(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押出成形装置の押出方向において、前記内ダイ最外部と前記外ダイ最外部とが面一に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の押出成形装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では成形性が安定しない。つまり、温度や圧力、熱硬化性樹脂組成物の組成などによって熱硬化反応が急激に進行したり、局部的に硬化反応が進行したり、硬化が不十分になったりすることにより、連続して安定な成形を行うことが困難であった。
【0008】
図9はスクリュー方式ではなく、従来多く用いられているスパイダー方式の異方性ボンド磁石の押出成形装置を示す図であり、
図10は
図9におけるA−A線断面図である。スクリュー40は内ダイ50と連結されておらず、内ダイ50はスパイダー96により固定されている。内ダイの固定方法にはスパイダー方式やスパイラル方式があるが、いずれの方法においても、樹脂の流路は激しく変化する。このような狭い箇所では、温度や圧力の分布により局部的に硬化するという問題があった。
【0009】
また、特許文献2にはスクリューを備える押出機で熱硬化性樹脂の押出成形をする方法が開示されており、この方法によれば成形性は改善されるが、従来、熱硬化性樹脂をレジンとした異方性のボンド磁石をスクリュー方式で押出成形するような技術は提案されていなかった。特許文献2では磁場配向について考慮されていないため、異方性ボンド磁石の成形に特許文献2の方法を適用しても、配向が乱れ、磁力の強いボンド磁石とはならないという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、スクリュー式押出機で熱硬化性樹脂を硬化させながら安定的に成形する一方で、配向が乱れることなく異方性ボンド磁石を得ることが可能なボンド磁石の押出成形装置および押出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。
【0012】
本発明は、異方性磁性材料と熱硬化性樹脂とを有するボンド磁石組成物を押出成形する押出成形装置であって、円筒状ボンド磁石の外周を成形するための貫通孔を有する外ダイと、前記貫通孔内に配置され、前記ボンド磁石の内周を成形するための内ダイと、前記ボンド磁石の材料を押し出すためのスクリューと、を有し、前記内ダイは前記スクリューと連結されて回転可能とされており、前記内ダイに配向用磁石が埋設され、前記押出成形装置の押出方向において、前記配向用磁石は前記外ダイ端部まで配置されていることを特徴とする押出成形装置である。
【0013】
また、本発明は、前記押出成形装置の押出方向において、前記配向用磁石端部と前記外ダイ端部とが面一に配置されていることを特徴とする上記した押出成形装置である。
【0014】
また、本発明は、前記押出成形装置の押出方向において、前記配向用磁石は前記外ダイ端部よりも突出して配置されていることを特徴とする上記した押出成形装置である。
【0015】
また、本発明は、前記配向用磁石は、前記内ダイから露出されていることを特徴とする上記した押出成形装置である。
【0016】
また、本発明は、前記押出成形装置の押出方向において、前記内ダイ最外部と前記外ダイ最外部とが面一に配置されていることを特徴とする上記した押出成形装置である。
【0017】
また、本発明は、異方性磁性材料と熱硬化性樹脂とを混合した組成物をスクリュー式押出機で押出成形する方法であって、前記スクリューに連結して回転可能とされた内ダイに配向用磁石が埋設され、前記押出成形装置の押出方向において前記配向用磁石が前記外ダイ端部まで配置されている押出成形装置を用いて、前記内ダイと前記組成物とを一体回転させながら熱硬化させて成形することを特徴とする円筒状ボンド磁石の押出成形方法である。
【0018】
また、本発明は、前記異方性磁性材料は、Sm−Fe−N系磁性粉末であることを特徴とする上記した円筒状ボンド磁石の押出成形方法である。
【0019】
また、本発明は、前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする上記した円筒状ボンド磁石の押出成形方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スクリュー式押出機で熱硬化性樹脂を硬化させながら安定的に成形する一方で、配向が乱れることなく異方性ボンド磁石を得ることが可能なボンド磁石の押出成形装置および押出成形方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る押出成形装置及び押出成形方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る押出成形装置の全体を示す説明図(断面図)である。押出成形装置は
