(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを含有するセラミックス−樹脂複合材料の成形体を、高熱伝導性セラミックス粒子の平均粒子径以下の厚さに切断することを特徴とする、熱伝導性絶縁シートの製造方法。
高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを含有するセラミックス−樹脂複合材料の成形体を、高熱伝導性セラミックス粒子の平均粒子径以下の厚さに切断して得た熱伝導性絶縁シート表面に、樹脂接着剤を介して金属箔を接着することを特徴とする金属箔付き熱伝導性絶縁基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、まず高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを含有するセラミックス−樹脂複合材料の成形体を製造する。
【0012】
本発明に使用される高熱伝導性セラミックス粒子は特に限定されず、公知の高熱伝導性セラミックスを使用することが出来る。ここで言う高熱伝導性セラミックスとは、バルクの熱伝導率が30W/mK以上のものであり、その様なセラミックスを例示すると、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ等がある。高熱伝導性セラミックス粒子の形状は特に限定されず、破砕状、その角を落とした丸み状、球状等いずれのものも使用することが出来る。
【0013】
本発明に使用される高熱伝導性セラミックス粒子の平均粒子径は、得ようとする熱伝導性絶縁シートの厚み以上であれば特に限定されず、シートの厚みに応じて決定すればよい。平均粒子径が得ようとする熱伝導性絶縁シートの厚みより小さいと、本発明の方法により熱伝導性絶縁シートを作製した場合、熱伝導性絶縁シートの厚みより粒子径が小さい高熱伝導性セラミックス粒子が多く、シートの厚み方向を貫通する高熱伝導性セラミックス粒子の数が少ないので、十分な熱伝導率を有する熱伝導性絶縁シートが得られない場合がある。十分な熱伝導率を得るためには、この平均粒子径は得ようとする熱伝導性絶縁シートの厚み以上であることが好ましく、厚みの1.2倍以上であることがより好ましい。平均粒子径の上限は特にないが、製造の支障になりにくいという点で厚みの10倍以下であることが好ましい。粒度分布も特に限定される事はないが、高い熱伝導率のシートを得るという点から、異なる粒子径が適度に分布した最密充填に近い構造を有することが好ましい。
【0014】
本発明の熱伝導性絶縁シートを作製するための樹脂は特に限定されず、公知の材料を使用することが出来る。樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸類(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル)、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSともいう)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性イミド樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、およびウレタン樹脂フェノール樹脂、メラミン樹脂、芳香族ビスマレイミドおよびビスマレイミドトリアジン樹脂といったビスマレイミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂、を挙げられるが、中でもエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性イミド樹脂およびウレタン樹脂が取り扱い易さ、放熱材料としての特性などの点からより好ましい。
【0015】
高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを混合して、高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを含有するセラミックス−樹脂複合材料とするが、高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂との混合割合は特に限定されない。但し基板の熱伝導率を高くするために好ましいセラミックス粒子の配合量は、混合後の高熱伝導性セラミックス粒子と樹脂とを含有するセラミックス−樹脂複合材料に対して40vol%以上、好ましくは50vol%以上、より好ましくは60vol%以上である。この様な高充填を実現するために高熱伝導セラミックス粒子を予め表面処理することも好ましい。この様な目的で用いられる表面処理剤としては、酸性リン酸エステル、カルボン酸、イソシアネート、アルミネートカップリング剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。粒子が窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナの場合には、酸性リン酸エステル、カルボン酸またはイソシアネートが好ましい。
【0016】
高熱伝導セラミックス粒子と樹脂との混合方法は何ら制限されず一般的な混合機を用いて行うことが出来る。その様な混合機を例示すれば、プラネタリーミキサー、トリミックスなどのニーダー、三本ロールなどのロール混練機、擂潰機等がある。
【0017】
