(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年のLSI製造においては、高集積化のニーズに対応した回路パターンの微細化により、対象となる欠陥も微細化している。これに対応して、光学式欠陥検査装置の検出すべき欠陥寸法も微細化が求められている。このような中、光学式欠陥検査装置では、照明波長の短波長化や超解像や検出レンズの高NA化(NA: Numerical Aperture)などが行われている。装置的に照明波長の短波長化には限界がある。検出レンズの高NA化方法としては,液浸や屈折率が負のメタマテリアルなどがある。しかし,液浸は半導体検査において使用は難しく、またメタマテリアルは、まだ技術的に実用化は困難である。構造化照明を用いた超解像技術は、照明を位相変調し、強度位相の異なる信号を複数取得し、取得した信号の変化から、解像度を向上させることができる。しかし、検出対象がより微細になるに連れ、超解像による高解像度化は困難になる。検出対象からの信号が,背景ノイズに埋もれている場合、検出対象からの信号の変化を捉えることができないためである。
【0013】
特許文献1及び2及び3及び5には、欠陥を超解像技術を用いた光学顕微鏡で観察することについては記載されていない。一方、特許文献4には、試料面上で2光束を干渉させて定在波照明を行い散乱光を検出することによりナノメータオーダの散乱光変化を検出する超解像技術について記載されている。しかし、半導体基板上の微細な欠陥を検出する場合のように、微細な欠陥からの散乱光を試料表面のナノメータオーダの微細な凹凸により発生する背景ノイズから分離して検出することについては記載されていない。
【0014】
そこで、本発明では、従来技術の課題を解決して、そのままでは背景ノイズに埋もれてしまうような微小な欠陥信号を背景ノイズから分離して検出できるようにして、試料上のより微細な欠陥の観察を可能にする欠陥観察方法及びその装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明では、上記した従来技術の課題を解決するために、試料を構造化照明すると共に、検出光学系の瞳面上もしくはその近傍に空間的に分布を持った空間分布光学素子(特許文献5)を配置して構造化照明された試料からの散乱光のうち背景ノイズとなる散乱光を遮光するように構成することで高感度の超解像顕微方法を可能にして、欠陥検査装置で検出した試料表面もしくは表面近傍に存在する欠陥等を観察できるようにした。
【0016】
すなわち、本発明では、定在波を用いて試料上を照明し、定在波を変調することにより、複数の照明条件で試料上を照明し、照明によって散乱された光もしくは励起された蛍光を、瞳面上に空間分布光学素子を持つ検出光学系を通して検出器で検出し、得た信号を周波数空間で合成し、合成した信号を逆変換することで高解像度の信号を得ることを特徴とする。これによって、対象の高感度検出を可能にする。
【0017】
即ち、上記課題を解決するために、本発明では、他の検査装置で検出した試料上の欠陥
をこの欠陥の位置情報に基づいて光学顕微鏡を備えた検出装置で検出し、この光学顕微鏡
を備えた検出装置で検出した欠陥の位置情報に基づいて他の検査装置で検出した試料上の
欠陥の位置情報を修正し、他の検査装置で検出した欠陥を修正した位置情報に基づいて走
査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する欠陥の観察方法において、他の検査装置で検
出した試料上の欠陥を光学顕微鏡を備えた検出装置で検出することを、試料に対して同じ
入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて
二つの照明光を干渉させることにより試料上に定在波を形成し、この定在波が形成された
試料からの散乱光のうち試料表面の微小な凹凸により発生した散乱光成分
を空間フィルタ
で除去し、空間フィルタで除去されなかった試料からの散乱光による像を検出し、この検
出した散乱光による像を処理して他の検査装置で検出した試料上の欠陥を検出することに
より行
い試料に対して同じ入射面上で互いに対向する同じ波長の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて二つの照明光を干渉させることにより試料上に定在波を形成することを、互いに交わる二つの入射面上で行うようにした。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明では、他の検査装置で検出した試料上の欠陥
をこの欠陥の位置情報に基づいて光学顕微鏡を備えた検出装置で検出するステップと、こ
の光学顕微鏡を備えた検出装置で検出した欠陥の位置情報に基づいて他の検査装置で検出
した試料上の欠陥の位置情報を修正するステップと、他の検査装置で検出した欠陥を修正
した位置情報に基づいて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察するステップとを備え
た欠陥の観察方法において、他の検査装置で検出した試料上の欠陥を光学顕微鏡を備えた
検出装置で検出するステップで、試料に対して
第1の入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の第1の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて第1の二つの照明光を干渉させることにより試料上に第1の定在波を形成して、この第1の定在波が形成された試料からの散乱光のうち試料表面の微小な凹凸により発生した散乱光成分を空間フィルタで除去し、この空間フィルタで除去されなかった試料からの散乱光による像を検出することと、試料に対して第1の入射面と交わる第2の入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の第2の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて前記第2の二つの照明光を干渉させることにより試料上に第2の定在波を形成してこの第2の定在波が形成された試料からの散乱光のうち試料表面の微小な凹凸により発生した散乱光成分を空間フィルタで除去してこの空間フィルタで除去されなかった試料からの散乱光による像を検出することとを試料上に形成する第1の定在波の位相と第2の定在波の位相とを順次変えて複数回繰り返し
