(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5877798
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】液状食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20160223BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20160223BHJP
【FI】
A23L2/00 E
A23L2/00 F
A23L1/30 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-554760(P2012-554760)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(86)【国際出願番号】JP2012051164
(87)【国際公開番号】WO2012102189
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-12178(P2011-12178)
(32)【優先日】2011年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 真美
(72)【発明者】
【氏名】山岸 正浩
【審査官】
太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−233577(JP,A)
【文献】
特開2005−225794(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/107380(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/117024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L 5/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化剤及びナフトエ酸誘導体を含有する高粘度の液状の食品原料に対して、脱酸素処理を行う脱酸素工程、及び、脱酸素処理後の前記高粘度の液状の食品原料を加熱殺菌する加熱殺菌工程を含む、液状食品の製造方法であって、
前記抗酸化剤がアスコルビン酸であり、
前記ナフトエ酸誘導体が、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸であり、
前記高粘度の液状の食品原料が、B型粘度計を用いて20℃で測定した値として、40〜100mPa・sの粘度を有するものであり、
前記高粘度の液状の食品原料中の前記抗酸化剤の含有率が、0.01重量%以上であり、
前記脱酸素工程における脱酸素処理が、脱酸素処理後の前記高粘度の液状の食品原料の溶存酸素濃度が2ppm以下になるように行われるものであり、
前記液状食品は、25℃で8ヶ月保存後において、前記ナフトエ酸誘導体の残存率が50重量%以上であることを特徴とする液状食品の製造方法。
【請求項2】
加熱殺菌後の前記高粘度の液状の食品原料に対して、均質化処理を行う均質化工程を含む請求項1に記載の液状食品の製造方法。
【請求項3】
少なくとも10,000リットルの上記液状食品を製造することができる製造設備を用いて、上記液状食品を製造する請求項1又は2に記載の液状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸に代表されるナフトエ酸誘導体を含む高粘度の液状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(以下、「DHNA」と略すことがある。)は、プロピオニバクテリウム属菌により産生される化合物であり、腸内のビフィズス菌を選択的に増殖させる等の健康増進効果があることが知られている。その効果を日常的に用いることを目的として、様々な摂取手段についての開発研究が、多々行われている。しかし、DHNAは、ビタミンKと類似した分子構造を有しており、加熱処理や長期保存中に分解などによりその含有量が大幅に減少し、その活性が減少することがわかっている。
【0003】
この問題に対して、DHNAの安定化方法、すなわち活性維持の方法が検討されてきている。
