた皮膜によって保護された基板を提供する。
【0050】
このような基板であれば、可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜によって保護された基板となる。
【発明の効果】
【0051】
以上のように、本発明であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を飛躍的に改善できる化学増幅型ネガ型レジスト材料のベース樹脂として好適に用いられる高分子化合物及びこの高分子化合物を用いた化学増幅型ネガ型レジスト材料を得ることができる。また、この化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いることで、幅広い波長領域においてスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンの形成が可能であり、かつチップの高密度化、高集積化に伴い再配線技術におけるパターンの微細化が可能である。また、この化学増幅型ネガ型レジスト材料はTMAH水溶液等のアルカリ水溶液による現像が可能であり、この化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いた光硬化性ドライフィルム及びこれを用いたパターン形成方法を提供することができる。また、このようなパターン形成方法により得られたパターンを、低温で後硬化することで、可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜によって保護された基板を得ることができる。すなわち、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料及びこれを用いた光硬化性ドライフィルムは電気・電子部品、半導体素子等に好適な保護用皮膜となる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
上述のように、チップの高密度化、高集積化に伴い再配線技術におけるパターンの微細化が可能でかつ電気・電子部品保護用皮膜に有用な化学増幅型ネガ型レジスト材料でありながら、基板上密着性の飛躍的な改善が望まれており、2.38%TMAH水溶液のような汎用的に用いられるアルカリ水溶液の現像液でパターニング可能で、さらなる解像性能の向上が期待でき、パターン底部に裾引きやスカムを発生しない系の早急なる構築が望まれている。
【0054】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、本発明の高分子化合物を含有してなる化学増幅型ネガ型レジスト材料が微細なパターンを形成可能で、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiN基板のような基板上で発生する剥がれの問題を大幅に改善できることを見出した。さらにこのようなレジスト材料を用いたパターン形成方法により得られる硬化皮膜が、電気・電子部品保護用皮膜として優れることを知見し、本発明を完成させた。
【0055】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
本発明は、カルボキシル基及びシロキサン鎖を含有する高分子化合物であって、少なくとも
(I)下記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物、
(II)下記一般式(2)で示されるフェノール類及び下記一般式(3)で示されるフェノール類のいずれか又は両方、及び
(III)下記一般式(4)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類、
を酸触媒下縮合することによって得られる高分子化合物である。
【0057】
(I)下記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物を以下に示す。
【化13】
(式中、R
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。aは1〜100の整数である。)
【0058】
上記一般式(1)中のR
1〜R
4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。このような炭素数であれば、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングにおいて現像液への溶解性が損なわれない。
【0059】
また、このようなR
1〜R
4としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0060】
上記のR
1〜R
4で最も好適な炭化水素基としては、合成の容易さなどからメチル基を挙げることができる。R
1〜R
4がメチル基であるシロキサン化合物は下記一般式(6)で示される。
【化14】
(式中、aは上記と同様である。)
【0061】
上記一般式(1)中のaは1〜100の整数であり、好ましくは1〜40、さらに好ましくは10〜40の整数である。aが100以下であれば、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングおいて現像液への溶解性が損なわれない。また、aが100以下であれば、成膜されたフィルムの粘着性が適度であり加工性が損なわれず、後述する支持フィルムと保護フィルムで挟まれた構造を有する光硬化性ドライフィルムを作製した際、保護フィルムが剥がれにくくなることがない。また、aが1以上であれば、電気・電子部品保護用皮膜に重要な電気特性や、保護皮膜に必要な可撓性が損なわれない。
【0062】
上記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物は、下記一般式(13)で示される末端にSiH基を有したシロキサン化合物と下記構造式(14)で示される2−アリルフェノールを白金触媒存在下反応させる一般的なハイドロシリレーション反応によって容易に得ることができる。
【化15】
【0063】
(II)下記一般式(2)で示されるフェノール類を以下に示す。
【化16】
(式中、bは1又は2であり、Xはbが1の場合2価の有機基を示し、bが2の場合3価の有機基を示す。また、bが1の場合、Xを介さずカルボキシル基がフェノールに直結してもよい。)
【0064】
上記一般式(2)中のbが1であって、Xを介さずカルボキシル基がフェノールと直結した例としては、例えばサリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。
【0065】
上記一般式(2)中のbが1であって、Xが2価の有機基である例としては、例えばXが−CH
2−である2−ヒドロキシフェニル酢酸、3−ヒドロキシフェニル酢酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、Xが−CH
2CH
2−である3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸等を挙げることができる。
【0066】
一方、上記一般式(2)中のbが2であって、Xが3価の有機基である例としては、例えば下記一般式(7’)で示される化合物を挙げることができる。
【化17】
【0067】
(II)下記一般式(3)で示されるフェノール類を以下に示す。
【化18】
(式中、cは1又は2であり、Yはcが1の場合水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の置換基を示し、cが2の場合Si、S、Oの原子を有してもよい2価の有機基を示す。)
【0068】
上記一般式(3)中のcが1の場合、Yは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子の1価の置換基を示し、好適なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。
【0069】
一方、一般式(3)中のcが2の場合、YはSi、S、Oの原子を有してもよい2価の有機基を示す。すなわち、上記一般式(3)で示される化合物が下記一般式(8)で示される化合物として例示できる。
【化19】
(式中、Wは下記一般式(9)で示される構造のうちいずれかを示す2価の有機基であり、
【化20】
R
8は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、及びハロゲン原子から選ばれる1価の置換基を示し、R
9は水素原子又はメチル基を示す。)
【0070】
上記一般式(8)で示される化合物の中でも、特に下記の化合物が好ましい。
【化21】
【0071】
また、上記一般式(2)で示されるフェノール類及び上記一般式(3)で示されるフェノール類はいずれかが含まれていればよく、両方含まれていてもよい。
【0072】
(III)下記一般式(4)で示されるアルデヒド・ケトン類を以下に示す。
【化22】
(式中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、Zは炭素数1〜12の2価のアルキレン基、芳香族基を示す。)
【0073】
このようなアルデヒド・ケトン類の具体的な例として、下記の化合物を挙げることができる。
【化23】
【0074】
これらの中でも特に、下記一般式(10)で示される化合物が好適に用いられる。
【化24】
【0075】
このような一般式(4)で示されるアルデヒド・ケトン類は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0076】
またこのとき、(IV)下記一般式(5)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類をさらに加えることが好ましい。
【化25】
(式中、R
5は上記と同様であり、R
