(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1複合偏光板において、前記第1直線偏光フィルムの吸収軸と前記第1複合偏光板の長辺とのなす角度αが0°以上45°以下であり、前記第1直線偏光フィルム側から見たときの前記第1直線偏光フィルムの吸収軸に対する前記第1位相差フィルムの遅相軸のなす角度が反時計回りに135°±20°の範囲であり、
前記第2複合偏光板において、前記第2直線偏光フィルムの吸収軸と前記第2複合偏光板の長辺とのなす角度βが45°以上90°以下であり、前記第2直線偏光フィルム側から見たときの前記第2直線偏光フィルムの吸収軸に対する前記第2位相差フィルムの遅相軸のなす角度が反時計回りに45°±20°の範囲であり、
α+βが90°である、請求項1に記載の複合偏光板セット。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<複合偏光板セット>
本発明は、液晶セルの一方の面側に配置される第1複合偏光板と、他方の面側に配置される第2複合偏光板とからなる複合偏光板セットである。第1複合偏光板は、長方形状であって、液晶セルに貼合される第1粘着剤層と、第1位相差フィルムと、第1直線偏光フィルムとがこの順で積層されてなり、第2複合偏光板は、長方形状であって、液晶セルに貼合される第2粘着剤層と、第2位相差フィルムと、第2直線偏光フィルムとがこの順で積層されてなる。
【0019】
本発明の複合偏光板セットについて、温度85℃で100時間の熱処理を行なったときに、以下の式(1)で示されるSが、S<2.0を満たし、好ましくは、S<1.5を満たす。
【0021】
ここで、
L
1s:上記熱処理による第1複合偏光板の短辺の収縮率、
L
1l:上記熱処理による第1複合偏光板の長辺の収縮率、
L
2s:上記熱処理による第2複合偏光板の短辺の収縮率、
L
2l:上記熱処理による第2複合偏光板の長辺の収縮率、を表す。
【0022】
なお、熱処理による収縮率とは、温度85℃で100時間の熱処理を行なう前の長さをL
b、温度85℃で100時間の熱処理を行なった後の長さをL
aとすると、以下の式(2)で示される値である。なお、本明細書でいう複合偏光板の短辺の長さは二つの長辺の各中間点の間の距離であり、複合偏光板の長辺の長さは二つの短辺の各中間点の間の距離である。
【0024】
複合偏光板セットにおいて、上記のような熱収縮特性を有することにより、液晶パネルに搭載した際に画像表示領域における熱ムラの発生を抑制することができる。上記のような熱収縮特性は、第1複合偏光板で用いられる第1粘着剤層、第2複合偏光板で用いられる第2粘着剤層を適宜選択することにより、また下記のように各構成要素の配置関係を好ましい範囲で選択することにより実現することができる。第1粘着剤層と第2粘着剤層の少なくとも一方は、温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上であることが好ましい。また、より好ましくは、第1粘着剤層と第2粘着剤層の両方が、温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上であることが好ましい。
【0025】
図1は、本発明に係る複合偏光板セットにおける各要素の好ましい配置関係を説明するための概略図である。
図1(a)において、液晶セル30の一方の面に第1複合偏光板10が配置され、他方の面に第2複合偏光板20が配置されている。第1複合偏光板10は、第1直線偏光フィルム11とその内側に配置された第1位相差フィルム12とを備え、第2複合偏光板20は、第2直線偏光フィルム21とその内側に配置された第2位相差フィルム22とを備える。第1複合偏光板10と第2複合偏光板20とは、
図1(a)に示すようにその長辺が平行となるように配置して用いられる。
図1(a)において示す直線Cは、第1複合偏光板10と第2複合偏光板20の長辺に平行な直線である。
【0026】
図1(b)は、
図1(a)に示す直線C、第1直線偏光フィルム11の吸収軸11A、第1位相差フィルム12の遅相軸12B、第2位相差フィルムの遅相軸22B、第2直線偏光フィルム22の吸収軸21Aの角度関係を示す模式図である。
【0027】
第1複合偏光板10において、第1直線偏光フィルム11の吸収軸11Aと、第1複合偏光板10の長辺とのなす角度、すなわち直線Cとのなす角度αは、好ましくは0°以上45°以下である。また、第1直線偏光フィルム11側から見たときの第1直線偏光フィルム11の吸収軸11Aに対する第1位相差フィルム12の遅相軸12Bのなす角度θ1は、好ましくは反時計回りに135°±20°の範囲である。
【0028】
第2複合偏光板20において、第2直線偏光フィルム21の吸収軸21Aと第2複合偏光板20の長辺とのなす角度、すなわち直線Cとのなす角度βは、好ましくは45°以上90°以下である。また、第2直線偏光フィルム21側から見たときの第2直線偏光フィルム21の吸収軸21Aに対する第2位相差フィルム22の遅相軸22Bのなす角度は、好ましくは反時計回りに45°±20°の範囲である。
