【実施例】
【0028】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
1.水素酸化触媒の製造
水素酸化触媒の製造方法は、上述した非特許文献1(Organometallics 2010,29,5994−6001)の化合物4a、4b、及び4cの製造方法の記載を参考にした。
【0030】
[実施例1]
(1)[Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](下記式(6a))の合成
まず、[PhP(C
6H
4−o−SH)
2](653mg,2.00mmol)のTHF溶液20mLに、0℃の温度条件下、n−ブチルリチウム(1.57Mヘキサン溶液,2.60mL,4.08mmol)を加えた。15分後、得られた黄色溶液を、室温下、[Cp
*RuCl(μ−Cl)]
2(609mg,0.991mmol)のTHF分散液10mLに加えた。得られた混合物を室温下で18時間攪拌した。得られた紫色溶液を濃縮乾固させ、紫色固体を得た。塩化メチレン−ヘキサンを用いた再結晶により、紫色針状結晶([Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}]・0.5CH
2Cl
2)が得られた(916mg,1.52mmol,77%)。
Anal.Calcd for C
28H
28PRuS
2:C,59.98;H,5.03. Found:C,60.24;H,4.84.
【0031】
【化6】
【0032】
(2)[Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2(下記式(1a))の合成
上記[Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](114mg,0.203mmol)、及び[Cp
*RuCl(μ−Cl)]
2(60.4mg,0.0983mmol)の塩化メチレン溶液10mLの混合物を、室温下20時間混合した。得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf,113mg,0.438mmol)を加えた。得られた混合物を室温下さらに1時間攪拌した。反応混合物をろ過及び濃縮し、さらに、1度目はエタノール−エーテルを用い、2度目は塩化メチレン−ヘキサンを用いた再結晶により、結晶性固体([Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2)が得られた(186mg,0.164mmol,83%)。
1HNMR(CD
2Cl
2):δ8.45(dd,J=8 and 2Hz,2H),7.92−7.83(m,2H),7.69−7.45(m,7H),6.84−6.75(m,2H),1.70(d,J=2Hz,15H),1.48(s,15H).
31P{
1H}NMR(CD
2Cl
2):δ94.8(s).
Anal.Calcd for C
40.5H
44ClF
6O
6PRu
2S
4([Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2):C,42.76;H,3.90.Found:C,42.89;H,3.74.
【0033】
【化7】
【0034】
[実施例2]
(1)[CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](下記式(6b))の合成
まず、[PhP(C
6H
4−o−SH)
2](163mg,0.498mmol)のTHF溶液15mLに、0℃の温度条件下、n−ブチルリチウム(1.65Mヘキサン溶液,0.60mL,0.990mmol)を加えた。30分後、得られた黄色溶液を、室温下、[CpRu(NCMe)
3]PF
6(219mg,0.504mmol)のTHF溶液10mLに加えた。得られた赤褐色溶液を室温下で18時間攪拌した。攪拌後の溶液を3時間空気酸化に供することにより橙褐色溶液を得た。橙褐色溶液を減圧条件下濃縮し、得られた生成物を、移動相を塩化メチレンとしてシリカゲルパッドに通過させることにより精製した。THF−ヘキサンを用いた再結晶により、黒色矩形結晶([CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}]・0.5C
6H
14)が得られた(182mg,0.341mmol,68%)。
Anal.Calcd for C
23H
18PRuS
2:C,56.31;H,3.70.Found:C,56.13;H,3.89.
【0035】
【化8】
【0036】
(2)[CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*(OH
2)](OTf)
2(下記式(2a))の合成
上記[CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](50.0mg,0.102mmol)、及び[Cp
*RuCl(μ−Cl)]
2(30.0mg,0.0488mmol)の塩化メチレン溶液5mLの混合物を、室温下20時間混合した。得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf,55.6mg,0.216mmol)を加えた。得られた混合物を室温下さらに1時間攪拌した。反応混合物をろ過及び濃縮し、さらに塩化メチレン−ヘキサンを用いた再結晶により、緑色結晶性固体([CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*(OH
2)](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2)が得られた(87.4mg,0.0805mmol,82%)。
1HNMR(CD
2Cl
2):δ7.94(dd,J=8 and 2Hz,2H),7.68−7.45(m,9H),7.23(dd,J=13 and 7Hz,2H),5.37(s,5H),1.77(s,15H).
31P{
1H}NMR(CD
2Cl
2):δ103.1(s).