行い、この複数回繰り返して検出した位相を変えた定在波により照明された試料からの散乱光による複数の像を合成して合成像を作成し、この作成した合成像を処理して他の検査装置で検出した試料上の欠陥を検出するようにした。
【0019】
更に、上記課題を解決するために、本発明では、欠陥観察装置を、光学顕微鏡を備えた
検出手段と、他の検査装置で検出した試料上の欠陥をこの欠陥の位置情報に基づいて検出
手段で検出した結果に基づいて他の検査装置で検出した試料上の欠陥の位置情報を修正す
る処理手段と、この処理手段で修正した試料上の欠陥の位置情報に基づいて他の検査装置
で検出した試料上の欠陥を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する欠陥観察手段と
、試料を載置して検出手段と欠陥観察手段との間を移動するテーブル手段と、検出手段と
処理手段と観察手段とテーブル手段とを制御する制御手段とを備えて構成し、検出手段は
、
試料に対して第1の入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の第1の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて第1の二つの照明光を干渉させる第1の照明系と、試料に対して第1の入射面と直交する第2の入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の第2の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて第2の二つの照明光を干渉させる第2の照明系とを備えて、テーブル手段に載置された試料に対して同じ入射面上で互いに対向する方向から同じ波長の二つの照明光を同じ入射角度で入射させて二つの照明光を干渉させることにより試料表面に定在波を形成してこの定在波により試料表面を照明する照明部と、この照明部により形成された定在波で照明された試料表面からの散乱光のうち試料表面の微小な凹凸により発生した散乱光成分を除去する空間フィルタを備えて、この空間フィルタで除去されなかった試料表面からの散乱光による像を形成する検出光学系部と、この検出光学系部で形成した試料表面からの散乱光による像を検出する像検出部とを備え、制御手段は、像検出部で検出した試料表面からの散乱光による像を処理して他の検査装置で検出した試料上の欠陥を検出し、この検出した欠陥のテーブル手段上の位置情報に基づいて他の検査装置で検出した試料上の欠陥の位置情報を修正するようにした。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、他の欠陥検査装置で検出した欠陥をSEMを用いたレビュー装置で詳細に観察する場合において、観察対象の微小な欠陥を確実にSEMの観察視野内に入れることができるようになり、SEMを用いた欠陥の詳細観察のスループットをあげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を用いて詳細に説明する。
一般的に、半導体デバイスの製造工程で基板上に発生した欠陥を観察する場合、以下の欠陥観察手順で実施されている。まず、検査装置で試料(半導体ウェハ)全面を走査し、試料上に存在する欠陥を検出し、欠陥の存在する座標を取得する。次に、検査装置で検出された欠陥のいくつか若しくは全ての欠陥を、検査装置で取得した欠陥座標を基に、SEMを用いたレビュー装置で詳細に観察し、欠陥分類、発生原因分析などを行っている。
【0023】
図1は、本実施例におけるSEMを用いたレビュー装置100の構成の一例を示す。
本実施形態のレビュー装置は、被検査対象の試料(半導体ウェハ)101を搭載する試料ホルダ102、この試料ホルダ102を移動させて試料101の全面をSEM106の下に移動可能なステージ103、試料101を詳細観察するSEM106、SEM106の焦点を試料101の表面に合わせる為に試料101の表面の高さを検出する光学式高さ検出システム104、試料101の欠陥を光学的に検出して試料101上の欠陥の詳細位置情報を取得する光学顕微鏡105、SEM106と光学顕微鏡105の対物レンズを収納する真空漕112、SEM106および光学式高さ検出システム104および光学顕微鏡105を制御する制御システム125、ユーザインターフェース123、ライブラリ122、検査装置107等の上位システムへ接続するネットワーク121、検査装置107の外部データ等を保存し制御システムに与える記憶装置124、を備えて構成されている。
【0024】
SEM106は、内部に電子線源1061、電子線源から発射された1次電子をビーム状に引き出して加速する引出電極1062、引出電極で引き出され加速された1次電子ビームの軌道を制御する偏向電極1063、偏向電極で軌道を制御された1次電子ビームを試料101の表面に収束させる対物レンズ電極1064、軌道を制御されて収束した1次電子ビームが照射された試料101から発生した2次電子を検出する2次電子検出器1065、収束した1次電子ビームが照射された試料101から発生した反射電子などの比較的高エネルギの電子を検出する反射電子検出器1066等を備えて構成されている。
【0025】
光学顕微鏡105は、試料101に斜方から光を照射する照明光学系201、照明光学系201から光が照射された試料101の表面から発生した散乱光のうち試料101の上方に散乱した光を集光する集光光学系210、集光光学系で集光された試料101からの散乱光を検出する検出器207を備えて構成されている。
【0026】
制御システム125は、SEM106を制御するSEM制御部1251、光学顕微鏡を制御する光学顕微鏡制御部1252、レビュー装置100全体を制御する全体制御部1256を備えている。
【0027】
また、ステージ103、光学式高さ検出システム104、光学顕微鏡105、SEM106、ユーザインターフェース123、ライブラリ122、記憶装置124、は制御システム125と接続され、制御システム125はネットワーク121を介して上位のシステム(例えば、検査装置107)と接続されている。
【0028】