6は水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、又は芳香族基を示す。また、R
5とR
6は炭素数1〜15のアルキレン基によって連結してもよい。)
【0077】
上記一般式(5)中のR
6は水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、又は芳香族基であり、具体的にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボキサルデヒド、ベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、アセトン、アセトフェノン、2−ブタノン等が挙げられる。また、R
5とR
6は炭素数1〜15のアルキレン基によって連結してもよく、このような例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、インダノン、フルオレノン等を挙げることができる。
【0078】
これらの中でも特に、ホルムアルデヒド及び下記一般式(11)で示されるベンズアルデヒド誘導体が好ましい。
【化26】
【0079】
このような一般式(5)で示されるアルデヒド・ケトン類は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0080】
本発明の高分子化合物は、(I)上記一般式(1)で示される両末端にフェノール基を有するシロキサン化合物、(II)上記一般式(2)で示されるフェノール類及び上記一般式(3)で示されるフェノール類のいずれか又は両方、及び(III)上記一般式(4)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類を酸触媒下縮合することによって得られる。また上述のように、(I)〜(III)に(IV)一般式(5)で示される1種類以上のアルデヒド・ケトン類を加えて酸触媒下縮合することが好ましい。
本発明の高分子化合物は通常、無溶媒又は溶媒中で酸を用いて、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下にて、上記対応する化合物を縮合反応(例えば脱水縮合)させることにより、容易に得ることができる。
【0081】
この縮合反応に用いられる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロフォルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類等が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。また、これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲で使用できる。
【0082】
また、この縮合反応に用いられる酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類等が挙げられる。
【0083】
このような縮合反応によって得られる本発明の高分子化合物は、下記一般式(12)で表される。
【化27】
(式中、R
1〜R
6、a、b、c、X、及びYは上記と同様である。d及びgは正数、e、f、及びhは0又は正数であり、d+e+f+g+h=1である。)
【0084】
このとき、dの好適範囲は0<d≦0.5であり、より好ましくは0<d≦0.3である。dが0.5以下であれば、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングおいて現像液への溶解性が損なわれないため、好ましい。また、dが0.5以下であれば、成膜されたフィルムの粘着性が適度であり加工性が損なわれず、後述する支持フィルムと保護フィルムで挟まれた構造を有する光硬化性ドライフィルムを作製した際、保護フィルムが剥がれにくくなることがないため、好ましい。
【0085】
また、eの好適範囲は0≦e≦0.3である。
【0086】
また、gの好適範囲は0<g<0.8であり、より好ましくは0<g<0.5、さらに好ましくは0.3<g<0.5である。gが0より大きければ、2.38%TMAH水溶液等のアルカリ水溶液を現像液に用いたパターニングおいて現像液への溶解性が損なわれないため、良好なパターンが得られる。すなわち、gが0より大きく、ネガ型のパターン形成における未露光部の現像液に対する溶解性が良好であれば、レジスト材料の基板上における被覆膜厚が厚い場合であっても、パターンの底部に溶け残りやスカム、基板上パターンの裾において裾引きといったパターン劣化が発生することを抑制できる。また、gが0.8未満であれば、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が適度であり、ネガパターンを得るために用いられる架橋反応において不溶化まで至らず、パターンを得ることができないといった問題の発生を抑制できる。
【0087】
また、hの好適範囲は0≦h≦0.5であり、より好ましくは0≦h≦0.3である。
【0088】
また、上記一般式(12)で示される繰り返し単位を有する本発明の高分子化合物の好ましい例として、下記一般式(15)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を挙げることができる。
【化28】
(式中、R
7、a、c、及びYは上記と同様である。d及びgは正数、f、h1、及びh2は0又は正数であり、d+f+g+h1+h2=1である。)
【0089】
また、上記一般式(12)又は上記一般式(15)で示される繰り返し単位を有する本発明の高分子化合物のより好ましい例として、下記一般式(16)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物を挙げることができる。
【化29】
(式中、R
7及びaは上記と同様である。また、d、f、g、h1、及びh2は上記と同様であり、d+f+g+h1+h2=1である。)
【0090】
上記一般式(15)及び上記一般式(16)において、d、f、gの好適範囲は上記と同様であり、さらに、h1+h2=hとなる。
【0091】
また、このような高分子化合物の質量平均分子量は3,000〜500,000であることが好ましい。なお、高分子化合物の質量平均分子量が低下すると、高分子化合物の粘性率は低下する。そのため、高分子化合物を用いた後述の化学増幅型ネガ型レジスト材料や、このレジスト材料を用いて形成した後述の光硬化性ドライフィルムの光硬化性樹脂層の粘性率も低下する。
【0092】
このような高分子化合物であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を改善でき、汎用的に用いられる2.38%TMAH水溶液を現像液に用いて、パターン底部、基板上にスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンを形成することができる化学増幅型ネガ型レジスト材料のベース樹脂として好適に用いることができる。
【0093】
さらに、本発明では、
(A)上記の高分子化合物、
(B)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、
(C)波長190〜500nmの光によって分解し、酸を発生する光酸発生剤、
(D)溶剤
を含有する化学増幅型ネガ型レジスト材料を提供する。
【0094】
ここで、(B)架橋剤としては、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
【0095】
このようなホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えばホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたメラミン縮合物、又はホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性された尿素縮合物が挙げられる。
【0096】
また、上記のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性して、下記一般式(17)で示される変性メラミンとする。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルコールが好ましい。
【0097】
【化30】
(式中、R
11は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1〜4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基、又は水素原子であるが、1つ以上はメチロール基又はアルコキシメチル基である。)
上記R
11としては、例えばメチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基及び水素原子等が挙げられる。
【0098】
上記一般式(17)で示される変性メラミンとして、具体的にはトリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。
次いで、一般式(17)で示される変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0099】
また、上記のホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば、公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルムアルデヒドでメチロール化して変性し、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性する。
