特許第5877239号(P5877239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5877239外部電極用導電性ペースト、及びそれを用いて形成した外部電極を備えた積層セラミック電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877239
(24)【登録日】2016年1月29日
(45)【発行日】2016年3月2日
(54)【発明の名称】外部電極用導電性ペースト、及びそれを用いて形成した外部電極を備えた積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20160218BHJP
   H01G 4/232 20060101ALI20160218BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20160218BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20160218BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20160218BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20160218BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20160218BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301B
   C08L63/00 C
   C08K3/08
   C08L83/04
   C08L27/12
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-260959(P2014-260959)
(22)【出願日】2014年12月24日
(62)【分割の表示】特願2010-104884(P2010-104884)の分割
【原出願日】2010年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-111576(P2015-111576A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 仙一
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 広龍
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−162771(JP,A)
【文献】 特開2003−313427(JP,A)
【文献】 特開平06−267784(JP,A)
【文献】 特開平04−342903(JP,A)
【文献】 特開平08−097527(JP,A)
【文献】 特開2002−203737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00、1/20、1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極に連結された第1導体層と、第1導体層の上に積層される第2導体層とを有する外部電極の第2導体層を形成するための外部電極用導電性ペーストであって、
(A)金属粒子と、
(B)熱硬化性樹脂と、
(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子と
を含み、(B)成分の熱硬化性樹脂が、エポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂と、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、キシレン樹脂又はアリルフェノール樹脂から選択される一種又は二種以上のフェノール樹脂とを重量比4:1〜1:4で含み、(A)金属粒子100重量部に対して、(B)成分と(C)成分の合計量が10〜45重量部である、外部電極用導電性ペースト。
【請求項2】
(C)成分の平均粒子径が1〜6μmである、請求項1記載の外部電極用導電性ペースト。
【請求項3】
(A)成分が、銀粒子である、請求項1又は2記載の外部電極用導電性ペースト。
【請求項4】
(A)成分が、球状銀粒子とフレーク状銀粒子からなり、球状銀粒子とフレーク状銀粒子の比率が30:70〜70:30である、請求項1〜3のいずれか一項記載の外部電極用導電性ペースト。
【請求項5】
(A)成分100重量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計量が、15〜35重量部である、請求項1〜4のいずれか一項記載の外部電極用導電性ペースト。
【請求項6】
内部電極に連結された第1導体層と、第1導体層の上に積層される、請求項1〜5のいずれか一項記載の外部電極用導電性ペーストを用いて形成される第2導体層とを有する外部電極を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項7】
