【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1 ハードキャンデーの油脂配合量検討
【0028】
砂糖47.5〜27.5重量%、水あめ47.5〜27.5重量%、食用油脂(上昇融点33.5〜38.5℃)0〜40.0重量%、乳化剤(蔗糖脂肪酸エステル;HLB5)0.1重量%および適量の水をコイルクッカーに投入して155℃で煮詰めた後、真空釜に移して0.0213MPa(絶対圧表記, 絶対真空0MPaとした場合)の減圧条件下におき、水分含量約3%のキャンデー生地を調製した。前記キャンデー生地に果汁・酸味料・香料・色素 計4.9重量%を添加して混合した。混合後のキャンデー生地をロープ成形し、さらにスタンピングラインで成型してハードキャンデーを調製した。なお、原料の砂糖と水あめは同重量として、他配合成分と合わせて100重量%となるように調整した。
【0029】
調製したハードキャンデーの製造適性および舐め心地を評価した。製造適性は、加熱濃縮工程で油脂が分離することがなくキャンデー生地が調製可能であるか、キャンデー生地を各製造工程に移送する際に配管中につまりが発生することなく移送が可能であるか、ロープ成形する際にひび割れや油分離等が発生することなく成型が可能か、という点を観察して評価した。舐め心地の評価は、得られたハードキャンデーを12名のパネラーが試食することにより行われた。評価結果は、ぬるぬる感を認識したパネラーが80%以上を「○」、30%以上を「△」、30%未満を「×」の3段階とした。結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1の結果から、油脂配合量が0.5重量%未満のハードキャンデーはぬるぬる感がある舐め心地が得難かった。ハードキャンデー中の油脂配合量1.0重量%以上でぬるぬる感がある舐め心地が得られるようになり、3.0重量%以上では8割以上のパネラーがぬるぬる感を明確に認識できるようになった。すなわち、油脂配合量1.0〜30.0重量%、好ましくは3.0〜30.0重量%とすることにより、マンゴー果実のようなぬるぬる感がある舐め心地が得られるハードキャンデーが得られることが示された。
【0032】
ハードキャンデー中の油脂配合量が2.0重量%未満の場合は製造適性に特に問題はみられなかった。しかしながら、油脂配合量が3.0重量%を超えるとロープ成形時のキャンデー生地にひび割れが発生し、30.0重量%を超えると加熱濃縮後に冷却する段階で油が分離するため製造は著しく困難となり、40.0重量%では加熱濃縮中に油が分離してしまうためハードキャンデーを製造することができなかった。
【0033】
実施例2 ハードキャンデーの油脂種類検討
【0034】
砂糖46.0重量%、水あめ46.0重量%、食用油脂3.0重量%、乳化剤(蔗糖脂肪酸エステル;HLB5)0.1重量%および適量の水を手鍋に入れ、150℃で煮詰めて水分含量約3%のキャンデー生地を調製した。食用油脂は、低融点油脂(上昇融点18〜22℃)、高融点油脂A(上昇融点33.5〜38.5℃)、高融点油脂B(上昇融点37〜39℃)を用いた。前記キャンデー生地に果汁・酸味料・香料・色素 計4.9重量%を添加して混合した。混合後のキャンデー生地を70〜80℃まで徐冷し、押圧成型してハードキャンデーを調製した。
【0035】
調製したハードキャンデーの外観および舐め心地を評価した。舐め心地は、ぬるぬる感が得られたものを「○」、ぬるぬる感が得られなかったものを「×」とした。結果を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
表2の結果から、上昇融点が22℃以下の油脂を配合したハードキャンデーは、ぬるぬる感がある舐め心地を得ることができなかった。上昇融点が33.5℃以上の油脂を配合したハードキャンデーは、ぬるぬる感がある舐め心地が得られた。果実のようなぬるぬる感がある舐め心地が得られるハードキャンデーは、上昇融点33.5〜39.0℃の食用油脂を配合することにより得られることが示された。