以上のように構成されるレビュー装置100において、特に、光学顕微鏡105は検査装置107で検出された試料101上の欠陥を検査装置107で検出した欠陥の位置情報を用いて再検出(以下検出と記述)する機能を有し、光学式高さ検出システム104はSEM106の1次電子ビームを試料101の表面に収束させるための1次電子ビームの焦点合わせを行う焦点合わせ手段としての機能を有し、制御システム125は光学顕微鏡105で検出された欠陥の位置情報に基づいて他の検査装置で検査して検出された欠陥の位置情報を補正する位置補正手段としての機能を有し、SEM106は制御システム125で補正された位置情報を用いて欠陥を観察する機能を有する構成となっている。ステージ103は、試料101を載置して、光学顕微鏡105で検出した欠陥がSEM106で観察できるように、光学顕微鏡105とSEM106との間を移動する。
【0029】
次に、
図2を用い、本実施例における光学顕微鏡105の詳細な構成例について説明する。
【0030】
光学顕微鏡105は、複数の照明光学系201a〜dを有する照明ユニット201、照明ユニット201の複数の照明光学系201a〜dにより照明された試料101から発生した散乱光を集光する対物レンズ202、対物レンズ202の高さ制御機構209、照明光を導入するハーフミラー214と照明レンズ213と明視野光源212とを備えた明視野照明光学系211、対物レンズ202により集光された散乱光の像を撮像素子207へ結像させる結像光学系210、結像光学系210により結像された試料1からの散乱光の像を撮像する撮像素子207、撮像素子207で得られた信号を処理する信号処理部221、信号処理部221で処理して得られた結果を表示する画像表示部222、信号処理部221で処理して得られた結果を保存する信号記憶部223を備えて構成されている。加えて、結像光学系210は、空間分布光学素子205及び後述するように、異なる光学特性を有する複数の空間分布光学素子205の中から、対象欠陥の検出に最適な空間分布光学素子205を選択するための空間分布光学素子切り替え機構208を適宜備えて構成されている。
【0031】
明視野光源212はランプ、又はレーザを用いることができる。レーザを用いる場合は、集光レンズ213はなくてもよく、ハーフミラー214をダイクロイックミラーへ交換することにより、照明を明るくし、より多くの散乱光を撮像素子207へ導くことができる。
【0032】
ハーフミラー214の反射と透過の比率は任意でよい。ただし、明視野光源212の光強度が十分確保される場合は、欠陥からの散乱光をより多く結像光学系210及び撮像素子207へ導く構成とする方が望ましく、明視野照明ユニットを使用しない場合には光軸301から外せるように可動な構成としても構わない。その場合はより多くの散乱光を撮像素子207へ導ける利点がある。
【0033】
照明光学系ユニット201は、照明光が結像光学系210の光軸301に対して対向するように配置された2組の合計4つの照明光学系、即ち照明光学系201aと201bの組合わせと照明光学系201cと201dの組合わせを備えている。
図2は、この2組の照明光学系201aと201bの組合わせと201cと201dの組合わせを、照明光の入射面が直交するように配置した構成を示している。照明光の入射面とは、試料101の表面に垂直かつ、試料101に入射する照明光の光軸に平行な面で、かつ照明光の光軸を面内に含む面のことである。試料101上には、一般に、直交する2方向の何れかの方向に主方向を有するパターンが形成されている場合が多いので、この直交する2方向に対応させるために直交する2つの入射面に沿ってそれぞれの照明光学系から発射された照明光を照射するような構成にした。
【0034】
対物レンズ202及び高さ制御機構209は真空漕112内に設置されており、対物レンズ202で集光された光は、真空漕112に設けられた真空封止窓111を介して結像光学系210に導かれる。
【0035】
高さ制御機構209については、その詳細な構成を図示していないが、その構成としては、例えばピエゾ素子を用いて移動させる構成、又は、ステッピングモータとボールネジを用いてリニアガイドに沿ってZ方向(結像光学系210の光軸301に沿った方向)へ移動させる構成、又は、超音波モータとボールネジを用いてリニアガイドに沿ってZ方向へ移動させる構成などを用いることが出来る。
【0036】
撮像素子207の配置位置は、試料101の表面と共役な位置もしくは対物レンズ202の瞳面と共役な位置でもよい。
【0037】
結像光学系210は、対物レンズ202の瞳面302の光学像を取り出すレンズ203、204、このレンズ203と204とで取出した瞳面302の光学像を撮像素子207上に結像させる結像レンズ206、レンズ203と204により光学像が取り出された対物レンズ202の瞳面303と共役な位置に挿入する空間分布光学素子205を適宜用いて構成される。
【0038】
本実施例においては、特性の異なる複数の空間分布光学素子205を複数保持し、空間分布光学素子205を切り替え可能な空間分布光学素子ホルダ208を瞳面303に挿入した構成としている。また、空間分布光学素子205は、必ずしも結像光学系210の光軸301上に配置しなくても良い。
【0039】
また、高さ制御機構209は制御システム125(
図1)と、撮像素子207は画像処理部221とそれぞれ接続されている。
【0040】
レンズ203、204は対物レンズ202の瞳面302の光学像を外部へ引き出して結像光学系210の内部の共役な位置に瞳面302の光学像を形成する為に用いる。
【0041】
また、空間分布光学素子ホルダ208は駆動することができ、結像光学系210の内部の瞳面303と共役な位置に取り出した瞳面303上と同じ光学像に空間分布光学素子ホルダ208で保持する複数の空間分布光学素子205の中から選択した空間分布光学素子205を挿入する。
【0042】
また、空間分布光学素子ホルダ208は、明視野観察をする場合もしくは空間分布光学素子205を使用しない場合には、取得画像が乱れることを回避する為に空間分布光学素子205を結像光学系の光路から外れた場所に退避させて観察する。又は、空間分布光学素子ホルダ208に空間分布光学素子208と同厚の平行平板ガラスを設置した場所へ切り替えるようにしてもよい。空間分布光学素子205と同厚の平行平板ガラスを設置するのは、空間分布光学素子205を外すと光路長が変化して撮像素子207に試料101の像が結像しなくなることを回避するためである。又は、平行平板ガラスを設置せず、像を結像させる結像レンズ206又は撮像素子207の位置を調整し、撮像素子207に結像させる機構を用いても良い。
【0043】
本実施例においては、対物レンズ202、レンズ203、204と結像レンズ206の組み合わせにより、試料101の像を撮像素子207の検出面上へ結像させる。本実施例においては、レンズ203、204とを使用する結像光学系210になっているがレンズ203、204はどちらか1枚でも良く、適宜選択可能である。
