【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物である。
【0010】
【化1】
【0011】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立し、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換されていてもよいフェニル基を示す。R
3及びR
4は、それぞれ独立し、置換されていてもよい炭素数0〜6のアルキレン基を示す。X
1及びX
2は、それぞれ独立し、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換されていてもよいフェニル基を示す。R
5及びR
6は、それぞれ独立し、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、若しくは、−QX
3(Qは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、X
3は、置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいフェノキシ基を示す)を示すか、又は、R
5及びR
6が共通の基となることにより環状構造となった置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基若しくは置換されていてもよいフェニレン基を示す。Yは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、又は、ハロゲン原子を示す。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
非水電解液二次電池等の電極における電気化学的還元に対する非水電解液用添加剤の適応性の指標として、例えば、「Geun−Chang,Hyung−Jin kim,Seung−ll Yu,Song−Hui Jun,Jong−Wook Choi,Myung−Hwan Kim.Journal of The Electrochemical Society,147,12,4391(2000)」には、非水電解液用添加剤を構成する化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギーのエネルギー準位を用いる方法が報告されている。このような文献では、LUMOエネルギーが低い化合物ほど優れた電子受容体であり、非水電解液二次電池等の電極表面上に安定なSEIを形成することができる非水電解液用添加剤になるとされている。従って、化合物のLUMOエネルギーを測定することにより、該化合物が非水電解液二次電池等の電極表面上に安定なSEIを形成する性能を有するかどうかを容易に評価することができ、この方法が現在では非常に有用な手段となっている。
本発明者らは、前記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示し、かつ、化学的に安定であることを見出した。そこで本発明者らは、該リン含有スルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を非水電解液に用い、更に該非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明は、前記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物である。
前記式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立し、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換されていてもよいフェニル基を示す。
前記式(1)中、R
1及びR
2の少なくとも1つがアルキル基である場合、R
1及びR
2で示されるアルキル基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R
1及びR
2で示されるアルキル基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0014】
前記式(1)中、R
1及びR
2で示される、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルエチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられる。なかでも、エチル基であることが好ましい。
また、R
1及びR
2で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0015】
前記式(1)中、R
1及びR
2の少なくとも1つが置換されていてもよいフェニル基である場合、該置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−(ジメチルアミノ)フェニル基、3−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すことから、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
【0016】
前記式(1)中、R
3及びR
4は、それぞれ独立し、置換されていてもよい炭素数0〜6のアルキレン基を示す。R
3及びR
4で示されるアルキレン基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R
3及びR
4で示されるアルキレン基の炭素数の好ましい上限は3である。
なお、前記式(1)中、R
3及びR
4について「炭素数0のアルキレン基である」とは、R
3やR
4と結合している窒素がX
1やX
2と直接結合していることを意味する。
【0017】
前記式(1)中、R
3及びR
4で示される、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、1−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、n−ペンチレン基、n−へキシレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基であることが好ましい。
また、R
3及びR
4で示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0018】
前記式(1)中、X
1及びX
2は、それぞれ独立し、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換されていてもよいフェニル基を示す。
前記式(1)中、X
1及びX
2の少なくとも1つが置換されていてもよいアルキル基である場合、X
1及びX
2で示されるアルキル基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。X
1及びX
2で示されるアルキル基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0019】
前記式(1)中、X
1及びX
2で示される、炭素数1〜6のアルキル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。
また、X
1及びX
2で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0020】
前記X
1及びX
2の少なくとも1つが置換されていてもよいフェニル基である場合、該置換されていてもよいフェニル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すことから、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
【0021】
前記式(1)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立し、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、若しくは、−QX
3(Qは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、X
3は、置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいフェノキシ基を示す)を示すか、又は、R
5及びR
6が共通の基となることにより環状構造となった置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基若しくは置換されていてもよいフェニレン基を示す。
【0022】
前記式(1)中、R
5及びR
6の少なくとも1つが置換されていてもよいアルキル基である場合、R
5及びR
6で示されるアルキル基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。R
5及びR
6で示されるアルキル基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0023】
前記式(1)中、R
5及びR
6で示される、炭素数1〜6のアルキル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。
また、R
5及びR
6で示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0024】
前記式(1)中、R
5及びR
6の少なくとも1つが−QX
3(Qは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、X
3は、置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいフェノキシ基を示す)である場合において、前記Qで示されるアルキレン基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。Qで示されるアルキレン基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0025】
前記Qで示されるアルキレン基としては、前記R
3及びR
4について記載したものと同様のものが挙げられる。
また、Qで示されるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0026】
前記X
3が置換されていてもよいフェニル基である場合、該置換されていてもよいフェニル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すことから、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
【0027】
前記X
3が置換されていてもよいフェノキシ基である場合、該置換されていてもよいフェノキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−エチルフェノキシ基、3−エチルフェノキシ基、4−エチルフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、2−エトキシフェノキシ基、3−エトキシフェノキシ基、4−エトキシフェノキシ基、2−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、3−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、4−(ジメチルアミノ)フェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すことから、フェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基であることが好ましい。
【0028】
前記式(1)中、R
5及びR
6が共通の基となることにより、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基となる場合、前記アルキレン基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。前記アルキレン基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0029】
前記R
5及びR
6が共通の基となることによるアルキレン基としては、前記R
3及びR
4について記載したものと同様のものが挙げられる。
また、前記R
5及びR
6が共通の基となることによるアルキレン基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0030】
前記式(1)中、R
5及びR
