(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エピタキシー基板の表面にバファー層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウエーハの光デバイス層を、接合金属層を介して移設基板に接合して複合基板を形成し、該エピタキシー基板の裏面側から該バファー層にレーザー光線を照射して該バファー層を破壊した後に、該エピタキシー基板を剥離する基板剥離方法であって、
該複合基板の該移設基板側を保持し、該エピタキシー基板の裏面側からバファー層に至る貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
該貫通孔から該バファー層へエアーを注入しながら該エピタキシー基板と該移設基板を相対的に離反させて該エピタキシー基板を剥離する剥離工程と、
から構成される基板剥離方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(実施の形態)について説明する。本発明は、下記に記載する実施の形態の内容に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0013】
図1を用いて、本実施形態に係るレーザー加工機1を説明する。レーザー加工機1は、略直方体状の装置ハウジング2を有している。この装置ハウジング2内には、被加工物としての後述する複合基板を保持するチャックテーブル3が、矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印で示す(Y軸方向)に移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、吸着チャック支持台31と、吸着チャック支持台31上に装着された吸着チャック32とを有している。吸着チャック32の上面である第1の保持面の表面に、被加工物としての後述する複合基板を、図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回動可能に構成されている。このように構成されたチャックテーブル3の吸着チャック支持台31には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ34が配設されている。このように構成されたチャックテーブル3は、図示しない回転駆動機構によって回動させられるようになっている。なお、レーザー加工機1は、チャックテーブル3をX軸方向に加工送りする図示しない加工送り手段及びY軸方向に割り出し送りする図示しない割り出し送り手段を有している。
【0014】
レーザー加工機1は、チャックテーブル3に保持された、後述する複合基板にレーザー加工を施すレーザー光線照射手段4を備えている。レーザー光線照射手段4は、レーザー光線発振手段41と、レーザー光線発振手段41によって発振されたレーザー光線を集光する集光器42とを有している。レーザー加工機1は、レーザー光線発振手段41をチャックテーブル3の上面である第1の保持面に垂直な方向である矢印Zで示す集光点位置調整方向に移動する、図示しない集光点位置調整手段を具備している。
【0015】
レーザー加工機1は、チャックテーブル3の吸着チャック32上に保持された被加工物としての後述する複合基板の表面を撮像し、上記レーザー光線照射手段4の集光器42から照射されるレーザー光線によって加工すべき領域を検出する撮像手段5を具備している。この撮像手段5は、被加工物を照明する照明手段と、この照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、この光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0016】
レーザー加工機1は、被加工物としての後述する複合基板100を収容する複合基板カセットが載置される複合基板カセット載置部6aを備えている。複合基板カセット載置部6aには、図示しない昇降手段によって上下に移動可能に複合基板カセットテーブル61が配設されており、この複合基板カセットテーブル61の表面に複合基板カセット60が載置される。複合基板カセット60に収容される複合基板100は、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着されており、ダイシングテープTを介して環状のフレームFに支持された状態で複合基板カセット60に収容される。複合基板100については、後で詳細に説明する。
【0017】
レーザー加工機1は、複合基板カセット60に収納された加工前の複合基板100を仮置き部7aに配設された位置合わせ手段7に搬出するとともに、加工後の複合基板100を複合基板カセット60に搬入する搬出・搬入手段70と、位置合わせ手段7に搬出された加工前の複合基板100をチャックテーブル3に搬送する搬送手段71とを有している。レーザー加工機1は、チャックテーブル3の表面においてレーザー加工された複合基板100の、後述するエピタキシー基板側を保持する保持手段8を備えている。次に、保持手段8について、
図2を参照して説明する。
【0018】