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド−アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えばメトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物は1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0100】
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば(2−ヒドロキシ−5−メチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’−テトラメトキシメチルビスフェノールA等が挙げられる。
なお、これらフェノール化合物は1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0101】
また、多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物としては、例えばビスフェノールA、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの水酸基を塩基存在下エピクロロヒドリンと反応することで得られる1,1’−ジグリシドキシビスフェノールA、トリス(4−グリシドキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−グリシドキシフェニル)エタン等を挙げることができる。
なお、これら多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物は1種又は2種以上を、混合して使用することができる。
【0102】
また、上記の架橋剤は、(A)高分子化合物と硬化反応を起こし、パターンの形成を容易になし得るための成分であると共に、硬化物の強度をさらに上げる成分である。このような架橋剤の質量平均分子量は、光硬化性及び耐熱性の観点から、150〜10,000が好ましく、特に200〜3,000であることが好ましい。
【0103】
なお、上記の架橋剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記の架橋剤の配合量は、光硬化及び後硬化を経た電気・電子部品保護用皮膜としての信頼性の観点から、(A)高分子化合物100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましく、特に1〜30質量部が好ましい。
【0104】
(C)光酸発生剤としては、波長190〜500nmの光照射により酸を発生し、これが硬化触媒となるものを用いることができる。本発明の高分子化合物は光酸発生剤との相溶性に優れるため、様々な種類の光酸発生剤を使用することができる。
このような光酸発生剤としては、例えばオニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、イミド−イル−スルホネート誘導体、オキシムスルホネート誘導体、イミノスルホネート誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0105】
上記オニウム塩としては、例えば下記一般式(18)で表される化合物が挙げられる。
(R
12)
jM
+K
− (18)
(式中、R
12は置換基を有してもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示し、M
+はヨードニウム又はスルホニウムを示し、K
−は非求核性対向イオンを示し、jは2又は3を示す。)
【0106】
上記R
12において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、2−オキソシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基;o−、m−又はp−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、m−又はp−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2−、3−又は4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等の各基が挙げられる。
【0107】
上記のK
−の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン;トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート;トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート;メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート等が挙げられる。
【0108】
上記ジアゾメタン誘導体としては、例えば下記一般式(19)で表される化合物が挙げられる。
【化31】
(式中、R
13は同一でも異なってもよく、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12のアリール基又はハロゲン化アリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。)
【0109】
上記R
13において、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基、1,1,1−トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基;o−、m−又はp−メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、m−又はp−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2−、3−又は4−メチルフェニル基、エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、例えばフルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5−ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0110】
このような光酸発生剤として、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロへキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロへキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロへキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体;α−(ベンゼンスルホニウムオキシイミノ)−4−メチルフェニルアセトニトリル等のオキシムスルホネート誘導体;2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等のβ−ケトスルホン誘導体;ジフェニルジスルホン、ジシクロへキシルジスルホン等のジスルホン誘導体;p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体;1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体;フタルイミド−イル−トリフレート、フタルイミド−イル−トシレート、5−ノルボルネン2,3−ジカルボキシイミド−イル−トリフレート、5−ノルボルネン2,3−ジカルボキシイミド−イル−トシレート、5−ノルボルネン2,3−ジカルボキシイミド−イル−n−ブチルスルホネート、n−トリフルオロメチルスルホニルオキシナフチルイミド等のイミド−イル−スルホネート誘導体;(5−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5
−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)−アセトニトリル等のイミノスルホネート、2−メチル−2[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−1−プロパン等が挙げられる。これらの中でも、イミド−イル−スルホネート類、イミノスルホネート類、オキシムスルホネート類等が好適に用いられる。
【0111】
なお、上記の光酸発生剤は1種又は2種以上を用いることができる。
また、上記の光酸発生剤の配合量は、光酸発生剤自体の光吸収性及び厚膜での光硬化性の観点から、(A)高分子化合物100質量部に対して0.05〜20質量部が好ましく、特に0.2〜5質量部が好ましい。
【0112】
(D)溶剤としては、(A)高分子化合物、(B)架橋剤、及び(C)光酸発生剤が溶解可能であるものを用いることができる。
このような溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。特に、光酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン又はそれらの混合溶剤が好ましい。
【0113】
また、上記の溶剤の配合量は、レジスト材料の相溶性、粘性率及び塗布性の観点から、(A)高分子化合物、(B)架橋剤、及び(C)光酸発生剤の配合量の合計100質量部に対して50〜2,000質量部が好ましく、特に100〜l,000質量部が好ましい。
【0114】
