(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質の隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体と、前記流路の排気ガス流入側又は排気ガス流出側に交互に設けられた封止部とを有し、前記多孔質隔壁に排気ガスを通過させ、排気ガス中に含まれる微粒子を除去するセラミックハニカムフィルタであって、
前記セラミックハニカム構造体を構成する結晶相の主成分がコーディエライトであり、
前記多孔質隔壁の気孔率が45〜75%、
水銀圧入法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径A(μm)、及びバブルポイント法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径B(μm)が、式:
40<(A-B)/B×100≦70
を満たし、
バブルポイント法で測定される前記隔壁の最大細孔径が100μm以下であり、
前記セラミックハニカム構造体の20〜800℃間の熱膨張係数が13×10-7/℃以下であることを特徴とするセラミックハニカムフィルタ。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中には、炭素質からなる煤と高沸点炭化水素成分からなるSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とするPM(Particulate Matter:粒子状物質)が含まれており、これが大気中に放出されると、人体や環境に悪影響を与えるおそれがある。このため、ディーゼルエンジンの排気管の途中に、PMを捕集するためのセラミックハニカムフィルタを装着することが従来から行われている。排気ガス中のPMを捕集、浄化するセラミックハニカムフィルタの一例を
図1及び
図2に示す。セラミックハニカムフィルタ10は、多数の流出側封止流路3及び流入側封止流路4を形成する多孔質隔壁2と外周壁1とからなるセラミックハニカム構造体と、流出側封止流路3及び流入側封止流路4の排気ガス流入側端面8及び排気ガス流出側端面9を市松模様に交互に封止する上流側封止部6aと下流側封止部6bとからなる。
【0003】
このセラミックハニカムフィルタ10は、
図2に示すように、金属製収納容器12内に支持部材14を介して圧着把持され、支持部材13a,13bを介して軸方向に挟持され収納されている。支持部材14は一般に金属メッシュ及び/又はセラミックス製のマットで形成されている。セラミックハニカムフィルタ10をディーゼル機関に装着して使用する際に、エンジン、路面等からの機械的振動や衝撃が、支持部材13a,13b及び支持部材14を介してセラミックハニカムフィルタ10に伝わり負荷を与える。外径200 mmを超えるような大型のセラミックハニカムフィルタは、振動や衝撃による負荷をより大きく受けるため、高い強度を維持させることが要求される。
【0004】
セラミックハニカムフィルタに求められる特性の中で、PMの捕集効率、圧力損失、PMの捕集可能時間(捕集開始から一定圧力損失に達するまでの時間)の3つが重要である。特に捕集効率と圧力損失とは相反する関係にあり、捕集効率を高くしようとすると、圧力損失が増大し捕集可能時間が短くなり、また圧力損失を低く設計すると、捕集可能時間は長くできるが捕集効率が悪くなる。これらの相反するフィルタの特性を全て満足させるため、セラミックハニカム構造体の気孔率、気孔径分布等を制御する技術が従来から検討されてきた。
【0005】
特表2003-534229号は、コーディエライト相を主成分とし、25〜800℃において4×10
-7/℃よりも大きく13×10
-7/℃よりも小さい熱膨張係数を有し、通気度及び気孔サイズ分布が、式:2.108×(通気度)+18.511×(全気孔容積)+0.1863×(4〜40μmの気孔を含む全気孔容積のパーセンテージ)>24.6を満足するセラミック構造体を開示している。
【0006】
特表2007-525612号は、25μm未満の中間孔直径d50と、Pm≦3.75の関係を満たす孔サイズ分布及び気孔率とを有するディーゼル微粒子フィルタを開示している。ここで、Pmは、体積を基礎とした孔サイズの累積分布が10%、50%及び90%となる孔直径をそれぞれd10、d50及びd90(d10<d50<d90である)としたとき、Pm = 10.2474{1/((d50)
2(%気孔率/100))}+0.0366183(d90)-0.00040119(d90)
2+0.468815(100/%気孔率)
2+0.0297715(d50)+1.61639(d50-d10)/d50で表される。
【0007】
特表2003-534229号及び特表2007-525612号に記載の技術は、水銀圧入法で測定された細孔の構造(大きさ及び分布)のみを所定の範囲になるように規定したものなので、特に人体への影響が大きいと考えられているナノサイズのPMを効率よく捕集し、かつ圧力損失を低く維持できるセラミックハニカムフィルタを設計することは困難である。
【0008】
特開2006-095352号は、気孔率が45〜70%であり、前記基材の水銀圧入法により測定される平均細孔径A(μm)、及びバブルポイント法により測定される平均細孔径B(μm)から求められる平均細孔径差率[{(A-B)/B}×100]が35%以下であり、平均細孔径Bが15〜30μmであり、かつバブルポイント法で測定される最大細孔径が150μm以下である多孔質の基材で隔壁を形成したハニカムフィルタを開示している。
【0009】