90mm2点間支持にて、中央部分を変位速度1mm/秒で加圧し、基板を10mmたわませるベンディングテスト後の容量低下率が、10%以下である、請求項6記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部電極に連結された第1導体層と、第1導体層の上に積層される第2導体層とを有する外部電極の第2導体層を形成するための外部電極用導電性ペースト、及びそれを用いて形成した第2導体層と、第1導体層を含む外部電極を備えた積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層セラミック電子部品について、図1に示す積層セラミックコンデンサを例にとって、説明する。積層セラミックコンデンサ1は、セラミック誘電体2と内部電極層3とを交互に積層したセラミック複合体の内部電極取り出し面に外部電極層4を備えた構造を有する。典型的には、外部電極は、外部電極層4の上に、メッキ処理層5が施された構造を有する。メッキ処理層5は、典型的には、ニッケルメッキ層、さらにスズメッキ層からなる。
【0003】
積層セラミックコンデンサを回路基板7に実装する際には、積層セラミックコンデンサの外部電極と回路基板の配線電極とをハンダ付けにより接続する。このような構造に起因して、積層セラミックコンデンサを実装した回路基板に外力がかかったり、回路基板がたわんだりすると、ハンダ付け層6を介して、積層セラミックコンデンサに応力が伝わることになる。この応力により、外部電極とセラミック複合体が剥離したり、セラミック複合体にクラックが発生し、これらが電子機器の故障を引き起こす懸念があった。そのため、応力の緩和に優れた外部電極の開発が課題となっていた。
【0004】
外部電極にかかる応力の緩和のための方法として、積層コンデンサの内部電極に連結された外部電極の第1導体層11の上に、緩衝材として樹脂を含む第2導体層12を積層した、複数の層からなる外部電極を構成する(図2参照)ことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、柔軟性を有する樹脂を含む第2導体層が外部電極にかかる応力を吸収することにより、外部電極への応力緩和を図るものであるが、振動や衝撃がかかる用途においては、一層の改善が求められる。
【0005】
内部電極に連結された第1導体層の上に積層する、応力緩和のための樹脂を含む第2導体層を形成する導電性ペーストとして、金属粒子にエポキシ樹脂を配合した導電性ペーストが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。しかしながら、エポキシ樹脂は弾性率が高く、回路基板に外力がかかった際の応力の緩和に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−144665号公報
【特許文献2】特開平11−162771号公報
【特許文献3】特開平11−219849号公報
【特許文献4】特開2002−246258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、内部電極に連結された第1導体層の上に積層する第2導体層を形成するための導電性ペーストとして、特定の導電性ペーストを用いることにより、応力の緩和に優れた外部電極が得られ、応力が負荷された場合であっても、外部電極とセラミック複合体とが剥離したり、セラミック複合体にクラックが発生したりすることを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部電極に連結された第1導体層と、第1導体層の上に積層される第2導体層とを有する外部電極の第2導体層を形成するための外部電極用導電性ペーストであって、(A)金属粒子と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子とを含み、(B)成分の全熱硬化性樹脂の少なくとも70重量%がエポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂である、外部電極用導電性ペーストに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外部電極用導電性ペーストを第2導体層用の導電性ペーストとして用いて、内部電極に連結された第1導体層の上に樹脂を含む第2導体層を積層し、外部電極を構成することにより、曲げ弾性率が低く、応力の緩和に優れた外部電極が得られ、応力が負荷された場合であっても、外部電極とセラミック複合体とが剥離したり、セラミック複合体にクラックが発生したりすることを抑制できる。また、本発明の外部電極用導電性ペーストを用いて構成した第2導体層を有する外部電極は、経時的に曲げ弾性率を保持し、応力の緩和に優れた状態を維持することができる。本発明の外部電極用導電性ペーストを用いて第2導体層を形成し、外部電極を第1導体層及び第2導体層を有する構成とすることにより、信頼性が高い積層セラミック電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来の積層セラミックコンデンサの構造を示す模式図である。
