(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の一例を説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図6に示すように、この半導体装置製造装置1は、ウェハWを半導体装置製造装置1に対して搬入出させる搬入出部2、搬入出部2に隣接させて設けられた2つのロードロック室3、各ロードロック室3にそれぞれ隣接させて設けられ、加熱工程としてのPHT(Post Heat Treatment)処理工程を行うPHT処理装置4、各PHT処理装置4にそれぞれ隣接させて設けられ、エッチング処理工程を行うエッチング処理装置5、半導体装置製造装置1の各部に制御命令を与える制御コンピュータ8を有している。各ロードロック室3に対してそれぞれ連結されたPHT処理装置4、エッチング処理装置5は、ロードロック室3側からこの順に一直線上に並べて設けられている。
【0017】
搬入出部2は、例えば略円盤形状をなすウェハWを搬送する第一のウェハ搬送機構11が内部に設けられた搬送室12を有している。ウェハ搬送機構11は、ウェハWを略水平に保持する2つの搬送アーム11a、11bを有している。搬送室12の側方には、ウェハWを複数枚並べて収容可能なキャリア13aを載置する載置台13が、例えば3つ備えられている。また、ウェハWを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行うオリエンタ14が設置されている。
【0018】
かかる搬入出部2において、ウェハWは、搬送アーム11a、11bによって保持され、ウェハ搬送装置11の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台10上のキャリア13a、オリエンタ14、ロードロック室3に対してそれぞれ搬送アーム11a、11bが進退させられることにより、ウェハWが搬入出させられる。
【0019】
各ロードロック室3は、搬送室12との間にそれぞれゲートバルブ16が備えられた状態で、搬送室12にそれぞれ連結されている。各ロードロック室3内には、ウェハWを搬送する第二のウェハ搬送機構17が設けられている。ウェハ搬送機構17は、ウェハWを略水平に保持する搬送アーム17aを有している。また、ロードロック室3は真空引き可能になっている。
【0020】
かかるロードロック室3において、ウェハWは、搬送アーム17aによって保持され、ウェハ搬送機構17の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより搬送させられる。そして、各ロードロック室3に対して縦列に連結されたPHT処理装置4に対して搬送アーム17aが進退させられることにより、PHT処理装置4に対してウェハWが搬入出させられる。さらに、各PHT処理装置4を介してエッチング処理装置5に対して、搬送アーム17aが進退させられることにより、エッチング処理装置5に対してウェハWが搬入出させられるようになっている。
【0021】
PHT処理装置4は、ウェハWを収納する密閉構造の処理室(処理空間)21を備えている。また、図示はしないが、ウェハWを処理室21内に搬入出させるための搬入出口が設けられており、この搬入出口を開閉するゲートバルブ22が設けられている。処理室21は、ロードロック室3との間にそれぞれゲートバルブ22が備えられた状態で、ロードロック室3に連結されている。
【0022】
図7に示すように、PHT処理装置4の処理室21内には、ウェハWを略水平にして載置させる載置台23が設けられている。さらに、処理室21に例えば窒素ガス(N
2)などの不活性ガスを加熱して供給する供給路25を備えた供給機構26、処理室21を排気する排気路27を備えた排気機構28が備えられている。供給路25は窒素ガスの供給源30に接続されている。また、供給路25には、供給路25の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁31が介設されている。排気路27には、開閉弁32、強制排気を行うための排気ポンプ33が介設されている。
【0023】
なお、PHT処理装置4のゲートバルブ22、流量調整弁31、開閉弁32、排気ポンプ33等の各部の動作は、制御コンピュータ8の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構26による窒素ガスの供給、排気機構28による排気などは、制御コンピュータ8によって制御される。
