(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記p−型のドーパントが、金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム、炭素塩化物(CCl4)又は炭素臭化物(CBr4)のうち少なくとも1種を含み、前記n−型のドーパントが、H2S、イオウ、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、H2Se、Se等のうち少なくとも1種を含む、請求項5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
薄膜堆積プロセスを用いて形成される太陽電池デバイスは、多くの異なる方法で一体化可能な異なる組成物からなる非常に多くの材料の層又は膜を一般的に備える。かかるデバイスで用いられるほとんどの膜には、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、砒化物、インジウム、炭素、ホウ素、亜リン酸、窒素、酸素、水素等を含み得る半導体元素が組み込まれる。異なる堆積膜の特徴として、結晶化度、ドーパントの種類、ドーパント濃度、バンドギャップ、膜屈折率、膜吸光係数、膜透明度、膜吸収、及び電気伝導度が挙げられる。
【0013】
光起電プロセス中の電荷生成は、1つ又は複数の光吸収層により一般的にもたらされる。一般的に、電子正孔対の生成プロセスは、p−i−n型薄膜太陽電池デバイスの反対側にドープされたp−n領域を、間隔を置いて配置するのに用いられる真性層内で主として生ずる。慣用句「真性層」は、これを太陽電池中に存在する様々なドープされた層と区別するのに一般的に用いられる。真性層の膜特性は異なってもよく、かかる特性は真性層の光吸収上の特徴及び電子正孔対生成プロセスに影響を及ぼす可能性がある。本発明の態様は、広範囲の波長において光吸収に役立つような、デバイス構造及び所望の光学特性を有するGaAsに基づく光吸収層の形成方法を一般的に提供する。太陽電池デバイス内で光起電力接合部を形成するアモルファス及び/又は微結晶性シリコン層と共に、GaAsに基づく光吸収層を利用することにより、高い光吸収効率及び変換効率が取得可能となる。
【0014】
図1は、発光源又は日射101方向に向いた単接合太陽電池デバイス150の1つの実施形態の断面図である。太陽電池デバイス150は、ガラス基板、ポリマー基板、又はその他の適する基板等の基板100、を備え、いくつかの薄膜がその上部に形成されている。太陽電池デバイス150は、基板100上部に形成される第1の透明な導電性酸化物(TCO)層102、前記第1のTCO層102上部に形成されたp−i−n接合114、前記p−i−n接合114上部に形成された第2のTCO層110、及び前記第2のTCO層110上部に形成された金属背部層112をさらに備える。
【0015】
光トラッピングを増強することにより光吸収を改善するために、基板及び/又は基板上部に形成された薄膜の1つ若しくは複数は、湿式加工技術、プラズマ処理技術、イオン爆撃処理技術、及び/又は機械処理技術を使用して任意選択的にテクスチャー処理され得る。1つの実施形態では、第1のTCO層102内のインターフェース表面がテクスチャー処理され(図示せず)、その結果、前記第1のTCO層102上に堆積される後続する薄膜は、その下部面のテクスチャー処理後のトポグラフィーに一般的に追随する。
【0016】
1つの実施形態では、第1のTCO層102及び第2のTCO層110は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム亜鉛、酸化アルミニウムスズ、酸化インジウムスズ、スズ酸カドミウム、これらを組み合わせたもの、又はその他の適する材料をそれぞれ含み得る。TCO材料は、追加のドーパント及び成分も含み得るものと理解される。例えば、酸化亜鉛は、アルミニウム、ガリウム、ホウ素等のドーパント、及びその他の適するドーパントをさらに含み得る。酸化亜鉛は、5原子百分率(%)以下のドーパントを含むが、例えば、2.5原子百分率(%)以下のアルミニウムを含む。特定の事例では、基板100は、すでに提供された第1のTCO層102と共に、ガラス製造業者により提供され得る。
【0017】
第1のp−i−n接合114は、p−型の層104、前記p−型の層104上部に形成された真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層106、及び前記真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層106上部に形成されたn−型の層108を備える。1つの実施形態では、p−型の層104は、p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104となるように構成され、またn−型の層108は、n−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108となるように構成され、両者は1つ又は複数の砒化ガリウム(GaAs)に基づく層、又はドープされた砒化ガリウム(GaAs)に基づく層から形成される。p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104とn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108との間に配置される、真性型砒化ガリウム(GaAs)層106は、従来型の薄膜型太陽電池デバイスと比較して、幅広い光波長範囲においてより多くの光吸収量を実現し、またより大きなキャリア移動度を有する。太陽電池デバイス150内のp−型、真性型、及びn−型の砒化ガリウム(GaAs)層104、106、108を形成する方法及びプロセスを、
図2〜5を参照しながら以下にさらに記載する。p−型、真性型、及びn−型の砒化ガリウム(GaAs)層104、106、108の取得及び形成は、以下にさらに記載する溶液に基づくGaAs前駆体によるのが最良であり得ると考えられているが、p−型、真性型、及びn−型の砒化ガリウム(GaAs)層104、106、108は、任意のその他の適する方式によっても取得可能であることに留意されたい。特定の実施形態では、p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104は、約60Å〜約300Åの厚さを有する。特定の実施形態では、真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層106は、約1,500Å〜約3,500Åの厚さ間を有する。特定の実施形態では、n−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108は、約200Å〜約500Åの厚さを有する。
【0018】
金属背部層112は、Al、Ag、Ti、Cr、Au、Cu、Pt、これらの合金、又はこれらを組み合わせたものからなる群より選択される材料を含み得るが、ただし、これらに限定されない。レーザスクライビングプロセス等のその他のプロセスは、太陽電池デバイス150を形成するのに実施可能である。太陽電池デバイスを完全なものとするために、その他の膜、材料、基板、及び/又は包装を、金属背部層112上部に設けることができる。形成された太陽電池は、モジュールが形成されるように相互に連結可能であり、そして同モジュールは、太陽電池アレイが形成されるように連結可能である。
【0019】
任意選択的に、1つの実施形態では、太陽電池デバイス150は、複数の接合型太陽電池デバイスを備える。この構成では、
図2を参照しながら以下でさらに議論するように、1つ又は複数の追加のp−i−n接合が、第1のp−i−n接合114と第2のTCO層110との間、又は第1のTCO層102と第1のp−i−n接合114との間に形成可能性である。1つ又は複数の追加のp−i−n接合は、第1のp−i−n接合114に見出される層と類似した又はこれと異なる組成を有する層から形成され得る。例えば、1つ又は複数の追加の接合は、真性型砒化ガリウム(GaAs)層106とは異なるバンドギャップを有する材料から形成される真性層を備え得る。
【0020】
日射101は、p−i−n接合114の真性型砒化ガリウム(GaAs)層106により主に吸収され、そして電子正孔対に変換される。真性型砒化ガリウム(GaAs)層106全体に広がる、p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104とn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108との間に生み出される電場は、電子がn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108に向かって流れ、そして正孔がp−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104に向かって流れて電流が生成する原因となる。したがって、真性型砒化ガリウム(GaAs)層106は、より広い 範囲の日射スペクトルを捕捉することができるので、形成された太陽電池100は、従来型の太陽電池デバイスよりも効率的となる。
【0021】