Anal.Calcd for C
35.5H
36ClF
6O
7PRu
2S
4([CpRu{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*(OH
2)](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2):C,39.28;H,3.34.Found:C,39.20;H,3.27.
【0037】
【化9】
【0038】
[実施例3]
(1)[Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](下記式(6c))の合成
まず、[PhP(C
6H
4−o−SH)
2](326mg,1.00mmol)のTHF溶液20mLに、0℃の温度条件下、n−ブチルリチウム(1.57Mヘキサン溶液,1.28mL,2.01mmol)を加えた。15分後、得られた黄色溶液を、[Cp
*FeCl(tmeda)](343mg,1.00mmol)のTHF溶液10mLが入った容器に移し、混合物を室温下で18時間攪拌した。攪拌後の黒緑色溶液を空気に曝し、1時間激しく攪拌した。溶液は直ちに紫色に変化した。得られた生成物を、移動相を塩化メチレンとしてシリカゲルパッドに通過させることにより精製した。塩化メチレン−ヘキサンを用いた再結晶により、紫色針状結晶([Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}])が得られた(382mg,0.741mmol,74%)。
Anal.Calcd for C
28H
28FePS
2:C,65.24;H,5.48.Found:C,65.13;H,5.43.
【0039】
【化10】
【0040】
(2)[Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2(下記式(1b))の合成
上記[Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}](111mg,0.216mmol)、及び[Cp
*RuCl(μ−Cl)]
2(61.0mg,0.0993mmol)の塩化メチレン溶液10mLの混合物を、室温下20時間混合した。得られた溶液にトリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOTf,110mg,0.428mmol)を加えた。得られた混合物を室温下さらに1時間攪拌した。反応混合物をろ過及び濃縮し、さらに、1度目はエタノール−エーテルを用い、2度目は塩化メチレン−ヘキサンを用いた再結晶により、緑色結晶性固体([Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2)が得られた(167mg,0.153mmol,77%)。
1HNMR(CD
2Cl
2):δ8.47(dd,J=8 and 2Hz,2H),7.92−7.82(m,2H),7.67−7.40(m,7H),6.80−6.69(m,2H),1.60(s,15H),1.45(s,15H).
31P{
1H}NMR(CD
2Cl
2):δ110.9(s).
Anal.Calcd for C
40.5H
44ClF
6FeO
6PRuS
4([Cp
*Fe{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2・0.5CH
2Cl
2):C,44.53,H,4.06.Found:C,44.55;H,3.88.
【0041】
【化11】
【0042】
2.水素酸化触媒の評価
(1)水素酸化反応の評価
上記実施例1の水素酸化触媒([Cp
*Ru{PhP(C
6H
4−o−S)
2}RuCp
*](OTf)
2;以下、錯体1a
1と称する場合がある)を用いて、水素酸化反応を行った。酸化剤としては[Cp
2Fe]OTfを用いた。
まず、下記式(7)に示すように、[Cp
2Fe]OTf(0.4mmol)及び錯体1a
1(5mol%)を5mLの水に溶かし、得られた水溶液に対し、室温条件下で水素1気圧を20時間供給して反応させた。その結果、[Cp
2Fe]OTf(0.4mmol)に対し、HOTfが86%の収率で、Cp
2Feが87%の収率で、それぞれ得られた。また、原料[Cp
2Fe]OTfは回収されなかった。
次に、下記式(8)に示すように、[Cp
2Fe]OTf(0.4mmol)及び錯体1a
1(5mol%)の混合物の水溶液に対し、室温条件下で窒素1気圧を20時間供給して反応させた。得られた溶液は、20時間後も、原料[Cp