図2】内部電極に連結された第1導体層の上に樹脂を含む第2導体層を積層した、複数の導体層で構成された外部電極を備えた、セラミックコンデンサの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「第1導体層」とは、外部電極を構成する導体層であって、内部電極に直接連結された導体層を指す。また、「第2導体層」とは、外部電極を構成する導体層であって、第1導体層の上に積層された導体層を指す。
【0012】
本発明の外部電極用導電性ペーストは、(A)金属粒子と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子とを含み、(B)成分の全熱硬化性樹脂の少なくとも70重量%がエポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂である。以下、成分(A)〜(C)について詳説する。
【0013】
(A)金属粒子
金属粒子は、外部電極に導電性を付与するための成分であり、融点が700℃以上であるものが挙げられる。金属粒子の融点は、好ましくは800℃以上である。融点の上限は、特に限定されないが、通常、1800℃以下であり、1600℃以下が好ましい。金属粒子は、単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0014】
金属粒子としては、Ag、Cu、Ni、Pd、Au及びPtの金属粒子が挙げられる。優れた導電性が比較的容易に得られることから、Agの金属粒子が好ましい。
【0015】
また、Ag、Cu、Ni、Pd、Au及びPtの合金が挙げられ、これらのうち融点が700℃以上の金属粒子が好ましい。優れた導電性が比較的容易に得られることから、Ag合金の粒子が好ましい。
【0016】
合金の粒子としては、Ag、Cu、Ni、Pd、Au及びPtからなる群より選ばれる2種以上の元素で構成される合金の金属粒子が挙げられ、2元系のAg合金としては、AgCu合金、AgAu合金、AgPd合金、AgNi合金等が挙げられ、3元系のAg合金としては、AgPdCu合金、AgCuNi合金等が挙げられる。
【0017】
さらに、合金の粒子としては、Ag、Cu、Ni、Pd、Au及びPtから選ばれる1種以上の元素と他の1種以上の元素で構成される合金の金属粒子が挙げられ、これらのうち合金としての融点が700℃以上の金属粒子が好ましい。他の元素としては、Zn、Al、Snが挙げられ、SnとAgとの2元系の合金の場合、SnとAgの重量比が、25.5:74.5よりもAgの比率が多いAgSn合金を使用することができる。
【0018】
また、金属粒子としては、Sn、In及びBiの融点が200℃以上700℃未満である低融点の金属粒子を用いることができる。低融点金属粒子は、非Pbであることが好ましい。
【0019】
さらに、低融点の金属粒子としては、Sn、In及びBiの合金であって、融点が200℃以上700℃未満である合金の金属粒子を用いることもできる。優れた導電性が比較的容易に得られることから、Sn合金が好ましい。合金の粒子としては、Sn、In及びBiからなる群より選ばれる2種以上の元素で構成される合金の金属粒子が挙げられ、2元系の合金としては、SnIn合金が挙げられる。
【0020】
金属粒子の形状は、球状、フレーク状、りん片状、針状等、どのような形状のものであってもよい。これらの平均粒子径は、印刷又は塗布の後の表面状態が良好で、また、形成した電極層に優れた導電性を付与できることから、0.015〜30μmが好ましい。金属粒子が球状である場合、平均粒子径は0.2〜5μmの範囲であることがより好ましい。また、金属粒子がフレーク状である場合、平均粒子径は5〜30μmの範囲であることがより好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径とは、球状の場合は粒子径、フレーク状の場合は最長部の径、りん片状の場合は粒子薄片の長径、針状の場合は長さのそれぞれ平均をいう。ここで、金属粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して画像解析により求めた値とする。
【0021】
金属粒子は、(A1)球状の銀粒子と、(A2)フレーク状の銀粒子を併用することが好ましい。(A1)と(A2)の銀粒子は、重量比で、10:90〜90:10であることが好ましい。球状銀粉とフレーク状銀粉の比を上記の範囲とすることによって、比抵抗値を低くすることができるだけでなく、塗布形状やメッキ付け性が良好になることから、好ましい。より好ましくは、20:80〜80:20であり、さらに好ましくは、40:60〜60:40である。(A1)と(A2)の比率は、30:70〜70:30にすることもできる。なお、本発明で用いる金属粒子は、市販されているものを用いるか、当業者に公知の方法で調製したものを用いることができる。
【0022】