特開2006-095352号は、水銀圧入法により測定される平均細孔径Aは隔壁表面の細孔の平均径を反映する値であり、バブルポイント法により測定される平均細孔径Bは隔壁内の最小径の細孔径を反映する値なので、
図4(a)に記載されたような隔壁内部の径が小さく隔壁表面の径が大きな細孔構造を有する隔壁の場合、バブルポイント法で測定した平均細孔径Bは水銀圧入法で測定した平均細孔径Aに比べてかなり小さな値となり、一方、
図4(b)に記載されたような隔壁内部の径と隔壁表面の径が同等の細孔構造、及び
図4(c)に記載されたような隔壁内部の径が大きく隔壁表面の径が小さな細孔構造を有する隔壁の場合、水銀圧入法及びバブルポイント法で測定した平均細孔径A及びBはあまり変わらない値となると記載している。
【0010】
特開2006-095352号は、前記平均細孔径差率が35%以下、すなわち水銀圧入法により測定される平均細孔径Aとバブルポイント法により測定される平均細孔径Bとの差が小さい隔壁は、隔壁内部の径よりも隔壁表面の径が大きな細孔(
図4(a))が少なく、隔壁内部の径に対する隔壁表面の径の比が比較的小さい、すなわち隔壁内部の径と隔壁表面の径とが同等の細孔(
図4(b))、及び隔壁内部の径よりも隔壁表面の径が小さな細孔(
図4(c))が多い構造を有すると記載している。すなわち、特開2006-095352号に記載のハニカムフィルタは
図4(b)及び
図4(c)に示すような細孔を多く有する隔壁からなる。
【0011】
特開2006-095352号の実施例に記載のハニカムフィルタは、バブルポイント法で測定される最大細孔径が129〜145μmの範囲であるので、隔壁内部の細孔径はさらに大きいことが予想される。従って、圧力損失は小さくなるものの、特に人体への影響が大きいと考えられているナノサイズのPMの捕集効率が十分でないという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[1] セラミックハニカムフィルタの構成
本発明のセラミックハニカムフィルタは、多孔質の隔壁で仕切られた多数の流路を有するセラミックハニカム構造体と、前記流路の排気ガス流入側又は排気ガス流出側に交互に設けられた封止部とを有し、前記多孔質隔壁に排気ガスを通過させ、排気ガス中に含まれる微粒子を除去するためのフィルタであって、前記多孔質隔壁の気孔率が45〜75%、水銀圧入法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径A(μm)、及びバブルポイント法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径B(μm)が、式:40<(A-B)/B×100≦70 を満たし、バブルポイント法で測定される前記隔壁の最大細孔径が100μm以下であ
り、前記セラミックハニカム構造体の20〜800℃間の熱膨張係数が13×10-7/℃以下であることを特徴とし、低い圧力損失を維持しつつ、PM捕集効率、とりわけナノサイズのPM捕集効率が改善されたフィルタである。
【0031】
多孔質隔壁の気孔率が45%未満の場合、低い圧力損失を維持することができず、一方、気孔率が75%を超えると、使用時に耐え得る強度を維持することができなくなる。前記気孔率は、好ましくは50〜73%であり、さらに好ましくは55〜70%である。
【0032】
前記式:
40<(A-B)/B×100≦70は、メジアン細孔径Bよりもメジアン細孔径Aが大きく、かつメジアン細孔径A及びBの比が
1.4<A/B≦1.7の範囲内にあることを表す。ここで、水銀圧入法により測定されるメジアン細孔径Aは隔壁表面の細孔の平均径を反映する値であり、バブルポイント法により測定されるメジアン細孔径Bは隔壁内の最小径の細孔径を反映する値なので、前記式を満たすセラミックハニカムフィルタは、隔壁表面の細孔径が隔壁内部の細孔径よりも大きく、かつこれらの比が比較的大きい値である、すなわち表面から内部へ向かって細孔径が減少し、その変化率が大きいことを示している。このため、低い圧力損失を維持しつつ、ナノサイズのPMの捕集効率が良好となる。さらにバブルポイント法で測定される最大細孔径を100μm以下とすることにより、とりわけ人体への影響が大きいと考えられているナノサイズのPMの捕集効率が改善される。より低い圧力損失と優れたPMの捕集効率とを達成するためには、バブルポイント法で測定される最大細孔径は30μm以上であるのが好ましい。
【0033】
[(A-B)/B×100]の値が35%以下、すなわち隔壁表面の細孔径と隔壁内部の細孔径との差が小さい場合、ナノサイズのPMの捕集性能が低下する。一方、前記値が70%を超える場合、低い圧力損失を維持し難くなる。[(A-B)/B×100]の値は
40〜70%とする。好ましくは40〜65%である。バブルポイント法で測定される最大細孔径が100μmを超えると、隔壁内部の細孔径サイズが大きくなり、PMの捕集効率、とりわけ人体への影響が大きいと考えられているナノサイズのPMの捕集効率が十分でなくなる。また、隔壁表面の細孔径が相対的に大きくなって強度が低下する。
【0034】
水銀圧入法は、真空状態にした隔壁試料を水銀に浸漬して加圧し、加圧時の圧力と試料の細孔内に押し込まれた水銀の体積との関係を求めることにより、細孔径分布を求める方法である。水銀圧入法の測定においては、圧力を徐々に上昇させたとききに、試料表面の径の大きい細孔から順に水銀が圧入され、最終的に全ての細孔が水銀で満たされる。全ての細孔に満たされた水銀量から全細孔容積が求まり、全細孔容積の50%の容積の水銀が圧入された時点の細孔径を水銀圧入法により測定されるメジアン細孔径とする。