図2に示す保持手段8は、基台81と、円盤状の基台81を支持する支持軸部82とを有している。基台81は、例えば金属材料によって作られる。基台81は、円筒状の側面と、この側部の両端部に設けられる一対かつ円形の端面とを有する円盤状の部材である。基台81は、一方の端面(上面)中央部から支持軸部82が突出している。また、基台81は、他方の端面(下面)に吸引パッド811と、気体供給部としてのエアー供給部812とが設けられる。
【0019】
吸引パッド811は、支持軸部82及び基台81に設けられた吸引通路82Aと、基台81内で吸引通路82Aから分岐した分岐通路82Aaとを介して、図示しない吸引手段に接続されている。図示しない吸引手段が作動すると、吸引通路82A、分岐通路82Aaを介して吸引パッド811に負圧が作用する。このため、吸引パッド811は、複合基板100のエピタキシー基板11を吸引して保持することができる。
【0020】
本実施形態において、エアー供給部812は、基台81の下面の中央部に配置される。エアー供給部812の数は限定されないが、本実施形態では1個である。吸引パッド811は、エアー供給部812の周囲に複数配置される。吸引パッド811は、エピタキシー基板11を吸引するが、吸引時におけるバランスを考慮して、複数の吸引パッド811はエアー供給部812に対して点対称に配置されることが好ましい。
【0021】
エアー供給部812は、支持軸部82及び基台81に設けられた給気通路82Bを介して、図示しない気体供給源としてのエアー供給源に接続されている。吸引パッド811がエピタキシー基板11を吸引すると、エアー供給部812は、エピタキシー基板11が有する貫通孔11Hと対向する。複合基板100からエピタキシー基板11を剥離させる場合、エアー供給源が作動して、給気通路82Bからエアー供給部812にエアーGが供給される。エアー供給部812は、エアー供給源からのエアーGを、
図3に示すように、エピタキシー基板11が有する貫通孔11Hを介して、エピタキシー基板11と光デバイス層12との間、より具体的にはバファー層13に注入する。本実施形態において、エアー供給部812にはエアーが供給されるが、これに限定されるものではない。例えば、エアー以外の気体(窒素等)をエアー供給部812に供給してもよい。
【0022】
吸引パッド811は、複合基板100のエピタキシー基板11に接して、これを吸引して保持する。エアー供給部812は、エピタキシー基板11に接して貫通孔11HにエアーGを注入する。このため、吸引パッド811及びエアー供給部812とエピタキシー基板11とが密着して、シールされることが好ましい。このため、吸引パッド811及びエアー供給部812は、柔軟性及び可撓性を有する材料(例えば、ゴム等)で製造されることが好ましい。
【0023】
保持手段8は、移動手段83に連結されている。移動手段83は、本実施形態においてはエアシリンダ機構830を有し、そのピストンロッド831が保持手段8の支持軸部82に連結されている。移動手段83は、保持手段8をチャックテーブル3と対向させて位置付ける。このとき、チャックテーブル3が後述する複合基板を保持する、チャックテーブル3が有する第1の保持面と、保持手段8の吸引パッド811及びエアー供給部812とが対向する。移動手段83は、保持手段8を下降又は上昇させることにより、保持手段8とチャックテーブル3とを相対的に近接又は離反する方向に移動させる。チャックテーブル3、保持手段8及び移動手段83は、基板剥離装置として機能する。
【0024】
保持手段8を連結した移動手段83は、
図1に示すように、位置付け手段84を構成する支持アーム841に取り付けられている。この位置付け手段84は、支持アーム841を図示しない移動手段によってY軸方向に移動し、支持アーム841に移動手段83を介して取り付けられた保持手段8を、
図1においてチャックテーブル3が位置付けられている被加工物搬入搬出位置と後述するエピタキシー基板カセット9が載置されるエピタキシー基板カセット載置部9aとに位置付ける。このエピタキシー基板カセット載置部9aには、空のエピタキシー基板カセット9が載置される。
【0025】
次に、光デバイスウエーハ10について説明する。
図4−1、
図4−2に示す光デバイスウエーハ10は、エピタキシー基板11の表面11aに、光デバイス層12がエピタキシャル成長法によって形成されている。エピタキシー基板11は、円板状のサファイア基板であり、例えば、直径が50mmで厚みが600μmである。光デバイス層12は、n型窒化ガリウム半導体層121及びp型窒化ガリウム半導体層122を備える。
【0026】
エピタキシー基板11の表面に光デバイス層12を積層する際には、エピタキシー基板11の表面11aと光デバイス層12を形成するn型窒化ガリウム半導体層121との間に、窒化ガリウム(GaN)からなるバファー層13が形成される。バファー層13の厚みは、例えば1μmである。光デバイスウエーハ10は、本実施形態においては光デバイス層12の厚みが、例えば10μmに形成されている。光デバイス層12は、
図4−1に示すように、格子状に形成された複数のストリート123によって区画された複数の領域に光デバイス124が形成されている。
