特許第5881091号(P5881091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881091
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】ニッケル粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/26 20060101AFI20160225BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
   B22F9/26 C
   B22F9/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-198848(P2014-198848)
(22)【出願日】2014年9月29日
(62)【分割の表示】特願2014-155511(P2014-155511)の分割
【原出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-166489(P2015-166489A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-27902(P2014-27902)
(32)【優先日】2014年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 和道
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 俊豪
(72)【発明者】
【氏名】平郡 伸一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 佳智
(72)【発明者】
【氏名】高石 和幸
(72)【発明者】
【氏名】大原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】米山 智暁
(72)【発明者】
【氏名】池田 修
(72)【発明者】
【氏名】工藤 陽平
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/046233(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/004664(WO,A1)
【文献】 特開平10−219363(JP,A)
【文献】 特表2005−510625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液に、前記溶液に不溶な不溶性固体を加えて、混合スラリーを形成する混合工程と、
前記混合スラリーを反応槽内に装入した後、前記混合スラリー内に水素ガスを吹き込み、反応槽内気相部の圧力を1.0〜4.0MPaの範囲に維持し、前記混合スラリーに含まれるニッケル錯イオンを還元して、前記不溶性固体表面にニッケル析出物を形成する還元・析出工程と、
前記不溶性固体表面のニッケル析出物を、前記不溶性固体表面から分離してニッケル粉を形成する分離工程を、
順に経てニッケル粉を作製することを特徴とするニッケル粉の製造方法。
【請求項2】
前記硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液中の硫酸アンモニウム濃度が、10〜500g/Lの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項3】
前記還元工程における水素ガスを吹き込む際の混合スラリーの温度が、150〜200℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
【請求項4】
前記不溶性固体が、ニッケル、アルミナ、ジルコニア、鉄、シリカの中から選択される1種もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のニッケル粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液から、種結晶として利用できる微小ニッケル粉末を製造する方法に関するもので、特に湿式ニッケル製錬プロセスから発生する工程内の中間生成溶液の処理に適用できる。
【背景技術】
【0002】
微小なニッケル粉を製造する方法として、溶融させたニッケルをガスまたは水中に分散させ微細粉を得るアトマイズ法や、特許文献1に示されるような、ニッケルを揮発させ、気相中で還元することでニッケル粉を得るCVD法などの乾式法が知られている。
【0003】
また、湿式プロセスによりニッケル粉を製造する方法としては、特許文献2に示されるような、還元剤を用いて生成する方法や、特許文献3に示されるような、高温で還元雰囲気中にニッケル溶液を噴霧することにより、熱分解反応によりニッケル粉を得る噴霧熱分解法などがある。
しかし、これらの方法は高価な試薬類や多量のエネルギーを必要とするため、経済的とは言えない。
【0004】
一方、非特許文献1に示されるような、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に水素ガスを供給して錯体溶液中のニッケルイオンを還元してニッケル粉を得る方法は、工業的に安価であり有用である。けれども、この方法においては得られるニッケル粉粒子は粗大化しやすく、種結晶に使えるような微細な粉末を製造することは困難であった。
【0005】
特に、水溶液中から粒子を発生させ成長させようとする場合、種結晶と呼ばれる微細な結晶を少量共存させ、そこに還元剤を供給し、種結晶を成長させて所定の粒径の粉末を得る方法が用いられる。この方法で用いる種結晶は、製品を粉砕するなどして得ることが多いが、手間も要し、また収率が減少するのでコスト増加につながる。また、粉砕によって必ずしも最適な粒径や性状の種結晶が得られるとは限らず、安定して種結晶を得る方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−505695号公報
【特許文献2】特開2010−242143号公報
【特許文献3】特許4286220号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“The Manufacture and properties of Metal powder produced by the gaseous reduction of aqueous solutions”, Powder metallurgy, No.1/2(1958), pp40−52.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の中で、本発明は、硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液からニッケル粉の製造に適切な種結晶となる微小なニッケル粉を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の第1の発明は、硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液に、この溶液に不溶な不溶性固体を加えて、混合スラリーを形成する混合工程と、混合スラリーを反応槽内に装入した後、その混合スラリー内に水素ガスを吹き込み、反応槽内気相部の圧力を1.0〜4.0MPaの範囲に維持し、混合スラリーに含まれるニッケル錯イオンを還元して、含まれる不溶性固体表面にニッケル析出物を形成する還元・析出工程と、その不溶性固体表面のニッケル析出物を、不溶性固体表面から分離してニッケル粉を形成する分離工程を順に経てニッケル粉を作製することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0010】