【0035】
バブルポイント法は、表面張力が既知の液体に浸漬し十分に濡らした隔壁試料の、一方の表面からガス圧をかけたときに流れるガスの量から細孔径を算出する方法である。ガス圧を上昇させてゆくと、細孔内にあらかじめ侵入していた液体がもう一方の表面から押出され、試料中をガスが流れるようになり、さらにガス圧を上げたときにガスの流量が増加する。この圧力とガスの流量を測ることで細孔径分布を求めることができる。流量が飽和したときの飽和流量の50%の流量を示す細孔径を、バブルポイント法により測定されるメジアン細孔径とする。さらに、ガスが流れる最小の圧力に対応する細孔径が試料中の最大細孔径となる。
【0036】
セラミックハニカムフィルタのバルクフィルタ密度は0.5 g/cm
3以下であるのが好ましい。バルクフィルタ密度とは、ハニカムフィルタの質量をハニカムフィルタの全容積で除算して得られた商である。バルクフィルタ密度を0.5 g/cm
3以下にすることにより、ハニカムフィルタへ排気ガスが流通する際の抵抗が小さくなり、低い
圧力損失が得られる。一方、バルクフィルタ密度が0.5 g/cm
3を超えると、低い
圧力損失を維持できなくなるおそれがある。バルクフィルタ密度は、好ましくは、0.4 g/cm
3以下、さらに好ましくは、0.3 g/cm
3以下である。バルクフィルタ密度は、強度を維持するために0.2 g/cm
3以上であるのが好ましい。
【0037】
セラミックハニカム
構造体の20〜800℃間の熱膨張係数は13×10
-7/℃以下
とする。熱膨張係数を13×10
-7/℃以下にすることで、セラミックハニカムフィルタをディーゼル機関の排出ガス中に含まれる微粒子を除去するためのフィルタとして用いた際、耐熱衝撃性を維持することができ、実用的に耐え得る強度を維持することができる。20〜800℃間の熱膨張係数は、好ましくは、10×10
-7/℃以下であり、さらに好ましくは、3×10
-7〜8×10
-7/℃である。
【0038】
低い圧力損失を維持するために、前記多孔質隔壁の通気度は2×10
-12〜10×10
-12 m
2であるのが好ましい。通気度が2×10
-12 m
2未満である場合、圧力損失が高くなるおそれがあり、一方、通気度が10×10
-12m
2を超える場合、PMの捕集性能が悪くなる場合がある。通気度は、より好ましくは、3×10
-12 m
2を超え8×10
-12m
2以下である。
【0039】
水銀圧入法により測定される前記多孔質隔壁のメジアン細孔径Aは25〜35μmであるのが好ましい。メジアン細孔径Aが25μm未満の時、圧力損失特性が低下する場合があり、一方、メジアン細孔径Aが35μmを超えると、強度が低下するため実用上問題となる場合がある。均細孔径Aは、好ましくは26〜34μmであり、さらに好ましくは27〜33μmである。
【0040】
水銀圧入法により測定される前記多孔質隔壁の15〜40μmの径を有する細孔の容積の合計は、全細孔容積の60〜90%であるのが好ましい。15〜40μmの径を有する細孔の容積の合計が全細孔容積の60%未満の場合、15μm未満の径を有する微細な細孔の割合が多くなるため圧力損失特性に悪影響を与えるとともに40μmを超える径を有する粗大な細孔の割合が増加するため、強度が低下するおそれがある。一方、15〜40μmの径を有する細孔の容積の合計が全細孔容積の90%を超える場合、15μm未満の径を有する微細な細孔
及び40μmを超える径を有する粗大な細孔の割合が小さくなることにより、細孔の連通性が十分確保されず、低い圧力損失を維持することができないおそれがある。15〜40μmの径を有する細孔の容積の合計は、好ましくは65〜85%であり、さらに好ましくは65〜80%である。
【0041】
水銀圧入法により測定される50μmを超える径を有する細孔の容積の合計は全細孔容積の10%を超え23%以下であるのが好ましい。50μmを超える径を有する細孔の容積の合計が10%以下の場合、圧力損失特性が低下するおそれがあり、25%を超えると粗大細孔の割合が大きくなり強度が低下するおそれがある。50μmを超える径を有する細孔の容積の合計は、好ましくは11〜22%であり、さらに好ましくは12〜21%である。
【0042】
セラミックハニカム構造体は、結晶相の主成分がコーディエライトであり、3〜6質量%のスピネル及び1〜8質量%のクリストバライトを含むのが好ましい。このような結晶組成を有することにより、焼成時の寸法変化(膨張)を小さく抑えることができ、さらには焼成後のセラミックハニカム構造体の寸法変化を小さく抑えることができる。より好ましい結晶組成は、4〜5質量%のスピネル、及び2〜7質量%のクリストバライトを含むものである。なお結晶相はコーディエライト、スピネル及びクリストバライトの他に、ムライト、コランダム、トリジマイト等を含んでもよい。
【0043】
セラミックハニカム構造体を流路方向と平行に切り出したハニカム状棒の4点測定法での曲げ強度は1 MPa以上であるのが好ましい。このような曲げ強度を有することにより、使用時に耐え得る強度を有するセラミックハニカムフィルタを得ることができる。前記曲げ強度は、好ましくは2 MPa以上である。
【0044】
セラミックハニカム構造体を流路方向と平行に切り出したハニカム状棒のヤング率は0.5 GPa以上であるのが好ましい。このようなヤング率を有することにより、使用時に耐え得る強度を有するセラミックハニカムフィルタを得ることができる。前記ヤング率が0.5 GPa未満である場合、使用時の振動や衝撃により変形が生じ、セラミックハニカムフィルタが破損するおそれがある。前記ヤング率は、好ましくは1 GPa以上である。