【0024】
図8に示すように、エッチング処理装置5は、密閉構造のチャンバー40を備えており、チャンバー40の内部は、ウェハWを収納する処理室(処理空間)41になっている。チャンバー40の内部には、ウェハWを略水平にした状態で載置させる載置台42が設けられている。また、エッチング処理装置5には、処理室41にガスを供給する供給機構43、処理室41内を排気する排気機構44が設けられている。
【0025】
チャンバー40の側壁部には、ウェハWを処理室41内に搬入出させるための搬入出口53が設けられており、この搬入出口53を開閉するゲートバルブ54が設けられている。処理室41は、PHT処理装置4の処理室21との間にゲートバルブ54が備えられた状態で、処理室21に連結されている。チャンバー40の天井部には、処理ガスを吐出させる複数の吐出口を有するシャワーヘッド52が備えられている。
【0026】
載置台42は、平面視において略円形をなしており、チャンバー40の底部に固定されている。載置台42の内部には、載置台42の温度を調節する温度調節器55が設けられている。温度調節器55は、例えば温調用の液体(例えば水など)が循環させられる管路を備えており、かかる管路内を流れる液体と熱交換が行われることにより、載置台42の上面の温度が調節され、さらに、載置台42と載置台42上のウェハWとの間で熱交換が行われることにより、ウェハWの温度が調節されるようになっている。なお、温度調節器55はかかるものに限定されず、例えば抵抗熱を利用して載置台42及びウェハWを加熱する電気ヒータ等であっても良い。
【0027】
供給機構43は、前述したシャワーヘッド52、処理室41にハロゲン元素を含むガスとしてフッ化水素ガスを供給するフッ化水素ガス供給路61、処理室41に塩基性ガスを含むガスとしてアンモニアガスを供給するアンモニアガス供給路62、処理室41に不活性ガスとしてアルゴンガスを供給するアルゴンガス供給路63、処理室41に不活性ガスとして窒素ガスを供給する窒素ガス供給路64を備えている。フッ化水素ガス供給路61、アンモニアガス供給路62、アルゴンガス供給路63、窒素ガス供給路64は、シャワーヘッド52に接続されており、処理室41には、シャワーヘッド52を介してフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスが拡散されるように吐出されるようになっている。
【0028】
フッ化水素ガス供給路61は、フッ化水素ガスの供給源71に接続されている。また、フッ化水素ガス供給路61には、フッ化水素ガス供給路61の開閉動作及びフッ化水素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁72が介設されている。アンモニアガス供給路62はアンモニアガスの供給源73に接続されている。また、アンモニアガス供給路62には、アンモニアガス供給路62の開閉動作及びアンモニアガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁74が介設されている。アルゴンガス供給路63はアルゴンガスの供給源75に接続されている。また、アルゴンガス供給路63には、アルゴンガス供給路63の開閉動作及びアルゴンガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁76が介設されている。窒素ガス供給路64は窒素ガスの供給源77に接続されている。また、窒素ガス供給路64には、窒素ガス供給路64の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁78が介設されている。
【0029】
排気機構44は、開閉弁82、強制排気を行うための排気ポンプ83が介設された排気路85を備えている。排気路85の端部開口は、チャンバー40の底部に開口されている。
【0030】
なお、エッチング処理装置5のゲートバルブ54、温度調節器55、流量調整弁72、74、76、78、開閉弁72、排気ポンプ83等の各部の動作は、制御コンピュータ8の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構43によるフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスの供給、排気機構44による排気、温度調節器55による温度調節などは、制御コンピュータ8によって制御される。