【0027】
光デバイスウエーハ10のエピタキシー基板11を光デバイス層12から剥離して、移設基板に移し替えるためには、光デバイス層12の表面12aに移設基板を接合する(移設基板接合工程)。すなわち、
図5−1、
図5−2に示すように、光デバイスウエーハ10のエピタキシー基板11の表面11aに形成された光デバイス層12の表面12aに、接合金属層16を介して移設基板15を接合する。移設基板15は、例えば、銅を用いた厚みが1mmの基板である。接合金属層16は、例えば、錫(Sn)である。移設基板15としては、銅の他にも、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)等を用いることができる。また、接合金属層16を形成する接合金属としては、錫の他にも、金(Au)、白金(Pt)、クロム(Cr)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。
【0028】
移設基板接合工程においては、まず、エピタキシー基板11の表面11aに形成された光デバイス層12の表面12a又は移設基板15の表面15aに上述した接合金属を蒸着して、厚みが3μm程度の接合金属層16を形成する。次に、接合金属層16と移設基板15の表面15a又は光デバイス層12の表面12aとを対面させて圧着することにより、光デバイスウエーハ10の光デバイス層12の表面12aに、接合金属層16を介して移設基板15の表面15aを接合して複合基板100を形成する。
【0029】
光デバイスウエーハ10の光デバイス層12の表面12aに移設基板15の表面15aが接合された複合基板100は、
図6に示すように、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に、光デバイスウエーハ10に接合された移設基板15側が貼り着けられる(複合基板支持工程)。したがって、ダイシングテープTの表面に貼り着けられた移設基板15に接合されている光デバイスウエーハ10は、エピタキシー基板11の裏面11bが上側となる。環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼り着けられた複合基板100は、
図1に示す複合基板カセット60に収容され複合基板カセットテーブル61上に載置される。
【0030】
次に、光デバイスウエーハ10のエピタキシー基板11を光デバイス層12から剥離して、移設基板に移し替える場合におけるレーザー加工機1の動作を説明する。複合基板カセットテーブル61上に載置された複合基板カセット60に収容された加工前の複合基板100は、図示しない昇降手段によって複合基板カセットテーブル61が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、被加工物搬出・搬入手段70が進退作動して搬出位置に位置付けられた複合基板100を位置合わせ手段7に搬出する。位置合わせ手段7に搬出された複合基板100は、位置合わせ手段7によって所定の位置に位置合わせされる。
【0031】
次に、位置合わせ手段7によって位置合わせされた加工前の複合基板100は、搬送手段71の旋回動作によってチャックテーブル3が備える吸着チャック32の上面である第1の保持面上に搬送され、吸着チャック32に吸引保持される(複合基板保持工程)。複合基板100が貼着されたダイシングテープTが装着されている環状のフレームFは、チャックテーブル3に装着されたクランプ34によって固定される。
【0032】
上述した複合基板保持工程が終了した後、レーザー加工機1は、図示しない加工送り手段を作動してチャックテーブル3をレーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域に移動させる。レーザー加工機1は、エピタキシー基板11の裏面11b(上面)側からバファー層13にレーザー光線を照射し、バファー層13を破壊する(レーザー光線照射工程)。レーザー光線照射工程で照射されるレーザーは、エピタキシー基板11を形成するサファイアに対しては透過性を有し、バファー層13を形成する窒化ガリウム(GaN)に対しては吸収性を有する波長である。
【0033】
レーザー光線照射工程において、レーザー加工機1は、
図7−1で示すように、レーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域にチャックテーブル3を移動させ、一端(
図7−1において左端)をレーザー光線照射手段4の集光器42の直下に位置付ける。次に、レーザー加工機1は、
図7−2に示すように、集光器42から照射するパルスレーザー光線を、バファー層13の上面におけるスポットSのスポット径が30μmとなるように設定する。このスポット径は、集光スポット径でもよいし、デフォーカスによるスポット径でもよい。
【0034】
次に、レーザー加工機1は、レーザー光線発振手段41を作動させて集光器42からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル3を
図7−1において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動させる。そして、レーザー加工機1は、