【0045】
[2] セラミックハニカムフィルタの製造方法
本発明のセラミックハニカムフィルタの製造方法は、タルク、シリカ、アルミナ源及びカオリンを含むコーディエライト化原料と、造孔材とを有する原料粉末を混練して坏土を得る工程、前記坏土を押出しハニカム状の成形体を得る工程、及び前記ハニカム状成型体の所定の流路を目封止してセラミックハニカムフィルタとする工程を有し、前記シリカが、15〜60μmのメジアン径を有し、前記タルクが、10〜25μmのメジアン径、及び0.77以上の形態指数を有し、前記カオリン粒子が、1〜8μmのメジアン径、及び0.9以上のへき開指数(ただし、へき開指数は、X線回折で測定した(200)面、(020)面、及び(002)面における各ピーク強度値I
(200)、I
(020)、及びI
(002)から、I
(002)/{I
(200)+I
(020)+I
(002)}で表される値)を有し、前記アルミナ源が、1〜6μmのメジアン径を有し、前記造孔材が、30〜70μmのメジアン径を有し、前記コーディエライト化原料は、目開き250μm以下の篩いを通過させて使用することを特徴とし、圧力損失特性を悪化させる微小細孔、及び強度を低下させる粗大細孔の割合を制限し、低い圧力損失を維持するために必要な細孔の割合を多くすることができる。
【0046】
この製造方法により、(i)気孔率が45〜75%であり、水銀圧入法により測定されるメジアン細孔径A(μm)及びバブルポイント法により測定されるメジアン細孔径B(μm)が、式:
40<(A-B)/B×100≦70 を満たし、バブルポイント法で測定される最大細孔径が100μm以下である多孔質隔壁からなり、(ii)バルクフィルタ密度が0.5g/cm
3以下、(iii)20〜800℃間の熱膨張係数が13×10
-7/℃以下、及び(iv)通気度が2×10
-12〜10×10
-12 m
2である本発明のセラミックハニカムフィルタを得ることができる。
【0047】
前記セラミック原料はコーディエライト化原料であるのが好ましい。コーディエライト化原料は、主結晶がコーディエライト(主成分の化学組成が42〜56質量%のSiO
2、30〜45質量%のAl
2O
3及び12〜16質量%のMgO)となるように、シリカ源成分、アルミナ源成分及びマグネシア源成分の各原料粉末を配合したものである。コーディエライトを主結晶とするセラミックスに形成される細孔は、主にシリカが焼成されて生じる細孔及び造孔材が燃焼されて生じる細孔を有している。
【0048】
(a)シリカ粒子
シリカは、他の原料に比べて高温まで安定に存在し、1300℃以上で溶融拡散し細孔を形成することが知られている。このため、コーディエライト化原料中に、10〜25質量%のシリカを含有させることにより所望の量の細孔が得ることができる。25質量%を超えてシリカを含有させると、主結晶をコーディエライトに維持するために、他のシリカ源成分であるカオリン及び/又はタルクを低減させなければならず、その結果、カオリンによって得られる低熱膨張化の効果(押出し成形時にカオリンが配向されることで得られる効果)が低減し耐熱衝撃性が低下する。一方、10質量%未満の場合、隔壁表面に開口した細孔が少なくなるので、PMが捕集され蓄積した際の低い圧力損失が維持できなくなるおそれがある。シリカの含有量は、好ましくは12〜22質量%である。
【0049】
シリカ粒子は15〜60μmのメジアン径を有するものを用いる。シリカ粒子のメジアン径が15μm未満の場合、圧力損失特性を悪化させる微小細孔が多くなり、一方60μmを超える場合、強度を低下させる粗大細孔が多くなる。シリカ粒子のメジアン径は、好ましくは35〜55μmである。
【0050】
前記シリカ粒子は結晶質のもの、又は非晶質のものを用いることができるが、粒度分布を調整する観点から非晶質のものが好ましい。非晶質シリカは高純度の天然珪石を高温溶融して製造したインゴットを粉砕して得ることができる。シリカ粒子は不純物としてNa
2O、K
2O、CaOを含有しても良いが、熱膨張係数が大きくなるのを防止するため、前記不純物の含有量は合計で0.1%以下であるのが好ましい。
【0051】
シリカ粒子の真球度は、0.5以上であるのが好ましい。シリカ粒子の真球度が、0.5未満である場合、圧力損失特性を悪化させる微小細孔が多くなるとともに、強度を低下させる粗大細孔が多くなる。シリカ粒子の真球度は、好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上である。シリカ粒子の真球度は、シリカ粒子の投影面積を、シリカ粒子の重心を通り粒子外周の2点を結ぶ直線の最大値を直径とする円の面積で割った値であり、電子顕微鏡写真から画像解析装置で求めることができる。
【0052】
真球度の高いシリカ粒子は、高純度の天然珪石を微粉砕し高温火炎の中に溶射することにより得られる。高温火炎の中への溶射によりシリカ粒子の溶融と球状化とを同時に行い、真球度の高い非晶質シリカを得ることができる。さらに、この球状シリカ粒子の粒度を分級等の方法により調整するのが好ましい。
【0053】
(b)タルク
タルクは、10〜25μmのメジアン径を有するものを用いる。タルクは、マグネシア成分として35〜45質量%含有させるのが好ましく、不純物としてFe
2O
3、CaO、Na
2O、K
2O等を含有しても良い。タルク中のFe
2O
3の含有率は、所望の粒度分布を得るために、0.5〜2.5質量%であるのが好ましく、Na
2O、K
2O及びCaOの含有率は、熱膨張係数を低くするという点から、合計で0.5質量%以下であるのが好ましい。
【0054】
