特許第5876475号(P5876475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000004
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000005
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000006
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000007
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000008
  • 特許5876475-Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5876475
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】Rh負荷が低減されたNOx貯蔵触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20160218BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160218BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160218BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20160218BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160218BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20160218BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160218BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   B01J23/63 A
   B01D53/94 223
   B01J35/04 301E
   B01D53/94 222
   B01J37/02 301D
   B01J37/08ZAB
   B01J37/02 101D
   B01J37/04 102
   B01J35/04 301M
   B01J37/02 101C
   B01J35/04 301L
   F01N3/08 A
   F01N3/10 A
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-513801(P2013-513801)
(86)(22)【出願日】2011年6月9日
(65)【公表番号】特表2013-529134(P2013-529134A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】IB2011052511
(87)【国際公開番号】WO2011154912
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】10165529.8
(32)【優先日】2010年6月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲンドルフ,マルクス
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/158453(WO,A1)
【文献】 特表2005−530614(JP,A)
【文献】 特表2011−526203(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0001781(US,A1)
【文献】 特表2011−529389(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/012677(WO,A1)
【文献】 特表2006−518276(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0151645(US,A1)
【文献】 特開2006−346525(JP,A)
【文献】 特開平09−085091(JP,A)
【文献】 特表2007−527314(JP,A)
【文献】 特表2002−506500(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0103886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/08
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
基材上に設けられた第一のウォッシュコート層(この第一のウォッシュコート層が、金属酸化物支持体粒子と、アルカリ土類金属化合物とアルカリ金属化合物、希土類金属化合物、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物を含む酸化窒素貯蔵材料を含み、上記少なくとも一種の金属化合物の少なくとも一部が、金属酸化物支持体粒子上に担持されている)と、
第一のウォッシュコート層の上に設けられた第二のウォッシュコート層(第二のウォッシュコート層がRhを含む)と、
Pdを含み、第一のウォッシュコート層の少なくとも一部であって、第二のウォッシュコート層が設けられていない所に設けられた第三のウォッシュコート層を、を含み、
第一のウォッシュコート層が実質的にRhを含まず、
第二のウォッシュコート層が、第一のウォッシュコート層の表面の100−x%(xは20〜80の範囲である)に設けられ
前記基材は、縦に伸びる壁面が囲い区切って形成された複数の縦に伸びる流路を備えたハニカム基材を有し、
前記ハニカム基材は交互に流入流路と排出流路を有し、前記流入流路が開放入口端と閉鎖出口端を有し、前記排出流路が閉鎖入口端と開放出口端を有し、
その表面上に第三のウォッシュコート層が設けられた第一のウォッシュコート層がハニカム基材の排出流路の第一のウォッシュコート層であり、該第三のウォッシュコート層がハニカム基材の排出流路の上記第一のウォッシュコート層の少なくとも一部に設けられたことを特徴とする酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項2】
第二のウォッシュコート層がさらに、Rhが少なくとも部分的に担持された金属酸化物支持体粒子を含む請求項1に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項3】
上記金属酸化物支持体粒子が、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含む請求項1又は2に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項4】
上記酸化窒素貯蔵材料が、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Pr、Nd、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項5】
上記酸化窒素貯蔵材料が、セリウム化合物とバリウム化合物とを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項6】
炭酸バリウムが少なくとも部分的にセリアを含む粒子に担持されている請求項5に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項7】