本発明の第2の発明は、第1の発明における硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液中の硫酸アンモニウム濃度が、10〜500g/Lの範囲であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0011】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明の還元工程における水素ガスを吹き込む際の混合スラリーの温度が、150〜200℃であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【0013】
本発明の第の発明は、第1から第の発明における不溶性固体が、ニッケル、アルミナ、ジルコニア、鉄、シリカの中から選択される1種もしくは2種以上を組み合わせたものであることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液から、水素ガスを用いて、より経済的で効率よくニッケル粉の製造に使用する種結晶に最適な微小なニッケル粉を製造する方法の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るニッケル粉の製造方法のる製造フロー図である。
図2】参考例1で生成したニッケル粉の外観を示すSEM像である。
図3】参考例2で生成したニッケル粉の外観を示すSEM像である。
図4】実施例1で生成したニッケル粉の外観を示すSEM像である。
図5】参考例4で生成したニッケル粉の外観を示すSEM像である。
図6】参考例5で生成したニッケル粉の外観を示すSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、この溶液に不溶な不溶性固体、若しくは、その不溶性固体と分散剤を加えて形成した混合スラリーのスラリー内に、水素ガスを吹き込むことによりニッケル粉を製造することを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法を、図1に示す製造フロー図を参照して説明する。
【0017】
[硫酸ニッケルアンミン錯体溶液]
本発明に用いる硫酸ニッケルアンミン錯体溶液は、特に限定はされないが、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ニッケル粉などから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、硫酸あるいはアンモニアにより溶解して得られるニッケル浸出液(ニッケルを含む溶液)を、溶媒抽出法、イオン交換法、中和などの浄液工程を施すことにより溶液中の不純物元素を除去して得られる溶液に、アンモニアを添加し、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液としたもの等が適し、ニッケルはニッケル錯イオンの形で含まれている。
【0018】
[混合工程]
この工程では、上記で作製された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、先ず分散剤を添加するが、分散剤の添加を省略して硫酸ニッケルアミン錯体溶液に、下記の不溶性固体の添加を行っても良い。
ここで用いる分散剤としては、スルホン酸塩を有するものであれば特に限定されないが、工業的に安価に入手できるものとしてリグニンスルホン酸塩が好適である。
また、溶液中の硫酸アンモニウム濃度は10〜500g/Lの範囲とすることが好ましい。500g/L以上では溶解度を超えてしまい結晶が析出する。また、反応により硫酸アンモニウムが新たに生成するため、10g/L未満を達成するのは困難である。
【0019】
<不溶性固体の添加>
上記で作製された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、又は分散剤を添加、調整された硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に、その錯体溶液に不溶であり、析出の母体となる不溶性固体を添加する。
ここで添加する不溶性固体は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液、硫酸アンモニウム水溶液或いはアルカリ溶液に対して不溶、若しくは溶解度が小さいものであれば、特に限定はされず、例えば、ニッケル粉、鉄粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、シリカ粉などを用いることができる。
【0020】
本発明では、従来一般に使われてきた種結晶を用いて粉末を析出させ、種結晶ごと製品とする方法でなく、不溶性固体表面への必要な析出(ニッケルの析出)が終わった後に、不溶性固体と析出、成長した粉末(ニッケルの析出物)とを切り離して、その粉末部分のみを製品とするもので、本発明のこのような方法によれば、種結晶自身がもつ不純物としての性質による製品への影響が回避できる。
【0021】
この不溶性固体の添加量は、特に限定されず、固体の種類に応じて、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液に添加した時に撹拌による混合が可能な量を選択する。
形状や大きさも特に限定はしないが、後述するように互いに衝突させたり、振動を与えたりして表面に析出したニッケル粉は分離することがあるので、衝撃や摩擦に耐える強度を有し、ニッケル粉が効果的に分離できるように表面がなだらかな形状であるものが適している。
また、不溶性固体とニッケル粉との効果的な分離を考えると、実操業では例えば直径0.1〜3mm程度の球状もしくは楕円形等の角が無い形状であるものが使いやすい。
【0022】
なお、ニッケル粉を析出させるのに先立ってあらかじめ衝突や衝撃を与えて、不溶性固体表面のカス等を取り除いてから本発明の不溶性固体として用いることが好ましい。
また、ニッケル粉を分離した後の不溶性固体は、必要に応じて洗浄等の前処理を行った後で再び繰り返して使用することもできる。
【0023】
[還元・析出工程]
次に、この工程は前工程において分散剤及び不溶性固体を添加して形成したスラリーを、耐高圧高温容器の反応槽内に装入し、その反応槽内に貯留されたスラリー内に水素ガスを吹き込み、そのスラリー中のニッケル錯イオンを還元し、含まれる不溶性固体上にニッケルを析出させるものである。
このときの混合スラリーの温度、即ち反応温度は、150〜200℃の範囲が好ましい。150℃未満では還元効率が低下し、200℃以上にしても反応への影響はなく、むしろ熱エネルギー等のロスが増加するので適さない。
【0024】
さらに、反応時における反応槽内気相部(反応槽に溶液を貯留した後に残った反応槽内の空間部を指す)の圧力は、水素ガスの供給により1.0〜4.0MPaに維持することが好ましい。1.0MPa未満では反応効率が低下し、4.0MPaを超えても反応への影響はなく、水素ガスのロスが増加する。なお、水素ガスの混合スラリー内への吹き込みは、この反応槽内気相部に吹き込んでもスラリー中のニッケル錯イオンの還元は可能である。
【0025】
このような条件による還元・析出処理によって、不溶性固体上にニッケルの析出物が形成され、微細な粉状のニッケルの析出物として溶液に含まれるニッケルを抽出、回収できる。
【0026】
[分離工程]
この工程では、生成したニッケル析出物が、不溶性固体上にくっついた状態であり、その状態では利用できないので、表面に形成されたニッケル析出物を不溶性固体と分離、ニッケル粉として回収するものである。
【0027】
その具体的な分離方法として、例えば発熱で酸化しないように、不溶性固体ごと水中に入れ、回転して不溶性固体同士を衝突させて表面のニッケル粉を分離する方法、湿式篩上で回転させて、分離したニッケル粉を同時に篩い分ける方法、さらに、液中に超音波を加えて振動を与え、分離するなどの方法がある。目開きが不溶性固体の大きさより細かいものであれば用いることができる。