図1(b)は、
図1(a)において上から見た関係が示されている。すなわち、吸収軸21Aと遅相軸22Bの関係は、第2位相差フィルム22側から見たときの関係が示されている。第2位相差フィルム22側から見たときの第2直線偏光フィルム21の吸収軸21Aに対する第2位相差フィルム22の遅相軸吸収軸21のなす角度θ2は、好ましくは時計回りに45°±20°の範囲である。また、α+βは90°となる。すなわち、第1直線偏光フィルム11と第2直線偏光フィルム21とは、その吸収軸11A,21Aが互いに直交するような関係にある。
【0029】
上記のような配置関係を有する場合、好ましくは、第2粘着剤層は温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上であり、より好ましくは、第1粘着剤層も温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上である。このような粘着剤層を用いることにより、式(1)を満たす熱収縮特性を有する複合偏光板セットをより構成しやすくなる。
【0030】
本発明に係る複合偏光板セットを液晶パネルとともに配置して液晶パネルを構成する場合、第1複合偏光板および第2複合偏光板の一方を前面側偏光板として用い、他方を背面側偏光板として用いればよく、前面側偏光板および背面側偏光板として用いられる偏光板は、第1複合偏光板または第2複合偏光板の一方に限定されない。ここで、「前面側偏光板」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際の視認側に位置する偏光板を意味する。また、「背面側偏光板」とは、液晶パネルを液晶表示装置に搭載した際の、バックライト側に位置する偏光板を意味する。
【0031】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図2は、本発明に係る複合偏光板セットおよび液晶セルからなる液晶パネルの層構成の一例を示す概略断面図である。
図2に示す液晶パネル1は、本発明に係る複合偏光板セットの第1複合偏光板を前面側偏光板として用い、第2複合偏光板を背面側偏光板として用いた場合の実施形態である。また、本実施形態において、第1複合偏光板は、第1直線偏光フィルム、粘着剤層、第1位相差フィルム、第1粘着剤層からなる積層構成に加えて、他の任意の層が積層されている構成を有し、第2複合偏光板は、第2直線偏光フィルム、第2位相差フィルム、第2粘着剤層からなる積層構成に加えて、他の任意の層が積層されている構成を有する。
【0032】
図2に示す液晶パネルは、液晶セル30と、液晶セル30の一方の面側に配置される第1複合偏光板10と、他方の面側に配置される第2複合偏光板20とからなる。第1複合偏光板10と、第2複合偏光板20とで、本発明に係る複合偏光板セットを構成する。以下、各複合偏光板について詳細に説明する。
【0033】
[第1複合偏光板]
第1複合偏光板10は、第1直線偏光フィルム11と、第1直線偏光フィルム11に貼合層13を介して貼合された第1位相差フィルム12とを備える。そして、第1位相差フィルム12の第1直線偏光フィルム11側の面とは反対側の面に第1粘着剤層15が積層され、第1直線偏光フィルム11の第1位相差フィルム12側の面とは反対側の面に透明保護層14と表面処理層16とがこの順で積層されている。第1複合偏光板10は、第1粘着剤層15を介して液晶セル30に貼合される。
【0034】
(第1直線偏光フィルム)
第1直線偏光フィルム11は、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルムを用いることができる。第1直線偏光フィルム11を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
【0035】
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、第1直線偏光フィルム11の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、たとえば、1μm〜150μm程度である。延伸のしやすさなども考慮すれば、その膜厚は10μm以上であるのが好ましい。
【0036】
第1直線偏光フィルム11は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。二色性色素としては、ヨウ素や、二色性の有機染料が用いられる。
【0037】
(第1位相差フィルム)