別の実施形態では、p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104中に存在するp−型ドーパントは、亜鉛含有材料、マグネシウム含有材料、炭素含有材料等からなる群より選択され得る。亜鉛含有材料の適する例として、金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、又はその他の適する亜鉛含有材料が挙げられる。マグネシウム含有材料の適する例として、金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム、又はその他の適するマグネシウム含有材料が挙げられる。炭素含有材料の適する例として、炭素塩化物(CCl
4)、炭素臭化物(CBr
4)等が挙げられる。n−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108中に存在するn−型ドーパントは、イオウ含有材料、シリコン含有材料、セレニウム含有材料等からなる群より選択され得る。イオウ含有材料の適する例として、H
2S、イオウ等が挙げられる。シリコン含有材料の適する例として、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)等が挙げられる。セレニウム含有材料の適する例として、H
2Se、Se等が挙げられる。1つの例では、p−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層104を形成するのに用いられるp−型ドーパントは、亜鉛がドープされた砒化ガリウム(GaAs)層が形成されるように、亜鉛含有材料である。n−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108を形成するのに用いられるn−型ドーパントは、シリコンがドープされた砒化ガリウム(GaAs)層が形成されるようにシリコン含有材料である。砒化ガリウム(GaAs)に基づく層にドーパントをドーピングせしめる方法に関する詳細については、
図5〜6を参照しながら、以下にさらに記載する。
【0022】
あるいは、いくつかの実施形態では、第1のp−i−n接合114内に形成されるp−型の層104及びn−型の層108は、シリコンに基づく層、例えばこれにドープされたp−型ドーパント又はn−型ドーパントを有するシリコン含有層であり得る。真性型砒化ガリウム(GaAs)層106は、p−型シリコン含有層104上部に形成され、及びn−型シリコン含有層108は、真性型砒化ガリウム(GaAs)層106上部に形成される。p−型シリコン層104及びn−型シリコン層108は、1つ又は複数のp−型又はn−型微結晶性層、又は1つ又は複数のp−型又はn−型アモルファスシリコン層から形成され得る。p−型シリコン層104とn−型シリコン層108との間に配置された真性型砒化ガリウム(GaAs)層106は、その他の従来型のシリコンに基づく薄膜型太陽電池デバイスよりも多くの光吸収量を広範囲の光波長において提供し、またより多くのキャリア移動度を有する。真性型砒化ガリウム(GaAs)層106の取得及び形成は、溶液に基づくGaAs前駆体によるのが最良であり得ると考えられており、それは
図3〜6を参照しながら以下にさらに記載されるが、真性型砒化ガリウム(GaAs)層106は、当技術分野において利用可能な任意の適する方式によっても得られる可能性があることに留意されたい。特定の実施形態では、p−型シリコン含有層104はアモルファスシリコン層であり、約60Å〜約300Åの厚さに形成され得る。特定の実施形態では、n−型シリコン含有層108は、約1,500Å〜約3,500Åの厚さに形成され得る。特定の実施形態では、n−型シリコン含有層108は、n−型 アモルファスシリコン層であり、約100Å〜約400Åの厚さに形成され得る。
【0023】
p−型の層104及びn−型の層108がシリコン含有層である、この具体的な代表的実施形態では、p−型シリコン含有層104内に形成されるp−型ドーパントは、一般的にIII族元素、例えばホウ素又はアルミニウム等である。n−型シリコン含有層108内に形成されるn−型ドーパントは、一般的にV族元素、例えばリン、砒素、又はアンチモンである。ほとんどの実施形態では、ホウ素がp−型ドーパントとして、またリンがn−型ドーパントとして用いられる。これらのドーパントは、ホウ素含有化合物又はリン含有化合物を堆積プロセスにおいて反応混合物中に含めることにより、上記p−型及びn−型の層104、108に添加可能である。適するホウ素及びリン化合物は、置換された及び置換されていない低分子量ボラン及びホスフィンオリゴマーを一般的に含む。いくつかの適するホウ素化合物として、トリメチルホウ素(B(CH
3)
3又はTMB)、ジボラン(B
2H
6)、ボラン(BH
3)、三フッ化ホウ素(BF
3)、及びトリエチルホウ素(B(C
2H
5)
3又はTEB)が挙げられる。ホスフィンは、最も一般的なリン化合物である。ドーパントは、キャリアガス、例えば水素、ヘリウム、アルゴン、及びその他の適する気体と共に一般的に提供される。
【0024】
1つの実施形態では、p−型シリコン含有層104は、シランガスに対する水素ガスの容積比が約20:1以下の混合ガスを提供することにより堆積可能である。シランガスは、約1sccm/L〜約10sccm/Lの流量で提供され得る。水素ガスは、約5sccm/L〜60sccm/Lの流量で提供され得る。トリメチルホウ素は、約0.005sccm/L〜約0.05sccm/Lの流量で提供され得る。トリメチルホウ素が、キャリアガス中に0.5%のモル濃度又は容積濃度で提供される場合には、次にドーパント/キャリアガス混合物は、約1sccm/L〜約10sccm/Lの流量で提供され得る。チャンバ圧力が約0.1Torr〜20Torr、例えば約1Torr〜約4Torr等のときに、約15mW/cm
2〜約200mW/cm
2のRF電力を負荷すると、約100Å/分以上でp−型アモルファスシリコン層が堆積する。
【0025】
n−型シリコン含有層108がn−型アモルファスシリコン層として形成される実施形態では、n−型シリコン含有層108は、シランガスに対する水素ガスの容積比が約20:1以下、例えば約5:5:1又は7.8:1の混合ガスを提供することにより堆積可能である。シランガスは、約0.1sccm/L〜約10sccm/L、例えば約1sccm/L〜約10sccm/L、約0.1sccm/L〜5sccm/L、又は約0.5sccm/L〜約3sccm/L、例えば約1.42sccm/L又は5.5sccm/Lの流量で提供され得る。水素ガスは、約1sccm/L〜約40sccm/L、例えば約4sccm/L〜約40sccm/L、又は約1sccm/L〜約10sccm/L、例えば、約6.42sccm/L又は27sccm/Lの流量で提供され得る。ホスフィンは、容積として約0.0005sccm/L〜約0.075sccm/L、例えば約0.0005sccm/L〜約0.0015sccm/L、又は約0.015sccm/L〜約0.03sccm/L、例えば約0.0095sccm/L又は0.023sccm/Lの流量で提供され得る。ホスフィンがキャリアガス中に0.5%のモル濃度又は容積濃度で提供される場合には、次にドーパント/キャリアガス混合物は、容積として約0.1sccm/L〜約15sccm/L、例えば約0.1sccm/L〜約3sccm/L、約2sccm/L〜約15sccm/L、又は約3sccm/L〜約6sccm/L、例えば約1.9sccm/L、又は約4.71sccm/Lの流量で提供され得る。チャンバ圧力が約0.1Torr〜約20Torr、例えば約0.5Torr〜約4Torr、例えば約1.5Torrのときに、約25mW/cm
2〜約250mW/cm
2、例えば約60mW/cm
2又は約80mW/cm
2のRF電力を負荷すると、約100Å/分以上、例えば約200Å/分以上、例えば約300Å/分、又は約600Å/分の速度で、n−型アモルファスシリコン層が堆積する。
【0026】
図2は、光又は日射101の方向に向いたタンデム接合太陽電池200に関する実施形態の概略図である。太陽電池200は、
図1に示すような構造と類似したデバイス構造を備え、基板100上部に形成された第1の透明な導電性酸化物(TCO)層104、前記第1のTCO層102上部に形成された第1のp−i−n接合114を含む。第1のTCO層102上部に形成された第1のp−i−n接合114の他、第2のp−i−n接合208が、第1のp−i−n接合114上部に形成される。第2のp−i−n接合208は、第2のp−型の層202、第2の真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層204、及び第2のn−型の層206を含む。1つの実施形態では、第2のp−型の層202は、第2型の砒化ガリウム(GaAs)に基づく層202であり得、砒化ガリウム(GaAs)に基づく層内にドープされた所望のp−型ドーパントを有する第1のp−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層102と類似している。第2の真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層204は、ドーパントを含まない砒化ガリウム(GaAs)層として形成される第1の真性型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層106と類似している。第2のn−型の層206は、第2のn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層であり得、同層中にドープされた所望のn−型ドーパントを含む第1のn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層108と類似する。別の実施形態では、上記で議論したように、第2のp−型の層202は、同層内に配置されたp−型ドーパントを含むシリコンに基づく層であり得、一方、第2のn−型の層206は、同層内にドープされたn−型ドーパントを含むn−型シリコン層であり得る。