第一のウォッシュコート層がさらに、白金、パラジウム、イリジウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の白金族金属を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項8】
第一のウォッシュコート層が、Pd及び/又はPtを含む請求項7に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項9】
第三のウォッシュコート層に含まれるPdが少なくとも部分的に金属酸化物支持体粒子に担持されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項10】
その表面の100−x%に第二のウォッシュコート層が設けられる第一のウォッシュコート層が、ハニカム基材の流入流路の第一のウォッシュコート層である請求項1〜11のいずれか1項に記載の酸化窒素貯蔵触媒。
【請求項11】
定期的に希薄条件と濃厚条件の間を運転する燃焼エンジンと、
該エンジンに連通した排ガス導管と、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸化窒素貯蔵触媒と、
を含む自動車排ガス流の処理システム。
【請求項12】
上記窒素貯蔵触媒が、第二のウォッシュコート層を含む触媒の部分又は区域に対して分離した、第二のウォッシュコート層を含まない別の基材を含む請求項11に記載の処理システム。
【請求項13】
自動車エンジン排ガスの処理方法であって、
(i)請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸化窒素貯蔵触媒を設け、
(ii)自動車エンジン排ガス流を前記酸化窒素貯蔵触媒の上及び/又は中に通す
ことを含む方法。
【請求項14】
上記自動車エンジンが定期的に希薄条件と濃厚条件の間を運転する請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Rh負荷が低減されたNOxトラップと、Rh負荷が低減されたNOxトラップの製造方法、自動車排ガス流の処理方法、自動車エンジン排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排出基準を満たすためには、希薄燃焼エンジンからの酸化窒素(NOx)の排出を減らす必要がある。理論空気/燃料比条件下で運転されているエンジンの排ガス中のNOxと一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)汚濁物質を減らすには、従来の三元変換(TWC)自動車用触媒が好適である。
【0003】
エンジン、特にガソリン燃料エンジンは、燃料を経済的とするため希薄条件下で運転するように設計されている。このようなエンジンは、「希薄燃焼エンジン」と呼ばれる。即ち、得られる排ガスが「希薄」となるように、即ち排ガスの酸素含量が比較的高くなるように、これらのエンジンに供給される燃焼混合物中の空気と燃料の比率が理論比よりかなり高く維持されている。
【0004】
希薄燃焼エンジンでは燃料効率が増加するが、排気中に過剰の酸素が存在するため、従来のTWC触媒ではこのようなエンジンからのNOxの排出を効果的に抑えることができないという欠点を持っている。この問題を克服するための方法には、希薄燃焼エンジンを短時間、燃料を多くして運転することも含まれる(このように運転されるエンジンは、時には「部分希薄燃焼エンジン」とよばれる)。このようなエンジンの排気は、希薄(富酸素)運転の期間はNOxを貯蔵し、濃厚(富燃料)運転の期間には貯蔵したNOxを放出する触媒/NOx吸着剤(酸化窒素貯蔵触媒)で処理される。濃厚(または理論比)運転の期間は、触媒/NOx吸着剤の触媒成分が、NOx(NOx吸着剤から放出されるNOxも含む)と排ガス中に存在するHC、CO及び/又は水素との反応によるNOxの窒素への還元を促進させる。
【0005】
例えばWO2008/067375には、支持体上にウォッシュコート層を持つ酸化窒素貯蔵触媒であって、該ウォッシュコート層がRhと他の元素を含み、これらが酸化窒素を捕集と変換によりその削減に活性を示す組成物を形成しているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008/067375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、改善された酸化窒素貯蔵触媒が、特に低温での、即ち自動車の排ガス処理の冷間始動期間での酸化窒素削減効率が改善された酸化窒素貯蔵触媒が求められている。また、酸化窒素貯蔵触媒に含まれる高価な白金族金属を考えると、その排出基準を満たすのに必要な量を減らす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この点で、驚くべきことに、少量の白金族金属、特にRhを含む本発明のNOx貯蔵触媒のデザインが、酸化窒素の削減を改善させ、特に排気処理プロセスの冷間始動期間の酸化窒素削減を改善させることがわかった。
【0009】
したがって、本発明は、
基材と;
該基材上に設けられた第一のウォッシュコート層(この第一のウォッシュコート層が、金属酸化物支持体粒子と、アルカリ土類金属化合物とアルカリ金属化合物、希土類金属化合物およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物とを含む酸化窒素貯蔵材料を含み、上記少なくとも一種の金属化合物の少なくとも一部が該金属酸化物支持体粒子上に担持されている);と
第一のウォッシュコート層の上に設けられた第二のウォッシュコート層(第二のウォッシュコート層はRhを含む)、とからなり、第一のウォッシュコート層は実質的にRhを含まず、第二のウォッシュコート層が第一のウォッシュコート層の表面の100−x%、xは20〜80の範囲である)の上に設けられている酸化窒素貯蔵触媒に関する。
【0010】
この基材として、酸化窒素貯蔵触媒のウォッシュコート層を保持でき、排ガス処理プロセス中の支配条件下に耐えることのできるずれの材料を使用することもできる。適当な基材には、触媒製造に通常使用されるいずれの材料も含まれ、通常、セラミックハニカム構造物または金属ハニカム構造物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、NOx尾筒の初期濃度を100ppmとした場合のいくつかの実施例で観測されるNOx変換率を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図1中で、”◆”は比較例1で得られた値であり、”■”は実施例2で得られた値であり、”▲”は実施例3で得られた値である。
図2図2は、NOx尾筒の初期濃度を100ppmとした場合のいくつかの実施例で観測される、希薄NOx初期濃度を100ppmとした場合の9希薄/濃厚サイクル後のサイクル10でのNOx貯蔵量を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図2中で、”◆”は比較例1で得られた値であり、”■”は実施例2で得られた値であり、”▲”は実施例3で得られた値であり、”サイクル10でのNOx貯蔵量/g”は、NOx貯蔵効率(g/L)である。
図3図3は、NOx尾筒の初期濃度を100ppmとした場合のいくつかの実施例で観測されるNOx変換率を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図3中で、”▲”は比較例1で得られた値であり、”■”は実施例4で得られた値である。
図4図4は、NOx尾筒の初期濃度を100ppmとした場合のいくつかの実施例で観測される、希薄NOx初期濃度を100ppmとした場合の9希薄/濃厚サイクル後のサイクル10でのNOx貯蔵量を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図4中で、”▲”は比較例1で得られた値であり、”■”は実施例4で得られた値であり、”サイクル10でのNOx貯蔵量/g”は、NOx貯蔵効率(g/L)である。