【0031】
半導体装置製造装置1の各機能要素は、半導体装置製造装置1全体の動作を自動制御する制御コンピュータ8に、信号ラインを介して接続されている。ここで、機能要素とは、例えば前述したウェハ搬送機構11、ウェハ搬送機構17、PHT処理装置4のゲートバルブ22、流量調整弁31、排気ポンプ33、エッチング処理装置5のゲートバルブ54、温度調節器55、流量調整弁72、74、76、78、開閉弁72、排気ポンプ83等の、所定のプロセス条件を実現するために動作する総ての要素を意味している。制御コンピュータ8は、典型的には、実行するソフトウェアに依存して任意の機能を実現することができる汎用コンピュータである。
【0032】
図6に示すように、制御コンピュータ8は、CPU(中央演算装置)を備えた演算部8aと、演算部8aに接続された入出力部8bと、入出力部8bに挿着され制御ソフトウェアを格納した記録媒体8cと、を有する。この記録媒体8cには、制御コンピュータ8によって実行されることにより半導体装置製造装置1に後述する所定の基板処理方法を行わせる制御ソフトウェア(プログラム)が記録されている。制御コンピュータ8は、該制御ソフトウェアを実行することにより、半導体装置製造装置1の各機能要素を、所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件(例えば、処理室41の圧力等)が実現されるように制御する。即ち、後に詳細に説明するように、エッチング処理装置5におけるCOR処理工程と、PHT処理装置4におけるPHT処理工程とをこの順番に行うエッチング方法を実現する制御命令を与える。
【0033】
記録媒体8cは、制御コンピュータ8に固定的に設けられるもの、あるいは、制御コンピュータ8に設けられた図示しない読み取り装置に着脱自在に装着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであっても良い。最も典型的な実施形態においては、記録媒体8cは、半導体装置製造装置1のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウェアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施形態においては、記録媒体8cは、制御ソフトウェアが書き込まれたCD−ROM又はDVD−ROMのような、リムーバブルディスクである。このようなリムーバブルディスクは、制御コンピュータ8に設けられた図示しない光学的読取装置により読み取られる。また、記録媒体8cは、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)のいずれの形式のものであっても良い。さらに、記録媒体8cは、カセット式のROMのようなものであっても良い。要するに、コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体8cとして用いることが可能である。なお、複数の半導体装置製造装置1が配置される工場においては、各半導体装置製造装置1の制御コンピュータ8を統括的に制御する管理コンピュータに、制御ソフトウェアが格納されていても良い。この場合、各半導体装置製造装置1は、通信回線を介して管理コンピュータにより操作され、所定のプロセスを実行する。
【0034】
次に、以上のように構成された半導体装置製造装置1におけるウェハWの処理方法について説明する。先ず、
図2に示したように、CVD法等により表面にSiN膜104が成膜れたウェハWが、キャリア13a内に収納され、半導体装置製造装置1に搬送される。
図1で説明したように、ウェハWの表面には、ゲート電極1の側面にサイドウォール102が形成されたトランジスタ103が複数設けられている。
【0035】
このようにキャリア13a内に収納されて半導体装置製造装置1に搬入されたウェハWの表面には、
図2に示したように、それらトランジスタ103を覆うように、予めSiN(窒化シリコン)膜104が成膜されている。また、先に
図4で説明したように、ウェハW表面に形成されているSiN膜104の表面は大気などによって酸化されており、SiN膜104の表面はSiNO(酸窒化シリコン)からなる膜部分105によって覆われた状態となっている。
