(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光層を具備する半導体層が導電性の支持部の上に形成された構成を具備し、前記支持部は、前記半導体層の一方の面に接続された一方の電極と接続された構成を具備する発光素子チップであって、
前記半導体層における他方の面には凹凸が形成され、かつ他方の電極が前記他方の面における前記凹凸上に形成され、
前記支持部は、前記半導体層における他方の面の周囲を囲む外周部を具備し、当該外周部は、前記半導体層における他方の面、及び前記他方の電極よりも上側に突出していることを特徴とする発光素子チップ。
前記半導体層はIII族窒化物半導体で構成され、前記他方の面における凹凸を構成するミクロな表面は、{10−1−1}面群からなる半極性面であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の発光素子チップ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の好適な実施形態となる発光素子チップ、及びその製造方法を図面に基づいて説明する。本発明において、発光素子チップとはアセンブリ前の状態のチップを意味し、アセンブリ後の発光素子とは区別して表記する。
【0017】
図1は、本発明の本実施形態に係る発光素子チップの上面図(a)と断面図(b)である。発光素子チップ10は、支持部11の上に、発光層12aを具備する半導体層12を有している。支持部11は、凹形状を有し、この発光素子チップ10における支持基板となると共に、半導体層12上の一方の電極と接続される。この発光素子チップ10が発する光は、
図1(b)における上側に発せられる。
【0018】
半導体層12の一方の面(
図1(b)における下側の面)12bは、支持部11の底部11cに下地層13を介して接続されている。半導体層12の一方の面12bは、p型半導体層12cからなり、p型半導体層12cとオーミック接合をするp側電極14が形成されている。半導体層12の他方の面(
図1(b)における上側の面)12dには凹凸構造が形成され、部分的にn側電極15が形成されている。半導体層12の他方の面12dは、n型半導体層12eからなり、n側電極15は、n型半導体層12eとオーミック接合をする金属から形成されている。n側電極15は、
図1(a)に示されるように、ボンディングワイヤが接続されるボンディングパッド部15aと、電流をチップ内に均一に給電させるための補助電極15bを有している。この発光素子チップ10が上側に発する光はn側電極15により遮られる。ボンディングパッド部15は、この上でボンディングが行えるためには最低限の面積が必要であるが、補助電極15bの幅は細いことが好ましい。一方、この幅が細い場合には補助電極15bの抵抗値が増大するため、補助電極15bの幅及び高さは、配線抵抗を考慮した上で適宜決定される。
【0019】
また、補助電極15bと半導体層12を挟んで上下対称となる形で、半導体層12の一方の面には絶縁体層16がパターニングされている。上記の構造においては、p側電極14とn側電極15との間の半導体層12中を
図1(b)の上下方向に電流が流れる。この際、絶縁体層16をn側電極15と上下対称に設けることによって、n側電極15直下への電流の流れは制限されるため、遮光されるn側電極15直下の半導体層12からの発光が制限され、遮光されていない箇所の発光強度をその分高めることができ、かつ発光の面内均一化にも寄与する。
【0020】
また、支持部11の外周部(支持部外周部11a)は、半導体層12を取り囲み、かつ半導体層12の他方の面12d、n側電極15よりも突出し、より高い位置に設定される(
図1(b)において上側となっている)。なお、絶縁体層16は、半導体層12の周辺端部も覆って形成されており、これにより、支持部11とn型半導体層12eとは電気的に絶縁される。
【0021】
支持部11における支持部外周部11aの頂部11bは、n側電極15の表面よりも例えば0.2μm以上高い位置にある。また、半導体層12の表面におけるn側電極15以外の箇所は保護膜17で覆われている。
【0022】
半導体層12は、n型GaN系窒化物層(n型半導体層:n型層)12e、p型GaN系窒化物層(p型半導体層:p型層)12cの間に発光層12aを備えている。発光層12aは、例えばGaN系窒化物からなる多重量子井戸層(MQW)等、高い発光効率をもつ層である。この半導体層12の構成は通常のLEDに使用されるものと同様である。
【0023】
絶縁体層16、保護膜17は、共にSiO
2等から形成される。支持部11は、接合法や湿式成膜法(メッキ等)で形成される材料(例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni))等で構成される。下地層13は、例えばメッキのシード層となるニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、Cu等(以上、Cuメッキの場合)、Ni、パラジウム(Pd)、Au、Pt等(以上、Niメッキの場合)で構成される。ただし、下地層13を、適宜これらの材料を含んだ積層構造とすることもできる。
