特許第5881501号(P5881501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5881501
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】発光素子用基板および発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20160225BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20160225BHJP
【FI】
   H01L33/00 440
   H01L33/00 450
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-77136(P2012-77136)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-207221(P2013-207221A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】304051908
【氏名又は名称】株式会社NEOMAXマテリアル
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 啓太
(72)【発明者】
【氏名】石尾 雅昭
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−268117(JP,A)
【文献】 特開2011−187586(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/071182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が配置される発光素子用基板であって、
前記発光素子側に配置され、Cu、AgまたはAg合金のいずれか1つからなる第1層と、
Fe、ZrおよびAgのうちの少なくとも1つと、Cuとを含むCu合金からなる第2層とを有するクラッド材を備え
前記クラッド材は、板面方向の熱伝導率が板厚方向の熱伝導率よりも大きくなるように構成され、
前記第2層は、Fe、ZrまたはAgのいずれか1つと、96質量%以上のCuとを含むCu合金からなる、発光素子用基板。
【請求項2】
前記第2層の厚みは、前記クラッド材の厚みの10%以上90%以下である、請求項1に記載の発光素子用基板。
【請求項3】
前記第1層の表面は、表面粗さを示す指標としてのクルトシス(Rku)が10.5以下になるように形成されている、請求項1または2に記載の発光素子用基板。
【請求項4】
前記第1層の表面は、表面粗さを示す指標としての算術平均粗さ(Ra)が0.15μm以下になるように形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項5】
前記第1層は、Cuからなり、
前記第1層の表面上には、前記発光素子からの光を反射可能な光反射層を構成するメッキ層が形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項6】
200℃以上400℃以下の温度条件下において、前記第2層のビッカース硬さは、100HV以上であるように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項7】
前記クラッド材は、前記第1層と同一の金属材料からなる第3層をさらに有する3層構造のクラッド材であり、
前記第3層は、前記第1層との間に前記第2層を挟み込んだ状態で前記発光素子が配置されない側に配置されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項8】
前記第1層と前記第3層とは、略同一の厚みを有する、請求項に記載の発光素子用基板。
【請求項9】
前記クラッド材は、板面方向の熱伝導率が270W/(m×K)よりも大きくなるとともに、板厚方向の熱伝導率が270W/(m×K)以上になるように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項10】
前記第2層の線膨張係数は、前記第1層の線膨張係数以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項11】
前記第1層は、99.96質量%以上のCuを含み、
前記第2層は、2.1質量%以上2.6質量%以下のFe、0.05質量%以上0.2質量%以下のZn、0.015質量%以上0.15質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項12】
前記第1層は、99.96質量%以上のCuを含み、
前記第2層は、0.05質量%以上0.15質量%以下のFe、0.015質量%以上0.050質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項13】
前記クラッド材は、前記発光素子が配置されない側から前記クラッド材を支持する板状の基台の表面を覆うように折り曲げられている、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発光素子用基板。
【請求項14】
前記クラッド材は、セラミックスからなる前記板状の基台の表面を覆うように折り曲げられている、請求項13に記載の発光素子用基板。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の発光素子用基板に発光素子が配置されてなる、発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子が配置される発光素子用基板およびその発光素子用基板を備える発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子が配置される発光素子用基板が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、金属基板(発光素子用基板)と、金属基板の表面に密着して金属基板の一部表面が露出する凹部と回路パターンとが形成された絶縁層と、絶縁層の凹部内に配置されたLED(発光素子)と、LEDと回路パターンとを接続するボンディングワイヤと、凹部内の透明封止材からなる透明封止部とを備えるLED表示装置が開示されている。このLED表示装置の金属基板は、シャーシなどに固定されることによって、LEDが配置される金属基板としての機械的な強度を確保しつつ、シャーシなどに熱を逃がすように構成されている。ここで、上記特許文献1では、金属基板として、Al、CuおよびFeのいずれかからなる板材か、これらの金属材料のうちの2種類もしくは3種類からなるクラッド材か、または、これらの金属元素を含む合金からなる板材が例示されている。しかしながら、上記特許文献1には、金属基板を複数の金属材料で構成する場合の具体的な構成、たとえば、金属基板を構成する金属材料の種類、金属層として組み合わせる場合の順序や組合せなどに係る具体的な記載やこれを示唆する記載はなんらなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に例示されるように、たとえば、複数の金属材料からなるクラッド材を用いて金属基板を構成した場合、金属基板の具体的な構成によっては、放熱性能が十分に得られない可能性がある。金属基板の放熱性能が十分でない場合には、LEDの熱が金属基板を介してシャーシ側に十分に伝えられずに、LED付近の金属基板に蓄積されると考えられる。このような状態になると、LEDから金属基板に熱を伝えることが困難になりLEDの温度が上昇する。この結果、LEDの輝度が低下するとともに、LEDの寿命が短くなるという問題点が生じる。また、金属基板を機械的な強度が比較的低いCuのみからなるように構成した場合には、金属基板の機械的な強度が低いため、取り扱い時に金属基板が破損しやすく、LED表示装置の製造に支障をきたす可能性がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、発光素子用基板の放熱性能を向上させて発光素子の温度上昇に起因する輝度の低下を抑制し、かつ、発光素子用基板の機械的な強度を十分に確保することが可能な発光素子用基板およびその発光素子用基板を備える発光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の局面による発光素子用基板は、発光素子が配置される発光素子用基板であって、発光素子側に配置され、Cu、AgまたはAg合金のいずれか1つからなる第1層と、Fe、ZrおよびAgのうちの少なくとも1つと、Cuとを含むCu合金からなる第2層とを有するクラッド材を備え、クラッド材は、板面方向の熱伝導率が板厚方向の熱伝導率よりも大きくなるように構成され、第2層は、Fe、ZrまたはAgのいずれか1つと、96質量%以上のCuとを含むCu合金からなる
【0008】
この発明の第1の局面による発光素子用基板では、上記のように、発光素子側に、Cu、AgまたはAg合金のいずれか1つからなる第1層を配置することによって、熱伝導性に優れたCu、AgまたはAg合金のいずれか1つからなる第1層が発光素子側に配置されているので、発光素子からの熱を、発光素子付近の第1層の部分から発光素子から離れた位置の第1層の部分に向けて迅速に拡散させることができる。これにより、第1層に接続された外部の放熱部材や外気に第1層の熱を迅速に放熱させることができるので、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることを抑制することができる。この結果、発光素子用基板に蓄積された熱により発光素子の温度が上昇することを抑制することができるので、発光素子の温度上昇に起因して発光素子の輝度が低下することを抑制することができる。また、発光素子が異常な高温に長時間さらされることを抑制することができるので、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0009】