さらに、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料では必要に応じて、(E)成分として塩基性化合物を添加することができる。塩基性化合物としては、光酸発生剤より発生する酸がレジスト皮膜を拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。このような塩基性化合物の配合により、解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制し、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターン形状等を改善することができる。
【0115】
このような塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体、さらに、下記一般式(20)で示される化合物等が挙げられる。
【0116】
N(α)
q(β)
3−q (20)
式中、q=1、2又は3である。側鎖αは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(21)〜(23)で表されるいずれかの置換基である。側鎖βは同一でも異なっていてもよく、水素原子、又は直鎖状、分岐状、もしくは環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル結合又はヒドロキシル基を含んでもよい。また、側鎖α同士が結合して環を形成してもよい。
【化32】
ここで、R
300、R
302、R
305は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R
301、R
304は水素原子又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環を1つあるいは複数含んでいてもよい。R
303は単結合又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基であり、R
306は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。なお、*は結合末端を示す。
【0117】
上記の第一級の脂肪族アミン類としては、例えばアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0118】
上記の第二級の脂肪族アミン類としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0119】
上記の第三級の脂肪族アミン類としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0120】
上記の混成アミン類としては、例えばジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。
【0121】
上記の芳香族アミン類及び複素環アミン類としては、例えばアニリン誘導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えばピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えばオキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えばチアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリジン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0122】
上記のカルボキシル基を有する含窒素化合物としては、例えばアミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えばニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン等)等が例示される。
【0123】
上記のスルホニル基を有する含窒素化合物としては、例えば3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示される。
【0124】
上記のヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、及びアルコール性含窒素化合物としては、例えば2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。
【0125】
上記のアミド誘導体としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。
また、上記のイミド誘導体としては、例えばフタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0126】
上記一般式(20)で表される化合物としては、例えばトリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示できるが、これらに制限されない。
【0127】
なお、上記の塩基性化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
また、上記の塩基性化合物の配合量は、感度の観点から、(A)高分子化合物100質量部に対して0〜3質量部が好ましく、特に0.01〜1質量部が好ましい。
【0128】
また、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料には、上記(A)〜(E)成分の他に、さらに添加成分を配合してもよい。添加成分としては、例えば塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤や、光酸発生剤等の光吸収効率を向上させるために慣用されている吸光剤が挙げられる。
【0129】
上記の界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0130】
これらの界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えばフロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」及び「S−145」(以上、旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−4031」及び「DS−451」(以上、ダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(DIC(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)及び「X−70−093」(信越化学工業(株)製)である。
【0131】
上記の吸光剤としては、例えばジアリールスルホキシド、ジアリールスルホン、9,10−ジメチルアントラセン、9−フルオレノン等が挙げられる。
【0132】
本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料において、その調製は通常の方法で行われる。上述した各成分を撹拌混合し、その後フィルター等により濾過することにより、上記化学増幅型ネガ型レジスト材料を調製できる。後述するドライフィルムを製造する場合も、このレジスト材料を用いて同様に調製することができる。
【0133】
上述のようにして調製した本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。
例えば、シリコンウエハーあるいはSiO
2基板、SiN基板、もしくは銅配線などのパターンが形成されている基板に化学増幅型ネガ型レジスト材料をスピンコート法で塗布し、80〜130℃、50〜600秒間程度の条件でプリベークし、厚さ1〜50μm、好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmのレジスト膜を形成する。
【0134】
スピンコート法では、レジスト材料をシリコン基板上へ5mL程度ディスペンスした後に基板を回転することによって、基板上へレジスト材料を塗布することができる。またこのとき、回転速度を調整することで容易に基板上のレジスト膜の膜厚を調整することが可能である。
【0135】
次に、目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、i線、g線等の波長190〜500nmの高エネルギー線を露光量1〜5,000mJ/cm
2程度、好ましくは100〜2,000mJ/cm
2程度となるように照射する。このように露光することで、露光部分が架橋して後述の現像液に不溶なパターンが形成される。
【0136】
次に、必要に応じてホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜120℃、1〜5分間ポストエクスポージャベーク(PEB)してもよい。
【0137】
その後、現像液にて現像する。本発明の高分子化合物を用いて調整した化学増幅型ネガ型レジスト材料の好適なアルカリ水溶液の現像液は、2.38%のテトラメチルヒドロキシアンモニウム(TMAH)水溶液である。現像は、通常の方法、例えばパターンが形成された基板を現像液に浸漬すること等により行うことができる。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有するレジスト皮膜が得られる。なお、パターンを形成する必要のない場合、例えば単なる均一皮膜を形成したい場合は、フォトマスクを使用しない以外は上記パターン形成方法で述べた内容と同様の方法で行えばよい。
【0138】
また、得られたパターンをオーブンやホットプレートを用いて、温度100〜250℃、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは170〜190℃で後硬化することが好ましい。後硬化温度が100〜250℃であれば、レジスト皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性の観点から好ましい。そして、後硬化時間は10分間〜10時間とすることができる。
