特許第5880443号(P5880443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5880443露光方法、露光装置、及びデバイス製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5880443
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】露光方法、露光装置、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20160225BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
【請求項の数】24
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2012-548689(P2012-548689)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(86)【国際出願番号】JP2011071575
(87)【国際公開番号】WO2012081292
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2010-277530(P2010-277530)
(32)【優先日】2010年12月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098165
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 陽司
(72)【発明者】
【氏名】大和 壮一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 朋春
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−506236(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/006687(WO,A1)
【文献】 特開2007−027758(JP,A)
【文献】 特開2007−329386(JP,A)
【文献】 特表2007−522671(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/060745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学要素を有する空間光変調器を介した露光光で基板を露光する露光方法において、
前記複数の光学要素が配置されている領域のうちの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を射出する第1の状態の光学要素と、前記第1の状態の光学要素を介した光に対して位相異なる光を射出する第2の状態の光学要素とを第1の配列に設定することと、
前記第1の配列に設定された前記複数の光学要素を介した露光光で前記基板の少なくとも一部を露光することと、
前記配置されている領域のうちの少なくとも一部の第2領域で、前記第1の状態の光学要素と前記第2の状態の光学要素とを、前記第1の配列において前記第1の状態の光学要素前記第2の状態に反転し且つ前記第1の配列において前記第2の状態の光学要素が前記第1の状態に反転した第2の配列に設定することと、
前記第2の配列に設定された前記複数の光学要素を介した露光光で、前記基板の前記少なくとも一部に重ねて露光することと、
を含む露光方法。
【請求項2】
前記第2領域は前記光学要素のアレイ上で前記第1領域に対して第1方向に第1のシフト量だけシフトしている請求項1に記載の露光方法。
【請求項3】
前記複数の光学要素のアレイは、前記第1方向に台形状の強度分布を持つ光で照射され、
前記第1のシフト量は、前記強度分布のうち前記第1方向に傾斜している部分の幅のほぼ偶数分の1である請求項2に記載の露光方法。
【請求項4】
前記第1の配列に設定された前記複数の光学要素を介した露光光で前記基板の少なくとも一部を露光した後に、前記基板を前記第1方向に対応する方向に前記第1のシフト量に対応する量だけ移動し、前記重ねて露光することを行う
請求項2又は3に記載の露光方法。
【請求項5】
前記複数の光学要素のアレイは、第1方向にほぼ等間隔で配置されて、それぞれ前記第1方向にほぼ同じ台形状の強度分布を持つ偶数個の光で照射され、
前記台形状の強度分布の光で照射される偶数個の領域のうちの少なくとも1つには、前記第1領域が位置し、かつ前記偶数個の領域のうちの別の少なくとも1つには、前記第2領域が位置し、前記第1領域の数と前記第2領域の数とが互いに等しい請求項1に記載の露光方法。
【請求項6】
前記偶数個の領域における、前記第1方向に沿った順の奇数番目の領域において、複数の前記光学要素を前記第1の配列に設定することと、
前記奇数番目の領域からの前記露光光で前記投影光学系を介して前記基板を露光することと、
前記第1方向に対応する方向に前記偶数個の領域の強度分布が傾斜している部分の幅のほぼ整数分の1に前記投影光学系の倍率を乗じて得られる幅に対応する距離だけ前記基板を移動することと、
前記偶数個の領域における、前記第1方向に沿った順の偶数番目の領域において、複数の前記光学要素を前記第2の配列に設定することと、
前記偶数番目の領域からの前記露光光で前記投影光学系を介して前記基板を重ねて露光することと、
を含む請求項5に記載の露光方法。
【請求項7】
前記第2領域は前記第1領域と同じ領域である請求項1に記載の露光方法。
【請求項8】
前記第1領域は、
前記光学要素のアレイ中で、前記第1の状態の光学要素と前記第2の状態の光学要素とが市松模様状に配列された領域に隣接する領域である請求項1〜7のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項9】
前記2の状態は、前記第1の状態に対して射出される光の位相がほぼ180°異なる請求項1〜8のいずれか一項に記載の露光方法。
【請求項10】
露光光で複数の光学要素のアレイを備える第1空間光変調器及び投影光学系を介して基板上の少なくとも一部の領域を露光すると共に、露光光で複数の光学要素のアレイを備える第2空間光変調器及び前記投影光学系を介して前記基板上の前記少なくとも一部の領域を露光する露光方法において、
前記第1空間光変調器の前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定することと、
前記第1領域と対応する、前記第2空間光変調器の前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第2の配列に設定することと、
前記第1の配列に設定された前記第1空間光変調器を介した露光光と、前記第の配列に設定された前記第1空間光変調器を介した露光光とで、前記基板上の少なくとも一部を重ねて露光することと、
を含み、
前記第1の配列における前記第1の状態の光学要素の配列が前記第2の配列における前記第2の状態の光学要素の配列に対応しており、前記第1の配列における前記第2の状態の光学要素の配列が前記第2の配列における前記第1の状態の光学要素の配列に対応している露光方法。
【請求項11】
露光光で投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
複数の光学要素を有し、前記投影光学系の物体面側に配置された空間光変調器と、
前記空間光変調器の前記複数の光学要素からの前記露光光によって前記投影光学系を介して前記基板を露光する動作を制御する制御装置と、を備え、
前記空間光変調器
前記複数の光学要素の状態をそれぞれ入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態に設定する第1信号、又は入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態に設定する第2信号を出力する複数の第1回路と、
前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、前記第1の状態の光学要素と前記第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定するために、前記複数の第1回路の出力信号を制御する制御回路と、
前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、前記第1の状態の光学要素と前記第2の状態の光学要素との配列を、前記第1の配列において前記第1の状態の光学要素前記第2の状態に反転し且つ前記第1の配列において前記第2の状態の光学要素が前記第1の状態に反転した第2の配列に設定するために、前記複数の第1回路の出力信号を反転させる複数の第2回路と、
を備え
前記制御装置は、
前記光学要素のアレイの配列を前記第1の配列に設定した状態、及び前記光学要素のアレイの配列を前記第2の配列に設定した状態で、前記基板を重ねて露光させる露光装置。
【請求項12】
前記複数の光学要素の隙間領域は、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ同じ位相又は前記第1の位相とほぼ180°異なる位相だけ異なる光として通過させる請求項11に記載の露光装置
【請求項13】
前記複数の光学素子のアレイは、第1方向にN個及び前記第1方向に直交する第2方向にM個配列され(N,Mは2以上の整数)、
前記複数の第1回路は、全体として、それぞれ直列に接続したN個のフリップフロップを含むM個のシフトレジスターを並列に配置したものである請求項11又は12に記載の露光装置
【請求項14】
前記基板を移動するステージを備え、
前記制御装置は、
前記空間光変調器の前記第2領域を前記第1領域に対して第1方向に第1のシフト量だけシフトさせるとともに、前記ステージを介して前記基板を前記第1方向に対応する方向に移動させる請求項11〜13のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項15】
露光光で投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
前記露光光を照射する照明系と、
前記投影光学系の物体面側に配置されて、それぞれ前記露光光を前記投影光学系に導くように制御可能な複数の光学要素のアレイを有する空間光変調器と、
前記照明系及び前記空間光変調器を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を前記第1の位相と異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定して、前記基板を露光させ、
前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、前記第1の状態の光学要素と前記第2の状態の光学要素との配列を、前記第1の配列において前記第1の状態の光学要素前記第2の状態に反転し且つ前記第1の配列において前記第2の状態の光学要素が前記第1の状態に反転した第2の配列に設定して、前記基板を重ねて露光させる、
露光装置。
【請求項16】
前記基板を移動するステージを備え、
前記制御装置は、
前記第2領域を前記光学要素のアレイ上で前記第1領域に対して第1方向に第1のシフト量だけシフトさせ、前記第2の配列で前記基板を露光する前に、前記ステージを介して前記第1方向に対応する方向に前記基板を移動させる請求項15に記載の露光装置。
【請求項17】
前記照明は、前記複数の光学要素のアレイを、前記第1方向に台形状の強度分布を持つ光で照射し、
前記制御装置は、前記第1のシフト量を、前記強度分布のうち前記第1方向に傾斜している部分の幅のほぼ偶数分の1に設定する請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記照明系は、前記複数の光学要素のアレイを、前記第1方向にほぼ等間隔で配置されて、互いにほぼ同じ形状の台形状の強度分布を持つ偶数個の光で照射し、
前記制御装置は、前記第1のシフト量を、前記偶数個の光の強度分布の傾斜部の幅のほぼ整数分の1の量に設定する請求項16に記載の露光装置。
【請求項19】
前記第2領域は前記第1領域と同じ領域である請求項15に記載の露光装置。
【請求項20】
前記2の位相は、前記第1の位相に対してほぼ180°異なる請求項11〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項21】
前記空間光変調器の前記複数の前記光学要素はそれぞれ反射要素であり、
前記露光光は、前記複数の反射要素に斜めに入射し、前記複数の反射要素からの反射光が、前記投影光学系に対して前記投影光学系の光軸に交差するように入射する請求項11〜20のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項22】
前記空間光変調器と前記投影光学系との間に配置されるビームスプリッタを備え、
前記露光光は、前記ビームスプリッタ、前記空間光変調器、及び前記ビームスプリッタを介して前記投影光学系に入射する請求項11〜20のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項23】
請求項〜10のいずれか一項に記載の露光方法を用いて基板に感光層のパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記基板を処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項24】
請求項11〜22のいずれか一項に記載の露光装置を用いて基板に感光層のパターンを形成することと、
前記パターンが形成された前記基板を処理することと、
を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光学要素を有する空間光変調器及びその駆動方法、空間光変調器を用いて物体を露光する露光技術、並びにこの露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子又は液晶表示素子等のデバイス(電子デバイス又はマイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程中で、所定のパターンを投影光学系を介してウエハ又はガラスプレート等の基板の各ショット領域に形成するために、ステッパー等の一括露光型の露光装置、又はスキャニングステッパー等の走査露光型の露光装置等が使用されている。
【0003】