また、上記第1の局面による発光素子用基板では、Fe、ZrおよびAgの少なくともいずれか1つと、Cuとを含むCu合金からなる第2層を含むことによって、Cu合金がFe、ZrおよびAgの少なくともいずれか1つを含むことにより第2層の機械的な強度を高めつつ、Cu合金がCuを含むことにより第2層の熱伝導性もある程度確保することができる。これにより、機械的な強度を十分に確保して発光素子用基板の取り扱いが困難になることを抑制しつつ、第1層のみならず第2層を介しても発光素子からの熱を放熱させることができる。この結果、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0010】
また、上記第1の局面による発光素子用基板では、発光素子用基板が第1層と第2層とを少なくとも含むクラッド材を備えることによって、第1層または第2層のいずれか一方がメッキや接着によって他方の表面上に形成される場合と異なり、第1層と第2層との界面に金属間化合物を形成させることができるので、第1層と第2層との接合強度を向上させることができる。これにより、第1層と第2層とが剥がれることを抑制することができるので、発光素子用基板の取り扱いが困難になることを抑制することができる。また、第1層および第2層を共に十分な厚みを有して形成することができる。また、第2層は、Fe、ZrまたはAgのいずれか1つと、96質量%以上のCuとを含むCu合金からなる。このように構成すれば、第2層が96質量%以上のCuを含むことにより第2層の熱伝導性を十分に大きくすることができるので、第2層を介して発光素子からの熱を効果的に放熱させることができる。これにより、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第2層の厚みは、クラッド材の厚みの10%以上90%以下である。このように構成すれば、第2層の厚みがクラッド材の厚みの10%以上であることにより、十分な厚みの第2層を確保することができるので、発光素子基板の強度を十分に確保することができる。また、第2層の厚みがクラッド材の厚みの90%以下であることにより、残る第1層の厚みを十分に確保することができるので、発光素子用基板の放熱性能を十分に確保することができる。
【0012】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第1層の表面は、表面粗さを示す指標としてのクルトシス(Rku)が10.5以下になるように形成されている。このように構成すれば、発光素子が配置される第1層の表面の尖っている部分を少なくすることができるので、第1層の表面上に欠陥のない良質なメッキ層を形成することができるとともに、発光素子用基板が発光素子の光を反射する反射板の機能を兼ねる場合に、第1層の表面において十分に発光素子の光を反射することができる。
【0013】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第1層の表面は、表面粗さを示す指標としての算術平均粗さ(Ra)が0.15μm以下になるように形成されている。このように構成すれば、発光素子が配置される第1層の表面の凹凸の高さの差(起伏)を小さくすることができるので、第1層の表面上に欠陥のない良質なメッキ層を形成することができるとともに、発光素子用基板が発光素子の光を反射する反射板の機能を兼ねる場合に、第1層の表面において十分に発光素子の光を反射することができる。
【0014】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第1層は、Cuからなり、第1層の表面上には、発光素子からの光を反射可能な光反射層を構成するメッキ層が形成されている。このように構成すれば、光を反射しにくいCuからなる第1層が位置する第1層の表面上に光反射層を構成するメッキ層が形成されているので、第1層の表面上に配置される発光素子からの光をよりよく反射させることができる。
【0016】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、200℃以上400℃以下の温度条件下において、第2層のビッカース硬さは、100HV以上であるように構成されている。このように構成すれば、発光素子用基板が200℃以上400℃以下の高温条件下におかれた場合であっても、第2層の機械的な強度が維持されるので、発光素子用基板の機械的な強度を十分に確保することができる。
【0017】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、クラッド材は、第1層と同一の金属材料からなる第3層をさらに有する3層構造のクラッド材であり、第3層は、第1層との間に第2層を挟み込んだ状態で発光素子が配置されない側に配置されている。このように構成すれば、同一の金属材料からなる第1層および第3層により第2層を挟み込むことによって、発光素子用基板が第1層の表面側または発光素子が配置されない側のいずれか一方に反って変形することを抑制することができる。これにより、発光素子用基板の第1層の表面上に配置された発光素子に発光素子用基板の変形に伴う応力が加わることを抑制することができる。また、第3層側に発光素子が誤って配置された場合であっても、第1層と同一の金属材料からなる第3層において、発光素子からの熱を発光素子から離れた位置の第3層の部分に向けて迅速に拡散させることができる。
【0018】
この場合、好ましくは、第1層と第3層とは、略同一の厚みを有する。このように構成すれば、発光素子用基板が一方表面側または他方表面側のいずれか一方に反って変形することを効果的に抑制することができる。また、発光素子用基板の構造を表裏で略同一にすることができるので、発光素子用基板を表裏の区別が不要なように構成することができる。
【0019】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、クラッド材は、板面方向の熱伝導率が270W/(m×K)よりも大きくなるとともに、板厚方向の熱伝導率が270W/(m×K)以上になるように構成されている。このように構成すれば、発光素子からの熱を、第1層の板面方向だけでなく板厚方向にも十分に拡散させることができる。これにより、発光素子付近の熱を、発光素子用基板の全体により拡散させることができるので、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0020】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第2層の線膨張係数は、第1層の線膨張係数以下である。このように構成すれば、第2層の線膨張係数が第1層の線膨張係数よりも大きい場合と異なり、第1層の熱膨張以上に第2層が熱膨張することに起因して第1層と第2層とが剥がれたり、発光素子用基板が変形したりすることを抑制することができる。
【0021】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第1層は、99.96質量%以上のCuを含み、第2層は、2.1質量%以上2.6質量%以下のFe、0.05質量%以上0.2質量%以下のZn、0.015質量%以上0.15質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる。このように構成すれば、第1層が熱伝導性に優れるCuを99.96質量%以上含むことによって、発光素子からの熱を、発光素子付近の第1層の部分から発光素子から離れた位置の第1層の部分に向けてより迅速に拡散させることができる。また、2.1質量%以上2.6質量%以下のFe、0.05質量%以上0.2質量%以下のZn、0.015質量%以上0.15質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる第2層を用いることによって、第2層の機械的な強度を十分に確保しつつ、第1層だけでなく第2層を介しても発光素子からの熱を放熱させることができる。
【0022】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、第1層は、99.96質量%以上のCuを含み、第2層は、0.05質量%以上0.15質量%以下のFe、0.015質量%以上0.050質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる。このように構成すれば、第1層が熱伝導性に優れるCuを99.96質量%以上含むことによって、発光素子からの熱を、発光素子付近の第1層の部分から発光素子から離れた位置の第1層の部分に向けてより迅速に拡散させることができる。また、0.05質量%以上0.15質量%以下のFe、0.015質量%以上0.050質量%以下のP、および、Cu残部からなるCu合金からなる第2層を用いることによって、第2層の機械的な強度を十分に確保しつつ、第1層だけでなく第2層を介しても発光素子からの熱を放熱させることができる。
【0023】
上記第1の局面による発光素子用基板において、好ましくは、クラッド材は、発光素子が配置されない側からクラッド材を支持する板状の基台の表面を覆うように折り曲げられている。このように構成すれば、板状の基台を覆うように発光素子用基板を配置することができるので、発光素子用基板が折り曲げられていない場合と比べて、発光素子用基板の表面積を大きく確保することができる。これにより、発光素子からの熱を広い範囲の発光素子用基板に迅速に拡散させて、発光素子用基板の広い範囲で放熱させることができるので、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0024】
この場合、好ましくは、クラッド材は、セラミックスからなる板状の基台の表面を覆うように折り曲げられている。このように一般的に熱伝導性の劣るセラミックスを基台の材料として用いた場合であっても、発光素子用基板の広い範囲で外気に放熱させることができるので、発光素子付近の発光素子用基板に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0025】