【0027】
1つの例では、第2のp−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層202内にドープするように選択されたp−型ドーパントは、亜鉛含有材料であり、また第2のn−型砒化ガリウム(GaAs)に基づく層206内にドープするように選択されたn−型ドーパントは、シリコン含有材料である。第1のp−i−n接合114上に第2のp−i−n接合208が形成された後、次に第2のTCO層110及び金属背部層112が、上記方式と類似して第2のp−i−n接合208上部に形成されて、
図1のような太陽電池デバイス150が形成される。
【0028】
図1及び2に示す実施形態は、いずれもp−i−n接合の構成であるが、接合は、必要に応じて逆順で形成されてもよく、例えば真性型GaAs層、及びp−型がドープされたGaAs層、又はp−型がドープされたシリコン含有層の前に形成された、n−型がドープされたGaAs層、又はn−型がドープされたシリコン含有層を有するn−i−p接合であってもよいことに留意されたい。さらに、構成によっては、真性型GaAs層を取り除いて、p−n接合(例えば、n−型がドープされたGaAs層に隣接して形成されるp−型がドープされたGaAs層を有する)のみを基板上に形成せしめることもできる。特定の実施形態では、複数のドープされた層、例えば2つ以上のp−型がドープされたGaAs層又はn−型がドープされたGaAs層も、必要に応じてp−i−n、n−i−p、p−n、又はn−p接合を形成するのに利用可能である。
【0029】
図3は、太陽電池デバイスで利用される溶液に基づくGaAs層、例えば
図1及び2に示す太陽電池デバイス150、200内に形成されるGaAs層106、204等を形成するための処理順序300に関する1つの実施形態のフロー図を表す。p−型の層104、202、及びn−型の層108、206が、GaAsに基づく材料として構成される実施形態では、これらの層も、やはり
図3に示すような処理順序300により製造され得る。
図3は、真性型GaAs層106、204を製造するプロセスのみを説明目的で示していること、及び本発明の範囲を制限し、又は製造可能な特定の型の層に限定するように意図されていないことに留意されたい。本明細書に記載する本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、しかるべき場合には、1つ又は複数のステップの追加、削除、及び/又は再配列が可能であるため、
図3に説明するステップの番号及び順序は、本明細書に記載する本発明の範囲に対して制限を加えるようには意図されていないことに留意すべきである。
【0030】
処理順序300は、
図1に示すように、太陽電池デバイスを形成するように構成された基板100を提供することにより、ステップ302から開始する。1つの実施形態では、基板100は、透明基板、プラスチック基板、シリコン含有基板、例えば単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、ガラス基板、石英基板、又はその他の適する材料であり得る。太陽電池デバイス150内に形成される膜層と類似して、基板100は、その上に形成される第1のTCO層102、及びp−型の層104を有し得る。処理順序200の次のステップ、又はステップ204が次にp−型の層104上に実施されて、p−型の層104上にGaAs層、例えば
図1に示すGaAs層106が形成される。基板100は、基板100上のGaAs層形成を促進するように、同基板上に形成される異なる材料層を有し得ることに留意されたい。
【0031】
ステップ304では、GaAs堆積プロセスが、基板100上にGaAs層106を堆積させるために実施される。GaAs堆積プロセスは、基板100上へのGaAs層106の堆積を促進する原料前駆体として、事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体を処理チャンバに提供することにより実施される。
【0032】
事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体は、溶液状態のガリウム複合体及び砒素複合体からなる混合物を含み、溶液状態のガリウム−砒素複合体を形成する。1つの実施形態では、事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体内に形成されるガリウム−砒素複合体は、以下に示すようなGaAs二量体(−GaAs−)、GaAs四量体(−Ga
2As
2−)、又はGaAs六量体(−Ga
3As
3−)構造を一般的に有する。
【0033】
GaAs二量体(−GaAs−)、GaAs四量体(−Ga
2As
2−)、又はGaAs六量体(−Ga
3As
3−)構造は、比較的安定な複合体であり、したがってこれらは比較的安定な状態で液体溶液中に配置又は保管される優良な候補として位置づけられると考えられている。この比較的安定な溶液に基づくGaAs前駆体を利用することにより、GaAs溶液は、高い均一性及び良好な膜品質を伴いつつ、基板上に送達、注入、スプレイ、及びコーティング可能となり、こうして所望の膜特性及び高い膜特性を有する信頼性及び再現性のあるGaAs層を提供する。
【0034】
事前設計された溶液内で安定な複合体としてGaAs原料前駆体を形成するために、GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体は、これに連結した異なる官能基を有し得る。GaAs複合体は、式R
x(GaAs)
yR’
zを有し得るが、式中x、y、及びzは1〜15の整数であり、R及びR’は同一の官能基等であってもなくてもよい。GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体中のGa及びAs元素に連結し得る官能基として、アルキル基、例えばメチル(CH
3−)、エチル(C
2H
5−)、プロピル(C
3H
7−)、ブチル(C
4H
9−)、ペンチル(C
5H
11)等、イソプロピル、及びその他の類似異性体、芳香族基、例えばベンザル、スチレン、トルエン、キシレン、ピリジン、エチルベンゼン、アセトフェノン、メチルベンゾエート、酢酸フェニル、フェノール、クレゾール、フラン等、脂環基、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、トルエン等、アミノ基、例えばNR
2(Rはアルキル基)、−SiR
3、−O−R、−S−R、−PR
3、−POR
3、ハロゲン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ベンゾキノン、又はテトラメチル−p−ベンゾキノン、二座配位子、エクスペディアス配位子、アミンピラニン、立体障害配位子等が挙げられる。1つの代表的な実施形態では、アミノ基、例えばNR
2(Rはアルキル基)及び立体障害配位子が、GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体に連結した官能基として選択される。
【0035】
GaAs複合体は、溶液中で高い溶解度及び安定性を有することが必要である。したがって、GaAs複合体内で形成するように選択される官能基は、クラスター内において1:1の化学量論がプレアクティブとなる、又は形成されるのが望ましい。さらに、官能基は、低温でGaAsに分解可能であることも望まれる。さらに、官能基とGa元素との間、及び/又は官能基とAs元素との間の結合エネルギーは、Ga−As結合をなす結合エネルギーより弱くなるように構成される。この構成により、堆積反応期間中、官能基とGa及び/又はAs元素との間の結合は、GaAs溶液前駆体から容易に切断可能となり、こうして基板表面上にGaAs層が形成されるのを促進し、また複合体中にGaAs結合が保持される。連結する官能基は、堆積期間中又は後続する焼成又は硬化プロセスにおいて容易に除去、蒸発される、又は熱分解するように選択されるので、不純物又は汚染が最低レベルのGaAs層が、基板表面上に取得、形成され得る。
【0036】
上記要求事項に従うGaAs前駆体の適する例として、(NMe
2)
2Ga
2As
2(
tBuH)
2、Me
2GaAs(NMe
2)
2、Me
2GaAs(SiMePh
2)
2、Me
2GaAs(SiPh
3)
2、Et
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、Me
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、(Me)
3GaAs(NMe