例えば、特許文献1には、ビフィズス因子に対してアスコルビン酸、次亜硫酸、無水酢酸等の少なくとも1種からなる活性増強・安定化剤を添加する技術が開示されている。この技術によれば、当該ビフィズス因子の活性の増強及び安定化が図られること、特に耐熱性に対する効果があることが見いだされている。しかし、特許文献1には、ビフィズス因子についての具体的な記述はない。特許文献1の試験例は、いずれも培養液の上清(混合物と思われる。)についての試験であり、本発明のような高粘度の液状食品に関するものではない。また、活性については、ビフィズス菌の増殖促進活性についての効果を評価しており、保存性についての検討は行われていない。
【0004】
特許文献2では、DHNAを含む飲食用溶液を不活性ガスなどで置換して液中溶存酸素濃度を下げた後に加熱処理するDHNAの安定化方法が開示されている。当該方法を施すことによりDHNAの活性が保存中に維持されることが記載されている。
【0005】
一方、特許文献3には、DHNAを含む飲食品、医薬品などに用いる安定化剤として、エリソルビン酸を添加する技術が開示されている。この安定化剤を添加することによって、DHNAの安定化の向上と、系の褐色化の低減を行っている。しかし、特許文献3には、本発明のような高粘度の溶液の中のDHNAの安定化方法として、「脱酸素処理と、アスコルビン酸もしくはエリソルビン酸の添加の併用」が有効であるとの記載はない。また、本発明のような高粘度の溶液では、この高粘度のゆえに、溶存酸素の除去が難しいという問題がある。この問題を解決した報告は全くされていない。
【0006】
さらに、これまでにも、高粘度の食品について酸化防止などを目的として、脱酸素(脱気)処理や抗酸化剤の添加等が種々検討されている(例えば、特許文献4〜6)。しかし、これら文献に開示されている技術は、特定の食品(例えば、ソース、練餡、果汁飲料など)に対する酸化防止を目的とするものであり、本発明のようなDHNAを含有する高粘度の液状食品におけるDHNAの安定化についての技術ではない。つまり、特許文献4〜6には、本発明の技術と一致する技術は、開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−108672号公報
【特許文献2】WO2004/085364号パンフレット
【特許文献3】特開2005−225794号公報
【特許文献4】特開平7−274913号公報
【特許文献5】特開平8−209号公報
【特許文献6】特開2009−39048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上記の技術においては、以下の(a)、(b)等の事情を考慮すると、高粘度の液状食品の安定性の確保、特に、長期保存や高温保存時の安定性の確保の課題が未だ解決されていない。
(a)DHNAに代表されるナフトエ酸誘導体を含む高粘度の液状食品が、通常の飲料と比べて高粘度であるため、脱酸素処理によって溶存酸素濃度を下げることが困難であり、特に製造規模が大きくなればなるほど溶存酸素濃度を下げることがより困難となることから、当該液状食品を構成する成分の攪拌混合時に、ナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)の安定性が損なわれ易い。
(b)高粘度の液状食品の場合、伝熱効率も考慮する必要があり、通常の飲料に比べると強い殺菌や滅菌を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)を含有する高粘度の液状食品の製造において、脱酸素処理と抗酸化剤の添加を併用することによって、上記従来の問題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の一態様は、抗酸化剤及びナフトエ酸誘導体を含有する高粘度の液状の食品原料に対して、脱酸素処理を行う脱酸素工程を含む、液状食品の製造方法である。
【0011】
前記抗酸化剤の好ましい例として、アスコルビン酸とエリソルビン酸のいずれか一方または両方(本明細書中、「アスコルビン酸及び/又はエリソルビン酸」ともいう。)が挙げられる。
液状の食品中の前記抗酸化剤の含有率は、好ましくは0.01重量%以上である。
【0012】
前記ナフトエ酸誘導体の好ましい例として、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられる。
【0013】
脱酸素工程後の液状食品の溶存酸素濃度は、好ましくは8ppm以下である。
液状の食品原料を構成する各成分の混合時の温度は、特に限定されず、例えば、50℃以上である。
【0014】
本発明の液状食品の製造方法は、前記脱酸素工程の前または後に、前記液状の食品原料に対して、加熱殺菌する加熱殺菌工程を含むことができる。