この発明の第2の局面による発光モジュールは、第1の局面による発光素子用基板に発光素子が配置されてなる。この発明の第2の局面による発光モジュールでは、上記第1の局面による発光素子用基板と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記のように、発光素子の輝度が低下することを抑制し、かつ、発光素子用基板の機械的な強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態によるLEDモジュールの構成を示した平面図である。
図2図1の600−600線に沿った断面図である。
図3図1の600−600線に沿ったLED素子付近のリードフレームの拡大断面図である。
図4図1の600−600線に沿った接続層周辺のリードフレームの拡大断面図である。
図5】本発明の第1実施形態によるLEDモジュールの製造プロセスを説明するための斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態によるLEDモジュールの製造プロセスを説明するための断面図である。
図7】本発明の第1実施形態によるLEDモジュールの製造プロセスを説明するための平面図である。
図8】本発明の第2実施形態によるLEDモジュールの構成を示した断面図である。
図9】本発明の第2実施形態によるLED素子付近のリードフレームの拡大断面図である。
図10】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったCu層とC1940からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図11】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったCu層とC1940からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図12】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったCu層とC1921からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図13】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったCu層とC1921からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図14】本発明の第2実施形態の効果を確認するために行ったAg層とC1940からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図15】本発明の第2実施形態の効果を確認するために行ったAg層とC1940からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図16】本発明の第2実施形態の効果を確認するために行ったAg層とC1921からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図17】本発明の第2実施形態の効果を確認するために行ったAg層とC1921からなるCu合金層とを用いた場合のシミュレーションの結果を示した図である。
図18】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行った表面粗さの確認実験の結果を示した図である。
図19】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったC1940のビッカース硬さの確認実験の結果を示した図である。
図20】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったC1921のビッカース硬さの確認実験の結果を示した図である。
図21】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったC1020のビッカース硬さの確認実験の結果を示した図である。
図22】本発明の第1実施形態の効果を確認するために行ったビッカース硬さの確認実験の結果を示した図である。
図23】本発明の第1実施形態の第1変形例によるLEDモジュールの構成を示した断面図である。
図24】本発明の第1実施形態の第2変形例によるLEDモジュールの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(第1実施形態)
まず、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態によるLEDモジュール100の構造について説明する。なお、LEDモジュール100は、本発明の「発光モジュール」の一例である。
【0030】
本発明の第1実施形態によるLEDモジュール100は、図1および図2に示すように、一方側(X1側)が、半田101aを介してプリント基板102のCu配線102aに接続されているとともに、他方側(X2側)が、半田101bを介してプリント基板102のCu配線102bに接続されている。これにより、プリント基板102に別途接続された制御部(図示せず)により、LEDモジュール100の発光が制御されるように構成されている。
【0031】
また、LEDモジュール100は、X1側とX2側とに分かれた板状のリードフレーム1と、リードフレーム1のX1側の一方表面1a上に固定されたLED素子2と、リードフレーム1に覆われた板状の基台3とを含んでいる。基台3は、図2に示すように、上面3a(Z1側の面)と、長手方向(X方向)の両側面3bと、下面3c(Z2側の面)の一部とがリードフレーム1の他方表面1bに覆われている。なお、リードフレーム1の一方表面1aは、LED素子2が配置される側およびプリント基板102と対向する側(外側)の表面であるとともに、リードフレーム1の他方表面1bは、基台3の上面3a、両側面3bおよび下面3cと接する側(内側)の表面である。なお、リードフレーム1は、本発明の「発光素子用基板」の一例であり、LED素子2は、本発明の「発光素子」の一例である。また、上面3a、側面3bおよび下面3cは、本発明の「基台の表面」の一例である。
【0032】
リードフレーム1は、基台3の上面3a側(Z1側)で、かつ、X方向の中央部よりもX2側に形成された切り欠き部10aと、基台3の下面3c側(Z2側)で、かつ、X方向の中央部およびその周辺に形成された切り欠き部10b(図2参照)とによって、X1側とX2側とに分割されている。また、切り欠き部10aおよび10bは、共にY方向(図1参照)に延びるように形成されている。
【0033】
また、リードフレーム1では、基台3の上面3aとX方向の両側面3bとの境界と、基台3の下面3cとX方向の両側面3bとの境界とが、基台3に沿うように略直角に折り曲げられている。これにより、リードフレーム1は、基台3の上面3aの端部近傍と、X方向の両側面3bと、基台3の下面3cの一部とに沿うように折り曲げられている。
【0034】
また、リードフレーム1は、約0.1mm以上約1.5mm以下の略一様の厚みt1(図3参照)を有している。また、リードフレーム1の板面方向(積層方向に直交する方向)の熱伝導率は、約270W/(m×K)以上であるとともに、リードフレーム1の板厚方向(積層方向)の熱伝導率は、約270W/(m×K)以上である。
【0035】
LED素子2は、上面(Z1側の面)から、主に上方(Z1方向)に向かって光を照射するように構成されている。また、LED素子2は、リードフレーム1のX1側の一方表面1a上に、絶縁性樹脂からなる接着部材4を介して接着されている。また、LED素子2の上面側に形成された図示しない一対の電極は、Auワイヤ5aおよび5bを介して、リードフレーム1のX1側およびX2側にそれぞれ電気的に接続されている。
【0036】
基台3は、絶縁性を有するとともに、光を反射可能な白色のセラミックスであるアルミナ(Al)からなる。また、基台3は、リードフレーム1の切り欠き部10aおよび10bの内部にも形成されている。これにより、リードフレーム1のX1側とX2側との絶縁が確保されている。また、切り欠き部10aの内部に配置された基台3によって、LED素子2から下方(Z2側)の切り欠き部10aに照射された光を、上方(Z1側)に向かって反射することが可能である。なお、アルミナ(Al)の熱伝導率は約30W/(m×K)であり、リードフレーム1の熱伝導率(約270W/(m×K)以上)よりも小さい。
【0037】
また、図1および図2に示すように、リードフレーム1の一方表面1a上には、LED素子2を囲うようにリフレクタ6が配置されている。このリフレクタ6は、アルミナ(Al)からなるとともに、図2に示すように、下方(Z2側)から上方(Z1側)に向かって開口が大きくなるように構成されている。これにより、リフレクタ6は、LED素子2から側方側に照射された光を、上方(Z1方向)に向かって反射することが可能なように構成されている。また、リフレクタ6とリードフレーム1とによって形成される空間には、LED素子2とAuワイヤ5aおよび5bとを覆うように、透明なシリコン樹脂からなる封止樹脂7が配置されている。
【0038】
なお、基台3およびリフレクタ6は、約200℃以上約400℃以下の高温条件下で焼成されることにより形成されている。また、封止樹脂7は、約200℃以上約400℃以下の高温条件下で硬化させることにより形成されている。
【0039】
ここで、第1実施形態では、リードフレーム1は、図3および図4に示すように、外側Cu層11と、Cu合金層12と、内側Cu層13とが互いに圧延接合された3層構造のクラッド材からなる。つまり、外側Cu層11とCu合金層12との界面1c、および、Cu合金層12と内側Cu層13との界面1dには、各々、互いに圧延接合された際に形成された金属間化合物が配置されている。また、外側Cu層11は、LED素子2が配置される側(外側)である一方表面1aに配置されているとともに、内側Cu層13は、外側Cu層11との間にCu合金層12を挟み込むように基台3側(内側)の他方表面1bに配置されている。なお、外側Cu層11、Cu合金層12および内側Cu層13は、それぞれ、本発明の「第1層」、「第2層」および「第3層」の一例である。
