特許第5878897号(P5878897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5878897
(24)【登録日】2016年2月5日
(45)【発行日】2016年3月8日
(54)【発明の名称】新しい軟骨細胞増殖及び分化誘導剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20160223BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20160223BHJP
   C07K 14/495 20060101ALN20160223BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20160223BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20160223BHJP
【FI】
   C12N5/077ZNA
   C12N5/0775
   !C07K14/495
   !C07K7/06
   !C07K19/00
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-164607(P2013-164607)
(22)【出願日】2013年8月7日
(62)【分割の表示】特願2010-531808(P2010-531808)の分割
【原出願日】2009年9月9日
(65)【公開番号】特開2013-231082(P2013-231082A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2008-254153(P2008-254153)
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-314866(P2008-314866)
(32)【優先日】2008年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】保田 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】古屋 優里子
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5730018(JP,B2)
【文献】 SAITO,H. et al,A tumor necrosis factor receptor loop peptide mimic inhibits bone destruction to the same extent as,Arthritis Rheum,2007年,Vol.56, No.4,p.1164-74
【文献】 J Biosci Bioeng,2008年,Vol.105, No.2,p.122-6
【文献】 Journal of Orthopadic Research,2001年,Vol.19,p.785-796
【文献】 Gene & Development,2003年,Vol.17,p.2368-2373
【文献】 Arthritis & Rheumatism,2006年,Vol.54, No.9,p.S225-S226
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00 − 38/58
A61K 39/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩を生体外で作用させることを含む、軟骨細胞増殖・分化誘導方法。
【請求項2】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質を生体外で作用させることを含む、軟骨細胞増殖・分化誘導方法。
【請求項3】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、抗RANKL抗体又はその機能的断片を生体外で作用させることを含む、軟骨細胞増殖・分化誘導方法。
【請求項4】
さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質を生体外で作用させる、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、請求項記載の方法。
【請求項6】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩を生体外で作用させることを含む、軟骨基質産生増加方法。
【請求項7】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質を生体外で作用させることを含む、軟骨基質産生増加方法。
【請求項8】
軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に対し、抗RANKL抗体又はその機能的断片を生体外で作用させることを含む、軟骨基質産生増加方法。
【請求項9】
さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質を作用させる、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化・成熟を増強するRANKL結合分子を含む、軟骨形成を刺激する軟骨細胞増殖及び分化誘導剤あるいは軟骨基質産生増加剤に関する。また、本発明は該誘導剤を用いて軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞を分化させ、あるいは軟骨基質産生を増加させる方法に関する。さらに本発明はRANKLに結合し、シグナルを伝え、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞を分化・増殖させる物質あるいは軟骨基質産生を増加させる物質のスクリーニング方法、及びこれにより得られた物質、及び得られた物質を含有する医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、軟骨細胞と多量の細胞間軟骨基質から形成される。軟骨は軟骨基質の性状の違いにより胎児期の骨格原基や関節軟骨の多くを構成する硝子軟骨、基質にI型コラーゲンを含む線維軟骨、耳介及び喉頭蓋に存在する弾性軟骨の3種類に分類される(非特許文献1及び2を参照)。
【0003】
構成物の1つである軟骨細胞の起源は多能性未分化間葉系幹細胞であり、未分化間葉系幹細胞は転写因子Sox(SRY-related HMG box-containing gene)9により凝集を起こし、前軟骨細胞となる。前軟骨細胞はII型コラーゲン、IX型コラーゲン及びプロテオグリカン等の軟骨基質となるべき基質群を分泌し、軟骨基質の増加に従い細胞は個別化し、さらにSox5及びSox6といった転写因子と協調的に作用することにより軟骨芽細胞へ分化していく。さらに未熟な軟骨芽細胞に対し転写因子Runx2(runt-related gene2)の発現が抑制され、ERG/C-1-1(ets related gene)の発現が増加することにより永久軟骨細胞へ分化が進む(非特許文献3及び4を参照)。なお、軟骨細胞が肥大化するとX型コラーゲンの発現が亢進することが報告されている。
【0004】
軟骨が成長する過程には2つのパターンがあり、その1つである間質成長では、一旦軟骨細胞に分化し、周囲を軟骨基質で取り囲まれた細胞が細胞分裂により増殖し、各軟骨細胞が基質を分泌することにより軟骨組織が拡大する。
【0005】
もう1つは軟骨膜による付加成長がある。軟骨組織は、関節軟骨の関節面を除き、軟骨膜で覆われており、その強靭な軟骨膜は線維芽細胞から構成されるが、内層では軟骨細胞に似た形を呈するようになり、その境界が不明瞭になっている。内層の軟骨膜細胞も次第に円形に変化しながら増殖し、さらに軟骨基質を分泌して外側に成長する。
【0006】
一般に軟骨組織において、軟骨膜の外側は血管や神経に富む結合組織に接しているが、その内部は血管や神経を含まない。その為、内部で軟骨の損傷が起こった場合に、未分化な幹細胞やサイトカイン等による修復ができない。さらに軟骨細胞自身が修復のための分裂増殖能力に乏しく、自己修復が非常に難しい。
【0007】
関節軟骨の修復には、軟骨基質の局所へ注入、骨髄細胞を利用しその中に含まれる間葉系幹細胞を培養し自家軟骨細胞を作製、移植する方法、マトリックスディスクに軟骨細胞増殖因子を染み込ませ移植する方法などが報告されている。
【0008】
軟骨細胞の増殖を誘導する因子としては、TGF-β1(Transforming Growth Factor:形質転換増殖因子)、IGF-1(Insulin-like Growth Factor:インスリン様成長因子)、bFGF(basic Fibroblast Growth Factor:塩基性繊維芽細胞成長因子)、PTHのN末端13アミノ酸と相同性が高いPTHrP(PTH-related peptide:副甲状腺ホルモン関連タンパク)、HGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)、TGF-βスーパーファミリーに属する骨形成タンパクBMP(bone morphogenetic protein )等が報告されている。しかしながら、BMPやTGF-βのように軟骨細胞増殖作用以外にも、未分化間葉系幹細胞の凝集、軟骨細胞最終分化抑制作用などの重要な機能を有している因子もあり、移植後に骨化し、軟骨としての機能を失ってしまう可能性も含んでいる。