セラミックス−樹脂複合材料を成形、硬化してセラミックス−樹脂複合材料の成形体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法が使用され得る。熱可塑性樹脂の場合には温度による粘弾性挙動の変化を利用して成形、硬化することが出来、熱硬化性樹脂の場合にはラジカル重合、イオン重合、縮合、環化等の反応を利用して成形、硬化せしめることが可能である。成型体の形状は特に限定されないが、原料の利用効率を最大化するようなものであることが望ましく、一般的には直方体状、円柱状等である。
【0018】
次に、セラミックス−樹脂複合材料の成形体を、高熱伝導性セラミック粒子の平均粒子径以下の厚みに切断して熱伝導性絶縁シートを製造する。セラミックス−樹脂複合材料の成形体を高熱伝導性セラミック粒子の平均粒子径以下の厚さに切断することにより、該成形体に含有されている高熱伝導セラミックス粒子が、熱伝導性絶縁シートの厚み方向を貫通するように切断されるので、得られる熱伝導性絶縁シートの熱伝導率は高いものとなる。
【0019】
本発明の熱伝導性絶縁シートを製造するためのセラミックス−樹脂複合材料の成形体の切断方法は特に限定されず、公知の方法が使用され得る。一般的にはワイヤーソー、バンドソー、ホイールソー、レーザー、ウォータージェット等を用いる事が出来るが、工業的に最も好ましい方法はワイヤーソーである。
【0020】
本発明の製造方法により製造する熱伝導性絶縁シートの厚さは特に限定される事はないが、一般的には100〜10,000μmの範囲であり、好ましくは200〜2,000μmの範囲である。
【0021】
本発明の製造方法により得られる熱伝導性絶縁シートは、放熱材料として用いることができ、例えば、熱伝導性絶縁シートの表面に樹脂接着剤を介して金属箔を接着することにより金属箔付き高熱伝導性絶縁基板とすることができる。
【0022】
樹脂接着剤の接着強度は用途により異なるが、一般的には10MPa以上である事が好ましい。また、この樹脂接着剤は耐熱性の高いことが望ましく、例えばLEDを基板に搭載するはんだリフローと呼ばれるLED素子と基板の接合工程の温度に耐え得るものである事が好ましい。一般にリフロー工程は250℃またはそれ以上の温度であるため、そのような温度域で数分間耐える程度の耐熱性を有する事が望ましい。このため、本発明に用いる樹脂接着剤の成分は特に限定される事はないが、ポリエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、PPS樹脂等である事が好ましい。
【0023】
上記ポリエポキシ樹脂の具体例としては、原料エポキシ樹脂及び硬化剤からなるものが一般的である。原料エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂に前記多官能エポキシ樹脂を加えたものが挙げられる。また、硬化剤は特に限定されず、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものが使用される。具体例としては、アミン、ポリアミド、イミダゾール、酸無水物、潜在性硬化剤と呼ばれる三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物、並びに光硬化剤としてのジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、アミン、イミダゾール、酸無水物が好ましい。
【0024】
上記ポリイミド樹脂の具体例としては、芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンの脱水環化により得られる様な芳香族ポリイミドが好ましく、更に量末端にアミノ基を有するシリコーンを用いて得られるポリ(イ
ミド−シロキサン)樹脂を用いる事も好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重合体であるポリアミック酸を熱伝導性絶縁シートまたは金属箔に塗布し、薄い被膜を形成した後に加熱し、脱水環化してポリイミド樹脂被膜とすることも出来る。
【0025】
上記シリコーン樹脂は架橋体であることが好ましく、その具体例としては、付加反応架橋性シリコーン樹脂、縮合反応架橋性シリコーン樹脂、ラジカル反応架橋性シリコーン樹脂が挙げられる。上記付加反応とは、ビニル基を含むシリコーン樹脂に水素結合けい素を有するシロキサンが付加する反応であり、一般に白金族元素化合物の反応触媒が用いられる。このような白金族元素化合物としては、塩化白金酸、白金オレフィン錯体、白金ビニルシロキサン錯体、白金黒、白金トリフェニルホスフィン錯体等の白金系触媒が例示される。上記縮合反応とはシラノール基を有するシリコーン樹脂を脱水縮合する反応であり、その反応を促進するために有機スズ化合物の様な金属化合物、アルコキシ基含有化合物、アセトキシ基含有シラン、ケトンオキシム基含有シラン、アミノキシ基含有シロキサンなどの硬化剤が用いられる。ラジカル反応による架橋とは、ビニル基などの不飽和性炭化水素基を有するシリコーン樹脂を有機過酸化物をラジカル硬化剤として架橋するもので、有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4 −ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クミル−t−ブチルパーオキサイド、2,5 −ジメチル−2,5 −ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が例示される。
