(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
N,N−置換アミノアルコール(I)が、N,N−ジブチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール、2−[(2−ジメチルアミノ−エチル)−メチルアミノ]−エタノール、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、ピペリジルエタノール、モルホリルエタノール及びエチルアニリンエタノールからなる群から選択されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
(メタ)アクリル酸エステル(D)が、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステルからなる群から選択されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの触媒的製造方法及びそれらの使用に関する。
【0002】
本発明の意味での(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸であると理解され、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルであると理解される。以下に、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリラートとも呼ばれる。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステルの製造はたいてい、アルコールでの、(メタ)アクリル酸の酸触媒エステル化若しくは塩基触媒エステル化又は他の(メタ)アクリル酸エステルのエステル交換により行われる。その際に、しばしば強酸又は強塩基が使用されるので、酸感受性又は塩基感受性の(メタ)アクリル酸エステルを、この方法でのエステル化又はエステル交換により、目的に合わせて製造することはできない。
【0004】
N,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル並びに多様な条件下でのそれらの製造は知られている。
【0005】
例えば、欧州特許出願公開(EP-A1)第1399408号明細書には、触媒としてチタンアルコラートを使用してN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートを製造するための、エステル交換が開示されている。その純生成物は、反応後に蒸留により得られる。
【0006】
欧州特許出願公開(EP-A1)第0118639号明細書には、Ti、Al、Zr、Ca及びMgのアルコラートを使用してN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートを製造するためのエステル交換が記載されている。
【0007】
特開2001-187763号公報からは、アルキル(メタ)アクリラートと、多様なアルコール、例えばN,N−ジメチルアミノエタノール及びN,N−ジエチルアミノエタノールとのエステル交換反応用の触媒としての、有機スズオキシドの使用が記載されている。同様に、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートを製造するためのエステル交換反応用の触媒としてのジブチルスズオキシドの使用は、欧州特許出願公開(EP-A1)第0906902号明細書から知られている。その際に、該触媒は最終的に、反応混合物から蒸留により分離される。
【0008】
更に、国際公開(WO-A1)第03/022796号には、N,N−ジアルキルアミノアルコールとメチルメタクリラートとからのN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリラートの合成用の触媒としてのジルコニウムアセチルアセトナートの使用が開示されている。該Zr含有触媒の分離は、同様に蒸留により行われる。
【0009】
更にまた、特公平06-051664号公報及び特願平6-220755号公報には、(メタ)アクリラートと多様なN,N−ジアルキルアミノアルコールとのエステル交換反応用の触媒としての、リン酸カリウムの使用が開示されている。その際に、該触媒はそれぞれのN,N−ジアルキルアミノアルコール中又は選択的にメタノール中に溶解される。これらの公報の教示によれば、該触媒が懸濁液として該反応混合物中へ導入される場合に、より低い収率で得られる。該反応混合物の安定化のために、常用の重合防止剤、例えばフェノチアジン及びヒドロキノンモノメチルエーテルが0.05〜5質量%(500〜20000ppm)の量で使用される。その最終生成物は同様に蒸留により、残っている触媒から分離される。