第1位相差フィルム12としては、位相差フィルムとして要求される特性、すなわち、その複屈折が光学的に均一であるものが好適に選択され、液晶パネルによる位相差の補償(視野角補償の意味も含む)とともに第1直線偏光フィルム11の保護機能等も兼ねて使用される。その例として、従来から画像表示装置に使用されてきたものを限定することなく用いることができ、各種透明高分子の延伸フィルム等からなる複屈折性フィルム、ディスコティック液晶やネマチック液晶が配向固定されたフィルム、フィルム基材上に上記の液晶層が形成されたものなどが挙げられる。フィルム基材上に液晶層を固定する場合、配向液晶層を支持するフィルム基材として、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0038】
複屈折性フィルムを形成する高分子としては、たとえば、ポリカーボネート系、ポリビニルアルコール系、ポリスチレン系、ポリメチルメタクリレート系、ポリプロピレンのようなポリオレフィン系、ポリアリレート系、ポリアミド系、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン系などが挙げられる。延伸フィルムは、一軸や二軸等の適宜な方式で処理したものであってよい。また、熱収縮性フィルムとの接着下に収縮力及び/又は延伸力をかけることでフィルムの厚さ方向の屈折率を制御した複屈折性フィルムも用いることができる。
【0039】
特にモバイル用途の画像表示装置に使用される楕円偏光又は円偏光モードの偏光板とする場合、1/2λ板又は1/4λ板が有効に用いられる。楕円偏光又は円偏光モードの偏光板は、入射する偏光が直線偏光の場合はそれを楕円偏光又は円偏光に、入射する偏光が楕円偏光又は円偏光の場合はそれを直線偏光に変える機能を有している。特に楕円偏光又は円偏光を直線偏光に、直線偏光を楕円偏光又は円偏光に変えられる位相差フィルムとしては、1/4λ板と呼ばれる、入射光の波長に対して1/4波長の位相差を示すものが使用される。また1/2λ板は、直線偏光の方向を変える機能を有している。さらに、1/2λ板と1/4λ板とを、光学軸が所定の角度で交差するように積層して、広い波長域にわたって1/4波長の位相差を示す広帯域1/4λ板とすることもできる。
【0040】
上記の楕円偏光モードの偏光板は、液晶表示装置において液晶の複屈折により生じる着色現象を防止する場合などに有効であり、円偏光モードの偏光板は、反射型または半透過反射型液晶表示装置において、輝度向上の目的などに有効に用いられる。円偏光モードの偏光板は、反射防止の機能も有する。
【0041】
(第1粘着剤層)
第1粘着剤層15は、従来から画像表示装置のために用いられてきた種々の粘着剤をベースに形成されうる。たとえば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを有するものが用いられる。また、エネルギー線硬化型、熱硬化型などであってもよい。なお、ベースポリマーの分子量を低下させる、ゲル分率を下げる、可塑剤を添加する等により、温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上の粘着剤層を調整することができる。第1粘着剤層15の厚みは、3〜25μmであることが好ましい。
【0042】
ウレタン系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、特開平2011−26418号に記載されている粘着剤のように、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させてなるウレタンポリマーと、水酸基を有するポリアミノ化合物とを反応させてなるポリウレタンウレアに、さらに環状酸無水物を反応させてなる樹脂を用いることができる。
【0043】
アクリル系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルなどを2種類以上用いた共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。さらに、これらのベースポリマー中に極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシ基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることができる。
【0044】
これらのアクリル系粘着剤は、単独でももちろん使用可能であるが、通常架橋剤が併用されている。架橋剤としては、2価または多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が有機系架橋剤として広く使用されている。
【0045】
エネルギー線硬化型粘着剤とは、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルムなどの被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤である。エネルギー線硬化型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤などを配合することもできる。
【0046】