前記脱酸素工程は、好ましくは、前記加熱殺菌工程よりも先に行われる。
本発明で得られる液状食品の、25℃で8ヶ月保存後における前記ナフトエ酸誘導体の残存率(重量基準)は、好ましくは50%以上である。
【0015】
本発明の別の態様は、抗酸化剤及びナフトエ酸誘導体を含有する液状の食品原料に対して、脱酸素処理及び加熱殺菌を行うことにより得られ、溶存酸素濃度が8ppm以下であり、B型粘度計を用いて20℃で測定した値として、20〜500mPa・sの粘度を有する液状食品である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液状食品の製造方法によれば、脱酸素工程と抗酸化剤の添加を併用しているので、従来技術では実現できなかったDHNAのようなナフトエ酸誘導体を含む高粘度の液状食品についても、加熱や長期保存の条件下において、DHNAのようなナフトエ酸誘導体の活性を安定的に維持することができる。また、当該製造方法によれば、長期保存可能な高粘度の液状食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の液状食品の製造方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に述べる個々の形態には限定されない。
本発明の液状食品の製造方法の一例は、抗酸化剤及びナフトエ酸誘導体(例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸)を含有する高粘度の液状の食品原料に対して、脱酸素処理を行う脱酸素工程、及び、脱酸素処理後の液状の食品原料を加熱殺菌する加熱殺菌工程を含む。
【0019】
ナフトエ酸誘導体としては、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸が挙げられる。
1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(DHNA)としては、化学合成と生合成のいずれによっても得ることができる。中でも、安全に入手できる観点から、生合成によって得たものが好ましい。例えば、プロピオニバクテリウム属微生物を常法に従って培養することによって得られる発酵物それ自体、及び/又は、その処理物を、DHNAとして使用することができる。発酵物の処理物としては、例えば、菌体を含む発酵物、発酵物を濾過あるいは除菌して得た濾液、所定の溶媒により抽出した抽出物などの粗製物、またそれらの精製物、発酵物・その濾液・抽出物・上清液をエバポレーター等により濃縮した濃縮物、これらの乾燥物(凍結乾燥、他)などの処理工程を経たものを用いることができる。
DHNAの添加量は、用途等に応じて適宜調整することができるが、好ましくは1μg/ml以上、より好ましくは4μg/ml以上である。
また、本発明はナフトエ酸誘導体のみの実証であるが、ナフトエ酸誘導と同等レベル、もしくはそれ以上に酸化されやすい化合物に対しても応用可能であることは言うまでもない。
【0020】
本発明で用いられる抗酸化剤としては、食品製造分野で一般的に用いられている抗酸化剤(酸化防止剤)を用いることができる。抗酸化剤の例としては、特に限定されないが、例えばアスコルビン酸、エリソルビン酸等の有機酸が挙げられる。これらの有機酸は、遊離の酸の形状、各種エステル類、各種金属塩、その他の塩類の形状のものも同様に使用することができる。
液状の食品中の抗酸化剤の含有率は、その種類、他の原料の含量等によって適宜調整することができるが、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。
前記抗酸化剤の含有率の上限値は、特に限定されないが、抗酸化剤独特の風味が本発明の液状食品の風味に悪影響を及ぼすことがある観点から、好ましくは2重量%、より好ましくは1重量%である。
前記液状の食品原料の、B型粘度計を用いて20℃で測定した粘度は、好ましくは20〜500mPa・s、より好ましくは20〜200mPa・s、さらに好ましくは20〜100mPa・s、特に好ましくは40〜80mPa・sである。該粘度が20mPa・sm未満では、本発明を適用する必要性が乏しくなる。該粘度が500Pa・sを超えると、本発明の効果を十分に得ることが困難となる。
【0021】