【0010】
特公平06-051663号公報からは、類似の方法が知られているが、しかし、同公報には、触媒としての炭酸カリウムの使用が記載される。この触媒はまず最初にメタノール中に溶解され、引き続き反応混合物に添加される。その最終生成物は同様に、該触媒を反応終了後に分離するために、蒸留により精製される。
【0011】
技術水準に記載された方法は幾つかの欠点を有する。技術水準に開示された触媒は、一部には水分感受性であり、かつ特に工業的利用のためには(例えばTi含有触媒及びSn含有触媒)、相対的に高価である。更に、全ての刊行物には、複雑な精製工程が開示されており、その際に最終生成物は常に蒸留により触媒から分離されなければならない。
【0012】
更にまた、特公平06-051664号公報、特願平6-220755号公報及び特公平06-051663号公報は、触媒のリン酸カリウムもしくは炭酸カリウムが、該反応混合物に供給される前に、まず最初に適した溶剤中に溶解されなければならないという欠点を有する。これは同様に最終生成物の蒸留による精製という結果になる。更に、3つ全ての公報に、多量(>500ppm)の重合防止剤の使用が開示されている。
【0013】
ゆえに、本発明の課題は、N,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが単純な出発物質から高い転化率及び高い純度で製造できる、更なる方法を提供することであった。更に、技術水準に記載された方法の前記の欠点が克服されるべきであり、特にその最終生成物の精製がより単純であるか又はそれどころか完全に行われないべきであり、更に重合防止剤の含量は低下されるべきである。
【0014】
該課題は、N,N−置換アミノアルコール(I)
【化1】
[式中、
Y及びZは、互いに独立してC
1〜C
20−アルキル、C
3〜C
15−シクロアルキル、アリールを表すか、又はY及びZは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、更なるヘテロ原子として酸素、硫黄、窒素又はC
1〜C
4−アルキル置換窒素を有していてもよい5〜9員の飽和ヘテロ環式基を形成し、かつ
Xは、隣接していないオキシ基及び/又は非置換の又はメトキシで置換されたC
1〜C
4−アルキルイミノ基1〜10個、好ましくは1〜5個、特に1又は2個により中断されていてよいC
2〜C
20−アルキレンを表すか、又はC
3〜C
15−シクロアルキレンを表す]を、
少なくとも1種の不均一系触媒(K)の存在下で、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(D)とエステル交換させ、その際に、不均一系触媒(K)を更なる溶剤を用いずに使用し、かつ該反応混合物中の重合防止剤の含量が<450ppm、好ましくは<400ppmである、N,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル(F)の製造方法により解決された。
【0015】
本発明による方法では、次の利点のうち少なくとも1つを有するN,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの製造が可能である:
・有利な出発物質の使用、
・高い収率、
・高い純度、
・複雑な後処理(例えば最終生成物又は溶剤の蒸留による分離、水の分離)なし。
【0016】
本発明による方法にとって特に有利であるのは、該触媒に適した溶剤の放棄である。不均一系触媒(K)は反応混合物中に懸濁されるので、蒸留による複雑な溶剤分離は不要である。その代わりに、不均一系触媒(K)を最終生成物の単純なろ過により分離することができる。
【0017】
更に、単に少量の重合防止剤が使用され、それにもかかわらず十分な重合防止が達成されることは有利である。
【0018】
個別的に、異なる基について示された集合概念は次の意味を有する:
C
1〜C
20−アルキル:20個までの炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の炭化水素基、好ましくはC
1〜C
10−アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,4,4−トリメチルペンチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル及びデシル並びにそれらの異性体。