図1に示すように異方性磁性材料と熱硬化性樹脂とを有するボンド磁石組成物を前方に押し出すためのスクリュー部1と、スクリュー40に連結された内ダイ50と外ダイ60からなる金型部2とを有する。
外ダイ60は、円筒状ボンド磁石の外周を成形するための貫通孔を有しており、貫通孔内にはボンド磁石の内周を成形するための内ダイ50が配置されている。内ダイ50はスクリュー40と連結されることで回転可能とされており、内ダイ50の内部に配向用磁石70が埋設されている。
【0024】
スクリュー部1ではスクリュー40により、異方性磁性材料と熱硬化性樹脂とを混合したボンド磁石組成物を金型部2に送り込む。ボンド磁石組成物は、室温において塊状であっても、水あめ状であってもよい。ボンド磁石組成物はシリンダー30内に、ホッパー80から供給される。スクリュー40の外側の周囲にシリンダー30が設けられており、必要に応じてシリンダー30を加熱してボンド磁石組成物を送り易い状態にすることもできる。ただし、この加熱はボンド磁石組成物の架橋反応が開始しない程度に抑える必要がある。また、逆にスクリュー40とシリンダー30によるせん断力により発熱が大きくなる場合は、シリンダー30を冷却することもある。
【0025】
金型部2に送り込まれたボンド磁石組成物は、スクリュー40に連結された内ダイ50の外径と外ダイ60の内径が作り出す空間により円筒状に造形される。すなわち、成形された円筒状ボンド磁石の内周が内ダイ50の外径に、ボンド磁石の外周が外ダイ60の内径にそれぞれ対応する。ボンド磁石成形品の外周と内周は、内ダイ50の外径と外ダイ60の内径を変更することで自由に変更することができる。
【0026】
さらにボンド磁石組成物が前方に進むと、内ダイ50には配向用磁石70が埋設されている。ここで言う「埋設」とは、少なくとも一部が内ダイ50に埋まっている状態のことをいい、ボンド磁石組成物が接しない部分においては一部が露出されていても良いものとする。
【0027】
配向用磁石70の一例の拡大図を
図2に示す。これは内周6極ボンド磁石を成形するための配向用磁石で、円柱状とされており、6個の磁石ピースから出来ている。ボンド磁石成形品の極数を変更したい場合は、磁石ピースの数と形状を変更することで対応することができる。また、配向用磁石と磁気回路を形成しない様に、外ダイ60は非磁性鋼とすることが好ましい。
【0028】
ボンド磁石組成物が、配向用磁石70が埋設されている箇所に到達すると、配向用磁石が出す磁場に沿ってボンド磁石組成物中の磁性材料が配向する。更に前方に進むと、ヒーター(図示しない)によりボンド磁石組成物が加熱され、熱硬化性樹脂の架橋反応が進行し配向が固定される。
【0029】
ここで、配向用磁石70は外ダイ60の先端まで、内ダイ50に埋設する必要がある。言い換えると、前記押出成形装置の押出方向において、配向用磁石70は外ダイ60の端部まで配置されている。ここで外ダイ60の端部とは、吐出口側においてボンド磁石組成物と外ダイ60の内径が接する部分における端部のことをいう。例えば、
図1、
図5(c)の場合は、それぞれ、外ダイ端部90として図示される部分のことをいう。なお、
図5(c)の場合吐出口側の最も外側に位置する部分のことを、外ダイ最外部92というものとする。
図1の場合においては、外ダイ端部90は、外ダイ最外部と同じとなる。
【0030】
図3は、金型部2の押出成形装置の吐出口側における拡大図である。ここで、距離xとは、配向用磁石70の端部と外ダイ端部90との距離のことである。ここで、x=0であれば、配向用磁石70の端部と外ダイ端部90とが面一となるように配置されることとなる。
【0031】
ボンド磁石組成物は、スクリュー40と連結されて回転する内ダイ50と共に回転する。配向用磁石70がない場合、ボンド磁石組成物の回転は不規則になる。それに対して、配向用磁石70を内ダイ50に埋設した場合、配向用磁石70とボンド磁石組成物との磁気的吸着により、配向用磁石70を埋設した区間では内ダイ50とボンド磁石組成物は一体となり回転する。この一体回転を保持したまま、架橋反応を終了して熱硬化させ、吐出口に到達することが、異方性磁性材料の配向には重要な要素となる。
すなわち、内ダイ50とボンド磁石組成物が一体となり回転することで、長手方向にまっすぐに各磁極が配向した円筒状ボンド磁石を得ることが可能になる。
【0032】
図4は、ボンド磁石の配向について説明するための説明図であり、ボンド磁石成形品の内周側にマグネットビューアーを載せて観察した図である。磁極は黒く(図中薄墨で示す)、磁極と磁極の切り替わりが白く見える。長手方向にまっすぐに配向している場合、