粘着剤層を形成するために用いる粘着剤組成物には、上記のベースポリマー及び架橋剤のほか、必要に応じて、粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、例えば天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、染料、顔料、消泡剤、腐食剤、光重合開始剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。さらに、微粒子を含有させて光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。また粘着剤層には、酸化防止剤や紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
【0047】
第1粘着剤層15の形成は、たとえば、トルエンや酢酸エチルなどの有機溶媒に粘着剤組成物を溶解または分散させて10〜40重量%濃度の溶液とし、これを、粘着剤層が形成されるべきフィルムの表面に直接塗布して乾燥させた後、樹脂フィルムからなるセパレータを積層する方法や、セパレータ上に粘着剤層を形成した後、形成すべきフィルムの表面に転写する方法などによって行なうことができる。粘着剤層をフィルム上に形成する際には、必要に応じてフィルムと粘着剤層の貼り合わされる側の面(片方又は両方)に、密着性を向上させるための処理、例えばコロナ処理などを施してもよい。
【0048】
(貼合層)
第1直線偏光フィルム11と第1位相差フィルム12とを貼合する貼合層13は、粘着剤層または接着剤層である。貼合層13が粘着剤層である場合、用いられる粘着剤は特に限定されず、第1粘着剤層15を形成する粘着剤について説明したものと同様の粘着剤を用いることができる。
【0049】
貼合層13が接着剤層である場合、用いられる接着剤は特に限定されるものではなく、たとえば、水溶媒系接着剤、有機溶媒系接着剤、ホットメルト系接着剤、無溶剤型接着剤などを用いることができる。水溶媒系接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤などが、有機溶媒系接着剤としては、たとえば二液型ウレタン系接着剤などが、無溶剤型接着剤としては、例えば一液型ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが、それぞれ挙げられる。
【0050】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いる場合、接着剤として用いるポリビニルアルコール系樹脂には、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルをケン化処理して得られるビニルアルコールホモポリマーのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体をケン化処理して得られるビニルアルコール系共重合体、さらにそれらの水酸基を部分的に変性した変性ポリビニルアルコール系重合体などがある。この接着剤には、多価アルデヒド、水溶性エポキシ化合物、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物などが添加剤として添加されていてもよい。このような水系の接着剤を用いた場合、それから得られる接着剤層は、通常1μm以下となり、通常の光学顕微鏡で断面を観察しても、その接着剤層は事実上観察されない。
【0051】
(透明保護層)
第1直線偏光フィルム11の片面に設けられる透明保護層14は、適宜な透明フィルムで構成することができる。中でも、透明性や、光学特性の均一性、機械強度、熱安定性などに優れる樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。たとえば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースの如きセルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂フィルム、ポリメチル(メタ)アクリレートやポリエチル(メタ)アクリレートのようなアクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリエーテルスルホン系樹脂フィルム、ポリスルホン系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ノルボルネンの如き環状オレフィンをモノマーとする環状オレフィン系樹脂フィルムなどが挙げられる。透明保護層14と第1直線偏光フィルム11の接着には、接着剤または粘着剤を用いることができる。
【0052】
(他の光学層)