タルクは、結晶相の主成分がコーディエライトであるセラミックハニカム構造体の熱膨張係数を低減する観点から、板状粒子であることが好ましい。タルク粒子の平板度を示す形態係数は、0.77以上であるのが好ましく、0.8以上であるのがより好ましく、0.83以上であるのが最も好ましい。前記形態係数は、米国特許第5,141,686号に記載されているように、板状のタルク粒子をX線回折測定し、得られた(004)面の回折強度Ix、及び(020)面の回折強度Iyから式:
形態係数 = Ix/(Ix+2Iy)
により求めることができる。形態係数が大きいほどタルク粒子の平板度が高い。
【0055】
コーディエライト化原料に配合するタルクの添加量は、主結晶がコーディエライトとなるように40〜43質量%であるのが好ましい。
【0056】
(c)カオリン
カオリン粒子は、1〜8μmのメジアン径を有するものを用いる。コーディエライトを主結晶とするセラミックスの隔壁は、焼成過程において、主にシリカ粒子が焼成されて生じる細孔と、造孔材が燃焼されて生じる細孔とを有している。シリカ及び造孔材のメジアン径よりも小さい1〜8μmのメジアン径を有するカオリン粒子は、シリカ粒子及び造孔材によって形成された細孔間に、これらの細孔同士を連通するように細孔を形成するので、隔壁中の細孔の連通性を向上させるとともに、隔壁表面の細孔径が隔壁内部の細孔径と比べて大きく、かつ隔壁内部の細孔径が小さい細孔構造を形成する。その結果、水銀圧入法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径A(μm)、及びバブルポイント法により測定される前記隔壁のメジアン細孔径B(μm)が、式:35<(A-B)/B×100≦70 を満たし、バブルポイント法で測定される前記隔壁の最大細孔径が100μm以下となる細孔構造を形成することができる。カオリン粒子のメジアン径は、好ましくは2〜6μmである。
【0057】
カオリン粒子は、そのc軸が押出し成形されるハニカム構造体の長手方向と直交するように配向すれば、コーディエライト結晶のc軸がハニカム構造体の長手方向と平行となり、ハニカム構造体の熱膨張係数を小さくすることができる。カオリン粒子の配向には、その形状が大きく影響する。カオリン粒子の形状を定量的に示す指数である、カオリン粒子のへき開指数は0.9以上であることが好ましく、0.93以上であるのがさらに好ましい。カオリン粒子のへき開指数は、プレス成形したカオリン粒子をX線回折測定し、得られた(200)面、(020)面及び(002)面の各ピーク強度I
(200)、I
(020)及びI
(002)から、式:
へき開指数 = I
(002)/[I
(200)+I
(020)+I
(002)]
により求めることができる。へき開係数が大きいほどカオリン粒子の配向が良好であると言える。
【0058】
カオリン粒子は、コーディエライト化原料中に1〜15質量%含有させるのが好ましい。15質量%を超えてカオリン粒子を含有すると、セラミックハニカム構造体の細孔径5μ未満の微小細孔が増え圧力損失特性を悪化させるおそれがあり、1質量%未満の場合は、セラミックハニカム構造体の熱膨張係数が大きくなる。カオリン粉末の含有量は、さらに好ましくは、4〜8質量%である。
【0059】
(d)アルミナ
アルミナ源原料は、1〜6μmのメジアン径のものを用いる。アルミナ源原料は、熱膨張係数を低くするとともに、カオリン粒子と同じく、シリカ粒子や造孔材のメジアン径に対して相対的に小さくすることで、シリカ粒子が焼成されて生じる細孔と造孔材が燃焼されて生じる細孔とを連通させる効果を発揮する。アルミナ源原料のメジアン径は、好ましくは、2〜5μmである。
【0060】
アルミナ源成分としては、不純物が少ないという点で酸化アルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムを用いる場合、コーディエライト化原料中の含有量は6〜42質量%が好ましく、6〜15質量%がより好ましく、8〜12質量%が最も好ましい。酸化アルミニウムを用いる場合、コーディエライト化原料中の含有量は30質量%以下が好ましく、12〜25質量%がより好ましく、20〜24質量%が最も好ましい。酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム中の不純物であるNa
2O、K
2O及びCaOの含有量の合計は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0061】
(e)造孔材
造孔材は、コーディエライト質セラミックスの焼成過程において、コーディエライトが合成される前に燃焼消失して細孔を形成する。造孔材は30〜70μmのメジアン径を有するものを用いる。メジアン径が30μm未満の場合、比較的大きな径の細孔が少なくなり、低い
圧力損失を維持することができなくなる。メジアン径が70μmを超えると、形成される細孔が粗大になり過ぎるので十分な強度が得られない。造孔材のメジアン径は、好ましくは40〜60μmである。
【0062】
造孔材は、その粒子径と累積体積(特定の粒子径以下の粒子体積を累積した値)との関係を示す曲線において、90%の累積体積に相当する粒子径d90が50〜90μmであるのが好ましい。前記粒子径d90が50μm未満の場合、隔壁内部の細孔径よりも小さな径の細孔が隔壁表面に増加するため圧力損失特性が低下するおそれがある。一方、d90が90μmを超えると、バブルポイント法で測定される最大細孔径が大きくなるためナノサイズのPMの捕集効率が低下するおそれがある。前記粒子径d90は、好ましくは60〜80μmである。造孔材の粒子径は、例えば、日機装(株)製マイクロトラック粒度分布測定装置(MT3000)を用いて測定することができる。