図5図5は、NOx尾筒の初期濃度を40ppmとした場合のいくつかの実施例で観測されるNOx変換率を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図5中で、”■”は比較例1で得られた値であり、”◆”は実施例4で得られた値である。
図6図6は、NOx尾筒の初期濃度を40ppmとした場合のいくつかの実施例で観測される、希薄NOx初期濃度を40ppmとした場合の9希薄/濃厚サイクル後のサイクル10でのNOx貯蔵量を温度(℃)の関数として比較するグラフである。図6中で、”■”は比較例1で得られた値であり、”◆”は実施例4で得られた値であり、”サイクル10でのNOx貯蔵量/g”は、NOx貯蔵効率(g/L)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基材は、この上に存在するウォッシュコート層の少なくとも一部に流体が接触できるのなら、可能ないずれの形状であってもよい。好ましくはこの基材がモノリスであり、より好ましくはこのモノリスがフロースルーモノリスである。したがって、このモノリス基材は、入口面から出口面に延びる微細で平行なガス流路をもっており、流路が流体の流動に開放されていることが好ましい。このような基材は、通常ハニカムフロースルー基材と呼ばれる。流体入口から流体出口に向かって実質的に直線的に延びているこの流路は壁面で区切られており、この壁面上に薄膜が設けられ、流路を通過するガスがこの触媒材料と接触するようになっている。このモノリス基材の流路は薄壁の管であり、いずれかの適当な断面形状と大きさをもち、例えば台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、卵形、または丸形の形状をもつ。このような構造物は、断面の1平方インチ当り60〜400個以上のガス導入用開口部(即ち、セル)を持っている。
【0013】
したがって、本発明の好ましい実施様態においては、この酸化窒素貯蔵触媒は、基材としてモノリスをもち、好ましくはフロースルーモノリス、より好ましくはハニカム構造のフロースルーモノリスをもっている。
【0014】
この基材は、先行技術から公知の材料から製造できる。このために、多孔体を基材材料として使用することが好ましく、特にセラミックやセラミック状材料(例えば、コージェライトやα−アルミナ、アルミノケイ酸塩、コージェライト−アルミナ、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、ジルコン、ジルコンムライト、ケイ酸ジルコン、ミリマイト、珪酸マグネシウム、ペタル石、リチア輝石、アルミナ−シリカ−マグネシア、ケイ酸ジルコニウム)また多孔性の耐火金属やそれらの酸化物の使用が好ましい。本発明によれば、「耐火金属」は、TiとZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Reからなる群から選ばれる一種以上の金属をいう。この基材は、セラミック繊維複合材料からできていてもよい。本発明によれば、この基材は、コージェライト、炭化ケイ素、及び/又はチタン酸アルミニウムから製造することが好ましい。一般に、NOx貯蔵触媒が曝される高温に耐える、特に自動車排ガスの処理に使用された時の高温に耐える材料が好ましい。
【0015】
本発明の実施様態の触媒に有用な基材は、本質的に金属製であっても、一種以上の金属または金属合金からなっていてもよい。これらの金属製基材はいろいろな形状で使用でき、例えば波板やモノリスの形で使用できる。適当な金属製支持体には、チタンやステンレス鋼などの耐熱金属や金属合金、また実質的に鉄のみからなるまたは鉄が主成分である他の合金が含まれる。このような合金は、ニッケルとクロム及び/又はアルミニウムの一種以上を含むことができ、これらの金属の総量が、合金の少なくとも15重量%であってもよく、例えば10〜25重量%のクロム、3〜8重量%のアルミニウム、最大で20重量%のニッケルであってもよい。これらの合金はまた、小量または微量の一種以上の他の金属、例えばマンガンや銅、バナジウム、チタンなどを含むことができる。これらの金属基材の表面を高温下で、例えば1000℃以上で酸化させ、基材表面に酸化物層を形成して、合金の耐腐食性を改善させてもよい。このような高温で誘起される酸化が、続く薄膜組成物の基材への接着を強化することがある。
【0016】
原則として自動車排ガスの処理中に遭遇する条件に耐える、特にNOx貯蔵触媒が受ける温度に耐えるなら、第一のウォッシュコート層中でいずれの金属酸化物支持体粒子を使用することも可能である。この金属酸化物支持体粒子が、アルミナとジルコニア、ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含むことが好ましい。この金属酸化物粒子が、ジルコニア−アルミナ及び/又はランタナ−アルミナを含むことがより好ましく、ジルコニア−アルミナを含むことがさらに好ましい。
【0017】
本発明の好ましい実施様態では、第一のウォッシュコート層中の金属酸化物支持体粒子が一種以上の化合物でドープされていてもよい。したがって、第一のウォッシュコート層に含まれる金属酸化物支持体粒子、好ましくはアルミナが、ジルコニアでドープされていることが好ましく、
原則としてこの金属酸化物支持体粒子が、可能ないずれかの量のジルコニアでドープされていてもよく、好ましくは0.5〜40%のジルコニア、より好ましくは1〜30%、より好ましくは5〜25%の、さらに好ましくは10〜20%のジルコニアでドープされていてもよい。
【0018】
本発明によれば、第一のウォッシュコート層中に含まれる金属酸化物支持体粒子の粒子径(d90)は、好ましくは5〜20μmの範囲であり、より好ましくは8〜14μm、より好ましくは9〜13μm、さらに好ましくは10〜12μmの範囲である。本発明の意味する範囲内では、粒子径「d90」は、体積当たりの粒子数の90%がより小さな直径を有する相当直径である。
【0019】
また、本発明によれば、この金属酸化物支持体粒子の表面積が50〜350m/gの範囲であってよく、100〜300m/gの範囲の表面積が好ましく、130〜270m/gがより好ましく、150〜230m/gがより好ましく、170〜190m/gがさらに好ましい。本発明の意味する範囲内では、表面積は、一般的にはBET表面積をさし、好ましくはDIN66135により求めたBET表面積をさす。
【0020】
第一のウォッシュコート層に含まれる酸化窒素貯蔵材料について、上記材料が、LiとNa、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Pr、Nd、およびこれらの混合物からなる群選ばれる少なくとも一種の元素であることがさらに好ましく、MgとBa、Ce、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましく、Ba及び/又はCeがより好ましい。
【0021】
特に好ましい実施様態においては、この酸化窒素貯蔵材料がセリウム化合物とバリウム化合物を、好ましくはセリアと炭酸バリウムを含み、その場合のセリア:炭酸バリウム重量比は、好ましくは1:1〜1:20の範囲であり、より好ましくは1:2〜1:15、より好ましくは1:3〜1:10、さらに好ましくは1:3.5〜1:5である。
【0022】
特に好ましい実施様態においては、炭酸バリウムが少なくとも部分的にセリアを含む粒子上に担持されていることが好ましく、その場合、得られる粒子の粒子径(d90)が、好ましくは5〜20μmの範囲であり、より好ましくは8〜14μm、より好ましくは9〜13μm、さらに好ましくは10〜12μmの範囲である。
【0023】