最近では、複数種類のデバイス毎に、さらに基板の複数のレイヤ毎にそれぞれマスクを用意することによる製造コストの増大を抑制し、各デバイスを効率的に製造するために、マスクの代わりに、それぞれ傾斜角が可変の多数の微小ミラーのアレイを有する空間光変調器(spatial light modulators: SLM)を用いて、投影光学系の物体面に可変のパターンを生成するいわゆるマスクレス方式の露光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、空間光変調器としては、入射する光の位相分布を制御するために、それぞれ反射面の高さが制御可能な多数の微小ミラーのアレイを有するタイプも提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/060745号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Yijian Chen et al., "Design and fabrication of tilting and piston micromirrors for maskless lithography," Proc. of SPIE (米国) Vol. 5751, pp.1023-1037 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多数の微小ミラーのアレイを有する空間光変調器を用いる際に、各微小ミラーで設定される高さ(位相)の誤差には、ランダムな誤差の他に、例えば多くの微小ミラーについて共通の所定の傾向を持つ誤差である系統的な誤差がある。これらの誤差のうち、ランダムな誤差については、例えば平均化効果によってその影響は軽減される。しかしながら、系統的な誤差については、平均化効果によってその影響が軽減されないため、系統的な誤差が生じると、最終的に基板の表面に形成される空間像の強度分布が目標とする分布から外れる恐れがある。
また、各微小ミラーの隙間領域を介した光がある場合には、その光に起因して、最終的に基板の表面に形成される空間像の強度分布が目標とする分布から外れる恐れがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、複数の光学要素のアレイを有する空間光変調器を用いるときに、最終的に基板の表面に形成される空間像の強度分布の目標分布からの誤差を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による露光方法は、複数の光学要素を有する空間光変調器を介した露光光で基板を露光する露光方法において、その複数の光学要素が配置されている領域のうちの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を射出する第1の状態の光学要素と、その第1の状態の光学要素を介した光に対して位相が異なる光を射出する第2の状態の光学要素とを第1の配列に設定することと、その第1の配列に設定されたその複数の光学要素を介した露光光でその基板の少なくとも一部を露光することと、その配置されている領域のうちの少なくとも一部の第2領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素とを、その第1の配列においてその第1の状態の光学要素がその第2の状態に反転し且つその第1の配列においてその第2の状態の光学要素がその第1の状態に反転した第2の配列に設定することと、その第2の配列に設定されたその複数の光学要素を介した露光光で、その基板のその少なくとも一部に重ねて露光することと、を含むものである。
本発明による露光装置は、露光光で投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、複数の光学要素を有し、その投影光学系の物体面側に配置された空間光変調器と、その空間光変調器のその複数の光学要素からのその露光光によってその投影光学系を介してその基板を露光する動作を制御する制御装置と、を備え、その空間光変調器は、その複数の光学要素の状態をそれぞれ入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態に設定する第1信号、又は入射する光を位相がその第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態に設定する第2信号を出力する複数の第1回路と、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定するために、その複数の第1回路の出力信号を制御する制御回路と、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を、その第1の配列においてその第1の状態の光学要素がその第2の状態に反転し且つその第1の配列においてその第2の状態の光学要素がその第1の状態に反転した第2の配列に設定するために、その複数の第1回路の出力信号を反転させる複数の第2回路と、を備え、その制御装置は、その光学要素のアレイの配列をその第1の配列に設定した状態、及びその光学要素のアレイの配列をその第2の配列に設定した状態で、その基板を重ねて露光させるものである。
また、本明細書には、以下の発明の態様も記載されている。
本発明の第1の態様によれば、それぞれ光が照射される複数の光学要素のアレイを有する空間光変調器の駆動方法が提供される。この駆動方法は、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相がその第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定することと、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を、その第1の配列においてその第1の状態又は第2の状態の光学要素をそれぞれその第2の状態又は第1の状態に反転した第2の配列に設定することと、を含むものである。
【0009】
また、本発明の第2の態様によれば、露光光で空間光変調器の複数の光学要素のアレイ及び投影光学系を介して基板を露光する露光方法が提供される。この露光方法は、本発明の空間光変調器の駆動方法によってその複数の光学要素の状態の配列を設定することと、その複数の光学要素をその第1の配列に設定した状態、及びその複数の光学要素をその第2の配列に設定した状態で、その複数の光学要素のアレイのその第1領域及びその第2領域を含む照明領域からのその露光光でその投影光学系を介してその基板を重ねて露光することと、を含むものである。
【0010】
また、本発明の第3の態様によれば、露光光で複数の光学要素のアレイを備える第1空間光変調器及び投影光学系を介して基板上の少なくとも一部の領域を露光すると共に、露光光で複数の光学要素のアレイを備える第2空間光変調器及び前記投影光学系を介して前記基板上の前記少なくとも一部の領域を露光する露光方法が提供される。この露光方法は、その第1空間光変調器のその光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定することと、その第1領域と対応する、その第2空間光変調器の前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第2の配列に設定することとを含む。そして、その第1の配列におけるその第1の状態の光学要素の配列がその第2の配列におけるその第2の状態の光学要素の配列に対応しており、その第1の配列におけるその第2の状態の光学要素の配列がその第2の配列におけるその第1の状態の光学要素の配列に対応している。
【0011】
また、本発明の第4の態様によれば、それぞれ光が照射される複数の光学要素のアレイを有する空間光変調器が提供される。この空間光変調器は、その複数の光学要素の状態をそれぞれ入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態に設定する第1信号、又は入射する光を位相がその第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態に設定する第2信号を出力する複数の第1回路と、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定するために、その複数の第1回路の出力信号を制御する制御回路と、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を、その第1の配列においてその第1の状態又は第2の状態の光学要素をそれぞれその第2の状態又は第1の状態に反転した第2の配列に設定するために、その複数の第1回路の出力信号を反転させる複数の第2回路と、を備えるものである。
【0012】
また、本発明の第5の態様によれば、露光光で投影光学系を介して基板を露光する露光装置が提供される。この露光装置は、その露光光を照射する照明系と、その投影光学系の物体面側に配置されて、それぞれその露光光をその投影光学系に導くように制御可能な複数の光学要素のアレイを有する空間光変調器と、その照明系及びその空間光変調器を制御する制御装置と、を備え、その制御装置は、その基板上にその投影光学系を介して形成される空間像に応じて、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域で、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相がその第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列を第1の配列に設定して、その基板を露光させ、その光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域で、その第1の状態の光学要素とその第2の状態の光学要素との配列を、その第1の配列においてその第1の状態又は第2の状態の光学要素をそれぞれその第2の状態又は第1の状態に反転した第2の配列に設定して、その基板を重ねて露光させるものである。
【0013】
また、本発明の第6の態様によれば、本発明の露光方法又は露光装置を用いて基板上に感光層のパターンを形成することと、そのパターンが形成されたその基板を処理することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空間光変調器において、光学要素のアレイの第1領域で、第1の状態及び第2の状態の光学要素を第1の配列に設定することと、その光学要素のアレイの第2領域で、その第1の状態及び第2の状態の光学要素を、その第1の配列を反転した第2の配列に設定することと、を含み、その第1の配列の光学要素で系統的な誤差が生じていると、その第2の配列の光学要素では符号が逆の系統的な誤差が生じる。そのため、例えばその第1の配列の光学要素からの光と、その第2の配列の光学要素からの光とを被照射面に重ねて照射することによって、その系統的な誤差の影響が軽減される。さらに、複数の光学要素の隙間領域を通過する光がある場合に、その隙間領域を通過する光の影響も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の一例の露光装置の概略構成を示す図である。
図2】(A)は図1中の空間光変調器28の一部を示す拡大斜視図、(B)は図2(A)のBB線に沿う断面図である。
図3】(A)は走査露光時のウエハのショット領域を示す図、(B)はステップ・アンド・リピート方式で露光する際のウエハのショット領域を示す図、(C)は露光領域の光強度分布を示す図である。
図4】(A)は空間光変調器の第1パターンを形成するための第1の位相分布を示す図、(B)は図4(A)の一部の拡大図、(C)は図4(A)の位相分布に対応する空間像のレジストパターンを示す拡大図、(D)はミラー要素30の位相に系統的な誤差がある場合のレジストパターンを示す拡大図である。
図5】(A)はミラー要素30の位相に系統的な誤差がある場合の縮小(シュリンク)したレジストパターンを示す拡大図、(B)は図5(A)の左側のパターンの線幅とデフォーカス量との関係を示す図、(C)は図5(A)の右側のパターンの線幅とデフォーカス量との関係を示す図である。
図6】(A)は空間光変調器の系統的な誤差を含む第1の位相分布を示す図、(B)は図6(A)の位相分布に対応する縮小したレジストパターンを示す拡大図、(C)は図6(A)の位相分布を反転した第2の位相分布を示す図、(D)は図6(C)の位相分布に対応する縮小したレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後の縮小したレジストパターンを示す拡大図である。
図7】(A)は空間光変調器の隙間領域で反射のある第1の位相分布を示す図、(B)は図7(A)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(C)は図7(A)の位相分布を反転した第2の位相分布を示す図、(D)は図7(C)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図8】(A)は反射光を発生する隙間領域を含む第1の位相分布の一部を示す拡大図、(B)はその第1の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(C)はその第1の位相分布を反転した第2の位相分布の一部を示す図、(D)はその第2の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図9】(A)は空間光変調器の第2パターンを形成するための第1の位相分布を示す図、(B)は図9(A)の一部の拡大図、(C)は図9(A)の位相分布に対応する空間像のレジストパターンを示す拡大図である。
図10】(A)は空間光変調器の系統的な誤差を含む第2パターン用の第1の位相分布を示す図、(B)は図10(A)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(C)は図10(A)の位相分布を反転した第2の位相分布を示す図、(D)は図10(C)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図11】(A)は空間光変調器の隙間領域で反射のある第2パターン用の第1の位相分布を示す図、(B)は図11(A)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(C)は図11(A)の位相分布を反転した第2の位相分布を示す図、(D)は図11(C)の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図12】(A)は反射光を発生する隙間領域を含む第2パターン用の第1の位相分布の一部を示す拡大図、(B)はその第1の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(C)はその第1の位相分布を反転した第2の位相分布の一部を示す図、(D)はその第2の位相分布に対応するレジストパターンを示す拡大図、(E)は二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図13】(A)は周期的パターンからの0次光及び±1次光を示す図、(B)は第1の位相分布を示す図、(C)はその第1の位相分布を反転した第2の位相分布を示す図である。
図14】(A)は露光領域の走査方向の光強度分布を示す図、(B)は空間光変調器のミラー要素30のアレイにおける位相分布の移動方法の説明図、(C)は実施形態の変形例における2つの空間光変調器を示す図である。