C
3〜C
15−シクロアルキル:3〜15個の炭素環員を有する単環式の飽和炭化水素基、好ましくはC
3〜C
8−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル並びに飽和又は不飽和の環式系、例えばノルボルニル又はノルベニル(Norbenyl)。
アリール:6〜14個の炭素環員を有する単核ないし三核の芳香族環系、例えばフェニル、ナフチル及びアントラセニル、好ましくは単核ないし二核の、特に好ましくは単核の芳香族環系。
隣接していないオキシ基及び/又は非置換の又はメトキシで置換されたC
1〜C
4−アルキルイミノ基により中断されていてよいC
2〜C
20 アルキレン:エチレン、1,2−又は1,3−プロピレン、1,2−、2,3−又は1,4−ブチレン、(CH
2)
2O(CH
2)
2、(CH
2)
3O(CH
2)
3、(CH
2)
2O(CH
2)
2O(CH
2)
2、
【化2】
【0019】
基Y及びZが、これらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜9員の、好ましくは5又は6員のヘテロ環式基を形成する場合には、飽和ヘテロ環式基、例えばピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニルが考慮に値しうる。
【0020】
置換基Y及びZはそれぞれ同じか又は異なっていてよい。
【0021】
好ましい実施態様によれば、置換基Y及びZは、それぞれ互いに独立してC
1〜C
10−アルキル、アリールを表すか、又はY及びZは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、更なるヘテロ原子として酸素、窒素又はC
1〜C
4−アルキル置換窒素を有していてもよい5〜9員のヘテロ環式基を形成する。
【0022】
更に好ましい実施態様によれば、置換基Y及びZは、これらが結合する窒素原子と一緒になって、更なるヘテロ原子として酸素、窒素又はC
1〜C
4−アルキル置換窒素を有していてもよい5又は6員のヘテロ環式基を形成する。
【0023】
更に好ましい実施態様において、置換基Y及びZは、それぞれ互いに独立してC
1〜C
10−アルキル又はアリール、好ましくはC
1〜C
6−アルキル又はフェニル及び特に好ましくはC
1〜C
4−アルキル又はフェニルであるか、又は一緒になってヘテロ環、好ましくはピペリジル又はモルホリルを形成する。
【0024】
好ましい実施態様において、橋員Xは、隣接していないオキシ基及び/又は非置換の又はメトキシで置換されたC
1〜C
4−アルキルイミノ基1又は5個により中断されていてよいC
2〜C
10−アルキレンを表し、特にC
2〜C
10−アルキレン、好ましくはC
2〜C
6−アルキレン、及び特に好ましくはC
2〜C
4−アルキレンを表す。
【0025】
本発明により適したN,N−置換アミノアルコール(I)は、例えばN,N−ジブチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール、2−[(2−ジメチルアミノ−エチル)−メチル−アミノ]エタノール、2−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−エタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、ピペリジルエタノール、モルホリルエタノール及びエチルアニリンエタノールである。
【0026】
N,N−置換アミノアルコール(I)が光学活性である場合には、これらは好ましくはラセミで又はジアステレオマー混合物として使用されるが、しかしながら、これらを純粋な鏡像体もしくはジアステレオマーとして又は鏡像体混合物として使用することも可能である。
【0027】
アクリラートの一般的な製造方法
該反応工程において、N,N−置換アミノアルコール(I)と、少なくとも1種、好ましくはちょうど1種の(メタ)アクリル酸エステル(D)とのエステル交換は、本発明によれば少なくとも1種の触媒(K)の存在下で行われる。
【0028】
エステル交換のためには、飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(D)、好ましくは(メタ)アクリル酸の飽和C
1〜C
10−アルキルエステル又はC
3〜C
12−シクロアルキルエステル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸の飽和C
1〜C
4−アルキルエステルを使用することができる。