図7−3で示すように、レーザー光線照射手段4の集光器42の照射位置に、エピタキシー基板11の他端(
図7−3において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル3の移動を停止する(レーザー光線照射工程)。レーザー加工機1は、レーザー光線照射工程を、バファー層13の全面に対応する領域に対して行う。その結果、バファー層13が破壊され、バファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失する。
【0035】
レーザー光線照射工程における加工条件は、例えば、次のように設定されている。
光源:YAGパルスレーザー
波長:266nm
繰り返し周波数:50kHz
平均出力:0.12W
パルス幅:100ps
スポット径:φ30μm
加工送り速度:600mm/秒
【0036】
バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程において、レーザー加工機1は、集光器42をエピタキシー基板11の最外周に位置付け、チャックテーブル3を回転させつつ集光器42を中心に向けて移動させることにより、バファー層13の全面にレーザー光線を照射し、バファー層13を破壊してバファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能を喪失させてもよい。
【0037】
バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程が終了したら、次に、本実施形態に係る基板剥離方法が行われる。この基板剥離方法は、エピタキシー基板11の表面にバファー層13を介して光デバイス層12が積層された光デバイスウエーハ10の光デバイス層12を、接合金属層16を介して移設基板15に接合して複合基板100を形成し、エピタキシー基板11の裏面11b側からバファー層13にレーザー光線を照射してバファー層13を破壊した後に、エピタキシー基板11を剥離するものである。
【0038】
まず、バファー層13が破壊された複合基板100の移設基板15側を保持し、エピタキシー基板11の裏面11b側からバファー層13に至る貫通孔が形成される(貫通孔形成工程)。貫通孔形成工程において、レーザー加工機1は、図示しない加工送り手段を作動してチャックテーブル3を移動させ、複合基板100の中心部がレーザー光線照射手段4の集光器42のレーザー光線照射領域に位置するように移動させる。次に、レーザー加工機1は、
図7−4に示すように、エピタキシー基板11の裏面11b(上面)側からエピタキシー基板11にレーザー光線を照射しバファー層13に至る貫通孔11Hをエピタキシー基板11に形成する。貫通孔形成工程で照射されるレーザーは、エピタキシー基板11を形成するサファイアに対して吸収性を有する波長である。
【0039】
本実施形態では、レーザー光線によってエピタキシー基板11に貫通孔11Hを形成したが、貫通孔11Hを形成する手段はこれに限定されるものではない。また、貫通孔形成工程は、バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程の後でなくてもよい。例えば、複合基板保持工程の後であってレーザー光線照射工程の前に、貫通孔形成工程が行われてもよい。
【0040】
本実施形態において、貫通孔11Hは、円板状のエピタキシー基板11の中央部に形成されるが、貫通孔11Hが形成されるエピタキシー基板11の位置は問わない。なお、貫通孔11Hは、分割予定ライン、すなわち、
図4−1、
図5−1に示すストリート123上に位置付けて形成されることが好ましい。このようにすれば、レーザー光線を用いて貫通孔11Hを形成する際に、光デバイス層12に形成された光デバイス124にレーザー光線が与える影響を回避することができる。本実施形態において、エピタキシー基板11には1個の貫通孔11Hが形成されるが、貫通孔11Hの数はこれに限定されない。貫通孔11Hの数は複数の貫通孔11Hがエピタキシー基板11に形成される場合、保持手段8は、それぞれの貫通孔11Hに対応した複数のエアー供給部812を有する。
【0041】
貫通孔形成工程の後、レーザー加工機1は、最初に複合基板100を吸引保持した位置にチャックテーブル3を戻す。そして、レーザー加工機1は、位置付け手段84の図示しない移動手段を作動させて、保持手段8をチャックテーブル3の直上に位置付け、さらに、エアシリンダ機構830を有する移動手段83を作動させて保持手段8を下降させる。そして、レーザー加工機1は、
図8−1に示すように吸引パッド811とエアー供給部812とを、チャックテーブル3に吸引保持されている複合基板100を形成するエピタキシー基板11の裏面11bである上面に接触させる。
【0042】
次に、レーザー加工機1は、図示しない吸引手段を作動させることにより、吸引パッド811に、複合基板100を形成するエピタキシー基板11の裏面11bである上面を吸引保持させる。したがって、複合基板100は、移設基板15がダイシングテープTを介してチャックテーブル3に吸引保持されるとともに、エピタキシー基板11が保持手段8に吸引保持されることになる。