図15図1の変調制御部48の構成例を示すブロック図である。
図16】空間光変調器を駆動しながら露光する動作の一例を示すフローチャートである。
図17】(A)、(B)、及び(C)はそれぞれ空間光変調器のミラー要素30のアレイ上で走査方向に位相分布が移動していく状態を示す図である。
図18】(A)及び(B)は、図17(C)に続いて空間光変調器のミラー要素30のアレイ上で走査方向に位相分布が移動していく状態を示す図である。
図19】(A)は隙間領域を含む複数のミラー要素30の配置を示す拡大図、(B)、(C)、(D)、及び(E)はそれぞれ系統的な誤差ΔZが2nmで隙間位相が0°、90°、180°、及び270°の場合の二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図20】(A)は隙間領域を含む複数のミラー要素30の配置を示す拡大図、(B)、(C)、(D)、及び(E)はそれぞれ系統的な誤差ΔZが4nmで隙間位相が0°、90°、180°、及び270°の場合の二重露光後のレジストパターンを示す拡大図である。
図21】隙間位相が異なる場合の系統的な誤差ΔZとレジストパターンの線幅の誤差との関係の一例を示す図である。
図22】隙間位相を変化させた場合のレジストパターンの線幅の誤差の変化の一例を示す図である。
図23】変形例の変調制御部の一部を示すブロック図である。
図24図23中の複数の信号の関係を示す図である。
図25】別の変形例の変調制御部の一部を示すブロック図である。
図26】変形例の露光装置の概略構成を示す図である。
図27】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1図18を参照して説明する。
図1は、本実施形態のマスクレス方式の露光装置EXの概略構成を示す。図1において、露光装置EXは、パルス発光を行う露光用の光源2と、光源2からの露光用の照明光(露光光)ILで被照射面を照明する照明光学系ILSと、ほぼその被照射面又はその近傍の面上に二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ高さが可変の微小ミラーである多数のミラー要素30を備えた空間光変調器28と、空間光変調器28を駆動する変調制御部48とを備えている。さらに、露光装置EXは、多数のミラー要素30によって生成された反射型の可変の凹凸パターン(可変の位相分布を持つマスクパターン)で反射された照明光ILを受光して、その凹凸パターン(位相分布)に対応して形成される空間像(デバイスパターン)をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系40と、各種制御系等とを備えている。
【0017】
以下、図1において、ウエハステージWSTの底面(不図示のガイド面に平行な面)に垂直にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、図1の紙面に垂直な方向にX軸を設定して説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の回りの角度をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向の角度とも呼ぶ。本実施形態では、露光時にウエハWはY方向(走査方向)に走査される。
【0018】
光源2としては、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を生成する固体パルスレーザ光源が使用できる。固体パルスレーザ光源は、例えば波長193nm(これ以外の種々の波長が可能)でパルス幅1ns程度の例えば直線偏光のレーザ光を1〜3MHz程度の周波数でパルス発光可能である。なお、光源2としては、波長193nmでパルス幅50ns程度のレーザ光を4〜6kHz程度の周波数でパルス発光するArFエキシマレーザ光源、波長248nmのKrFエキシマレーザ光源、又はパルス点灯される発光ダイオード等も使用可能である。
【0019】
本実施形態においては、光源2には電源部42が接続されている。主制御系40が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガパルスTPを電源部42に供給する。その発光トリガパルスTPに同期して電源部42は、指示されたタイミング及び光量で光源2にパルス発光を行わせる。
光源2から射出された断面形状が矩形でほぼ平行光束のパルスレーザ光よりなる照明光ILは、1対のシリンドリカルレンズよりなるビームエキスパンダ4、照明光ILの偏光状態を制御する偏光制御光学系6及びミラー8Aを介して、Y軸に平行に、複数の回折光学素子(diffractive optical element)10A,10B等から選択された回折光学素子(図1では回折光学素子10A)に入射する。偏光制御光学系6は、例えば照明光ILの偏光方向を回転する1/2波長板、照明光ILを円偏光に変換するための1/4波長板、及び照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するための楔型の複屈折性プリズム等を交換可能に設置可能な光学系である。
【0020】
回折光学素子10A,10B等は、回転板12の周縁部にほぼ等角度間隔で固定されている。主制御系40が駆動部12aを介して回転板12の角度を制御して、照明条件に応じて選択された回折光学素子を照明光ILの光路上に設置する。選択された回折光学素子で回折された照明光ILは、レンズ14a,14bよりなるリレー光学系14によってマイクロレンズアレイ16の入射面に導かれる。マイクロレンズアレイ16に入射した照明光ILは、マイクロレンズアレイ16を構成する多数の微小なレンズエレメントによって二次元的に分割され、各レンズエレメントの後側焦点面である照明光学系ILSの瞳面(照明瞳面IPP)には二次光源(面光源)が形成される。
【0021】
一例として、回折光学素子10Aは通常照明用であり、回折光学素子10Bは、小さいコヒーレンスファクター(σ値)の照明光を生成する小σ照明用であり、その他に、2極照明用、4極照明用、及び輪帯照明用等の回折光学素子(不図示)も備えられている。なお、複数の回折光学素子10A,10B等の代わりに、それぞれ直交する2軸の回りの傾斜角が可変の多数の微小ミラーのアレイを有する空間光変調器を使用してもよく、マイクロレンズアレイ16の代わりにフライアイレンズ等も使用可能である。また、リレー光学系14の代わりに、ズームレンズを使用してもよい。
【0022】
照明瞳面IPPに形成された二次光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ18、視野絞り20、光路を−Z方向に折り曲げるミラー8B、第2リレーレンズ22、コンデンサ光学系24、及びミラー8Cを介して、XY平面に平行な被照射面(転写用のパターンが配置される設計上の面)にθx方向に平均的な入射角αで入射する。言い換えると、その被照射面に対して照明光学系ILSの光軸AXIはθx方向に入射角αで交差している。入射角αは例えば数deg(°)から数10degである。その被照射面又はその近傍の面に、空間光変調器28の2次元のアレイ状に配列された多数のミラー要素30の電源オフ時の反射面が配置される。ビームエキスパンダ4からコンデンサ光学系24及びミラー8Cまでの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。
【0023】
照明光学系ILSからの照明光ILは、空間光変調器28の多数のミラー要素30のアレイを覆うX方向に細長い長方形状の照明領域26Aをほぼ均一な照度分布で照明する。多数のミラー要素30は、照明領域26A内の長方形の領域にX方向及びY方向に所定ピッチで配列されている。照明光学系ILS及び空間光変調器28は、不図示のフレームに支持されている。また、照明光学系ILS中の視野絞り20は、その被照射面(投影光学系PLの物体面)と共役な面COPから光軸方向に所定距離だけシフトした位置に設置されている。これにより、照明領域26Aにおける照明光ILの強度分布は、Y方向(ウエハWの走査方向に対応する方向)及びX方向(非走査方向)に台形状の分布となっている。
【0024】
図2(A)は、図1中の空間光変調器28のミラー要素30のアレイの一部を示す拡大斜視図、図2(B)は図2(A)のBB線に沿う断面図である。図2(A)において、多数のミラー要素30は、X方向及びY方向にそれぞれピッチ(周期)px及びpyで配列されている。一例として、ミラー要素30のX方向及びY方向の幅は、それぞれピッチpx及びpyとほぼ等しいとみなすことができる。また、ミラー要素30の反射面は正方形であり、ピッチpx,pyは互いに等しい。なお、ミラー要素30の反射面は長方形等でもよく、ピッチpx,pyは互いに異なってもよい。
【0025】
各ミラー要素30は、X方向にi番目(i=1,2,…,I)及びY方向にj番目(j=1,2,…,J)の位置P(i,j)にそれぞれ配置されている。一例として、ミラー要素30のY方向(走査方向に対応する方向)の配列数Jは数100〜数1000であり、X方向の配列数Iは配列数Jの数倍〜数10倍である。また、ミラー要素30の配列のピッチpxは例えば10μm〜1μm程度である。
【0026】
また、空間光変調器28は、多数のミラー要素30と、各ミラー要素30をそれぞれ可撓性(弾性)を持つヒンジ部35(図2(B)参照)を介して支持するベース部材32とを備えている。
図2(B)において、ベース部材32は、例えばシリコンよりなる平板状の基材32Aと、基材32Aの表面に形成された窒化ケイ素(例えばSi3N4)等の絶縁層32Bとから構成されている。また、ベース部材32の表面にX方向、Y方向に所定ピッチで支持部34が形成され、隣接するY方向の支持部34の間に、弾性変形によってZ方向に可撓性を持つ1対の2段のヒンジ部35を介して、ミラー要素30の裏面側の凸部が支持されている。支持部34、ヒンジ部35、及びミラー要素30は例えばポリシリコンから一体的に形成されている。ミラー要素30の反射面(表面)には、反射率を高めるために金属(例えばアルミニウム等)の薄膜よりなる反射膜31が形成されている。
【0027】
また、ミラー要素30の底面側のベース部材32の表面に電極36Aが形成され、電極36Aに対向するようにヒンジ部35の底面に電極36Bが形成されている。ベース部材32の表面及び支持部34の側面には、ミラー要素30毎に対応する電極36A,36B間に所定の電圧を印加するための信号ライン(不図示)がマトリックス状に設けられている。なお、信号ラインはベース部材32に設けたスルーホール(不図示)を通して配線してもよい。本実施形態では、電源オフ状態又は電源オン状態であっても電極36A,36B間に電圧が印加されていない状態(第1の状態)では、照明光IL2が入射している位置P(i,j−1)のミラー要素30で示すように、ミラー要素30の反射面は、XY平面に平行な平面である基準平面A1に合致している。一方、電源オン時で電極36A,36B間に所定の電圧が印加されている状態(第2の状態)では、照明光IL1が入射している位置P(i,j)のミラー要素30で示すように、ミラー要素30の反射面は、XY平面に平行で基準平面A1からZ方向に間隔d1だけ変位した平面A2に合致している。空間光変調器28の各ミラー要素30は、その第1の状態又はその第2の状態のいずれかに設定される。
【0028】
このような微小な立体構造の空間光変調器28は、例えば背景技術で引用した非特許文献1に記載されているように、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いて製造することが可能である。空間光変調器28の各ミラー要素30は、平行移動によって第1の状態又は第2の状態に設定できればよいだけであるため、ミラー要素30の小型化及びミラー要素30の配列数の増大が容易である。
【0029】
また、図2(B)において、各ミラー要素30の反射面が基準平面A1に合致している状態(第1の状態)で、当該ミラー要素30によって反射される照明光ILの位相の変化量を第1の位相δ1とすると、本実施形態では位相δ1は0°である。即ち、本実施形態では、その第1の状態では入射光の位相と反射光の位相とは同じである。また、各ミラー要素30の反射面が基準平面A1から間隔d1だけ変位した平面A2に合致している状態(第2の状態)で、当該ミラー要素30で反射される照明光ILの位相の変化量を第2の位相δ2とすると、位相δ2は位相δ1に対して180°(π(rad))異なっている。すなわち、以下の関係が成立する。
【0030】
δ1=0°…(1A), δ2=180°=π(rad) …(1B)
なお、以下では、単位のない位相はradを意味する。また、位置P(i,j)のミラー要素30の反射面が基準平面A1に合致しているときの点線で示す反射光B1の波面の位相の変化量と、その反射面が間隔d1の平面A2に合致しているときの反射光B2の波面の位相の変化量との差分が第2の位相δ2である。一例として、入射角αをほぼ0°であるとして、ミラー要素30の反射面に入射する照明光IL1の波長をλ(ここではλ=193nm)とすると、間隔d1はほぼ次のようになる。
【0031】
d1=λ/4 …(2A)
なお、その第2の状態にあるミラー要素30の反射面の基準平面A1との間隔には、設計上の間隔d1の他に、実際には製造誤差及び/又は駆動誤差等に起因するランダムな誤差及び/又は系統的な誤差ΔZ(ほぼ全部のミラー要素30について共通に発生する所定の傾向を持つ誤差)が含まれている。
【0032】
照明光IL1の入射角αがほぼ0の場合には、照明光IL1の波長λを用いると、その反射面の高さの系統的な誤差ΔZに対応する反射光B2の位相の誤差Δφは、次のようになる。
Δφ=(4π/λ)ΔZ …(2B)
このため、その第2の状態にあるミラー要素30で反射される照明光ILの位相の変化量(第2の位相δ2)はほぼ180°である。そのランダムな誤差及び系統的な誤差による位相δ2の変化量は、一例として±10°程度である。なお、そのランダムな誤差の影響は、例えばウエハWの各点を複数パルスで露光することによって軽減される。
【0033】
また、ミラー要素30間の支持部34の表面のうちで、照明光ILを反射する部分を隙間領域34aという。隙間領域34aの表面と基準反射面A1とのZ方向の間隔d2によって、隙間領域34aでの反射光の位相が変化する。一例として、隙間領域34aでの反射光は考慮しないこととするが、隙間領域34aの幅が比較的広い場合の影響については後述する。
【0034】
以下では、入射する照明光の位相を0°変化させて反射するその第1の状態に設定されたミラー要素30を位相0のミラー要素、入射する照明光の位相を設計値で180°変化させて反射するその第2の状態に設定されたミラー要素30を位相πのミラー要素とも呼ぶこととする。図1の変調制御部48が、主制御系40から設定される照明光ILの位相分布(ミラー要素30のアレイの凹凸パターン)の情報に応じて、各位置P(i,j)のミラー要素30の電極36A,36B間の電圧を制御して、ミラー要素30を第1の状態(位相0)又は第2の状態(位相π)に設定する。
【0035】