【0040】
また、外側Cu層11および内側Cu層13は、共に、約99.96質量%以上のCuを含む無酸素銅(C1020(JIS規格))からなる。なお、C1020からなる外側Cu層11および内側Cu層13の熱伝導率は、約395W/(m×K)であり、線膨張係数は、約17×10−6/Kであり、ビッカース硬さは、約120HVである。また、外側Cu層11および内側Cu層13は、Agと比べて光を反射しにくい性質を有している。
【0041】
また、第1実施形態では、Cu合金層12のCu合金は、約2.1質量%以上約2.6質量%以下のFe、約0.05質量%以上約0.2質量%以下のZn、約0.015質量%以上約0.15質量%以下のP、および、Cu残部からなるC1940(JIS規格)、または、約0.05質量%以上約0.15質量%以下のFe、約0.015質量%以上約0.050質量%以下のP、および、Cu残部からなるC1921(JIS規格)からなる。つまり、Cu合金層12は、約96質量%以上のCuを含むCu合金(いわゆる高銅合金)からなる。なお、C1940からなるCu合金層12の熱伝導率は、約260W/(m×K)であり、線膨張係数は、約17×10−6/Kであり、ビッカース硬さは、約130HVである。また、C1921からなるCu合金層12の熱伝導率は、約345W/(m×K)であり、線膨張係数は、約17×10−6/Kであり、ビッカース硬さは、約130HVである。
【0042】
ここで、Cu合金層12の熱伝導率(約260W/(m×K)(C1940)、約345W/(m×K)(C1921))は、外側Cu層11の熱伝導率(約395W/(m×K))よりも小さい。これにより、LED素子2からリードフレーム1の外側Cu層11に伝えられた熱は、外側Cu層11からCu合金層12に伝わるよりも、外側Cu層11自体を伝わりやすい。つまり、LED素子2付近の外側Cu層11の熱は、板厚方向に沿ってCu合金層12および内側Cu層13の順にZ2方向に伝わるよりも、板面方向に沿ってLED素子2から離れた位置の外側Cu層11に伝わりやすい。
【0043】
また、Cu合金層12の線膨張係数(約17×10−6/K)は、外側Cu層11および内側Cu層13の線膨張係数(約17×10−6/K)と略同一である。これにより、外側Cu層11および内側Cu層13とCu合金層12とは、温度が上昇しても略同様の熱膨張を行うように構成されている。
【0044】
また、Cu合金層12のビッカース硬さ(約130HV(C1940、C1921))は、C1020からなる外側Cu層11および内側Cu層13のビッカース硬さ(約120HV)よりも大きい。つまり、Cu合金層12は、外側Cu層11および内側Cu層13よりも、機械的な強度が大きい。
【0045】
また、約200℃以上約400℃以下の高温条件下において、Cu合金層12のビッカース硬さは、約100HV以上であるように構成されている。つまり、約200℃以上約400℃以下の高温条件下ではCu合金層12は焼鈍されないように構成されている。なお、リードフレーム1の機械的な強度を十分に確保するために、約200℃以上約400℃以下の高温条件下において、Cu合金層12のビッカース硬さは約125HV以上であるのがより好ましい。
【0046】
また、外側Cu層11の厚みt2と内側Cu層13の厚みt3とは、略同一になるように構成されている。また、Cu合金層12の厚みt4は、リードフレーム1の厚みt1(=t2+t3+t4)の約10%以上約90%以下になるように構成されている。この結果、外側Cu層11の厚みt2と内側Cu層13の厚みt3とは、共に、リードフレーム1の厚みt1の約5%以上約45%以下になるとともに、外側Cu層11と内側Cu層13との合計の厚み(=t2+t3)は、リードフレーム1の厚みt1の厚みの約10%以上約90%以下になるように構成されている。
【0047】
また、第1実施形態では、リードフレーム1の外側Cu層11側の一方表面1aは、全面に渡って、表面粗さを示す指標としてのクルトシス(Rku)が約10.5以下になるとともに、算術平均粗さ(Ra)が約0.15μm以下になるように形成されている。ここで、クルトシス(Rku)とは、表面粗さを示す指標の一種であって、表面に形成された凹凸形状の尖り度合いを示す指標のことである。具体的には、クルトシスは、基準長さにおける高さの4乗を、表面粗さの標準偏差を意味する二乗平均根高さの4乗で除算することによって求められる。クルトシスが小さい場合には、表面の凹凸形状がなだらかになっている状態であることを意味し、クルトシスが大きい場合には、表面の凹凸形状が鋭角状に尖った状態であることを意味する。また、算術平均粗さ(Ra)とは、表面粗さを示す指標の一種であって、基準長さにおける高さの絶対値の平均を算出することによって求められる。算術平均粗さが小さい場合には、表面の凹凸形状の高さの差が小さい(起伏が小さい)ことを意味し、算術平均粗さが大きい場合には、表面の凹凸形状の高さの差が大きい(起伏が大きい)ことを意味する。
【0048】
つまり、リードフレーム1の一方表面1aは、クルトシスが小さいことにより凹凸形状がなだらかであり、かつ、算術平均粗さが小さいことにより凹凸形状の起伏が小さくなるように形成されている。
【0049】
また、図2に示すように、リードフレーム1の一方表面1a(外側Cu層11)上には、光反射層14および接続層15が形成されている。光反射層14は、一方表面1aのうちの基台3の上面3aに対応する部分の一方表面1a上で、かつ、リフレクタ6に囲まれる領域に形成されている。また、接続層15は、半田101aおよび101bが配置される領域に形成されている。具体的には、接続層15は、一方表面1aのうちの基台3の下面3cに対応する部分の一方表面1a上と、一方表面1aのうちの基台3の両側面3bに対応する部分の下側の一方表面1a上とに形成されている。また、光反射層14の厚みt5(図3参照)および接続層15の厚みt6(図4参照)は、共に、約0.5μm以上約1.5μm以下である。なお、光反射層14は、本発明の「メッキ層」の一例である。
【0050】
光反射層14は、Agメッキ層からなり、LED素子2から下方(Z2側)に照射された光を、上方(Z1側)に向かって反射する機能を有するとともに、Auワイヤ5aおよび5bとリードフレーム1とを容易に接続するために形成されている。また、接続層15は、リードフレーム1側からNiメッキ層およびAuメッキ層(図示せず)が順に積層された構造を有している。この接続層15は、半田101aおよび101bに対するリードフレーム1の濡れ性を向上させるために形成されている。また、光反射層14および接続層15は、共に、メッキ処理によって形成されている。
【0051】
次に、図2図7を参照して、本発明の第1実施形態によるLEDモジュール100の製造プロセスについて説明する。
【0052】
まず、図5に示すように、幅方向(X方向)に所定の幅を有し、X方向と直交する圧延方向(Y方向)に延びる一対のCu板と、X方向にCu板と略同一の幅を有し、Y方向に延びるCu合金板とを準備する。なお、Cu板は、C1020からなり、Cu合金板はC1940またはC1921からなる。この際、Cu合金板の厚みが、一対のCu板とCu合金板とを合計した厚みの約10%以上約90%以下になるように準備する。
【0053】
そして、Cu合金板を挟み込むように一対のCu板を配置した状態で、一対のCu板とCu合金板とを、X方向に延びるローラ201aおよび201bを用いてY方向に圧延(圧延接合)する。この際、リードフレーム1の一方表面1a(外側Cu層11)に接触するローラとして、ローラ表面の算術平均粗さ(Ra)が約0.05μm以下である、平滑なローラ表面を有するローラ201aを用いる。これにより、リードフレーム1の一方表面1aのクルトシス(Rku)が約10.5以下に調整されるとともに、算術平均粗さ(Ra)が約0.15μm以下に形成される。
【0054】
その後、一対のCu板とCu合金板とを拡散焼鈍することによって、外側Cu層11とCu合金層12との界面1c、および、Cu合金層12と内側Cu層13との界面1d(図3および図4参照)に、各々、金属間化合物が形成される。これにより、外側Cu層11、Cu合金層12および内側Cu層13が接合された3層構造のクラッド材からなるリードフレーム用材料200が形成される。この際、図3に示すように、リードフレーム用材料200(リードフレーム1)の厚みt1は、約0.1mm以上約1.5mm以下になり、Cu合金層12の厚みt4は、リードフレーム用材料200の厚みt1(=t2+t3+t4)の約10%以上約90%以下になる。
【0055】
その後、Agを含むメッキ液に接触させることによって、リードフレーム用材料200(リードフレーム1)の一方表面1aのうちの基台3の上面3aに対応する部分の一方表面1a上で、かつ、リフレクタ6に囲まれる領域に、Agメッキ層からなる光反射層14(図2参照)を形成する。また、Niを含むメッキ液に接触させた後に、Auを含むメッキ液に接触させることによって、一方表面1aのうちの基台3の下面3cに対応する部分の一方表面1a上と、一方表面1aのうちの基台3の両側面3bに対応する部分の下側の一方表面1a上とに、Niメッキ層およびAuメッキ層(図示せず)が順に積層された接続層15(図2参照)を形成する。
【0056】
そして、図6に示すように、プレス加工によって、リードフレーム用材料200にY方向に延びる切り欠き部10aを形成する。その後、インサート成形により、リードフレーム用材料200に基台3およびリフレクタ6を形成する。具体的には、所定の形状を有する金型202にリードフレーム用材料200を配置した状態で、金型202にアルミナ(Al)とバインダーとの混合物を注入する。そして、約200℃以上約400℃以下の高温条件下で焼成することによって、バインダーを取り除く。これにより、金型202の形状に対応した形状を有するように、アルミナからなる基台3およびリフレクタ6が形成される。この際、約200℃以上約400℃以下の高温条件下ではCu合金層12の機械的な強度は略低下しないので、リードフレーム1全体の機械的な強度が低下するのが抑制される。