【0029】
飽和は本明細書の範囲内で、C−C多重結合を有しない化合物を意味する(もちろん(メタ)アクリル単位中のC=C二重結合を除く)。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル(D)の例は、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸n−オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリラート及び1,2−エチレングリコールモノ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート及び1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート及びペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラートである。
【0031】
特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、極めて特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル及び(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、特に(メタ)アクリル酸メチルエステル及び(メタ)アクリル酸エチルエステル及び殊に(メタ)アクリル酸メチルエステルである。
【0032】
本発明により使用できる触媒(K)は、反応混合物中に、更なる溶剤を使用することなく懸濁される不均一系触媒である。
【0033】
不均一系触媒は本明細書の範囲内で、1g/l以下、好ましくは0.5g/l以下及び特に好ましくは0.25g/l以下の25℃での反応媒体への溶解度を有するものである。
【0034】
好ましくは、触媒(K)として無機塩が使用される。
【0035】
本発明により使用できる無機塩は好ましくは、7.0以下、好ましくは4.0以下及び特に好ましくは1.0以下のpK
B値を超えるものである。同時に、該pK
B値は1.0を下回るべきではなく、好ましくは1.5以上であり、かつ特に好ましくは1.6以上である。本発明により使用できる無機塩は好ましくは不均質な(heterogen)無機塩である。
【0036】
無機塩は好ましくは、炭酸イオン(CO
32-)、炭酸水素イオン(HCO
3-)、リン酸イオン(PO
43-)、リン酸水素イオン(HPO
42-)、リン酸二水素イオン(H
2PO
4-)、硫酸イオン(SO
42-)、亜硫酸イオン(SO
32-)及びカルボン酸イオン(R−COO
-)[式中、Rは、C
1〜C
18−アルキルを表すか、又は1個以上の酸素原子及び/又は硫黄原子及び/又は1個以上の置換又は非置換のイミノ基により中断されていてもよいC
2〜C
18−アルキル又はC
6〜C
12−アリールを表す]からなる群から選択される、少なくとも1種のアニオンを有する。
【0037】
好ましいのは炭酸イオン及びリン酸イオンであり、特に好ましいのはリン酸イオンである。
リン酸イオンは、縮合生成物、例えば二リン酸イオン、三リン酸イオン及びポリリン酸イオンであるとも理解できる。
【0038】
無機塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、セリウム、鉄、マンガン、クロム、モリブデン、コバルト、ニッケル又は亜鉛からなる群から選択される、好ましくは少なくとも1種、特に好ましくはちょうど1種のカチオンを有する。
【0039】
好ましいのはアルカリ金属であり、かつ特に好ましいのはリチウム、ナトリウム又はカリウムである。
【0040】
もちろん、無機塩は、無水型で又はそれらの水和物型で使用することができる。しかしながら、好ましくは、これらは無水型で使用される。
【0041】
特に好ましい無機塩は、Li
3PO
4、K
3PO
4、Na
3PO
4、K
2CO
3及びNa
2CO
3並びにそれらの水和物であり、極めて特に好ましいのはK
3PO
4である。
【0042】
K
3PO
4は、本発明により、無水型で並びに三水和物、七水和物又は九水和物として使用することができる。
【0043】
触媒エステル交換は、一般的に30〜140℃で、好ましくは30〜100℃で、特に好ましくは40〜90℃で及び極めて特に好ましくは50〜80℃で行われる。
【0044】