また、図2(B)には、図1の変調制御部48の一部の互いに連結されたフリップフロップ60A,60Bと、フリップフロップ60A,60Bの第1出力又はこの第1出力を反転した第2出力のいずれかを選択する選択回路62A,62Bとが示されている。フリップフロップ60A等の第1出力がローレベル(又はハイレベル)であれば、その第2出力はハイレベル(又はローレベル)である。選択回路62A,62Bの出力がY方向に隣接して配列された2つのミラー要素30を駆動するための電極36Aに接続され、これに対向する電極36Bは例えば接地ライン(不図示)に接続されている。一例として、選択回路62A等の出力がローレベル(又はハイレベル)であれば、対応するミラー要素30は第1の状態(又は第2の状態)に設定される。
【0036】
フリップフロップ60Aの入力部には前段のフリップフロップ(不図示)の第1出力が供給され、フリップフロップ60Bの第1出力は後段のフリップフロップ(不図示)の入力部に供給され、制御部(不図示)がクロックパルスCKP及び選択信号SELSを出力している。フリップフロップ60A,60B等は、そのクロックパルスCKPに同期して出力をシフトする。なお、このように連結されたフリップフロップ群はシフトレジスターと呼ばれる。全部のフリップフロップ60A等にそれぞれ選択回路62A等が接続されている。一例として、選択回路62A等はそれぞれ選択信号SELSがハイレベルの期間には対応するフリップフロップ60A等の第1出力を選択して出力し、選択信号SELSがローレベルの期間には対応するフリップフロップ60Aの第2出力を選択して出力する。フリップフロップ60A等は実際にはそれぞれ複数ビットの出力を持つ。また、フリップフロップ60A,60B及び選択回路62A,62B等は、例えば基板32Aの裏面、又はベース部材32の表面のミラー要素30のアレイの領域に近接する領域に形成してもよい。変調制御部48の全体の構成例については後述する。
【0037】
なお、図2(B)のフリップフロップ60A,60B等は、ミラー要素30の位相分布を+Y方向に移動するための回路であり、その位相分布を−Y方向に移動するフリップフロップ群(不図示)も設けられている。選択回路62A,62B等は、ウエハWの走査方向に応じてその2組のフリップフロップの一方の出力を選択する。
図1において、空間光変調器28の照明領域26A内の多数のミラー要素30のアレイで反射された照明光ILは、平均的な入射角αで投影光学系PLに入射する。不図示のコラムに支持された光軸AXWを持つ投影光学系PLは、空間光変調器28(物体面)側に非テレセントリックであり、ウエハW(像面)側にテレセントリックの縮小投影光学系である。投影光学系PLは、空間光変調器28によって設定される照明光ILの位相分布に応じた空間像の縮小像を、ウエハWの1つのショット領域内の露光領域26B(照明領域26Aと光学的に共役な領域)に形成する。
【0038】
上述のように照明領域26A内の光強度分布はY方向及びX方向に台形状であるため、図3(C)に拡大して示すように、露光領域26Bの光強度分布もY方向(ウエハWの走査方向)及びX方向に台形状である。図3(C)において、強度分布EPY及びEPXはそれぞれ露光領域26Bの中心を通りY軸及びX軸に平行な直線上における照明光ILの強度分布を示す。強度分布EPY,EPXより分かるように、露光領域26BのY方向の両端の所定幅の傾斜部26Ba,26Bbでは強度が外側に向けてほぼ線形に低下し、露光領域26BのX方向の両端の所定幅の継ぎ部26Bc,26Bdでも強度が外側に向けてほぼ線形に低下している。傾斜部26Ba,26Bbは、空間光変調器28の端部で生じる意図しない位相結像の影響を軽減するために設けられている。継ぎ部26Bc,26Bdは、空間光変調器28の端部で生じる意図しない位相結像の影響を軽減するため、及び隣接する部分領域との継ぎ誤差を軽減するために設けられている。
【0039】
また、投影光学系PLの投影倍率βは例えば1/10〜1/100程度である。投影光学系PLの解像度は、一例として、空間光変調器28のミラー要素30の像の幅(β・px)の1倍〜数倍程度である。例えば、ミラー要素30の大きさ(配列のピッチ)が数μm程度、投影光学系PLの投影倍率βが1/100程度であれば、解像度Reは数10nm〜その数倍程度である。ウエハW(基板)は、例えばシリコン又はSOI(silicon on insulator)等の円形の平板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光材料)を数10nm〜200nm程度の厚さで塗布したものを含む。
【0040】
本実施形態のように物体側に非テレセントリックの投影光学系PLを用いることによって、空間光変調器28の多数のミラー要素30の反射面とウエハWの露光面(フォトレジストの表面)とをほぼ平行に配置できる。従って、露光装置の設計・製造が容易である。 また、露光装置EXが液浸型である場合には、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書に開示されているように、投影光学系PLの先端の光学部材とウエハWとの間に照明光ILを透過する液体(例えば純水)を供給して回収する局所液浸装置が設けられる。液浸型の場合には開口数NAを1より大きくできるため、解像度をさらに高めることができる。
【0041】
図1において、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のガイド面上でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動する。ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びθz方向の回転角等はレーザ干渉計45によって形成され、この計測情報がステージ制御系44に供給されている。ステージ制御系44は、主制御系40からの制御情報及びレーザ干渉計45からの計測情報に基づいて、リニアモータ等の駆動系46を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、ウエハWのアライメントを行うために、ウエハWのアライメントマークの位置を検出するアライメント系(不図示)等も備えられている。
【0042】
ウエハWの露光時には、基本的な動作として、ウエハWのアライメントを行った後、照明光学系ILSの照明条件を設定する。また、主制御系40は、変調制御部48にウエハWの各ショット領域の複数の部分領域に形成されるパターンに対応する位相分布(凹凸パターン)の情報を供給する。そして、例えば図3(A)に示すウエハWの表面でY方向に一列に配列されたショット領域SA21,SA22,…に露光を行うために、ウエハWを走査開始位置に位置決めする。その後、ウエハWの+Y方向への一定速度での走査を開始する。なお、図3(A)のショット領域SA22等の中の矢印は、ウエハWに対する露光領域26Bの相対的な移動方向を示している。
【0043】
露光中に、主制御系40は、露光領域26Bに対するウエハWの例えばショット領域SA22の第1部分領域SA22aの相対位置に応じて、発光トリガパルスTPを電源部42に供給して照明光ILをパルス発光させる。さらに、主制御系40は、変調制御部48に発光トリガパルスTPの数倍〜数10倍の周波数の制御信号を供給する。変調制御部48は、その制御信号に同期して、転写対象の位相分布がY方向に次第に移動するように、空間光変調器28の光学素子のアレイの位相分布(凹凸パターン)を制御する。これによって、部分領域SA22aは、次第に内部の空間像が移動する露光領域26Bで走査露光される。
【0044】
その後、ウエハWのショット領域SA22に隣接するショット領域SA23の第1部分領域に露光するために、ウエハWを同じ方向に走査したまま、変調制御部48は、照明光ILのパルス発光に同期して、ショット領域SA22の露光時と同じように空間光変調器28の光学素子のアレイの位相分布をY方向に移動させる。このようにして、ショット領域SA21からSA22の第1部分領域にかけて連続的に露光を行うことができる。その後、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをX方向(非走査方向)にステップ移動する。そして、点線で示す露光領域26Bに対するウエハWの走査方向を逆の−Y方向に設定し、変調制御部48は、照明光ILのパルス発光に同期して、ショット領域SA22等の第1領域SA22a等の露光時とは逆方向に空間光変調器28の光学素子のアレイの位相分布(凹凸パターン)を移動させる。これによって、ショット領域SA23からSA21の第2部分領域SA22b等にかけて連続的に露光を行うことができる。この際に、第1部分領域SA22a及び第2部分領域SA22bの境界部では、継ぎ誤差を低減するために、図3(C)の露光領域26Bの継ぎ部26Bd及び26Bcで二重露光が行われる。
【0045】
このようにして、マスクレス方式で、ウエハWの各ショット領域SA21〜SA23等に効率的に所定の空間像を露光することができる。その後、ウエハWのフォトレジストの現像を行うことで、ウエハWの各ショット領域にその空間像に対応するレジストパターン(回路パターン)が形成される。なお、ショット領域SA21〜SA23は、X方向に3個以上の部分領域に分けて露光してもよい。さらに、マスクレス方式であるため、ショット領域SA21〜SA23に互いに異なる空間像を露光することも可能である。
【0046】
次に、空間光変調器28の上記の第2の状態(位相π)に設定されている図2(B)のミラー要素30の反射面の基準平面A1との間隔に、系統的な誤差ΔZが含まれており、反射光の位相に式(2B)の誤差Δφが含まれている場合の空間光変調器28の駆動方法につき説明する。
まず、ウエハWの表面に現像後に形成すべきレジストパターンを、一例として図4(C)及び図4(D)に示すように、それぞれほぼX方向の幅40nm及びY方向の長さが48nmでX方向の間隔が40nmで配置された1対の左右対称なほぼ正方形のターゲット38A,38Bであるとする。図4(C)等において、横軸及び縦軸はそれぞれ投影光学系PLの像面におけるX軸(nm)及びY軸(nm)である。図4(A)は、ターゲット38A,38Bにできるだけ近いレジストパターンを形成するために、図1の空間光変調器28のミラー要素30のアレイの一部によって形成される照明光ILの位相分布50A(ミラー要素30の反射面の凹凸分布)の一例を示す透視図であり、図4(B)は図4(A)の中心部の拡大図である。なお、以下で説明する図6(A)等のミラー要素30のアレイの位相分布もそれぞれ透視図である。また、説明の便宜上、投影光学系PLは正立像を形成するものとする。さらに、ミラー要素30のうちで第1の状態(位相0)のミラー要素30Aを白抜きのパターンで表し、第2の状態(位相π)のミラー要素30Bをハッチングされたパターンで表す。
【0047】
図4(A)及び図4(B)において、ターゲット38A,38Bと光学的に共役なパターン39A,39Bが仮想的に点線で表されている。また、個々のミラー要素30の配列のピッチpx(=py)は、投影像の段階で20nmとなるように、すなわち投影光学系PLの投影倍率βを用いて、β・px=20(nm)となるように設定されている。また、位相分布50Aは、それぞれ第1の状態(位相0)のミラー要素30Aよりなる第1領域51A、第4領域51D、第5領域51E、第8領域51H、及び第9領域51Iと、それぞれ第2の状態(位相π)のミラー要素30Bよりなる第2領域51B、第3領域51C、第6領域51F、第7領域51G、及び第10領域51Jと、これらの第1領域51A〜第10領域51Jを囲む枠状の周辺領域51Kとを含んでいる。第1領域51A及び第2領域51B内にそれぞれ仮想的にパターン39A及び39Bが配置されている。周辺領域51Kは、第1の状態のミラー要素30Aと第2の状態のミラー要素30Bとを市松模様に配列したものである。市松模様は、市松格子又はチェッカーボードパターン(Checkerboard Pattern)とも呼ぶことができる。周辺領域51Kの位相分布に対応する空間像は、ミラー要素30の像の幅の1/2の線幅の像を含むが、投影光学系PLはミラー要素30の像の幅よりも微細なパターンは解像しない(回折光が開口絞りを通過しない)ため、周辺領域51Kに対応する空間像は遮光部となる。
【0048】
その位相分布50Aを用いて、照明瞳面IPPにおける照明光ILの光量分布を高い解像度が得られるように最適化し、Y方向に直線偏光した照明光ILを用いるという照明条件のもとで、かつ比較のために、ミラー要素30の反射面の高さの系統的な誤差ΔZが0の条件のもとで、シミュレーションによって投影光学系PLのベストフォーカス位置、及び±40nmデフォーカスした位置にある像面における空間像の強度分布を求めた。さらにそれらの空間像を所定の閾値(例えばX方向の幅の平均値が目標値になる値)でスライスして求めた理論的なレジストパターンが、図4(C)のベストフォーカス位置のパターンL,R、+40nmデフォーカス時のパターンLP,RP、及び−40nmデフォーカス時のパターンLM,RMである。この場合、左側のパターンL,LM,LPは−X方向のターゲット38Aに対応し、右側のパターンR,RM,RPは+X方向のターゲット38Bに対応している(以下同様)。左右のパターンL,Rは、投影光学系PLの解像度に応じて、ターゲット38A,38Bに対して楕円状になっている。図4(C)より、系統的な誤差ΔZが0の場合には、デフォーカスしていても、形成されるレジストパターンは殆ど変化しないことが分かる。以下、図4(D)等で、パターンLj,Rj(j=0,1,2,…)はベストフォーカス位置、パターンLjP,RjPは+40nmデフォーカス時、及びパターンLjM,RjMは−40nmデフォーカス時のレジストパターンを表している。
【0049】
次に、その位相分布50Aを用いて同じ照明条件で、かつミラー要素30の反射面の高さの系統的な誤差ΔZを2nm(式(2B)の位相の誤差Δφはほぼ7.5°)とした条件のもとで、シミュレーションによって投影光学系PLのベストフォーカス位置、及び±40nmデフォーカスした位置にある像面における空間像の強度分布を求めた。さらに、その空間像から求めた理論的なレジストパターンが、図4(D)のベストフォーカス位置のパターンL0,R0、及びデフォーカス時のパターンL0P,R0P,L0M,R0Mである。図4(D)から、系統的な誤差ΔZが2nmである場合には、デフォーカスによって、形成される左右のレジストパターンの大きさの比が変化する(例えばパターンL0PはパターンR0Pよりも小さくなっている)ことが分かる。
【0050】
また、図5(A)のターゲット38AS,38BS、及びパターンL1,R1,L1P,R1P,L1M,R1Mは、それぞれ図4(D)のターゲット38A,38B及びパターンL0,R0,L0P,R0P,L0M,R0Mに幅10nmのシュリンク(縮小)を施して得られるレジストパターンを示す。このシュリンクしたレジストパターンに関して、左側のパターンL1P等の短辺方向(ここではX方向)の幅であるCD(critical dimension)をCD−L、右側のパターンR1P等のCDをCD−Rとして、左右のレジストパターンの大きさの変化を定量化するために、系統的な誤差ΔZの値を様々に設定し、様々なデフォーカス量のもとで計算した。