【0026】
熱伝導性絶縁シートはセラミックスを主成分とするため、一般的に熱膨張係数が小さいのに対し、導電性回路に用いる金属の熱膨張係数ははるかに大きいため、基板製造における加熱冷却工程により樹脂接着剤層に応力が残留し、接着性に負の影響を与える。またこの熱膨張係数の差により、使用時の熱サイクルにより発生する内部応力が大きくなり、接着性の低下を招く原因ともなる。このため、樹脂接着剤層の弾性率は接着性に悪影響を及ぼさない範囲で小さい方が望ましく、300kgf/mm以下であることが好ましい。
【0027】
上記樹脂接着剤には、セラミックスおよび金属箔との接着性を向上するためにシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、酸性リン酸エステル、ホスホン酸化合物などを加えることができる。これら接着促進成分については、予め熱伝導性絶縁シートおよび/または金属箔に塗布した後に樹脂接着剤と接触することも好ましく、そのような場合には、接着促進成分を溶媒に希釈してからスプレー、スピン、ディッピング等より選択される方法により熱伝導性絶縁シートおよび/または金属に塗布した後、溶媒を乾燥すればよい。
【0028】
また、樹脂接着剤層は本来樹脂であるため熱伝導性絶縁シートあるいは金属と比べて熱伝導率が低く、大きな熱抵抗を生じる原因となる。このため樹脂接着剤に高熱伝導性のフィラーを添加して樹脂接着剤層を形成することが好ましい。そのような高熱伝導性のフィラーの例としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などを挙げることが出来る。樹脂成分との親和性向上、耐水性向上等の目的のために表面処理したフィラーを用いることも好ましい態様である。このような表面処理には、酸性リン酸エステル、カルボン酸、イソシアネート、アルミネートカップリング剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることが出来る。フィラーが窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナの場合には、表面処理剤として酸性リン酸エステル、カルボン酸またはイソシアネートを用いて表面処理したものが好ましい。
【0029】
これらフィラーと樹脂接着剤の他の成分との混合方法は何ら制限されず一般的な混合機を用いて行うことが出来るが、そのような混合機を例示すれば、プラネタリーミキサー、トリミックスなどのニーダー、三本ロールなどのロール混練機、擂潰機等がある。
【0030】
樹脂接着剤層の熱伝導率は特に限定されないが、金属箔付き熱伝導性絶縁基板の熱抵抗を小さくするためにはなるべく高い方が望ましく、1W/mK以上であることが好ましく、2W/mKであることがより好ましい。
【0031】
本発明の金属箔付き熱伝導性絶縁基板における樹脂接着剤層の厚さは特に限定されることはなく、接着力、耐久性等も鑑みた全体的性能のバランスから決定されるべきであるが、基板の熱抵抗という点からはなるべく薄い方が望ましく、1〜10μmの範囲が好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましい。
【0032】
本発明の金属箔付き熱伝導性絶縁基板に使用される金属箔は特に限定されず、金箔、銀箔、銅箔、アルミ箔などを用いる事が出来るが、電気伝導率およびコストの面から銅箔が好適に使用される。銅箔の厚さは特に限定されないが、一般的には5〜105μm、好ましくは8〜35μm程度のものが使用される。銅箔の製法は特に限定されないが、一般的に使用される銅箔は圧延銅箔および電解銅箔である。
【0033】
本発明における金属箔付き熱伝導性絶縁基板の熱伝導率は、金属箔の厚さにより基板全体の熱伝導率が大きく変化するので、金属箔のない状態で評価する事が望ましいが、この様な熱伝導性絶縁シートと樹脂接着剤層より成る複合層の熱伝導率及は、各層の熱伝導率緒及び厚さの下記関係式
d
1/λ
1=(d
2/λ
2)+(d
3/λ
3)
d
1:複合層の厚さ d
2:樹脂接着層の厚さ d
3:熱伝導性絶縁シートの厚さ
λ
1:複合層の熱伝導率 λ
2:樹脂接着層の熱伝導率 λ
3:熱伝導性絶縁シートの熱伝導率
から下記のとおり理論的に求める事が出来る。
【0034】
複合層の熱伝導率 λ
1=d
1/((d
2/λ
2)+(d
3/λ
3))
この複合層の熱伝導率は、40W/mK以上であることが好ましく、50W/mKであることがより好ましい。
【0035】
本発明の金属箔付き熱伝導性絶縁基板を製造する工程は特に限定されず、例えばプリント基板の製造工程として一般に公知の方法を採用することが出来る。製造工程の流れを例示すれば、本発明の熱伝導性絶縁シートに溶剤に溶解した樹脂接着剤を塗布し、溶媒を乾燥後、金属箔を圧着し、その後樹脂接着剤層を硬化するために加熱するという工程がある。但し、樹脂接着剤層を予め金属箔表面に形成することも可能であり、その場合には、熱伝導性絶縁シートに接着剤層付き金属箔を圧着した後、加熱するという工程が代表的である。
【0036】
熱伝導性絶縁シートまたは金属箔と樹脂接着剤との接着強さを向上するために、プライマー処理を行う事も好ましい。このため熱伝導性絶縁シートに溶媒で希釈した酸性リン酸エステル、カルボン酸、イソシアネート、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ホスホン酸化合物等を予め塗布し、溶媒を乾燥後に樹脂接着剤を塗布するという工程が好ましい。特に、熱伝導性絶縁シート中の高熱伝導性セラミックス粒子がアルミナまたは窒化アルミニウムの場合には、酸性リン酸エステル、カルボン酸またはイソシアネートを用いて表面処理することが好ましい。