本発明の液状食品の例としては、一般的に「流動食」と称されているものなどが挙げられる。流動食は、経口、経管的に投与される食品組成物であり、主に胃腸系疾患の患者や高齢者等に対する効率的な栄養補給を行うためのものである。流動食は、特に、入院患者における術前または術後の栄養管理に使用されることが多い。流動食は、高濃度及び高カロリーであり、消化吸収が良く、蛋白質、脂質、糖質の3大栄養素とビタミン類、ミネラル類がバランスよく配合されていることが好ましい。流動食には、その他、流動食の商品としての品質や商品コンセプト等に応じて、食物繊維、乳化剤、安定剤、香料などの成分や食品添加物を適宜添加することができる。
なお、本発明の液状食品は、高粘度であって、かつ、ナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)及び抗酸化剤を含むものであれば良く、また、流動食の用途においては、流動食としての所定の粘度(例えば、20〜500mPa・s)を満たすものである限り、前記の各種の成分や食品添加物を含むことができる。また、この場合、本発明の効果は、前記の各種の成分や食品添加物によって影響されるものではない。
【0022】
本発明の液状食品の粘度は、一般的な飲料よりも高く、かつ、半固形物よりも低いものであり、例えば、B型粘度計による測定値(測定温度:20℃)として、好ましくは20〜500mPa・s、より好ましくは20〜200mPa・s、さらに好ましくは20〜100mPa・s、特に好ましくは40〜80mPa・sである。前記粘度が前記範囲内である高粘度の液状食品においては、従来、溶存酸素の除去が困難であった。したがって、前記粘度が前記範囲内である場合、特に、本発明の効果を十分に享受することができる。なお、本発明でいう粘度とは、B型粘度計を用いて20℃で測定した値である。
本発明で得られる液状食品の、55℃で8時間保存後におけるナフトエ酸誘導体の残存率(重量基準)は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。
本発明で得られる液状食品の、25℃で8ヶ月保存後における前記粘性付与物質の残存率(重量基準)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。
【0023】
本発明の製造方法は、脱酸素工程及び加熱殺菌工程を含むことができる。この場合、殺菌後の工程を極力減らし、衛生度を高め、長期保存性を高めるなどの観点から、脱酸素工程の後に、加熱殺菌工程が行われることが好ましい。なお、これら2つの工程の前後または間に、他の工程を含んでいてもよい。例えば、本発明の製造方法は、原料混合工程、濾過工程、脱酸素工程、加熱殺菌工程、均質化工程、充填工程、の各工程をこの順序で含むことができる。
【0024】
脱酸素工程における脱酸素処理の例としては、低圧下で溶存気体を除去する方法、他の不活性ガス(例えば窒素ガス)によって液中の溶存気体を置換することで該溶存気体を除去する方法などが挙げられる。中でも、泡立ちを抑制する観点から、低圧下で溶存気体を除去する方法が好ましい。
また、脱酸素工程における温度は、保存安定性の観点から、低い方が好ましい。該温度は、好ましくは5〜60℃である。
脱酸素工程後の液状食品の溶存酸素濃度は、好ましくは8ppm以下、より好ましくは4ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、特に好ましくは1.5ppm以下である。
【0025】
加熱殺菌工程は、一般的な加熱殺菌条件を用いて、脱酸素工程の前または後のいずれかの時点で行うことができる。加熱殺菌条件としては、低温保持殺菌、高温保持殺菌、高温短時間殺菌、超高温瞬間殺菌などが挙げられる。加熱温度及び加熱時間は、前記の加熱殺菌条件によっても異なるが、好ましくは50℃〜200℃、0.1秒〜1時間の範囲から適宜選択される。
なお、本発明において、加熱殺菌の対象が高粘度の液状食品原料であるために、一般的な低粘度の飲食品に適用される加熱殺菌条件よりも厳しい条件であることが好ましい。このように厳しい条件を採用した場合、一般的には、その厳しい条件に対策を講じていないと、ナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)の安定性に悪影響が及ぶおそれがある。しかし、本発明においては、このような対策を講じなくても、高粘度の液状食品に対する厳しい条件下での加熱殺菌工程を経た後でも、ナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)の安定性は保たれる。
【0026】