【0009】
破骨細胞分化因子(RANKL; receptor activator of NF-κB ligand)は、骨吸収因子によって骨芽細胞/間質細胞上に誘導される腫瘍壊死因子(TNF; tumor necrosis factor)ファミリーに属する膜結合タンパク質で、破骨細胞分化・成熟に必須の因子である(非特許文献5及び6を参照)。その受容体であるRANK(receptor activator of NF-κB)及びおとり受容体のOPG(osteoprotegerin)を含めたRANKL/RANK/OPGを軸とした研究により、破骨細胞分化・成熟の調節メカニズムの解明が生体レベルで進み、これら3分子と骨代謝疾患との関わりも明らかになってきている(非特許文献7を参照)。
【0010】
RANKLと軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化・増殖との関連については、知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】新骨の科学 須田立雄ら 編著 医歯薬出版
【非特許文献2】硬組織研究ハンドブック 松本歯科大大学院硬組織研究グループ
【非特許文献3】骨・軟骨代謝と注目の骨疾患 松本俊夫編 羊土社
【非特許文献4】InadaらDev.Dyn 214:279,1999
【非特許文献5】YasudaらProc Natl Acad Sci USA 95: 3597,1998
【非特許文献6】Laceyら、Cell 93: 165, 1998
【非特許文献7】Sudaら、Endocr Rev,20:345, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、それらの細胞の軟骨分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こすRANKL結合分子を有効量投与することにより軟骨細胞の増殖・分化を誘導し、あるいは軟骨基質産生を増加させる方法及び軟骨細胞の増殖・分化を誘導し、あるいは軟骨基質産生を増加させるための医薬品組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、RANKLに作用する分子として用いられる様々なタンパク質やペプチドなどを軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞上のRANKLに作用させることにより、軟骨細胞が増殖・分化し、あるいは軟骨基質産生を増加させることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物を有効成分として含む、軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[2] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞上のRANKLに作用する、[1]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[3] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似したペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、RANKに構造が類似した化学物質、RANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、OPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似したペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、OPGに構造が類似した化学物質、並びにOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[1]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[4] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKLに作用し得るRANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、RANKLに作用し得るRANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、RANKLに作用し得るOPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、並びにRANKLに作用し得るOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[2]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[5] 軟骨細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩である、[1]又は[2]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[6] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質である、[1]又は[2]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[7] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が抗RANKL抗体又はその機能的断片である、[1]又は[2]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[8] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生増加の少なくとも1つを引き起こす化合物を有効成分として含む、[1]〜[7]のいずれかの軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[9] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物を有効成分として含む、軟骨増殖・分化誘導剤。
[10] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強及び(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞上のRANKLに作用する、[9]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[11] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似したペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、RANKに構造が類似した化学物質、RANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、OPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似したペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、OPGに構造が類似した化学物質、並びにOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[9]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[12] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKLに作用し得るRANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、RANKLに作用し得るRANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、RANKLに作用し得るOPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、並びにRANKLに作用し得るOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[10]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[13] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩である、[9]又は[10]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[14] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質である、[9]又は[10]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[15] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が抗RANKL抗体又はその機能的断片である、[9]又は[10]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[16] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物を有効成分として含む、軟骨基質産生増加剤。