2)
3、(Et)
3GaAs(NMe
2)
3、(Me)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2、(Et)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2、Ga:Asが1:3の化学量論、例えばGaAs
3tBu
6等が挙げられる。GaAs前駆体の構造として下記のものが挙げられる:
【0037】
1つの実施形態では、GaAs層106、204を基板100上に形成するのに用いられるGaAs前駆体は、
図1及び2に示すように(NMe
2)
2GaAs
tBuHである。(NMe
2)
2GaAs
tBuH前駆体は、ヘキサン若しくはトルエン溶媒、又はその他の適する有機若しくは無機溶媒中で、ガリウムアミド(Ga(NMe
2))
3を過剰のtert−ブチルアルシン(
tBuAsH
2)と混合し、オーバーナイトで撹拌、例えば16時間に渡り撹拌することにより合成可能である。プロセス温度は、約−40℃〜約−90℃の間に制御され得る。混合プロセス後、(ΝΜe
2)
2GaAs
tBuHが得られ、またCH
2Cl
2溶媒又はトルエン溶媒中に保管可能性である。
【0038】
別の実施形態では、GaAs原料前駆体を合成及び事前設計するために、GaAs層が、トリス(ジメチルアミノ)アルシン(Me
6N
3As)及びトリメチルガリウム(GaMes)を原料前駆体として用いて形成され得る。所望の溶液に基づくGaAs含有前駆体を形成するために、トリス(ジメチルアミノ)アルシン(Me
6N
3As)及びトリメチルガリウム(GaMes)を、トルエン又はヘキサン溶媒中で反応させる。プロセス温度は、約−40℃〜約−90℃の間に制御され得る。
【0039】
なおも別の実施形態では、GaAs層は、[{L}HGaAsR]
n又は[{L}
2GaAs
tBuH]を前駆体として用いて形成可能であり、式中Lは、窒素に基づくドナーリガンド、ΝΜe
2、又はヒドラジン官能基である。[{L}HGaAsR]
n又は[{L}
2GaAs
tBuH]の前駆体は、24時間に渡り室温で撹拌しながら、As(SiR
3)
3、R
3SiAsH
3、又はH
2As
tBuを、GaH
3{L}又はGa{L}
3と共にヘキサン溶液中で反応させることにより合成可能である。反応完了後、[{L}HGaAsR]
n又は[{L}
2GaAs
tBuH]の前駆体が、GaAsの原料として取得可能及び利用可能であり、分解したときに基板上にGaAs層を形成する。
【0040】
(NMe
2)
2GaAs
tBuH、[{L}HGaAsR]
n、又は[{L}
2GaAs
tBuH]等のGaAs含有前駆体、又は上記のようなその他の適する前駆体は、次に基板上にGaAs層を堆積させるためにCVDチャンバに供給される。1つの実施形態では、溶液に基づくGaAs含有前駆体は、エアゾール支援化学気相堆積(AACVD)プロセスを実施するために、CVDチャンバ内に供給される。AACVDプロセスでは、GaAs含有前駆体は溶解される。本発明を実践するのに利用可能なAACVDチャンバの例は、
図4を参照しながら以下でさらに議論される。前駆体溶液は、エアゾールジェネレータを用いて微粒子化される。キャリアガスが、エアゾール形成を促進するのに用いられる。その後、GaAs含有溶媒前駆体を担持するエアゾールは、キャリアガスによりCVDチャンバ内に輸送され、チャンバ内で蒸発される。CVDチャンバ内に入室後、前駆体は、液相から気相に移り、CVDプロセスを可能にする。その後、気相のGaAs含有前駆体は、次に基板上で分解及び吸収されて、所望のGaAs層を基板上に形成する。前駆体が完全に気化した状態にならない場合には、前駆体がエアゾール液滴となって基板上で吸収され、そして基板表面上でGaAs層が形成するように、スプレイ熱分解プロセスが行なわれる。1つの実施形態では、チャンバ内に進入した前駆体が効率的に蒸発するように、AACVD堆積プロセス期間中、基板温度は約550℃に制御される。
【0041】
別の実施形態では、GaAs層は、必要に応じてエアロジェット法、フラッシュ蒸発法、レーザー支援CVD、UV支援CVD、レーザー反応堆積法、溶液からのナノ粒子スプレイ、スプレイCVD、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)、水素化物気相エピタキシ(HVPE)、又はその他の適する技法を用いても、基板上に形成され得る。いくつかのその他の湿式堆積プロセス、例えばインクジェット、スピンコーティング、メニスカスコーティング、ディップコーティング、電気めっき、スプレイコーティング、電子スプレイング、スクリーン印刷又はその他の適する技法等も、基板表面上にGaAs層を形成するのに利用可能である。さらに、いくつかの真空技法、例えば分子ビームエピタキシ(MBE)、有機金属気相エピタキシ(MOVPE)、パルスレーザー堆積法(PLD)、プラズマ化学気相堆積法(PECVD)、スパッター、蒸発、マグネトロンスパッター、化学ビーム堆積法、原子層堆積(ALD)、ハードウェア化学気相堆積法(HWCVD)、マイクロ波プラズマ法、及びいくつかのその他の技法が、必要に応じて利用可能である。
【0042】
堆積後、
図1及び2に示すように、GaAs層106、204は、基板100上に形成される。基板上に形成されたGaAs層のAs元素に対するGa元素の比は、実質的に約1:0.8〜約1:1.2である。XRD分析では、形成されたGaAs層は、(111)面に強いピークを有することが示唆される。<111>、<220>、及び<311>面におけるXRDピーク位置は、立方GaAsに関する標準ピーク位置と一致する。1つの実施形態では、GaAs層106は、約0.2μm〜約3μmの厚さを有し得る。
【0043】
1つの実施形態では、異なるドーパントが、GaAs層にドープされ得る。ドーパントは、粒子、粉末、ゲル、液体、溶液の形態、又はあらゆるその他の適する形態であり得、ブレンド及び混合して溶液に基づくGaAs事前設計された前駆体となる。GaAs層内に形成されるドーパントが異なれば、膜の電気伝導度及び移動性も異なる可能性があり、こうすることによりデバイスの電気性能が向上する。1つの実施形態では、GaAs層内にドープ可能なドーパントとして、Al、Zn、Mg、In、P、Si、Se、S、C、N等が挙げられる。
【0044】
ステップ306では、GaAs層106、204が、基板100上に形成された後、アニールプロセスが、GaAs層106、204を熱処理するために実施される。異なる種類の処理後プロセス、例えばクエンチング、焼成、レーザー処理等も、必要に応じてGaAs層106、204上に実施され得ることに留意されたい。GaAs層106を形成するのに利用される前駆体は、Ga及びAs以外の元素、例えば炭素、窒素、酸化物、又は前駆体中に含まれるその他の元素を含有する。堆積した層上に実施される熱アニーリングプロセス及び/又は処理後プロセスは、堆積したままのGaAs層106、204に含まれる不純物を析出させるのに役立ち得る。熱処理は、堆積プロセス期間中に、堆積したままの膜内に形成され得る欠陥を修復するのにも役立ち得る。
【0045】
1つの実施形態では、アニーリングプロセスは、任意の適するアニーリングツール、例えばファーネス、高速熱処理(RTP)チャンバ、スパイクアニール、又はレーザーアニーリングチャンバ等により実施可能である。アニーリングプロセスは、基板100上に形成されたGaAs層106、204の焼締及び/又は結晶化に役立つように、約400℃〜約600℃の温度で実施可能である。
【0046】
図4は、エアゾール支援化学気相堆積(AACVD)チャンバ300に関する1つの実施形態の単純化した断面斜視図を表し、同チャンバは、基板、例えば
図1〜2を参照しながら上記する基板100上に溶液に基づくGaAs層を堆積するのに利用可能である。AACVDチャンバ400は、AACVD堆積プロセス、例えば
図1〜2を参照しながら上記する堆積プロセス等を実施するのに利用可能である。その他の種類の堆積プロセス、例えばMOCVD、エアロジェット、フラッシュ蒸発法、レーザー支援CVD、UV支援CVD、レーザー反応堆積法、溶液からのナノ粒子スプレイ、スプレイCVD、MOVPE、HVPE、又はその他の適する技法が、必要に応じてGaAs層を形成するのに利用可能であることに留意されたい。いくつかのその他の湿式堆積プロセス、例えばインクジェット、スピンコーティング、メニスカスコーティング、ディップコーティング、電気めっき、スプレイコーティング、電子スプレイング、スクリーン印刷、又はその他の適する技法も、基板表面上にGaAsに基づく層を形成するのに利用可能である。さらに、いくつかの真空技法、例えばMBE、MOVPE、PLD、PECVD、スパッター、蒸発(evaporate)、マグネトロンスパッター、化学ビーム堆積法、ALD、HWCVD、マイクロ波プラズマ法、及びいくつかのその他の技法も、必要に応じて利用可能性である。
【0047】
チャンバ400には、第1の壁426、第2の壁428、及び第1の壁426と第2の壁428の間を連結するリアクタ本体424を有する反応チューブ422が含まれる。反応チューブ422内に形成された第1の壁426、第2の壁428、及びリアクタ本体424は、内部処理領域418を規定する。グラファイトヒーティングブロック420は、反応チューブ422内に配置され、処理用として基板100をその上に受け入れる。基板100の温度は、必要に応じて、反応チューブ422内に配置された温度センサー(図示せず)によりモニター可能である。