一般に、この酸化窒素貯蔵材料は可能ないずれの表面積をもっていてもよく、好ましい実施様態においては、この酸化窒素貯蔵材料の表面積が、25〜100m/gの範囲であり、より好ましくは30〜80m/g、より好ましくは40〜60m/g、さらに好ましくは45〜55m/gの範囲である。
【0024】
本発明によれば、第一のウォッシュコート層が、白金とパラジウム、イリジウム、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の白金族金属を含むことがさらに好ましい。好ましくはこの少なくとも一種の白金族金属が少なくとも部分的に上記金属酸化物支持体粒子に担持されており、より好ましくは異なる種類の白金族金属が別の金属酸化物支持体粒子に担持されている。特に、第一のウォッシュコート層がPd及び/又はPtを、好ましくはPdとPtを含むことが好ましい。
【0025】
酸化窒素貯蔵触媒がPdを含む好ましい本発明の実施様態においては、触媒中のPdの総負荷量が5〜25g/ftの範囲であることがさらに好ましい。酸化窒素貯蔵触媒中のPdの総負荷量は、より好ましくは8〜20g/ftの範囲であり、より好ましくは10〜17g/ft、より好ましくは11〜16g/ft、より好ましくは12〜15g/ft、さらに好ましくは13〜14g/ftである。
【0026】
また、酸化窒素貯蔵触媒がPtを含む本発明の好ましい実施様態においては、触媒中のPtの総負荷量が5〜200g/ftの範囲であることがさらに好ましい。酸化窒素貯蔵触媒中のPtの総負荷量は、より好ましくは20〜150g/ftの範囲であり、より好ましくは40〜120g/ft、より好ましくは50〜100g/ft、より好ましくは60〜80g/ft、さらに好ましくは65〜75g/ftである。
【0027】
原則として、本発明の第一のウォッシュコート層の総負荷量として可能ないずれの負荷量を選んでもよい。一般に、酸化窒素貯蔵触媒中の第一のウォッシュコート層の負荷量は0.5〜20g/inの範囲でよいが、この負荷量は、好ましくは1〜15g/inの範囲であり、より好ましくは3〜10g/in、より好ましくは4〜8g/in、より好ましくは5〜7g/in、さらに好ましくは5.5〜6.0g/inの範囲である。
【0028】
本発明によれば、酸化窒素貯蔵触媒の第一のウォッシュコート層が実質的にRhを含まない。本発明の意味の範囲内において、ある材料が、0.001重量%以下の特定の元素を含む場合、好ましくは0.0005重量%以下、より好ましくは0.00001重量%以下、より好ましくは0.000005重量%以下、さらに好ましくは0.000001重量%以下のその元素を含む場合、その元素を充分な量で含んでいないと定義される、
第二のウォッシュコート層について、この層は第一のウォッシュコート層の表面の100−x%に設けられる。
【0029】
なお、xは20〜80の範囲であり、好ましくは25〜75の範囲、より好ましくは30〜70、より好ましくは35〜65、より好ましくは40〜60、より好ましくは45〜55、さらに好ましくは48〜52の範囲である。
【0030】
本発明の酸化窒素貯蔵触媒では、ウォッシュコート層が基材上に考えられるいずれかの様態で設けられる。その場合、第一及び第二のウォッシュコート層が、好ましくは両方が、この基材本体の一端及び/又は辺から出発してこの基材上に設けられていることが好ましい。特に好ましい実施様態においては、この層が基材上に連続層として設けられ、その際本発明の連続層が、その全長にわたって切れ目のない層であることが好ましい。
【0031】
一般に、第二のウォッシュコート層のRhの負荷量は可能ないずれの値であってもよく、その負荷量は0.5〜10g/ftの範囲である。ある好ましい実施様態においては、第二のウォッシュコート層中のRhの負荷量が1〜8g/ftの範囲であり、より好ましくは2〜6g/ft、より好ましくは2.5〜5.5g/ft、より好ましくは3〜5g/ft、さらに好ましくは3.5〜4.5g/ftの範囲である。
【0032】
本発明の酸化窒素貯蔵触媒中のRhの総負荷量について、この総負荷量は0.25〜5g/ftの範囲であってよい。ある好ましい実施様態においては、このRhの総負荷量は0.5〜5g/ftの範囲であり、より好ましくは1〜3g/ft、より好ましくは1.25〜2.75g/ft、より好ましくは1.5〜2.5g/ft、さらに好ましくは1.75〜2.25g/ftの範囲である。
【0033】
本発明の第二のウォッシュコート層の総負荷量について、原則として可能ないずれの負荷量を選ぶことができる。一般に、酸化窒素貯蔵触媒中の第二のウォッシュコート層の負荷量は、0.05〜5g/inの範囲であり、好ましくは0.1〜2g/in、より好ましくは0.2〜1.5g/in、より好ましくは0.3〜1g/in、より好ましくは0.4〜0.6g/in、さらに好ましくは0.45〜0.55g/inの範囲である。本発明によれば、第二のウォッシュコート層を含む触媒の部分の第二のウォッシュコート層の負荷量はその上に設けられる第一のウォッシュコート層の負荷量より小さいことが特に好ましい。
【0034】
本発明によれば、第二のウォッシュコート層が、Rhが少なくとも部分的に担持された金属酸化物支持体粒子を含むことがより好ましい。
【0035】
原則としていずれの金属酸化物粒子を第二のウォッシュコート層中で使用することができ、その場合、アルミナとジルコニア、ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含む金属酸化物支持体粒子が好ましく、また
金属酸化物支持体粒子がジルコニア−アルミナ及び/又はランタナ−アルミナを、より好ましくはジルコニア−アルミナを含むことが好ましい。
【0036】
第一のウォッシュコート層の金属酸化物粒子について、第二のウォッシュコート層中に含まれる金属酸化物支持体粒子が一種以上の化合物でドープされていてもよい。したがって、第二のウォッシュコート層に含まれる金属酸化物支持体粒子、好ましくはアルミナは、ジルコニアでドープされていることが好ましい。原則として第二のウォッシュコート層中の金属酸化物支持体粒子は、可能ないずれの量のジルコニアでドープされていてもよいが、この金属酸化物支持体粒子は、0.5〜40%のジルコニアでドープされることが好ましく、より好ましくは1〜30%、より好ましくは5〜25%、さらに好ましくは10〜20%のジルコニアでドープされることが好ましい。
【0037】
本発明の特に好ましい実施様態においては、酸化窒素貯蔵触媒の第一及び第二のウォッシュコート層が、ジルコニアでドープされたアルミナドープを含み、好ましくは第一のウォッシュコート層に含まれるアルミナが、1〜30%のジルコニアでドープされたアルミナであり、より好ましくは5〜20%、より好ましくは7〜15%、より好ましくは8〜12%、さらに好ましくは9〜11%のジルコニアでドープされたアルミナであり、第二のウォッシュコート層に含まれるアルミナが、1〜50%のジルコニアでドープされたアルミナ、より好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%、より好ましくは18〜22%、さらに好ましくは19〜21%のジルコニアでドープされたアルミナである。
【0038】
本発明によれば、第二のウォッシュコート層中に含まれる金属酸化物支持体粒子の粒子径(d90)が5〜20μmの範囲にあることが、好ましくは8〜14μm、より好ましくは9〜13μm、さらに好ましくは10〜12μmであることがより好ましい。
【0039】
本発明においては、第二のウォッシュコート層が設けられていない第一のウォッシュコート層の少なくとも一部の上に第三のウォッシュコート層が設けられ、この第三のウォッシュコート層がPdを含んでいる実施様態がさらに好ましい。
【0040】
一般に第三のウォッシュコート層中のPdの負荷量は5〜30g/ftの範囲の中の可能ないずれの値である。ある好ましい実施様態においては、第三のウォッシュコート層中のPdの負荷量は0〜25g/ftの範囲であり、より好ましくは13〜21g/ft、より好ましくは15〜19g/ft、より好ましくは16〜18g/ft、さらに好ましくは16.5〜17.5g/ftの範囲である。