【0051】
図5(B)及び図5(C)は、そのようにして計算されたCD−L及びCD−Rを示す。図5(B)及び図5(C)の横軸はデフォーカス量(nm)、縦軸はCDの目標値に対する変化量ΔCD(%)を示し、系統的な誤差ΔZを0,0.25,0.5,及び1(nm)に設定した場合の変化量ΔCDが示されている。図5(B)及び図5(C)より、系統的な誤差ΔZが0.5nm程度であっても、デフォーカス量が±40nmのときに、ほぼ7%程度のCD誤差が生じていることが分かる。ただし、左側のCD−Lと右側のCD−Rとはデフォーカスに関して符号が逆であるため、これを利用して以下のように、系統的な誤差ΔZがあるときに、デフォーカス量が生じても、実質的にCD誤差を低減できる。
【0052】
すなわち、本実施形態では、ミラー要素30の系統的な誤差ΔZが2nmである場合に、まず空間光変調器28のミラー要素30のアレイで図6(A)の第1の位相分布50A(図4(A)の位相分布と同じ)を設定し、その投影光学系PLによる空間像でウエハWを露光する。この際の露光量分布を仮想的にスライスし、シュリンクを施すことで、図5(A)と同じ図6(B)のレジストのパターンL1,R1,L1P,R1P,L1M,R1Mが得られる。その後、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで、位相分布50Aの0とπとを反転した図6(C)の第2の位相分布50Bを設定し、その投影光学系PLによる空間像でウエハWを二重露光する。図6(C)の位相分布50Bは、図6(A)の第1領域51A(位相0)〜第10領域51J(位相π)に対応する第1領域52A〜第10領域52Jが、それぞれ位相π〜位相0である。また、位相分布50Aの周辺領域51Kに対応する位相分布50Bの周辺領域52Kは市松模様であるが、周辺領域51Kとは0とπとが入れ替わっている。なお、周辺領域52Kの像は遮光部になるため、周辺領域52Kの代わりに周辺領域51Kと同じ市松模様の位相分布を使用してもよい。
【0053】
この場合、系統的な誤差ΔZによって、位相分布50Aにおいては、例えば第1領域51A(位相0)に対して第2領域51B(位相π+Δφ)は、位相が目標値に対してΔφだけ進んでいるものとすると、位相分布50Bにおいては、対応する第1領域52A(位相π+Δφ)に対して第2領域52B(位相0)は、位相が目標値に対してΔφだけ遅れていることになる。言い換えると、第2の位相分布50Bは、第1の位相分布50Aにおいて系統的な誤差Δφ(ΔZ)の符号を逆にした分布と等価になる。このため、第2の位相分布50Bに関する図5(A)の左右のレジストパターンの線幅CD−L,CD−Rのデフォーカスに対する変化の特性は、位相分布50Aに関する特定と逆の図5(C)及び図5(B)の特性となる。
【0054】
従って、位相分布50Bの空間像の露光量分布をスライスし、シュリンクを施すことで、図6(D)のレジストのパターンL2,R2,L2P,R2P,L2M,R2Mが得られる。この場合、+40nmデフォーカス時のパターンに関して、図6(D)のターゲット38AS側のパターンL2Pはターゲット38BS側のパターンR2Pより大きいのに対して、図6(B)のターゲット38AS側のパターンL1Pはターゲット38BS側のパターンR1Pより小さくなっている。また、−40nmデフォーカス時には、図6(B)のパターンL1M,R1Mと図6(D)のパターンL2M,R2Mとは大小関係が逆になっている。
【0055】
また、位相分布50Aの空間像の露光時の露光量と、位相分布50Bの空間像の露光時の露光量とは互いに同じであり、かつ二重露光後に適正露光量が得られるように設定されている。この結果、二重露光後の露光量分布は、系統的な誤差ΔZが0の位相分布50Aを用いたときの露光量分布とほぼ等しくなる。すなわち、その二重露光後の露光量分布をスライスして、シュリンクすることによって、図6(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンL3,R3と、±40nmのデフォーカス時のパターンL3P,R3P,L3M,R3Mとがほぼ等しいパターン得られる。従って、系統的な誤差ΔZが2nmで、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像及びシュリンク後にターゲット38AS,38BSとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。
【0056】
また、本発明者は、上記の第1の位相分布による露光と、それを反転した第2の位相分布による露光とを重ねて行うことにより、ミラー要素30のアレイの隙間領域34aからの反射光がミラー要素30からの反射光に混入する場合に、その影響が低減されることを確かめた。すなわち、1回目の露光に際して、空間光変調器28のミラー要素30のアレイを図6(A)と同じ図7(A)の位相分布50Aに設定するものとする。ただし、図7(A)の位相分布50Aでは、第2の状態のミラー要素30の高さの系統的な誤差ΔZは0であり、かつその部分拡大図E6Aに示すように、ミラー要素30の配列中にX方向及びY方向の幅cx,cy(cx=cyとする)の隙間領域34aがあるとする。一例として、ミラー要素30の像の配列のピッチ20nm(=β・px)に対して、隙間領域34aの像の幅β・cxは2.5nm(ピッチの12.5%)である。また、隙間領域34aの照明光ILに対する反射率Rcを10%(ミラー要素30の反射率に対する割合)とする。さらに、図2(B)の基準反射面A1と隙間領域34aの表面との間隔d2に応じて定まる、隙間領域34aからの反射光の位相の変化量δ3(第1の状態のミラー要素30からの反射光の位相の変化量δ1との差分)を0°であるとする。なお、以下では、位相の変化量δ1を基準とした、隙間領域34aからの反射光の位相の変化量δ3を隙間位相とも呼ぶ。
【0057】
この場合にも、まず図7(A)の位相分布50Aの投影光学系PLによる空間像でウエハWを露光するものとしてシミュレーションを行った。なお、以下の空間像のシミュレーションは、空間像をベストフォーカス位置及び±40nmデフォーカスした位置に形成する場合について行っている。その結果求められた空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図7(B)に示すように、左のターゲット38A側のパターンL4,L4P,L4Mが、右のターゲット38B側のパターンR4,R4P,R4Mに比べてかなり大きくなっている。
【0058】
次に、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで、位相分布50Aの0とπとを反転した図7(C)の第2の位相分布50Bを設定し、その投影光学系PLによる空間像でウエハWを二重露光する。位相分布50Bにおいても、部分拡大図E6Cで示すように、隙間領域34aは反射率Rcが10%で、反射光の位相の変化量(隙間位相δ3)が0°である。図7(C)の位相分布50Bの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図7(D)に示すように、左のターゲット38A側のパターンL5,L5P,L5Mが右のターゲット38B側のパターンR5,R5P,R5Mよりもかなり小さくなっている。
【0059】
この結果、二重露光後の露光量分布に対応するレジストパターンは、図7(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンL6,R6と、±40nmのデフォーカス時のパターンL6P,R6P,L6M,R6Mとはほぼ等しくなる。従って、ミラー要素30のアレイの位相0°の隙間領域34aの反射率が10%程度であり、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像後にターゲット38A,38Bとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。なお、図7(B)、(C)、(E)において、パターンサイズを決めるスライスレベルは、図7(E)のパターンのX方向の幅の最大値がターゲットとほぼ等しくなるように決めて、それを図7(B)、(C)にも適用した。
【0060】
また、ミラー要素30のアレイの隙間領域34aからの反射光の位相の変化量(隙間位相δ3)が270°の場合についてもシミュレーションを行った。この場合、1回目の露光の位相分布は、図7(A)の位相分布50Aと同じであるが、図8(A)の部分拡大図で示すように、隙間領域34aの反射率Rcを1%とした。この位相分布50Aの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図8(B)に示すように、ターゲット38A側のパターンL7Mが、ターゲット38B側のパターンR7Mに対して僅かに大きくなり、パターンL7PがパターンR7Pより僅かに小さくなっている。
【0061】
さらに、2回目の露光の位相分布は、図7(B)の位相分布50Bと同じであるが、図8(C)の部分拡大図で示すように、隙間領域34aの反射率Rcが1%、隙間位相δ3が270°である。図8(C)の位相分布50Bの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図8(D)に示すように、ターゲット38A側のパターンL8Mが、ターゲット38B側のパターンR8Mに対して僅かに小さくなり、パターンL8PがパターンR8Pより僅かに大きくなっている。従って、二重露光後の露光量分布に対応するレジストパターンは、図8(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンL9,R9と、±40nmのデフォーカス時のパターンL9P,R9P,L9M,R9Mとはほぼ等しくなる。従って、ミラー要素30のアレイの隙間位相が270°の隙間領域34aの反射率が1%程度であり、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像後にターゲット38A,38Bとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。なお、図8(B)、(C)、(E)において、パターンサイズを決めるスライスレベルは、図8(E)のパターンのX方向の幅の最大値がターゲットとほぼ等しくなるように決めて、それを図8(B)、(C)にも適用した。
【0062】
次に、別の例として、ウエハWの表面に現像後に形成すべきレジストパターンが、図9(C)に示すように、左右で非対称なパターンである場合についてシミュレーションを行った。図9(C)のレジストパターンは、ほぼX方向の幅40nm及びY方向の長さが56nmの短い長方形のターゲット38C、及びこれに対してX方向の間隔が80nmで配置されたほぼX方向の幅40nm及びY方向の長さが96nmの長い長方形のターゲット38Dである。
【0063】
図9(A)は、ターゲット38C,38Dにできるだけ近いレジストパターンを形成するために、図1の空間光変調器28のミラー要素30のアレイの一部によって形成される照明光ILの位相分布53Aの一例を示し、図9(B)は図9(A)の中央部の拡大図である。図9(A)及び図9(B)において、ターゲット38C,38Dと光学的に共役なパターン39C,39Dが仮想的に点線で表されている。また、個々のミラー要素30の配列のピッチは、投影像の段階で20nmに設定されている。位相分布53Aは、それぞれ位相πのミラー要素30Bよりなる第1領域54A、第3領域54C、第4領域54D、及び第5領域54Eと、位相0のミラー要素30Aよりなる第2領域54Bと、これらの第1領域54A〜第5領域54Eを囲む枠状で市松模様の周辺領域54Fとを含んでいる。
【0064】
その位相分布53Aを用いて、コヒーレンスファクタ(σ値)が0.14で非偏光の照明条件のもとで、かつ比較のために、ミラー要素30の反射面の高さの系統的な誤差ΔZが0の条件のもとで、シミュレーションによって投影光学系PLのベストフォーカス位置、及び±40nmデフォーカスした位置にある像面における空間像の強度分布を求めた。さらに、それらの空間像から求めたレジストパターンは、図9(C)に示すように、ベストフォーカス位置のパターンLA,RAと、±40nmデフォーカス時のパターンLAP,RAP及びLAM,RAMとがほぼ同じであり、かつそれぞれターゲット38C,38Dに近いパターンである。
【0065】
次に、図9(A)と同じ図10(A)の位相分布53Aを用いて、同じ照明条件で、かつミラー要素30の反射面の高さの系統的な誤差ΔZを2nmとした条件のもとで、シミュレーションによって空間像の強度分布を求めた。さらに、その空間像から求めたレジストパターンは、図10(B)に示すように、ベストフォーカス位置のパターンLA1,RA1と、デフォーカス時のパターンLA1P,RA1P,LA1M,RA1Mとが異なっている。
【0066】
その後、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで、位相分布53Aの0とπとを反転した図10(C)の第1領域55A〜第5領域55E及び周辺領域55Fを含む第2の位相分布53Bを設定し、その投影光学系PLによる空間像でウエハWを二重露光する。この場合にも、位相分布53Aにおける系統的な誤差ΔZに対して、位相分布53Bにおける系統的な誤差は−ΔZになる。従って、位相分布53Bの空間像の露光量分布をスライスして得られるレジストパターンは、図10(D)に示すように、ベストフォーカス位置のパターンLA2,RA2と、デフォーカス時のパターンLA2P,RA2P,LA2M,RA2Mとが、図10(B)とは逆の特性で異なっている。この結果、その二重露光後の露光量分布をスライスすることによって、図10(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンLA3,RA3と、±40nmのデフォーカス時のパターンLA3P,RA3P,LA3M,RA3Mとがほぼ等しいパターン得られる。従って、系統的な誤差ΔZが2nmで、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像後にターゲット38C,38Dとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。
【0067】
また、この例においても、第1の位相分布53Aによる露光と、それを反転した第2の位相分布53Bによる露光とを重ねて行うことにより、ミラー要素30のアレイの隙間領域34aからの反射光の影響が低減されることが確かめられた。すなわち、1回目の露光に際して、空間光変調器28のミラー要素30のアレイを図9(A)と同じ図11(A)の位相分布53Aに設定し、かつ系統的な誤差ΔZを0として、その部分拡大図E11Aに示すように、ミラー要素30の像の配列のピッチ20nm(=β・px)に対して、隙間領域34aの像の幅β・cxを2.5nm(ピッチの12.5%)とした。また、隙間領域34aの反射率Rcを1%、隙間領域34aからの反射光の位相の変化量(変化量δ1との差分)を0°であるとした。