[17] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物が、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞上のRANKLに作用する、[16]の軟骨基質産生増加剤。
[18] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似したペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、RANKに構造が類似した化学物質、RANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、OPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似したペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似したペプチド、OPGに構造が類似した化学物質、並びにOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[16]の軟骨基質産生増加剤。
[19] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物がRANK、RANKLに作用し得るRANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、RANKLに作用し得るRANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質、OPG、RANKLに作用し得るOPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、並びにRANKLに作用し得るOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質からなる群から選択される化合物である、[17]の軟骨基質産生増加剤。
[20] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩である、[16]又は[17]の軟骨基質産生増加剤。
[21] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物が配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質である、[16]又は[17]の軟骨基質産生増加剤。
[22] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つを引き起こす化合物が抗RANKL抗体又はその機能的断片である、[16]又は[17]の軟骨基質産生増加剤。
[23] 配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩を有効成分として含む、軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[24] 配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド又はその塩とアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST又はIgGのFc領域との融合タンパク質を有効成分として含む、軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[25] 軟骨疾患が、軟骨欠損、離断性骨軟骨炎、関節リウマチ、変形性関節症、先天性軟骨疾患及び軟骨損傷からなる群から選択される、[24]の軟骨疾患の治療又は予防のための医薬組成物。
[26] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物を、RANKLを発現している軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞と接触させ、候補化合物が軟骨細胞に分化し得る細胞の分化又は増殖を促進した場合に、候補化合物が軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物であると判断することを含む、スクリーニング方法。
[27] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、並びに(e) 軟骨細胞の増殖の少なくとも1つを引き起こす化合物が、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞上のRANKLに作用する、[26]のスクリーニング方法。
[28] 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生増加の少なくとも1つを引き起こす化合物をスクリーニングする方法であって、候補化合物を、RANKLを発現している軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞と接触させ、候補化合物が軟骨細胞に分化し得る細胞の分化又は増殖を促進した場合に、候補化合物が軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、に(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生増加の少なくとも1つを引き起こす化合物であると判断することを含む、[26]又は[27]のスクリーニング方法。
[29] さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを含む、[1]〜[8]のいずれかの医薬組成物。
[30] TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、[29]の医薬組成物。
[31] さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを含む、[9]〜[15]のいずれかの軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[32] TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、[31]の軟骨細胞増殖・分化誘導剤。
[33] さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを含む、[16]〜[22]のいずれかの軟骨基質産生増加剤。
[34] TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、[33]の軟骨基質産生増加剤。
[35] さらに、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを含む、[23]〜[25]のいずれかの医薬組成物。
[36] TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質がTGF-β3及び/又はBMP-2である、[35]の医薬組成物。
【0014】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2008-254153号、2008-314866号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0015】
実施例に示すように膜型RANK、RANK類似ペプチド、抗RANKL抗体、可溶型RANK、OPG及びそれらの変異体、類似物などのRANKLに作用する分子による膜型RANKLへの作用により、軟骨前駆細胞及び間葉系幹細胞が軟骨細胞へ分化・増殖し、あるいは軟骨基質が増加する。
【0016】
膜型RANK、RANK類似ペプチド、抗RANKL抗体、可溶型RANK、OPG及びそれらの変異体、類似物、さらに天然あるいは合成の低分子化合物などの軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、例えばRANKL作用分子により、軟骨細胞の分化・増殖が誘導されるので、上記化合物を軟骨疾患の予防又は治療のための医薬品として用いることができる。また、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、例えばRANKL作用分子をスクリーニングすることにより、新しい軟骨細胞分化・増殖誘導剤、軟骨基質産生増加剤を探索、開発することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、アルシアンブルー染色により、ペプチドDによるヒト間葉系幹細胞からの軟骨細胞分化誘導を示す写真である。