図4の配向角度θは0°となる。
【0033】
本実施形態において、ボンド磁石組成物は外ダイ60からの抵抗を受けながら内ダイ50と共に回転している。配向用磁石70が外ダイ端部90よりも内側に位置する場合、例えば
図3中のx=5mmの場合、ダイの吐出口付近では配向用磁石70が存在しないため、ボンド磁石組成物を吸着する効果が無くなり、ボンド磁石組成物は外ダイ60との抵抗により内ダイ50との一体回転が出来なくなり、成形品にねじれが生じる。この際に得られたボンド磁石成形品の
図4中の配向角度θは、約30°となり、各磁極は長手方向に対してねじれた配向となってしまい、所望のボンド磁石成形品が得られなくなる。
【0034】
以上より、本実施形態においては、一体回転を保持したまま、架橋反応を終了して硬化させるために配向用磁石70が外ダイ端部90まで配置されることとなる。
図5にこのような配置を満たすものを例示する。
【0035】
図5(a)は、吐出口側(押出方向)において、配向用磁石70の端部と外ダイ端部90とが面一に配置されている。
図1の例と比較して、配向用磁石70が内ダイ50から露出せずに、完全に内ダイ50の内部に埋め込まれており、吐出側において内ダイ50の最外部が外ダイ60の最外部よりも突出するように形成されている。このように配向用磁石70を外部に露出させずに内ダイ50に埋め込むことにより、配向用磁石70の割れや欠けを防止することができる。
【0036】
図5(b)は、吐出口側(押出方向)において、配向用磁石70の端部が外ダイ端部90よりも突出するように配置されている。このように配向用磁石70が突出されていても構わない。
【0037】
図5(c)は、外ダイ60が吐出口側(押出方向)において段差を有しており、外ダイ端部90よりも吐出口側に外ダイ最外部92を有している。さらに、配向用磁石70の全体が内ダイ50に埋設されており、内ダイ最外部94と外ダイ最外部92とが面一となるように配置されている。
【0038】
図5(d)は、外ダイ60が吐出口側(押出方向)においてテーパー形状とされており、
図5(c)の例と同様に外ダイ端部90よりも吐出口側に外ダイ最外部92を有している。さらに、配向用磁石70の全体が内ダイ50に埋設されており、内ダイ最外部94と外ダイ最外部92とが面一となるように配置されている。
【0039】
以上に例示したように、外ダイ端部90よりも配向用磁石70のほうが吐出口側に突出されていれば、ねじれが生じることがない。
【0040】
本実施形態のような押出成形法は、一般的にボンド磁石の成形法として用いられるその他の成形方法である射出成形や圧縮成形のバッチ式に対して連続式となるため、生産性が非常に優れる。さらに、連続して成形することができるため、射出成形や圧縮成形では困難であった長尺品の成形が容易となる。
【0041】
以下、本実施形態に用いることのできる各構成について詳細に説明する。
(配向用磁石70)
配向用の永久磁石に使用する磁石の材料は、Brが1T以上のものが好ましく、例えばNd−Fe−B系焼結磁石やSm−Co系焼結磁石を用いることができる。磁力の大きい磁石を使うと、配向磁場が強くなり、ボンド磁石の表面磁束密度も高く出来る。
また、上述のように押出成形で得られたボンド磁石は、二次硬化を行うことが好ましい。
また、必要であれば着磁工程を行ってもよい。着磁を行うことで、表面磁束密度はより高くなる。
【0042】
(異方性磁性材料)
本発明で用いられる異方性の磁性材料としては、フェライト系、Sm−Co系、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系などが挙げられる。粉末状であることが好ましい。
フェライト系は、歴史が古く安価であることから最も普及しているが、希土類系よりも磁力が弱く、成形品が小さくなると磁力が不足することがある。そのため、磁力の強いボンド磁石を作製する必要がある場合には、Sm−Co系、Nd−Fe−B系、Sm−Fe−N系の希土類系磁性粉末を用いることが好ましい。これは、希土類系の異方性磁性粉末は、配向の際に印加される磁場によって、磁化の方向が非常に揃い易く、結果的にボンド磁石の磁力が強くなるためである。また、粒子径が約3μmで略球形であるため押出成形性が優れることから、Sm−Fe−N系であることが好ましい。
上記の磁性材料は1種類単独でも、2種類以上を混合物としても使用可能である。また必要に応じて、耐酸化処理やカップリング処理を施しても良い。
【0043】
(熱硬化性樹脂)
本発明においては、レジンとして熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂は架橋反応を伴う。成形前にはモノマーである熱硬化性樹脂は、成形中やその後の加熱、紫外線の照射等により、三次元的な架橋反応によりポリマーへと変化する。架橋反応した熱硬化性樹脂は、加熱時の樹脂の溶融による変形や、低分子成分の揮発が少ないため、高温での使用に適している。