(B)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂は、バインダとして機能するものである。本発明に用いる熱硬化性樹脂は、複数の熱硬化性樹脂を併用することもできるが、熱硬化性樹脂全体の重量に対して、少なくとも70重量%がエポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂である。ここで「エポキシ当量」とは、樹脂の分子量を分子中のエポキシ基の数で除した値を指す。エポキシ当量をこの範囲とすることによって、外部電極のベンディング性だけでなく、比抵抗値を小さく抑えることができる。エポキシ当量の範囲は、好ましくは350〜1200であり、より好ましくは500〜850である。好ましい2官能エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
エポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂と併用することができる熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂のようなアミノ樹脂;オキセタン樹脂;レゾール型、アルキルレゾール型、ノボラック型、アルキルノボラック型、アラルキルノボラック型のようなフェノール樹脂;シリコーンエポキシ、シリコーンポリエステルのようなシリコーン変性有機樹脂、ビスマレイミド、ポリイミド樹脂等が挙げられる。例えば、BTレジンも使用することができる。また、エポキシ当量が200〜1500の範囲外にあるエポキシ樹脂も使用することができる。これらの樹脂は、1種類を用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
熱硬化性樹脂として、常温で液状である熱硬化性樹脂を用いると、希釈剤としての有機溶剤の使用量を低減することができるため好ましい。このような液状の熱硬化性樹脂としては、液状エポキシ樹脂、液状フェノール樹脂等が例示される。また、これらの液状樹脂に相溶性があり、かつ常温で固体ないし超高粘性を呈する樹脂を、混合系が流動性を示す範囲内でさらに添加混合してもよい。そのような樹脂として、高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジグリシジルビフェニル、ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂;レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂等が例示される。
【0025】
(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子
シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子は、外部電極の曲げ弾性率を低下させ、外部電極の応力緩和に寄与する成分である。これらのゴム粒子は、耐熱性に優れており、第2導体層を形成する際の熱による劣化を抑制する。これらは単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0026】
シリコーンゴム粒子としては、直鎖状のオルガノポリシロキサンを三次元架橋させてなる粒子(特開昭63−77942号公報等)、シリコーンゴムを粉末化した粒子(特開昭62−270660号公報等)等が挙げられる。更には、上記の粒子の表面をシリコーンレジンで被覆した構造の粒子(特開平7−196815号公報等)もある。
【0027】
シリコーンゴム粒子としては、トレフィルE−500、トレフィルE−600、トレフィルE−601、トレフィルE−850(いずれも、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、KMP−600、KMP−601、KMP−602、KMP−605(いずれも、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0028】
フッ素ゴム粒子としては、ビニリデンフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとの二元共重合体、ビニリデンフルオリドとペンタフルオロプロピレンとの二元共重合体、ビニリデンフルオリドとクロロトリフルオロエチレンとの二元共重合体、ビニリデンフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの三元共重合体、ビニリデンフルオリドとペンタフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの三元共重合体、ビニリデンフルオリドとペルフルオロメチルビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとの三元共重合体等の粒子が挙げられる。
【0029】
ゴム粒子の形状は、球状のものが好ましい。ゴム粒子の平均粒子径は、良好な曲げ弾性率が得られることから、0.01〜30μmが好ましく、より好ましくは、1〜6μmである。なお、本願明細書において、ゴム粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して画像解析により求めた値とする。
【0030】