図1B図1Bは、アルシアンブルー染色された細胞から色素を溶出し吸光度を測定することによって、ペプチドDによるヒト間葉系幹細胞からの軟骨細胞分化誘導を示すグラフ図である。
図2図2は、アルシアンブルー染色により、ペプチドDによるATDC5細胞からの軟骨細胞分化誘導を示す図である。
図3A図3Aは、RT-PCRによりペプチドD添加後7日目のマウスATDC5細胞における各因子の発現を示す写真である。
図3B図3Bは、RT-PCRによりペプチドD添加後7日目のマウスATDC5細胞における各因子の発現をGAPDHで標準化したものを示すグラフ図である。
図4A図4Aは、RT-PCRによりペプチドD添加後14日目のマウスATDC5細胞における各因子の発現を示す写真である。
図4B図4Bは、RT-PCRによりペプチドD添加後14日目のマウスATDC5細胞における各因子の発現をGAPDHで標準化したものを示すグラフ図である。
図5図5は、GeneChip解析によりペプチドDを添加したマウスATDC細胞における各因子の発現の増減を示す図である。
図6図6は、抗RANKL抗体によるマウスATDC5細胞の細胞増殖活性の上昇を示す図である。
図7図7は、抗RANKLモノクローナル抗体によるマウスATDC5細胞の軟骨細胞への分化を示す写真である。
図8図8は、ペプチドDにより形成されたヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレットの写真である。
図9図9は、ペプチドDにより形成されたヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレットのスライド標本を、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色した像を示す写真である。
図10図10は、ヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレット形成における、ペプチドDとTGF-β3との相乗効果を示す写真である。
図11図11は、ペプチドDとTGF-β3との相乗効果を示すヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレットのスライド標本を、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色した像を示す写真である。
図12図12は、ヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレット形成における、ペプチドDとBMP-2との相乗効果を示す写真である。
図13図13は、ペプチドDとBMP-2との相乗効果を示すヒト間葉系幹細胞からの3次元培養ペレットのスライド標本を、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色した像を示す写真である。
図14図14は、ヒト間葉系幹細胞にTGF-β3、ペプチドDおよびペプチドDとTGF-β3を添加した際のRNAを用いたGeneChip解析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
RANKL(Receptor activator of NF-κB ligand)は、TNFスーパーファミリーのメンバーであるRANK(Receptor activator of NF-κB)のリガンドであり、細胞内ドメイン(RANKのN末端から第1番目から48番目のアミノ酸からなるドメイン)、膜貫通ドメイン及び細胞外ドメインを有する2型貫通タンパク質である(特表2002-509430号公報、国際公開第WO98/46644号パンフレット、後者は現在特許公報3523650号となっている)。RANKLは骨吸収因子の刺激を受けて骨芽細胞又は骨芽細胞に分化し得る細胞上に発現する。ここで、骨芽細胞に分化し得る細胞には、骨芽細胞に分化し得る限りあらゆる細胞が含まれ、例えば、軟骨前駆細胞、骨芽前駆細胞、間葉系幹細胞、間質細胞、筋芽細胞等が挙げられる。細胞外ドメイン中、N末端から第152番目以降のアミノ酸からなるドメインは、TNFリガンドファミリー相同性ドメインである。ヒト由来のRANKLの全長塩基配列及びアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び2に示す。RANKの全長塩基配列及びアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び4に示す。
【0020】
OPG(osteoprotegerin)は、構造がRANKに類似したタンパク質であり、RANKLに作用し得る。OPGの全長塩基配列及びアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5及び6に示す。
【0021】
本発明は、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の軟骨分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、すなわち軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ又はすべてを引き起こす化合物を有効成分として含む医薬組成物である。前記の(a)〜(f)の2つ以上の組合せとしては、(a)と(b)、(a)と(c)、(a)と(d)、(a)と(e)、(a)と(f)、(b)と(c)、(b)と(d)、(b)と(e)、(b)と(f)、(c)と(d)、(c)と(e)、(c)と(f)、(d)と(e)、(d)と(f)、(e)と(f)、(a)と(b)と(c)、(a)と(b)と(d)、(a)と(b)と(e)、(a)と(b)と(f)、(a)と(c)と(d)、(a)と(c)と(e)、(a)と(c)と(f)、(a)と(d)と(e)、(a)と(d)と(f)、(a)と(e)と(f)、(a)と(b)と(c)と(d)、(a)と(b)と(c)と(e)、(a)と(b)と(c)と(f)、(a)と(b)と(d)と(e)、(a)と(b)と(d)と(f)、(a)と(b)と(e)と(f)、(a)と(c)と(d)と(e)、(a)と(c)と(d)と(f)、(a)と(c)と(e)と(f)、(a)と(d)と(e)と(f)、(b)と(c)と(d)と(e)、(b)と(c)と(d)と(f)、(b)と(c)と(e)と(f)、(b)と(d)と(e)と(f)、(c)と(d)と(e)と(f)、(a)と(b)と(c)と(d)と(e)、(a)と(b)と(c)と(d)と(f)、(a)と(b)と(c)と(e)と(f)、(a)と(b)と(d)と(e)と(f)、(a)と(c)と(d)と(e)と(f)、(b)と(c)と(d)と(e)と(f)、(a)と(b)と(c)と(d)と(e)と(f)がある。該医薬組成物として、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の軟骨分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟膏の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物を有効成分として含む医薬組成物が挙げられる。有効成分としては、例えば、RANKLに作用し、RANKLから軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞にシグナルを伝達し、それらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物が挙げられる。前記化合物がRANKLに作用する場合、作用し得るRANKLの由来動物種は限定されず、ヒト由来RANKL、マウス由来RANKL、ラット由来RANKL等あらゆる動物種由来のRANKLが対象となる。ここで、RANKLに作用するとは、RANKLに作用してRANKLから軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞にシグナルを伝達することをいい、例えば、RANKLに結合し、RANKLから軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞にシグナルを伝達する。
【0022】
RANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、それらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物として、あらゆる動物種由来のあらゆるRANKL作用化合物が挙げられる。該化合物は、天然及び非天然ペプチドや化学合成あるいは微生物由来などの低分子化合物を含む。
【0023】