2Fe]OTfに由来する濃い青色を呈していた。得られた沈殿物をヘキサンで抽出したところ、Cp
2Feが収率18%で得られた。また、ヘキサン抽出後の水相をジクロロメタンで洗浄した後にUV測定を行い、原料である[Cp
2Fe]OTfを定量したところ、原料回収率は62%であることが分かった。また、HOTfは得られなかった。
続いて、下記式(9)に示すように、[Cp
2Fe]OTf(0.4mmol)の水溶液に対し、室温条件下で水素1気圧を20時間供給して反応させた。その結果、[Cp
2Fe]OTf(0.4mmol)に対し、Cp
2Feが19%の収率で得られ、原料回収率は57%であった。また、HOTfは得られなかった。
【0043】
【化12】
【0044】
以上の結果から、どの反応条件においても、[Cp
2Fe]OTfが一部分解し、Cp
2Fe(フェロセン)が得られることが分かる。しかし、上記式(7)の反応条件では[Cp
2Fe]OTfが完全に消費されたことから、錯体1a
1により触媒的に水素分子の酸化反応が進行していることが確かめられた。なお、[Cp
2Fe]OTfの水溶液を約1ヶ月放置しても濃い青色を呈したままであり、[Cp
2Fe]OTfが完全に分解することはなかった。
【0045】
(2)NMR実験
次に、水素雰囲気下で生成するルテニウム化学種の情報を得るために、NMR実験を行った。
まず、下記式(10)に示すように、重塩化メチレンに錯体1a
1を溶解し、得られた溶液に水素ガスをバブリングしたところ、ほとんど変化は見られなかった。
次に、下記式(11)に示すように、重塩化メチレンに錯体1a
1(1当量)及び塩基としてルチジン(5当量)を溶解し、得られた溶液に水素ガスをバブリングしたところ、反応溶液の色は数分で緑色から橙褐色へと変化した。
この反応溶液の
1HNMRを測定した結果、錯体1a
1に帰属されるピークは完全に消失し、ヒドリド錯体5a
1に帰属されるピークのみが観測された。なお、ヒドリド錯体5a
1の
1HNMRにおいては、−16.4ppmという高磁場にヒドリド配位子(−H
−)に特徴的なピークが現れる。なお、ルテニウムに水素(H
2)が配位した二水素錯体中間体は得られなかった。
一方、錯体1a
1のメタノール溶液を水素に曝すことにより、ヒドリド錯体5a
1が生成することが分かった。この反応においては、メタノールそのものが塩基として働いているものと考えられる。下記式(12)に示すように、得られたヒドリド錯体5a
1のメタノール溶液に、ヒドリド錯体5a
1あたり1当量のKO
tBuを加え、20分間反応させた後に乾固させることにより、黄褐色粉末を得た。この黄褐色粉末は、ヒドリド錯体5a
1を約80%含む他、錯体1a
1を約20%含んでいた。
【0046】
【化13】
【0047】
上記式(11)に示す反応後の溶液から重塩化メチレンを留去し乾固したところ、得られた固体は錯体1a
1を主成分とする混合物となった。このことから、上記式(11)に示す反応は平衡反応であることが分かった(下記式(13))。また、重アセトン中でも上記式(10)及び(11)とほぼ同様の結果が得られた。
上記式(10)〜(12)より、錯体1a
1を水素に曝すことによりヒドリド錯体5a
1が生成することが分かった。上記式(10)〜(12)においては、ヒドリド錯体5a
1の生成以降、特に反応が進行しないことから、触媒反応における次の段階は、ヒドリド錯体5a
1の酸化反応であると考えられる(下記式(14))。
【0048】
【化14】
【0049】
(3)サイクリックボルタンメトリー
次に、錯体1a
1及びヒドリド錯体5a
1の酸化還元挙動を明らかにするために、サイクリックボルタンメトリー(CV)を行った。CVに用いた測定セル及び測定条件の詳細は以下の通りである。
測定セル
・作用電極:グラッシーカーボン電極
・参照電極:白金擬似参照電極(Pt−QRE)
・対極:白金電極
・試料溶液:錯体1a
1又はヒドリド錯体5a
1のメタノール溶液(支持電解質として
nBu
4NClO
4を、内部標準としてフェロセンをそれぞれ添加した)
測定装置 ポテンショスタット/ガルバノスタット(Solatron)
電位掃引速度:50mV/秒
電位掃引範囲:−1.7〜0.7V(vs.Fc/Fc
+)
測定温度 25℃
測定雰囲気 窒素雰囲気又は水素雰囲気
【0050】
錯体1a
1は、アセトニトリル等の配位性溶媒やハロゲン化物イオン等と速やかに反応してしまうことが分かっている。そのため、これら配位性溶媒やハロゲン化物イオンは、CVに使用できない。また、支持電解質として
nBu
4NBF
4等が使用できなかったため、
nBu
4NClO
4を用いた。さらに、参照電極として一般的に用いられるAg/AgNO