【0139】
このようにして得られた硬化皮膜は、可撓性、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びソルダーフラックス液に対する薬品耐性に優れるため、このような硬化皮膜を保護用皮膜とした半導体素子は信頼性に優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止できる。すなわち、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料は電気・電子部品、半導体素子等に好適な保護用皮膜となる。
【0140】
さらに、本発明では、上述の化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いて作製する光硬化性ドライフィルムを提供する。
【0141】
まず、本発明の光硬化性ドライフィルムが有する構造について説明する。上記光硬化性ドライフィルムは、光硬化性樹脂層が支持フィルムと保護フィルムに挟まれた構造を有し、光硬化性樹脂層には、電気・電子部品保護用皮膜の形成に有効な本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いることができる。このような光硬化性ドライフィルムは幅広い膜厚及び波長領域において微細なパターン形成が可能であり、低温の後硬化により可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性及び薬品耐性に優れた硬化皮膜となる。
【0142】
本発明において、上述のレジスト材料を用いて得られる光硬化性ドライフィルムの光硬化性樹脂層は固体であり、光硬化性樹脂層が溶剤を含有しないため、その揮発による気泡が光硬化性樹脂層の内部及び凹凸のある基板との間に残留するおそれがない。
また、半導体素子の小型化・薄型化・多層化が進み、層間絶縁層は薄くなる傾向にあるが、凹凸のある基板上での平坦性と段差被覆性を考慮すると、光硬化性樹脂層の膜厚は、その平坦性及び段差被覆性の観点から、10〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜70μm、特に好ましくは10〜50μmである。
【0143】
また、光硬化性樹脂層の粘性率と流動性は密接に関係しており、光硬化性樹脂層は適切な粘性率範囲において適切な流動性を発揮でき、狭い隙間の奥まで入っていくことができる。従って、上述のように適切な粘性率を有する本発明の高分子化合物を含有する化学増幅型ネガ型レジスト材料によって光硬化性樹脂層を形成した光硬化性ドライフィルムは、凹凸を持つ基板に密着させる際に、光硬化性樹脂層が凹凸に追随して被覆され、高い平坦性を達成できる。また、光硬化性樹脂層の主成分である本発明の高分子化合物はシロキサン鎖を含有するものであり、表面張力が低いため、より高い平坦性を達成できる。さらに、光硬化性樹脂層を真空環境下で基板に密着させると、それらの隙間の発生をより効果的に防止できる。
【0144】
次に、本発明の光硬化性ドライフィルムの製造方法について説明する。
本発明の光硬化性ドライフィルムにおいて、光硬化性樹脂層を形成する際に用いられる化学増幅型ネガ型レジスト材料は、上述のように(A)〜(D)成分(必要に応じて(E)成分等も添加できる)を撹拌混合し、その後フィルター等により濾過することにより調製することができ、この化学増幅型ネガ型レジスト材料を光硬化性樹脂層の形成材料とすることができる。
【0145】
本発明の光硬化性ドライフィルムにおいて使用される支持フィルムは、単一でも複数の重合体フィルムを積層した多層フィルムでもよい。材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等が挙げられ、適度の可撓性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらのフィルムについては、コロナ処理や剥離剤が塗布されたような各種処理が行われたものでもよい。これらは市販品を使用することができ、例えばセラピールWZ(RX)、セラピールBX8(R)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7302、E7304(以上、東洋紡績(株)製)、ピューレックスG31、ピューレックスG71T1(以上、帝人デュポンフィルム(株)製)、PET38×1−A3、PET38×1−V8、PET38×1−X08(以上、ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0146】
本発明の光硬化性ドライフィルムにおいて使用される保護フィルムは、上述した支持フィルムと同様のものを用いることができるが、適度の可撓性を有するポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンが好ましい。これらは市販品を使用することができ、ポリエチレンテレフタレートとしてはすでに例示したもの、ポリエチレンとしては、例えばGF−8(タマポリ(株)製)、PEフィルム0タイプ(ニッパ(株)製)が挙げられる。
【0147】
上記の支持フィルム及び保護フィルムの厚みは、光硬化性ドライフィルム製造の安定性及び巻き芯に対する巻き癖、いわゆるカール防止の観点から、いずれも好ましくは10〜100μm、特に好ましくは25〜50μmである。
【0148】
光硬化性ドライフィルムの製造装置は、一般的に粘着剤製品を製造するためのフィルムコーターが使用できる。フィルムコーターとしては、例えば、コンマコーター、コンマリバースコーター、マルチコーター、ダイコーター、リップコーター、リップリバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、3本ボトムリバースコーター、4本ボトムリバースコーター等が挙げられる。
【0149】
支持フィルムをフィルムコーターの巻出軸から巻き出し、フィルムコーターのコーターヘッドを通過させるとき、支持フィルム上にレジスト材料を所定の厚みで塗布して光硬化性樹脂層を連続的に形成させた後、所定の温度と所定の時間で熱風循環オーブンを通過させ、支持フィルム上で連続的に乾燥させた光硬化性樹脂層をフィルムコーターの別の巻出軸から巻き出された保護フィルムと共に、所定の圧力でラミネートロールを通過させて支持フィルム上の光硬化性樹脂層と貼り合わせた後、フィルムコーターの巻取軸に巻き取ることによって製造される。この場合、熱風循環オーブンの温度としては25〜150℃が好ましく、通過時間としては1〜100分間が好ましく、ラミネートロールの圧力としては0.01〜5MPaが好ましい。
【0150】
次に、上述のようにして製造した光硬化性ドライフィルムを用いたパターン形成方法について説明する。
本発明の光硬化性ドライフィルムを用いたパターン形成方法では、まず光硬化性ドライフィルムから保護フィルムを剥離し、光硬化性樹脂層を基板に密着させる。次に、露光し、露光後加熱処理(ポストエクスポージャベーク(以下、PEB))を行う。次に、現像し、さらに必要に応じて後硬化することで、パターンが形成された硬化皮膜となる。
【0151】
まず、光硬化性ドライフィルムを、フィルム貼り付け装置を用いて基板に密着させる。基板としては、例えばシリコンウエハー、TSV用シリコンウエハー、プラスチック、セラミック及び各種金属製回路基板等があり、特に開口幅が10〜100μmかつ深さが10〜120μmである溝や孔を有する基板が挙げられる。フィルム貼り付け装置としては、真空ラミネーターが好ましい。
【0152】
まず、光硬化性ドライフィルムをフィルム貼り付け装置に取り付け、光硬化性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し露出した光硬化性樹脂層を、所定真空度の真空チャンバー内において、所定の圧力の貼り付けロールを用いて、所定の温度のテーブル上で基板に密着させる。なお、テーブルの温度としては60〜120℃が好ましく、貼り付けロールの圧力としては0〜5.0MPaが好ましく、真空チャンバーの真空度としては50〜500Paが好ましい。
【0153】
密着後、公知のリソグラフィー技術を用いてパターンの形成を行うことができる。ここで、光硬化性樹脂層の光硬化反応を効率的に行うため又は光硬化性樹脂層と基板との密着性を向上させるため、必要に応じて予備加熱(プリベーク)を行ってもよい。プリベークは、例えば40〜140℃で1分間〜1時間程度行うことができる。
【0154】
次に、支持フィルムを介して、もしくは支持フィルムを剥離した状態で、フォトマスクを介して波長190〜500nmの光で露光して、硬化させる。フォトマスクは、例えば所望のパターンをくり貫いたものであってもよい。なお、フォトマスクの材質は波長190〜500nmの光を遮蔽するものが好ましく、例えばクロム等が好適に用いられるがこれに限定されるものではない。
【0155】
波長190〜500nmの光としては、例えば放射線発生装置により発生させた種々の波長の光、例えば、g線、i線等の紫外線光、遠紫外線光(248nm、193nm)等が挙げられる。波長は好ましくは248〜436nmである。露光量は、例えば10〜3,000mJ/cm
2が好ましい。このように露光することで、露光部分が架橋して後述の現像液に不溶なパターンが形成される。
【0156】
さらに、現像感度を高めるために、露光後加熱処理(PEB)を行う。露光後の加熱処理は、例えば40〜140℃で0.5〜10分間とすることができる。
【0157】