【0041】
本発明の第三のウォッシュコート層の総負荷量は、原則として可能ないずれの負荷量であってもよい。一般に酸化窒素貯蔵触媒中の第三のウォッシュコート層の負荷量は、0.05〜5g/inの範囲であり、好ましくは0.1〜2g/in、より好ましくは0.2〜1.5g/in、より好ましくは0.3〜1g/in、より好ましくは0.4〜0.6g/in、さらに好ましくは0.45〜0.55g/inの範囲である。また、第三のウォッシュコート層を含む触媒の一部中の第三のウォッシュコート層の負荷量が、それが設けられている第一のウォッシュコート層の負荷量より小さいことが好ましい。
【0042】
酸化窒素貯蔵触媒が第三のウォッシュコート層を含む本発明の好ましい実施様態においては、第三のウォッシュコート層が実質的にRhを含まないことが好ましい。
【0043】
本発明のある好ましい実施様態においては、第三のウォッシュコート層に含まれるPdが、少なくとも部分的に金属酸化物粒子上に担持されている。
【0044】
原則としていずれの金属酸化物支持体粒子も第三のウォッシュコート層中で使用でき、その場合、アルミナとジルコニア、ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含む金属酸化物支持体粒子が好ましく、金属酸化物粒子がジルコニア−アルミナ及び/又はランタナ−アルミナを含むことがより好ましく、ジルコニア−アルミナを含むことがさらに好ましい。
【0045】
第一及び第二のウォッシュコート層の金属酸化物粒子に関して、第三のウォッシュコート層中に含まれる金属酸化物支持体粒子を一種以上の化合物でドープしてもよい。したがって、第三のウォッシュコート層に含まれるこの金属酸化物支持体粒子、好ましくはアルミナは、好ましくはジルコニアでドープされている。原則として第三のウォッシュコート層の金属酸化物支持体粒子は、可能ないずれの量のジルコニアでドープすることもでき、その場合、この金属酸化物支持体粒子は、好ましくは1〜50%ジルコニアでドープされ、より好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%、より好ましくは15〜25%、より好ましくは18〜22%、さらに好ましくは19〜21%のジルコニアでドープされる。
【0046】
本発明の酸化窒素貯蔵触媒の好ましい基材に関して、即ち縦に伸びる壁面が囲い区切ってできる複数の縦に伸びる流路をもつハニカム基材に関して、このハニカム基材が、交互に流入流路と排出流路の両方をもち、この流入流路が開放された入口端と閉鎖された出口端をもち、この排出流路が閉鎖された入口端と開放された出口端をもち、このようにして壁面流型基材を形成していることがより好ましい。このような壁面流型基材をもつ好ましい本発明の実施様態において、その上のウォッシュコート層の負荷量が空孔率や壁厚などの基材の特性に依存することは明らかである。
【0047】
上記の好ましい実施様態においては、その表面の100−x%に第二のウォッシュコート層が設けられている第一のウォッシュコート層がハニカム基材の流入流路の壁面に設けられた第一のウォッシュコート層であることがより好ましく、その場合、この第二のウォッシュコート層が、好ましくはハニカム基材の入口端(前面)から延びる上記第一のウォッシュコート層の一部の上に設けられている。本発明では、この第二のウォッシュコート層が基材上に連続的な層として設けられていることが好ましい。
【0048】
第三のウォッシュコート層を含む酸化窒素貯蔵触媒の好ましい実施様態では、上記第三のウォッシュコート層が設けられている第一のウォッシュコート層がハニカム基材の排出流路上に設けられた第一のウォッシュコート層であることがより好ましく、その場合、この第三のウォッシュコート層は、ハニカム基材の排出流路の上記第一のウォッシュコート層の少なくとも一部上に設けられている。
【0049】
壁面流型基材を含む特に好ましい実施様態においては、第三のウォッシュコート層が、第一のウォッシュコート層の表面の100−x%(xは、20〜80の範囲、好ましくは25〜75、より好ましくは30〜70、より好ましくは35〜65、より好ましくは40〜60、より好ましくは45〜65、さらに好ましくは48〜52の範囲である)に設けられる。また、この第三のウォッシュコート層は、ハニカム基材出口端(裏面)から延びる第一のウォッシュコート層の一部に設けられていることが好ましい。
【0050】
本発明は、上述の酸化窒素貯蔵触媒に加えて、自動車排ガス流の処理システムに向けられている。特に、本発明の処理システムは、
希薄条件と濃厚条件との間で定期的に運転する燃焼エンジンと;
このエンジンに連結された排ガス導管と;
この排ガス導管内に設けられた本発明の酸化窒素貯蔵触媒とを含んでいる。
【0051】
原則として考えうるいずれの燃焼エンジンも本発明の処理システムで使用できるが、
ガソリンエンジンの使用が好ましく、直噴ガソリンエンジンの使用がより好ましい。
【0052】
ガソリン自動車用途では、本発明の酸化窒素貯蔵触媒とともに三元変換(TWC)触媒を含む触媒装置を使用することができる。このような装置は内燃機関の排ガス導管内に存在していてもよく、酸化窒素貯蔵触媒の上流及び/又は下流に設けてもよい。TWC触媒は通常、高表面積の耐火性支持体上に分散した白金とパラジウムとロジウムの触媒成分を含み、鉄、マンガンまたはニッケルの酸化物などの一種以上の卑金属酸化物触媒を含んでいてもよい。活性アルミナ支持体を一種以上のセリアなどの希土類酸化物で含浸させるなどの方法でもって、このような触媒を熱劣化に対して安定化させることができる。このような安定化触媒は、非常に高い動作温度でも使用可能である。例えば、省燃料技術を使用すると、触媒装置中では1050℃の高温が続くことがある。
【0053】
この触媒装置を使用し、これを本発明の酸化窒素貯蔵触媒の上流におく場合、触媒装置をエンジンの排気マニホルドの近くに据え付けることができる。このような配列では、TWC触媒がすばやく温まり、効率的な冷間始動排出コントロールが可能となる。エンジンが温まると、このTWC触媒が、理論比運転または濃厚運転の間は排ガス流からHCとCOとNOxを除き、希薄運転の間はHCとCOを除く。ある実施様態では、この酸化窒素貯蔵触媒が触媒装置の下流に置かれ、ここでは排ガス温度のため最大のNOxトラップ効率が可能となる。希薄エンジン運転の間は、NOxがTWC触媒を通過すると、NOxがその酸化窒素貯蔵触媒上に貯蔵される。次いで酸化窒素は定期的に脱着され、理論比または濃厚エンジン運転の間はNOxが窒素に還元される。必要ならTWC触媒を含む触媒装置を本発明の酸化窒素貯蔵触媒の下流で用いることができる。このような触媒装置は、排ガス流からより多くのHCとCOを除去でき、理論比または濃厚エンジン運転の間に、効率的にNOxから窒素への還元を行う。
【0054】
ディーゼル自動車用途では、本発明の酸化窒素貯蔵触媒をディーゼル酸化触媒(DOC)や触媒すすフィルター(CSF)とともに使用してよく、その場合には、これらのDOCとCSFを酸化窒素貯蔵触媒の前においても、後ろにおいてもよい。
【0055】
また、三元触媒に加えて、あるいは三元触媒に代えて酸化窒素貯蔵触媒の上流または下流に選択的還元触媒が設けられている処理システムの実施様態が好ましい。その場合、選択的還元触媒が酸化窒素貯蔵触媒の下流に設けられる実施様態が好ましい。特に好ましい実施様態においては、本発明の処理システムが、酸化窒素貯蔵触媒より下流に三元触媒と選択的還元触媒の両方を有している。なお、これらの三元触媒と選択的還元触媒の両方が、同一の基材上に設けられていることが好ましい。
【0056】