【0024】
p側電極14の材料としては、p型層12cに対してオーミック接続をとれる材料として、例えばAg、Rh、Ru等の単体金属、もしくはこれらを含む合金や積層構造を用いることができる。また、Au−Ni合金やPt、Pd単体及びこれらの合金も用いることができる。ただし、p側電極14は光の反射層としても機能し、この観点においては、可視光の反射率が85%以上と高いAg及びその合金系、あるいは紫外線領域での反射率の高いRh、Ruが、用途に応じて特に好ましく用いられる。この場合、半導体層12(p型層12c)と接する側をこうした材料で構成することにより、反射率やコンタクト抵抗を小さくすることができる。
【0025】
図1(a)に示されるように、半導体層12の平面形状は矩形であり、支持部11の凹部にこの半導体層12が嵌合して収容された形状となっている。
【0026】
半導体層12の他方の面12dには凹凸構造が形成されている。他方の面12dのマクロな表面(凹凸が平均・平坦化された場合の表面)は、例えば(000−1)N極性面である。一方、凹凸表面を構成するミクロな表面は{10−1−1}面群からなる半極性面となっている。すなわち、この凹凸は、微小面積をもった{10−1−1}面群からなる半極性面によって構成されている。この点の詳細は、後述する製造方法で説明する。
【0027】
発光素子チップ10は、上記の構成のように、支持部11における支持部外周部11aが、凹凸構造をした半導体層12の他方の面12d及び他方の電極15の表面よりも突出している。それにより、アセンブリ時にn側電極15(特に補助電極15b)が直接コレットや作業台等の表面に接触することがないので、傷、打痕が発生しにくくなり、通電不良を抑制することができる。さらに、半導体層12の凹凸表面12dや発光部での欠けやクラックを抑制することができる。また、光取り出し面や発光部の保護の観点からも、安全にアセンブリができる。ここで、後述するように、支持部11と支持部外周部11aとは一体で形成される。半導体層12における他方の面12dやn側電極(他方の電極)15よりも上側に突出する部材を支持部11に後で接合して形成することも可能ではあるが、製造工程が複雑になり、かつその強度にも問題が出るため、好ましくない。一体的に支持部11と支持部外周部11aとが形成されることにより、製造工程が単純化され、かつこの機械的強度を高くすることができる。
【0028】
また、従来の平坦な支持部を用いた場合では発光層から横方向へ放出する光は、横方向へと漏れてしまい、光を十分効果的に取り出すことはできなかった。これに対し、この発光素子チップ10においては、発光層12aから側面に達した光を、支持部外周部11aで反射させることによって光を十分効果的に取り出すことができる。その場合、半導体層12と絶縁体層16を介して接する支持部11の凹部の内側のテーパー角度は10°から80°の範囲で傾斜していることが好ましい。この角度の設定方法については後述する。なお、この場合のテーパー角度θは、
図1(b)に示すように定義される。
【0029】
次に、本発明の本実施形態に係る発光素子チップ10の製造方法について説明する。この発光素子チップ10において用いられる半導体層12は、成長基板上にエピタキシャル成長することによって得られる。ただし、実際に製造される発光素子チップ10においては、この成長基板は除去され、成長基板があった側と反対側に成長基板とは異なる支持部11が接続される。また、
図1の構造が1枚の大きなウェハ(成長基板)を用いて多数形成され、最後に個々の発光素子チップ10が分離されて得られる。
【0030】
図2〜5は、上記の発光素子チップ10を製造する工程における形態の断面図(左側)、その上面図(右側)である。ここで、この断面図は
図1(b)に対応した箇所を示している。また、その上面図は、隣接する発光素子チップ10の2チップ分を含む領域について示している。
【0031】
まず、
図2(a)に示されるように、成長基板20上に、リフトオフ層21、n型GaN層(n型半導体層:n型層)12e、発光層12a、p型GaN層(p型半導体層:p型層)12cを順次成膜する(エピタキシャル成長工程)。成長基板20としては、サファイア基板やAlNテンプレート基板(サファイアの表面にAlN層を有する基板)が特に好ましく用いられる。n型層12e、発光層12a、p型層12cの成膜は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD法)で行われ、n型層12eにはドナーとなる不純物が、p型層12cにはアクセプタとなる不純物がそれぞれドーピングされる。これらの層は、GaNに限らず、III族であるアルミニウム(Al)やインジウム(In)やホウ素(B)などを含む組成のものであってもよい。
【0032】
また、リフトオフ層21としては、例えばクロム(Cr)を用いることができる。リフトオフ層21の成膜は、スパッタリング法、真空蒸着法等により行うことができる。なお、リフトオフ層21の形成後n型層12eの成長前に、窒化処理、例えばアンモニア雰囲気で加熱することにより、リフトオフ層21を窒化させ、例えば窒化クロム層(金属窒化物層:CrN層)とすることができる。この場合、より良好な特性の半導体層12を得ることができると共に、後述するリフトオフ工程も容易となる。