【0036】
半導体装置製造装置1においては、
図6に示すように、複数枚のウェハW(予めSiN膜104が成膜されたウェハW)が収納されたキャリア13aが載置台13上に載置され、ウェハ搬送機構11によってキャリア13aから一枚のウェハWが取り出され、ロードロック室3に搬入される。ロードロック室3にウェハWが搬入されると、ロードロック室3が密閉され、減圧される。その後、ゲートバルブ22、54が開かれ、ロードロック室3と、大気圧に対してそれぞれ減圧されたPHT処理装置4の処理室21、エッチング処理装置5の処理室41が、互いに連通させられる。ウェハWは、ウェハ搬送機構17によってロードロック室3から搬出され、処理室21の搬入出口(図示せず)、処理室21、搬入出口53内をこの順に通過するように直進移動させられ、エッチング処理装置5の処理室41に搬入される。
【0037】
エッチング処理装置5の処理室41において、ウェハWは、SiN膜104が成膜された面(デバイス形成面)を上面とした状態で、ウェハ搬送機構17の搬送アーム17aから載置台42に受け渡される。ウェハWが搬入されると搬送アーム17aが処理室41から退出させられ、搬入出口53が閉じられ、処理室41が密閉される。そして、エッチング処理工程が開始される。
【0038】
処理室41が密閉された後、処理室41には、アルゴンガス供給路63、窒素ガス供給路64からそれぞれアルゴンガス、窒素ガスが供給される。また、処理室41内の圧力は、大気圧よりも低圧状態にされる。さらに、載置台42上のウェハWの温度は、温度調節器55によって所定の目標値に調節される。この場合、アルゴンガスの流量は例えば0〜2000sccm程度、窒素ガスの流量は例えば0〜2000sccm程度に設定される。処理室41内の圧力は、例えば2000〜5000mTorr(260〜650Pa)程度の低圧状態にされる。載置台42上のウェハWの温度は、例えば50〜100℃に調節される。
【0039】
そして、処理室41内が所望の低圧状態となり、ウェハWの温度が目標値に調節された後、フッ化水素ガス供給路61から処理室41にフッ化水素ガスが供給され、ウェハWの表面に成膜されたSiN膜104のエッチングが行われる。
【0040】
この場合、上述したようにウェハW表面に形成されているSiN膜104の表面は、大気などによって酸化されてSiN膜104の表面がSiNOからなる膜部分105によって覆われた状態となっている。このため、先に
図4で説明したように、処理室41にフッ化水素ガス106が供給されても、フッ化水素ガス106は膜部分105を通過することができず、エッチングガスとしてのフッ化水素ガス106が実質的にSiN膜104まで到達しなくなり、SiN膜104を効果的にエッチングすることができないと考えられる。
【0041】
そこで、SiN膜104をエッチングする工程の初期の段階では、塩基性ガスを含むガスとしてアンモニアガス供給路62からアンモニアガスが処理室41内に供給される。これにより、SiN膜104をエッチングする工程の初期の段階では、処理室41の雰囲気はフッ化水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスからなる処理雰囲気にされる。こうしてSiN膜104をエッチングする工程の初期の段階では、処理室41内のウェハWの表面にフッ化水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスが供給されることで、SiN膜104の表面を覆っているSiNOからなる膜部分105は、主にフルオロケイ酸アンモニウム((NH
4)
2SiF
6)と水分(H
2O)を含む反応生成物の膜部分105’に変化させられる。こうして変化させられた反応生成物の膜部分105’は、ハロゲン元素を含むガスを良好に通過させることができるようになる。その結果、先に
図5で説明したように、エッチングガスとしてのフッ化水素ガス106がSiN膜104まで到達して、SiN膜104を効果的にエッチングできるようになると考えられる。
【0042】