場合により、該反応は、エステル交換の際に生じる低沸点アルコールを、場合によりアゼオトロープとして、留去する場合には、例えば200hPaから常圧まで、好ましくは200〜600hPa及び特に好ましくは250〜500hPaの軽度の真空下に実施することができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル(D)とN,N−置換アミノアルコール(I)とのモル比は、前記の触媒(K)のうち1種により触媒されたエステル交換の場合に、通例1:1〜10:1モル/モル、好ましくは1:1〜5:1モル/モル及び特に好ましくは1:1〜4:1モル/モルである。
【0046】
本発明により触媒されたエステル交換の際の反応時間は通例45分〜18時間、好ましくは2時間〜12時間及び特に好ましくは3〜10時間である。
【0047】
反応媒体中の触媒(K)の含量は、使用されるN,N−置換アミノアルコール(I)の合計を基準として、通例、約0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜3.0モル%及び特に好ましくは0.3〜2.0モル%の範囲内である。
【0048】
該エステル交換の際に、重合防止剤(以下に記載されるような)は絶対に必要である。
【0049】
本発明による方法の実施中の酸素含有ガスの存在(下記参照)は好ましい。
【0050】
本発明によるエステル交換の場合に、通例、500未満、好ましくは200未満及び特に好ましくは150未満のAPHA色数(DIN ISO 6271による)を有する生成物が得られる。
【0051】
該反応は有機溶剤又はそれらの混合物中で又は溶剤を添加することなく、進行しうる。該バッチは通例、大体において無水である(すなわち10質量%未満、好ましくは5質量%未満、特に好ましくは1質量%未満及び極めて特に好ましくは0.5質量%未満の含水量)。
【0052】
適した有機溶剤は、これらの目的に知られたもの、例えば第三級モノオール、例えばC
3〜C
6−アルコール、好ましくはt−ブタノール、t−アミルアルコール、ピリジン、ポリ−C
1〜C
4−アルキレングリコールジ−C
1〜C
4−アルキルエーテル、好ましくはポリエチレングリコールジ−C
1〜C
4−アルキルエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500、C
1〜C
4−アルキレンカーボネート、特にプロピレンカーボネート、酢酸C
3〜C
6−アルキルエステル、特に酢酸t−ブチルエステル、THF、トルエン、1,3−ジオキソラン、アセトン、イソブチルメチルケトン、エチルメチルケトン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、アセトニトリル、並びにそれらの一相又は多相の混合物である。
【0053】
しかしながら、好ましくは、該溶剤の使用は放棄される。
【0054】
エステル交換の特に好ましい実施態様において、該反応は出発物質として使用される(メタ)アクリル酸エステル(D)中で実施される。極めて特に好ましいのは、該反応を、生成物(F)が、該反応の終了後に、出発物質として使用された(メタ)アクリル酸エステル(D)中の約10〜80質量%溶液として、特に20〜50質量%溶液として生じるように実施することである。
【0055】
出発物質は、溶解して、固体として懸濁して又は乳濁液のいずれかで、反応媒体中に存在する。
【0056】
該反応は連続的に、例えば管型反応器中又は撹拌槽列反応器中で、又は不連続に、行うことができる。
【0057】
該反応は、そのような反応に適した全ての反応器中で実施することができる。そのような反応器は当業者に知られている。好ましくは、該反応は撹拌槽型反応器又は固定床反応器中で行われる。
【0058】
該反応バッチの混合のために、任意の方法を使用することができる。特殊な撹拌装置は不要である。混合は、例えばガス、好ましくは酸素含有ガスの供給(下記参照)により行うことができる。反応媒体は一相又は多相であってよく、かつ該反応物は、その中に溶解されるか、懸濁されるか又は乳化される。該温度は、該反応中に所望の値に調節され、かつ所望の場合には、該反応過程中に高めるか又は低下させることができる。
【0059】
該反応が固定床反応器中で実施される場合には、固定床反応器に、好ましくは固定化触媒(K)が備えられており、その際に反応混合物は、触媒(K)が充填されたカラムへポンプ輸送される。該反応を流動床反応器中で実施することも可能であり、その際に触媒(K)は担体上に固定化されて使用される。反応混合物を連続的にカラムへポンプ輸送することができ、その際に該流量で、該滞留時間、ひいては所望の転化率が制御できる。反応混合物を、循環させてカラムへポンプ輸送することも可能であり、その際に真空下に、遊離したアルコールを同時に留去することもできる。