【0044】
次に、照明光学系ユニット201の構成例について
図3Aから
図3Dを用いて説明する。
【0045】
図2に示した構成例では、照明光学系ユニット201は、照明光学系201a乃至201dを2個1組で用い、それぞれの照明光学系から照射された光が同じ入射面をもち、かつ互いに対向する方向から、試料101上に照射するように配置する。この対向して配置された1対の照明光学系201aと201b又は201cと201dから発射された光を試料101上で干渉させ、定在波を作る。この対向して配置された1対の照明光学系201aと201b又は201cと201dを照明光学系ユニットセット2011とする。本実施例の場合、この照明光学系ユニットセット2011を2組備えることになる。複数の照明光学系ユニットセット2011を配置する際、それぞれの照明光学系ユニットセット2011の入射面が、非平行になるように配置する。
【0046】
図3A、
図3B、
図3Cは、二つの照明ユニット201を用いた照明光学系ユニットセット2011及びその変形例2012,2013の構成例である。
【0047】
図3Aは、集光照射型の照明光学系201a及び201bとして、同じ構成のものを、互いに対向させて配置させた照明光学系ユニットセット2011の構成例である。この集光照射型の照明光学系201a及び201bは、それぞれ、光源231a、光源231aより発射された光線を真空槽112へ導きかつ試料101表面上での照明位置を制御する落射ミラー232a、真空封し窓113を介して落射ミラー232aより真空槽112の内部へ導かれた光線を試料101へ導く照射ミラー233a、照射ミラー233aにより導かれた光線304a又は305aを試料101上に集光照射するための集光レンズ234a、試料101上で反射した0次光が光源231aに入射するのを防ぐ光アイソレータ235aを適宜用いて構成される。照明光学系201aと201bとは、光線304a、305aが試料101上で干渉するような角度条件で光線304aと305aとを試料101に照射する。
【0048】
図3Aに記す構成例は、それぞれの照明光学系201a及び201bから照射された照明光304a、305aの干渉現象が、試料101の表面状態に左右され難いという利点がある。
【0049】
図3Bは、照明光学系201aと照明光学系201b´を用いた反射集光型の照明光学系ユニットセット2012の構成例である。照明光学系201b´は、照明光学系201aから試料101上に集光照射された光304aが試料101上で反射し、その反射した光が照明光学系201b´に入射し、入射した光を平行にする集光レンズ234b、集光レンズ234bにより平行になった光を垂直反射するミラー236bを適宜用いて構成される。また、照明光学系201aから集光照射された光304aは、試料101表面で反射し拡がりながら集光レンズ234bに入射し、平行光になり、平行になった光は反射ミラー236bで垂直に反射され、垂直反射された光は集光レンズ235bにより、試料101上を集光照射する。照明光学系201aと201b´とは、光線304a、305bが試料101上で干渉するような角度条件で光線304aと305bとを試料101に照射する。
【0050】
図3Bに記す構成例は、照明光学系ユニットセット2012の構成要素を少なくすることができる。
【0051】
図3Cは、互いに同じ構成を有して平行光を照射する照明光学系201a´と照明光学系201b”を、互いに対抗させて配置させた構成例である。この平行照射型の照明光学系201a´と照明光学系201b”とは、それぞれ、光源231c、光源231cより照射される光線を真空槽112へ導きかつ試料101表面上での照明位置を制御する落射ミラー232c、真空封し窓113を介して落射ミラー232cより導かれた光線を試料101へ導く照射ミラー233c、試料101上で反射した0次光が光源231cに入射するのを防ぐ光アイソレータ235cを適宜用いて構成される。照明光学系201a´と201b”とは、光線304c、305cが試料101上で干渉するような角度条件で光線304cと305cとを試料101に照射する。
【0052】
図3Cに示した構成は、
図3A、
図3Bに示した集光照射型の照明光学系ユニットセット2011又は2012に比べて、広範囲で定在波の幅を一定に保つことができる。ただし、集光レンズ234aを持たないので、照明強度が
図3A、
図3Bに示した集光照射型の照明光学系ユニットセット2011又は2012に比べ弱くなるため、試料101表面の微細な欠陥からの散乱光を検出する際は、光源231cに高強度の光源を使用する必要がある。
【0053】
図3Dは、照明の入射面方位を可変する機能を持つ照明光学系201a” を備えた照明光学系ユニットセット2014の構成例である。照明の入射面方位を可変にする機能を有する照明光学系201a”を用いることで、少ない構成要素で任意の入射面方位で照明することを可能にする。また、少ない構成要素で、複数の入射面方位で照明することを可能にする。
【0054】
図3Dに示した照明光学系ユニットセット2014は、光源231d、光源231dから照射された照明光304dを任意の方位に反射する回転ミラー237d、回転ミラー237dで反射された光線304dを真空槽112へ導きかつ試料101表面上での照明位置を制御する落射円錐ミラー238d、真空封し窓113を介して落射円錐ミラー238dより導かれた光線304dを試料101へ導く照射円錐ミラー239d、照射円錐ミラー239dにより試料101上に集光照射され、試料101と照射円錐ミラー239dと落射円錐ミラー238dで反射された光を垂直反射する回転ミラー240d、回転ミラー240d、照射円錐ミラー239dと落射円錐ミラー238dで反射された光305dを試料101上で反射した305d光源231dに入射するのを防ぐ光アイソレータ235dを適宜用いて構成される。
【0055】
また、試料101上に集光照射する際は、入射光304d、305dの光路上それぞれに
図3Aで説明したような集光レンズ234dを配置しても良い。集光用レンズ234dは、1つのアキシコンレンズを用い入射光304d、305dを同時に集光しても良い。また、集光照射したい場合は、照射ミラー239dとして、非球面の反射面を持つ照射ミラーを使用しても良い。この場合、照射円錐ミラー239dにより試料101上に集光照射され反射した光は、照射円錐ミラー239dにより平行光になり、落射円錐ミラー238dで反射され、回転ミラー240dで垂直反射され、回転ミラー240d、落射円錐ミラー238dで反射され、照射円錐ミラー239dによって試料101上に集光照射される。落射円錐ミラー238dと照射円錐ミラー239dとは、光線304dと305dとが試料101上で干渉するような角度条件で光線304dと305dとを試料101に照射する。