その後、現像液にて現像する。本発明の高分子化合物を用いて調整した化学増幅型ネガ型レジスト材料の好適なアルカリ水溶液の現像液は、2.38%のテトラメチルヒドロキシアンモニウム(TMAH)水溶液である。現像は、通常の方法、例えばパターンが形成された基板を現像液に浸漬すること等により行うことができる。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有する光硬化性樹脂層の皮膜が得られる。なお、パターンを形成する必要のない場合、例えば単なる均一皮膜を形成したい場合は、フォトマスクを使用しない以外は上記のパターン形成方法で述べた内容と同様の方法で行えばよい。
【0158】
また、得られたパターンをオーブンやホットプレートを用いて、温度100〜250℃、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは170〜190℃で後硬化することが好ましい。後硬化温度が100〜250℃であれば、光硬化性樹脂層の皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性の観点から好ましい。そして、後硬化時間は10分間〜10時間とすることができる。
【0159】
このようにして得られた硬化皮膜は、可撓性、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びソルダーフラックス液に対する薬品耐性に優れるため、このような硬化皮膜を保護用皮膜とした半導体素子は信頼性に優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止できる。すなわち、本発明の光硬化性ドライフィルムは電気・電子部品、半導体素子等に好適な保護用皮膜となる。
【0160】
本発明の光硬化性ドライフィルムは、このように溝や孔を有する基板に有効に適用でき、従って本発明は、開口幅が10〜100μmであり、かつ、深さが10〜120μmである溝及び孔のいずれか又は両方を有する基板に光硬化性ドライフィルムによって形成された光硬化性樹脂の硬化物層が積層されてなる積層体を提供する。
【0161】
上述のように、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料及びこれを用いて製造した光硬化性ドライフィルムは、硬化することで可撓性、密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及び薬品耐性に優れた保護用皮膜となるため、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜、ソルダーマスク、カバーレイフィルム、シリコン基板貫通配線(TSV)の埋め込み用絶縁膜のほか、基板貼り合わせ用途等に有効である。
【実施例】
【0162】
以下、合成例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。
【0163】
[高分子化合物の合成]
以下の合成例1〜10では、本発明の高分子化合物(A−1〜10)の合成を行った。なお、合成例1〜10で用いた化合物1〜7の構造式を以下に示す。
【化33】
【0164】
(合成例1)
窒素置換した300mL3口フラスコに化合物1 50g(28.8mmol)、化合物2 13.3g(28.8mmol)、テレフタルアルデヒド酸 8.6g(57.6mmol)、ジクロロエタン 50g、トルエン 13gを秤量し、75℃まで加熱した。そこにメタンスルホン酸 3.6g(31.2mmol)を滴下し、さらに80℃まで加熱し17時間熟成した。室温まで冷却し、4−メチル−2−ペンタノン 150gを加えた。1L分液ロートに移し超純水 150gで4回分液水洗を繰り返した後、有機層を減圧留去すると共に、シクロペンタノン 150gを加え、固形分濃度50〜60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物(A−1)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量5,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.25,e=0,f=0.25,g=0.5,h=0であった。
【0165】
(合成例2)
窒素置換した300mL3口フラスコに化合物1 50g(28.8mmol)、化合物2 13.3g(28.8mmol)、テレフタルアルデヒド酸 8.6g(57.6mmol)、ジクロロエタン 50g、トルエン 13gを秤量し、75℃まで加熱した。そこにメタンスルホン酸 3.6g(31.2mmol)を滴下し、さらに80℃まで加熱し17時間熟成した。再び75℃まで冷却しホルムアルデヒドの37%水溶液 0.46g(5.
8mmol)を加え、3時間熟成した。室温まで冷却し、4−メチル−2−ペンタノン 150gを加えた。1L分液ロートに移し超純水 150gで4回分液水洗を繰り返した後、有機層を減圧留去すると共に、シクロペンタノン 150gを加え、固形分濃度50〜60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物(A−2)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で重量平均分子量13,500であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.24,e=0,f=0.24,g=0.47,h=0.05であった。
【0166】
(合成例3)
合成例2において、加えるホルムアルデヒドの37%水溶液を0.82g(10.0mmol)とする以外は同様の処方で合成を行い、高分子化合物(A−3)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量42,200であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.23,e=0,f=0.23,g=0.46,h=0.08であった。
【0167】
(合成例4)
合成例3において、化合物1を化合物3 28.7g(28.8mmol)とする以外は同様の処方で合成を行い、高分子化合物(A−4)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量21,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.23,e=0,f=0.23,g=0.46,h=0.08であった。
【0168】
(合成例5)
窒素置換した300mL3口フラスコに化合物1 50g(28.8mmol)、化合物2 13.3g(28.8mmol)、テレフタルアルデヒド酸 6.8g(45.2mmol)、ベンズアルデヒド 1.3g(12.3mmol)、ジクロロエタン 50g、トルエン 13gを秤量し、75℃まで加熱した。そこにメタンスルホン酸 3.6g(31.2mmol)を滴下し、さらに80℃まで加熱し17時間熟成した。再び75℃まで冷却しホルムアルデヒドの37%水溶液 0.82g(10.
0mmol)を加え、3時間熟成した。室温まで冷却し、4−メチル−2−ペンタノン 150gを加えた。1L分液ロートに移し超純水 150gで4回分液水洗を繰り返した後、有機層を減圧留去すると共に、シクロペンタノン 150gを加え、固形分濃度50〜60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物(A−5)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量20,200であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(15)においてd=0.23,f=0.23,g=0.36,h1=0.10,h2=0.08であった。
【0169】
(合成例6)
窒素置換した300mL3口フラスコに化合物1 50g(28.8mmol)、化合物4 6.6g(28.8mmol)、テレフタルアルデヒド酸 8.6g(57.6mmol)、ジクロロエタン 50g、トルエン 13gを秤量し、75℃まで加熱した。そこにメタンスルホン酸 3.6g(31.2mmol)を滴下し、さらに80℃まで加熱し17時間熟成した。再び75℃まで冷却しホルムアルデヒドの37%水溶液 0.82g(10.
0mmol)を加え、3時間熟成した。室温まで冷却し、4−メチル−2−ペンタノン 150gを加えた。1L分液ロートに移し超純水 150gで4回分液水洗を繰り返した後、有機層を減圧留去すると共に、シクロペンタノン 150gを加え、固形分濃度50〜60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物(A−6)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量35,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.23,e=0,f=0.23,g=0.46,h=0.08であった。
【0170】
(合成例7)
合成例6において、化合物4を化合物5 10.1g(28.8mmol)とする以外は同様の処方で合成を行い、高分子化合物(A−7)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量40,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.23,e=0,f=0.23,g=0.46,h=0.08であった。
【0171】
(合成例8)
窒素置換した300mL3口フラスコに化合物1 80g(46.0mmol)、化合物6 3.3g(11.5mmol)、テレフタルアルデヒド酸 8.6g(57.6mmol)、ジクロロエタン 50g、トルエン 13gを秤量し、75℃まで加熱した。そこにメタンスルホン酸 4.6g(47.9mmol)を滴下し、さらに80℃まで加熱し17時間熟成した。再び75℃まで冷却しホルムアルデヒドの37%水溶液 0.75g(9.