【0060】
エステル交換の際に(メタ)アクリル酸エステル(D)から遊離したアルコールの除去は、連続的又は段階的に、それ自体として知られた方法で、例えば真空、アゼオトロープ除去、ストリッピング、吸収、膜による浸透気化及び拡散、又は抽出により行われる。
【0061】
ストリッピングは、場合により蒸留に加え、例えば酸素含有ガス、好ましくは空気又は空気−窒素混合物を反応混合物に導通することにより、行うことができる。
【0062】
吸収のためには、好ましくはモレキュラーシーブ又はゼオライト(例えば約3〜10Åの範囲内の孔径)が、蒸留によるか又は適した半透膜を用いる分離が、適している。
【0063】
しかし、(メタ)アクリル酸エステル(D)と、しばしばアゼオトロープを形成し、この母体となるアルコールとの分離された混合物を、(メタ)アクリル酸エステル(D)の製造用設備へ直接供給して、そこで(メタ)アクリル酸とのエステル化において再利用することも可能である。
【0064】
該反応の終了後に、エステル交換から得られた反応混合物は、更に精製することなく使用することができ、又は必要な場合には更なる工程において精製することができる。
【0065】
通例、精製工程において、使用された触媒のみが反応混合物から分離され、かつ反応生成物が、場合により使用された有機溶剤から分離される。
【0066】
不均一系触媒の分離は通例、ろ過、電気ろ過、吸収、遠心分離又はデカンテーションにより行われる。分離された不均一系触媒は、引き続き更なる反応のために使用することができる。
【0067】
しかしながら、好ましくは、第一精製工程において、該触媒及び場合により使用された溶剤のみが分離される。
【0068】
場合により精製された反応混合物は、場合により蒸留にかけられ、該蒸留においてN,N−置換アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル(F)が、蒸留により未反応(メタ)アクリル酸エステル(D)並びに場合により形成された副生物から分離される。
【0069】
該蒸留ユニットはたいてい、循環蒸発器及び凝縮器を備えた常用の構造形式の精留塔である。該供給は、好ましくは該塔底領域中へ行われ、該塔底温度はここでは例えば80〜160℃、好ましくは100〜140℃であり、該塔頂温度は好ましくは80〜120℃であり、かつ該塔頂圧力は3〜20mbar、好ましくは3〜5mbarである。もちろん、当業者は、N,N−置換アミノアルコールのそれぞれの(メタ)アクリル酸エステル(F)を蒸留により精製できる、他の温度範囲及び圧力範囲も突き止めることができる。本質的であるのは、その際に、所望の生成物ができるだけ分解反応にさらされていない条件下での、出発物質及び副生物からの所望の生成物の分離である。
【0070】
該蒸留ユニットは通例、5〜50の理論段を有する。
【0071】
該蒸留ユニットは、それ自体として知られた構造形式のものであり、かつ常用の内部品を有する。塔内部品として、慣用の原則的に全ての内部品、例えばトレイ、規則充填物及び/又は不規則充填物が考慮に値する。トレイの中では、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、Thormannトレイ及び/又はデュアルフロートレイが好ましく、不規則充填物の中では、リング、コイル、サドル体、ラシヒリング、Intosリング若しくはポールリング、ベルルサドル若しくはインタロックスサドル、Top-Pak等又は網状物(Geflechten)を有するものが好ましい。
【0072】
好ましくは、所望の生成物は不連続に蒸留され、その際にまず最初に低沸成分、たいてい溶剤又は未反応(メタ)アクリル酸エステル(D)が、反応混合物から除去される。これらの低沸成分の分離後に、蒸留温度が高められる及び/又は真空が低下され、かつ所望の生成物は留去される。
【0073】
残っている蒸留残留物はたいてい廃棄される。
【0074】
更に、最終生成物は、吸着により、例えば酸化アルミニウム、活性炭、シリカ又は当業者に知られた他の吸着剤を用いる吸着により、精製され、かつ得ることができる。
【0075】
本発明によるエステル交換の際の反応条件は穏やかである。低温及びその他の穏やかな条件に基づき、さもないと例えば使用された(メタ)アクリル酸エステル(D)の、さもないと重合防止剤の添加によってのみ防止できる、望ましくないラジカル重合による、該反応における副生物の形成が回避される。
【0076】