なお、このようにSiN膜104をエッチングする工程の初期の段階(処理室41の雰囲気がフッ化水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスからなる処理雰囲気にされる段階)は、例えば5〜30秒程度行われる。また、エッチングする工程の初期の段階では、フッ化水素ガスの流量は例えば500〜2000sccm程度、アンモニアガスの流量は例えば5〜200sccm程度に設定される。また、処理室41内の圧力は、例えば100〜5000mTorr(13〜650Pa)程度の低圧状態にされる。
【0043】
そして、このようにSiN膜104表面の膜部分105を反応生成物の膜部分105’に変化させた後、アンモニアガス供給路62からのアンモニアガスの供給が停止される。一方、フッ化水素ガス供給路61からのフッ化水素ガスの供給は継続される。こうして、処理室41の雰囲気はフッ化水素ガスを含むエッチング処理雰囲気にされ、ウェハWの表面に成膜されたSiN膜104のエッチングが行われる。この場合、アンモニアガスの供給が続けられていてもSiN膜104のエッチングは可能ではある。しかし、SiN膜104のみをエッチングするという目的からすると、SiN膜104表面の膜部分105が反応生成物の膜部分105’に変化した後は、アンモニアガスの供給を停止した方が望ましい。アンモニアガスを無駄に使わなくて済むほか、アンモニアガスとフッ化水素ガスが反応して処理室41の内壁にデポ物として付着することを極力抑えることが出来るのである。
【0044】
この場合、初期の段階においてSiN膜104表面の膜部分105が予め主にフルオロケイ酸アンモニウム((NH
4)
2SiF
6)と水分(H
2O)を含む反応生成物の膜部分105’に変化させられている。なお、発明者の実験の結果、この反応生成物の膜部分105’がSiN膜104の表面にある状態でも、フッ化水素ガス106によるSiN膜104のエッチングを十分に行うことができることが分かった。反応生成物の膜部分105’は、
図5に示すように、フッ化水素ガス106を良好に通過させることができ、その結果、エッチングガスとしてのフッ化水素ガス106がSiN膜104まで到達して、SiN膜104を効果的にエッチングできるようになると考えられる。さらには、後の実施例でも説明するように、本発明者は、反応生成物の膜部分105’をSiN膜104の表面に存在させた状態でエッチングを行った場合、反応生成物の膜部分105’がSiN膜104の表面に無い状態でエッチングを行った場合に比較して、エッチレートが高くなることを見出した。例えば、SiN膜104の表面にある反応生成物の膜部分105’をPHT処理装置4で除去した上で、SiN膜104をフッ化水素ガスによってエッチング処理することも可能である。しかし、そのように反応生成物の膜部分105’を除去した状態でSiN膜104をエッチング処理する場合に比べて、反応生成物の膜部分105’をSiN膜104の表面に存在させたままの状態でエッチング処理した場合、むしろエッチレートが高くなり、スループットは格段に高くなるのである。また、反応生成物の膜部分105’をSiN膜104の表面に存在させたままの状態でエッチング処理することにより、ウェハWをPHT処理装置4に移動させること無く、エッチング処理装置5の処理室41において一連のエッチング処理を継続して行うことができ、スループットはさらに向上する。
【0045】
こうしてフッ化水素ガスによりSiN膜104を効果的にエッチングすることにより、SiN膜104を所望の厚さまで迅速にエッチングでき、ダメージの少ない状態で所望の膜厚を持ったSiN膜104を形成することが可能となる。また、膜部分105を透過させて、SiN膜104の全体にむらなくフッ化水素ガス106を到達させることができ、ウェハWの表面全体においてSiN膜104を等しくエッチングでき、均一な膜厚のSiN膜4をウェハWの表面全体に形成することが可能となる。フッ化水素ガスによりエッチングされたSiNは排気路85より排出される。
【0046】
なお、アンモニアガスの供給を停止した後、フッ化水素ガスの供給を継続してSiN膜104をエッチングする工程は、例えば30〜300秒程度行われる。また、フッ化水素ガスの流量は例えば500〜2000sccm程度に設定される。また、処理室41内の圧力は、例えば100〜5000mTorr(13〜650Pa)程度の低圧状態にされる。
【0047】