本発明の特定の実施様態では、この窒素貯蔵触媒が、第二のウォッシュコート層を含む触媒の部分とまた第二のウォッシュコート層を含まない触媒の部分で別の基材に含まれていてもよい。第三のウォッシュコート層をもつ本発明の実施様態では、この窒素貯蔵触媒が、第二のウォッシュコート層を含む触媒の部分の基材と第三のウォッシュコート層を含む触媒の部分で別の基材を含むことが好ましい。
【0057】
これらの実施様態に加えて、本発明はまた、本発明の酸化窒素貯蔵触媒を用いる自動車エンジン排ガスの処理方法に関する。より詳細には、本発明の方法は自動車エンジン排ガスをこの酸化窒素貯蔵触媒の上及び/又は中を通過させることからなるが、この自動車エンジン排ガスは酸化窒素貯蔵触媒中を通過させることが好ましい。
【0058】
したがって、本発明はまた、自動車エンジン排気ガスの処理方法であって、
(i)本発明の酸化窒素貯蔵触媒を設け、
(ii)自動車エンジン排ガス流をこの酸化窒素貯蔵触媒の上及び/又は中に通過させる方法に関する。
【0059】
本発明の方法では、この自動車エンジン排ガスが、ガソリンエンジンからのものであることが好ましく、直噴ガソリンエンジンからのものであることがより好ましい。使用の際、希薄運転期間と理論比/濃厚運転期間が交互にくるように、本発明の酸化窒素貯蔵触媒に接触させられる排ガス流は、希薄条件と理論比/濃厚運転条件との間に交互に調整される。もちろん、この排気を作るエンジンに供給する空気/燃料比を調整して、あるいは触媒的トラップの上流のガス流中に定期的に還元剤を注入して、処理する排ガス流を選択的に希薄としたり理論比/濃厚としたりすることができる。例えば、本発明の組成物は、エンジン排気の処理に好適であり、例えば連続的に希薄条件で運転するディーゼルエンジンの排気にも好適である。このような場合、理論比/濃厚運転時間を確保するために、少なくとも局所的に(酸化窒素貯蔵触媒のところで)理論比/濃厚条件を作るために、適当な還元剤、例えば燃料を本発明の酸化窒素貯蔵触媒の直ぐ上流の排気中に定期的に噴霧してもよい。部分希薄燃焼エンジン、例えば部分希薄燃焼ガソリンエンジンは、希薄条件と短い断続的な濃厚または理論比条件での運転の制御ができるように設計されている。
【0060】
したがって、本発明の方法によれば、自動車エンジンを定期的に希薄条件と濃厚条件の間で運転することが好ましい。
【0061】
上述の酸化窒素貯蔵触媒に加えて、本発明はまた、その製造方法に関する。特に、本発明はさらに、酸化窒素貯蔵触媒の製造方法であって、
(i)好ましくはハニカム基材である基材を供給する工程と;
(ii)該基材上に第一のウォッシュコート層を設ける工程(該第一のウォッシュコート層は、金属酸化物支持体粒子と、アルカリ土類金属化合物とアルカリ金属化合物、希土類金属化合物、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物を含み、
少なくとも該少なくとも一種の金属化合物の一部が金属酸化物支持体粒子上に担持されている)と;
(iii)該塗膜基板を乾燥及び/又は焼成する工程と;
(iv)Rhを含む第二のウォッシュコート層を第一のウォッシュコート層の表面の100−x%(xは20〜80の範囲、好ましくは25〜75、より好ましくは30〜70、より好ましくは35〜65、より好ましくは40〜60、より好ましくは45〜65、さらに好ましくは48〜52の範囲である)上に設ける工程と;
(v)該塗膜基板を乾燥及び/又は焼成する工程とからなる方法に関する。
【0062】
本発明の製造方法によれば、これらのウォッシュコート層が、先行技術で広く使われるいずれかの方法で基材上に設けられ、好ましくはこのウォッシュコート層が、浸漬塗工法で基材に塗工される。一般に、この好ましい浸漬塗装法は、目的のウォッシュコート層を形成するのに一度だけ行われるが、このウォッシュコート層の所望の負荷量を達成するために、必要なら何度も繰り返すこともできる。
【0063】
本発明の製造方法中で使われる乾燥手法に関して、この方法の温度と時間は、一般的には得られる乾燥生成物が塗工作業で用いた溶媒をまったく含まなくなるように選ばれる。
【0064】
本発明の製造方法で用いる焼成方法に関して、その温度と時間は、一般的には焼成プロセスで、典型的な化学的及び物理的変換を示す生成物が得られるように選ばれる。この焼成プロセスが行われる温度は、好ましくは450〜600℃の範囲であり、より好ましくは500〜580℃、さらに好ましくは540〜560℃の範囲である。この焼成プロセスはいずれか適当な雰囲気の下で行われるが、焼成は通常、空気下で行われる。
【0065】
本発明の製造方法では、この金属酸化物支持体粒子が、アルミナとジルコニア、ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物を含むことが好ましい。この金属酸化物支持体粒子が、ジルコニア−アルミナ及び/又はランタナ−アルミナを含むことがより好ましく、ジルコニア−アルミナを含むことがさらに好ましい。
【0066】
ある好ましい実施様態においては、本発明の製造方法の工程(II)は次の工程を含む。
(a)少なくとも一種の金属化合物の溶液を少なくとも一種の金属化合物の粒子と混合する工程と;
(b)この混合物を乾燥及び/又は焼成して複合材料を得る工程と;
(c)金属酸化物支持体粒子をPtを含む溶液で含浸させる工程と;
(d)金属酸化物支持体粒子をPdを含む溶液で含浸させる工程と;
(e)工程(c)と(d)で得られた粒子のスラリーを作り摩砕する工程と;
(f)工程(e)で得られる摩砕された粒子と工程(b)で得られる複合材料を含むスラリーを作り、その混合物を摩砕する工程と;
(g)工程(f)で得られるスラリーで基材を塗工する工程。
【0067】
本発明によれば、工程(f)のスラリーが実質的にRhを含まないことが好ましい。
【0068】
本発明の製造工程では、工程(a)で、溶液中の少なくとも一種の金属化合物と粒子状の少なくとも一種の金属化合物が同じ金属を含まないことがさらに好ましく、溶液中の少なくとも一種の金属化合物がBaを含み、粒子状の少なくとも一種の金属化合物がCeを含むことがより好ましく、上記粒子がセリアを含むことがさらに好ましい。
【0069】
工程(b)で用いる焼成方法に関して、そこで用いる温度は、好ましくは500〜800℃の範囲であり、より好ましくは600〜750℃、さらに好ましくは680〜720℃の範囲である。
【0070】
好ましい方法の工程(c)及び/又は(d)での金属酸化物支持体粒子の白金族金属含有溶液での含浸について、それぞれに含まれる白金族金属が金属酸化物支持体粒子上に効果的に担持されるのなら、この操作を公知の何れの方法でおこなってもよい。好ましくは、これがインシピエント・ウェットネス法で行われることが好ましい。
【0071】
本製造方法の他の実施様態においては、工程(c)と(d)の白金族金属を含む溶液を金属酸化物粒子と工程(b)で得られた複合材料と共に直接添加してスラリーを作り、これを次いで工程(e)で摩砕してもよい。したがって、本発明の他の好ましい実施様態では、工程(ii)が次の工程を含む。
【0072】
(a)少なくとも一種の金属化合物の溶液を少なくとも一種の金属化合物の粒子と混合する工程と;
(b)この混合物を乾燥及び/又は焼成して複合材料を得る工程と;
(f’)PtとPdと、金属酸化物支持体粒子と、工程(b)で得られた複合材料を含む溶液を含むスラリーを作り、得られる混合物を摩砕する工程と;
(g)基材を工程(f)で得られるスラリーで塗工する工程。
【0073】
本発明の製造工程の好ましい実施様態で用いられる摩砕手法について、この摩砕を、本発明で用いられる粒子の摩砕に適当な公知の何れの摩砕装置中で行うことができ、その際、粒子を粒子径(d90)が5〜20μmまで、好ましくは8〜14μmまで、より好ましくは9〜13μm、さらに好ましくは10〜12μmまで下げることのできる摩砕装置の使用が好ましい。
【0074】