【0068】
この場合にも、まず図11(A)の位相分布53Aの空間像の露光量分布を求め、この露光量分布から求めたレジストパターンは、図11(B)に示すように、左のパターンLA4,LA4P,LA4Mがターゲット38Cより小さく、右のパターンRA4,RA4P,RA4Mがターゲット38Dより大きくなっている。
次に、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで、位相分布53Aの0とπとを反転した図11(C)の第2の位相分布53Bを設定し(部分拡大図E11Cで示すように、隙間領域34aは反射率Rcが1%で、反射光の位相の変化量は0°である)、その投影光学系PLによる空間像でウエハWを二重露光する。図11(C)の位相分布53Bの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図11(D)に示すように、左のパターンLA5,LA5P,LA5Mがターゲット38Cとほぼ同じで、右のパターンRA5,RA5P,RA5Mがターゲット38Dより小さくなっている。この結果、二重露光後の露光量分布に対応するレジストパターンは、図11(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンLA6,RA6と、±40nmのデフォーカス時のパターンLA6P,RA6P,LA6M,RA6Mとはほぼ等しくなる。従って、ミラー要素30のアレイの位相0°の隙間領域34aの反射率が1%程度であり、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像後にターゲット38C,38Dとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。
【0069】
さらに、1回目の露光の位相分布が、図11(A)の位相分布53Aと同じであるが、図12(A)の部分拡大図で示すように、隙間領域34aの反射率Rcが1%、隙間領域34aからの反射光の位相の変化量が270°である場合についてもシミュレーションを行った。この位相分布53Aの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図11(B)に示すように、ターゲット38C側のパターンLA7M(LA7P)が、ターゲット38D側のパターンRA7M(RA7P)に対して僅かに小さく(大きく)なっている。
【0070】
また、2回目の露光の位相分布を、図11(B)の位相分布53Bと同じで、図12(C)の部分拡大図で示すように、隙間領域34aの反射率Rcが1%、隙間領域34aからの反射光の位相の変化量を270°とした。図12(C)の位相分布53Bの空間像の露光量分布に対応するレジストパターンは、図12(D)に示すように、ターゲット38C側のパターンLA8M(LA8P)が、ターゲット38D側のパターンRA8M(RA8P)に対して僅かに大きく(小さく)なっている。従って、二重露光後の露光量分布に対応するレジストパターンは、図11(E)に示すように、ベストフォーカス時のパターンLA9,RA9と、±40nmのデフォーカス時のパターンLA9P,RA9P,LA9M,RA9Mとはほぼ等しくなる。従って、ミラー要素30のアレイの位相270°の隙間領域34aの反射率が1%程度であり、かつ+40〜−40nm程度のデフォーカス量が発生していても、現像後にターゲット38C,38Dとほぼ等価なパターンを形成できることが分かる。
【0071】
次に、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで周期的な位相分布を設定する場合につき説明する。まず、ミラー要素30のアレイの露光対象の位相分布を、図13(A)に示すように、第1の状態で入射光に対する反射光の位相の変化量がφ1(=0)のミラー要素30の配列と、第2の状態で入射光に対する反射光の位相の変化量がφ2(=π+Δφ)のミラー要素30の配列とが、x方向に所定ピッチで繰り返される分布であるとする。なお、第2の状態の位相φ2における誤差Δφは、ミラー要素30の反射面の高さの系統的な誤差ΔZに対応する式(2B)の位相の誤差である。この場合、図13(A)の位相分布に入射する振幅1の照明光ILによる0次光の振幅a0及び±1次光の振幅a1,a-1は以下のようになる。
【0072】
0=(1/4){exp(iφ1)+exp(iφ2)} …(3A)
1=a-1={1/(21/2π)}{exp(iφ1)−exp(iφ2)}…(3B)
これらの式に、φ1=0,φ2=π+Δφを代入すると、Δφ(rad)が微小量であるという条件下で振幅a0,a1,a-1はほぼ以下のようになる。
0=−(1/4)iΔφ …(3C)
1=a-1=(21/2/π)(1+iΔφ/2) …(3D)
この場合にも、まず図13(A)と同じ図13(B)の位相分布56Aをコヒーレント照明し、その空間像でウエハを露光する。その空間像のx方向の電場E1(x)は次のようになる。なお、空間像のピッチ(周期)をPとする。
【0073】
1(x)=a0+2a1exp(iΔθ)cos(2πx/P)…(3E)
式(3E)における位相差Δθは、デフォーカスによる0次光と1次光との位相差である。デフォーカス量をδ、投影光学系PLとウエハとの間の媒質の屈折率をn、照明光ILの波長をλとすると、位相差Δθは次のようになる。
【0074】

その空間像の強度I1(x)は、以下のように式(3E)の電場E1(x)とその複素共役との積で表される。なお、以下の第3式は、Δφが微小量であるという条件下で、Δφに関する2次以上の項を無視したものである。以下の第3式の第1項は理想的な結像状態の強度であり、第2項は系統的な誤差Δφに依存する強度である。
【0075】

次に、図13(B)の位相分布56Aの位相0の部分と位相πの部分とを反転した図13(C)の位相分布56Bの空間像でウエハを重ねて露光するものとする。位相分布56Bにおいても、位相πの部分に系統的な位相の誤差Δφが加えられている。位相分布56Bの空間像のx方向の電場E2(x)は次のようになる。
【0076】
2(x)=a0−2a1exp(iΔθ)cos(2πx/P)…(3F)
その空間像の強度I2(x)は、式(3F)の電場E2(x)とその複素共役との積で以下のように表される。なお、以下の第2式も、Δφが微小量であるという条件下で、Δφに関する2次以上の項を無視したものである。
【0077】

この式(7)の第2式は、式(5)の第3式の第2項(系統的な誤差Δφに依存する強度)の符号を反転したものである。
位相分布56Aの空間像の露光と、位相分布56Bの空間像の露光とを重ねて行った後の露光量分布Iaveは、以下のように式(5)の強度I1(x)の近似値と式(7)の強度I2(x)の近似値との平均値であり、強度I1(x)の系統的な誤差に依存する項と強度I2(x)の系統的な誤差に依存する項とが相殺されている。
【0078】

この式より、周期的な位相分布に対しても、ミラー要素30の高さに系統的な誤差ΔZ(位相の誤差Δφ)がある場合には、二重露光によって位相の誤差Δφの影響のない空間像が得られることが分かる。
【0079】
次に、上記の図6(A)の第1の位相分布50Aの空間像の露光と、位相分布50Aを反転した図6(B)の第2の位相分布50Bの空間像の露光とを走査露光で行う場合につき説明する。本実施形態では、ウエハWの表面の露光領域26Bの照明光ILのY方向の強度分布INTは、図14(A)に示すように、両端の傾斜部の幅がSY1で平坦部の幅がSY2の台形状に変化する。図14(A)において、横軸は図1のウエハステージWSTで駆動されるウエハWのY座標である。走査露光時に、例えばウエハステージWSTを+Y方向に一定速度で走査し、ウエハW表面の任意の被露光点WPが露光領域26B内でY方向の位置Yi(i=1,2,3,…)に達する毎に、照明光学系ILSから1パルスの照明光ILが空間光変調器28に照射され、空間光変調器28で設定される位相分布の空間像で被露光点WPを含む領域が露光される。この場合、パルス発光毎のウエハWのY方向の移動量をΔY、すなわち位置Yiと位置Y(i+1)との間隔をΔYとすると、各位置Yiは、それぞれ露光領域26BをY方向に幅ΔYで区分する複数の部分領域内に位置している。また、被露光点WPがY方向に移動するのに同期して、同じ速度で位相分布50A,50Bの空間像もY方向に移動する。
【0080】
この場合、本実施形態では、被露光点WPが位置Yj(jは整数)に達したときに、ウエハWが第1の位相分布50Aの空間像IAで露光されるものとすると、被露光点WPが次の位置Y(j+1)に達したときには、ウエハWは第2の位相分布50Bの空間像IBで露光される。即ち、被露光点WPはY方向に移動しながら、交互に空間像IA及びIBで露光される。図14(A)の例では、被露光点WPは奇数番目の位置Y1,Y3,…に達する毎に空間像IAで露光され、偶数番目の位置Y2,Y4,…に達する毎に空間像IBで露光される。さらに、被露光点WPは、強度分布INTの両端の幅SY1の傾斜部を通過している期間中に、それぞれ位相分布50Aの空間像IA及び位相分布50Bの空間像IBで互いに同じ回数だけ露光されるとともに、被露光点WPは、強度分布INTの中央の幅SY2の平坦部を通過している期間中にも、空間像IA及びIBで互いに同じ回数だけ露光される。このための条件は、以下のように幅SY1及びSY2中にパルス発光間のウエハWの移動量ΔYが偶数個収まればよい。
【0081】
SY1/ΔY=偶数、SY2/ΔY=偶数 …(9)
なお、式(9)の条件が成立しない場合には、被露光点WPが幅SY1の強度分布の傾斜部(又は幅SY2の平坦部)を移動しているときの空間像IAの露光回数と空間像IBの露光回数とが異なるために、ミラー要素30の系統的な誤差ΔZの影響が完全に相殺されなくなり、系統的な誤差ΔZの影響が残存する恐れがある。
【0082】
式(9)の条件を満たすためには、図14(B)に示すように、空間光変調器28のミラー要素30のアレイにおいて、パルス発光毎の位相分布50A又は50BのY方向の移動量をΔY/β(βは投影光学系PLの投影倍率)に設定すればよい。図14(B)において、照明光ILの照明領域26AのY方向の強度分布INT1は、両端の強度の傾斜部の幅がSY1/β、中央の強度の平坦部の幅がSY2/βである。式(9)から、パルス発光毎の位相分布50A又は50BのY方向への移動量ΔY/βは、強度分布INT1の傾斜部の幅SY1/βの偶数分の1である。
【0083】
また、ミラー要素30のアレイにおいて、最初に位相分布50Aが設定された状態で1パルスの露光が行われる場合、次に最初の位相分布50AをY方向にΔY/βだけ移動した位置に位相分布50Bが設定された状態で1パルスの露光が行われ、以下、位相分布50B(又は50A)をY方向にΔY/βだけ移動した位置で反転した位相分布50A(又は50B)を設定して1パルスの露光を行う動作が繰り返される。なお、本実施形態では、投影光学系PLは正立像を形成するものとしているため、ウエハWの走査方向が−Y方向である場合には、位相分布50A,50Bも−Y方向に移動する。
【0084】
次に、図1の空間光変調器28の変調制御部48の全体の構成例につき、図15を参照して説明する。図15において、変調制御部48は、制御部64と、位相分布のデータを記憶するメモリ65と、シフトレジスター回路部61と、メモリ65から読み出される例えば64ビットの位相データを並列な複数組の出力に変換してシフトレジスター回路部61に出力するマルチプレクサ部66とを備えている。なお、シフトレジスター回路部61及びマルチプレクサ部66は、空間光変調器28のベース部材32に設けることが可能であるため、本実施形態では、シフトレジスター回路部61及びマルチプレクサ部66は空間光変調器28の一部であるとみなす。空間光変調器28のミラー要素30は、X方向にM列でY方向にN行配列されている(図17(A)参照)。シフトレジスター回路部61は、全体として空間光変調器28のN行分のミラー要素30の駆動を行うM列のシフトレジスター61−j(j=1,2,…,M)を並列に並べたものである。一例として、Mは16000(=64×250)、Nは2000である。各シフトレジスター61−jは、それぞれNビットの位相データを処理するシリアル入力・パラレル出力タイプのものである。
【0085】
また、各シフトレジスター61−jは、図2(B)に示すように、それぞれ一つのフリップフロップ60A等、逆方向にデータを伝える一つのフリップフロップ(不図示)、及びフリップフロップ60等の出力信号を選択する一つの選択回路62A等から構成される回路ユニット63を連結して構成されている。制御部64は、図1の主制御系40からの位相分布の情報をメモリ65に書き込む。さらに、制御部64は、主制御系40から供給される発光トリガパルスTPの周波数を例えばns倍(nsは整数で例えばns=20)にしたクロックパルスCKPをメモリ65及び各シフトレジスター61−jに供給し、メモリ65から順次読み出される1列(M個)のミラー要素30分の位相分布のデータを各シフトレジスター61−j内でシフトさせる。光源2のパルス発光の周波数を例えば2MHz、整数nsを例えば20とすると、クロックパルスCKPの周波数は40MHzである。さらに、制御部64は、一つの発光トリガパルスTP毎にレベルが反転する選択信号SELSを各回路ユニット63内の選択回路62A等に供給する。これによって、照明光ILのパルス発光毎に、ミラー要素30のアレイで設定される位相分布がY方向にシフトしながら反転する。
【0086】
次に、本実施形態の露光装置EXにおいて、空間光変調器28のミラー要素30のアレイで設定される位相分布を制御しながらウエハWを走査露光する動作の一例につき図16を参照して説明する。ここでは、ウエハWの各ショット領域の一部に図6(A)の位相分布50Aの空間像及び位相分布50Aを反転した図6(B)の位相分布50Bの空間像を交互に露光するものとする。なお、説明の便宜上、ウエハWを−Y方向に走査し、図15のシフトレジスター回路部61は、位相データを順次−Y方向に送るものとする。
【0087】
まず、図16のステップ102において、主制御系40が変調制御部48の制御部64にウエハWに露光する空間像に対応する空間光変調器(SLM)28のミラー要素30のアレイの位相分布50Aのデータを供給する。制御部64はそのデータをメモリ65に書き込む。次のステップ104において、ウエハステージWSTにフォトレジストが塗布されたウエハWをロードし、次のステップ106において、ウエハステージWSTによってウエハWの−Y方向への走査を開始する。次のステップ108において、制御部64は選択信号SELSを位相分布50A(反転しない位相分布)を選択するレベルに設定する。
【0088】
次のステップ110において、制御部64は、メモリ65から読み出したX方向に配列された1行分のミラー要素30の位相(0又はπ)のデータを各シフトレジスター61−j(j=1,2,…,M)に出力する。次のステップ112において、制御部64はクロックパルスCKPを1パルス出力し、シフトレジスター回路部61の各シフトレジスター61−jの中で、後段のフリップフロップへデータを進める。その後、ステップ114で位相のデータがns行分(nsは例えば20)シフトしたかどうかを判定し、ns行分に達していない場合には、ステップ110に戻り、ステップ110及び112の動作が繰り返される。