そして、ウェハWの表面に成膜されたSiN膜104をエッチングする工程が終了すると、処理室41が強制排気されて減圧される。これにより、フッ化水素ガスが処理室41から強制的に排出される。処理室41の強制排気が終了すると、搬入出口53が開口させられ、ウェハWはウェハ搬送機構17によってエッチング処理装置5の処理室41から搬出され、PHT処理装置4の処理室21に搬入される。
【0048】
PHT処理装置4において、ウェハWは表面を上面とした状態で処理室21内に載置される。ウェハWが搬入されると搬送アーム17aが処理室21から退出させられ、処理室21が密閉され、ウェハWを加熱する工程(PHT処理工程)が開始される。この加熱工程では、処理室21内が排気されながら、高温の加熱ガスが処理室21内に供給され、処理室21内が所定の温度まで昇温される。これにより、ウェハW表面に残っていた反応生成物の膜部分105’(フルオロケイ酸アンモニウム((NH
4)
2SiF
6)と水分(H
2O)を含む反応生成物からなる膜部分105’)を昇華させて、ウェハWの表面から除去することができる。
【0049】
なお、このようにウェハWを加熱する工程は、例えば、ウェハWの温度を100〜300度で30〜180秒程度の間行われる。また、処理室21内の圧力は、例えば500〜2000mTorr(65〜260Pa)程度の低圧状態にされる。
【0050】
ウェハWを加熱する工程が終了すると、加熱ガスの供給が停止され、PHT処理装置4の搬入出口が開かれる。その後、ウェハWはウェハ搬送機構17によって処理室21から搬出され、ロードロック室3に戻される。
【0051】
こうして、先に
図3で説明したように、SiN膜4の膜厚が所望の厚さにされたウェハWがロードロック室3に戻され、ロードロック室3が密閉された後、ロードロック室3と搬送室12とが連通させられる。そして、ウェハ搬送機構11によって、ウェハWがロードロック室3から搬出され、載置台13上のキャリア13aに戻される。以上のようにして、半導体装置製造装置1における一連の製造工程が終了する。
【0052】
なお、半導体装置製造装置1においてSiN膜104の膜厚が所望の厚さにされたウェハWは、その後、例えば成膜装置、CMP装置等を経て、半導体装置が完成させられる。
【0053】
以上に説明した本発明の実施の形態にかかる半導体装置製造装置1によれば、SiN膜104表面の膜部分105を通過性の反応生成物の膜部分105’に変化させることにより、エッチングガスとしてのフッ化水素ガス106をSiN膜104まで良好に到達させてSiN膜104を効果的にエッチングすることができ、スループットが向上する。また、フッ化水素ガスでエッチングすることにより、ダメージの少ない所望の厚さのSiN膜104を得ることが可能となり、ウェハWの表面のトランジスタ3が形成された領域にストレスを与える応力膜を形成することができる。また、反応生成物の膜部分105’を透過させて、SiN膜104の全体にむらなくフッ化水素ガス106を到達させてSiN膜104全体を等しくエッチングでき、均一な膜厚のSiN膜104をウェハWの表面全体に形成することが可能となる。加えて、反応生成物の膜部分105’をSiN膜104の表面に存在させた状態でエッチングを行うことにより、エッチレートを向上させることができ、更に、エッチング処理装置5の処理室41において一連のエッチング処理を継続して行うことにより、スループットが著しく向上する。
【0054】
なお、以上の実施の形態では一種類のSiN膜104(応力膜)を形成する場合を説明したが、レジストパターンマスクなどを利用して、ウェハWの表面のトランジスタ103が形成された領域に引張りのSiN膜と圧縮のSiN膜を形成することにより、デュアル−ストレス・ライナ技術を実現することもできる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
エッチング処理装置の処理室内にフッ化水素ガスを供給すると同時にアンモニアガスの供給を開始する例を説明したが、処理室内に先に塩基性ガスを含むガスを開始し始めても良い。また、エッチング工程の終了後にエッチング処理装置の処理室内を強制排気する場合、Arガスなどを処理室内に供給してパージを行っても良い。
【0057】
なお、処理室に供給されるガスの種類は、フッ化水素ガスやアンモニアガスに限らず他のハロゲン元素を含むガスや他の塩基性ガスを含むガスを用いても良い。また、ハロゲン元素や塩基性ガスに加えてアルゴンガス、窒素ガスなどの不活性ガス、その他の種類のガスを処理室に供給してもよい。