本発明による反応操作の場合に、反応混合物に、いずれにしても(メタ)アクリル酸エステル(D)中に含まれる重合防止剤に加え、追加的な重合防止剤、例えばヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、フェノール類、例えば2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチル−フェノール又はN−オキシル、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル又はBASF AktiengesellschaftのUvinul(登録商標) 4040Pを添加することができ、その際に本発明によれば<450ppmの全量を超えてはならない。有利に、エステル交換は、酸素含有ガス、好ましくは空気又は空気−窒素混合物の存在下で、実施される。
【0077】
これらの重合防止剤は、個々に又は任意の混合物で使用することができる。しかしながら、発明に本質的であるのは、重合防止剤の含量が450ppm以下、好ましくは400ppm以下、特に380ppm以下及び特に好ましくは350ppm以下であることである。これは特に、(メタ)アクリル酸エステル(F)の更なる使用にとって重要である。
【0078】
本発明により製造されるN,N−置換アミノアルコール(I)の(メタ)アクリル酸エステル(F)は例えば、分散液、例えばアクリル分散液の製造におけるモノマー又はコモノマーとして、反応性希釈剤として、例えば放射線硬化可能なコーティング材料における又は塗料における反応性希釈剤として、並びに紙分野における、化粧品分野における、医薬分野における、農薬製剤における、繊維工業における及び採油の分野における使用のための分散液において、使用される。
【0079】
次の実施例は、本発明の特性を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【0080】
実施例
"部"として、本明細書においては、他に示されない場合には、"質量部"と理解される。
【0081】
例1
エステル交換を、液分配器を備えたオルダーショウ型塔と、内部温度計と、ガス導入部と、アンカー型撹拌機とを有する750mLミニプラント反応器中で行った。還流比は25:1(還流量:留出量)であり、アンカー型撹拌機の撹拌速度は300rpmであり、かつ空気導入量は1.5L/hであった。
【0082】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.19g(350ppm)、メチルメタクリラート(MMA)600g(6.0モル)及びN−エチル−N−ヒドロキシエチルアニリン165.3g(1.0モル)並びに無水リン酸カリウム4.25g(N−エチル−N−ヒドロキシエチルアニリンを基準として2.0モル%)を装入し、撹拌した。真空に調節し(300mbar)、懸濁液をゆっくりと70℃に加熱した。反応中に連続的に留出物(MMA/メタノール)を除去し、還流比に相応して返送した。塔底中の温度は70〜75℃であり、該塔の頂部での温度は38〜66℃であった。反応をGC分析を用いて追跡した。300分後に、浴温を60℃に低下させ、未反応MMAを留去した。反応を終え、真空を止めた。懸濁液を冷却し、引き続き加圧ヌッチェで、残っている触媒をろ別した。
【0083】
澄明な溶液が、>98%の純度を有するエチルアニリンエチルメタクリラートの90%の収率で得られた。
【0084】
例2
エステル交換を、例1に記載された装置中で行った。
【0085】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.30g(350ppm)、メチルメタクリラート(MMA)600g(6.0モル)及びN,N−ジブチルアミノエタノール259.9g(1.5モル)並びに無水リン酸カリウム6.37g(N,N−ジブチルアミノエタノールを基準として2.0モル%)を装入し、撹拌した。真空に調節し(300mbar)、懸濁液をゆっくりと70℃に加熱した。反応中に連続的に留出物(MMA/メタノール)を除去し、還流比に相応して返送した。塔底中の温度は70〜76℃であり、該塔の頂部での温度は38〜66℃であった。反応をGC分析を用いて追跡した。340分後に、浴温を60℃に低下させ、未反応MMAを留去した。反応を終え、真空を止めた。懸濁液を冷却し、引き続き加圧ヌッチェで、残っている触媒をろ別した。
【0086】
澄明な溶液が、>90%の純度を有するN,N−ジブチルアミノエチルメタクリラートの95%の収率で得られた。
【0087】
例3
エステル交換を、例1に記載された装置中で行った。