本発明の方法の好ましい実施様態においては、摩砕用スラリーが作られ、それぞれのウォッシュコート層中の成分が基材の上に塗工される。一般に、好ましい本発明の方法の実施様態で用いられるスラリーは、先行技術から既知のいずれかの方法でいずれか適当な溶媒を用いて作ることができるが、その際、水系溶媒と特に水、好ましくは蒸留水の使用が好ましい。
【0075】
本発明の製造方法では、工程(iv)が以下の工程を含むことがさらに好ましい。
(aa)金属酸化物支持体粒子を、Rhを含む溶液で含浸させる工程と;
(bb)含浸粒子のスラリーを作り摩砕する工程と;
(cc)工程(bb)で得られるスラリーで基材を塗工する工程。
【0076】
上記好ましい実施様態の工程(aa)と(bb)と(cc)について、これらの工程がそれぞれ、工程(c)または(d)と同様に(工程(aa))、工程(e)と同様に(工程(bb))、工程(g)と同様に(工程(cc))行われること好ましい。
【0077】
ある好ましい実施様態においては、本発明はさらに次の工程を含む。
(vi)第一のウォッシュコート層の表面の少なくとも一部で第二のウォッシュコート層が設けられていないところに第三のウォッシュコート層を設ける工程と、
(vii)この塗装基板を乾燥及び/又は焼成する工程。
【0078】
また、上記の好ましい実施様態では、工程(vi)と(vii)を、本発明の製造方法の工程(v)の後でまたは工程(iii)の後で、工程(iv)の前で行ってもよい。
【0079】
また、特に好ましい実施様態においては、工程(vi)は以下の工程を含む。
(dd)金属酸化物支持体粒子をPdを含む溶液で含浸させる工程と;
(ee)含浸粒子のスラリーを造り摩砕する工程と;
(ff)工程(ee)で得られるスラリーで基材を塗工する工程。
【0080】
工程(aa)と(bb)と(cc)に関して、工程(dd)と(ee)と(ff)がそれぞれ、工程(c)と(d)と同様に(工程(dd))、工程(e)と同様に(工程(ee))、また工程(g)と同様に(工程(ff))行われることがより好ましい。
【0081】
好ましい本発明の製造方法の実施様態においては、工程(aa)及び/又は(dd)で、金属酸化物支持体粒子がインシピエント・ウェットネス法で含浸されることがより好ましい。また、工程(g)、(cc)及び/又は(ff)で、塗工が浸漬塗工で行われることが好ましい。
【0082】
さらに好ましい本発明の製造方法の実施様態においては、この基材がハニカム基材であり、その方法が以下の工程を含む。
(viii)交互にハニカム基材の入口端と出口端を閉鎖して、開放入口端をもつ流入流路と閉鎖された入口端と開放出口端をもつ出口端を設ける工程。
【0083】
本発明の方法では、工程(e)、(f)、(f)、(bb)及び/又は(ee)において、このスラリーを粒子径(d90)が5〜20μmとなるまで、好ましくは8〜14μm、より好ましくは9〜13μm、さらに好ましくは10〜12μmとなるまで摩砕することが特に好ましい。
【0084】
明確に説明していないが、本発明の酸化窒素貯蔵触媒の製造方法には、本発明の酸化窒素貯蔵触媒を得るのに明らかに必要な全ての特徴が、特にそこに含まれる各成分の種類や量と化学的及び物理的性質が含まれるものとする。
【0085】
さらに、本発明は、本発明の製造方法の生成物、特にその上記方法で得られる酸化窒素貯蔵触媒の化学的及び物理的性質に関する。したがって、本発明はまた、本発明の酸化窒素貯蔵触媒の製造方法で得られる酸化窒素触媒に関する。
【実施例】
【0086】
比較例1
NOxトラップ層の調整
BaCOとCeOを、重量比を1:4としてよく混合し細かく分散させた。このために、BaCO/CeO複合化物のBaCO含量が25重量%となるようにして、BET表面積が150m/gの酸化セリウムを酢酸バリウムの溶液と混合した。混合後、可溶性酢酸バリウムとCeOの懸濁液を次いで、120℃の温度で乾燥させ、酢酸バリウムとセリアの固体混合物を得た。
【0087】
乾燥後、この混合物を次いで700℃で2時間加熱してセリア粒子上に炭酸バリウムが担持されたセリア粒子を得た。得られたBaCOの平均結晶子径は約25nmであり、セリアの平均結晶子径は10nmであった。このBaCO/CeO複合化物は、平均径が約10ミクロンの粒子を与えた。この粒子状の混合物のBET表面積は50m/gである。
【0088】
触媒成分の調整
上述のように完全に配合されたNOx貯蔵触媒または触媒的トラップを得るために、セリアに担持された炭酸バリウムに加えて、以下の方法で耐火性酸化物に貴金属を担持させた。
【0089】
インシピエント・ウェットネス法でPtとRhをAlに含浸させて、1.8重量%のPtと0.3重量%のRhを得た。別途にPdをアルミナに担持させて、Pd負荷量を1.4重量%とした。いずれの場合も、このアルミナのBET表面積は200m/gであり、10重量%のジルコニアを含んでいた。
【0090】
1.65g/inのアルミナ担持Pt/Rhと0.4g/inのアルミナ担持Pdの混合物を製造した。含量が0.2g/inの酢酸ジルコニウムの溶液を添加し、固形分含量が45%のスラリーを得た。このスラリーをボールミルで摩砕して、粒子径を12ミクロン(d90)とした。このスラリーに酢酸マグネシウムを添加し、混合物を攪拌して溶解させ、0.6g/inの酸化マグネシウムを得た。この混合物に、3.4g/inのBaCO/CeO複合粒子を添加し、このスラリーをpHが6.5〜7で、粒子径が11ミクロン(d90)となるまで摩砕した。
【0091】
基材の塗装
浸漬塗装により上記スラリーをセラミックハニカム基材に塗工し、乾燥機中で乾燥させ、空気下で550℃の炉中で焼成した。次いで負荷量が6.3g/inとなるまでこの塗工方法を繰り返した。
【0092】
最後の酸化窒素貯蔵触媒の白金負荷量は72g/ftであり、ロジウム負荷量は3.6g/ft、パラジウム負荷量は14.4g/ftである。
【0093】
実施例2
本実施例の試料を、以下に述べるようにして第二層を追加して調整した。
【0094】
インシピエント・ウェットネス法でPtをAlに担持させて、1.8重量%のPtとした。別途にPdをアルミナに担持させてPd負荷量を0.2重量%とした。いずれの場合も、アルミナのBET表面積は200m/gであり、10重量%のジルコニアを含んでいた。
【0095】
1.5g/inのアルミナ担持Ptと0.4g/inアルミナ担持Pdの混合物を調整した。含量が0.15g/inの酢酸ジルコニウムの溶液を添加し、固形分含量が42%のスラリーを得た。このスラリーをボールミルで、粒子径が12ミクロン(d90)となるまで摩砕した。このスラリーに酢酸マグネシウムを添加し、攪拌して溶解させて、0.4g/inの酸化マグネシウムを得た。この混合物に、比較例1の方法で得られた3.3g/inのBaCO/CeO複合粒子を添加し、このスラリーをpHが5〜6で粒子径が11ミクロン(d90)となるまで摩砕した。
【0096】
基材の塗装
浸漬塗装によりこのスラリーをセラミックハニカム基材に塗工し、乾燥機中で乾燥させ、空気下で550℃の炉中で焼成した。負荷量が5.8g/inとなるまでこの塗装方法を繰り返した。
【0097】
第二層の調整
ある貴金属を、BET表面積が180m/gのアルミナに担持させる。このアルミナを20重量%のジルコニアでドープする。硝酸ロジウムをアルミナに含浸させて0.5重量%のRhとする。含浸後に、このアルミナスラリーを水で希釈して35%固体とする。酒石酸を用いてpHを3.5〜4に調整する。連続ミルを用いて、このスラリーを約12ミクロン(d90)にまで摩砕する。次いで、MEAを用いてpHを6.5に調整する。
【0098】
第二の層、または続く層を作るために、もう一度浸漬塗装によりこの塗膜基板にこのスラリーを塗工し、乾燥機中で乾燥させる。次いでこの基材を空気下で550℃の炉で焼成する。この塗装法により負荷量が0.5g/inの膜がもう一層できる。
【0099】
最終の上記の層を含む酸化窒素貯蔵触媒中の第1のウォッシュコート層及び第二のウォッシュコート層の総塗工重量は6.3g/inである。
【0100】