【0037】
本発明の金属箔付き熱伝導性絶縁基板の用途は特に制限されることはなく、放熱性並びに絶縁性を要求される電子回路基板として一般的な用途に使用することが出来る。それらの用途を例示すれば、コンバーター、インバーター等のパワーエレクトロニクス用途、照明用LED、工業用LED、車載用LED等のLED用途、並びにIC、LSI用基板等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および用途例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
本発明にて用いた試験方法を以下に示す。
【0040】
(高熱伝導性セラミックス粒子の平均粒子径)
走査型電子顕微鏡(JSM−5300、日本電子(株)製)を用いて適宜粒子径に応じた倍率にて粉体の撮影を行い、視野内の任意の100個の粒子の大きさを測定し、その平均値を一次粒子径とした。
【0041】
(熱伝導性絶縁シートの厚さ)
マイクロメーター(MDE−25MJ:ミツトヨ社製)を用い、基板の四角にて辺から約10mm内側の点の厚さを測定し、それらの平均値を厚さとした。
【0042】
(熱伝導性絶縁シート熱伝導率)
シートの熱伝導率を、迅速熱伝導率計(QTM−500、京都電子工業(株)製)を用いて測定した。レファレンスには石英ガラス、シリコーンゴムおよびジルコニアを用いた。
【0043】
(樹脂接着剤層の厚さ)
硬化後の金属箔付き熱伝導性絶縁基板を切断し、走査型電子顕微鏡(JSM−5300:JEOL社製)を用い、倍率2千倍、5千倍または1万倍にて断面の観察を行い、同一視野にて樹脂接着剤の厚さを10点測定し、その平均を樹脂接着剤の厚さとした。
【0044】
(樹脂接着剤の熱伝導率)
樹脂接着剤スラリーをバーコーター(PI−1210:テスター産業社製)を用いて離型PETフィルム上に製膜し、エポキシ樹脂では120℃での硬化後、シリコーン樹脂およびポリイミド樹脂では150℃での硬化後にPETフィルムを剥がした。ポリイミド樹脂ではその後200℃での最終硬化を行った。乾燥硬化後の膜の厚さは約200〜300μmであった。これら試料の熱伝導率を迅速熱伝導率計(QTM−500:京都電子工業社製)にて測定した。レファレンスには、厚さ2cm、長さ15cm、幅6cmの、石英ガラス、シリコーンゴムおよびジルコニアを用いた。
【0045】
(接着強度)
金属箔表面にニッケルメッキ、続けて金メッキを行った後、表面にニッケルメッキを施したΦ1.1mmの42アロイネイルヘッドピンを金メッキの表面にPb−Snハンダにてハンダ付けし、該ネイルヘッドピンを10mm/分の速度で垂直方向に引っ張り、該ネイルヘッドピンが剥がれた時の最大引っ張り強さを接合強度(MPa)とした。
【0046】
(ハンダ耐熱性)
各実施例記載の方法により作製した金属箔付き熱伝導性絶縁基板から、幅10m、長さ100mmの試験片を切り出した。試験片を25℃、相対湿度50%で24時間放置した後、270℃の半田浴中に60秒間浸漬し、その接着状態を観察、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。
【0047】
実施例1
窒化アルミニウムの焼結体(熱伝導率177W/mK:トクヤマ社製)を粉砕して24メッシュの篩にて分級した。得られた粒子の平均粒子径は332μmであった。ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)50g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)50g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液80gに窒化アルミニウム粒子187gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて120mm×50mm×t200μmとなるように切断した。
【0048】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0049】
実施例2
実施例1にて得られた窒化アルミニウム粒子150gにホスマーM(アシッドホスホオキシメタクリレート:ユニケミカル社製)1.8gおよびIPA120gを加えて攪拌後、超音波照射して均一な分散液とした。その後、攪拌下にドライヤーの熱風を当てながら、全体が粉末状となるまでIPAを揮発させた。この粉末を120℃のオーブンで15時間乾燥し、表面処理窒化アルミニウム粒子を得た。
【0050】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)50g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)50g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液80gに上記表面処理窒化アルミニウム粒子120gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ150μmとなるように切断した。
【0051】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0052】
実施例3