3−MeCNやAg/AgCl−KClaq等はいずれも使用できなかったため、白金擬似参照電極(Pt−QRE)を用いた。また、内部標準としてフェロセンを添加し、フェロセンの酸化還元電位を電位の基準とした。
【0051】
錯体1a
1、及びヒドリド錯体5a
1(ただし、実際は錯体1a
1を約20%含む混合物である)をそれぞれメタノールに溶かし、水素雰囲気下又は窒素雰囲気下においてCVを実施した。
図1は、錯体1a
1及びヒドリド錯体5a
1の、水素雰囲気下又は窒素雰囲気下におけるサイクリックボルタモグラムを並べて示したグラフである。
メタノール中かつ窒素雰囲気下における、錯体1a
1のサイクリックボルタモグラム(
図1の下から1番目のもの)は、−587mV(vs.Fc/Fc
+)及び−1180mV(vs.Fc/Fc
+)に可逆な一電子還元波を示した。一方、メタノール中かつ水素雰囲気下における、錯体1a
1のサイクリックボルタモグラム(
図1の下から2番目のもの)においては、+173mV(vs.Fc/Fc
+)に非可逆な酸化波が現れた。当該酸化波は、ヒドリド錯体5a
1の酸化過程に帰属されると考えられる。
メタノール中かつ窒素雰囲気下における、ヒドリド錯体5a
1のサイクリックボルタモグラム(
図1の上から2番目のもの)においては、+173mV(vs.Fc/Fc
+)に非可逆な酸化波が現れた。当該サイクリックボルタモグラムにおいて観測される2つの小さな還元波(−587mV(vs.Fc/Fc
+)及び−1180mV(vs.Fc/Fc
+))は、試料中に混入している錯体1a
1に帰属される。一方、メタノール中かつ水素雰囲気下における、ヒドリド錯体5a
1のサイクリックボルタモグラム(
図1の上から1番目のもの)において、+173mV(vs.Fc/Fc
+)に現れる酸化波の電流値が、窒素雰囲気下の当該酸化波の電流値と比較して増大している。ヒドリド錯体5a
1に係るこれら2つのサイクリックボルタモグラムを比較することにより、ヒドリド錯体5a
1が触媒的に水素と反応することが電気化学的にも証明された。
【0052】
(4)水素酸化反応評価のまとめ
上記(1)〜(3)の評価結果を総合すると、触媒反応の推定反応機構は下記式(5a)に示す通りとなる。下記式(5a)中、錯体1a(2価のカチオン)は錯体1a
1のカチオン部分に相当し、錯体5a(1価のカチオン)はヒドリド錯体5a
1のカチオン部分に相当する。
下記式(5a)に示すように、錯体1aと水素との反応により、1当量のプロトンの生成を伴い錯体5aが生じる。錯体5aの酸化により、もう1当量のプロトンの生成とともに錯体1aが再生する。
【0053】
【化15】
【0054】
錯体1a
1の窒素雰囲気下におけるサイクリックボルタモグラム(
図1の下から1番目のもの)には、+173mV(vs.Fc/Fc
+)に非可逆な小さな酸化波が観測される。これは、ヒドリド錯体5a
1のサイクリックボルタモグラム(
図1の上から1番目及び2番目)における+173mV(vs.Fc/Fc
+)に現れる酸化波に対応する。錯体1a
1の窒素雰囲気下におけるサイクリックボルタモグラム上の当該酸化波は、錯体1a
1の2電子還元種が、メタノール由来のプロトン又は微量の水由来のプロトンと反応することによりヒドリド錯体5a
1が生成したことを示すと予想される。
下記式(15)には、錯体1a(2価のカチオン)から錯体5a(1価のカチオン)への予測される還元過程を示す。下記式(15)によれば、錯体1aは2電子還元により錯体6a(2電子還元種)となり、錯体6aはプロトンにより酸化されて錯体5aとなる。
下記式(15)により、錯体1a
1の水素雰囲気下におけるサイクリックボルタモグラム(
図1の下から2番目)において、2つの還元波(−587mV(vs.Fc/Fc
+)及び−1180mV(vs.Fc/Fc
+))が非可逆となることも説明できる。メタノール中かつ水素雰囲気下においては、錯体1a
1からヒドリド錯体5a
1が生成し、かつ1当量のプロトンが生成する。下記式(15)によれば、メタノール中に豊富に存在するプロトンを錯体1a
1の2電子還元種が捕捉することにより即座にヒドリド錯体5a
1となるため、電極近傍において錯体1a
1の2電子還元種はもはや存在しなくなる。その結果、錯体1a
1の水素雰囲気下におけるサイクリックボルタモグラムに示す通り、当該2電子還元種が酸化される様子が酸化波として現れないと考えられる。
【0055】
【化16】
【0056】
上記式(13)及び(15)を併せて鑑みるに、本発明に係る水素酸化触媒を用いることにより、触媒的にプロトンを還元し水素を取り出すプロトン還元反応も可能となると考えられる。