【0088】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.25g(350ppm)、メチルメタクリラート(MMA)600g(6.0モル)及び2−(2−ジメチルアミノ−エチルアミノ)エタノール219.5g(1.5モル)並びに無水リン酸カリウム6.37g(2−(2−ジメチルアミノ−エチルアミノ)エタノールを基準として2.0モル%)を装入し、撹拌した。真空に調節し(300mbar)、懸濁液をゆっくりと70℃に加熱した。反応中に連続的に留出物(MMA/メタノール)を除去し、還流比に相応して返送した。塔底中の温度は70〜76℃であり、該塔の頂部での温度は38〜66℃であった。反応をGC分析を用いて追跡した。240分後に、浴温を60℃に低下させ、未反応MMAを留去した。反応を終え、真空を止めた。懸濁液を冷却し、引き続き加圧ヌッチェで、残っている触媒をろ別した。
【0089】
澄明な溶液が、>97%の純度を有する2−(2−ジメチルアミノ−エチルアミノ)−エチルメタクリラートの95%の収率で得られた。
【0090】
例4
エステル交換を、例1に記載された装置中で行った。
【0091】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.28g(350ppm)、メチルメタクリラート(MMA)600g(6.0モル)及びヒドロキシエチルピペリジン193.8g(1.5モル)並びに無水リン酸カリウム6.37g(ヒドロキシエチルピペリジンを基準として2.0モル%)を装入し、撹拌した。真空に調節し(300mbar)、懸濁液をゆっくりと70℃に加熱した。反応中に連続的に留出物(MMA/メタノール)を除去し、還流比に相応して返送した。塔底中の温度は70〜76℃であり、該塔の頂部での温度は38〜66℃であった。反応をGC分析を用いて追跡した。270分後に、浴温を60℃に低下させ、未反応MMAを留去した。反応を終え、真空を止めた。懸濁液を冷却し、引き続き加圧ヌッチェで、残っている触媒をろ別した。
【0092】
澄明な溶液が、約90%の純度を有するピペリジニルエチルメタクリラートの>99%の収率で得られた。該溶液はなお5%のアルコールを含有していた。
【0093】
残っているアルコールを、生成物から、蒸留(0.1mbar、塔底温度86℃)により分離した。
【0094】
最終生成物は、86%の収率及び>98%の純度で得られた。
【0095】
例5
エステル交換を、例1に記載された装置中で行った。
【0096】
この装置中に、ヒドロキノンモノメチルエーテル0.28g(350ppm)、メチルメタクリラート(MMA)600g(6.0モル)及びヒドロキシエチルモルホリン196.7g(1.5モル)並びに無水リン酸カリウム6.37g(ヒドロキシエチルモルホリンを基準として2.0モル%)を装入し、撹拌した。真空に調節し(300mbar)、懸濁液をゆっくりと70℃に加熱した。反応中に連続的に留出物(MMA/メタノール)を除去し、還流比に相応して返送した。塔底中の温度は70〜76℃であり、該塔の頂部での温度は38〜66℃であった。反応をGC分析を用いて追跡した。360分後に、浴温を60℃に低下させ、未反応MMAを留去した。反応を終え、真空を止めた。懸濁液を冷却し、引き続き加圧ヌッチェで、残っている触媒をろ別した。
【0097】
澄明な溶液が、>92%の純度を有するモルホリノエチルメタクリラートの86.5%の収率で得られた。該溶液はなお3.7%のアルコールを含有していた。
【0098】
残っているアルコールを、生成物から、蒸留(0.1mbar、塔底温度86℃)により分離した。
【0099】
最終生成物は、86%の収率及び>98%の純度で得られた。
【0100】
例6
エステル交換を、アンカー型撹拌機と、内部温度計と、ガス導入部と、塔(構造化スルザーCYパッキン、9の理論段)と、液分配器とを備え、加熱できる4L二重ジャケット反応器中で実施した。
【0101】
メチルメタクリラート(MMA)2000g(20モル)中のヒドロキノンモノメチルエーテル(MeHQ)1.06g(350ppm)の溶液を装入した。ジメチルアミノプロパノール1032g(10モル)並びに無水リン酸カリウム42.45gを添加し、空気を導入しながら(1.5L/h)並びに300mbarの真空下に、沸騰するまで加熱した(ジャケット温度95℃)。還流比を10:1、次いで5:1(15分後)、次いで2:1(60分後)及び最後に再び5:1(90分後)に調節した。生じたメタノールとMMAとのアゼオトロープを留去した。塔底温度は、反応中に70〜90℃であり、塔頂温度は33〜63℃であった。360分後に、64℃に冷却し、未反応MMAを留去した。懸濁液を冷却し、加圧ヌッチェでろ過した。
【0102】
生成物1517gが97%の純度で得られた。