【0043】
次に、レーザー加工機1は、図示しないエアー供給源を作動させてエアー供給部812に気体(エアー)を供給する。そして、レーザー加工機1は、
図8−2に示すように、エピタキシー基板11の裏面11bを保持した状態で、エアー供給部812から貫通孔11Hにエアーを注入しながら、チャックテーブルとしてのチャックテーブル3と、保持手段8とを相対的に離反する方向に移動させ、複合基板100からエピタキシー基板11を剥離する(剥離工程)。
【0044】
剥離工程においては、上述したように、エピタキシー基板11と光デバイス層12との間のバファー層13に貫通孔11Hに注入されたエアーが注入される。このため、エピタキシー基板11と光デバイス層12との間に注入されたエアーの圧力により、エピタキシー基板11と光デバイス層12とには、両者が離れる方向の力が作用する。レーザー光線照射工程によって、エピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失させられているため、剥離工程において移動手段83によって保持手段8がチャックテーブル3から離れる方向に移動すると、光デバイス層12からエピタキシー基板11が剥離し、光デバイス層12が移設基板15に移設される。
【0045】
剥離工程の後、レーザー加工機1は、位置付け手段84の図示しない移動手段を作動させて、保持手段8を
図1に示すエピタキシー基板カセット載置部9aに載置されているエピタキシー基板カセット9の直上に位置付け、さらに移動手段83を作動させて保持手段8を下降させる。そして、レーザー加工機1は、保持手段8が備える吸引パッド811による吸引保持を解除することにより、吸引パッド811に保持されていたエピタキシー基板11をエピタキシー基板カセット9に収容する。
【0046】
また、レーザー加工機1は、光デバイス層12が移設された移設基板15を吸引保持しているチャックテーブル3の吸引保持を解除するとともに、クランプ34による環状のフレームFの固定を解除する。次に、レーザー加工機1は、搬送手段71を作動させて光デバイス層12が移設された移設基板15(環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに貼着されている状態)を位置合わせ手段7に搬送する。そして、レーザー加工機1は、被加工物搬出・搬入手段70を作動させて、位置合わせ手段7に搬送された光デバイス層12が移設された移設基板15を、複合基板カセット60の所定位置に収納する。
【0047】
以上、基板剥離装置としてのチャックテーブル3、保持手段8及び移動手段83は、レーザー光線照射工程が行われた複合基板100の移設基板15をチャックテーブル3が吸引保持するとともに、エピタキシー基板11を保持手段8が吸引保持し、エアー供給部812からエピタキシー基板11の貫通孔11Hにエアーを注入しながら、移動手段83が保持手段8をチャックテーブル3に対して離反する方向に移動させる。バファー層13を破壊するレーザー光線照射工程によってバファー層13によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との結合機能が喪失しているので、基板剥離装置が上述した動作をすることにより、エピタキシー基板11を容易に剥離するとともに、光デバイス層12を移設基板15に移設することができる。また、移動手段83によるエピタキシー基板11と光デバイス層12との剥離に加え、貫通孔11Hからエピタキシー基板11と光デバイス層12との間に注入されたエアーの圧力を利用して、エピタキシー基板11と光デバイス層12とを剥離するので、両者を容易に剥離することができる。
【0048】
さらに、エピタキシー基板11と光デバイス層12との間に注入されたエアーの圧力を利用するので、エピタキシー基板11及び光デバイス層の全領域に対して均等に力を作用させることができる。その結果、エピタキシー基板11及び光デバイス層12に無理な力が作用することを抑制できるので、両者の割れ又は傷付き等を効果的に抑制できる。その結果、光デバイス層12の歩留まりが向上するとともに、高価なエピタキシー基板11を何度も再利用することができる。
【0049】
なお、上記実施形態における保持手段8は、吸引パッド811によってエピタキシー基板11を吸引し、保持するが、エピタキシー基板11の保持手段はこれに限定されない。例えば、両面テープを用いてエピタキシー基板11を保持手段8に貼り付けたり、エピタキシー基板11と保持手段8との間の液体を凍らせたりすることによって、保持手段8がエピタキシー基板11を保持してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、貫通孔整形工程においてエピタキシー基板11に貫通孔11Hを形成したが、貫通孔11Hの形成はこれに限定されるものではない。例えば、予め貫通孔11Hを有するエピタキシー基板11に、
図4−2に示すバファー層13を形成することにより、裏面11b側からバファー層13に至る貫通孔11Hが複合基板100のエピタキシー基板11に形成されるようにしてもよい。