【0033】
次に、
図2(b)に示されるように、成長基板20上において、個々の発光素子チップ10に対応する半導体層12を分離する分離溝を形成する(分離溝形成工程)。この工程は、半導体層12(p型層12c)上にマスクを形成した後にドライエッチングを行い、マスクで覆われた領域(素子領域)以外における半導体層12、リフトオフ層21を除去することにより行われる。すなわち、このドライエッチングによって形成された分離溝により、
図2(b)右側においては、平面視における矩形形状の領域が複数形成される。
【0034】
この際、ドライエッチングの条件、例えばガス種や圧力、エッチング速度などを調整することにより、ドライエッチングの異方性を調整することができる。これによって、半導体層12端部のテーパー角θを調整することができる。この際、このテーパー角θは、10°〜80°の間とすることが好ましい。なお、こうしたテーパー角の調整はウェットエッチングでは困難であり、かつウェットエッチングでは傾斜の向きが
図2(b)とは逆の逆テーパーとなりやすいため、この工程においてはドライエッチングを用いることが特に好ましい。
【0035】
次に、
図2(c)に示されるように、分離溝において露出したリフトオフ層21の側面を塞ぐように、充填剤23を分離溝に充填する(分離溝充填工程)。充填剤23は、後述するリフトオフ工程によってエッチングできる材料で構成され、例えばリフトオフ層21と同様にCrとすることができる。あるいは、有機溶剤等を用いて後で容易に除去することができる材料を用いることができる。充填剤23は、分離溝で露出したリフトオフ層21が少なくとも部分的に覆うように形成される。
【0036】
次に、
図2(d)に示されるように、絶縁体層16を形成する(絶縁体層形成工程)。絶縁体層16は、前記の通り、p型層12c上では、n側電極15と対向する位置に形成される。また、半導体層12の周囲も覆うように形成される。ただし、分離溝の中(半導体層12の間)において、部分的に絶縁体層開口16aが形成される。絶縁体層開口16a中においては、前記の充填剤23が露出する。絶縁体層16の成膜は、例えばCVD法等によって行うことができ、その後にマスクを形成、ドライエッチングすることによって
図2(d)の形態でパターニングすることができる。なお、絶縁体層16は半導体層12と比べて充分に薄い。また、p型層12c上におけるパターンは、後述するn側電極15(ボンディングパッド部15a及び補助電極15b)のパターンと対応する。
【0037】
次に、
図2(e)に示されるように、露出したp型層12cの表面を覆うように、p側電極(一方の電極)14を形成する(第1電極形成工程)。p側電極14の材料としては、p型層12cに対してオーミック接続をとれる材料として、例えばAg、Rh、Ru等の単体金属、もしくはこれらを含む合金や積層構造を用いることができる。また、Au−Ni合金やPt、Pd単体及びこれらの合金も用いることができる。ただし、p側電極14は光の反射層としても機能し、この観点においては、可視光の反射率が85%以上と高いAg及びその合金系、あるいは紫外線領域での反射率の高いRh、Ruが、用途に応じて特に好ましく用いられる。これらの材料をスパッタリング等によって形成した後に、リソグラフィ(マスク形成)、エッチングを行うことによって、
図2(e)に示されるようなパターニングを行うことができる。あるいは、マスク形成を行った後にこれらの材料を成膜し、後でマスクを除去することによっても同様のパターニングを行うことが可能である。
【0038】
次に、
図3(f)に示されるように、絶縁体層開口16a中に、厚いフォトレジストからなるレジスト層(マスク)100を形成する(開口部保護工程)。このレジスト層100の厚さは、後で形成される支持部11よりも厚くする。この工程は、リソグラフィにより行うことができる。なお、レジスト層100の代わりに、後述する支持部形成工程の際にマスクとして機能し、かつリフトオフ工程の前に容易に除去できる材料を用いることもできる。
【0039】
次に、
図3(g)に示されるように、支持部11をメッキによって形成する(支持部形成工程)。この際には、まず、レジスト層100が形成された以外の箇所に薄い下地層13を蒸着等によって形成した後に、これをシード層としてメッキ等によって支持部11を厚く形成する。支持部11は、導電性の材料をレジスト層100以外の領域、特に半導体層12における成長基板20と反対側の上部や分離溝を全て充填するように形成される。
【0040】