【0028】
以上のようにして製造したニッケル粉は、例えば積層セラミックコンデンサーの内部構成物質であるニッケルペースト用途として用いることができる他、回収したニッケル粉を種晶として上記水素還元を繰り返すことにより粒子を成長させ、高純度のニッケルメタルを製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を、実施例や参考例を用いて説明する。
【0030】
[参考例1]
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に、25%アンモニア水を191ml、分散剤のリグニンスルホン酸ナトリウム20gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して、分散剤を含み、且つ硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。
この溶液に、析出母体となる不溶性固体として、平均粒径(D50)が125μmのニッケル粉300gを添加、攪拌し、所望の混合スラリーを作製した。
【0031】
[還元・析出工程]
次いで、作製した混合スラリーをオートクレーブの内筒缶に装入し、その混合スラリーを撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、混合スラリー中に水素ガスを吹き込み、さらにオートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から140分が経過した後に、水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
【0032】
[分離工程]
冷却後、内筒缶内の混合スラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出し、次いで目開きが100μmの湿式篩に不溶性固体を入れ、振動を加えて母体の不溶性固体と析出したニッケル粉とを分離した。
回収したニッケル粉を観察したところ、図2に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
【0033】
[参考例2]
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤としてリグニンスルホン酸ナトリウム10gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して、分散剤を含み、且つ硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体として直径1mmのジルコニアボール75gを添加して混合スラリーを作製した。
【0034】
[還元・析出工程]
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、混合スラリー中に水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から65分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
【0035】
[分離工程]
冷却後、内筒缶内の混合スラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出し、次いで目開きが500μmの湿式篩に取り出した不溶性固体を入れ、振動を加えて母体の不溶性固体と析出したニッケル粉とを分離した。
回収したニッケル粉を観察したところ、図3に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
【0036】
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウム5gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して、分散剤を含み、且つ硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体を添加せずに次の操作を行なった。
【0037】
[還元・析出工程]
作製した溶液をオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から60分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
【0038】
[分離工程]
冷却後、内筒缶内の溶液を濾過したが、ニッケル粉は回収できず、内筒缶内の側壁や攪拌機に板状のニッケルのスケーリングが生成した。
【0039】
[実施例1]
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を13ml添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体として電解鉄粉5gを添加して混合スラリーを作製した。
【0040】
[還元・析出工程]
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを混合スラリー内に流量0.2L/minで10分間吹き込んだ。この反応中のオートクレーブの内筒缶内の圧力は1.0MPaを示していた。その後、水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図4に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。なお、分散剤を添加した場合の図2と比較するとニッケル粉の形状がやや不均一で荒れている様子がうかがえるが実用上、問題はない。
【0041】
[参考例4]
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウム5gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体として200メッシュのアルミナ粉75gを添加して混合スラリーを作製した。
【0042】
[還元・析出工程]
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から90分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図5に示すように微細なニッケル粉が母体のアルミナ上に生成していたことを確認した。(生成していた箇所を丸で囲み示した。)
【0043】
[参考例5]
[混合工程]
ニッケル75g(硫酸ニッケル溶液)、硫酸アンモニウム330gを含む溶液に25%アンモニア水を191ml、分散剤にリグニンスルホン酸ナトリウム5gを添加し、合計の液量が1000mlになるように調整して硫酸ニッケルアンミン錯体を含有する溶液を作製した。この溶液に、析出母体となる不溶性固体としてD50=38μmのシリカ粉75gを添加して混合スラリーを作製した。
【0044】
[還元・析出工程]
次いで、その混合スラリーをオートクレーブの内筒缶内に装入後、撹拌しながら185℃に昇温、保持した状態で、水素ガスを吹き込み、オートクレーブの内筒缶内の圧力を3.5MPaに維持するように水素ガスを供給した。水素ガスの供給から90分が経過した後に水素ガスの供給を停止し、内筒缶を冷却した。
冷却後、内筒缶内のスラリーを濾過して表面にニッケルの析出物を生成した不溶体固体を取り出して参考例1と同様の方法でニッケル粉を回収した。
その回収した粉を観察したところ、図6に示すように微細なニッケル粉が生成していることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6