本発明の外部電極用導電性ペーストは、外部電極の曲げ弾性率の低下の点から、(A)金属粒子100重量部に対して、(B)成分と(C)成分の合計量が10〜45重量部であることが好ましい。より好ましくは15〜35重量部であり、さらに好ましくは25〜35重量部である。(A)と(B)+(C)の重量比については、上記範囲とすることで、比抵抗値を抑制するだけでなく、塗布形状及びメッキ付け性を良好にすることができ、好ましい。
【0031】
(B)熱硬化性樹脂と(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子の重量比((B):(C))は、90:10〜45:55であることが好ましく、より好ましくは85:15〜70:30である。
【0032】
本発明の外部電極用導電性ペーストにおいて、成分(B)中のエポキシ当量200〜1500の2官能エポキシ樹脂の硬化機構としては、自己硬化性樹脂を用いても、アミン類、イミダゾール類、酸無水物又はオニウム塩のような硬化剤や硬化触媒を用いてもよく、アミノ樹脂やフェノール樹脂を、エポキシ樹脂の硬化剤として機能させてもよい。
【0033】
特に、フェノール樹脂によって硬化するエポキシ樹脂が好ましい。フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられるフェノール樹脂初期縮合物であればよく、レゾール型でもノボラック型でもよいが、優れた耐ヒートサイクル性を得るためには、その50重量%以上がアルキルレゾール型、アルキルノボラック型、アラルキルノボラック型のフェノール樹脂、キシレン樹脂又はアリルフェノール樹脂であることが好ましい。以下の一般式(3):
【0034】
【化1】
【0035】
(式中、nは0〜300である。)で示されるフェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル重縮合物であるアラルキルノボラック型フェノール樹脂も、好ましい。また、アルキルレゾール型フェノール樹脂の場合、優れた印刷適性を得るためには、平均分子量が2,000以上であることが好ましい。これらのアルキルレゾール型又はアルキルノボラック型フェノール樹脂において、アルキル基としては、炭素数1〜18のものを用いることができ、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシルのような炭素数2〜10のものが好ましい。
【0036】
これらのうち、優れた接着性が得られ、また耐熱性も優れていることから、エポキシ樹脂とアラルキルノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、キシレン樹脂又はアリルフェノール樹脂との組合せが好ましい。エポキシ樹脂とアラルキルノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、キシレン樹脂又はアリルフェノール樹脂との組み合わせを用いる場合、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の重量比が、4:1〜1:4の範囲が好ましく、4:1〜1:2がさらに好ましい。また、ポリイミド樹脂なども耐熱性の観点から有効である。
【0037】
本発明のペーストには、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)〜(C)成分に加えて、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、ジシアンジアミド等の硬化触媒、カップリング剤、揺変剤、分散剤を配合することができる。また、熱硬化性樹脂と併せて熱可塑性樹脂を使用してもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、マレイミド樹脂等が好ましい。
【0038】
さらに、本発明のペーストには、有機溶剤を配合して、粘度を調整することができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような芳香族炭化水素類;テトラヒドロフランのようなエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンのようなケトン類;2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドンのようなラクトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、更にこれらに対応するプロピレングリコール誘導体のようなエーテルアルコール類;それらに対応する酢酸エステルのようなエステル類;並びにマロン酸、コハク酸等のジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステルのようなジエステル類が例示される。有機溶剤の使用量は、ペーストを印刷又は塗布する方法等により、任意に選択されるが、例えばスクリーン印刷の場合、常温におけるペーストの見掛粘度が10〜500Pa・sが好ましく、より好ましくは15〜300Pa・sである。
【0039】