2mmol)を加え、3時間熟成した。室温まで冷却し、4−メチル−2−ペンタノン 150gを加えた。1L分液ロートに移し超純水 150gで4回分液水洗を繰り返した後、有機層を減圧留去すると共に、シクロペンタノン 150gを加え、固形分濃度50〜60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物(A−8)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量36,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.37,e=0.09,f=0,g=0.46,h=0.08であった。
【0172】
(合成例9)
合成例8において、化合物6を4−ヒドロキシフェニル酢酸 1.7g(28.8mmol)とする以外は同様の処方で合成を行い、高分子化合物(A−9)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量35,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.37,e=0.09,f=0,g=0.46,h=0.08であった。
【0173】
(合成例10)
合成例8において、化合物6を化合物7 3.7g(28.8mmol)とする以外は同様の処方で合成を行い、高分子化合物(A−10)を得た。
この高分子化合物の分子量をGPCにより測定するとポリスチレン換算で質量平均分子量41,000であり、
1HNMRスペクトル分析によって各成分がポリマー中に組み込まれていることを確認した。また上記一般式(12)においてd=0.37,e=0.09,f=0,g=0.46,h=0.08であった。
【0174】
[化学増幅型ネガ型レジスト材料の調製:実施例1〜10]
上記合成例1〜10で合成した高分子化合物(A−1〜10)を使用して、表1に記載した組成と配合量で架橋剤、光酸発生剤、さらに塩基性化合物を配合し、追加する溶剤としてシクロペンタノンを配合して、樹脂換算45質量%の光硬化性樹脂組成物を調製した。その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製0.5μmフィルターで精密濾過を行って、光硬化性樹脂組成物からなる化学増幅型ネガ型レジスト材料1〜10(レジスト材料1〜10)を得た。
【0175】
【表1】
【0176】
なお、表1に記載した光酸発生剤(PAG−1)、架橋剤(XL−1)、塩基性化合物(amine−1)の構造は以下の通りである。
【化34】
【0177】
[スピンコート法による塗布、露光、パターン形成]
上述のように調製したレジスト材料1〜10をシリコン基板上へ5mLディスペンスし、スピンコート法によって膜厚20μmとなるように塗布した。その後、ホットプレート上100℃、2分間のプリベークを施した。
次に、ズースマイクロテック(株)製のマスクアライナー(製品名:MA−8)を使い、縦横1:1配列の20μmのホールが形成できるマスクを装着して、ブロードバンド光の露光を施した。露光後、基板を110℃で2分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAH)水溶液を現像液として用い、1分間パドル現像を3回繰り返し、パターニングを行った。次に、得られた基板上パターンを、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化した。
同様にして、シリコン基板に換えて、SiN基板上、Cu基板上で上述のように調製したレジスト材料1〜10を用いてパターニングを行った。
【0178】
次に、得られたホールパターンの形状が観察できるように、各基板を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてホールパターン形状を観察した。ホールパターンの口径がマスク寸法20μmと同じサイズに仕上がる最適露光量(365nm光換算の露光量)を表2に示す。また、観察した形状を表2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】
表2に示されるように、本発明の高分子化合物(A−1〜10)を含有するレジスト材料1〜10は、2.38%TMAH水溶液を現像液として用いて、パターニング可能であった。また、レジスト材料1〜10のパターンプロファイルは順テーパーとなり極めて良好な形状を得た。さらに、SiN基板やCu基板といった現像中剥がれやすい基板においても、剥がれが発生することはなかった。
【0181】
[光硬化性ドライフィルムの作製:実施例11〜20]
光硬化性ドライフィルム用として、シクロペンタノンを追加配合しない以外は上記と同様に合成例1〜10で合成した高分子化合物(A−1〜10)を使用して表1に記載した組成と配合量で架橋剤、光酸発生剤、さらに塩基性化合物を配合し、その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製1.0μmフィルターで精密濾過を行ってレジスト材料1’〜10’を得た。
【0182】
フィルムコーターとしてダイコーター、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を用いて、レジスト材料1’〜10’を支持フィルム上50μmの塗布厚みで塗布した。次に、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより、支持フィルム上に光硬化性樹脂層を形成した。さらに、光硬化性樹脂層の上から、保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を、ラミネートロールを用いて圧力1MPaにて貼り合わせて、光硬化性ドライフィルム1〜10を作製した。
【0183】
[光硬化性ドライフィルムの密着、露光、パターン形成]
上述のように作製した光硬化性ドライフィルム1〜10の保護フィルムを剥離し、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、温度条件100℃において支持フィルム上の光硬化性樹脂層をシリコン基板に密着させた。常圧に戻した後、基板を25℃に冷却して真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、ズースマイクロテック(株)製のマスクアライナー(製品名:MA−8)を使い、縦横1:1配列の40μmのホールが形成できるマスクを装着して、ブロードバンド光の露光を施した。露光後、基板を130℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し、パターニングを行った。次に、得られた基板上パターンを、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化した。
同様にして、シリコン基板に換えて、SiN基板上、Cu基板上で上述のように作製した光硬化性ドライフィルム1〜10を用いてパターニングを行った。
【0184】
次に、得られたホールパターンの形状が観察できるように、各基板を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてホールパターン形状を観察した。ホールパターンの口径がマスク寸法40μmと同じサイズに仕上がる最適露光量(365nm光換算の露光量)を表3に示す。また、観察した形状を表3に示す。
【0185】
【表3】
【0186】
表3に示されるように、本発明の高分子化合物を含有する光硬化性樹脂組成物を用いた光硬化性ドライフィルムは、2.38%TMAH水溶液を現像液として用いて、パターニング可能であった。また、パターンプロファイルは良好であり、SiNやCuといった現像中剥がれやすい基板においても、著しい剥がれが発生することはなかった。
【0187】
[光硬化性ドライフィルムの埋め込み性能試験:実施例21〜25]
開口径が10〜100μm(10μm刻み)及び深さが10〜120μm(10μm刻み)の円形孔がそれぞれ200個形成された、6インチシリコンウエハーを基板として用意した。上述の光硬化性ドライフィルム1、3、4、8、10の保護フィルムを剥離し、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、温度条件100℃において支持フィルム上の光硬化性樹脂層を用意した基板に密着させた。常圧に戻した後、基板を25℃に冷却して真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、ズースマイクロテック(株)製のマスクアライナー(製品名:MA−8)を使って、表4に記載の露光量(波長365nm)でブロードバンド光を基板に照射した。露光後、基板を110℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し行った。次に、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化した。