【0044】
本発明に使用可能な熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、種々の熱硬化性樹脂を使用することができ、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、アリル樹脂等を使用することができる。
【0045】
本発明に使用可能なエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂といったグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂といったグリシジルアミン型エポキシ樹脂や、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂といったグリシジルエステル型エポキシ樹脂、そして、脂環型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂のほか、ゴム変性エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0046】
上記エポキシ樹脂用の硬化剤としては、特に限定はされず従来公知のものを広く使用でき、例えば第1級アミン、第2級アミン、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、これらは一種単独で使用してもよいし、二種以上混合して使用してもよい。特に硬化剤としてフェノール樹脂を用いたものは耐熱性、耐水性に優れているため好ましい。
【0047】
上記エポキシ樹脂用の硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、イミダゾール類、イミダゾリウム塩、アミン類、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などがあげられる。これらの硬化促進剤において、押出スクリュウ滞留中での硬化反応が抑えられ、安定成形性を高められる点から、イミダゾール類の硬化促進剤を用いることが好ましい。
【0048】
本発明に使用可能なフェノール樹脂としては、特に限定されず従来公知のものが使用でき、例えばノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、あるいはアニリン、ロジン、シジクロペンタジエン、不飽和脂肪酸等で変性した変性フェノール樹脂、フェノール変性メラミン樹脂などのフェノールで変性した他種材料との複合物等を挙げることができる。ノボラック型フェノール樹脂の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン系硬化剤が好適に使用可能である。
【0049】
不飽和ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、従来公知のものが広く使用可能であるが、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルフタレートなどの不飽和結合を1分子あたり2個以上有するポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0050】
上記不飽和ポリエステル樹脂の架橋剤としては、重合性二重結合を有しているものであれば特に限定されず従来公知のものを広く使用可能であるが、例えばスチレン、ジアリルフタレート、メタクリル酸メチル、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、ビニルトルエン、モノクロルスチレン、アクリロニトリル、トリアリルイソシアヌレート等のビニル系単量体、ジアリルフタレートプレポリマー等が挙げられる。
【0051】
上記不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、通常過酸化物が使用可能であるが、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等が使用可能である。
【0052】
ユリア樹脂としては、カチオン性、ノニオン性あるいはアニオン性の各種ユリア樹脂を挙げることができる。上記ユリア樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては特に限定されず、例えば、無機酸、有機酸、酸性硫酸ナトリウムのような酸性塩からなる顕在性硬化剤;カルボン酸エステル、酸無水物、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の塩類のような潜在性硬化剤が挙げられる。なかでも、貯蔵寿命等から潜在性硬化剤が好ましい。
