【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、漁船に搭載する冷凍装置として、冷凍サイクルを構成するNH
3循環路に、カスケードコンデンサを介してCO
2循環路を接続し、カスケードコンデンサで冷却されたCO
2液を潜熱利用のブラインとして、液ポンプで冷却管に循環させる二元式冷凍装置を用いることを考えた。CO
2は毒性がない自然冷媒であり、地球温暖化係数GWPが非常に小さいという長所をもつ。また、CO
2液は粘性係数が小さいので、長い冷却管を流れても圧力損失が増大しない。そのため、液ポンプを小型化できる等の長所も合わせもつ。
【0007】
しかし、設置スペースが狭い漁船においては、受液器が大型化することだけでも、冷凍装置の設置が困難になる。そのため、冷却管の小径化や、エロフィンコイル等の採用により熱交換効率を高め、CO
2量を低減する必要がある。また、CO
2は常温で高圧となる。例えば、外部温度30℃で管内圧力は7〜8MPaに達する。そのため、漁船の停泊中やドック入渠中等、冷凍装置が稼働してない時、高圧となるおそれがある。従って、配管系やその他の設備の耐圧強度を増大する等の対策が必要となり、設備費が高コストとなる問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、漁船用冷凍装置として、NH
3/CO
2二元式冷凍装置を用いる場合に、CO
2量を低減し、冷凍装置の装置構成を小型化して漁船への搭載を容易にすると共に、冷凍装置が非稼働のとき、CO
2の圧力上昇を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明の漁船用冷凍装置は、NH
3を冷媒とし冷凍サイクル構成機器が設けられたNH
3循環路と、
CO
2が循環し、該NH
3循環路とカスケードコンデンサを介して接続された第1CO
2循環路と、
該第1CO
2循環路に設けられたCO
2受液器と、
該CO
2受液器と魚倉に設けられた冷却管との間に接続された第2CO
2循環路と、
該第2CO
2循環路に設けられ、前記CO
2受液器のCO
2液を冷却管に送る液ポンプと、
前記冷却管の上流側で第2CO
2循環路に設けられた流量調整弁と、
前記冷却管出口部のCO
2残液量を判定するCO
2残液量判定手段と、
該CO
2残液量判定手段の判定結果に基づいて前記流量調整弁の開度を制御する制御装置と、
前記第1CO
2循環路に接続された予備CO
2循環路と、
該予備CO
2循環路を流れるCO
2を冷却する予備冷凍装置と、
前記予備冷凍装置を駆動する自家発電機と、
前記予備冷凍装置と該自家発電機又は陸上電源装置とを切替え接続可能にする切換器とを
備え、
前記CO2残液量判定手段は、
前記魚倉の内部温度を検出する温度センサーと、
前記制御装置に記憶され、魚倉の設定冷却温度と前記温度センサーの検出値との差分と、前記冷却管出口部のCO2残液量との相関を示す相関マップと、
前記差分及び前記相関マップから冷却管出口部のCO2残液量を判定する判定部とで構成されていることを特徴とする。
【0010】
この二元式冷凍装置は、第1CO
2循環路のCO
2ガスがカスケードコンデンサでNH
3によって冷却され、冷却されたCO
2液が受液器に貯留される。受液器に貯留されたCO
2液は、液ポンプにより第2CO
2循環路を通って魚倉に配設された冷却管に送られる。そして、CO
2液の蒸発潜熱で漁倉内の漁獲物を冷却する。
【0011】
本発明装置は、さらに、冷却管の上流側で第2CO
2循環路に設けられた流量調整弁と、冷却管出口部のCO
2残液量を判定するCO
2残液量判定手段と、CO
2残液量判定手段の判定結果に基づいて、流量調整弁の開度を制御する制御装置とを備えている。液ポンプ及び流量調整弁は最大負荷に合わせた流量で仕様が選定されているため、冷凍装置の冷却負荷が小さいとき、冷却管のCO
2蒸発量が少なくなり、蒸発量に比べてCO
2量が過剰に冷却管に供給される。そのため、管棚やヘアピンコイルに貯留するCO
2液量が多くなるので、漁船に充填されるCO
2必要量が増大し、CO
2受液器も大型になってしまう。そこで、本発明者等は、冷凍装置の冷却負荷が少なくなった状況をみて、管棚や魚倉のヘアピンコイルの冷却管に供給するCO
2液量を減ずることを考えた。
【0012】
即ち、CO
2残液量判定手段で冷却管出口部のCO
2残液量を判定し、冷却管出口部のCO
2残液量が多くならないように、制御装置で流量調整弁の開度を調整することで、CO