このようにして得られた基板をダイシングして円形孔の断面を出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて円形孔の断面を観察し、埋め込み性能及び欠陥の有無を評価した。その結果を表4に示す。
【0188】
【表4】
【0189】
表4に示されるように、本発明の光硬化性ドライフィルムを密着させたシリコンウエハーの円形孔はすべて欠陥なく充填されており、本発明の光硬化性ドライフィルムの電気・電子部品保護用皮膜としての埋め込み性能は良好であった。
【0190】
[光硬化性ドライフィルムの電気特性(絶縁破壊強さ)試験]
上述の光硬化性ドライフィルム1、3、4、8、10の保護フィルムを剥離し、支持フィルム上の光硬化性樹脂層を、温度条件100℃において、JIS K 6249に規定される基板に密着させた。基板を室温に冷却して、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、上記のマスクアライナーを使って、露光量1,000mJ/cm
2(波長365nm)であるブロードバンド光を、石英製フォトマスクを介して、基板に照射した。露光後、基板を110℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し行った。次に、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化し、絶縁破壊強さ測定用の基板を作製した。作製した基板において、JIS K 6249に規定される測定方法に準じて、絶縁破壊強さを測定した。その結果を表5に示す。
【0191】
[光硬化性ドライフィルムの密着性及び薬品耐性試験:実施例21〜25]
上述の光硬化性ドライフィルム1、3、4、8、10の保護フィルムを剥離し、上記の真空ラミネーターを用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、温度条件100℃において支持フィルム上の光硬化性樹脂層を無処理の6インチシリコンウエハー(基板)に密着させた。常圧に戻した後、基板を25℃に冷却して真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、上記のマスクアライナーを使って、露光量1,000mJ/cm
2(波長365nm)であるブロードバンド光を、石英製フォトマスクを介して、基板に照射した。露光後、基板を110℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し行った。次に、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化し、直径300μm、高さ50μmのポストパターン硬化皮膜を得た。
【0192】
このポストパターン硬化皮膜を、イギリスDage製ボンドテスター(製品名:Dage series 4000−PXY)を用いて、基板からのポストパターン硬化皮膜剥離時にかかる抵抗力により、初期の密着性を評価した。測定条件は、測定スピード50.0μm/sec及び測定高さ3.0μmであった。
図1は密着性測定方法を示す説明図である。なお、
図1の1はシリコンウエハー(基板)、2はポストパターン硬化皮膜、3はボンドテスターの測定治具であり、4は測定治具の移動方向を示す。得られた数値は15点測定の平均値であり、数値が高いほどポストパターン硬化皮膜の基板に対する密着性が高い。
【0193】
さらに、基板上のポストパターン硬化皮膜にソルダーフラックス液を塗布し、220℃で30秒間加熱し、冷却後純水で洗浄し、室温で2時間乾燥したポストパターン硬化皮膜について、上記のボンドテスターを用いて、基板からのパターン剥離時にかかる抵抗力により、初期と同様に劣化後の密着性を評価した。
なお、5種類の光硬化性ドライフィルムについて、初期の数値を比較することにより密着性を評価し、初期から劣化後へ数値が低下する挙動をそれぞれ比較することにより、密着性と共にソルダーフラックス液に対する薬品耐性も評価した。その結果を表5に示す。
【0194】
[光硬化性ドライフィルムのクラック耐性試験]
上述の光硬化性ドライフィルム1、3、4、8、10の保護フィルムを剥離し、上記の真空ラミネーターを用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、温度条件100℃において支持フィルム上の光硬化性樹脂層を上記の埋め込み性能試験に用いたものと同じ6インチシリコンウエハー(基板)に密着させた。常圧に戻した後、基板を25℃に冷却して真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、上記のマスクアライナーを使って、露光量1,000mJ/cm
2(波長365nm)であるブロードバンド光を、石英製フォトマスクを介して、基板に照射した。露光後、基板を110℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し行った。次に、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化した。
この硬化皮膜が形成された基板を、−55〜+150℃を1サイクルとする温度サイクル試験機に投入し、硬化皮膜中のクラック発生の有無について1,000サイクルまで調査した。その結果を表5に示す。
【0195】
[光硬化性ドライフィルムの剥離液耐性]
上述の光硬化性ドライフィルム1、3、4、8、10の保護フィルムを剥離し、上記の真空ラミネーターを用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、温度条件100℃において支持フィルム上の光硬化性樹脂層を無処理の6インチシリコンウエハー(基板)に密着させた。常圧に戻した後、基板を25℃に冷却して真空ラミネーターから取り出し、支持フィルムを剥離した。支持フィルムを剥離後、ホットプレート上100℃、5分間のプリベークを施した。
次に、上記のマスクアライナーを使って、露光量1,000mJ/cm
2(波長365nm)であるブロードバンド光を、石英製フォトマスクを介して、基板に照射した。露光後、基板を110℃で5分間加熱(PEB)して冷却した。その後、2.38%TMAH水溶液を現像液として用い、1分間のパドル現像を5回繰り返し行った。次に、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながら後硬化し、15mm×15mmの正方形パターン硬化皮膜を得た。
この硬化皮膜が形成された基板を、NMP(N−メチルピロリドン)中に室温で1時間浸漬した後、外観及び膜厚変化を調査し、剥離液耐性を評価した。その結果を表5に示す。
【0196】
【表5】
【0197】
表5に示されるように、本発明の光硬化性ドライフィルムを用いてパターン形成を行って得られた硬化皮膜であれば、電気・電子部品保護用皮膜としての電気特性、密着性、薬品耐性、クラック耐性、剥離液耐性はすべて良好であった。
【0198】
以上のように、本発明であれば、CuやAlのような金属配線、電極、基板上、特にSiNのような基板上で発生する剥がれの問題を飛躍的に改善できる化学増幅型ネガ型レジスト材料のベース樹脂として好適に用いられる高分子化合物及びこの高分子化合物を用いた化学増幅型ネガ型レジスト材料を得ることができる。また、この化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いることで、幅広い波長領域においてスカムや裾引きを発生させずに微細なパターンの形成が可能であり、かつチップの高密度化、高集積化に伴い再配線技術におけるパターンの微細化が可能である。また、この化学増幅型ネガ型レジスト材料はTMAH水溶液等のアルカリ水溶液による現像が可能であり、この化学増幅型ネガ型レジスト材料を用いた光硬化性ドライフィルム及びこれを用いたパターン形成方法を提供することができる。また、このようなパターン形成方法により得られたパターンを、低温で後硬化することで、可撓性、耐熱性、電気特性、密着性、信頼性、薬品耐性、クラック耐性、及び埋め込み性能が良好な硬化皮膜によって保護された基板を得ることができる。すなわち、本発明の化学増幅型ネガ型レジスト材料及びこれを用いた光硬化性ドライフィルムは電気・電子部品、半導体素子等に好適な保護用皮膜となる。
【0199】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。