【0056】
回転ミラー237dと240dとは、同じ回転の軸中心をもつ。落射円錐ミラー238d及び照射円錐ミラー239dは、検出光学系の光軸301を軸中心に、ある角度を0として、方位角−πからπの領域の光を反射するために円錐形状でもよいし、円錐形状の一部が欠けた形状でもよい。例えば、ある角度を0として方位角0からπの領域のみを反射する、半割り形状でもよい。半割り形状の場合、試料101で反射された光をトラップするために−πから0の領域をビームトラップにしてもよい。回転ミラー237d、240dが、回転することにより照明光304d、305dの入射面は任意の方位を有することができる。
【0057】
回転ミラー237d、240dの回転方位角は、制御システム125(
図1)で制御される。また、回転ミラー237d、240dの回転方位角は撮像素子207で得られた検出信号を記憶する記憶装置124(
図1)に保存することができる。
【0058】
図3A、
図3B、
図3C、
図3Dに構成例を示した照明光学系ユニットセット2011乃至2014は、対物レンズ202を高さ方向に移動させる高さ制御機構209によって、高さ方向に移動する。また、対物レンズ202を高さ方向に移動させる高さ制御機構209の高さ方向への変化量に応じて、照明光学系ユニット201を移動させる高さ制御機構209とは別の高さ制御機構(図示せず)を用いてもよい。対物レンズ202に連動し、照明光学ユニット201を高さ方向に変位させることによって、試料101上に発生する定在波を試料表面に対してシフトさせることを可能にする。また、高さ方向への変位量が大きくなる可能性がある場合、対物レンズ202の瞳面302と共役な面303の位置のシフト量が大きくなるため、照明光学系ユニット201、対物レンズ202、空間分布光学素子205を、高さ方向に移動させても良い。また、対物レンズ202の後段にズームレンズを設けて対物レンズ202の瞳面302と共役な面303の位置の変動を抑えるように構成してもよい。
【0059】
図2に示した光学顕微鏡105は、
図3A、
図3B、
図3Cに構成例を示した照明光学系ユニットセット2011乃至2013の何れかを2組搭載する。それぞれの照明光学系ユニットセット2011乃至2013に用いる光源231a、又は231cとして、
図3A、
図3B、
図3Cに示した構成例では、それぞれにレーザ光源を用いた構成を示した。これは、照明光量を大きく確保したい場合に有利な構成である。一方、レーザの可干渉性を向上させるという観点からは、図示していない単体のレーザを光源として用い、この単体のレーザ光源から発信されたレーザをハーフミラーやファイバを用い複数に分割させてそれぞれの照明光学系ユニットセット2011乃至2013に用いる光源231a、又は231cに送って光源として使用する方が適している。
【0060】
また、
図3B、3Dに記した構成例の様に、試料101表面上で反射した光に対して光軸に垂直に配置したミラー236b、240dを用い折り返し、試料101表面近傍で干渉させる構成の場合は、折り返しミラー236b、240dを可干渉距離に配置する必要がある。また、
図3B、3Dに記した構成例においては、入射光304aと305b、又は304dと305dがP偏光の場合、試料101に対する入射角はブリュースター角近傍を避けるほうが良い。ブリュースター角近傍では、P偏光の反射率が著しく低いため、試料101上で1回反射した光を照明光として使用する構成の場合、入射角はブリュースター角近傍を避けるべきである。
【0061】
次に、
図4,
図5を用いて空間分布光学素子205について説明する。
図4に、散乱光シミュレーションによって求めた微小な欠陥とラフネスを持った基板からの散乱光強度分布例を示す。ある微小な欠陥が存在する基板に対し、同じ入射面を持つ波長400nmの2本の照明光304、305をP偏光照明、互いに同じ入射角で対向して入射させ、基板表面で散乱された光のラジアル偏光成分の強度分布例である。なお、求める散乱光強度分布はラジアル偏光に限らず、全強度、偏光成分で記述しても良い。偏光成分は、ラジアル偏光でもよいし、アジマス偏光でもよいし、偏光の角度がπから−πの範囲に傾いた直線偏光でもよいし、楕円(円)偏光であってもよい。
【0062】
図4A及び
図4Bは、瞳面302中の散乱光の強度分布を示している。強度分布中の軸312は、照明光304、305の入射面を瞳面302上に対応させた軸を示す。矢印304は1つの照明光(例えば、
図3Aの光線304a)の入射方向を、矢印305はもう一方の照明光(例えば、
図3Aの光線305a)の入射方向を、それぞれ示している。
【0063】
図4Aは、照明光304、305で生成された定在波照明が基板101の表面のラフネス(基板表面の欠陥ではない微細な凹凸)で散乱された散乱光のラジアル偏光成分の強度分布、
図4Bは、微小な欠陥で散乱された散乱光のラジアル偏光成分の強度分布を示す。
図4A,
図4B中の領域321は散乱光強度の強い領域、領域322は散乱光強度がやや強い領域、領域323は散乱光強度のやや弱い領域、領域324は散乱光強度の弱い領域を示す。これらの散乱光の強度分布は、散乱光強度の相対的関係を示すものであり、
図4Aと
図4Bの各分布間で同一の相対強度表示領域であっても必ずしも同一強度を示すものではない(例えば、
図4Aの領域321と
図4Bの領域321とは必ずしも同一の強度を示すものではない)。
【0064】
図4A及び
図4Bに示す散乱光強度分布のように、照明対象からの散乱光分布は照明対象の形状に依存する。また、図示していないが、散乱光の光学特性は、欠陥の種類、形状、方向によって散乱光強度分布及び偏光分布が異なっている。
【0065】
図4A及び
図4Bで説明した散乱光シミュレーションは、試料101に斜め上方より照明光304、305を照射し、試料101表面のラフネス又は試料101の上に配置した異物または欠陥のモデルより散乱された光を結像光学系の試料101に最も近い光学素子の試料101に最も近い表面(瞳面)での、散乱光の強度分布と偏光分布を計算するというものである。入射する照明光は、一方向から1本の光線だけでも良い。
【0066】