【0063】
造孔材は、小麦粉、グラファイト、澱粉粉、中実又は中空の樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体等)等を用いることができる。これらのうち、中空の樹脂粒子が好ましく、中でもメチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体で形成されたものが好ましい。中空の樹脂粒子は、炭化水素等のガスを内包した、外殻厚さが0.1〜2μmのものが好ましく、70〜95%の水分を含有しているのが好ましい。前記水分を含有していることで、樹脂粒子のすべり性が改善され、混合、混練及び成形において、樹脂粒子がつぶれ難くなる。
【0064】
造孔材の添加量は、低い
圧力損失を維持し強度を確保できる範囲内で、その種類に応じて決めるのが好ましい。造孔材として中空の樹脂粒子を用いる場合、その添加量は1〜15%であるのが好ましい。前記添加量が1%未満である場合、造孔材により形成される細孔の量が少なくなるので、低い
圧力損失を維持することができなくなるおそれがある。前記添加量が15%を超えると、細孔の量が多くなり過ぎて十分な強度を確保できなくなるおそれがある。前記添加量は、より好ましくは6%を超え15%以下であり、最も好ましくは6.5〜13%である。造孔材として小麦粉、グラファイト、澱粉粉等を用いる場合は、その添加量は5〜70%の範囲が好ましい。
【0065】
(f) コーディエライト化原料の篩い
シリカ粒子、タルク粒子、カオリン粒子、アルミナ粒子等からなるコーディエライト化原料は、目開き250μm以下の篩いを通過させて使用する。前記篩いにより、コーディエライト化原料中の粗大な粒子が除去され、隔壁表面に開口する細孔及び隔壁内部の細孔が粗大化するのを防止できる。前記篩いは目開き220μm以下のものが好ましい。
【0066】
(g)製造方法
セラミックハニカムフィルタを押出成形するための可塑化された杯土は、シリカ粒子、タルク粒子、カオリン粒子、アルミナ粒子等からなるコーディエライト化原料に、造孔材、バインダー等を加え、ヘンシェルミキサー等の粉砕メディアを使用しない方法により混合し、水を加えニーダー等の過剰なせん断を加えない方法により混練を行って作製する。粉砕メディアを使用しない方法により混合を行うことにより、シリカ粒子(特に非晶質シリカ粒子)及び造孔材が混合過程で粉砕されるのを防ぎ、所望の粒度分布及び粒子形状を有するシリカ粒子及び造孔材を、押出後の成形体にそのまま存在させることができ、圧力損失特性とPMの捕集効率とを両立したセラミックハニカムフィルタを得ることができる。特に真球度の高いシリカや、造孔材として中空の樹脂粒子を用いる場合、前記混合方法を採用する効果が大きい。混合工程でボールミル等の粉砕メディアを使用する方法を採用した場合、シリカ粒子、特に真球度の高いシリカ粒子や、造孔材の中空の樹脂粒子が混合過程で粉砕されその形状や粒径が変化してしまうため、所望の細孔構造が得られなくなる。
【0067】
セラミックハニカム構造体は、得られた可塑性の坏土を、公知の方法で金型から押出すことによりハニカム構造の成形体を形成し、乾燥した後、必要に応じて端面及び外周等の加工を施し、焼成することによって製造する。焼成は、連続炉又はバッチ炉を用いて、昇温及び冷却の速度を調整しながら行う。セラミック原料がコーディエライト化原料である場合、1350〜1450℃で1〜50時間保持し、コーディエライト主結晶が十分生成した後、室温まで冷却する。前記昇温速度は、特に外径150 mm以上、及び全長150 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体を製造する場合、焼成過程で成形体に亀裂が発生しないよう、バインダーが分解する温度範囲(例えば150〜350℃)では0.2〜10℃/hr、コーディエライト化反応が進行する温度域(例えば1150〜1400℃)では5〜20℃/hrであるのが好ましい。冷却は、特に1400〜1300℃の範囲では20〜40℃/hの速度で行うのが好ましい。
【0068】
得られたハニカムセラミック構造体は、公知の方法で所望の流路の端部又は流路内部を目封止することによりセラミックハニカムフィルタとすることができる。なお、この目封止部は、焼成前に形成してもよい。
【0069】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
表1〜表4に示す特性(メジアン径、不純物等)を有するシリカ、カオリン、タルク、アルミナ、水酸化アルミの原料粉末を、目開き212μmの篩を通過させた後、表6に示す添加量で配合して、化学組成が51質量%のSiO
2、35質量%のAl
2O
3及び14質量%のMgOとなるコーディエライト化原料粉末を得た。このコーディエライト化原料粉末に対し、表5に示す造孔材を表6に示す量で添加し、メチルセルロースを添加した後、水を加えて混練し、可塑性のコーディエライト化原料からなるセラミック坏土を作製した。
【0071】
シリカ、カオリン、タルク、アルミナ、水酸化アルミ、造孔材のメジアン径及び粒度分布はマイクロトラック粒度分布測定装置(MT3000)を用いて測定した。シリカ粒子の真球度は、電子顕微鏡により撮影した粒子の画像から画像解析装置で求めた、投影面積A1、及び重心を通り粒子外周の2点を結ぶ直線の最大値を直径とする円の面積A2から、式:A1/A2で算出した値であり、20個の粒子についての平均値で表した。
【0072】