【0089】
その後、位相データがns行分シフトしたときに、動作はステップ116に移行して、主制御系40は発光トリガパルスTPを電源部42に供給し、光源2を1パルスだけ発光させ、図17(A)に示すように、空間光変調器28のミラー要素30のアレイを含む照明領域26Aを照明する。このとき、ミラー要素30のアレイでは、+Y方向からns行分の第1領域57Aに、位相分布50Aの一部の位相分布50A1が設定され、位相分布50A1の空間像でウエハWが露光される。なお、図17(A)等では、ns行は7行として表されているとともに、ミラー要素30のアレイの個数が実際よりもかなり少なく表されている。次のステップ116で1回の走査露光が終了したかどうかが判定される。走査露光を継続する場合には、ステップ120に移行して、制御部64は、選択信号SELSをそれまでとは逆の位相分布(ここでは位相分布50B)を選択するレベルに設定する。その後、動作はステップ110に戻る。
【0090】
このステップ120の実行後のステップ110〜114でも、各シフトレジスター61−jの第1段のフリップフロップに位相データを出力しては、その位相データをシフトレジスター内でシフトする動作がns回繰り返される。その後のステップ116において、1パルス分の照明光ILが照射され、図17(B)に示すように、ミラー要素30のアレイ上で+Y方向からns行分の第1領域57A及び第2領域57Bに設定された反転した位相分布50Bの一部の位相分布50B2,50B1の空間像でウエハWが露光される。この場合、第2領域57Bの位相分布50B1は、図17(A)の第1領域57Aの位相分布50A1の位相を反転した分布である。
【0091】
次のステップ120,110〜116の動作により、図17(C)に示すように、ミラー要素30のアレイ上で+Y方向からns行分の第1領域57A〜第3領域57Cに設定された位相分布50Aの一部の位相分布50A3〜50A1の空間像でウエハWが露光される。この際には、ステップ120において、それまでは逆の位相分布である位相分布50Aが選択されている。次のステップ120,110〜116の動作により、図18(A)に示すように、ミラー要素30のアレイ上で+Y方向からns行分の第1領域57A〜第4領域57Dに設定された反転した位相分布50Bの一部の位相分布50B4〜50B1の空間像でウエハWが露光される。ただし、第4領域57Dの一部はミラー要素30のアレイからはみ出しており、図17(C)の端部の領域58A内の位相分布を反転したデータは図18(A)では使用されていない。同様に、次のステップ120,110〜116の動作により、図18(B)に示すように、ミラー要素30のアレイ上で第1領域57A〜第4領域57Dに設定された位相分布50Aの一部の位相分布50A5〜50A2の空間像でウエハWが露光される。この場合にも、図18(A)の端部の領域58B内の位相分布を反転したデータは使用されていない。
【0092】
このようにして、ウエハWが位相分布50A,50Bの空間像で交互に走査露光される。ステップ118で走査露光が終了したときには、動作はステップ122に移行してウエハステージWSTが停止する。その後、例えばウエハステージWSTをX方向にステップ移動した後、ウエハWの走査方向を逆方向にして、ステップ106〜122の動作が繰り返される。この際に本実施形態によれば、位相分布50A,50Bで交互に走査露光を行うため、ミラー要素30の反射面の高さに系統的な誤差ΔZが生じていても、その影響を抑制してマスクレス方式で高精度に露光を行うことができる。
【0093】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の露光装置EXは、空間光変調器28を備えている。また、変調制御部48による空間光変調器28の駆動方法は、それぞれ照明光ILを投影光学系PLに導くことが可能な複数のミラー要素30(光学要素)のアレイを有する空間光変調器28の駆動方法である。この駆動方法は、ミラー要素30のアレイで、入射光の位相を変化させることなく(第1の位相δ1が0)反射光として投影光学系PLに導く第1の状態のミラー要素30Aと、入射光の位相をその第1の位相δ1とほぼ180°異なる第2の位相δ2(δ1が0の場合にはδ2はほぼ180°)だけ変化した反射光として投影光学系PLに導く第2の状態のミラー要素30Bとを、位相分布50Aを持つ第1の配列に設定するステップ(ステップ108の実行後のステップ110〜114)を含む。さらに、その駆動方法は、ミラー要素30のアレイで、ミラー要素30Aとミラー要素30Bとを、位相分布50Aを反転した位相分布50Bを持つ第2の配列に設定するステップ(ステップ120を奇数回実行した後のステップ110〜114)を含む。
【0094】
なお、第1の状態のミラー要素30Aは、入射光の位相に対して任意の値の第1の位相δ1だけ変化した位相を持つ反射光を投影光学系PLに導いてもよい。
また、空間光変調器28は、それぞれ光が照射される複数のミラー要素30のアレイと、ミラー要素30の状態を、第1の状態(ミラー要素30Aの状態)に設定する第1信号、又は第2の状態(ミラー要素30Bの状態)に設定する第2信号を出力する複数のフリップフロップ60A,60B(第1回路)と、ミラー要素30のアレイの少なくとも一部の第1領域で、その第1の状態のミラー要素30Aとその第2の状態のミラー要素30Bとの配列を第1の配列に設定するために、その複数のシフトレジスター60A,60Bの出力信号を制御するマルチプレクサ部66(制御回路)と、ミラー要素30のアレイの少なくとも一部の第2領域で、第1の状態のミラー要素30Aと第2の状態のミラー要素30Bとの配列を、その第1の配列においてその第1の状態又は第2の状態の光学要素をそれぞれその第2の状態又は第1の状態に反転した第2の配列に設定するために、その複数のフリップフロップ60A,60Bの出力信号を反転させる複数の選択回路62A,62B(第2回路)と、を備えている。
【0095】
また、露光装置EXは、照明光IL(露光光)で投影光学系PLを介してウエハW(基板)を露光する露光装置であって、その照明光を照射する光源2及び照明光学系ILSと、投影光学系PLの物体面側に配置されて、それぞれ照明光ILを投影光学系PLに導くように制御可能な複数のミラー要素30(光学要素)のアレイを有する空間光変調器28と、光源2及び空間光変調器28を制御する主制御系40及び変調制御部48(制御装置)と、を備えている。また、主制御系40及び変調制御部48は、ウエハW上に投影光学系PLを介して形成される空間像に応じて、ミラー要素30のアレイの少なくとも一部の第1領域で、第1の状態のミラー要素30Aと、第2の状態のミラー要素30Bとの配列を第1の配列(位相分布50A)に設定して、ウエハWを露光させ、ミラー要素30のアレイの少なくとも一部の第2領域で、ミラー要素30A及び30Bの配列をその第1の配列を反転した第2の配列(位相分布50B)に設定して、ウエハWを重ねて露光させる。
【0096】
本実施形態によれば、空間光変調器28において、ミラー要素30のアレイの第1領域で、ミラー要素30A,30Bを第1の配列に設定することと、ミラー要素30のアレイの第2領域で、ミラー要素30A,30Bをその第1の配列を反転した第2の配列に設定することと、を含み、その第1の配列のミラー要素30で発生する反射面の高さの系統的な誤差ΔZと、その第2の配列のミラー要素30で発生する系統的な誤差(−ΔZ)とは符号が逆である。そのため、その第1の配列のミラー要素30からの光と、その第2の配列のミラー要素30からの光とを重ねてウエハWを露光することによって、その系統的な誤差ΔZの影響が軽減される。さらに、複数のミラー要素30の隙間領域34aで反射される光がある場合に、その隙間領域34aからの反射光の空間像に与える影響も軽減される。
【0097】
(2)また、空間光変調器28は光学要素としてミラー要素30(反射要素)を有するため、照明光ILの利用効率が高い。しかしながら、空間光変調器28の代わりに、個々の光学要素がそれぞれ透過する光の位相を所定のφ1又はほぼ(φ1+180°)変化させる透過型の空間光変調器を使用することも可能である。このような光学要素としては、電圧によって屈折率が変化する電気光学素子又は液晶セル等を使用できる。
【0098】
(3)また、本実施形態の露光装置EXの露光方法は、照明光IL(露光光)で複数のミラー要素30のアレイを有する空間光変調器28及び投影光学系PLを介してウエハW(基板)を露光する露光方法において、上記の空間光変調器28の駆動方法によって複数のミラー要素30の状態の配列を設定するステップ110〜114と、ミラー要素30を第1の配列に設定した状態、及びミラー要素30をその第1の配列を反転した第2の配列に設定した状態で、ミラー要素30のアレイの第1領域及び第2領域を含む照明領域26Aからの照明光ILで投影光学系PLを介してウエハWを重ねて露光するステップ116と、を含んでいる。
【0099】
その露光方法又は上記の露光装置EXによれば、ミラー要素30の系統的な誤差の影響及び/又はミラー要素30の隙間領域34aからの反射光の影響を軽減して種々のパターンをマスクレス方式で高精度に形成できる。
なお、空間光変調器28の各ミラー要素30は、その第1の状態及びその第2の状態以外の第3の状態等を含む複数の状態に設定可能としてもよい。
【0100】
(4)また、照明光学系ILSからの照明光ILは、複数のミラー要素30(反射要素)にほぼ入射角αで斜めに入射し、ミラー要素30からの反射光が、投影光学系PLに対して投影光学系PLの光軸AXWに交差するように入射している。従って、投影光学系PLは物体面側に非テレセントリックであるため、空間光変調器28からの反射光の全部を投影光学系PLを介してウエハWに照射でき、照明光ILの利用効率が高い。さらに、偏光制御光学系6で設定される照明光ILの偏光状態をウエハWの表面で正確に再現できる。
【0101】
(5)また、ミラー要素30は、X方向を長手方向とする長方形の領域に設けられ、露光装置EXは、ウエハWを投影光学系PLの像面でX方向と直交するY方向に対応する走査方向に移動するウエハステージWST(基板ステージ)を備え、変調制御部48は、ウエハステージWSTによるウエハWの移動に応じて、複数のミラー要素30によって形成されるパターン(位相分布)をY方向に移動している。これによって、ウエハWの全面を効率的に露光できる。
【0102】
なお、上記の実施形態では以下のような変形が可能である。
まず、本実施形態のように、一つの空間光変調器28のミラー要素30のアレイで位相分布50A,50Bを交互に設定する代わりに、図14(C)の変形例で示すように、投影光学系PLの物体面に2つの空間光変調器28A,28BをY方向に隣接して配置し、一方の空間光変調器28Aでは第1の位相分布50A等のみを設定し、他方の空間光変調器28Bでは第2の位相分布50B等のみを設定してもよい。この変形例では、空間光変調器28A,28B毎に照明光ILの強度分布INT1がY方向に台形状に設定される。また、空間光変調器28A,28B毎に、位相分布50A,50B等はパルス発光毎にY方向に移動する。さらに、空間光変調器を2より大きい偶数個並べて、第1の位相分布50Aに設定した空間光変調器の数と、第2の位相分布50Bに設定した空間光変調器の数とが等しくなるようにしてもよい。例えば、空間光変調器の数は2つでも良いし、4つでも、6つでも、それより大きい偶数個であっても良い。
【0103】
同様に、1つの空間光変調器を前半と後半の2つの領域に分けて、前半の領域では第1の位相分布50A等のみを設定し、後半の領域では第2の位相分布50B等のみを設定してもよい。この変形例では、照明光の強度分布は、空間光変調器の前半と後半それぞれに対応するY方向に台形を2つ連結した形状になる。さらに、1つの空間光変調器を2つ以上の偶数個で領域を等分して、各領域に第1の位相分布50Aと、第2の位相分布50Bのいずれかを設定し、空間光変調器の全領域で第1の位相分布50Aと第2の位相分布50Bが同じ数だけ存在するようにしてもよい。この場合、照明光の強度分布は、領域分割した数と同じ数だけY方向に台形を連結した形状になる。
【0104】
さらに、一つの空間光変調器28のミラー要素30のアレイを、図14(C)のように2箇所で台形状となる強度分布の照明光ILで照明し、その2箇所の台形状の強度分布の領域でそれぞれ第1の位相分布50A等及び第2の位相分布50B等を設定してもよい。
【0105】
次に、図7(A)の空間光変調器28のミラー要素30のアレイの隙間領域34aの反射率が高い場合について、隙間領域34aからの反射光の影響についてシミュレーションによって検討する。
【0106】
先ず、図19(A)及び図20(A)に示すように、空間光変調器28のミラー要素30のアレイの配列のピッチpx,pyを8μm、隙間領域34aの幅cx,xyを1μmとして、隙間領域34aの反射率Rcを100%とする。また、各ミラー要素30を第2の状態(位相π)に設定した場合の、その反射面と図2(B)の基準平面A1との間隔に含まれる系統的な誤差ΔZを、図19(A)では2nmとして、図20(A)では4nmとする。そして、図19(A)又は図20(A)の隙間領域34aからの反射光の位相の変化量である隙間位相δ3を0°、90°、180°、及び270°に設定した場合について、それぞれ空間光変調器28のミラー要素30のアレイの位相分布を図7(A)の第1の位相分布50A及び図7(C)の第2の位相分布50Bに順次設定し、投影光学系PLによる空間像でウエハWを二重露光したときに得られるレジストパターンの形状の変化(ターゲット38A,38Bに対する変化)をシミュレーションによって求めた。図19(B)〜(E)及び図20(B)〜(E)はそれぞれ系統的な誤差ΔZが2nm及び4nmの場合のシミュレーション結果を示す。なお、図19図20の各パターンのスライスレベルは、隙間領域34aの反射率Rcを100%で、系統的な誤差ΔZが0nmのときに、X方向の幅の最大値がターゲットとほぼ等しくなるように決めたものである。このスライスレベルは隙間位相δ3に依存せず同じ値である。
【0107】
図19(B)は、隙間位相δ3が0°の場合のベストフォーカス時のパターンL10,R10、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL10P,R10P,L10M,R10Mを示す。19(C)は、隙間位相δ3が90°の場合のベストフォーカス時のパターンL11,R11、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL11P,R11P,L11M,R11Mを示す。図19(D)は、隙間位相δ3が180°の場合のベストフォーカス時のパターンL12,R12、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL12P,R12P,L12M,R12Mを示す。19(E)は、隙間位相δ3が270°の場合のベストフォーカス時のパターンL13,R13、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL13P,R13P,L13M,R13Mを示す。図19(B)〜(E)から、系統的な誤差ΔZが2nmの場合、隙間位相δ3が0°又は180°のときに、ベストフォーカス時及びデフォーカス時にターゲット38A,38Bに近いパターンが得られることが分かる。