下地層13は、半導体層12、p側電極14との間における高い密着性をもち、かつメッキのシード層となりうる材料で構成される。また、下地層13は積層構造を具備していてもよいが、少なくともその半導体層12側は、後述するリフトオフ工程や保護膜形成工程におけるエッチングに耐えうる材料であることが好ましい。また、p側電極14と同様に、下地層13に高い反射率をもたせる場合には、シード層となる層と、高い反射率をもつ反射層との積層構造とすることもできる。この場合、半導体層12側となる反射層としては、例えばRh、Ru等の白金族を用いることができ、この上にシード層を形成することができる。シード層としては、支持部11の材料としてNiを用いる場合(Niメッキ)はPdを用い、Cuを用いる場合(Cuメッキ)はPt/Cuを用いることが好ましい。また、Niメッキの際には、他にもNi、Au、Ptなどが用いられ、Cuメッキの際にはNi、Au、Pt、Cu)等が用いられる。あるいは、これらの金属の組合せの合金や積層構造であってもよい。
【0041】
また、メッキにより形成される支持部11の材料としては、少なくともリフトオフ層21、充填剤23とは異なる材料であり、リフトオフ工程によってエッチングされない材料として、Ni、Cu、Au等を用いることができる。このメッキとしては、図示されるような充分な厚さをもった支持部11が形成できる方法であれば、乾式メッキ、湿式メッキのいずれも用いることができる。また、湿式メッキであれば、電解メッキ、無電解メッキのいずれも用いることができる。
【0042】
次に、
図3(h)に示されるように、レジスト層100を除去した後に、化学的処理によってリフトオフ層21及び充填剤23を除去する(リフトオフ工程)。選択ウェットエッチング処理によって、n型GaN層12e、p型層12c、支持部11等に悪影響を与えずに、この工程を行うことができる。この工程は、特開2009−54888号公報等に記載されたケミカルリフトオフとして知られる工程と同様である。充填剤23がリフトオフ層21と同じ材質で構成される場合には、充填剤23とリフトオフ層21の除去を同時に行うことができる。充填剤23がリフトオフ層21のエッチング液でエッチングされない場合には、初めに充填剤23をエッチングした後にリフトオフ層21のエッチングを行えばよい。レジスト層100が存在した箇所には下地層13、支持部11が形成されていないため、支持部11には、この箇所に対応した貫通孔が形成されている。リフトオフ工程においては、この貫通孔からエッチング液が供給されることによって充填剤23、リフトオフ層21が除去される。なお、図示された例では、絶縁体層開口16aは上面図において縦横に隣接する発光素子チップの間に形成したが、リフトオフ工程が行われる限りにおいて、絶縁体層開口16aの位置、形状は任意である。例えば、分離溝の交差点において、十字形状の絶縁体層開口16aを形成し、この中にレジスト層100を形成してもよい。また、絶縁体層開口16aは、リフトオフ工程が行える限りにおいて、全ての発光素子チップ間の隙間に形成する必要はない。
【0043】
この工程により、成長基板20と半導体層12とが分離され、半導体層12のn型層12eで構成された下面(他方の面)が露出する。この面は、n型層12eの上面側とは逆の(000−1)N極性面となる。以降は成長基板20は除去されるため、支持部11が半導体層12等の支持基板となる。以下では、便宜上、
図4(i)に示されるように、上下関係を上下関係を反転させて
図1と同様の向きとして説明する。また、以降では分離された成長基板20は不要である。
【0044】
この状態で、
図4(j)に示されるように、露出したn型層12eを所定の深さだけ一様にエッチングする(半導体層エッチング工程)。これにより、n型層12eの表面を、その周囲にある絶縁体層16や支持部11よりも低くする。このエッチングは、例えば塩素(Cl
2)ガスと三塩化ホウ素(BCl
3)ガスを用いたドライエッチングで行うことができる。このエッチングは、後述する異方性エッチングとは異なり、等方性エッチングとすることが好ましい。この場合、エッチング後のn型層12eの表面は、リフトオフ工程直後と変わらず平坦であり、(000−1)N極性面である点は変わらない。
【0045】
次に、
図4(k)に示されるように、n型層12e表面に対して異方性エッチングを行うことにより、この表面に凹凸を形成する(凹凸形成工程)。ここで、異方性ウェットエッチングとは、特定の面方位に対して選択的にエッチングが進行するウェットエッチングである。このため、異方性エッチングされる前のマクロな表面がこの特定の面方位と異なる場合には、半導体層エッチング工程後のようにエッチング後の表面は平坦にならず、この特定の面で構成されたミクロな表面をもった凹凸がエッチング後に多数形成される。この特定の面を、例えば、半極性の{10−1―1}面群とすることができる。
【0046】