【0057】
その後、図7に示すように、リードフレーム1の一方表面1aに形成された光反射層14の表面上にLED素子2を実装する。この際、光反射層14とLED素子2との間に絶縁性樹脂からなる接着部材4(図2参照)を配置することによって、リードフレーム1とLED素子2とを接着する。そして、超音波溶接によって、LED素子2の上面側に形成された図示しない一対の電極と、Auワイヤ5aの一方端およびAuワイヤ5bの一方端とをそれぞれ接続する。また、超音波溶接によって、リードフレーム1の一方表面1aのX1側およびX2側と、Auワイヤ5aの他方端およびAuワイヤ5bの他方端とをそれぞれ接続する。この際、リードフレーム1の一方表面1a上に形成されたAgメッキ層からなる光反射層14(図2参照)によって、C1020からなる外側Cu層11にAuワイヤ5aおよび5bを溶接する場合と比べて、容易に、リードフレーム1とAuワイヤ5aおよび5bとを接続することが可能である。
【0058】
そして、LED素子2とAuワイヤ5aおよび5bとを覆うように、リフレクタ6とリードフレーム1とによって形成される空間に封止樹脂7を配置する。そして、約200℃以上約400℃以下の高温条件下で封止樹脂7を硬化させる。この際、約200℃以上約400℃以下の高温条件下ではCu合金層12の機械的な強度は略低下しないので、リードフレーム1全体の機械的な強度が十分に確保される。これにより、図7に示すように、LEDモジュール100に対応する部分が複数設けられた、リードフレーム用材料200が形成される。
【0059】
その後、切断線200aおよび200bに沿って、リードフレーム用材料200を切断する。そして、図2に示すように、切断線200aのX1側に位置するリードフレーム1を、X1側の基台3のX1側の側面3bおよび下面3cに沿うように曲げ加工するとともに、切断線200aのX2側に位置するリードフレーム1を、基台3のX2側の側面3bおよび下面3cに沿うように曲げ加工する。これにより、Y方向に延びる切り欠き部10bが形成されて、複数のLEDモジュール100が形成される。
【0060】
最後に、リードフレーム1の一方表面1a上に形成された接続層15に半田101aおよび101bが位置するように、Cu配線102aおよび102bが形成されたプリント基板102にLEDモジュール100を接続する。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、C1020からなる外側Cu層11を、LED素子2が配置される側(外側)である一方表面1aに配置することによって、Cu合金層12を構成するC1940およびC1921と比較して熱伝導性に優れたC1020からなる外側Cu層11がLED素子2側に配置されているので、LED素子2からの熱を、LED素子2付近の外側Cu層11の部分からLED素子2から離れた位置の外側Cu層11の部分に向けて迅速に拡散させることができる。これにより、外側Cu層11に接続された外部の放熱部材(プリント基板102)や外気に外側Cu層11の熱を迅速に放熱させることができるので、LED素子2付近の放熱性能が向上したリードフレーム1に熱が蓄積されることを抑制することができる。この結果、リードフレーム1に蓄積された熱によりLED素子2の温度が上昇することを抑制することができるので、LED素子2の温度上昇に起因してLED素子2の輝度が低下することを抑制することができる。また、LED素子2が異常な高温に長時間さらされることを抑制することができるので、LED素子2の長寿命化を図ることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、Cu合金層12のCu合金が、約96質量%以上のCuを含む高銅合金である、約2.1質量%以上約2.6質量%以下のFe、約0.05質量%以上約0.2質量%以下のZn、約0.015質量%以上約0.15質量%以下のP、および、Cu残部からなるC1940、または、約0.05質量%以上約0.15質量%以下のFe、約0.015質量%以上約0.050質量%以下のP、および、Cu残部からなるC1921からなることによって、Cu合金層12の機械的な強度を高めつつ、Cu合金層12の熱伝導性も十分に確保することができる。これにより、機械的な強度を十分に確保してリードフレーム1の取り扱いが困難になることを抑制しつつ、外側Cu層11のみならずCu合金層12を介してもLED素子2からの熱を効果的に放熱させることができる。この結果、LED素子2付近のリードフレーム1に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、リードフレーム1が、外側Cu層11と、Cu合金層12と、内側Cu層13とが互いに圧延接合された3層構造のクラッド材からなることによって、外側Cu層11またはCu合金層12のいずれか一方がメッキや接着によって他方の表面上に形成される場合と異なり、外側Cu層11とCu合金層12との界面1c、および、Cu合金層12と内側Cu層13との界面1dに金属間化合物を形成させることができるので、外側Cu層11とCu合金層12との接合強度、および、Cu合金層12と内側Cu層13との接合強度を共に向上させることができる。これにより、外側Cu層11とCu合金層12とが剥がれることと、Cu合金層12と内側Cu層13とが剥がれることとを抑制することができるので、リードフレーム1の取り扱いが困難になることを抑制することができる。また、外側Cu層11、Cu合金層12および内側Cu層13を共に十分な厚みを有して形成することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、同一の金属材料からなる外側Cu層11および内側Cu層13によりCu合金層12を挟み込むことにより、リードフレーム1が一方表面1a側または他方表面1b側のいずれか一方に反って変形することを抑制することができる。これにより、リードフレーム1の一方表面1a上に配置されたLED素子2にリードフレーム1の変形に伴う応力が加わることを抑制することができる。また、他方表面1b側の内側Cu層13はLED素子2が配置される一方表面1a側の外側Cu層11と同一の金属材料からなるので、リードフレーム1の他方表面1bにLED素子2が誤って配置された場合であっても、外側Cu層11と同一のC1020からなる内側Cu層13において、LED素子2からの熱をLED素子2から離れた位置の内側Cu層13の部分に向けて迅速に拡散させることができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、Cu合金層12の厚みt4を、リードフレーム1の厚みt1の約10%以上にすることによって、十分な厚みt4のCu合金層12を確保することができるので、リードフレーム1の強度を十分に確保することができる。また、Cu合金層12の厚みt4を、リードフレーム1の厚みt1の約90%以下にすることによって、残る外側Cu層11の厚みt2を十分に確保することができるので、リードフレーム1の放熱性能を十分に確保することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、リードフレーム1の一方表面1aを、表面粗さを示す指標としてのクルトシス(Rku)が約10.5以下になるとともに、算術平均粗さ(Ra)が約0.15μm以下になるように形成することによって、LED素子2が配置される一方表面1aの尖っている部分を少なくすることができるとともに、一方表面1aの凹凸の高さの差(起伏)を小さくすることができるので、一方表面1a上に欠陥のない良質な光反射層14および接続層15を形成することができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、リードフレーム1の一方表面1a(外側Cu層11)上に光反射層14を形成することによって、光を反射しにくいC1020からなる外側Cu層11が位置する一方表面1a上に光反射層14が形成されているので、LED素子2からの光をより反射させることができる。
【0068】
また、第1実施形態では、上記のように、約200℃以上約400℃以下の高温条件下において、Cu合金層12のビッカース硬さを約100HV以上であるように構成することによって、リードフレーム1が200℃以上400℃以下の高温条件下におかれた場合であっても、Cu合金層12の機械的な強度が維持されるので、リードフレーム1の機械的な強度を十分に確保することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、上記のように、内側Cu層13を、外側Cu層11との間にCu合金層12を挟み込むように基台3側(内側)の他方表面1bに配置するとともに、外側Cu層11の厚みt2と内側Cu層13の厚みt3とを略同一にすることによって、リードフレーム1が一方表面1a側または他方表面1b側のいずれか一方に反って変形することを効果的に抑制することができる。これにより、リードフレーム1の一方表面1a上に配置されたLED素子2にリードフレーム1の変形に伴う応力が加わることを抑制することができる。また、リードフレーム1の構造を表裏で略同一にすることができるので、リードフレーム1を表裏の区別が不要なように構成することができる。
【0070】
また、第1実施形態では、上記のように、リードフレーム1の板面方向の熱伝導率を約270W/(m×K)以上にするとともに、リードフレーム1の板厚方向の熱伝導率を約270W/(m×K)以上にすることによって、LED素子2からの熱を、外側Cu層11の板面方向だけでなく板厚方向にも十分に拡散させることができる。これにより、LED素子2付近の熱を、リードフレーム1の全体により拡散させることができるので、LED素子2付近のリードフレーム1に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態では、上記のように、Cu合金層12の線膨張係数(約17×10−6/K)を、外側Cu層11および内側Cu層13の線膨張係数(約17×10−6/K)と略同一にすることによって、Cu合金層12の線膨張係数が外側Cu層11および内側Cu層13の線膨張係数よりも大きい場合と異なり、外側Cu層11および内側Cu層13の熱膨張以上にCu合金層12が熱膨張することに起因して外側Cu層11および内側Cu層13とCu合金層12とが剥がれたり、リードフレーム1が変形したりすることを抑制することができる。