第1複合偏光板10は、以上のように構成されるものであるが、透明保護層14の上には必要に応じて、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの表面処理層16が設けられていてもよい。ハードコート層は、偏光板表面の傷付き防止のために形成されるものであり、主に紫外線硬化型樹脂、たとえば、アクリル系やシリコーン系などの樹脂から、透明保護層14との密着性や硬度に優れるものが適宜に選定され、透明保護層14の表面に形成することができる。また反射防止層は、偏光板の表面における外光の反射防止を目的として形成されるものであり、公知の方法で形成することができる。防眩層は、偏光板の表面に外光が写り込んで発生する視認性の阻害を防止するために形成されるものであり、たとえば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式等による粗面化方式や、紫外線硬化型樹脂に透明微粒子を混合した塗工液を塗布して硬化させる方式などによって、透明保護層14の表面に凹凸構成となるように形成されるのが一般的である。
【0053】
また、形成された第1粘着剤層15が表面に露出される場合には、汚染防止などのため、セパレータを配置するのがよい。なお、セパレータは、第1複合偏光板10を画像表示素子などに貼り合わせるまで、第1粘着剤層15の表面を仮着保護するためにも用いられることが好ましく、たとえば、ポリエチレンテレフタレートなどの透明樹脂からなるフィルムに、シリコーン系などの離型剤による処理を施したものが用いられる。
【0054】
[第2複合偏光板]
第2複合偏光板20は、第2直線偏光フィルム21と、第2直線偏光フィルム21に貼合層23を介して貼合された第2位相差フィルム22とを備える。第2複合偏光板20においては、さらに、第2位相差フィルム22の第2直線偏光フィルム21側の面とは反対側の面に第2粘着剤層25が積層され、第2直線偏光フィルム21の第2位相差フィルム22側の面とは反対側の面に透明保護層24と他の光学層26とがこの順で積層されている。第2複合偏光板20は、第2粘着剤層25を介して液晶セル30に貼合される。
【0055】
(第2直線偏光フィルム)
第2直線偏光フィルム21は、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光フィルムを用いることができ、第1直線偏光フィルム11について説明したものを同様に用いることができる。第1直線偏光フィルム11と第2直線偏光フィルム21とは、外形(厚み等)、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。
【0056】
(第2位相差フィルム)
第2位相差フィルム22としては、位相差フィルムとして要求される特性、すなわち、その複屈折が光学的に均一であるものが好適に選択され、位相差の補償とともに第2直線偏光フィルム21の保護機能等も兼ねて使用される。第2位相差フィルム22は、第1位相差フィルム12について説明したものを同様に用いることができる。第1位相差フィルム12と第2位相差フィルム22とは、外形(厚み等)、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
(第2粘着剤層)
第2粘着剤層25は、従来から画像表示装置のために用いられてきた種々の粘着剤をベースに形成されうる。たとえば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを有するものが用いられる。また、エネルギー線硬化型、熱硬化型などであってもよい。なお、温度85℃における損失正接(tanδ)が0.4以上の粘着剤層とするためには、ウレタン系をベースポリマーとする粘着剤が好適である。第2粘着剤層25は、第1粘着剤層15について説明したものを同様に用いることができる。
【0058】
(貼合層)
第2直線偏光フィルム21と第2位相差フィルム22とを貼合する貼合層23は、粘着剤層または接着剤層である。貼合層23は、貼合層13について説明したものを同様に用いることができる。貼合層13と貼合層23とは、外形(厚み等)、材質および製造方法などに関し、同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
(透明保護層)
第2直線偏光フィルムの片面に設けられる透明保護層24は、適宜な透明フィルムで構成することができる。透明保護層24は、第1複合偏光板10の透明保護層14について説明したものを同様に用いることができる。
【0060】
(他の光学層)
透明保護層24の上に、さらに、反射層、半透過反射層、光拡散層、集光板、輝度向上フィルムなどの光学層26を積層することができる。
【0061】
反射層は、視認側から入射する外光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できることから、液晶表示装置を薄型化しやすい。また半透過反射型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライト等の光源を利用する透過型として表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。反射型の偏光板とするための反射層は、たとえば、アルミニウム等の金属からなる箔や蒸着膜により形成することができる。また半透過反射型の偏光板とするための半透過反射層は、上記の反射層をハーフミラーとする方法や、パール顔料等を含有して光透過性を示す反射板を偏光板に接着する方法などで形成できる。