この異方性ウェットエッチングには、アルカリ性のエッチング液、例えば水酸化カリウム(KOH)溶液や、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液、あるいは両者の混合アルカリ溶液を用いることができる。溶媒としては水(H2O)やグリコールを用いることができる。この際、OH−イオンがGaNやAlGaNのIII族原子(Ga、Al)を酸化することでエッチングが起こる。特にGaNの場合、Ga極性面側ではGa原子の下に3つの窒素原子が存在するため、OH−イオンはGaを酸化できない。一方、窒素極性面側ではGa原子の下には1つの窒素原子しか存在しないので、OH−はGa原子を酸化することができる。このような、アルカリ性のエッチング液を用いて加温など適切な条件下で行う異方性ウェットエッチング処理により、選択的に(000−1)N極性面がエッチングされる。エッチング後の表面には六方晶を反映した六角形の底面を有する六角錐状の凸部が多く形成される。なお、上記の理由から、このような異方性エッチングは、同じ(000−1)面でも、窒素極性面に起こり、Ga極性面はほとんどエッチングされない。このエッチングにおいては、Ga極性面では、転位が存在する場合に六角錘状のピットとして観察される。以上の点については、例えば国際出願番号PCT/JP2010/007611の明細書に記載されている。
【0047】
なお、この凹凸が形成されるため、n型層12eが露出した表面積は平坦な窒素極性面(異方性エッチング前)に比べ、凹凸の大きさを問わず約2倍となる。それにより、平面方向の電極寸法が同じであっても、n型電極15との実効接触面積が増えるので、接触抵抗値も低減される。凹凸の大きさは、エッチング液の濃度や温度、時間の条件によって制御できるため、上記の接触抵抗値の低減だけでなく、スネルの法則を用いた光取り出し効率の向上に適した大きさとすることが好ましい。例えば、六角錐で構成される凸部の高さを0.3〜4.5μmの程度とすることが好ましい。
【0048】
次に、
図4(l)に示されるように、凹凸が形成された状態のn型層12eの表面に、n側電極15を形成する(第2電極形成工程)。n側電極15の材料としては、例えばTi/Ni/Au(Ti、Ni、Auの順で積層した構造)を用いることができる。あるいは、この半極性面に対して有効であると本発明者等が
PCT出願(国際出願番号:PCT/JP2010/007611)で報告した構成を用いることができる。また、前記の通り、n側電極15は、ボンディングパッド部15aと、格子状にパターニングされた補助電極15bとを具備する。n側電極15の成膜方法、パターニング方法は、p側電極14と同様である。n型層12eの表面は前記の通りの半極性面で構成され、n側電極15とn型層12eとの間のオーミック性は良好であるため、コンタクト抵抗を小さくすることができる。また、前記の通り、補助電極15bによって発光の面内均一性を高めることができる。
【0049】
その後、
図5(m)に示されるように、保護膜17を、n側電極15がある箇所以外の上面全面に形成する(保護膜形成工程)。保護膜17としては、絶縁体層16と同様にSiO
2を用いることができる。その成膜方法も同様である。そのパターニングにおいては、
図5(m)の上面全面に保護膜17を成膜した後で、n側電極15がある箇所のみをエッチングすればよい。あるいは、第2電極形成工程の前に保護膜形成工程を行い、n側電極15が形成されるべき領域の保護膜17を予め除去してからn側電極15を形成してもよい。その際、
図5(m)の断面図(左)におけるn側電極15の最大高さは、その周囲の支持部11等の最大高さよりも0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1.0μm以上低くすることが好ましい。これにより、アッセンブリ時に発光面(n側電極15や、保護膜17で覆われたn型層12e表面)にコレットや治具等が接触することを抑制することができる。この表面高さは、半導体層エッチング工程と凹凸形成工程におけるエッチング時間の調整によって適宜設定することができる。
【0050】
最後に、
図5(n)に示されるように、分離溝中における支持部11等を切断し、個々の発光素子チップ10を分断する(チップ分離工程)。これにより、一枚のウェハから多数の発光素子チップ10を得ることができる。
【0051】
上記の製造方法によって、
図1の構成の発光素子チップ10を複数製造することができる。
【0052】
ここで、特にGaN等においては、厚いp型層12cを得ることは一般には困難であり、かつ正孔の移動度は電子の移動度よりも低いため、一般に、p型層12cの抵抗率はn型層12eの抵抗率よりも高い。このため、発光素子チップの順方向抵抗を減少させるためには、p側電極14の面積を大きくすることが好ましい。一方、n側電極15によって光は遮られるため、発光が取り出される面側に設けられた電極の面積は小さくすることが好ましい。このため、
図1の構成のように、発光を取り出す面側に小面積のn側電極15を形成することが、順方向抵抗を小さく、かつ発光効率を高くするためには好ましい。
【0053】
また、上記の製造方法によれば、支持部外周部11aは発光面(n側電極15や、保護膜17で覆われたn型層12e表面)よりも高くなるため、発光面が保護されることは前記の通りである。また、前記の通り、上記の凹凸や電極の構成によって、電極抵抗を低減させ、かつ光の取り出し効率を高くすることができきる。この保護の効果は、こうした凹凸表面上に電極が形成された構成の場合に特に顕著である。
【0054】
更に、突出した支持部外周部11aは、側方に発せられた光を上方に反射させる反射鏡としての機能ももつ。このため、この発光素子チップの発光効率を特に高めることができる。この際、支持部外周部11aのテーパー角度は半導体層12の側壁のテーパー角度と等しい。このテーパー角度θは、分離溝形成工程における半導体層12のドライエッチング条件によって適宜設定することが可能である。