【0048】
排気口432が、基板100が反応チューブ422の内外部に移動するのを促進するように、第2の壁428に形成される。吸気口430は、プロセス期間中に反応ガス及び前駆体を混合チャンバ416から内部処理領域418に送達するのを促進するように、第1の壁426に形成される。液体アンプル容器434は、気体送達通路436を通じて混合チャンバ416に連結している。液体 アンプル容器434は、内部処理領域418に原料物質を提供して、基板100に基づきGaAsに基づく層を堆積させるために、前駆体408を保管することができる。混合チャンバ416は、液体アンプル容器434から供給されるGaAs前駆体408に対して、流路を延長することができる蛇行した経路を提供して、徹底的した混合を保証する。液体アンプル容器434内に保管可能であるGaAs前駆体の例として、(NMe
2)
2GaAs
tBuH、Me
2GaAs(NMe
2)
2、Me
2GaAs(SiMePh
2)
2、Me
2GaAs(SiPh
3)
2、Et
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、Me
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、(Me)
3GaAs(NMe
2)
3、(Et)
3GaAs(NMe
2)
3、(Me)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2、(Et)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2等が挙げられる。
【0049】
ドープされたGaAsに基づく層が、基板100上に形成されるのが望ましい実施形態、例えばp−型がドープされたGaAsに基づく層又はn−型がドープされたGaAsに基づく層では、ドーパント含有材料は、液体アンプル容器334内のGaAs前駆体とブレンド、添加、又は混合可能であり、処理用として内部処理領域418に容易に供給可能なドーパント含有GaAs前駆体を形成する。上記で議論したように、GaAs前駆体に添加可能である、適するp−型ドーパント材料として、亜鉛含有材料、例えば金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)等、マグネシウム含有材料、例えば金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム等、及び炭素含有材料、例えば炭素塩化物(CCl
4)、炭素臭化物(CBr
4)等が挙げられる。GaAs前駆体に添加可能である、適するn−型ドーパント材料として、イオウ含有材料、例えばH
2S、イオウ等、シリコン含有材料、例えばシラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)等、及びセレニウム含有材料、例えばH
2Se、Se等が挙げられる。1つの実施形態では、GaAs前駆体に添加するのに利用されるp−型ドーパント材料は、DMZ又はDEZ、及びGaAs前駆体に添加するのに利用されるn−型ドーパント材料は、ジシラン(Si
2H
6)である。
【0050】
ガスパネル410は、キャリアガスを、送達通路412を通じて液体アンプル容器432に供給するために、液体アンプル容器432に連結されている。ガスパネル410は、キャリアガスを液体アンプル容器434に導入して、液体アンプル容器434内に収納されたGaAs前駆体402を、ガス送達通路436を通じて混合チャンバ416に、そして最終的には内部処理領域418に注入及び押し出す。ガスパネル410から供給され得るガスの例として、窒素含有ガス、とりわけ窒素(N
2)、N
2O、及びNO等、又は酸素含有ガス、例えば酸素(O
2)若しくは(O
3)等が挙げられる。不活性ガス、例えばAr又はHe等も、GaAs前駆体402を内部処理領域418に搬送するのに利用可能である。本明細書に記載する1つの代表的実施形態では、GaAs前駆体408を内部処理領域418に注入及び押し出すのに用いられるキャリアガスは、窒素(N
2)ガスである。
【0051】
液体アンプル容器434に収納された、所望のドーパントを含む/含まない溶液に基づくGaAs前駆体402は、加湿器404により加熱及び気化される。加湿器404は、これに収納された溶液に基づくGaAs前駆体402に超音波エネルギー及び/又は熱エネルギーを提供することができる圧電素子406を有することができ、こうしてGaAs前駆体402を加熱及びエバポレーションするのを支援して、矢印414で示すように、キャリアガスにより内部処理領域418内に注入されるように、気相状態又は小型の液滴状態にする。いくつかの液体408、例えば水又はその他の適する液体は、溶液に基づくGaAs前駆体402を所望の温度範囲内に維持するために、液体アンプル容器434と加湿器との間に配置され得る。1つの実施形態では、加湿器404は、温度約100℃〜約250℃でGaAs前駆体を気化させることができる。
【0052】
図5は、溶液に基づくGaAsに基づく層を形成する処理順序500に関する別の実施形態のフロー図を表し、前記層は、真性型GaAs層106、204として形成可能、及び太陽電池デバイスに組み込み可能であり、p−型の層104、202が、p−型がドープされたGaAsに基づく層104、202となるように構成され、及びn−型の層108、206が、n−型がドープされたGaAsに基づく層108、206となるように構成される実施形態では、
図1及び2に示す太陽電池デバイス150、200内に形成される。本明細書に記載する本発明の基本的な範囲から逸脱せずに、しかるべき場合には、1つ又は複数のステップの追加、削除、及び/又は再配列が可能であるため、
図5に説明するステップの番号及び順序は、本明細書に記載する本発明の範囲に対して制限を加えるようには意図されていないことに留意すべきである。
【0053】
処理順序500は、
図1〜2に示すように、太陽電池デバイスを形成するように構成された基板100を提供して、ステップ502から開始する。1つの実施形態では、基板100は、透明基板、プラスチック基板、シリコン含有基板、例えば単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、ガラス基板、石英基板、又はその他の適する材料であり得る。太陽電池デバイス150内に形成される膜層と類似して、基板100は、その上に形成される第1のTCO層102を有し得る。処理順序500の次のステップ、又はステップ504が、次に必要に応じてp−型がドープされたGaAs層、真性型GaAs層、又はn−型がドープされたGaAs層を形成するために基板上で実施される。基板100は、基板100上のGaAs層形成を促進するように、同基板上に形成される異なる材料層を有し得ることに留意されたい。
【0054】
ステップ504では、所望のドーパントが混合、ブレンド、添加されたGaAs前駆体が、処理チャンバ、例えば
図4に示す処理チャンバ400に供給される。GaAs前駆体は、上記で議論したように、p−型がドープされたGaAsに基づく層、又はn−型がドープされたGaAsに基づく層が基板100上に堆積するのを促進するために、原料前駆体として所望のドーパント、例えばp−型ドーパント又はn−型ドーパントを添加せしめた、事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体であり得る。真性型GaAs層が形成されるのが望ましい実施形態では、ドーパントがGaAs前駆体に添加される必要はない。
【0055】
事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体は、溶液状態のガリウム複合体及び砒素複合体からなる混合物を含み、溶液状態のガリウム−砒素複合体を形成する。1つの実施形態では、事前設計された溶液に基づくGaAs前駆体内に形成されたガリウム−砒素複合体は、GaAs二量体(−GaAs−)、GaAs四量体(−Ga
2As
2−)、又はGaAs六量体(−Ga
3As
3−)構造を一般的に有する。GaAs二量体(−GaAs−)、GaAs四量体(−Ga
2As
2−)、又はGaAs六量体(−Ga
3As
3−)構造は、比較的安定な複合体であると考えられており、液体溶液中に配置又は保管するのに適するものとして位置づけられる。この比較的安定な溶液に基づくGaAs前駆体を利用することにより、GaAs溶液は、高い均一性を伴い基板に送達可能となって予測可能な良好な膜品質を生み出し、こうして所望の膜特性及び高い膜特性を有する信頼性及び再現性のあるGaAs層を提供する。
【0056】
事前設計された溶液中で安定な複合体としてGaAs原料前駆体を形成するのに用いられるとき、GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体は、これに連結した異なる官能基を有し得る。GaAs複合体は、式R
x(GaAs)
yR’
zを有し得るが、式中x、y、及びzは1〜15の整数であり、R及びR’は同一の官能基等であってもなくてもよい。GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体中のGa及びAs元素に連結し得る官能基として、アルキル基、例えばメチル(CH