【0072】
また、第1実施形態では、上記のように、リードフレーム1を、アルミナからなる基台3の上面3aの端部近傍と、X方向の両側面3bと、下面3cの一部とに沿うように折り曲げることによって、板状の基台3を覆うようにリードフレーム1を配置することができるので、リードフレーム1が折り曲げられていない場合と比べて、リードフレーム1の表面積を大きく確保することができる。これにより、LED素子2からの熱を広い範囲のリードフレーム1に迅速に拡散させて、リードフレーム1の広い範囲で放熱させることができるので、LED素子2付近のリードフレーム1に熱が蓄積されることをより抑制することができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図8および図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、LEDモジュール300において、リードフレーム301の一方表面301aおよび他方表面301bに、Agからなる外側Ag層311および内側Ag層313をそれぞれ配置した場合について説明する。なお、LEDモジュール300は、本発明の「発光モジュール」の一例であり、リードフレーム301は、本発明の「発光素子用基板」の一例である。また、外側Ag層311および内側Ag層313は、それぞれ、本発明の「第1層」および「第3層」の一例である。
【0074】
本発明の第2実施形態では、図8および図9に示すように、リードフレーム301は、Agからなる外側Ag層311と、Cu合金層12と、外側Ag層311と同一の金属(Ag)からなる内側Ag層313とが互いに圧延接合された3層構造のクラッド材(図9参照)からなる。つまり、図9に示すように、外側Ag層311とCu合金層12との界面301c、および、Cu合金層12と内側Ag層313との界面301dには、各々、互いに圧延接合された際に形成された金属間化合物が配置されている。また、外側Ag層311は、LED素子2が配置される側(外側)である一方表面301aに配置されているとともに、内側Ag層313は、基台3側(内側)の他方表面301bに配置されている。また、リードフレーム301の板面方向の熱伝導率は、約270W/(m×K)以上であるとともに、リードフレーム301の板厚方向の熱伝導率は、約270W/(m×K)以上であるように構成されている。
【0075】
また、外側Ag層311の厚みt2と内側Ag層313の厚みt3とが略同一の厚みになるように構成されている。また、Cu合金層12の厚みt4は、リードフレーム301の厚みt1の厚みの約10%以上約90%以下になるように構成されている。
【0076】
なお、Agからなる外側Ag層311および内側Ag層313の熱伝導率は約430W/(m×K)であり、Cu合金層12の熱伝導率(約260W/(m×K)(C1940)、約345W/(m×K)(C1921))よりも大きい。これにより、LED素子2付近の外側Ag層311の熱は、板厚方向に沿ってCu合金層12および内側Ag層313の順にZ2方向に伝わるよりも、板面方向に沿ってLED素子2から離れた位置の外側Ag層311に伝わりやすい。
【0077】
また、Agからなる外側Ag層311および内側Ag層313の線膨張係数は約19×10−6/Kであり、C1940またはC1921からなるCu合金層12の線膨張係数(約17×10−6/K)よりも大きい。また、外側Ag層311および内側Ag層313は、Cu合金層12よりも機械的な強度が小さい。
【0078】
また、リードフレーム301のAgからなる外側Ag層311は、光を反射しやすい性質を有しているので、図8および図9に示すように、上記第1実施形態と異なり、リードフレーム301の一方表面301a上には光反射層が形成されていない。つまり、リードフレーム301の一方表面301a上には、接着部材4を介してLED素子2が直接配置されている。これにより、光反射層を形成する製造プロセスを省略することが可能になる。また、リードフレーム301の外側Ag層311の一方表面301aは、全面に渡って、表面粗さを示す指標としてのクルトシス(Rku)が約10.5以下になるとともに、算術平均粗さ(Ra)が約0.15μm以下になるように形成されている。なお、第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0079】
また、第2実施形態のLEDモジュール300の製造プロセスは、一対のCu板の代わりに一対のAg板を用いる点と、光反射層を形成しない点とを除いて、上記第1実施形態と同様である。
【0080】
第2実施形態では、上記のように、Agからなる外側Ag層311を、LED素子2が配置される側(外側)である一方表面301aに配置することによって、リードフレーム301に蓄積された熱によりLED素子2の温度が上昇することを抑制することができるので、LED素子2の温度上昇に起因してLED素子2の輝度が低下することを抑制することができるとともに、LED素子2の長寿命化を図ることができる。また、Cu合金層12のCu合金がC1940またはC1921からなることによって、機械的な強度を十分に確保してリードフレーム301の取り扱いが困難になることを抑制しつつ、外側Ag層311のみならずCu合金層12を介してもLED素子2からの熱を放熱させることができる。また、リードフレーム301が、外側Ag層311と、Cu合金層12と、内側Ag層313とが互いに圧延接合された3層構造のクラッド材からなることによって、外側Ag層311とCu合金層12とが剥がれることと、Cu合金層12と内側Ag層313とが剥がれることとを抑制することができるので、リードフレーム301の取り扱いが困難になることを抑制することができる。また、外側Ag層311、Cu合金層12および内側Ag層313を共に十分な厚みを有して形成することができる。
【0081】
また、第2実施形態では、上記のように、Cu合金層12の線膨張係数(約17×10−6/K)が外側Ag層311および内側Ag層313の線膨張係数(約19×10−6/K)よりも小さいことによって、Cu合金層12によりリードフレーム301の熱膨張を抑制することができるので、熱膨張に起因するリードフレーム301の変形を抑制することができる。これにより、リードフレーム301の一方表面301a上に配置されたLED素子2にリードフレーム301の変形に伴う応力が加わることをより抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
[実施例]
次に、図3図5および図9図22を参照して、本発明の効果を確認するために行った板面方向の熱伝導率、板厚方向の熱伝導率および線膨張係数のシミュレーションと、表面粗さの確認実験と、ビッカース硬さの確認実験とについて説明する。
【0083】
(シミュレーション)
以下に説明するシミュレーションでは、上記第1実施形態のリードフレーム1に対応する実施例1−1〜1−9として、C1020からなる外側Cu層11、C1940からなるCu合金層12およびC1020からなる内側Cu層13が板厚方向に積層された状態で接合された、3層構造のクラッド材からなるリードフレーム1(図3参照)を想定した。
【0084】
また、実施例1−1〜1−9のリードフレーム1として、それぞれ、外側Cu層11の厚みt2および内側Cu層13の厚みt3が、リードフレーム1の厚みt1の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%および45%である場合を想定した。つまり、実施例1−1〜1−9のリードフレーム1として、Cu層が占める厚み(t2+t3)の比率が、それぞれ、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%および90%であるようなモデル化を行った。したがって、実施例1−1〜1−9のリードフレーム1では、Cu合金層12の厚みt4は、それぞれ、リードフレーム1の厚みt1の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%および10%になる。
【0085】
また、実施例2−1〜2−9のリードフレーム1として、上記実施例1−1〜1−9のリードフレーム1と同様の厚みの比率であるとともに、実施例1−1〜1−9のC1940の代わりにC1921からなるCu合金層12を用いたリードフレーム1を想定した。
【0086】
また、上記第2実施形態のリードフレーム301に対応する実施例3−1〜3−9として、Agからなる外側Ag層311、C1940からなるCu合金層12およびAgからなる内側Ag層313が板厚方向に積層された状態で接合された、3層構造のクラッド材からなるリードフレーム301(図9参照)を想定した。また、実施例4−1〜4−9として、実施例3−1〜3−9のC1940の代わりにC1921からなるCu合金層12を用いたリードフレーム301を想定した。なお、実施例3−1〜3−9および4−1〜4−9のリードフレーム301についても、それぞれ、上記実施例1−1〜1−9のリードフレーム1と同様の厚みの比率を想定した。
【0087】
また、比較例1−1および3−1として、第1層(C1020およびAg)を全く含まずC1940のみからなるリードフレームを想定した。同様に、比較例2−1および4−1として、第1層を全く含まずC1921のみからなるリードフレームを想定した。また、比較例1−2および2−2として、第2層(C1940およびC1921)を全く含まずC1020のみからなるリードフレームを想定した。同様に、比較例3−2および4−2として、第2層を全く含まずAgのみからなるリードフレームを想定した。
【0088】