本発明の軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物として、RANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似しているペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似しているペプチド、RANKに構造が類似している化学物質、RANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質等が挙げられる。このような化合物として、例えば、RANK、RANKLに作用し得るRANKの変異体若しくは断片ペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、RANKに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、RANKLに作用し得るRANKの断片ペプチドに構造が類似した化学物質等が挙げられる。
【0024】
また、化学物質とは、ペプチド及びタンパク質以外の化合物をいう。RANKは膜型RANKも可溶型RANKも含む。膜型RANKとは、細胞表面に結合している状態の膜貫通領域を有するRANKをいい、天然型RANKを発現している細胞やリコンビナントRANKを発現しているヒト細胞等の動物細胞を用いることができる。また、RANKFcも含まれる。ここで、RANKFcはヒトRANKの細胞外領域にヒトIgGのFc領域を結合させた融合タンパク質(Fc融合タンパク質)である。
【0025】
また、本発明において、構造が類似しているとは、例えば、RANKLに作用し得る部分の立体構造が類似していることをいう。ペプチドやタンパク質の場合、通常アミノ酸配列で表される1次構造も類似しているが、アミノ酸配列が類似しておらず、立体構造が類似しており、RANKLに作用し得る化合物も含まれる。
【0026】
さらに、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物として、OPG、OPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似しているペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似しているペプチド、OPGに構造が類似している化学物質、OPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質等が挙げられる。このような化合物として、例えば、RANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物として、OPG、RANKLに作用し得るOPGの変異体若しくは断片ペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGの断片ペプチドに構造が類似しRANKLに作用し得るペプチド、OPGに構造が類似しRANKLに作用し得る化学物質、RANKLに作用し得るOPGの断片ペプチドに構造が類似した化学物質等が挙げられる。
【0027】
また、化学物質とは、ペプチド及びタンパク質以外の化合物をいう。OPGは膜型OPGも可溶型OPGも含む。膜型OPGとは、C末端領域などで細胞表面に結合している状態のOPGをいい、天然型OPGを発現している細胞やリコンビナントOPGを発現しているヒト細胞等の動物細胞を用いることができる。また、OPGFcも含まれる。ここで、OPGFcとは、OPGにヒトIgGのFc領域を結合させた融合タンパク質(Fc融合タンパク質)である。
【0028】
RANK又はOPGの類似体として、例えば、RANK若しくはOPG又はそれらの断片ペプチドのアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつRANK又はOPGの活性を有するタンパク質若しくはペプチドを含む。ここで、1又は数個とは1〜9個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1若しくは2個である。
【0029】
RANKのRANKLに結合する部位の構造に似せたペプチドとして、例えば、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチドD)が挙げられる。これらのペプチドは、2番目のCysと8番目のCysがジスルフィド結合で結ばれた環状ペプチドである。
【0030】
さらに、上記のRANKのRANKLに結合する部位の構造に似せたペプチド塩も用い得る。ペプチド塩は、薬学的に許容できる塩であれば限定されないが、たとえば、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、酢酸、リンゴ酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸(TFA)塩、酒石酸又はクエン酸等の有機酸との塩、塩酸、硫酸、硝酸又はリン酸等の無機酸との塩が挙げられる。また塩基付加塩としては、ナトリウム若しくはカリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム若しくはマグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム若しくはトリエチルアミン等のアミン類との塩等が挙げられる。この中でも、酢酸塩が好ましく、特に配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの酢酸塩が好ましい。
【0031】
また、上記のRANKのRANKLに結合する部位の構造に似せたペプチドとGST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)又はヒトIgGのFc領域等とを結合させた融合タンパク質(GST融合タンパク質又はFc融合タンパク質)も用いることができる。このような融合タンパク質として、例えばペプチドDとアミノ酸配列DYKDDDDK(配列番号16)又はDYLDDDDL(配列番号17)で表されるFlag、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)又はヒトIgGのFc領域を結合させた融合タンパク質(Flag融合タンパク質、Fc融合ペプチドD又はGST融合ペプチドD)が挙げられる。これらの融合タンパク質は、生体内での安定性が増し、血中半減期が長くなる。また、GSTとFc領域の他のエピトープタグとの融合タンパク質も用いることができる。他のエピトープタグとしては、2〜12個、好ましくは4個以上、さらに好ましくは4〜7個、さらに好ましくは5個若しくは6個のヒスチジンからなるポリヒスチジン、FLAGタグ、Mycタグ、V5タグ、Xpressタグ、HQタグ、HAタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09、CruzTag22、CruzTag41、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ、KT3タグ、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質(MBP)、βガラクトシダーゼ等が挙げられる。
【0032】
本発明において、RANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物を、RANKLに対するアゴニスト物質ということがある。
【0033】
さらに、抗RANKL抗体であって、RANKLに作用することにより、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる抗体又はその機能的断片も含まれる。本発明において、これらの抗体をRANKLに対するアゴニスト抗体ということがある。抗RANKL抗体は、公知の方法により、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができ、モノクローナル抗体が好ましい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、公知の手法により、以下のようにして作製できる。すなわち、膜型若しくは可溶型RANKL又はその断片ペプチドを感作抗原として用いて、公知の免疫方法により免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、公知のスクリーニング法により、モノクローナル抗体を産生する細胞をスクリーニングすることによって作製することができる。RANKLを免疫する際、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン等のキャリアタンパク質と結合させて用いてもよい。モノクローナル抗体としては、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem. 1990;192:767-775.参照)。この際、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖及びL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。また、トランスジェニック動物を使用することにより、組換え型抗体を産生することもできる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生されるタンパク質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology 1994;12:699-702)。