本発明のペーストには、必要に応じて、公知の添加剤を配合することができる。例えば、分散助剤として、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウムのようなアルミニウムキレート化合物;イソプロピルトリイソステアロイルチタナートのようなチタン酸エステル;脂肪族多価カルボン酸エステル;不飽和脂肪酸アミン塩;ソルビタンモノオレエートのような界面活性剤;又はポリエステルアミン塩、ポリアミドのような高分子化合物等を配合することができる。また、無機及び有機顔料、シランカップリング剤、レベリング剤、チキソトロピック剤、消泡剤等を配合することもできる。
【0040】
本発明のペーストは、配合成分を、ライカイ機、プロペラ撹拌機、ニーダー、ロール、ポットミル等のような混合手段により、均一に混合して調製することができる。調製温度は、特に限定されないが、例えば、10〜40℃で調製することができる。
【0041】
本発明のペーストを用いて、積層セラミック電子部品の内部電極層に連結された第1導体層の上に第2導体層を形成することによって、複数の層から構成される外部電極を形成することができる。形成の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、本発明のペーストを、積層セラミック電子部品の外部電極の第1導体層の上に、印刷又は塗布し、場合によっては乾燥させた後、加熱硬化させて第2導体層を形成することができる。
【0042】
内部電極層に連結された第1導体層は、例えば、積層セラミック複合体の内部電極取り出し面に、例えば、銀を主剤としてガラスフリットを含んだ電極ペーストを塗布し、場合により乾燥させた後、焼成して形成することができる。電極ペーストを印刷、塗布、乾燥及び焼成する方法としては、当業者に公知の方法を用いることができる。
【0043】
印刷・塗布工程における塗布厚みは、通常、10〜200μmであり、好ましくは20〜100μmである。乾燥工程は、主に有機溶剤を用いる場合に行われ、常温で、又は加熱(例えば80〜160℃で加熱)して行うことができる。硬化工程は、通常、150〜250℃で行うことができる。硬化温度は150℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上である。さらに、(C)シリコーンゴム粒子及びフッ素ゴム粒子からなる群より選択されるゴム粒子への熱による悪影響を排除するために、250℃以下が好ましく、より好ましくは220℃以下ある。
【0044】
硬化時間は、硬化温度等により変化させることができるが、作業性の点から1〜60分が好ましい。例えばペースト中の樹脂がフェノール樹脂を硬化剤として用いるエポキシ樹脂の場合、150〜250℃で、10〜60分の硬化を行い、外部電極を構成する第2導体層を形成することができる。
【0045】
第1導体層と、本発明のペーストを用いて形成された第2導体層を有する外部電極を有する積層セラミック電子部品は、ベンディングテスト後の容量低下を10%以下に抑えることができる。ベンディングテストは、例えば、90mm2点間支持にて、中央部分を変位速度1mm/秒で加圧し、基板を10mmたわませる方法によって行なう。
【0046】
このようにして形成した外部電極の上に、回路基板等へはんだ付け実装する際の接着強度をさらに高めるため、必要に応じて、ニッケルメッキ、スズメッキ等のメッキ処理を施すことができる。
【0047】
外部電極が形成される積層セラミック電子部品としては、コンデンサ、コンデンサアレイ、サーミスタ、バリスター、インダクタ並びにLC、CR、LR及びLCR複合部品等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
〔導電性ペーストの調製〕
表1の各成分を配合して、実施例、比較例の導電性ペーストを調製した(表中の数字は、断りのない限り重量部である)。
【0050】
実施例及び比較例にて用いた各成分は、以下のとおりである。エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂1〜4として、エポキシ当量がそれぞれ190、670、940、2500であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた。フェノール樹脂には水酸基当量110のノボラック型フェノール樹脂を用いた。シリコーンゴム粒子には、球状シリコーンゴム粒子1〜3として、ゴムの平均粒子径が2、5、12μmであるシリコーンゴム(それぞれ商品名:KMP600、KMP605、KMP601、信越シリコーン社製)を用いた。液状ゴムには、カルボキシル基末端アクリロニトリルブタジエンゴムを用いた。触媒には、ジシアンジアミドを用いた。エポキシ系シランカップリング剤には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。また、各実施例及び比較例において、金属ペーストに、溶剤としてブチルカルビトールを調整量加えた。その際、溶剤の量はペーストの粘度が32〜38Pa・sの範囲になるように調整した。なお、粘度は、ブルックフィールドDV−1型粘度計を用いて、10rpmにて室温で測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例、比較例の導電性ペーストを用いて形成した第2導体層について、比抵抗、密着強度、曲げ弾性率を以下のようにして測定した。また、以下に示す方法にて、ベンディングテストをおこなった。それらの結果を表1に示す。