また、比較例1−1および3−1では、C1940の熱伝導率として262.0W/(m×K)を用い、線膨張係数として17.0×10−6/Kを用いた。また、比較例2−1および4−1では、C1921の熱伝導率として347.0W/(m×K)を用い、線膨張係数として17.0×10−6/Kを用いた。また、比較例1−2および2−2では、C1020の熱伝導率として394.0W/(m×K)を用い、線膨張係数として17.0×10−6/Kを用いた。また、比較例3−2および4−2では、Agの熱伝導率として425.0W/(m×K)を用い、線膨張係数として19.1×10−6/Kを用いた。
【0089】
そして、上記比較例の数値と所定の算出式とを用いて、実施例1−1〜1−9、2−1〜2−9、3−1〜3−9および4−1〜4−9のそれぞれにおいて、板面方向の熱伝導率、板厚方向の熱伝導率および線膨張係数を算出した。
【0090】
図10図17に示すシミュレーションの結果から、リードフレームにおけるCu層およびAg層の占める厚みの比率を大きくすることによって、板面方向の熱伝導率および板厚方向の熱伝導率のいずれも大きくなることが分かった。この結果から、リードフレームにおけるCu層およびAg層の占める厚みの比率を大きくすることによって、LED素子付近の熱を、リードフレームの全体により拡散させることが可能になることが判明した。
【0091】
また、1層のみからなる比較例のリードフレームを除いて、板面方向の熱伝導率は、板厚方向の熱伝導率よりも大きくなることが分かった。これにより、3層構造を有するリードフレームにおいて、LED素子からリードフレームの第1層(外側Cu層11、外側Ag層311)に伝えられた熱は、リードフレームの板厚方向に伝わるよりも板面方向に伝わりやすいことが判明した。
【0092】
また、リードフレームにおけるCu層の占める厚みの比率が10%以上の場合(実施例1−1〜1−9および2−1〜2−9ならびに比較例1−2(2−2))、および、リードフレームにおけるAg層の占める厚みの比率が10%以上の場合(実施例3−1〜3−9および4−1〜4−9ならびに比較例3−2(4−2))、板面方向の熱伝導率および板厚方向の熱伝導率が、共に270W/(m×K)以上になることが分かった。この結果から、Cu層の占める厚みの比率を10%以上にすることによって、LED素子付近の熱を、リードフレームの全体に十分に拡散させることが可能であると考えられる。なお、リードフレームがC1921のみからなる場合(比較例2−1および4−1)においても、板面方向の熱伝導率および板厚方向の熱伝導率は、270W/(m×K)以上(347.0W/(m×K))になった。しかしながら、実施例2−1〜2−9および4−1〜4−9のように第2層(Cu合金層12)だけでなく第1層(外側Cu層11、外側Ag層311)を設けることによって、リードフレームが第2層のみからなる場合よりも熱伝導率をより一層大きくすることが可能である。
【0093】
また、図10図13に示すように、リードフレームがCu層(外側Cu層11、内側Cu層13)とCu合金層12とからなる場合、リードフレーム1の線膨張係数は、Cu層の占める厚みの比率に拘わらず一定(17.0×10−6/K)であった。これにより、外側Cu層11および内側Cu層13の熱膨張以上にCu合金層12が熱膨張することに起因して外側Cu層11および内側Cu層13とCu合金層12とが剥がれたり、リードフレーム1が変形したりすることを抑制することが可能であることが判明した。
【0094】
一方、図14図17に示すように、リードフレームがAg層(外側Ag層311、内側Ag層313)とCu合金層12とからなる場合、リードフレーム301の線膨張係数は、Ag層の占める厚みの比率を大きくすることによって大きくなることが分かった。この結果から、Ag層の占める厚みの比率を小さくすることによって、リードフレーム301の熱膨張に起因するリードフレーム301の変形を抑制することが可能であることが判明した。
【0095】
(表面粗さの確認実験)
以下に説明する表面粗さの確認実験では、上記第1実施形態のリードフレーム1に対応する実施例1−10〜1−13として、外側Cu層11の厚みt2、Cu合金層12の厚みt4および内側Cu層13の厚みt3(図3参照)が、それぞれ、リードフレーム1の厚みt1の20%、60%および20%である板状のリードフレーム1を作製した。
【0096】
ここで、実施例1−10のリードフレーム1(リードフレーム用材料200、図5参照)を作製する際の一方表面1aに接触するローラ201a(図5参照)として、ローラ表面の算術平均粗さ(Ra)が0.19μm以上0.30μm以下の値を有するローラ201aを用いて圧延した。つまり、実施例1−10では、ローラ表面の算術平均粗さの値が一定ではないとともに、ローラ表面の算術平均粗さが大きいローラ201aを用いた。
【0097】
また、実施例1−11においては、ローラ表面の算術平均粗さが0.05μmであるローラ201aを用いて圧延した。つまり、実施例1−11では、実施例1−10よりもローラ表面の算術平均粗さが小さいローラ201aを用いた。また、実施例1−12においては、ローラ表面の算術平均粗さが0.025μmであるローラ201aを用いて圧延した。つまり、実施例1−12では、実施例1−10および1−11よりも、ローラ表面の算術平均粗さがさらに小さいローラ201aを用いた。
【0098】
また、実施例1−13においては、ローラ表面の算術平均粗さが0.025μmであるローラ201aを用いて圧延するとともに、圧延後のリードフレーム1の一方表面1aを乾式ラッピングによって研磨した。
【0099】
その後、所定の計測機器を用いて、実施例1−10〜1−13のリードフレーム1の一方表面1aの表面粗さを計測した。そして、得られた計測結果を用いて、実施例1−10〜1−13のリードフレーム1の圧延方向(Y方向)および幅方向(X方向)における算術平均粗さ(Ra)と、クルトシス(Rku)とをそれぞれ算出した。
【0100】
また、実施例1−10〜1−13の各々のリードフレーム1に対して、ローラ201aが接触した側の一方表面1a上に、メッキ液に接触させることによって、Agメッキ層からなる光反射層14(図3参照)に対応するメッキ層を形成した。そして、メッキ層の状態を観察することによって、メッキ層の欠陥の有無を判断した。
【0101】
図18に示す表面粗さの確認実験の結果から、ローラ表面の算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下のローラ201aを用いた実施例1−11〜1−13において、一方表面1aの算術平均粗さを0.15μm以下にすることができることが分かった。また、ローラ表面のRaが0.025μm以下のローラ201aを用いるとともに、乾式ラッピングによって研磨した場合(実施例1−13)を除いた実施例1−10〜1−12において、一方表面1aのクルトシス(Rku)を10.5以下にすることができることが分かった。
【0102】
また、実施例1−11および1−12の場合には、メッキ層の欠陥は観察されなかった。これは、実施例1−11および1−12の場合には、ローラ表面の算術平均粗さが0.05μm以下であり十分に小さいので、ローラ201aの表面が接触するリードフレーム1(リードフレーム用材料200)の一方表面1aもローラ201aの表面に対応して、算術平均粗さが0.15μm以下になるとともに、クルトシスが10.5以下になったと考えられる。この結果、一方表面1aを、凹凸形状がなだらかで、かつ、起伏が小さくなるように形成することができたので、一方表面1a上に形成されたメッキ層に欠陥が発生しなかったと考えられる。
【0103】
一方、実施例1−10および1−13の場合、メッキ層の欠陥が観察された。これは、実施例1−10では、ローラ表面の算術平均粗さが0.19μm以上0.30μm以下であり大きいため、ローラ201aの表面が接触するリードフレーム1(リードフレーム用材料200)の一方表面1aが、ローラ201aの表面に応じて凹凸形状の起伏が大きくなったと考えられる。この結果、起伏が大きい凹凸形状に起因して、一方表面1a上に形成されたメッキ層に欠陥が発生したと考えられる。また、実施例1−13では、ローラ201aで圧延した後に乾式ラッピングによって研磨することによって、一方表面1aの算術平均粗さをさらに小さくすることができたものの、一方表面1aの凹凸形状が尖ってしまった(クルトシスが大きくなった)と考えられる。この結果、尖った凹凸形状に起因して、一方表面1a上に形成されたメッキ層に欠陥が発生したと考えられる。
【0104】
この結果、実施例1−11および1−12のように、ローラ表面の算術平均粗さが0.05μm以下のローラ201aを用いて圧延するとともに、乾式ラッピングによって研磨しないことによって、リードフレーム1の一方表面1aの算術平均粗さを0.15μm以下にするとともに、クルトシスを10.5以下にすることができることが判明した。さらに、算術平均粗さが0.15μm以下であるとともに、クルトシスが10.5以下である一方表面1aを形成することによって、一方表面1a上に欠陥のない良質なメッキ層を形成することが可能であることが判明した。
【0105】
(ビッカース硬さの確認実験)
以下に説明するビッカース硬さの確認実験では、試験体として、C1940の高銅合金と、C1921の高銅合金と、C1020の無酸素銅との3種類を用いた。そして、水素雰囲気下で、かつ、100℃、200℃、300℃、400℃および500℃のそれぞれの温度条件下で、試験体を3分間熱処理した。そして、室温に戻した試験体に対して、所定の計測機器を用いてビッカース硬さを計測した。また、熱処理なしの試験体に対しても、同様にビッカース硬さを計測した。
【0106】
図19図22に示した実験結果から、熱処理なしの試験体において、C1940のビッカース硬さ(132HV)およびC1921のビッカース硬さ(137HV)は、C1020のビッカース硬さ(122HV)と比べて、10HV以上大きくなった。これにより、熱処理をしない状態において、C1940およびC1921のビッカース硬さは、C1020のビッカース硬さよりも大きくなることが分かった。
【0107】