また、光の振動方向、すなわち偏光方向を変えることで、散乱光の発生の仕方が変わり、試料101からの散乱光を抑制もしくは欠陥からの散乱光を増幅することができる。そのため、
図2に示した光学顕微鏡105の対物レンズ202の瞳面302上もしくは瞳面302の近傍、もしくは対物レンズ202の瞳面と共役な面303もしくは対物レンズの瞳面と共役な面303の近傍に、適宜旋光子機能を持った空間分布光学素子205を設定・配置することで、異物からの散乱光に対する基板表面からの散乱光の比を大きくすることができ、高S/Nの欠陥検出が可能となる。
図2に示した光学顕微鏡105においては、空間分布光学素子205を対物レンズ202の瞳面302と共役な面303に配置した構成を示している。
【0067】
空間分布光学素子205は、位相シフタ、波長板、偏向子、空間フィルタ、減光フィルタ、液晶光学素子、磁気光学変調子、フォトニック結晶を適宜用いて構成され、空間的に分布をもった透過特性、空間的に分布を持った旋光特性、空間的に分布を持った透過偏光方向選択特性をもっている。
【0068】
空間分布光学素子205の光学特性もしくは空間分布光学素子205を構成する、位相シフタの配置、波長板の遅相軸の傾きと進相軸の傾き、偏光方向制御装置による旋光方向、空間フィルタにおける遮光領域、偏光子の透過偏光軸方向、減光フィルタの透過率、液晶素子への印加電圧、磁気光学変調子への印加電圧、フォトニック結晶の光学特性などの決定方法は、
図4A及び
図4Bで説明した散乱光シミュレーション若しくは実測によって求められる散乱光強度分布を基にして決定する。
【0069】
次に、空間分布光学素子205の光学特性の決定方法とその効果について述べる。
空間分布光学素子205の第1の例として、偏光透過軸分布h(r,θ)を決定する方法例と空間分布光学素子205に偏光子231を用いる構成とその効果について述べる。
【0070】
初めに、散乱光シミュレーションによって高感度で検出したい微小欠陥または微小異物よりの散乱光強度分布fS(r,θ)及び散乱光のラジアル偏光の分布P
SP(r,θ)とS偏光の分布P
SS(r,θ)、および基板表面の微小凹凸よりの散乱光強度分布fN(r,θ)及び散乱光のP偏光の分布P
NP(r,θ)とS偏光の分布P
NS(r,θ)、を求める。
【0071】
空間分布光学素子205の偏光透過軸方向分布h(r,θ)は、基板表面の微小凹凸(ラフネス)よりの散乱光を最も遮断する偏光軸分布、すなわち(数1)のΠを最小化するh(r,θ)、または微小欠陥または微小異物よりの散乱光を最も透過させる偏光軸分布、すなわち(数2)のΛを最大化するh(r,θ)、または基板表面の微小凹凸(ラフネス)よりの散乱光を遮断し微小欠陥または微小異物よりの散乱光を透過させる偏光軸分布、すなわち(数3)のΩを最大化するh(r,θ)として決定される。
【0075】
これは、瞳面302上の領域を複数の領域に分割し、その分割された各領域それぞれにおいて、(数1)中のΠが最小化するh(r,θ)、または(数2)のΛを最大化するh(r,θ)、または(数3)のΩを最大化するh(r,θ)をそれぞれ決定してもよい。
【0076】
このように、光の振動方向、すなわち偏光方向を選択することで、試料1からの散乱光を抑制することができる。そのため、対物レンズ202の瞳面302上もしくは瞳面302と共役な位置303又はその近傍に配置する空間分布光学素子205に対して、上記に説明したような方法で選択した各領域ごとの偏光方向を設定することで、異物からの散乱光に対する基板表面からの散乱光の比を大きくすることができ、高S/Nの欠陥検出が可能となる。
【0077】
次に、空間分布光学素子205の構成の第2の例として、空間分布光学素子205に散乱光の偏光方向を制御する旋光子機能を持たせる構成とその効果及び旋光角η(θ)を決定する方法について述べる。
【0078】
瞳面302上の像をフーリエ変換すると、瞳面302上で検出光学系の光軸に対して対称な点での光は重ね合わせられる。この瞳面302上で検出光学系の光軸に対して対称な点での光の振動の位相が同じ場合、重ね合わせにより強め合いピーク強度が大きくなるが、位相差がΠ存在する場合、打ち消し合い弱め合う。
【0079】
例えば、
図4Bに示す微小欠陥からの散乱光のラジアル偏光成分は、等方的に分布している。そのため、
図4Bのような瞳面強度分布を持つ光を集光、結像させると、検出系の光軸に対して垂直な方向(以下,XY方向)振動成分は打ち消し合い、検出光軸に対して平行な方向(Z方向)振動成分のみがピーク強度に寄与する。拡大系の場合、物体側に比べ像側のNAが小さく、XY方向に対してZ方向の振動成分は弱いため微小物体像のピーク強度が弱くなってしまう。
【0080】
そのため、空間分布光学素子205に用いる旋光子の旋光角η(θ)として、(数1)中のΠが最小化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が打ち消しあう旋光角η(θ)、または(数2)のΛを最大化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が強め合う旋光角η(θ)、または(数3)のΩを最大化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が強め合う旋光角η(θ)の何れかに決定すれば良い。
【0081】
これはまた、瞳面302上の領域を複数の領域に分割し、その分割された各領域それぞれにおいて、(数1)中のΠが最小化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が打ち消しあう旋光角η(θ)、または(数2)のΛを最大化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が強め合う旋光角η(θ)、または(数3)のΩを最大化するh(r,θ)を重ね合せることでh(r,θ)方向に振動する光が強め合う旋光角η(θ)をそれぞれ決定してもよい。
【0082】
このように、光の振動方向、すなわち偏光方向を変えることで、試料1からの散乱光を抑制もしくは欠陥からの散乱光を増幅することができる。そのため、瞳面302上もしくは瞳面302近傍に、適宜旋光子を設定・配置することで、異物からの散乱光に対する基板表面からの散乱光の比を大きくすることができ、高S/Nの欠陥検出が可能となる。
【0083】
更に、空間分布光学素子205の構成の第3の例として、空間分布光学素子205として空間フィルタを用いる効果と空間フィルタの遮光領域g(r,θ)を決定する方法例とについて述べる。