【0034】
本発明の抗RANKL抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体をも含む。このような抗体としてはキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が挙げられ、いずれも公知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、得た抗体V領域をコードするDNAを得て、ヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体ともいう。ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、公知の方法により作製することができる(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域には、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよい。
【0035】
ヒト抗体は、例えばヒト抗体遺伝子座を導入し、ヒト由来抗体を産生する能力を有するトランスジェニック動物に抗原を投与することにより得ることができる。該トランスジェニック動物としてマウスが挙げられ、ヒト抗体を産生し得るマウスの作出方法は、例えば、国際公開第WO02/43478号パンフレットに記載されている。
【0036】
抗RANKL抗体は、完全抗体だけでなく、その機能的断片も含む。抗体の機能的断片とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる[D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies., 1998 T.J.International Ltd]。
【0037】
また、モノクローナル抗体を用いる場合、1種類のみのモノクローナル抗体を用いてもよいが、認識するエピトープが異なる2種類以上、例えば2種類、3種類、4種類又は5種類のモノクローナル抗体を用いてもよい。
【0038】
上記の化合物が、RANKLに対してシグナル伝達を促進させるアゴニスト活性を有するか否かは、例えば、抗体をRANKLを発現する軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に投与し、RANKLに作用させ、これらの細胞が分化、増殖し、軟骨形成し、あるいは軟骨基質産生が増加するかを検定することにより、決定することができる。分化、増殖は、例えば細胞のII型コラーゲンα1鎖の発現上昇を指標に決定することができる。また、軟骨基質はアルシアンブルーにより青く染まるので、アルシアンブルー染色により、軟骨が形成されたか否か、軟骨基質産生が増加したか否かを決定することができる。
【0039】
本発明は、さらに、上記の軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の軟骨分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、すなわち軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用し、(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ又はすべてを引き起こす化合物とTGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを組合せて含む医薬組成物を包含する。上記化合物とTGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質の少なくとも1つを組合せて投与することにより(a) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の分化の促進、(b) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の増殖の促進、(c) 軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞の成熟の促進、(d) 軟骨細胞分化の増強、(e) 軟骨細胞の増殖、並びに(f) 軟骨基質産生の増加に対して相乗的効果を発揮し、あるいは軟骨基質産生増加効果を発揮することができる。
【0040】
TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質としては、BMP2、4、7、GDF(growth and differention factors )-5,6,7等を含むBMPファミリー、アクチビン、インヒビン、さらにTGF-α、TGF-β1〜3、LTBP(latent transforming growth factor protein)を含むTGFファミリーがある(Bilezilianら Principles of Bone Biology third edition Chapter53)。これらの1種又は数種を組合せて用いてもよい。例えば、上記化合物とTGF-β3及び/又はBMP-2を組合せて用いればよい。
【0041】
本発明の組成物は、軟骨形成を増強し、あるいは軟骨基質産生を増加させ得、in vitroで研究用試薬として用いることもでき、またin vivoで医薬組成物として用いることもできる。
【0042】
本発明の医薬組成物は、軟骨形成を増強し、あるいは軟骨基質産生を増加させる医薬組成物として用いることができる。対象とする軟骨は、肥大軟骨(成長軟骨)及び永久軟骨(関節軟骨)を含む。本発明の医薬組成物は、軟骨細胞増殖・分化誘導剤又は軟骨形成促進剤である。また、本発明の医薬組成物は、軟骨疾患の予防又は治療のために用いることができる。軟骨疾患としては、外傷、外科的処置などによる軟骨欠損、離断性骨軟骨炎、関節リウマチ、変形性関節症、先天性軟骨疾患(軟骨無形成症等)、半月板損傷などの軟骨損傷等が挙げられる。対象となる被験動物はヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウサギ、ラット、マウス等の哺乳動物である。
【0043】
本発明の医薬組成物の投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常、経口投与では、成人に対して、1日約0.01mg〜10000mgであり、これらを1回、又は数回に分けて投与することができる。また、非経口投与では、損傷又は欠損した軟骨や上記の軟骨疾患患者の軟骨に対して局所投与してもよい。
【0044】
本発明の医薬組成物は、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含んでいてもよい。たとえば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。
【0045】
本発明は、さらに軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、例えばRANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物のスクリーニング方法を包含する。
【0046】
該スクリーニング方法は、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に候補化合物を投与し、候補化合物が、上記細胞の分化、増殖を促進するかを検定すればよい。例えば、RANKLを表面に発現している軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞と同様の性質を有する細胞に候補化合物を投与し、候補化合物がRANKLに作用し、上記細胞の分化、増殖を促進するかを検定すればよい。分化、増殖は、例えば細胞のII型コラーゲンα1鎖の発現上昇やアルシアンブルーによる染色により決定することができる。分化、増殖を促進する場合、候補化合物を軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、例えばRANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物であると判断することができる。
【0047】
また、例えば候補化合物をマウス、例えばC57BL/6CrjCrljの局所に投与し、軟骨細胞の増殖が認められるか否かを指標に、該候補化合物が軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物、例えばRANKLに作用し、軟骨前駆細胞及び/又は間葉系幹細胞に作用しそれらの細胞の分化、増殖、成熟を促進し、軟骨細胞分化を増強し、軟骨細胞の増殖を引き起こし、あるいは軟骨基質産生を増加させる化合物であるか否かを判断することができる。
【実施例】
【0048】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
実施例1 ヒト間葉系幹細胞の分化誘導
試薬