得られた坏土を押出してハニカム構造の成形体を形成し、乾燥後、周縁部を除去加工し、焼成炉にて200時間のスケジュール(室温〜150℃は10℃/h、150〜350℃は2℃/hr、350〜1150℃は20℃/h及び1150〜1400℃は15℃/hrの平均速度で昇温、最高温度1410℃で24hr保持、並びに1400〜1300℃は30℃/hr、及び1300〜100℃は80℃/hrの平均速度で冷却)で焼成した。
【0073】
得られたハニカム形状の焼成体の外周に、非晶質シリカとコロイダルシリカからなる外皮材をコーティングして乾燥させ、外径266.7 mm、全長304.8 mm、隔壁厚さ300μm、及びセル密度260セル/平方インチの実施例1〜
12、参考例1〜4及び比較例1〜12のセラミックハニカム構造体を得た。
【0074】
これらのセラミックハニカム構造体の流路端部に、交互に目封止がなされるように、コーディエライト化原料からなる目封止材スラリーを充填した後、目封止材スラリーの乾燥及び焼成を行い、実施例1〜
12、参考例1〜4及び比較例1〜12のコーディエライト質セラミックハニカムフィルタを得た。焼成後の目封止材の長さは5〜10 mmの範囲であった。
【0075】
得られた実施例1〜
12、参考例1〜4及び比較例1〜12のセラミックハニカムフィルタに対して、水銀圧入法による細孔分布、バブルポイント法による細孔径、熱膨張係数、結晶量、バルクフィルタ密度、通気度、煤2g/リットル捕集したときの圧力損失、捕集効率、曲げ強度及びヤング率の測定を行った。結果をあわせて表7に示す。
【0076】
バブルポイント法及び水銀圧入法による測定は、ハニカムフィルタから切り出した試験片を用いて行った。水銀圧入法によって、隔壁の全細孔容積、気孔率、メジアン細孔径A、全細孔容積に対する15〜40μmの径を有する細孔容積の割合、及び全細孔容積に対する50μmを超える径を有する細孔容積の割合を求め、バブルポイント法によって、メジアン細孔径B、及び最大細孔径を求めた。
【0077】
水銀圧入法による測定は、セラミックハニカムフィルタから切り出した試験片(10 mm×10 mm×10 mm)を、Micromeritics社製オートポアIIIの測定セル内に収納し、セル内を減圧した後、水銀を導入して加圧し、加圧時の圧力と試験片内に存在する細孔中に押し込まれた水銀の体積との関係を求めることにより行った。前記圧力と体積との関係から細孔径と累積細孔容積との関係を求めた。水銀を導入する圧力は0.5 psi(0.35×10
-3 kg/mm
2)とし、圧力から細孔径を算出する際の常数は、接触角=130°及び表面張力=484 dyne/cmの値を使用した。気孔率は、全細孔容積の測定値から、コーディエライトの真比重を2.52g/cm
3として、計算によって求めた。
【0078】
バブルポイント法による細孔の測定は、POROUS MATERIALS, INC.社製パームポロメータCFP1100AEXを使用して行い、セラミックハニカムフィルタから切り出した試験片にパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を滴下して、測定装置内に収納し測定を行った。
【0079】
20〜800℃間の熱膨張係数(CTE)は、ハニカムフィルタから切り出した試験片を用いて測定した。
【0080】
結晶量は、X線回折によって測定したコーディエライト、スピネル及びクリストバライトの各結晶の主ピーク強度から求めた。各結晶の主ピーク強度(X線回折パターンにおいて最も強度の高い回折ピーク強度)は、株式会社リガク製X線回折装置(Cu-Kα線)を用いて、2θ=8〜40°の範囲で測定したセラミックハニカムフィルタの粉末試料のX線回折パターンから、コーディエライトの(102)面の回折強度I
コーディエライト(102)、スピネル(220)面の回折強度I
スピネル(220)、及びクリストバライト(200)面の回折強度I
クリストバライト(200)を求め、それらの値を換算して得た。測定強度から、主ピーク強度(コーディエライトの(500)面、スピネルの(311)面及びクリストバライトの(101)面のX線回折強度)への換算は、各結晶のJCPDSカード記載の主ピーク強度に対する強度比の値、すなわちコーディエライト(102)面:50%、スピネル(220)面:40%、及びクリストバライト(200)面:13%を用いて次式により行った。
(コーディエライト結晶のX線回折強度) = (I
コーディエライト(102)/50)×100
(スピネル結晶のX線回折強度) = (I
スピネルの(220)/40)×100
(クリストバライト結晶のX線回折強度) = (I
クリストバライト(200)/13)×100
このような換算を行うことにより、各結晶の主ピークがお互いに重なって正しい強度が求まらない等の問題を避けることができ、より精度良く各結晶の含有量を比較することができる。
【0081】
コーディエライト、スピネル、及びクリストバライトの各結晶量は、各結晶の主ピーク強度をそれらの合計で除算して求めた。例えばスピネルの結晶量は、式:
(I
スピネル(220)/40)×100/((I
コーディエライト(102)/50)×100+(I
スピネル(220)/40)×100+(I
クリストバライト(200)/13)×100)
で求めた。
【0082】
バルクフィルタ密度は、ハニカムフィルタの質量をハニカムフィルタの全容積で除算して求めた。
【0083】
通気度は、Perm Automated Porometer(登録商標)6.0版(ポーラスマテリアルズ社)を使用し、エア流量を30 cc/secから400 cc/secまで増加させながら測定した通気度の最大値とした。表7において、通気度が3×10