【0084】
空間分布光学素子205に用いる空間フィルタとしては、散乱光シミュレーションもしくは実測によって異物散乱光量と基板表面散乱光量の比を導出し、その比があるしきい値より大きい領域の光を透過し、欠陥又は異物からの散乱光と試料表面からの散乱光の比がある閾値より小さい領域を遮光して、欠陥又は異物からの散乱光と試料表面からの散乱光の比が小さい領域からの散乱光成分を取り除くことによって、瞳面全体での欠陥又は異物からの散乱光量と試料からの散乱光量の比を大きくすることができる。
【0085】
空間フィルタの遮光領域g(r,θ)を決定する方法は、例えば(数4)に示したΨを最大化するように遮光領域g(r,θ)を最適化するという方法がある。
【0087】
また、瞳面302上の領域を複数の領域に分割し、その分割された各領域それぞれにおいて、異物からの散乱光に対する試料からの散乱光の比が小さい領域を遮光領域g(r,θ)と決定してもよい。
【0088】
このように、適宜空間フィルタを設定・配置することで、異物からの散乱光に対する試料からの散乱光の比を大きくすることができ、高S/Nの欠陥検出が可能となる。また、パターンからの回折光を除去する目的の空間フィルタを空間分布光学素子205の構成に用いても良い。
【0089】
次に、
図4A及び
図4Bを用いて説明した微小欠陥から散乱する散乱光のラジアル偏光成分を例に空間分布光学素子205の効果の一例について
図5を用いて説明する。
【0090】
微小欠陥による散乱光のラジアル偏光成分の光量に比べ、ラフネスを持った基板による散乱光のラジアル偏光成分光量の多い領域312及び331を遮光する空間フィルタ機能と、その領域312以外の領域332を透過するラジアル偏光を一様に平行な偏光方向に変換する空間的に異なる旋光角分布を持った旋光子機能をもった空間分布光学素子205を対物レンズ202の瞳面上もしくはその近傍に配置することで、欠陥からの散乱光量に対する基板からの散乱光量の比を大きくすることができる。これは更に、結像時に欠陥からの散乱光のピーク強度の強調を可能にし、高S/Nの欠陥検出を可能にする。また、同じ入射面を持ち互いに対向して配置された照明を用いる場合、空間分布光学素子205には、照明の入射面に対して対称な光学特性を持たせる。
【0091】
また、同じ入射面を持ち互いに対向して配置された照明の入射面が変化する場合、乃至、照明を切り替える場合、空間分布光学素子205を、照明の入射面に合わせて回転させる。もしくは、照明の入射面が変わる場合、複数の空間分布光学素子205の中から、照明の入射面に合わせて、空間分布光学素子205を選択することにより、空間分布光学素子205を切り替えるような構成にしてもよい。
【0092】
次に、検査装置107(
図1)で検出された欠陥を、
図1で説明したレビュー装置100で観察する処理の流れを
図6で説明する。
【0093】
まず、検査装置107を用い、試料101上の欠陥を検出し、検査装置107は試料101の検査情報を、ネットワーク121を介して出力し、レビュー装置100の記憶装置124に入力する。検査装置107が出力する試料101の検査情報は、欠陥座標、欠陥信号、欠陥形状、欠陥散乱光の偏光、欠陥種、欠陥ラベル、欠陥の特徴量、試料101表面の散乱信号のいずれかもしくはこれらの組み合わせで構成される検査結果と、検査装置107の照明入射角、照明波長、照明の方位角、照明強度、照明偏光、検出部の方位角、検出部の仰角、検出部の検出領域のいずれかもしくはこれらの組み合わせで構成される検査条件で構成される検査情報である。検査装置に複数の検出器が存在する場合は、検出器毎に出力される試料101を検査した結果得られる検査情報もしくは、複数の検出器出力を統合した試料101の検査情報を用いる。
【0094】
次に、記憶装置124に記憶した情報を用いて検査装置107で検出した欠陥の中から抽出した一部の欠陥、若しくは全部の欠陥をレビュー装置100で観察する。
【0095】
まず、試料101の粗アライメントを行う(S6001)。これは光学顕微鏡105による明視野観察によって行う。次に、検査装置107で取得した欠陥座標を基にレビュー装置100で予め他の検査装置107によって検出された欠陥の位置情報を用いて試料101上の観察したい欠陥が光学顕微鏡105の視野に入るようにステージ103を移動させる(S6002)。次に高さ制御機構209にて対物レンズ202を移動させて焦点合わせを行う(S6003)。
【0096】
次に、光学顕微鏡105と撮像素子207にて取得した画像より欠陥を探索し(S6004)、欠陥を検出したのであれば(S6005−YES)、光学顕微鏡105による欠陥検出位置と予め他の欠陥検査装置によって検出された欠陥の位置情報との差から予め他の欠陥検査装置によって検出された欠陥の位置情報を用いてこの欠陥をSEM106で観察しようとしたときの欠陥に対するSEM106の視野位置のズレ量を算出する(S6006)。
【0097】
検出した欠陥の位置ずれ量を計算しながら、次に観察すべき欠陥がないかをチェックする(S6007)。その結果、観察すべき欠陥がある場合(S6007の判定でNOの場合)にはS6002へ戻って、記憶装置124に記憶しておいた次に観察する欠陥の位置情報に基づいて、ステージ103を制御して次に観察する欠陥を光顕の視野内へ移動させ、S6003〜S6006のステップを実行する。
【0098】
S6007で観察すべき欠陥が無いと判定した場合(S6007の判定でYESの場合)、S6006で算出した各観察した欠陥の予め他の欠陥検査装置によって検出された位置情報とSEM106の視野位置情報(レビュー装置100の座標系における位置情報)とのズレ量を基にして前記予め他の欠陥検査装置によって検出されて光学顕微鏡105では検出しなかった欠陥について、他の欠陥検査装置の座標系で検出した位置情報をレビュー装置100の座標系における位置情報に補正する(S6008)。次に、試料101を搭載したステージ103を光学顕微鏡105の位置からSEM112の位置へ移動させ、この位置情報が補正された欠陥をSEM106の視野へ移動し、欠陥の観察を行う(S6009)。このとき、観察された情報は制御システム125へ送られ、データベース122に登録される。
【0099】