【0058】
半導体装置製造装置1の構造は、以上の実施形態に示したものには限定されない。例えば、エッチング処理装置とPHT処理装置は別の装置とせずに、エッチング処理装置内でウェハを加熱する処理を行っても良い。また、エッチング処理装置、PHT処理装置の他に、成膜装置を備えた半導体装置製造装置であっても良い。また、半導体装置製造装置1において処理される基板の構造は、以上の実施形態において説明したものには限定されない。さらに、半導体装置製造装置1において実施されるエッチングは、実施の形態に示したような、応力膜の形成には限定されず、本発明は、様々な部分のエッチングに適用できる。
【0059】
半導体装置製造装置1においてエッチングを施す対象物となるSiN膜も、CVD膜には限定されず、他の種類のSiN膜であっても良い。また、CVD成膜は、例えば熱CVD法、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法等であっても良い。また、SiN膜の種類に応じて、エッチング処理工程におけるウェハWの温度、フッ化水素ガスの分圧、アンモニアガスの分圧等を調節することで、エッチング量などを制御することができる。
【実施例】
【0060】
本発明の実施例として、次のステップ1〜6の手順により、ウェハ表面に成膜されたSiN膜のエッチングを行った。
図9は、実施例のステップ1〜6の手順を示す表である。
【0061】
先ず、表面にSiN膜が成膜されたウェハをエッチング処理装置の処理室に搬入した後、処理室に窒素ガス1700sccm、アルゴンガス300sccmを供給しながら、2分間減圧して処理室内の圧力を3000mTの低圧状態にした(ステップ1)。次に、処理室にアンモニアガス160sccm、アルゴンガス280sccmを供給しながら、10秒間減圧して処理室内の圧力を600mTの低圧状態にした(ステップ2)。次に、処理室にアンモニアガス160sccm、フッ化水素ガス160sccm、10秒間処理室内の圧力を600mTの低圧状態に維持した(ステップ3)。次に、処理室に窒素ガス600sccm、フッ化水素ガス450sccmを供給しながら、2分間処理室内の圧力を3000mTの低圧状態に維持した(ステップ4)。次に、処理室に窒素ガス1700sccm、アルゴンガス300sccmを供給しながら、5秒間処理室内の圧力を真空引きした(ステップ5)。更に、処理室にガスを供給せずに、1分間処理室内の圧力を真空引きした(ステップ6)。
【0062】
一方、比較例1として、上記ステップ1〜3、5、6の手順により、ウェハ表面に成膜されたSiN膜のエッチングを行った。また、比較例2として、ウェハ表面に成膜されたSiN膜に対して上記ステップ1〜3、5、6とPHT処理工程(反応生成物の膜部分の除去)を行った後にウエハ上に残っているSiN膜に対して、上記ステップ1、2、4〜6の手順によりエッチングを行った。
【0063】
なお、SiN膜としてヘキサクロロシランを成膜材料としてCVD成膜したSiN膜aと、ジクロロシランを成膜材料としてCVD成膜したSiN膜bの2種類を用意し、それら2種類のSiN膜a、bについて、実施例および比較例1、2によるエッチングを行った。各エッチングによるエッチング量(nm)を
図10に示す。
【0064】
フッ化水素ガスとアンモニアガスの混合ガスによるエッチング(ステップ3)のみを行った比較例1と、フッ化水素ガスによるエッチング(ステップ4)のみを行った比較例2は、SiN膜aに対するエッチング量が10〜20nm程度であり、SiN膜bに対するエッチング量が1〜6nm程度であった。これに対して、エッチングする工程の初期の段階でフッ化水素ガスとアンモニアガスの混合ガスによるエッチング(ステップ3)を行った後、フッ化水素ガスによるエッチング(ステップ4)を継続して行った実施例では、SiN膜aに対するエッチング量が40nm以上であり、SiN膜bに対するエッチング量が20nm以上であった。
【0065】
エッチングする工程の初期の段階でフッ化水素ガスとアンモニアガスの混合ガスによるエッチング(ステップ3)を行った後、フッ化水素ガスによるエッチング(ステップ4)を継続して行った場合、計算値では、比較例1によるエッチング量と比較例2によるエッチング量の総和になるはずである。ところが、ステップ3とステップ4を継続して行った本発明の実施例では、計算値よりもはるかに多いエッチング量を達成できた。