3−)、エチル(C
2H
5−)、プロピル(C
3H
7−)、ブチル(C
4H
9−)、ペンチル(C
5H
11)等、イソプロピル及びその他の類似異性体、芳香族基、例えばベンザル、スチレン、トルエン、キシレン、ピリジン、エチルベンゼン、アセトフェノン、メチルベンゾエート、酢酸フェニル、フェノール、クレゾール、フラン等、脂環基、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、トルエン等、アミノ基、例えばNR
2(Rはアルキル基)、−SiR
3、−O−R、−S−R、−PR
3、−POR
3、ハロゲン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ベンゾキノン、又はテトラメチル−p−ベンゾキノン、二座配位子、エクスペディアス配位子、アミンピラニン、立体障害配位子等を挙げることができる。1つの代表的な実施形態では、アミノ基、例えばNR
2(Rはアルキル基)、及び立体障害配位子は、GaAs二量体、GaAs四量体、又はGaAs六量体に連結した官能基として選択される。上記要求事項に従うGaAs前駆体の適する例として、(NMe
2)
2Ga
2As
2(
tBuH)
2、Me
2GaAs(NMe
2)
2、Me
2GaAs(SiMePh
2)
2、Me
2GaAs(SiPh
3)
2、Et
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、Me
2GaAs(SiMe
2Cy)
2、(Me)
3GaAs(NMe
2)
3、(Et)
3GaAs(NMe
2)
3、(Me)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2、(Et)
4Ga
2As
2(
tBuH)
2、Ga:Asが1:3の化学量論、例えばGaAs
3tBu
6等が挙げられる。1つの実施形態では、p−型がドープされたGaAs層、真性型GaAs層、又はn−型がドープされたGaAs層を形成するように選択されるGaAs前駆体は、(NMe
2)
2GaAs
tBuHである。(NMe
2)
2GaAs
tBuH前駆体は、ヘキサン若しくはトルエン溶媒又はその他の適する有機若しくは無機溶媒中で、ガリウムアミド(Ga(NMe
2))
3を過剰のtert−ブチルアルシン(
tBuAsH
2)と混合し、オーバーナイトで撹拌、例えば16時間に渡り撹拌することにより合成可能である。プロセス温度は、約−40℃〜約−90℃の間に制御され得る。混合プロセス後、(ΝΜe
2)
2GaAs
tBuHが得られ、またCH
2Cl
2溶媒又はトルエン溶媒中に保管可能である。
【0057】
上記のような、適するp−型及びn−型ドーパントは、ドープされたGaAs溶液に基づく前駆体を形成してp−型又はn−型がドープされたGaAs層を形成するために、GaAs前駆体に添加、これと混合、又はブレンドされ得る。GaAs前駆体に添加可能なp−型ドーパントの適する例として、金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム、炭素塩化物(CCl
4)、炭素臭化物(CBr
4)等が挙げられる。n−型ドーパントの適する例として、H
2S、イオウ、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、H
2Se、Se等が挙げられる。
【0058】
ステップ506では、ドーパントを含む/含まないGaAs前駆体が処理チャンバに供給された後、ドープされた/ドープされないGaAs層が、基板表面上に形成され得る。1つの実施形態では、溶液に基づくGaAs含有前駆体が、エアゾール支援化学気相堆積(AACVD)プロセスを実施するために、CVDチャンバ、例えば
図4に示すAACVDチャンバ400内に供給される。上記で議論したように、ドーパントは、粒子、粉末、ゲル、液体、溶液の形態、又はその他の適する形態でもあり得、また溶液に基づくGaAs事前設計された前駆体に混合され得る。ドープされたGaAs層を形成するために選択されたドーパントが異なれば、膜の電気伝導度及び移動度も異なる可能性があり、こうしてデバイスの電気性能が向上する。1つの実施形態では、GaAs層にドープされ得るドーパントとして、Al、Zn、Mg、In、P、Si、Se、S、C、N等が挙げられる。
【0059】
1つの実施形態では、ドープされたGaAs層内のドーパント濃度は、約1×10
16原子/cm
3〜約1×10
20原子/cm
3に制御可能である。例えば、p−型がドープされたGaAs層では、p−型ドーパントは、約1×10
17原子/cm
3〜約1×10
19原子/cm
3のドーパント濃度で、GaAs層内にドープされ得る。別の例の場合、n−型ドープされたGaAs層では、n−型ドーパントは、約1×10
18原子/cm
3〜約1×10
20原子/cm
3のドーパント濃度で、GaAs層内にドープされ得る。
【0060】
ステップ508では、ドープされた/ドープされないGaAs層が、基板100上に形成された後、堆積したGaAs層を熱処理するために、アニールプロセスが実施される。異なる種類の処理後プロセス、例えばクエンチング、焼成、レーザー処理等も、必要に応じて、堆積したGaAs層上に実施され得ることに留意されたい。GaAs層を形成するのに利用される前駆体は、ドーパント、Ga及びAs以外の元素、例えば炭素、窒素、酸化物、又は堆積したGaAs膜中に取り込まれ得るその他の不純物を含有する。堆積した層上に実施される熱アニーリングプロセス及び/又は処理後プロセスは、堆積したままのGaAs層に含まれる不純物を析出させるのに役立ち得る。熱処理は、堆積プロセス期間中に、堆積したままの膜内に存在し得る欠陥を修復するのにも役立ち得る。
【0061】
1つの実施形態では、アニーリングプロセスは、任意の適するアニーリングツール、例えばファーネス、高速熱アニール(RTP)チャンバ、スパイクアニール、又はレーザーアニーリングチャンバ等により実施可能である。アニーリングプロセスは、基板100上に形成されたGaAs層の焼締及び/又は結晶化に役立つように、約400℃〜約600℃の温度で実施可能である。熱アニーリングチャンバの例、例えばRTPチャンバは、
図6を参照しながら、さらに上記で議論される。
【0062】
図6は、基板、例えば
図1〜5を参照して上記する基板100をアニールするのに利用可能である、高速熱処理チャンバ600に関する1つの実施形態の単純化した断面斜視図を表す。処理チャンバ600は、内部容積628を規定するチャンバ壁630、底部632、及び最上部634を有するチャンバ本体650を備える。壁630は、基板100の入退出に役立つように少なくとも1つの基板アクセスポート(図示せず)を一般的に備える。
【0063】
輻射熱アセンブリ624が、チャンバ本体650の最上部634に取り付けられる。輻射熱アセンブリ624は、基板100周辺部に配置されたエッジリング610により懸架された基板100を加熱するのに利用される。輻射熱アセンブリ624は、ウォータージャケットアセンブリ604内に複数のランプチューブ602を備える。チューブ602それぞれは、リフレクタ及びタングステンハロゲンランプアセンブリを備える。ランプチューブ602は、緊密ハニカムパイプ配置でネスト化される。この最密六方配置のランプチューブ602は、放射エネルギー、例えば約400nm〜約4000nmの波長を有する、IR照射及び/又は長波長側のUV照射等を高電力密度で提供する。1つの実施形態では、輻射熱アセンブリ624は、基板を熱処理する、例えば基板100上に配置されたシリコン層をアニールするため、放射エネルギーを提供する。本発明から利益を得るように構成され得る1つの輻射熱アセンブリ624は、Gronetらに1996年1月23日に発行された米国特許第5,487,127号に記載されており、これをそのまま本明細書により参考として援用する。
【0064】
基板100を支持するエッジリング610は、ステンレスベース618上に取り付けられた回転可能な石英シリンダ612により、ステンレスベース618の上方に間隔を置いて配置される。エッジリング610は、熱処理期間中に生ずる過剰の膨張、収縮を防止するために、シリコンカーバイド等の熱膨張係数が小さい硬化材料から作製可能である。石英シリンダ612は、基板処理期間中、約50rpm〜約300rpmで回転して、チャンバ600内及び基板100上の熱的な非対称効果を最低限に抑えることにより、基板の温度均一性を最大化する。1つの実施形態では、シリンダを所望の波長に対して不透過性にせしめるために、シリンダ612は、シリコンでコーティングされ得る。ベース618は、水等の冷却剤が循環する循環回路646を有する。冷却剤の循環により、処理後のチャンバ温度が効果的に冷却される。
【0065】
リフレクタプレート614は、基板100下部に配置され、ベース618上部に取り付けられる。配列した温度プローブ644は、リフレクタプレート614内に、同プレート中に規定される開口部642を通じて埋め込まれる。温度プローブ644は、ベース618の底部側からリフレクタプレート614内の開口部642まで延在する導管636を通じてパイロメータ616と連結する。温度プローブ644及びパイロメータ616は、基板の温度勾配が測定可能となるように、各プローブ644近傍にある基板100の領域の温度を表すメトリックを得るのに用いられる。