次に、他の欠陥情報が必要でない場合は(S6010−NO)、観察終了とし(S6011)、観察が必要である場合(S6010−YES)は観察したい欠陥位置情報を取得し、上述したS6008へ戻り、処理を進める。なお、上述した欠陥検出手順で欠陥検出できなかった場合(S6005−NO)は、欠陥が光学顕微鏡105の視野の外にいることが考えられるため、光学顕微鏡105の視野周辺部を探索してもよい。周辺部を探索する場合(S6012−YES)は、視野に相当する分だけ試料101を移動し(S6013)、上述した欠陥検出手順から処理を行う。また、周辺探索をしない場合(S6012−NO)は、手順に従って処理を進める。
【0100】
次に、
図3Aの照明光学系ユニットセット2011を2セットもつ構成例における光学顕微鏡105を用いて
図6で説明したレビュー装置100で観察する処理フローにおけるS6004の光顕視野内で欠陥探索するステップにおいて、高解像度の画像を得る処理の流れを
図7で説明する。
【0101】
まず、第1の照明光学系ユニットセット2011で、試料101上を同じ入射面を持つ照明光でお互いに対向する方向から照明を照射して干渉させ(S1001)、この干渉により試料101上に生じた定在波によって試料101上で散乱した光を検出器207で検出する(S1002)。
【0102】
次に、高さ制御機構209により対物レンズ202、照明光学系ユニット201を高さ方向に変位させ(S1003―NO:高さ方向の変位量は、高さ方向に変位させることにより生じる試料101の表面における定在波の位相変化がπ/Nとなる量)、照明光304、305によって試料101上に生じる定在波の位相を変調させ(S1004)、変調した定在波から生じる試料101上の散乱光を検出器207で検出する(S1002)。このステップ1002、1003、1004を、予め設定したシフト回数が得られるまでN回繰り返す。N回繰り返し(N+1)信号を取得した場合(S1003―YES)、第1の照明光学系ユニット2011からの照明光が試料101上に入射しないように遮光し(S1005)、第2の照明光学系ユニット2011で試料101上を同じ入射面を持つ照明光でお互いに対向する方向から照射し(S1006)、試料101上に生じた定在波によって試料101上で散乱した光を検出器207で検出する(S1007)。
【0103】
次に、高さ制御機構209により対物レンズ202、照明光学系ユニット201を高さ方向に変位させ(S1008―NO)、照明光304、305によって試料101上に生じる定在波の位相を変調させ(S1009)、変調した定在波から生じる試料101上の散乱光を検出器207で検出する(S1007)。このステップ1007、1008、1009を、予め設定したシフト回数が得られるまでN回繰り返す。N回繰り返し(N+1)回信号を取得した場合(S1008―YES)、信号取得終了する(S1010)。
【0104】
次に、上記で得られた2(N+1)回の信号を、周波数空間で合成し、合成した信号を逆変換し、検出器207で取得した信号よりも解像度の高い信号を合成する処理を行う(S1011)。最後に、S1011で合成した解像度の高い信号(画像)を処理して欠陥を検出してこの検出した欠陥の座標を求める(S1012)。
図6で示したフロー図のS6006においては、このS1012で求めた欠陥の座標情報を予め他の欠陥検査装置によって検出された欠陥の位置情報と比較して、他の欠陥検査装置によって検出された欠陥の位置座標とSEM106で観察した欠陥の位置座標のズレ量を算出する。
【0105】
S1003とS1008において、高さ制御機構209による高さ方向への対物レンズ202、照明光学系ユニット201の全変位量が大きい場合は、対物レンズ201だけでなく、検出光学系210を高さ方向へ変位させても良い。
【0106】
また、
図3Dに記した照明光学系ユニット201a”の構成の場合、S1005、S1006の代わりに、回転ミラー237d、240dを回転させ、回転前の照明の入射面と異なる入射面を持つ照明光を対抗させて照射し、定在波照明を生じても良い。また、回転ミラー237d、240dの角度は、検査装置107で得られた情報もしくは光学顕微鏡105の明視野観察時に得られた情報を元に、設定しても良い。
【0107】
他にも例えば、検査装置107で得られた輝度情報を元に、光学顕微鏡105の照明強度を調整するために適切な濃度の光学フィルタを設定、もしくは照明強度可変の照明の場合は照明自体の強度を調整するとことで、欠陥の大きさに合わせた照明強度を高速に設定してもよい。この場合、巨大欠陥に起こりうるゴーストや座標精度の悪化を抑制することができ、検査時間の短縮だけでなく欠陥の検出率及び座標精度の向上が可能である。
【0108】
また、検査装置のセンサが複数あり、異なる散乱角の散乱光を捕集できる構成の場合、センサごとの出力の違いから、対象欠陥の方位や、形状が推定できる。この推定に基づき、回転ミラー237d、240dの回転角などの光学条件を設定することにより、高感度な欠陥検出を可能とする。
【0109】
次に、試料101を定在波で照明し、定在波照明を変調させ、それぞれの変調条件において試料101上で発生した光を検出器207で取得した複数の信号を信号処理する効果について簡単に説明する。
【0110】
一般的に結像分布は、点像分布関数と散乱光分布のコンボリューションで表現される。照明強度を変調させると、点像分布関数は変化しないが、散乱光分布が変調し、結像分布が変化する。散乱光分布は、照明光分布と物体形状の積であり、照明光分布は既知である。
【0111】
これを、周波数空間で考える。例えば、フーリエ変換された結像分布関数は、フーリエ変換された点像分布関数と、フーリエ変換された散乱光分布の積で表現される。照明分布関数が異なる複数の信号を取得することは、上記の結像分布と点像分布関数と散乱光分布を表現する方程式の数を増やすことと等価である。そのため、照明分布を変調させ、それぞれの変調条件において、試料101で発生した光を検出器207で取得し、取得した複数の信号を統合処理することにより、1つの条件で取得した信号よりも、より高精度に物体の形状を導出することができる。
【0112】
2方向から照射される照明光の定在波を照明として用いる場合、この構成では、照明の入射方向の解像度は向上するが、照明の入射面に対し垂直方向の解像度は向上しない。そこで、本実施例では、試料101上に発生した定在波をシフトさせ、複数の照明条件毎に、試料101で散乱された光を取得するようにした。そして、この試料101上に発生させた定在波をシフトさせることを、対物レンズ202、照明光学系ユニット201を高さ方向にシフトさせることにより実現した。
【0113】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。