【0062】
拡散型の偏光板は、入射する光を拡散させる機能を併せ持たせたものである。そのために用いる光拡散層は、例えば、透明保護層24にマット処理を施す方法、微粒子含有の樹脂を塗布する方法、微粒子含有のフィルムを接着する方法など、種々の方法を用いて形成される。
【0063】
さらに反射拡散両用の偏光板は、例えば、拡散型偏光板の微細凹凸構造面に、その凹凸構造が反映された反射層を設けるなどの方法により、拡散反射層を設けたものである。微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラツキを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また、微粒子を含有する樹脂層やフィルムは、入射光及びその反射光がその層を透過する際に拡散されて、明暗ムラをより抑制しうるなどの利点も有している。表面微細凹凸構造を反映させた反射層は、例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の蒸着や、メッキ等の方法により、金属を微細凹凸構造の表面に直接付設することで形成できる。なお、表面微細凹凸構造を形成するために配合する微粒子としては、例えば、平均粒径が0.1〜30μmのシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などが利用できる。
【0064】
集光板は、光路制御等を目的に付設されるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、あるいはドット付設シートなどとして、形成することができる。
【0065】
輝度向上フィルムは、入射する自然光の一部を直線偏光又は円偏光として透過し、残りを反射して再利用する機能を有するものであって、液晶表示装置等における輝度の向上を目的として用いられる。その例としては、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型直線偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持した反射型円偏光分離シートなどが挙げられる。
【0066】
<液晶パネル>
本発明の複合偏光板セットは、液晶セル30の両面に配置して、液晶パネル1とすることができる。典型的には、VA(Vertical Alignment)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モードの液晶セル30を使用して液晶パネル1を形成することができる。液晶パネル1においては、本発明に係る複合偏光板セットが用いられているため、熱ムラの低減が実現され、表示品位の向上が図られる。
【0067】
<液晶表示装置>
図3は、本発明に係る液晶表示装置の層構成の一例を示す概略断面図である。
図3に示す液晶表示装置2は、
図2に示す液晶パネル1と、光拡散板40、バックライト50を備える。液晶表示装置2は、液晶パネル1において背面側偏光板である第2複合偏光板20がバックライト50側となるように配置される。ここでは、液晶パネル1の全面に対して配置され、光拡散板を介して照射する直下型方式のバックライトを備える液晶表示装置を例示したが、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルの縁に配置し、導光板を介して照射するエッジライト方式のバックライトを備える構成であってもよい。
【0068】
(光拡散板)
光拡散板40は、バックライト50からの光を拡散させる機能を有する光学部材であって、たとえば、熱可塑性樹脂板の表面に凹凸を形成して光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂板の表面に粒子が分散された樹脂組成物の塗布層を設け、光拡散性を付与したものなどであり得る。その厚みは、0.1〜5mm程度とすることができる。また、光拡散板40と液晶パネル1との間には、プリズムシート(集光シートとも呼ばれ、例えば、3M社製の「BEF」など)、輝度向上シート(例えば、3M社製の「DBEF」など)、光拡散シートなど、他の光学機能性を示すシートを配置することもできる。他の光学機能性を示すシートは、必要に応じて1枚以上、複数種類配置することも可能である。さらに、光拡散板40として、例えば、シリンドリカルな形状を表面に有するプリズムシートと光拡散板との積層一体品(例えば、特開2006−284697号公報に記載されるもの)のような、光拡散機能に他の機能が複合化された光学シートを用いることも可能である。
【0069】