【0038】
実施例3 ハードキャンデーの糖類・乳化剤配合検討
【0039】
表3に記載した果汁・酸味料・香料・色素を除く原料および適量の水をコイルクッカーに投入して155℃で煮詰めた後、真空釜に移して0.0213MPa(絶対圧表記, 絶対真空0MPaとした場合)の減圧条件下におき、水分含量約3%のキャンデー生地を調製した。前記キャンデー生地に果汁・酸味料・香料・色素を添加して混合した。混合後のキャンデー生地をロープ成形し、さらにスタンピングラインで成型してハードキャンデーを調製した。
【0040】
調製したハードキャンデーの舐め心地および製造適性を評価した。製造適性の評価はロープ成形時のひび割れ発生の有無を観察し、ひび割れがなく良好な成形が可能な場合を「◎」、ひび割れがなく成形が可能な場合を「○」、ひび割れが見られるが成形は可能な場合を「△」、ひび割れが発生して製造が困難な場合を「×」とした。舐め心地(ぬるぬる感)の評価は、ぬるぬる感が得られたものを「◎」、ぬるぬる感が得られなかったものを「×」とした。舐め心地(表面滑らかさ)の評価は、口中で表面の滑らかさが特に強く感じられたものを「◎」、表面の滑らかさが感じられたものを「○」、ややざらつきが感じられたものを「△」、ざらつきが特に強く感じられたものを「×」とした。一部試験区については、ハードキャンデー表面のSEM写真を撮影した。製造適性の評価結果を表3に、ハードキャンデー表面のSEM写真を
図1〜3に示した。
【0041】
【表3】
【0042】
注1;フジオリゴ#360(日本食品化工株式会社);マルトトリオース60.7%含有
注2;カップリングシュガー(林原商事);マルトトリオース7.5%、グルコシルシュクロース20.0%含有
【0043】
表3の結果から、乳化剤として蔗糖脂肪酸エステルのみを使用した油脂高含有ハードキャンデーは、配合量を0.1〜0.3重量%としても、ロープ成形時のひび割れの発生を充分に抑えることはできなかった(配合A〜C)。配合Dのハードキャンデー表面(
図1)と、配合Aおよび配合Iのハードキャンデー表面(
図2、
図3)とを比較すると、蔗糖脂肪酸エステルとポリソルベートの2種の乳化剤を併用した配合Dのハードキャンデー(
図1)の方が、凹凸が少なくてなめらかな表面であった。これは、配合Dのハードキャンデーにおいては、水系のキャンデー層中に存在する油滴が均一に分散されて安定な状態になっているためと考えられる。
【0044】
2種の乳化剤を併用したハードキャンデーについて、さらに水あめの一部を3糖類が主成分の糖類に置き換えたところ、ロープ成形時のひび割れが抑制されて、これまでに得られなかった良好な品質のハードキャンデーを製造することができた(配合E〜H)。
【0045】
これらの結果から、高融点の油脂(上昇融点33.5〜38.5℃)を3.0重量%以上配合したハードキャンデーについて、乳化剤として蔗糖脂肪酸エステル(HLB5)およびポリソルベート(HLB16.7)、3糖類(マルトトリオース、又は、グルコシルシュクロース)が主成分の糖類を配合することにより、ロープ成形時のひび割れが抑制されて表面が滑らかな製品が得られることが示された。
【0046】
実施例4 ハードキャンデーの糖組成
【0047】
実施例3の表3に記載された配合Aおよび配合D〜Hのハードキャンデーの糖組成を比較した。結果を表4に示した。
【0048】
【表4】
【0049】
表4の結果から、実施例3で示された良好な品質のハードキャンデーの糖組成において、全糖成分中に3糖類(マルトトリオース、および/又は、グルコシルシュクロース)は8.1%以上含有していることが示された。また、前記ハードキャンデー中に含まれる3糖類の含量は6.5重量%以上であることが示された。