窒化アルミニウムの焼結体(熱伝導率177W/mK:トクヤマ社社製)を粉砕して20メッシュの篩にて分級した。得られた粒子の平均粒子径は504μmであった。この窒化アルミニウム粒子500gにホスマーM(ユニケミカル社製)6gおよびIPA400gを加えて攪拌後、超音波照射して均一な分散液とした。乳鉢にこの分散液を移し、攪拌下にドライヤーの熱風を当てながら、全体が粉末状となるまでIPAを揮発させた。この粉末を120℃のオーブンで15時間乾燥し、表面処理窒化アルミニウム粒子を得た。
【0053】
ビスフェノールA型メタクリル樹脂(D−2.6E:新中村化学社製)50g、ポリエチレングリコール型メタクリル樹脂(3G:新中村化学社製)50g、t−ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC:日油社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液50gに表面処理窒化アルミニウム粒子200gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ350μmとなるように切断した。
【0054】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0055】
実施例4
酸化マグネシウム焼結体(熱伝導率71W/mK :Maruwa社製)を粉砕後、14メッシュの篩にて分級した。得られた粒子の平均粒子径は723μmであった。シリコーン樹脂(KR−169:信越化学社製)100g、硬化剤(D−168:信越化学社製)2gを加え、均一溶液となるまで攪拌混合した。この溶液50gに上記酸化マグネシウム粒子200gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、150℃にて3時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ500μmとなるように切断した。
【0056】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0057】
比較例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)50g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)50g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液80gに窒化アルミニウム粉末(グレードH、平均粒子径0.7μm:トクヤマ社製)を187gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ200μmとなるように切断した。
【0058】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0059】
比較例2
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)50g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)50g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液50gに窒化アルミニウム粉末(平均粒子径4.5μm:トクヤマ社製)を200gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ200μmとなるように切断した。
【0060】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0061】
比較例3
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)50g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)50g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液50gに酸化アルミニウム粉末(AX10−32、平均粒子径9.1μm:マイクロン社製)を200gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ200μmとなるように切断した。
【0062】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0063】
比較例4
窒化アルミニウムの焼結体(熱伝導率177W/mK:トクヤマ社製)を粉砕して150メッシュの篩にて分級した。得られた粒子の平均粒子径は57μmであった。この窒化アルミニウム粒子500gにホスマーM(ユニケミカル社製)6gおよびIPA400gを加えて攪拌後、超音波照射して均一な分散液とした。乳鉢にこの分散液を移し、攪拌下にドライヤーの熱風を当てながら、全体が粉末状となるまでIPAを揮発させた。この粉末を120℃のオーブンで15時間乾燥し、表面処理窒化アルミニウム粒子を得た。
【0064】
ビスフェノールA型メタクリル樹脂(D−2.6E:新中村化学社製)50g、ポリエチレングリコール型メタクリル樹脂(3G:新中村化学社製)50g、t−ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC:日油社製)2gを混合して均一溶液とした。この溶液50gに表面処理窒化アルミニウム粒子200gを加え、乳鉢にて混合した。この混合物を80℃にて真空脱泡した後、120mm×50mm×t10mmの孔を有するポリテトラフルオロエチレン製モールドに流し込み、両面からポリテトラフルオロエチレン板で圧接した後、120℃にて5時間硬化した。硬化体を室温まで冷却後、ホイールダイヤモンドソー(OL−160:オーリー社製)にて厚さ200μmとなるように切断した。