【0055】
なお、上記の製造方法においては、レジスト層100を用いて支持部11に貫通孔が形成される構成とし、リフトオフ工程においてこの貫通孔を利用してリフトオフ層21等の除去が行える形態とした。この貫通孔は、リフトオフ層21に対して垂直な方向に形成され、これによってエッチング液が効率的にリフトオフ層21まで供給され、高効率でリフトオフ層21のエッチングを行うことができる。このため、こうした形態の貫通孔をリフトオフ工程の前において支持部11に設けることは特に好ましい。また、この貫通孔の形成により支持部11と半導体層12との間の応力を緩和して半導体層12にクラック等が発生することも抑制できる。上記の例では、貫通孔の位置は絶縁体層開口16aとレジスト層100の位置で決定されるが、貫通孔を通してリフトオフ層21等の除去が行える限りにおいて、その形成方法や位置は任意である。
【0056】
なお、
図2〜
図5に示す製造方法においては、n型層とp型層からなる半導体層を成長用基板上に順次成長してから、この成長用基板を除去した。こうした工程を行う理由は、p型層とn型層の積層構造が形成された後に、p側電極とn側電極をそれぞれこの半導体層の異なる面側から取り出すためである。この半導体装置がこのpn接合を利用した発光ダイオードあるいはレーザーダイオードである場合には、こうした構成により電極抵抗が低くなり、順方向抵抗が低く高い発光効率を得ることができる。こうした構成は、発光ダイオードやレーザーダイオードに限定されず、この半導体層の主面と垂直な方向に電流が流されて動作する半導体装置全般にとって有効である。また、n型層とp型層との間に他の層が形成されている場合でも同様である。
【0057】
また、上記のリフトオフ工程においては、成長基板20を除去するためにケミカルリフトオフを用いていた。周知のように、成長基板20を除去するためには、この他にも、レーザー光をリフトオフ層21に吸収させることによってリフトオフ層21を除去するレーザーリフトオフという方法も用いることができる。しかし、レーザーリフトオフを用いる場合においては、半導体層12周囲の反射層となる層(下地層13、支持部外周部11a)で、このレーザー光も反射されるため、ウェハにおける全ての箇所におけるリフトオフ層を一様に除去することは困難である。このため、こうした反射層が予め形成された状態においては、上記のケミカルリフトオフを用いることがより好ましい。特に、半導体層12端部にテーパー角を有する場合には、レーザーリフトオフを用いた一様なリフトオフはより困難である。
【0058】
また、上記の例では、III族窒化物半導体としてGaNを用いた場合について記載したが、極性に関わる結晶構造、特に(000−1)N面の構成と半極性面の形成については、他のIII窒化物半導体、例えばAlGaN、AlInGaN等についても同様である。従って、上記の構造や製造方法はこれらに対しても同様に有効であることは明らかである。
【0059】
なお、上記の実施形態においては、成長基板20として、サファイア基板やAlNテンプレート基板を用いて説明したが、成長基板20としては、それらの基板以外にも、リフトオフ層21等を介して良質のGaNやAlN、AlGaN、BAlInGaNなどのIII族窒化物半導体(n型層11a、発光層11b、p型層11c)を成長させることができるものであれば、他の材料、例えばSiCやSi基板等を用いることも可能である。
【0060】
なお、上記の例では、半導体層12を、いずれもGaN系材料からなるn型層12e、発光層12a、p型層12cで構成されるものとして説明した。しかしながら、この他の場合であっても、同様の効果を奏することは明らかである。例えば、単純なpn接合を利用したダイオードや、各種半導体デバイスも同様に製造できることも明らかである。この際、上記の例では成長基板上にn型層、p型層を順次形成したが、n型層、p型層の順序が逆転していても同様である。また、n型層やp型層はGaNではなく、他のIII族窒化物半導体、例えばAlaInbGa1−a−bN(0≦a≦1、0≦b≦1、a+b≦1)としてもよい。
【0061】
(実施例)
以下に、実際に上記の構成を具備する発光素子チップを製造した結果について説明する。まず、サファイア基板(成長基板20)上に、リフトオフ層21(Cr及びこれが窒化されたCrN、厚さ18nm)を形成後、n型層12e(n型GaN、厚さ7μm)、InGaNのMQW発光層12a(厚さ0.1μm)、p型層12c(p型GaN、厚さ0.2μm)からなる半導体層12を形成した(エピタキシャル成長工程)。そして、ドライエッチング法により半導体層12の一部を除去し、p型層12cの上面が1辺1000μmの四角形からなる個々の素子領域を分離する分離溝を形成した(分離溝形成工程)。ここで、半導体層12端部のテーパー角度θは約40°とした。素子間のピッチは1250μmとした。分離溝の形成は、サファイア基板を0.2μmエッチングするまで行い、サファイア基板が露出したことを確認した。露出したサファイア基板表面に、露出したリフトオフ層21及びn型層12eの一部の側面を覆うことのできる厚さのCr層(厚さ400nm)を、レジストパターンを用いたリフトオフにより形成した(分離溝充填工程)。