-12 m
2を超え8×10
-12 m
2以下の場合を(◎)、2×10
-12〜3×10
-12 m
2又は8×10
-12 m
2を越え10×10
-12 m
2以下の場合を(○)、及び2×10
-12 m
2未満又は10×10
-12 m
2を超える場合を(×)として評価した。
【0084】
煤2 g/リットル捕集したときの圧力損失(煤捕集圧力損失)は、圧力損失テストスタンドに固定したセラミックハニカムフィルタに、空気流量10 Nm
3/minで、平均粒径0.042μmのカーボン粉(煤)を3 g/hの速度で投入し、フィルタ体積1リットルあたりの煤付着量が2 gとなったときの流入側と流出側との差圧(圧力損失)で表した。圧力損失が、1.2 kPa以下の場合を(◎)、1.2を超え1.5 kPa以下の場合を(○)、及び1.5 kPaを越える場合を(×)として煤捕集圧力損失を評価した。
【0085】
捕集効率は、圧力損失テストスタンドに固定したセラミックハニカムフィルタに、空気流量10 Nm
3/minで、平均粒径0.042μmのカーボン粉を3 g/hの速度で投入しながら、1分毎にハニカムフィルタに流入するカーボン粉の粒子数とハニカムフィルタから流出するカーボン粉の粒子数とをSMPS(Scanning Mobility Particle Sizer)(TIS社製モデル3936)を用いて計測し、投入開始20分から21分までの1分間の間にハニカムフィルタに流入するカーボン粉の粒子数N
in、及びハニカムフィルタから流出するカーボン粉の粒子数N
outから、式:(N
in-N
out)/N
inにより求めた。
前記式の値が、98%以上の場合を(◎)、95%以上98%未満の場合を(○)、及び95%未満の場合を(×)として捕集効率を評価した。
【0086】
曲げ強度及びヤング率の測定は、セラミックハニカムフィルタから、流路方向に長さ100 mm、流路方向に平行に厚さ12 mm、幅25 mmに切り出したハニカム状棒を用いて、下部支点間距離80 mm及び上部支点間距離40 mmの4点曲げの試験方法で行った。
【0093】
【表7】
注(1):全細孔容積に対する15〜40μmの径を有する細孔容積の割合
注(2):全細孔容積に対する50μmを超える径を有する細孔容積の割合
表7(続き)
表7(続き)
【0094】
表7より、本発明の実施例1〜
12及び参考例1〜4のセラミックハニカムフィルタは、低い圧力損失を維持しつつ、PM捕集効率、とりわけナノサイズのPM捕集効率が改善されていることがわかる。
【0095】
これに対して、60μm超のメジアン径を有するシリカFを用いた比較例1のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値(ただし、Aは水銀圧入法により測定される隔壁のメジアン細孔径、Bはバブルポイント法により測定される隔壁のメジアン細孔径である)が35%以下となっておりPM捕集効率が著しく低かった。15μm未満のメジアン径を有するシリカGを用いた比較例2のセラミックハニカムフィルタは、[(A-B)/B×100]の値が70%を越えており通気度が低く煤捕集圧力損失が高かった。
【0096】
8μm超のメジアン径を有するカオリンEを用いた比較例3のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値が35%以下となっておりPM捕集効率が著しく低かった。1μm未満のメジアン径を有するカオリンFを用いた比較例4のセラミックハニカムフィルタは、[(A-B)/B×100]の値が70%を越えており通気度が低く煤捕集圧力損失が高かった。0.9未満のへき開指数を有するカオリンGを用いた比較例5のセラミックハニカムフィルタは、20〜800℃の熱膨張係数が13×10
-7/℃を越えていた。
【0097】
25μm超のメジアン径を有するタルクEを用いた比較例6のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値が35%以下となっておりPM捕集効率が著しく低かった。10μm未満のメジアン径を有するタルクFを用いた比較例7のセラミックハニカムフィルタは、[(A-B)/B×100]の値が70%を越えており通気度が低く煤捕集圧力損失が高かった。0.77未満の形態係数を有するタルクGを用いた比較例8のセラミックハニカムフィルタは、20〜800℃の熱膨張係数が13×10
-7/℃を越えていた。
【0098】
6μm超のメジアン径を有するアルミナDを用いた比較例9のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値が35%以下となっておりPM捕集効率が著しく低く、さらに20〜800℃の熱膨張係数が13×10
-7/℃を越えていた。1μm未満のメジアン径を有するアルミナEを用いた比較例10のセラミックハニカムフィルタは、[(A-B)/B×100]の値が70%を越えており通気度が低く煤捕集圧力損失が高かった。6μm超のメジアン径を有する水酸化アルミニウムBを用いた比較例11のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値が35%以下となっておりPM捕集効率が著しく低く、さらに20〜800℃の熱膨張係数が13×10
-7/℃を越えていた。
【0099】
70μm超のメジアン径を有する造孔材Dを用いた比較例12のセラミックハニカムフィルタは、バブルポイント法によって求めた最大細孔径が100μmを越え、さらに[(A-B)/B×100]の値が70%を越えておりPM捕集効率が著しく低かった。