かかる本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを用いたものであり、液晶パネルと同様に、熱ムラの低減が実現され、表示品位の向上が図られている。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。後述の実施例1〜3、比較例1〜3の複合偏光板セットを用いて、以下の方法により「S値の算出」および「熱ムラの評価」を行なった。また、各複合偏光板セットを構成するために用いた粘着剤層について、以下の方法により「損失正接(tanδ)の測定」を行なった。
【0071】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<第1複合偏光板の作製>
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.1/5/100の水溶液に28℃で60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が10.5/7.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き10℃の純水で5秒間洗浄した後、95℃で152秒乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向されてなる偏光フィルムを得た。この偏光フィルムを第1直線偏光フィルムとして用いた。
【0072】
先に得られた第1直線偏光フィルムの片面に、ケン化処理が施されたトリアセチルセルロースからなる厚さ40μmのフィルム(KC4UY、コニカミノルタオプト(株)製)を下記接着剤Aを介して積層し、また、第1直線偏光フィルムの他方の面には、予めコロナ処理が施された厚み32μmのシクロオレフィン系樹脂からなる第1位相差フィルム(ZD12−141158−A1330、(株)オプテス製)を下記接着剤Bを介して積層し、積層体を二つのニップロール間を通過させて貼合した。なお、第1複合偏光板の第1直線偏光フィルムの吸収軸が短辺を基準として26°、そして第1位相差フィルムの遅相軸が吸収軸に対して反時計回りに135°になるように貼合した。
【0073】
このときニップロールの硬度はJIS K 7215に基づきデュロメータタイプAを使用した値で78であった。積層体の張力を430N/mに保ちながら、60℃〜90℃に保たれた乾燥炉で228秒の乾燥を行ないトリアセチルセルロース系フィルム/接着剤A/第1直線偏光フィルム/接着剤B/シクロオレフィン系樹脂フィルム(第1位相差フィルム)からなる積層体を得た。そして、第1位相差フィルムの第1直線偏光フィルム側とは反対側の面に下記の粘着剤層A〜Dのいずれかにより第1粘着剤層を形成し第1複合偏光板を得た。各実施例または各比較例においては、表1に示す粘着剤層を第1粘着剤層として用いた。
【0074】
<第2複合偏光板の作製>
第2複合偏光板は、各要素が第1複合偏光板で用いたものと同じである、トリアセチルセルロース系フィルム/接着剤A/第2直線偏光フィルム/接着剤B/シクロオレフィン系樹脂フィルム(第2位相差フィルム)からなる積層体を用いた。なお、この積層体の作製において、第2複合偏光板の第2直線偏光フィルムの吸収軸が短辺を基準として64°、そして第2位相差フィルムの遅相軸が吸収軸に対して反時計回りに45°になるように貼合した。
【0075】
そして、第2位相差フィルムの第2直線偏光フィルム側とは反対側の面に上記の粘着剤層A〜Dのいずれかにより第2粘着剤層を形成し第2複合偏光板を得た。各実施例または各比較例では、表1に示す粘着剤層を第2粘着剤層として用いた。
【0076】
<接着剤の調製>
(接着剤A)
100重量部の水に、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業(株)製)4重量部、グリオキシル酸ナトリウム(SPM−01、日本合成化学工業(株)製)4重量部を溶解させて、ポリビニルアルコール系樹脂接着剤Aを調製した。
【0077】
(接着剤B)
100重量部の水に、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業(株)製)2重量部、グリオキシル酸ナトリウム(SPM−01、日本合成化学工業(株)製)2重量部を溶解させて、ポリビニルアルコール系樹脂接着剤Bを調製した。
【0078】
<粘着剤層の形成>
(粘着剤層A:アクリル系粘着剤層)
ブチルアクリレートとメチルアクリレートと2−フェノキシエチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体にイソシアネート系架橋剤を添加してなるアクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤層を形成した。この粘着剤層を粘着剤層Aとした。以下に示す測定方法により粘着剤層Aのtanδを測定したところ、85℃におけるtanδは0.19であった。
【0079】
(粘着剤層B:アクリル系粘着剤層)
ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体にイソシアネート系架橋剤を添加してなるアクリル系粘着剤の有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工してなる剥離フィルム付きシート状粘着剤層を形成した。この粘着剤層を粘着剤層Bとした。以下に示す測定方法により粘着剤層Bのtanδを測定したところ、85℃におけるtanδは0.20であった。
【0080】
(粘着剤層C:アクリル系粘着剤とウレタン系粘着剤の混合層)
ブチルアクリレートとアクリル酸の共重合体にウレタンアクリレートオリゴマーを配合し、さらにイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工したシート状粘着剤層を形成した。この粘着剤層を粘着剤層Cとした。以下に示す測定方法により粘着剤層Cのtanδを測定したところ、85℃におけるtanδは0.14であった。
【0081】
(粘着剤層D:ウレタン系粘着剤層)
ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートを主成分として構成されたウレタン樹脂と、さらにイソシアネート系架橋剤を添加した有機溶剤溶液を、離型処理が施された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)の離型処理面に、ダイコーターにて乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工したシート状粘着剤層を形成した。この粘着剤層を粘着剤層Dとした。以下に示す測定方法により粘着剤層Dのtanδを測定したところ、85℃におけるtanδは0.43であった。
【0082】
[S値の算出]
「S値の算出」を行なうにあたって、熱処理による第1複合偏光板の短辺の収縮率L
1s、長辺の収縮率L
1l、熱処理による第2複合偏光板の短辺の収縮率L
2s、長辺の収縮率L
2lを以下の測定値に基づき算出した。まず、91mm×52mmの第1複合偏光板および第2複合偏光板を、それぞれの複合偏光板に設けられた第1粘着剤層または第2粘着剤層を介して、厚さ0.7mmのガラス板の両面に、互いの偏光板の吸収軸が直交するように貼り付け、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で20分間オートクレーブ処理を行った。自然冷却後、それぞれのサンプル(複合偏光板セット付きガラス板)の第1複合偏光板および第2複合偏光板のそれぞれについて、短辺および長辺の長さを、(株)ニコン社製の二次元測定器“NEXIV VMR−12072”を用いて測定した。
【0083】
次いで、これらのサンプルを、温度が85℃に保たれたオーブンに投入し、100時間保持する熱処理を行なった。この熱処理後のサンプルの第1複合偏光板および第2複合偏光板のそれぞれについて、短辺および長辺の長さを、(株)ニコン社製の二次元測定器“NEXIV VMR−12072”を用いて測定した。以上の測定値を用いて、式(2)に基づいて、熱処理による第1複合偏光板の短辺の収縮率L
1sおよび長辺の収縮率L
1l、熱処理による第2複合偏光板の短辺の収縮率L
2sおよび長辺の収縮率L
2lを求めた。そして、これらの値を式(1)に代入して、Sの値を求めた。Sの値を表1に示す。
【0084】
[熱ムラの評価]
91mm×52mmの第1複合偏光板および第2複合偏光板を、それぞれの複合偏光板に設けられた第1粘着剤層または第2粘着剤層を介して、厚さ0.7mmのガラス板の両面に、互いの偏光板の吸収軸が直交するように貼り付け、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で20分間オートクレーブ処理を行った。自然冷却後、それぞれのサンプルを温度が85℃に保たれたオーブンに投入し、100時間保持する熱処理を行った。熱処理後のサンプルの熱ムラの程度について、目視にて1〜5の5段階で評価した。「ムラが全く発生しない」を「1」、「全ての辺においてムラが明らかに発生している」を「5」として評価した。すなわち、評価の数値が高い程、ムラの発生が顕著であったことを示している。結果を表1に示す。また、熱処理後のサンプルの面内の輝度分布を(株)アイシステム社製「Eye−scale4W」で測定した。実施例1〜3、比較例1〜3の輝度分布の測定結果を
図4〜9に示す。
【0085】
[tanδの測定]
粘着剤層A〜Dを4cm×4cm、厚み100μmの樹脂製フィルムに積層し試験片を作製した。該試験片について、JIS K7244−10に準拠して、Anton−Paar社製の測定器「Physica MCR301」で直径25mmのパラレルプレートを用いて、周波数1Hzの捻りせん断法で、85℃のtanδを求めた。
【0086】
【表1】
【0087】
表1および
図4〜6に示すように、S値が2.0以下である実施例1〜3は、「熱ムラの評価」において熱ムラが観察されない、またはほとんど観察されない良好な結果となった。