最終の酸化窒素貯蔵触媒の白金負荷量は70g/ftであり、ロジウム負荷量は4g/ft、パラジウム負荷量は10g/ftである。
【0101】
実施例3
本実施例の試料を、以下に述べるようにして第二層(本発明の「第三のウォッシュコート層」)を追加して調整した。
【0102】
インシピエント・ウェットネス法でPtをAlに担持させて1.8重量%のPtとした。別途にPdをアルミナに担持させてPd負荷量を0.2重量%とした。いずれの場合もアルミナのBET表面積は200m/gであり、10重量%のジルコニアを含んでいた。
【0103】
1.5g/inのアルミナ担持Ptと0.4g/inアルミナ担持Pdの混合物を調整した。含量が0.15g/inの酢酸ジルコニウム溶液を添加し、固形分含量が42%のスラリーを得た。このスラリーをボールミルで、粒子径が12ミクロン(d90)となるまで摩砕した。このスラリーに酢酸マグネシウムを添加し、攪拌して溶解させて、0.4g/inの酸化マグネシウムを得た。この混合物に、比較例1の方法で得られた3.3g/inのBaCO/CeO複合粒子を添加し、このスラリーをpHが5〜6で粒子径が11ミクロン(d90)となるまで摩砕した。
【0104】
基材の塗装
浸漬塗装によりこのスラリーをセラミックハニカム基材に塗工し、乾燥機中で乾燥させ、空気下で550℃の炉中で焼成した。負荷量が5.8g/inとなるまでこの塗装方法を繰り返した。
【0105】
第二層(本発明の「第三のウォッシュコート層」)の調整
ある貴金属を、BET表面積が180m/gのアルミナに担持させる。このアルミナを20重量%のジルコニアでドープする。硝酸パラジウムをアルミナに含浸させて0.5重量%のPdとする。含浸後にこのアルミナスラリーを水で希釈して35%固体とする。酒石酸を用いてpHを3.5〜4に調整する。連続ミルを用いて、このスラリーを約12ミクロン(d90)まで摩砕する。次いでMEAを用いてpHを6.5に調整する。
【0106】
第二の層、または続く層を作るために、この塗膜基板をもう一度浸漬塗装によりこのスラリーを塗工し、乾燥機中で乾燥させる。次いでこの基材を空気下で550℃の炉で焼成する。この塗装法により、負荷量が0.5g/inの膜がもう一層できる。
【0107】
最終の酸化窒素貯蔵触媒中の第1のウォッシュコート層及び第二のウォッシュコート層の総塗工重量は6.3g/inである。
【0108】
最終の酸化窒素貯蔵触媒の白金負荷量は70g/ftであり、パラジウム負荷量は10g/ftである。
【0109】
実施例4
実施例2と3をそれぞれ繰り返した。ハニカム基材の縦に伸びる流路の50%が覆われるように、第一層塗膜の50%のみの上に実施例2の第二層塗膜を形成し、またハニカム基材の裏面の50%が覆われるように実施例3の第二層塗膜(本発明の「第三のウォッシュコート層」)を実施例2の第二層塗膜で覆われていない第一層塗膜の残る50%の上に形成した。
【0110】
この最終の酸化窒素貯蔵触媒の、実施例2の第二層塗膜を含む触媒の前面でのロジウム負荷量は4g/ftであり、実施例3の第二のウォッシュコート層(本発明の「第三のウォッシュコート層」)を含む触媒の断面におけるそれは0g/ftであり、触媒中のロジウムの総負荷量は2g/ftである。実施例2の第二層塗膜を含む触媒の前面のパラジウム負荷量は10g/ftであり、実施例3の第二のウォッシュコート層(本発明の「第三のウォッシュコート層」)を含む触媒の断面のそれは17g/ftであり、触媒中のパラジウムの総負荷量は13.5g/ftである。
【0111】
実施例5
実施例2と比較例1(違い:Rhでの含浸なし)をそれぞれ繰り返した。ハニカム基材の縦に伸びる流路の前面の50%が実施例2で覆われるように実施例2の層塗膜を、ハニカム基材の50%に施し、ハニカム基材の裏面の50%が覆われるように、変更比較例1の単層塗膜を、実施例2の層塗膜で覆われていないハニカム基材の50%に施した。
【0112】
NOx貯蔵容量の試験
以下のように、800℃で25時間養生後に触媒的トラップを評価した。エンジンを、所望の温度で2分間空気/燃料比が11.6となるように設定して、触媒から貯蔵したNOxと酸素の全てを吐き出させた。このモードは、濃厚エンジン運転である。次いで、一定のNOx質量流下でこのエンジンの空気/燃料比を29.6とした。このモードは希薄エンジン運転である。全試験中、NOx測定装置を用いてNOxトラップの前後でNOx濃度を測定した。
【0113】
【数1】
【0114】
2分間の濃厚運転を行い、その後希薄運転を行った(尾筒で(即ちNOxトラップの後ろで)100ppmのNOxあるいは40ppmのNOxの濃度が測定されると停止する)。その場合、貯蔵したNOxを除くたにエンジンを濃厚条件で運転している。尾筒からの炭化水素と一酸化炭素の排出は、尾筒のHEGOセンサーで防止した。HEGO電圧が450mVを越えるとエンジンを再度希薄エンジン運転に切り替える。この希薄/濃厚サイクルを10回繰り返して一定の触媒条件を確立した。10希薄/濃厚サイクルの期間のNOx効率を、NOx入口濃度とNOx出口濃度から式(1)により計算する。NOx貯蔵量は式(2)で計算される:
【0115】
【数2】
NOx:NOx濃度(ppm)
V:体積流(m/h)
ideal:STPでの理想モル体積(l/mol)
Ms:NOの分子量(g/mol) dt:時間間隔(s)
【0116】
10回の希薄/濃厚サイクルの後、エンジンを1分間濃厚状態で運転して貯蔵したNOxを完全に除いた。次いでこのエンジンを希薄条件下でNOxがトラップに貯蔵されなくなるまで運転した。これらの条件下で、全体としてのNOx貯蔵容量が評価される。しかしながら、80%を越えるNOx変換を達成するためには、高いNOx効率のNOx貯蔵容量が極めて重要である。
【0117】
上記の結果から明らかなように、本発明の酸化窒素触媒は、例えば比較例1のような先行技術の酸化窒素貯蔵触媒と較べて改善されたNOx貯蔵変換効率を示す。特に図1図2から明らかなように、本発明の第一と第二のウォッシュコート層、また第一と第三のウォッシュコート層を形成すると、酸化窒素貯蔵触媒のNOx貯蔵効率と変換効率の両方が改善され、特に通常自動車排ガス処理プロセスの開始時に遭遇する「冷間始動」条件を反映する低温でこれらが改善される。
【0118】
したがって図1から明らかなように、酸化窒素貯蔵材料を含む第一のウォッシュコート層に加えて、Rhを含む第二のウォッシュコート層をもつ酸化窒素貯蔵触媒(実施例2)またはPdを含む第三のウォッシュコート層をもつ酸化窒素貯蔵触媒(実施例3)は、それぞれ、単一のウォッシュコート層をもつ比較例1のNOx貯蔵触媒と較べて明確なNOx変換効率の改善をもたらす。この改善は、特に試験プロセスの低温で、自動車排ガス処理の典型的な「冷間始動」環境を再現している低温で顕著である。これは、Rhを含むトップコートをもつ実施例2で顕著である。
【0119】
また図2からわかるように、比較例1のNOx貯蔵触媒の性能と比較して、同じことが、実施例2と3のNOx貯蔵触媒のNOx貯蔵容量に当てはまる。
【0120】
しかしながら、最も興味のあることに、図3〜6からわかるように、実施例2と3のNOx貯蔵触媒の設計を複合したものであって、特に小さな総Rh負荷量を達成する実施例4の酸化窒素貯蔵触媒は、驚くべきことにRh総負荷量がほぼ2倍多い比較例1のNOx貯蔵触媒と較べて、NOx変換とNOx貯蔵の両方でより高い効率を示す。最も重要なのは、上記の改善された効率が、自動車排気ガス処理の「冷間始動」環境を反映する低い試験温度で特に大きなことである。
【0121】
したがって、実施例4の試験から明らかなように、本発明の酸化窒素貯蔵触媒により自動車排ガス触媒性能の酸化窒素の削減の面での改善が、特に重要な「冷間始動」条件での改善が可能となり、またその性能に必要な白金族金属の量の、特にそこに含まれるRhの量の大きな低下が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6