〔比抵抗の測定〕
実施例・比較例の導電性ペーストについて、幅20mm、長さ20mm、厚さ1mmのアルミナ基板上に、250メッシュのステンレス製スクリーンを用い、長さ71mm、幅1mm、厚さ20μmのジグザグパターン印刷を行い、大気中で200℃、30分間硬化させ、外部電極を形成した。ジグザグパターンの厚さは、東京精密製表面粗さ形状測定機(製品名:サーフコム1400)にて、パターンと交差するように測定した6点の数値の平均より求めた。硬化後に、LCRメーターを用い、4端子法で比抵抗を測定した。
〔密着強度の測定〕
比較例、実施例のペーストを20mmのアルミナ基板上にドットパターンをスクリーン印刷し、その上に1.5×3.0mmのアルミナチップをのせ200℃×30分で硬化させた。その後、接着面をプッシュプルゲージで側面から突き、アルミナチップが剥がれた時の数値を読み取った。計算式は以下のとおりとする。
【0053】
接着強度=実測値(Kgf)×9.8/0.03(cm
【0054】
〔曲げ弾性率の測定〕
テフロン板に耐熱テープ2枚の厚みで比較例、実施例のペーストを塗布し200℃×30分で硬化させた。硬化後、試験片をテフロン板から剥がし150℃×10分で焼きなましを行った。得られた硬化膜から1cm×4cmで試験片を切り出し、曲げ試験用試料とした。試験片は150℃×0、20、100、1000時間エージングを行った。各々の試験片は島津サイエンス製オートグラフで曲げ弾性率を測定した。
【0055】
〔ベンディングテスト〕
チップ積層コンデンサのセラミック複合体(1608タイプ)の内部電極取り出し面にCu電極(内部電極に連結された第1導体層)が焼付けされたものを用意した。比較例、実施例のペーストをesi社製パロマ印刷機(型番:MODEL2001)で均一に浸漬塗布後、200℃×30分硬化を行い第2導体層とし、外部電極を形成した。続いてワット浴でニッケルメッキを行い、次いで電解メッキによりスズメッキを行い、チップ積層コンデンサを得た。次に、FR−4基板の上にSn-3.0Ag-0.5Cuの組成からなるハンダペーストを印刷し、積層セラミックコンデンサをマウントした後、イン−アウト5分、ピーク温度260℃の条件でリフロー処理を行い、評価用試験片を作製した。評価用試験片を、オートグラフ(島津製作所製)を用い、90mm2点間支持にて、FR−4基板側より中央部分をR230mmの治具を使用し、変位速度1mm/秒で加圧し、基板を10mmたわませた時の容量及び破壊の有無を確認した。容量判定は初期容量が10%以上低下した場合を不可(×)とした。
【0056】
実施例1〜3にて作製した導体層について、その表面形状、メッキ付け性、塗布形状について観察した。それぞれの観察及び評価方法は以下のとおりである。
【0057】
〔表面形状〕
比抵抗値の測定で使用した試験片を使用し、電極表面の端の箇所を500倍でSEM観察を行なった。観察された10μm以上の粒子の数が5個未満であるとき、良好であるとした。
【0058】
〔メッキ付け性〕
ベンディングテストで製造した方法と同様の方法にて、チップ積層コンデンサを得た。得られたコンデンサの表面を500倍にてSEM観察を行なった。外部電極にメッキが着いているものを良好であるとした。
【0059】
〔塗布形状〕
チップ積層コンデンサのセラミック複合体(1608タイプ)の内部電極取り出し面にCu電極(内部電極に連結された第1導体層)が焼付けされたものを用意した。比較例、実施例のペーストをesi社製パロマ印刷機(型番:MODEL2001)で均一に浸漬塗布後、200℃×30分硬化を行い、樹脂を含む第2導体層とし、外部電極を形成した。得られたチップ積層コンデンサを顕微鏡にて20倍で観察し外部電極表面を観察した。表面が平らであるものを良好であるとした。
【0060】
実施例1〜8に示されるように、本発明の導電性ペーストを使用した場合、良好な電気的特性を維持したままで、良好な接合強度と曲げ弾性率とを同時に実現でき、ベンディングテスト後、容量判定は○であり、破壊は発見されなかった。一方、(C)成分を含まない比較例1では、曲げ弾性率が10.1と大きく、ベンディングテストにより、セラミック複合体にクラックが生じており、容量判定は×であった。エポキシ当量が200未満のエポキシ樹脂を使用した比較例2では、曲げ弾性率が9.0と大きく、ベンディングテスト時に破壊が生じていた。エポキシ当量が1500より大きいエポキシ樹脂を使用した比較例3では、比抵抗値が7.3と大きく、電気特性の面で劣っていた。(C)成分のゴム粒子の代わりに液状ゴムを使用した比較例4では、エージングによって曲げ弾性率が上昇し、ベンディングテストによって破壊が生じていた。また、実施例1〜3で製造した樹脂を含む第2導体層は、印刷表面、塗布形状、メッキ付け性のいずれにおいても、良好であった。
【符号の説明】
【0061】
1 積層セラミックコンデンサ
2 セラミック誘電体
3 内部電極層
4 外部電極層
5 メッキ処理層
6 ハンダ付け層
7 基板
11 内部電極に連結された第1導体層
12 樹脂を含む第2導体層
図1
図2