【0066】
基板100の底部側620及びリフレクタプレート614の上部側538の間に、リフレクティングキャビティ640が規定される。リフレクティングキャビティ640は、基板100の効果的な放射性能を増強し、こうして温度測定の正確性を改善する。コントローラ618は、パイロメータ616から測定値を受け取り、また処理チャンバ600内に生み出される照射量をリアルタイムに修正するように、コントロールシグナルを輻射熱アセンブリ624にアウトプットすることができ、こうして基板温度を所望の処理範囲内に維持する。
【0067】
リフレクタプレート614の上部側638は反射性がきわめて高く、目標波長範囲内の熱照射を反射するが、目標波長範囲以外の熱照射を吸収する。選択的反射性能を提供するために、1つ又は複数のコーティング物又は層が、ベース618上のリフレクタプレート614をコーティングするのに利用可能である。例えば、リフレクタプレート614が、熱照射を所望の波長で基板100の背部に反射し、そして所望の波長以外の熱照射を吸収する(又はより反射しない)ことが可能となるように、異なる反射性能及び吸収能を有するコーティング物の異なる組み合わせが利用可能である。1つの実施形態では、リフレクタプレート614は、約700nm〜約1000nmの熱波長を反射し、また700nm未満及び1000nmを超える熱波長を吸収する。本発明から利益を受けるように構成され得る1つのリフレクタプレート614は、2005年1月4日に、Adamsらに発行された米国特許第6,839,507号に記載されており、これをそのまま本明細書により参考として援用する。
【0068】
基板100の背部に反射されない熱エネルギーは、リフレクタプレート614により吸収される。吸収された熱エネルギーは、リフレクタプレート614の下部に配置されたベース618を経由して循環する冷却剤により効果的かつ迅速に除去される。さらに、リフレクタプレート614内の孔(図示せず)を通じて提供されるガスは、リフレクタプレート614及びその上に位置する基板100の冷却速度を高めるのに利用可能である。リフレクタプレート614により迅速な冷却速度が実現すると、基板100の温度制御が促進され、こうして所望の温度処理プロファイルが効果的にもたらされる。1つの実施形態では、リフレクタプレート614は、約200℃/秒を上回る基板冷却速度を実現し得る。別の実施形態では、リフレクタプレート614は、約220/秒の基板冷却速度を実現し得る。
【0069】
図7は、本発明の1つの実施形態に基づくGaAs材料706により取り囲まれた、複数のカーボンナノチューブ(CNT)704を含む光吸収層702の断面図である。
図7は、GaAs材料706により形成及びカプセル化されるカーボンナノチューブ(CNT)704を有する光吸収層702の1つの可能な構成を説明することに留意されたい。いくつかのその他の構成では、カーボンナノチューブ(CNT)704上部にGaAs材料706を配置する前に、追加の層が、基板と光吸収層702との間、又は基板100とカーボンナノチューブ(CNT)704との間に形成され得る。GaAs材料706でコーティングされたカーボンナノチューブ(CNT)704を利用する太陽電池デバイスの例について、
図8及び9を参照しながら下記で議論する。
【0070】
なおも
図7を参照しつつ、1つの実施形態では、光吸収層702が、基板100の表面708上に形成される。光吸収層702は、光をトラップするプロセス及び太陽電池デバイス内で電流を生成するプロセスを支援するのに用いられる。光吸収層702内に配置されたカーボンナノチューブ(CNT)704は、正孔及び/又は電子の収集を改善するための効率的な経路として利用可能であり、また従来型の光吸収層で一般的に生じ得る電荷キャリア再結合率を低減すると考えられている。カーボンナノチューブ(CNT)704は、形成された太陽電池デバイス内で生ずる電荷生成を改善し得る望ましい電気特性を有する。1つの実施形態では、カーボンナノチューブ(CNT)704が基板の表面に形成される。その後、溶液に基づくGaAs層706が、カーボンナノチューブ(CNT)704上部に堆積し、こうしてカーボンナノチューブ(CNT)704をカプセル化する。追加の層も、カーボンナノチューブ(CNT)704上にGaAs層306を配置する前に、カーボンナノチューブ(CNT)704上部に堆積可能であることに留意されたい。
【0071】
1つの実施形態では、光吸収層702は、基板100表面上の連続した薄膜として形成される。GaAs含有光吸収層702は、紫外(UV)波長から近赤外(IR)波長まで広がる幅広いスペクトルに渡り、高い吸光係数を提供する。形成された光吸収層702では、層内にCNTが組み込まれることにより、連続した薄膜702を介して測定される電気伝導度も高い。さらに、形成された吸収層702の吸光係数が高いため、吸収層の全体的な厚さは低減可能であり、このように低減すると、セルエネルギー変換効率、無負荷電圧、曲線因子、及び標準化された短絡電流等の太陽電池特性が向上する。
【0072】
1つの実施形態では、カーボンナノチューブ(CNT)704は、グラフェンから形成される壁を有するナノメータスケールのシリンダ−単原子厚さのシート状のグラファイトである。カーボンナノチューブ704は、単一壁構成(単一シートのグラフェンから構成されるシリンダ壁、SWNTと呼ばれる)、又は多重壁構成(複数シートのグラフェンから構成されるシリンダ壁、MWNTと呼ばれる)のいずれかであり得る。1つの実施形態では、金属粒子触媒712からなる薄膜710は、カーボンナノチューブ(CNT)704を形成する前に、基板100上に堆積可能である。金属粒子触媒712からなる薄膜710は、基板100上で炭素原子の核生成を促進するのに利用可能であり、こうしてその後、基板100上にカーボンナノチューブ(CNT)704が堆積するのを促進する。1つの構成では、カーボンナノチューブ(CNT)704は、炭化水素前駆体ガス、例えばエチレン、プロピレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、エタン、メタン、ブタン、プロパン、ヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、一酸化炭素、アセトン、酸素を含んだ炭化水素、低分子量炭化水素、高分子量炭化水素、又はこれらを組み合わせたものを用いて、金属粒子触媒712上に選択的に形成される。適する金属粒子として、鉄、ニッケル、コバルト、銅、モリブデン、及び合金等が挙げられる。薄膜710は、Fe、Cu、Al、Co、Mo、Ta、W、Ag、Ni、Al
20
3等より選択される金属材料であり得る。
【0073】
1つの実施形態では、カーボンナノチューブ(CNT)704は、個々のカーボンナノチューブ(CNT)704の間で規則的間隔を設けて基板100上に垂直に整列される。カーボンナノチューブ(CNT)704の垂直アライメントは、光吸収層702内に光をトラップするのを支援し得る。カーボンナノチューブ(CNT)704の長さは、約100nm〜約2.0μmであると共に、直径は、約0.5〜約1.5nmの範囲であり得る。カーボンナノチューブ(CNT)704が、GaAs材料706で取り囲まれた構成では、GaAs材料706は、
図3及び5を参照して上記したプロセスと類似したプロセスを用いてカーボンナノチューブ(CNT)704上部に形成され得る。1つの実施形態では、形成されたカーボンナノチューブ(CNT)704の高さは、基板表面708から光吸収層702の厚さの約5〜95%である。
【0074】
カーボンナノチューブ(CNT)704は、垂直方向及びお互いに並行して配列され得る。かかるアライメントは、カーボンナノチューブ(CNT)704材料を通じた導通により、光吸収層702からキャリア抽出(例えば、正孔)する経路をより短くする。光吸収層702内の形成されたカーボンナノチューブ(CNT)704の所望の密度は、光吸収層702内の電子正孔対生成効率と光吸収層702からの正孔抽出効率との間の妥協の産物であり得る。1つの実施形態では、基板表面上のカーボンナノチューブ(CNT)704の所望の平均密度は、10
11〜10
16/m
2のオーダーであり得る。
【0075】
1つの実施形態では、基板100上に形成される金属の薄膜710は、Feナノ粒子710が上部に形成されたアルミニウムであり得る。Feナノ粒子の直径は、その後その上に形成されるカーボンナノチューブ(CNT)704の直径を決定する。ナノ粒子710及び薄膜712は、任意の適する技法、例えばCVD、PVD、ALD、PECVD、HWCVD、任意のプラズマプロセス、又はUV誘発式ALD技法により形成され得る。カーボンナノチューブ(CNT)704は、次にFeナノ粒子710上に形成される。カーボンナノチューブ(CNT)704が基板100上で成長したら、GaAsに基づく材料306が、次にカーボンナノチューブ(CNT)704上部に配置されて、光吸収層702が形成される。
【0076】
図8は、太陽電池デバイス840内に形成された光吸収層802を有するオルタネイトタイプの太陽電池デバイス840の断面図であり、同デバイスは、