【0062】
この構成の表面全面に絶縁体層16(SiO
2、厚さ350nm)を形成し、Cr層上の一部(絶縁体層開口16a)および素子領域のp型層12c上の一部をバッファードフッ酸(BHF)により除去した(絶縁体層形成工程)。絶縁体層開口16aは、素子領域の四辺に位置する分離溝の中央部の、幅70μm、長さ900μmの部分とした。p型層12c上の絶縁体層16は、n側電極15における補助電極15bの位置に対向する位置を残し、p型層12cの面積80%を露出させた。その後、露出したp型層12c上にp側電極14(Ag、厚さ0.2μm)を形成した(第1電極形成工程)。このとき、p側電極14とp型層12cの外周に位置する保護層17との間には10μmの隙間を設けた。
【0063】
更に、絶縁体層開口16a中で露出した充填剤23(Cr層)をフォトレジストを用いてカバーし、p側電極14と絶縁体層16上、及びこれらの隙間のp型層12c上に、下地層13(Ni(100nm)/Au(100nm)/Cu(0.2μm))を形成した。その後、フォトレジストを除去することにより、
図3(g)における下地層13を得た。前記の隙間にある下地層13は、Agからなるp側電極14の拡散を防ぐ役割も有している。Ag以外の拡散しにくい金属を使用する場合はこの隙間は必ずしも必要ではない。
【0064】
その後、露出したCr層上の一部に、幅70μm、長さ900μm、厚さ100μmの厚膜レジスト(レジスト層100)を形成した(開口部保護工程)。
【0065】
その後、硫酸銅系の電解液を用いて下地層13をシードとして、半導体層表面の接続層表面からの厚さ150μmのCuからなる支持部11を電気メッキにより形成した(支持部形成工程)。なお、支持部11はサファイア基板の全域にわたり一体的に形成されている。
【0066】
その後、アセトンを用いて厚膜レジストを溶解した。これにより、支持部11表面からサファイア基板上の充填剤23(Cr層)まで貫通する穴または溝が形成された。その後、CrならびにCrNが選択的にエッチングされるCrエッチング液に浸漬し、この貫通穴および溝を経由してエッチング液をCr層およびリフトオフ層であるCrN層21に供給してリフトオフ層21を溶解することにより、サファイア基板20を剥離した(リフトオフ工程)。
【0067】
その後、リフトオフされた面のn型層12eを一様にドライエッチングした(半導体層エッチング工程)。このエッチングにより、n型層12eは厚さ7μmから厚さ5μmまでエッチングされた。さらに、KOH水溶液(6mol/L)に60℃で30分浸漬することにより、凹凸の底と頂点との間の高さが0.4〜1.5μmの様々なサイズの六角錘形状を有する凹凸を表面に形成した(凹凸形成工程)。この際、n型層12eの最頂点からの厚さは3.5μmとされた。その後、保護膜17(SiO
2)を0.2μm成膜し(保護膜形成工程)、n側電極15が形成されるべき箇所における保護膜17をBHFでエッチングして除去し、n型層12eの表面を露出させた。六角錘形状の表面を有するこのn型層12eの表面に、前記の絶縁体層16のパターンに対応した補助電極15bとボンディングパッド部15aをもったn側電極15(Ti/Ni/Au、厚さ1.5μm)を形成した(第2電極形成工程)。完成後の発光素子チップの外周部付近の断面を斜めからみたSEM写真を
図6に示す。
【0068】
最終的に、n型層12eの表面(六角錘の頂点)と、凹形状となったCu製支持部11(正確には保護膜表面)の頂部11b表面との高さの差は約2μm(1.8μm以上)となった。
【0069】
平コレットを用いて本実施例の発光素子チップ10を1万個用いてアセンブリ試験を行った。コレットと発光素子チップ10との接触面は支持部外周部11aであり、コレットがn側電極15およびn型層12eの表面に接触することがないため、上部電極15およびn型層12eの表面に対する傷や打痕が発生することはなかった。
【0070】
(比較例)
ここでは、比較例として、実施例のような支持部外周部11aをもたない構造の発光素子チップを製造した。この製造は、開口部保護工程における半導体層間の分離溝をすべてフォトレジストで埋め、他の工程は同様に行うことによって製造された。
図7は、この製造方法における開口部保護工程(a)、支持部形成工程(b)、リフトオフ工程(c)における形態を実施例と同様に示す図である。また、
図8には、その凹凸形成工程(d)、保護膜形成工程(e)における形態を同様に示す。開口部保護工程よりも前の工程については、実施例と同様であり、リフトオフ工程よりも後の工程で
図8に示されていない工程における形状は、
図7(d)(e)に示された形状に応じた形状となっている。
【0071】
すなわち、比較例においては、半導体層12の周囲に支持部11(支持部外周部11a)が形成されない