実験には合成ペプチドを使用した。合成ペプチドDは配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドであり、9アミノ酸から構成され、二つのシステイン残基がジスルフィド結合により結合した環状ペプチドである。合成ペプチドDはRANKLに結合することが報告されている(Aokiら、J Clin Invest 116: 1525, 2006)。
培養細胞
ヒト間葉系幹細胞はLonza社から購入した。専用の継代培地はLonza社製品を使用した。
ヒト間葉系幹細胞の分化誘導
ヒト間葉系幹細胞を、5×104個/ウェルずつ48ウェルプレート(IWAKI)に播種した。24時間後に培養上清を除去し、軟骨細胞分化誘導培地(Lonza)に切換え、3〜4日毎に培地を交換した。
【0050】
同時に100μMの濃度でペプチドDを添加した(ペプチドD投与群)。さらに100μMのペプチドD及び1ng/mLのBMP-4(R&D)が共添加群についても検討を行った。陽性対照群には1ng/mLBMP-4を添加した。培地交換を繰り返しながら、14日間培養を行った後、10%ホルマリン中性緩衝液にて細胞の固定を行った。固定後、アルシアンブルー液にて4時間染色を行い、色素を洗浄後にプレートの写真を撮影し、さらに6Mグアニジン塩酸溶液を用いて、色素の溶出を行った。溶出液100μLを96ウェルプレートに移し、各ウェルの620nmにおけるOD値をマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)にて測定した。
【0051】
・アルシアンブルー液 (pH2.5)
Alcian blue 8GX 1g
酢酸 3ml
蒸留水 97ml
【0052】
その結果図1Aに示したように、対照群に対しペプチドD添加によりアルシアンブルー染色陽性細胞が増えていることが示され、さらに溶出液の620nmにおける吸光度を測定したところ、ペプチドD添加により有意な吸光度の上昇が認められた(図1B)。これはペプチドDによりヒト間葉系幹細胞が軟骨細胞に分化したことを示す。一方でBMP-4との相乗効果は認められなかった。
【0053】
実施例2 ペプチドDによる軟骨前駆細胞の分化誘導
培養細胞
軟骨細胞マウスEC(胚性がん腫)由来のクローン化細胞株ATDC5は京都大学再生医学研究所の開先生・宿南先生から供与頂いた。継代培地は5%FBS(ニチレイ)を含むDMEM/F-12培地(cellgro)を用いた。
軟骨前駆細胞ATDC5細胞の分化誘導
ATDC細胞を、2×104個/ウェルずつ48ウェルプレート(IWAKI)に播種した。24時間後に培養上清を除去し、10ng/mLインスリン(Roche)を含むDMEM/F-12培地を添加した。3〜4日毎に培地を交換した。
【0054】
同時に25、100μMの濃度でペプチドDを添加した。陽性対照として1及び5ng/mLのBMP-4(R&D)を添加した。さらにペプチドDとBMP-4の相乗効果を確認するため、25μMのペプチドDと1ng/mLのBMP-4を共添加した。培地交換を繰り返しながら、14日間培養を行った後、10%ホルマリン中性緩衝液にて細胞の固定を行った。固定後、アルシアンブルー液にて4時間染色を行い、色素を洗浄後にプレートを乾燥させ、写真を撮影した。
【0055】
マウス軟骨前駆細胞ATDC5細胞においてもペプチドD添加により、アルシアンブルー陽性ノジュール形成が確認され、濃度依存的にその数は増加した(図2)。これはペプチドDによりATDC5細胞が軟骨細胞に分化したことを示す。
ATDC5細胞を用いた場合でも、BMP-4との相乗効果は認められなかった。
【0056】
実施例3 ペプチドD添加時のマウスATDC5細胞における各因子の発現
RT-PCR解析
6cmディッシュ(IWAKI)に5×104個のマウス軟骨前駆細胞ATDC5を播種し、10ng/mLのインスリンを含む軟骨分化誘導培地存在下で7及び14日間培養した。ペプチドD添加群には200μMのペプチドDを添加し、陽性対照群には5ng/mLのBMP-4を添加した。培養後に細胞をPBSで洗浄し、TRIZOL(QIAGEN)1mLに細胞を溶解させ、溶液を回収した。室温で5分間溶液を放置後に0.2mLのクロロホルム(Wako)を添加し、激しく転倒混和させてから、4℃、12000×gの条件で15分間遠心を行い、上清を新しいチューブに移し、0.5mLのイソプロパノールを加えて転倒混和し、室温で10分間放置した。4℃、12000×gの条件で10分間遠心を行い、上清を除去後、70%エタノールにて脱塩処理を行った。乾燥後に87.5μL DEPC水にRNAを溶解し、10μL RDD buffer、2.5μL DNaseを加え室温で10分間放置した。RNeasy MinElute Cleanup Kit(キアゲン)を用いてRNA sampleを処理し、得られたRNAの濃度をナノドロップにて測定した。得られたRNA 250ngを1%アガロースゲルにて電気泳動を行い、RNA分解の有無を確認し、分解のないRNAそれぞれ250ngをRT-PCRに供した。RT-PCRはThermoScript RT-PCR System(Invitrogen)及びrandom primerを用いて行った。
【0057】
cDNA合成後に、マウスII型コラーゲンα1鎖(mCol 2α1)、マウスX型コラーゲン(mCol X)及びマウスアグリカン(mAggrecan)特異的なプライマーを用いてPCRを行った。標準化用にマウスGAPDH特異的なプライマーを用いてPCRを行った。用いたPCRプライマー配列は下に記載した。Ex TaqTM Hot Start Version (Takara Bio Inc.)を用いて以下の条件でPCRを行った。
【0058】
マウスII型コラーゲンα1鎖(mCol 2α1)は95℃で3分初期熱変性を行った後、95℃で10秒、48℃で15秒、68℃で30秒を37サイクル行い、68℃で10分間伸長反応を行った。
【0059】
マウスX型コラーゲン(mCol X)は、95℃で3分初期熱変性を行った後、95℃で10秒、54℃で15秒、68℃で30秒を34サイクル行い、68℃で10分間伸長反応を行った。
【0060】
マウスアグリカン(mAggrecan)は、95℃で3分初期熱変性を行った後、95℃で10秒、54℃で15秒、68℃で30秒を40サイクル行い、68℃で10分間伸長反応を行った。
【0061】
マウスGAPDHは、95℃で3分初期熱変性を行った後、94℃で10秒、58℃で15秒、68℃で30秒を23サイクル行い、68℃で10分間伸長反応を行った。
【0062】
なお、day14のmCol Xについては37サイクルでデータを採取した。
PCRプライマー配列
mCol 2α1-F: 5’- GATGACATTATCTGTGAAG -3’(配列番号8)
mCol 2α1-R: 5’- ATCTCTGATATCTCCAGG -3’(配列番号9)
mCol X-F: 5’- CTTTGTGTGCCTTTCAATCG -3’(配列番号10)
mCol X-R: 5’- GTGAGGTACAGCCTACCAGTT -3’(配列番号11)
mAggrecan-F: 5’- AACTTCTTTGCCACCGGAGA -3’(配列番号12)
mAggrecan-R : 5’- GGTGCCCTTTTTACACGTGAA -3’(配列番号13)
mGAPDH-F : 5’- CACCATGGAGAAGGCCGGGG -3’(配列番号14)
mGAPDH-R : 5’- GACGGACACATTGGGGGTAG -3’(配列番号15)
【0063】
PCR反応後得られたサンプルは、2%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、エチジウムブロマイドを用いて、UV下で特異的なバンドが形成されていることを確認した(図3A及び図4A)。得られた画像は、CSAnalyzer(ATTO)を用いて解析した。また、GAPDHの発現量で標準化し、図3B及び図4Bに示した。
【0064】
その結果、ペプチドD添加によりATDC5細胞において7日目にアグリカンの発現が増加し、II型コラーゲンα鎖の発現が顕著に増加した(図3A及びB)。また14日目になるとペプチドD添加により特にX型コラーゲンの発現が増加した。(図4A及びB)これらの結果は、ペプチドDによりATDC5細胞において軟骨細胞分化に特有の遺伝子発現が上昇していることを示す。
【0065】
実施例4 ATDC細胞を用いたGeneChip解析
試薬/培養細胞
実施例1に記載したペプチドを使用した。培養細胞は実施例2に記載したATDC5を使用した。
【0066】
ATDC細胞を、1×105個/ウェルずつ6cm dish(IWAKI)に播種した。72時間後に培養上清を除去し、10ng/mLインスリン(Roche)及び10ng/mLトランスフェリン(Roche)を含むDMEM/F-12培地を添加した。3〜4日毎に培地を交換した。
【0067】
同時に100μMの濃度でペプチドDを添加した。分化誘導後4日目及び7日目において培地を除去し、PBSで細胞を洗浄後にabsolutely RNA Miniprep Kit(Stratagene)を用いてRNA抽出を行った。このRNAを用いてGeneChip解析(アフィメトリックス法:クラボウ)を行った。ペプチドD添加により発現が検定により有意に増加若しくは低下している各因子について、ペプチドD添加群のシグナル値を対照群のシグナル値で割った値を算出した。
【0068】