2残液量を低減できるようにした。これによって、漁船に充填されるCO
2必要量を低減でき、CO
2受液器及び配管系を小型化できるので、設置スペースが狭い漁船へのNH
3/CO
2二元式冷凍装置の搭載が容易になる。なお、流量調整弁は開度調整可能なものを用いるか、あるいはオンオフ式の流量調整弁を用いてもよい。オンオフ式の流量調整弁は、PWM(パルス幅変調)という間欠式な開閉制御を行い、開動作時間又は閉動作時間を調整することで、CO
2供給量を調整できる。
【0013】
本発明装置は、さらに、第1CO
2循環路に接続された予備CO
2循環路と、予備CO
2循環路を流れるCO
2を冷却する予備冷凍装置と、予備冷凍装置を駆動する自家発電機と、予備冷凍装置と自家発電機又は陸上電源装置とを切替え接続可能な切換器とを備えている。漁船の停泊中やドック入渠中等、NH
3冷凍サイクルが稼働してない時、CO
2受液器内のCO
2ガスを予備CO
2循環路に導き、自家発電機又は陸上の電源装置を用いて予備冷凍装置を稼働する。これによって、CO
2受液器内のCO
2ガスを冷却し、液化させるで、受液器や配管内のCO
2が高圧にならない。
【0014】
流量調整弁の開度を小さくしたり、あるいは流量調整弁を閉じたとき、流量調整弁上流側のCO
2圧力が異常上昇するおそれがある。そのため、液ポンプの吐出側CO
2圧力を検出する圧力センサーを設け、該圧力センサーの検出値に基づいて、制御装置によって液ポンプの吐出量を制御し、液ポンプ吐出側のCO
2圧力を設定値に維持するようにするとよい。これによって、冷却管内のCO
2圧力の異常上昇を抑制できる。
【0015】
本発明において、CO
2残液量判定手段は、流量調整弁の
出口側及び魚倉出口側冷却管に夫々設けられた温度センサーと、該2つの温度センサーの検出値の差から冷却管出口部のCO
2残液量を判定する判定部とで構成されているとよい。CO
2は気液混合状態から過熱状態になると温度が上昇する。この温度上昇を検出することで、CO
2が気液混合状態であるか、過熱状態であるかがわかる。2つの温度センサーの検出値に差がないとき、冷却管出口部でCO
2が気液混合状態であると判定し、流量調整弁の開度を小さくする。2つの温度センサーの検出値の差が設定値を超えたら、冷却管出口部でCO
2残液がなくなったと判定して、流量調整弁の開度を大きくする。CO
2残液量判定手段をかかる構成とすることで、比較的簡易な操作で、CO
2残液量を判定できる。
【0016】
CO
2残液量判定手段の別な構成例として、魚倉の内部温度を検出する温度センサーと、制御装置に記憶され、魚倉の設定冷却温度と温度センサーの検出値との差分と、冷却管出口部のCO
2残液量との相関を示す相関マップと、前記差分と相関マップで冷却管出口部のCO
2残液量を判定する判定部とで構成するとよい。
【0017】
魚倉内の温度が設定冷却温度に近づくと、魚倉の冷却負荷は低減する。魚倉の冷却負荷が低減すれば、魚倉出口側冷却管のCO
2蒸発量は低減する。この点から、魚倉の設定冷却温度と実際の検出温度との差分と、冷却管出口部のCO
2残液量とはある種の相関がある。
このためこの発明ではこの相関関係を予め求めておくことで、冷却管出口部のCO
2残液量を判定できる。そのため、こうして求めた相関マップと前記差分とからCO
2残液量を判定できる。また、前記2つの構成例を併用した判定手段としてもよい。この併用型判定手段とすれば、冷却管出口部のCO
2残液量をさらに正確に判定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、漁船用冷凍装置として、NH
3/CO
2二元式冷凍装置を用い、CO
2残液量判定手段によって冷却管内のCO
2残液量を判定し、このCO
2残液量から、制御装置によって冷却管の上流側に設けられた流量調整弁の開度を調整するようにしたので、冷却管内のCO
2残液量を低減でき、これによって、漁船に充填される必要CO
2量を低減できる。そのため、CO
2受液器及び配管設備等、冷凍装置を小型化できるので、設置スペースが狭い漁船でも搭載が容易になる。
【0019】
また、予備冷凍装置、自家発電機及び切換器を備えているので、漁船の停泊中やドック入渠中等、NH
3冷凍サイクルが稼働してない時でも、自家発電機又は陸上の電源装置を用いて予備冷凍装置を稼働できる。そのため、CO
2受液器及び配管系等のCO
2ガスを冷却液化し、CO
2ガスの高圧化を防止できるので、CO
2受液器等を含む冷凍装置及びその配管系の耐圧強度を緩和でき、設備費を低コストにできる。