6が共通の基となることにより、置換されたフェニレン基となる場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0031】
前記式(1)中、Yは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、又は、ハロゲン原子を示す。
Yで示される、炭素数1〜6のアルキル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。
また、Yで示されるアルキル基が置換されている場合、ハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0032】
前記式(1)中、Yが置換されていてもよいフェニル基である場合、該置換されていてもよいフェニル基としては、前記R
1及びR
2について記載したものと同様のものが挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すことから、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
【0033】
前記式(1)中、Yがハロゲン原子である場合、該ハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。
【0034】
前記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物としては、なかでも、特に化学的に安定であり、SEIを形成した場合に電解液の分解等による電池の劣化を防止することができ、かつ、低いLUMOエネルギーを示すこと等により、下記式(2)、(3)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物が好ましい。
【0035】
【化2】
【0036】
式(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、X
2、及び、Yは、それぞれ前記式(1)におけるR
1、R
2、R
3、R
4、X
1、X
2、及び、Yと同じ原子又は基を示す。
【0037】
【化3】
【0038】
式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4、X
1、X
2、及び、Yは、それぞれ式(1)におけるR
1、R
2、R
3、R
4、X
1、X
2、及び、Yと同じ原子又は基を示す。R
7及びR
8は、それぞれ独立し、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、−QX
3(Qは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、X
3は、置換されていてもよいフェニル基又は置換されていてもよいフェノキシ基を示す)を示す。
【0039】
前記式(3)のR
7及びR
8における置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、Qにおける置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、並びに、X
3における置換されていてもよいフェニル基及び置換されていてもよいフェノキシ基としては、前記式(1)におけるR
5及びR
6について挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0040】
前記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物を製造する方法としては、例えば、ブロモ酢酸と亜リン酸トリアルキルとを反応させた後、クロロスルホン酸と反応させ得られたものを、更にアミンと反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
例えば、前記式(2)において、R
1がエチル基、R
2がエチル基、R
3がメチレン基、R
4がメチレン基、X
1がエチル基、X
2がエチル基、Yが水素で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物を製造する場合は、ブロモ酢酸と亜リン酸トリエチルとを反応させた後、クロロスルホン酸と反応させ得られたものを、更にN,N’−ジエチルメチレンジアミンと反応させる方法を用いることができる。
また、前記式(3)において、R
1がエチル基、R
2がエチル基、R
3がメチレン基、R
4がメチレン基、R
7がメチル基、R
8がメチル基、X
1がフェニル基、X
2がフェニル基、Yが水素で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物を製造する場合は、ブロモ酢酸と亜リン酸トリエチルとを反応させた後、クロロスルホン酸と反応させ得られたものを、更にベンジルメチルアミンと反応させる方法を用いることができる。
【0042】
本発明のリン含有スルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤もまた、本発明の1つである。本発明のリン含有スルホン酸アミド化合物は、化学的に安定であり、SEI被膜を形成した場合に電解液の分解等による電池の劣化を防止することができ、かつ、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示す。
更に、本発明のリン含有スルホン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を用いることにより、例えば、電解質としてLiPF
6を用いた場合、LiPF
6の分解反応によって生じるPF
5が起因とされるガスの発生等を抑制する効果もあると考えられる。その理由は詳らかではないが、PF
5が本発明のリン含有スルホン酸アミド化合物の有する>P=Oと配位することから、PF
5の活性化を抑制し、電池特性を更に向上させることができると考えられる。
また、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、非水電解液に含有され非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる。
【0043】
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
【0044】
本発明の非水電解液における本発明の非水電解液用添加剤の含有量(即ち、前記式(1)で表されるリン含有スルホン酸アミド化合物の含有量)は特に限定されないが、好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%未満であると、非水電解液二次電池等に用いた場合に電極表面での電気化学反応によって安定なSEIを充分に形成できないおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が10質量%を超えると、溶解しにくくなるだけでなく非水電解液の粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に充放電特性等に支障をきたすおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量のより好ましい下限は0.01質量%である。
【0045】
前記非水溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等の環状カーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等の脂肪族カルボン酸エステルや、γ−ブチロラクトン等のラクトンや、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等のラクタムや、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等の環状エーテルや、1,2−エトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテルや、スルホラン等のスルホンや、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等のハロゲン誘導体等が挙げられる。これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合してもよい。
【0046】
前記非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒が好適である。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの中でも、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ1種以上混合することがより好ましい。
【0047】
前記電解質としては、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩が好ましい。なかでも、LiAlCl
4、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4、LiAsF
6、及び、LiSbF
6からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、LiBF
4、LiPF
6であることがより好ましく、LiPF
6が更に好ましい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記LiPF
6が用いられる場合、非水溶媒としては、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ1種以上混合することが好ましく、炭酸エチレン及び炭酸ジエチルを混合することがより好ましい。
【0048】
本発明の非水電解液における前記電解質の濃度は特に限定されないが、好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。前記電解質の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に充放電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に充放電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度のより好ましい下限は0.5mol/L、より好ましい上限は1.5mol/Lである。
【0049】
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイスもまた、本発明の1つである。蓄電デバイスとしては、非水電解液二次電池や電気二重層キャパシタ等がある。これらの中でもリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタが好適である。
図1は、本発明にかかる非水電解液二次電池の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、非水電解液二次電池1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
【0050】
本発明にかかる非水電解液二次電池において、正極集電体2及び負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
【0051】
本発明にかかる非水電解液二次電池において、正極活物質層3に用いる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、例えば、LiMnO
2、LiFeO
2、LiCoO
2、LiMn
2O
4、Li
2FeSiO
4、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、LiFePO
4等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0052】
本発明にかかる非水電解液二次電池において、負極活物質層6に用いる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料や、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、及び酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
本発明にかかる非水電解液二次電池において、セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。なお、本実施形態においては、非水電解液二次電池を例示したが、これに限定されることはなく、本発明は、その他の電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスにも適用できる。