【0108】
図20(B)は、隙間位相δ3が0°の場合のベストフォーカス時のパターンL14,R14、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL14P,R14P,L14M,R14Mを示す。図20(C)は、隙間位相δ3が90°の場合のベストフォーカス時のパターンL15,R15、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL15P,R15P,L15M,R15Mを示す。図20(D)は、隙間位相δ3が180°の場合のベストフォーカス時のパターンL16,R16、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL16P,R16P,L16M,R16Mを示す。図20(E)は、隙間位相δ3が270°の場合のベストフォーカス時のパターンL17,R17、及び±40nmのデフォーカス時のパターンL17P,R17P,L17M,R17Mを示す。図20(B)〜(E)から、系統的な誤差ΔZが4nmの場合にも、隙間位相δ3が0°又は180°のときに、ベストフォーカス時及びデフォーカス時にターゲット38A,38Bに近いパターンが得られることが分かる。
【0109】
また、図21のデータ系列C1,C2,C3,C4は、図19(B)〜(E)の場合と同じように、それぞれ隙間領域34aの反射光の位相(隙間位相δ3)が0°、90°、180°、及び270°の場合に、系統的な誤差ΔZ(nm)を変化させながらシミュレーションによって得られるレジストパターンの線幅のターゲットの線幅(CD)に対する変化量ΔCD(%)をプロットしたものである。なお、データ系列C1〜C4では、それぞれ左側のパターンの線幅の変化量ΔCD−L、及び右側のパターンの線幅の変化量ΔCD−Rが重なっている。図21から、隙間位相δ3が0°又は180°である場合に、系統的な誤差ΔZに依らずに線幅の変化量ΔCDが少ないことが分かる。なお、隙間位相δ3が0°及び180°である場合に変化量ΔCDが異なるのは、系統的な誤差ΔZを第2の状態(位相π)のミラー要素30にのみ与えているからである。
【0110】
また、図22のデータ系列は、系統的な誤差ΔZを2nmとして、隙間位相δ3を30°間隔で変化させながら、図19(B)〜(E)の場合と同様のシミュレーションによって得られるレジストパターンの線幅の変化量ΔCD(%)をプロットしたものである。図22からも、隙間位相δ3が0°又は180°であるときにΔCDが0に近く、目標とするパターンを高精度に露光できることが分かる。
【0111】
次に、上記の実施形態の図1の変調制御部48の変形例につき図23図25を参照して説明する。図23は、第1変形例の変調制御部48Aの一部を示す。図23において、変調制御部48Aは、クロックパルスCKP及び位相データDataが供給される多数のフリップフロップ71(図23ではそのうちの3つを示す。)を連結して構成されるシフトレジスター部70Sと、シフトレジスター部70Sから出力されるデータD1,D2,D3をタイミングパルスWord(W)に同期して保持するメモリ部70Mと、メモリ部70Mで保持されているデータSR1,SR2,SR3を反転パルスWord(R)に同期して反転して得られる信号M1,M2,M3を端子75A,75B,75Cに出力する0−π反転部70Rと、図15の制御部64及びメモリ65とを有する。端子75A,75Bの信号は、例えば図2(B)のミラー要素30を駆動する電極36Aに供給される。他の端子75Cの信号も、他のミラー要素30を駆動する電極(不図示)に供給される。クロックパルスCKP、書き込みパルスWord(W)、及び反転パルスWord(R)は図15の制御部64から出力され、位相データDataは図15のメモリ65から出力される。
【0112】
また、メモリ部70Mは、シフトレジスター部70Sから出力されるデータD1〜D3が供給されるとともにゲートに書き込みパルスパルスWord(W)が供給される3つのFET72と、3組のそれぞれリング状に連結された2つのインバータ73A,73Bとを備え、FET72の出力がそれぞれインバータ73A,73Bの連結部に供給されている。0−π反転部70Rは、書き込みパルスWord(W)に同期してメモリ部70Mに書き込まれたデータSR1〜SR3がそれぞれ供給されるFET74A及びインバータ73Cと、インバータ73Cの出力と端子75A〜75Cとを連結するFET74Bとを備えている。FET74Aの出力部も端子75A〜75Cに連結され、FET74Aのゲート及びFET74Bの入力を反転するゲートに反転パルスWord(R)が供給されている。
【0113】
図23中のクロックパルスCKPからデータSR3までのタイミングの一例が図24に示されている。図24において、クロックパルスCKPに対して位相データを保持するための書き込みパルスWord(W)及び照明光IL(レーザ光)の発光には所定の時間遅れtdが設定されている。変調制御部48Aにおいては、このようなタイミングによって、空間光変調器28のミラー要素30のアレイの位相分布を周期的に容易に反転できる。
【0114】
次に、図25は、第2変形例の変調制御部48Bの一部を示す。図25において、図23に対応する部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。図25において、変調制御部48Bは、クロックパルスCKP及び位相データDataが供給される多数のフリップフロップ71Aを連結して構成されるシフトレジスター部70SAと、シフトレジスター部70SAから出力されるデータ及び後段のメモリ部70MAへのデータの書き込みとデータの反転とを行うための信号Word(W2)が供給される0−π反転部70RAと、0−π反転部70RAから供給される位相データを保持するメモリ部70MAとを有する。メモリ部70MAで保持されている位相データが読み出し信号Word(R2)に同期して端子75A〜75Cに出力される(読み出される)。信号Word(W2)は、例えば位相をそのままにする場合にローレベルで、位相を反転する場合にハイレベルとなる2つの状態を持つ信号である。
【0115】
また、0−π反転部70RAは、フリップフロップ71Aから出力されるデータ及び反転データがそれぞれ供給されるFET74A及び74Bを有し、FET74Aのゲート及びFET74Bの入力を反転するゲートに、信号Word(W2)が供給され、FET74A及び74Bの連結された出力部のデータがメモリ部70MAに供給される。メモリ部70MAは、0−π反転部70RAからデータが供給される3組のそれぞれリング状に連結された2つのインバータ73A,73Bと、FET72とを備え、FET72は、読み出し信号Word(R2)に同期してインバータ73A,73Bの連結部のデータを端子75A〜75Cに出力する(読み出す)。他の構成は第1変形例と同様である。この変調制御部48Bによれば、0−π反転部70RAとメモリ部70MAとが入れ替わっているが、変調制御部48Aと同様に、空間光変調器28のミラー要素30のアレイの位相分布を周期的に容易に反転できる。
【0116】
次に、上記の実施形態では、ウエハWを連続的に移動してウエハWを走査露光している。その他に、図3(B)に示すように、ウエハWの各ショット領域(例えばSA22)を構成する各部分領域をY方向に複数の部分領域SB1〜SB5等に分割し、投影光学系PLの露光領域26Bに部分領域SB1等が達したときに、空間光変調器28のミラー要素30のアレイを第1の位相分布(位相分布50A等)に設定して所定パルス数だけ露光を行い、次にミラー要素30のアレイを第2の位相分布(位相分布50B等)に設定して所定パルス数だけ露光を行うことで、部分領域SB1等を露光してもよい。この場合には、第1の位相分布の露光領域(第1領域)と第2の位相分布の露光領域(第2の領域)とは同じである。
【0117】
この後、ウエハWをY方向にステップ移動させて、次の部分領域SB2等が露光領域26Bに達してから、同様に部分領域SB2等に露光が行われる。この方式は実質的にステップ・アンド・リピート方式であるが、部分領域SB1〜SB5等には互いに異なるパターンが露光される。なお、この場合にも、部分領域間の継ぎ部では、重ねて露光が行われる。
【0118】
次に、上記の実施形態では、物体側に非テレセントリックの投影光学系PLを用いている。それ以外に、図26の変形例の露光装置EXAで示すように、物体側及び像面側に両側テレセントリックの投影光学系PLAを用いることも可能である。図26において、露光装置EXAは、S偏光の照明光ILをほぼ+Y方向に発生する照明光学系ILSAと、照明光ILを+Z方向に反射する偏光ビームスプリッタ71と、偏光ビームスプリッタ71からの照明光ILを円偏光に変換する1/4波長板72と、円偏光の照明光ILを−Z方向に反射する多数のミラー要素30の2次元のアレイを有する空間光変調器28と、ミラー要素30で反射されてから、1/4波長板72及び偏光ビームスプリッタ71を透過した照明光ILを受光してウエハWの表面の露光領域26Bに空間像(パターン)を投影する投影光学系PLAと、を備えている。照明光学系ILSAは、図1の照明光学系ILSからミラー8B,8Cを除いた光学系である。空間光変調器28の構成及び作用は図1の実施形態又はその変形例と同様である。
【0119】
ただし、この変形例では、空間光変調器28のミラー要素30に対して照明光ILがほぼ入射角0で入射する。そのため、小σ照明の場合には、ミラー要素30からの反射光は、投影光学系PLの光軸AXにほぼ平行に投影光学系PLに入射する。この第2変形例の露光装置EXAによれば、両側テレセントリックの投影光学系PLAを使用できるため、露光装置の構成が簡素化できる。
【0120】
なお、照明光ILの利用効率が1/2に低下してもよい場合には、偏光ビームスプリッタ71の代わりに通常のビームスプリッタを使用し、1/4波長板72を省略してもよい。この場合には、偏光照明が使用できる。
また、図1の波面分割型のインテグレータであるマイクロレンズアレイ16に代えて、内面反射型のオプティカル・インテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。
【0121】
また、上述の実施形態及び変形例では、空間光変調器として複数の光学要素を通過する光の位相を動的に変化させるものを用いたが、複数の光学要素を通過する光に固定的に位相差を与えるものを用いてもよい。このような空間光変調器としては、例えば米国特許第7,512,926号公報に開示されている。なお、ここに開示される空間光変調器は透過型であるが、これを反射型に変形してもよい。
この場合には、空間光変調器の複数の光学要素の位相が第1位相分布となっている第1の空間光変調器(第1マスク)と、空間光変調器の複数の光学要素の位相が第1位相分布と反転した第2位相分布となっている第2の空間光変調器(第2マスク)とを準備しておき、これら第1マスクと第2マスクとでウエハ(基板)を二重露光する。
【0122】
換言すると、この露光方法では、露光光で複数の光学要素のアレイを備える第1空間光変調器及び投影光学系を介して基板上の少なくとも一部の領域を露光すると共に、露光光で複数の光学要素のアレイを備える第2空間光変調器及び前記投影光学系を介して前記基板上の前記少なくとも一部の領域を露光する。ここで、その第1空間光変調器のその光学要素のアレイの少なくとも一部の第1領域では、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列が第1の配列に設定される。そして、その第1領域と対応する、その第2空間光変調器の前記光学要素のアレイの少なくとも一部の第2領域では、入射する光を位相が同じか又は第1の位相だけ異なる光として通過させる第1の状態の光学要素と、入射する光を位相が前記第1の位相とほぼ180°異なる第2の位相だけ異なる光として通過させる第2の状態の光学要素との配列が第2の配列に設定される。このとき、その第1の配列におけるその第1の状態の光学要素の配列がその第2の配列におけるその第2の状態の光学要素の配列に対応しており、その第1の配列におけるその第2の状態の光学要素の配列がその第2の配列におけるその第1の状態の光学要素の配列に対応している。
【0123】
この露光方法では、例えば第1マスク及び第2マスクを製造する際のマスク基板ガラスのエッチング量の誤差に起因する系統的な位相誤差があったとしても、それに起因する悪影響を低減できる。また、複数の光学要素間を通過する光がある場合には、それによる悪影響も低減できる。
【0124】
また、電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図27に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスクのパターンデータを実施形態の露光装置EXの主制御系に記憶するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した露光装置EX(又は露光方法)により空間光変調器28で生成される位相分布の空間像を基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0125】
このデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置(又は露光方法)を用いてウエハWを露光する工程と、露光されたウエハWを処理する工程(ステップ224)とを含んでいる。従って、微細な回路パターンを備える電子デバイスを高精度に製造できる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。
【0126】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。また、本願に記載した上記公報、各国際公開パンフレット、米国特許、又は米国特許出願公開明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。また、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約を含む2010年12月13日付け提出の日本国特願2010−277530号の全ての開示内容は、そっくりそのまま引用して本願に組み込まれている。
【符号の説明】
【0127】
EX…露光装置、ILS…照明光学系、PL…投影光学系、W…ウエハ、28…空間光変調器、30…ミラー要素、40…主制御系、48…変調制御部、50A,53A…位相分布、50B,53B…反転した位相分布、60A,60B…フリップフロップ、62A,62B…選択回路
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