図9に示された断面構造の発光素子チップが得られる。この構造の発光素子チップにおいては、外周部で上側に突出した支持部11(支持部外周部11a)が形成されない以外の点については、その構造(半導体層12等)は実施例と同様であり、各製造工程の条件(例えば分離溝形成工程における半導体層12のドライエッチング条件等)も同様である。なお、
図9においては、絶縁体層16及び保護膜17が半導体層12よりも上側に突出しているように便宜上記載しているが、実際にはこの突出した部分は薄膜状態であり、これを機械的に支持する構造も存在しない。このため、
図9に示された発光面周辺の絶縁体層16及び保護膜17の状態が製造工程時あるいはアセンブリ時において維持されることは実際にはありえない。すなわち、この突出した絶縁体層16及び保護膜17が上記の支持部外周部11aのような発光面の保護機能をもつことはない。
【0072】
平コレットを用いてこの比較例の発光素子チップを1万個用いてアセンブリ試験を行った。その結果、1万個中151個にn側電極の傷または欠けが観察された。また、1万個中58個において、半導体層へのクラックが観察された。以上の結果より、本発明によると、アセンブリ時にn側電極15(特に補助電極15b)における傷、打痕が発生せず、半導体層に衝撃も加えることなく、安全にアセンブリができることがわかった。
【0073】
(出力特性例)
実施例に係る発光素子チップをアセンブリした1000個の発光素子を、定電流電源を用いて、350mAの電流を流し、発光させた。なお、発光素子チップの周囲には反射カップ・樹脂レンズ等、発光素子チップ自身以外で発光効率に影響を与える構造は形成していない。実施例と比較例の素子における室温での軸上発光出力の発光強度のヒストグラムの実測結果を
図10に示す。実施例の発光素子では80%以上の発光素子が380mW〜410mWの発光出力を示している。これに対して、比較例の発光素子では、70%の発光素子が350mW〜380mWの発光出力を示していた。この結果は、従来の平坦な支持部が用いられた比較例の発光素子チップでは、
図9に示されるように、発光層から横方向へ放出される光がそのまま横方向へと漏れ、光を十分効果的に上側に取り出すことができなかったことを示している。一方、実施例の発光素子チップでは、発光層12aから側面に達した光が、支持部外周部11aで反射されることによって光を上側に効果的に取り出すことができる。すなわち、実施例の発光素子チップは、発光素子チップ自身で、軸上発光出力を向上させることがわかった。
【0074】
(テーパー角の効果)
前記の通り、半導体層あるいは支持部外周部のテーパー角θは、分離溝形成工程におけるドライエッチング条件によって制御することができる。また、このテーパー角θは、光の取り出し効率に影響を与える。
図11は、
図1(b)の鉛直方向における発光出力(軸上出力向上比率:θ=0°の場合を1.0としている)とθとの関係を実測した結果である。この結果より、θ>0とすることによって発光出力が増大し、θ=55°程度で最大値をとる。なお、θが90°に近づいた場合には、発光面積が同等である場合には発光チップ全体の面積が大きくなるため、好ましくない。
【0075】
(蛍光体量の低減)
上記の構成の発光素子チップあるいは発光素子は、半導体層12の材料構成で決まる単色の光を発する。これに対して、この発光素子チップの発光面上に蛍光体層を形成することにより、この蛍光体が発する光と半導体層が発する光とが混合された光を得ることができる。疑似白色を得るために、青色を発する発光素子に、この蛍光体として黄色を発するYAGを使用した場合について以下に説明する。
【0076】
この蛍光体層は、塗布後焼成することによって発光面上に形成されるが、半導体層の発光が取り出される箇所の全てをこの蛍光体層で覆うことが必要となる。
図12は、実施例の発光素子チップ(a)と比較例の発光素子チップ(b)において、この蛍光体層200を形成した後の上面写真である。実施例(a)では、上面における蛍光体層200の厚さは70μm程度である。また、側面から光が発せられることはないため、側面側に蛍光体層200を形成する必要はない。また、
図1から明らかなように、実施例では発光面の外周部が高くなっているため、液状の蛍光体材料を塗布する際に、外側に蛍光体材料が流れ出ることが表面張力によって抑制された。
【0077】
一方、比較例では、例えば特開2008−135539号公報に記載されるように、側面にも蛍光体層200を形成することが必要となる。そのため、使用する蛍光体材料の量が実施例と比べて多くなり、使用量は実施例の約3倍となった。更に、均一な発光を得るためには、蛍光体層200の厚さは全ての箇所で均一とすることが必要である。このように上面と側面に蛍光体層を形成する場合には、全ての箇所の厚さを均一とすることは困難である。一方、実施例においては、発光面周囲が堤防のように高くされた構造であり、かつこの内部にのみ蛍光体層200を形成すればよいため、この内部で蛍光体層200の厚さを均一とすることは容易である。よって、実施例の発光素子チップは、高価な蛍光体の使用量を抑え、かつ発光色の調整を容易にすることができる。
【0078】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。