図1に示す太陽電池デバイス150内に配置される光吸収層106と同様に一般的に構成される。この構成では、光吸収層802は、複数のカーボンナノチューブ(CNT)704上に配置されるGaAs材料706を備える。この実施形態では、上記で議論したように、第1のTCO層102が、基板100上に形成される。その後、カーボンナノチューブ(CNT)704が、第1のTCO層102上に形成される。
図7を参照しながら上記で議論したように、任意選択的な触媒粒子712が、その上でカーボンナノチューブ(CNT)704が成長するのを支援するために、基板100上に形成され得る。基板100上でカーボンナノチューブ(CNT)704を形成した後、p−型の層104が、
図3及び5を参照しながら上記したプロセスを用いてカーボンナノチューブ(CNT)704上部に形成される。1つの実施形態では、p−型の層104は、カーボンナノチューブ(CNT)704の外面を覆う共形層を形成する。その後、GaAs層706が、p−型の層104上部に形成されて、カーボンナノチューブ(CNT)704をカプセル化する。1つの実施形態では、溶液に基づくGaAs層706が、
図3及び5を参照しながら上記した1つ又は複数のプロセスにより、p−型の層104及びカーボンナノチューブ(CNT)704上に形成され得る。したがって、光吸収層802は、p−型の層104及びカーボンナノチューブ(CNT)704上に配置されるGaAs層706を備える。カーボンナノチューブ(CNT)704は、GaAs層706及びp−型の層104によりカプセル化されるが、電荷が収集可能な表面積が広く、またCNTの電気伝導度が高いため、このようなCNTは真性型光吸収層802内に形成される正孔及び電子の抽出を支援する。したがって、真性型光吸収層802は、電荷キャリアの収集に役立ち、また形成された太陽電池デバイス840の全体的な変換効率を増加させることができる。その後、n−型の層108が真性型光吸収層802上に形成され、そして
図1と併せて上記で議論したように、第2のTCO層112及び背部電極層110が、その後その上に形成される。
【0077】
上記で議論した光吸収層802の構造的な構成は、従来型のシリコンに基づく太陽電池デバイスと比較して、光散乱面の数が増加していること、層の配向、及び吸収波長範囲がより広いことに起因して、入射光の保持及び吸収も支援し得ると考えられる。したがって、光吸収層802内に形成されたカーボンナノチューブ(CNT)704及びGaAs材料706は、太陽電池の全体的な変換効率を高めることができる。
【0078】
図9は、太陽電池デバイス940内に形成された真性型光吸収層902を有する太陽電池デバイス940を表す。この実施形態では、
図8に説明する太陽電池840と比較して、カーボンナノチューブ(CNT)704が、基板100上に最初に形成される。任意選択的に、基板100表面上でカーボンナノチューブ(CNT)704が成長するのを支援するために、金属粒子触媒712を用い、基板表面上に堆積させる。その後、第1のTCO層102がカーボンナノチューブ(CNT)704上部に形成され、その結果堆積層は、カーボンナノチューブ(CNT)704の形状に追随する。次に、p−型の層104が第1のTCO層102上に形成される。1つの構成では、堆積したp−型の層104は、第1のTCO層102及びカーボンナノチューブ(CNT)704の形状に共形的に追随する。その後、光吸収層902を形成するために、GaAs層706がp−型の層104及びカーボンナノチューブ(CNT)704上部に形成される。1つの実施形態では、溶液に基づくGaAs層706が、
図3及び5を参照しながら上記した1つ又は複数のプロセスを用いて基板上に形成され得る。カーボンナノチューブ(CNT)704、p−型の層104、第1のTCO層102、及びGaAs層706は、すべて光吸収層902内に形成される正孔及び電子の抽出を支援し、こうして生み出された電荷の収集が促進され、また形成された太陽電池デバイスの全体的な変換効率が向上する。その後、
図1と共に上記で議論したように、n−型シリコン層108が光吸収層902上に形成され、また第2のTCO層110及び背部金属電極112がその後その上に形成される。
【0079】
p−型の層104、光吸収層702、802、902、及びn−型の層108を含むp−i−n接合を形成する順番は、必要に応じて逆転する場合があることに留意されたい。例えば、n−i−p接合は、GaAsに基づく材料の層706が充填されたカーボンナノチューブ704の構造を利用しても形成され得る。例えば、
図8及び9に示すようにカーボンナノチューブ704上にp−型の層104を形成するのではなく、代わりにn−型の層108がカーボンナノチューブ704上に形成され得る。その後、GaAsに基づく材料の層706が、n−型の層108及びカーボンナノチューブ704上部に形成され得る。連続的なGaAsに基づく材料の層706が基板100上に形成された後、次に所望に応じて、p−型の層104が、基板上に所望のn−i−p接合を形成するために、前記層上に形成される。いくつかの構成では、シリコン以外の材料からp−型及び/又はn−型の層を形成するのが望ましい場合もあることに留意すべきである。
【0080】
上記は、本発明の実施形態を目的としているが、本発明のその他の及びさらなる実施形態も、本発明の基本的な範囲から逸脱せずに考案可能であり、また本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により規定される。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
太陽電池デバイスを形成する方法であって、
基板の表面上部に、第1の種類のドーパントがドープされている第1の層を形成することと、
前記第1の層上に、GaAsに基づく層を形成することと、
前記GaAsに基づく層上に、第2の種類のドーパントがドープされている第2の層を形成することと
を含む方法。
(態様2)
前記GaAsに基づく層を形成することが、
溶媒中に配置されたGaAs含有前駆体を処理チャンバに供給することと
前記GaAsに基づく層を前記基板上に形成するために、前記GaAs含有前駆体の溶媒を処理チャンバ内で蒸発させることと
を含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記GaAs含有前駆体が、(NMe2)2GaAstBuH、Me2GaAs(NMe2)2、Me2GaAs(SiMePh2)2、Me2GaAs(SiPh3)2、Et2GaAs(SiMe2Cy)2、及びMe2GaAs(SiMe2Cy)2からなる群より選択される、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記基板上に形成された、前記GaAsに基づく層をアニールすることをさらに含む、態様2に記載の方法。
(態様5)
前記第1の種類のドーパントがp−型のドーパントであり、前記第2の種類のドーパントがn−型のドーパントである、態様1に記載の方法。
(態様6)
前記第1の層が、シリコン含有層又はGaAsに基づく層であり、前記第2の層が、シリコン含有層又はGaAsに基づく層である、態様1に記載の方法。
(態様7)
前記p−型のドーパントが、金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム、炭素塩化物(CCl4)又は炭素臭化物(CBr4)のうち少なくとも1種を含み、前記n−型のドーパントが、H2S、イオウ、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、H2Se、Se等のうち少なくとも1種を含む、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記第1の層がp−型アモルファスシリコン層であり、前記第2の層がn−型アモルファスシリコン層である、態様1に記載の方法。
(態様9)
前記基板上に前記第1の層を形成する前に、前記基板の表面上部に複数のカーボンナノチューブを形成することをさらに含む、態様1に記載の方法。
(態様10)
前記複数のカーボンナノチューブをGaAs層で充填することをさらに含む、態様9に記載の方法。
(態様11)
太陽電池デバイスで使用するのに適する構造であって、
基板上に配置された、第1の種類のドーパントがドープされた第1の層と、
前記第1の層の上部に形成された、GaAsに基づく層と、
前記GaAsに基づく層上に形成された第2の層と
を含む構造。
(態様12)
前記第1の種類のドーパントが、金属亜鉛ドーパント、ジメチル亜鉛(DMZ)、ジエチル亜鉛(DEZ)、金属マグネシウムドーパント、シクロペンタジエニルマグネシウム、炭素塩化物(CCl4)、又は炭素臭化物(CBr4)のうち少なくとも1種を含むp−型のドーパントであり、前記第2の種類のドーパントが、H2S、イオウ、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、H2Se、Se等のうち少なくとも1種を含むn−型のドーパントである、態様11に記載の構造。
(態様13)
前記第1の層がp−型シリコン含有層であり、前記第2の層がn−型シリコン含有層である、態様11に記載の構造。
(態様14)
前記基板上に形成された前記GaAsに基づく層が、ドープされた第3の種類のドーパントを含み、前記第3の種類のドーパントがp−型のドーパント又は−型のドーパントである、態様11に記載の構造。
(態様15)
前記GaAsに基づく層が、溶液に基づくGaAs前駆体により作製される、態様11に記載の構造。