【0053】
メラミン樹脂としては、メラミン樹脂単独のほかに、ユリア樹脂変性物であるユリア・メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0054】
ポリイミド樹脂としては、テトラカルボン酸またはその無水物とジアミンとの反応によって得られるポリイミド樹脂のほかに、マレイミド変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0055】
アリル樹脂としては、ジアリルフタレートモノマーの重合及び硬化反応によって得られるものである。上記ジアリルフタレートモノマーとしては、例えば、オルソ体、イソ体、テレ体が挙げられる。硬化促進剤としては特に限定されないが、例えば、t−ブチルパーベンゾエートとジ−t−ブチルパーオキシドとの併用が好適である。
【0056】
これら熱硬化性樹脂は、単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0057】
磁性材料と樹脂の配合比率は、樹脂の種類にもよるが、ボンド磁石組成物全体に対する磁性材料の割合が45〜65Vol%とすることが望ましい。また、酸化防止剤、滑剤等をさらに混合することもできる。
【0058】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【0059】
<実施例1>
(磁性材料の準備)
磁性材料には、異方性のSm−Fe−N系磁性材料(平均粒子径3μm)を用いる。
【0060】
(磁石組成物の作製)
上記Sm−Fe−N系磁性材料に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(主剤)と硬化剤、そして必要に応じて少量の硬化促進剤等添加剤を添加した後、ミキサーで充分混合した。得られた混合粉を、2軸混練機を用いて硬化反応がほとんど進行しない温度域で混練し、冷却後、適当な大きさに切断しボンド磁石組成物を得た。
【0061】
(押出成形)
図1は、本実施例1で使用した押出成形装置を示す図である。外ダイの内径は19mm、内ダイの外径は17mmである。
図2に示すように配向用磁石70は、6個の磁石ピースを組み立てて円柱状とした。組み立てた配向用磁石は、外周側に6極の磁力を発している。これを内ダイに埋設した。この時、
図3に示す配向用磁石と外ダイとの距離xは、0mmであり、配向用磁石70の端部と外ダイ端部90とが面一とされている。温度設定は、スクリュー部1を110℃、金型部2を180℃に設定した。この様にして、外径19mm、内径17mm、長さ1000mm、内周12極の異方性円筒状ボンド磁石を得た。切断機を用いて長さ20mmに切断した。
【0062】
(着磁工程)
得られた成形品を着磁ヨークにより着磁を行う。着磁条件は、静電容量1000μF、電圧2.5KVであり、そのとき流れる電流は18.0KAである。
【0063】
(評価)
配向角度の評価は、ボンド磁石成形品を半分に割って、マグネットビューアーをボンド磁石成形品の内周表面に載せて観察した。その様子を
図6に示す。この時の配向角度θは0°であった。
表面磁束密度の評価は、マグネットアナライザーにより、円筒状ボンド磁石内周の表面磁束密度を測定した。測定は、マグネットアナライザーの360°回転ステージに円筒状ボンド磁石を固定し、プローブを円筒状ボンド磁石の内周側面に接触させ、ステージを360°回転させることで行った。この時の表面磁束密度は2300Gであった。
【0064】
<比較例1>
押出成形において、
図3に示す距離xが5mmである金型、すなわち配向用磁石70の端部よりも、外ダイ端部90が5mm吐出口側(押出方向)に突出している金型を使用した以外は実施例1と同様の方法で異方性円筒状ボンド磁石を作製した。
図7に示すように、配向角度評価において、配向角度θは30°であった。表面磁束密度は1700Gであった。
【0065】
<比較例2>
押出成形において、
図3に示す距離xが10mmである金型、すなわち配向用磁石70の端部よりも、外ダイ端部90が10mm吐出口側(押出方向)に突出している金型を使用した以外は実施例1と同様の方法で作製した。
図8に示すように、配向角度評価において、配向角度θは70°であった。表面磁束密度は1300Gであった。
【0066】
表1に実施例及び比較例の配向角度及び表面磁束密度を示す。
【0068】
表1から判るように、実施例1では比較例のように配向が乱れておらず、また、表面磁束密度は比較例よりも強くなっているのが判る。