【0065】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0066】
比較例5
メタルベース基板(M3、銅箔35μm/絶縁層80μm/アルミニウム板1.0mm:メイコー社製)の厚さと熱伝導率を測定した。
【0067】
得られた熱伝導性絶縁シートの物性を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例6
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)5g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)5g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)0.2g、メチルエチルケトン(和光純薬社製)10g、トルエン(和光純薬社製)10gを混合溶解して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粉末(Hグレード:トクヤマ社製)20gを加え、攪拌下に超音波を照射して分散し、樹脂接着剤スラリーを得た。次にホスマーM(ユニケミカル社製)10gをトルエン100gに溶解して均一なプライマー溶液とした。実施例3で得た熱伝導性絶縁シートにこのプライマー溶液をスピンコートした後、120℃にて1時間乾燥した。このコート面に上記樹脂接着剤スラリーをスピンコートし、室温にて30分間放置後、80℃にて30分間真空乾燥した。このコート面に厚さ18μmの銅箔(圧延銅箔HPF−ST18−X:日立電線社製)を圧着した後、120℃にて3時間硬化して、銅箔付き熱伝導性絶縁基板を得た。得られた銅箔付き熱伝導性絶縁基板の物性等を表2に示す。
【0070】
実施例7
ポリアミック酸のN−ブチル−2−ピロリドン溶液(U−ワニス−A:宇部興産社製)20gに窒化アルミニウム粉末(Hグレード:トクヤマ社製)10gを加え、攪拌下に超音波を照射して分散し、樹脂接着剤スラリーを得た。このスラリーを実施例3で得た熱伝導性絶縁シート上にスピンコートし、室温にて30分間放置後、100℃にて1時間、150℃にて1時間、更に200℃にて1時間乾燥した後、厚さ18μmの銅箔(圧延銅箔HPF−ST18−X:日立電線社製)を圧着し350℃にて30分硬化して、銅箔付き熱伝導性絶縁基板を得た。得られた銅箔付き熱伝導性絶縁基板の物性等を表2に示す。
【0071】
実施例8
ポリアミック酸のN−ブチル−2−ピロリドン溶液(U−ワニス−A:宇部興産社製)20gに窒化ホウ素粉末(MBN−010−T:三井化学社製)10gを加え、攪拌下に超音波を照射して分散し、樹脂接着剤スラリーを得た。このスラリーを実施例1で得た熱伝導性絶縁シート上にスピンコートし、室温にて30分間放置後、100℃にて1時間、150℃にて1時間、更に200℃にて1時間乾燥した後、厚さ18μmの銅箔(圧延銅箔HPF−ST18−X:日立電線社製)を圧着し、350℃にて30分硬化して、銅箔付き熱伝導性絶縁基板を得た。得られた銅箔付き熱伝導性絶縁基板の物性等を表2に示す。
【0072】
比較例6
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(1004:三菱化学社製)5g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)5g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)0.2g、メチルエチルケトン(和光純薬社製)10g、トルエン(和光純薬社製)10gを混合溶解して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粉末(Hグレード:トクヤマ社製)20gを加え、攪拌下に超音波を照射して分散し、樹脂接着剤スラリーを得た。次にホスマーM(ユニケミカル社製)10gをトルエン100gに溶解して均一なプライマー溶液とした。比較例1で得た熱伝導性絶縁シートにこのプライマー溶液をスピンコートした後、120℃にて1時間乾燥した。このコート面に上記樹脂接着剤スラリーをスピンコートし、室温にて30分間放置後、80℃にて30分間真空乾燥した。このコート面に厚さ18μmの銅箔(圧延銅箔HPF−ST18−X:日立電線社製)を圧着した後、120℃にて3時間硬化して、銅箔付き熱伝導性絶縁基板を得た。得られた銅箔付き熱伝導性絶縁基板の物性等を表2に示す。
【0073】
比較例7
ポリアミック酸のN−ブチル−2−ピロリドン溶液(U−ワニス−A:宇部興産社製)20gに窒化アルミニウム粉末(Hグレード:トクヤマ社製)10gを加え、攪拌下に超音波を照射して分散し、樹脂接着剤スラリーを得た。このスラリーを比較例4で得た熱伝導性絶縁シート上にスピンコートし、室温にて30分間放置後、100℃にて1時間、150℃にて1時間、更に200℃にて1時間乾燥した後、厚さ18μmの銅箔(圧延銅箔HPF−ST18−X:日立電線社製)を圧着し、350℃にて30分硬化して、銅箔付き熱伝導性絶縁基板を得た。得られた銅箔付き熱伝導性絶縁基板の物性等を表2に示す。
【0074】
【表2】