その結果を図5に示した。軟骨の基質であるII、IX、XI型コラーゲンα鎖の発現が増加し、分化誘導に関与すると報告されているCTGF、PDGF、TGFβ1、ファイブロモデュリン等の因子や、それらの受容体であるPDGFR1、FGFR2などの発現も増加していた。また軟骨細胞分化を誘導するBMP-7の発現が上昇していた。
【0069】
さらに変形性関節症の悪化に関与していると報告のあったアスポリン、IGFbp2、IGFbp6やADAMTS5の発現がペプチドD添加により抑制されたことも確認できた。これらからペプチドD添加によりATDC細胞は軟骨細胞に分化していることが遺伝子発現からも確認できた。
【0070】
実施例5 ATDC細胞を用いた抗体による細胞増殖活性
試薬/培養細胞
培養細胞は実施例2に記載したATDC5を使用した。抗体は抗RANKLモノクローナル抗体mmB(クローン12A668,サンタクルズ)、1-12H(クローン1-12H,オリエンタル酵母)、mh2(クローン70513,R&D)、sc55(クローン4i167,サンタクルズ)、sc72(クローン500-M46,サンタクルズ)及びモノクローナル抗体FL317(サンタクルズ)を用いた。陽性対照として2x10-8MのFGF2(フィブラストスプレー,科研製薬)を用いた。
【0071】
ATDC5細胞4x103個を96ウェルプレートに播種し、細胞が接着後に無血清培地に交換した。16時間後に各抗体を5μg/mLの濃度で添加し、72時間後に100μL当たり10μLのWST-1(Roche)を添加し、37℃でインキューベートしながら1〜4時間の間に経時的に450nmでの吸光度(参照波長595nm)についてマイクロプレートリーダーを用いて測定した。
【0072】
その結果、抗RANKLポリクローナル抗体FL317、RANKLモノクローナル抗体1-12H、mmBおよびmh2添加により、ATDC5の増殖活性が有意に上昇したことが明らかとなった(図6)。
【0073】
実施例6 抗体による軟骨前駆細胞の分化誘導
試薬/培養細胞
培養細胞は実施例2に記載したATDC5を使用した。抗体は実施例4に記載のmmB抗体および抗RANKLモノクローナル抗体mmC(クローン12A380、ALEXIS)を用いた。
【0074】
ATDC5細胞を、2×104個/ウェルずつ48ウェルプレート(IWAKI)に播種した。72時間後に培養上清を除去し、実施例4に記載した分化誘導培地に切換え、3〜4日毎に培地を交換した。同時に0.5 μg/mLの濃度でmmB抗体およびmmC抗体を添加し、14日間培養を行った後、10%ホルマリン中性緩衝液にて細胞の固定を行った。固定後、実施例2に記載の方法でアルシアンブルー染色を行い、ノジュール形成を観察した。
【0075】
その結果を図7に示した。mmB抗体添加により明らかにアルシアンブルー染色陽性細胞が増え、ノジュール形成が増加することが示された。以上から、mmB抗体添加によりATDC5細胞の軟骨細胞への分化が促進したことが明らかとなった。
【0076】
実施例7 ヒト間葉系幹細胞を用いた3次元培養
試薬/培養細胞
実施例1に記載したペプチドを使用した。ヒト間葉系幹細胞はLonza社から購入した。専用の継代培地はLonza社製品を使用した。
ヒト間葉系幹細胞の3次元培養
軟骨細胞を2次元で培養すると脱分化が起こることが知られている。より自然に近い軟骨細胞の培養系として、3次元培養という手法が採用されている。ヒト間葉系幹細胞を、2.5×105個ずつ15mLチューブ(TPP製)に分注し、1000rpmで4分間室温にて遠心を行った。上清を除去し、軟骨細胞分化誘導培地(Lonza)に10ng/mLTGF-β3(R&D)を添加したもの0.5mLに交換した。3〜4日毎に培地を交換した。同時に50μMおよび150μMの濃度でペプチドDを添加した(低用量および高用量ペプチドD群)。14日目に培養を終了し、4%PFA(Wako)で固定後、顕微鏡下で写真撮影を行った(図8)。このペレットをパラフィン包埋後、標本を作製し、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色を行った(図9)。その結果を図8および9に示した。ペプチドを添加することにより、濃度依存的にペレットの大きさが増大することがわかった。またペプチド添加により増大した部分はアルシアンブルーやサフラニンO染色で陽性となっており、軟骨基質が産生されていることが確認された。3次元培養においてペレットの大きさを増大させたことから、より自然に近い軟骨を形成し、軟骨基質産生を増加させる能力をペプチドDが有していることが示唆された。
【0077】
次にペプチドDとTGF-β3との相乗効果についても検討を行った。軟骨分化誘導培地を用いて、ヒト間葉系幹細胞2.5×105個に対し、40μMのペプチドDおよび10ng/mLTGF-β3の共存下で培地交換を繰り返しながら、21日間培養を行い、3次元ペレットを作製した。4%PFA固定後に顕微鏡下で写真撮影を行い、ペレットの大きさを確認した(図10)。さらにペレットをパラフィン包埋後、標本を作製し、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色を行った(図11)。その結果を図10および11に示した。TGF-β3単独ではペレットの大きさはコントロール群と比して変化はみられなかった。40μMのペプチドDをTGF-β3と共に添加することにより、ペレット自体の大きさが増大していた。さらに軟骨特異的なアルシアンブルーやサフラニンO染色で強い陽性となっており、TGF-β3とペプチドDが軟骨細胞分化や軟骨基質が産生において相乗効果を示すことが確認された(図11)。
【0078】
さらにペプチドDとBMP-2との相乗効果についても検討を行った。軟骨分化誘導培地を用いて、ヒト間葉系幹細胞2.5×105個に対し、40μMのペプチドDおよび100ng/mLBMP-2(R&D)の共存下で培地交換を繰り返しながら、21日間培養を行い、3次元ペレットを作製した。4%PFA固定後に顕微鏡下で写真撮影を行い、ペレットの大きさを確認した(図12)。さらにペレットをパラフィン包埋後、標本を作製し、アルシアンブルー染色およびサフラニンO染色を行った(図13)。その結果を図12および13に示した。BMP-2単独ではペレットの大きさは、コントロール群と比して変化がみられなかった。40μMのペプチドDをBMP-2と共に添加した場合にも、ペプチドD単独で形成されたペレットの大きさと変わりはなかった(図12)。しかしながら、ペレットの標本染色を観察した結果、ペプチドとBMP-2を共添加した群では、アルシアンブルーおよびサフラニンO陽性となっていた。ペレットの大きさには効果はみられないが、BMP-2とペプチドDが軟骨細胞分化や軟骨基質が産生において相乗効果を示すことが確認された。
【0079】
実施例8 ヒト間葉系幹細胞を用いたGeneChip解析
試薬/培養細胞
実施例1に記載したペプチドを使用した。ヒト間葉系幹細胞はLonza社から購入した。専用の継代培地はLonza社製品を使用した。
【0080】
ヒト間葉系幹細胞を、1×105個/ウェルずつ6ウェルプレート(Nunc)に播種し、96時間後に培養上清を除去し、軟骨分化誘導培地を2mL添加した。コントロール群、40μMのペプチドDを添加したペプチドD群、10ng/mLTGF-β3を添加したTGF-β3群、および40μMのペプチドDおよび10ng/mLTGF-β3の共存培養を行った群(ぺプチドD+TGFβ3)の4群を用意した。培養後24時間および96時間で培地を除去し、TRIZOL(Invitrogen)1mLに細胞を溶解させ、RNA抽出を行った。このRNAを用いてGeneChip解析(アフィメトリックス法:クラボウ)を行った。各因子の添加により発現が検定により有意に増加もしくは低下している各因子について、各因子添加群のシグナル値を対照群のシグナル値で割った値を算出した。
その結果を図14に示した。
【0081】
軟骨基質であるアグリカンの発現はペプチドD投与群によって24時間後に上昇し、96時間後にもその発現上昇は維持されていた。一方で、TGFβ3群ではアグリカンの発現は24時間後の発現は対照群と同レベルであったが、96時間後には対照群より発現が低下していた。ペプチドD+TGFβ3群ではTGFβ3による発現低下の影響を受けて、アグリカンの発現低下が示された。また、軟骨細胞分化に関与しているSox9(SRY (sex determining region Y)-box 9)の発現は、24時間および96時間後において3群共に対照群に比して上昇していた。24時間後にはIGF2Rおよびバーシカンの上昇が、さらに96時間後にはIGF-1、LTBP2、及びTGFβ1の発現上昇がペプチドD群で確認された。
なお、図14中の略語については以下に記載した。
【0082】
ACAN : aggrecan
IGF1 : insulin growth factor 1
LTBP2 : latent transforming growth factor protein 2
SOX9 : SRY (sex determining region Y)-box 9
VCAN : vercican
【配列表フリーテキスト】
【0083】
配列番号7 合成ペプチド
配列番号8〜15 プライマー
配列番号16、17 タグ配列
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]