本発明においては、保存後のナフトエ酸誘導体(例えば、DHNA)の含量の低減を防止することができる。したがって、本発明の液状食品を所定の条件下で保存しても、ナフトエ酸誘導体を安定して含有させることができる。例えば、25℃で6ヶ月保存後に、ナフトエ酸誘導体は、50%以上の残存率で含有することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において、「%」は、特に明記する場合を除き、重量%を示すものとする。
【0028】
[試験例1]
表1に示す配合(実施例1)により、DHNAを含有する高粘度の液状食品を調製した。その際に、抗酸化剤としてのDHNA保護用のアスコルビン酸の配合量を、0%(比較例1)、0.015%(実施例1)、0.03%(実施例2)、0.05%(実施例3)、0.1%(実施例4)と変化させて、サンプルを作製した。
なお、実施例2〜4及び比較例1では、水の量を増減することによって、全体の量を実施例1と同じにした。
【0029】
【表1】
【0030】
図1に、上記のDHNAを含有する高粘度の液状食品の製造方法の一例を示した。
まず、表1に示す原材料A(乳製品(ナチュラルチーズ)、ハチミツ、デキストリン、食用油脂、難消化性デキストリン、オリゴ糖、ショ糖、DHNA含有組成物、DHNA保護用アスコルビン酸、安定剤(ペクチン)、ミネラル混合物)を温水(液温:40℃)に溶解させて混合し、同時に窒素ガスによるバブリングにより脱酸素しながら溶存酸素濃度が1ppm以下となるように調整した。
その後、得られた混合液に対して、120℃、3分間の加熱殺菌処理、及び、450bar(45MPa)の圧力による均質化処理を、行い、さらに40℃に冷却した。冷却後の混合液に、原材料B(ビタミン混合物、香料)を加え、120℃、3分間の殺菌、及び、450bar(45MPa)の圧力による均質化処理を、行い、液状食品(実施例1〜4、比較例1)を得た。
なお、表1中のDHNA含有組成物としては、WO03/016544号パンフレットの実施例2に従って調製したDHNA含有量が40μg/mlであるDHNA含有組成物を用いた。
また、表1中の原材料B中のビタミン混合物には、アスコルビン酸等の抗酸化剤は、含まれていない。
得られた液状食品を55℃で最大8時間保持することによって、DHNAの保存性(残存率)を評価した。
【0031】
表2に、DHNAの経時保存性(残存率)を示す。55℃にて最大8時間保持したときに、比較例1では、DHNAの含量が著しく低下することが判った。一方、実施例1〜4(本発明品)では、高温保存しても、経時的にDHNAの含量が高く維持されることが判る。
すなわち、従来、高粘度の液状食品に対しては、脱酸素処理による溶存酸素濃度の低下が困難であり、DHNAを含む高粘度の食品原料の攪拌混合時(特に加熱殺菌時)にDHNAの安定性が損なわれるという問題があった。この点、本発明では、DHNAの安定性を高めることができ、DHNAの含量を高温下でも維持することができる。一方、比較例1では、DHNAの含量の顕著な低下によるDHNAの活性の低下が起きている。本発明のような高粘度の液状食品においては、脱酸素処理のみでは、DHNAの高い安定性は得られないことが判った。
【0032】
【表2】
【0033】
[試験例2]
脱気装置付の製造設備を用いて、高粘度の液状食品を10000Lスケールで製造した。
表1に示す原材料A及び水(液温:40℃)を混合し、混合液を得た。その際に、脱気装置を搭載しているスカニマミキサーを使用して、混合液の溶存酸素濃度を1.5ppm以下に調整した。その後、この混合液について、120℃で3分間の加熱殺菌を行い、次いで、25MPaで均質化処理を行い、その後、10℃以下に冷却し、貯液した。貯液物に、表1に示す原材料Bを混合し、この混合液に120℃で3分間の加熱殺菌を行い、次いで、25MPaで均質化処理を行い、その後、常温まで冷却し、所定の容器に充填した。これを実施例5とした。
実施例5の液状食品の製造直後の、B型粘度計で測定した粘度(温度:20℃)は、60mPa・sであった。この液状食品を25℃で8ヶ月間保存した後のDHNAの含量を測定して、液状食品の保存性(残存率)を評価した。保存後のDHNAの残存率は、25℃で8カ月保存後の時点で、60%であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の液状食品の製造方法は、脱酸素処理と抗酸化剤の添加を併用しているので、高粘度の液状食品に対して従来技術では実現することのできなかった、加熱や長期保存の条件下でのDHNAの活性の安定的な維持を可能とするものである。また、本発明の製造方法により、例えば、長期保存可能なDHNA含有高粘度液状食品を提供することができる。