また、C1940およびC1921は、200℃、300℃および400℃の熱処理を行った場合であっても、ビッカース硬さは100HV以上を維持して略低下しなかった。これにより、C1940およびC1921は、共に、200℃以上400℃以下の高温条件下における機械的な強度に優れていることが分かった。これは、C1940およびC1921が、200℃以上400℃以下の温度範囲においては焼鈍されなかったからであると考えられる。一方、C1020は、200℃および300℃の熱処理を行った場合のビッカース硬さは、熱処理なしの試験体のビッカース硬さ(122HV)の半分以下(55HV以下)になった。これにより、C1020は、高温条件下における機械的な強度が劣ることが分かった。これは、C1020が、100℃以上200℃以下の温度範囲において焼鈍されたからであると考えられる。
【0108】
この結果、リードフレームに、200℃以上400℃以下の高温条件下においてもビッカース硬さが略低下しないC1940およびC1921のCu合金を用いてCu合金層を形成することによって、200℃以上400℃以下の高温条件下においてもリードフレームの機械的な強度を十分に確保することが可能であることが判明した。
【0109】
なお、C1940とC1921とを比較すると、C1921の方が、C1940よりもビッカース硬さが若干大きくなるとともに、高温条件下における機械的な強度の減少率も小さいことが判明した。これにより、Cu合金層のCu合金としてC1921を用いる方が、リードフレームの機械的な強度を向上させるためには好ましいことが判明した。
【0110】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0111】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、リードフレーム1(301)を、基台3の上面3aの端部近傍と、X方向の両側面3bと、基台3の下面3cの一部とに沿うように折り曲げた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図23に示す第1実施形態の第1変形例のように、LEDモジュール400のリードフレーム401を基台3の下面3cを覆わずに、基台3から離れる方向に向かって曲げ加工してもよい。なお、LEDモジュール400は、本発明の「発光モジュール」の一例であり、リードフレーム401は、本発明の「発光素子用基板」の一例である。また、リードフレームを折り曲げずに、基台の上面にのみ配置してもよい。
【0112】
また、上記第1および第2実施形態では、リードフレーム1(301)を、略一様の厚みt1を有するように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図24に示す第1実施形態の第2変形例のように、LEDモジュール500のリードフレーム501のうち、LED素子2が配置される基台3の上面3aに対応する厚板部501eの厚みを他の領域(薄板部501f)の厚みよりも大きくしてもよい。このように厚板部501eを設けることによって、LED素子2付近の熱を、リードフレーム501の全体に効果的に拡散させることが可能である。なお、厚板部501eにおけるリードフレーム501は、外側Cu層11、Cu合金層12および内側Cu層13の3層構造(図3参照)から構成されている。一方、薄板部501fにおけるリードフレーム501は、厚板部501eと同一の構造であってもよいし、内側Cu層13のみであってもよいし、Cu合金層12および内側Cu層13の2層構造であってもよい。なお、LEDモジュール500は、本発明の「発光モジュール」の一例であり、リードフレーム501は、本発明の「発光素子用基板」の一例である。
【0113】
また、上記第1および第2実施形態では、リードフレーム1(301)が第1層(外側Cu層11、外側Ag層311)、第2層(Cu合金層12)および第3層(内側Cu層13、内側Ag層313)の3層構造のクラッド材からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リードフレームが第1層と第2層との2層構造のクラッド材からなるように構成してもよいし、4層以上の積層構造を有するクラッド材からなるように構成してもよい。
【0114】
また、上記第1および第2実施形態では、Cu合金層12がC1940またはC1921からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、Cu合金層12のCu合金として、約0.05質量%以上約0.15質量%以下のZrと、CuとからなるC1510(JIS規格)や、約0.085質量%以下のAgと、CuとからなるC10700(CDA規格)などの、ZrおよびAgとCuとを含むCu合金を用いてもよい。また、Cu合金層12のCu合金として、Fe、ZrおよびAgのうちの2つまたは3つと、Cuとを含むCu合金を用いてもよい。
【0115】
また、上記第1実施形態では、外側Cu層11および内側Cu層13が約99.96質量%以上のCuを含む無酸素銅(C1020)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外側Cu層11および内側Cu層13を、C1020以外の約99.75質量%以上のCuを含むタフピッチ銅(C1100(JIS規格))やリン脱酸銅(C1201(JIS規格))などからなるように構成してもよい。
【0116】
また、上記第2実施形態では、外側Ag層311および内側Ag層313がAgからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、外側Ag層311および内側Ag層313を、Cuを添加元素として含むAg合金からなるように構成してもよい。これにより、リードフレームに対するプレス加工などの加工が容易になるとともに、リードフレームの高温条件下における機械的な強度をより向上させることが可能である。
【0117】
また、上記第1実施形態では、外側Cu層11(第1層)および内側Cu層13(第3層)が共にC1020からなる例を示し、上記第2実施形態では、外側Ag層311(第1層)および内側Ag層313(第3層)が共にAgからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1層および第3層の組み合わせとして、それぞれ、CuおよびAg、ならびに、AgおよびCuであってもよい。また、上記の組み合わせにおいて、AgはAg合金でもよい。
【0118】
また、上記第1実施形態では、リードフレーム1の外側Cu層11側の一方表面1aが、全面に渡って、クルトシス(Rku)が約10.5以下になるとともに、算術平均粗さ(Ra)が約0.15μm以下になるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リードフレーム1の一方表面1aのうち、少なくとも光反射層14が形成されている領域のみクルトシスが約10.5以下になるとともに、算術平均粗さが約0.15μm以下になるように形成してもよい。
【0119】
また、上記第1実施形態では、リードフレーム1の外側Cu層11側の一方表面1aにおいて、クルトシスが約10.5以下になるとともに、算術平均粗さが約0.15μm以下になるように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リードフレーム1の一方表面1aにおいて、クルトシスが約10.5以下になる一方、算術平均粗さが約0.15μmより大きくなるように形成してもよい。この場合、一方表面1aの凹凸形状の起伏が大きい一方、凹凸形状がなだらかである(尖らない)ので、一方表面1aの凹凸形状の起伏が大きく、かつ、凹凸形状が尖る場合と比べて、メッキ層の欠陥が減少すると考えられる。また、逆に、リードフレーム1の一方表面1aにおいて、算術平均粗さが約0.15μm以下になる一方、クルトシスが約10.5より大きくなるように形成してもよい。この場合、一方表面1aの凹凸形状が尖る一方、凹凸形状の起伏が小さいので、メッキ層の欠陥が減少すると考えられる。
【0120】
また、上記第1実施形態では、Agメッキ層からなる光反射層14を、Agを含むメッキ液に接触させることによって形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、リードフレーム1の一方表面1a上にAgペーストを塗布することによって、光反射層14を形成してもよい。また、光反射層14を、Alメッキ層などのAg以外の金属材料のメッキ層からなるように構成してもよい。
【0121】
また、上記第1および第2実施形態では、基台3およびリフレクタ6がアルミナ(Al)からなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、基台3およびリフレクタ6が窒化アルミ(AlN)からなるように構成してもよい。
【0122】
また、上記第1および第2実施形態では、LED素子2を有するLEDモジュール100(300)にリードフレーム1(301)を用いた例について示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、レーザ光を出射するレーザ素子モジュールにリードフレーム1(301)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1、301、401、501 リードフレーム(発光素子用基板)
1a、301a 一方表面
1b、301b 他方表面
2 LED素子(発光素子)
3 基台
3a 上面(基台の表面)
3b 側面(基台の表面)
3c 下面(基台の表面)
11 外側Cu層(第1層)
12 Cu合金層(第2層)
13 内側Cu層(第3層)
14 光反射層(メッキ層)
100、300、400、500 LEDモジュール(発光モジュール)
311 外側Ag層(第1層)
313 内側Ag層(第3層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22
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