(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(a1)が、4,4’−ジヒドロキシビフェニルであり、成分(a2)が、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
前記成形材料が、ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーの他に、場合により、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドおよびポリ−p−フェニレンからなる群から選択される、少なくとも1種のさらなるポリマーを含んでいる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含む熱可塑性成形材料の、ガスの導通のための自立式成形部材を製造するための使用に関する。
【0002】
配管系は、通常、自立式成形部材、例えば、管部品、接続部品および配管バルブから構成される。
【0003】
配管系は、易流動性またはポンプ圧送性(pumpfaehig)の固体、液体およびガスの輸送に用いられる。配管系に対する要求は、輸送される媒体しだいである。特に、ガスの輸送では、配管系の気密性に高い要求が課される。
【0004】
配管系のための材料として、通常、金属材料、例えば、可鍛鋳物、真鍮、砲金、銅および鋼鉄が使用される。金属材料製配管系を腐食から保護するために、これらの配管系は、部分的に内側からプラスチックで内張りされる。このような内張りは、「ライナー」とも表される。前記配管系においては、このライナーは、腐食防止としてのみ使用される。このライナーは、前記配管系において、主たる機能を果たすものとして使用されるものではない。したがって、前記ライナーは、自立式ではない。さらに、このライナーは、前記配管系の気密性を高めるために用いられるものではない。したがって、ライナーを有する配管系においては、前記金属材料(ジャケット(Ummantelung))が、主たる機能を果たしている。さらに、前記金属材料は、このような配管系において、配管系の気密性を保証するために使用される。ライナーを含む金属材料製配管系は、耐腐食性であり、ガスの導通に好適である。しかし、これらの配管系は、高価である。
【0005】
好都合な配管系を提供するために、自立式のプラスチック製配管系が開発された。この自立式の配管系の場合、気密性および主たる機能は、プラスチックによってのみ達成される。したがって、このような自立式の配管系は、金属材料製ジャケットを有していない。
【0006】
近年、ガスの輸送のために、自立式のプラスチック製配管系の重要性がいちだんと増している。ここで、プラスチックとして、ポリエチレン(PE)、架橋ポリエチレン(PEX)およびポリアミド(PA)が現在使用されている。
【0007】
プラスチック製配管系のための自立式成形部材、例えば、管部品および接続部品は、通常、成形方法により成形材料から作り出される。成形方法では、成形材料は、特定の温度範囲内で機械力を作用させて成形される。好適な成形方法は、例えば、射出成形、押出または圧縮である。
【0008】
プラスチック製配管系は、金属材料製配管系と比べて、その機械的材料特性のゆえに、はるかに簡単に取り付けることができるという利点がある。前述のプラスチックは、配管系に対する取り付け特性に関して満足すべき特性を示している。
【0009】
しかし、気密性に関して、特にガスの輸送の場合、改善の余地がまだある。これには、特に、2つの管部品が1つの接続部品を介して互いに接続される接続箇所が該当する。
【0010】
前述のプラスチック製配管系を使用する場合、特に、換気されていない領域または換気の悪い領域で使用する場合、問題が非常に多く起こる。臭気ガス、例えば、天然ガスおよび別の燃焼ガスの輸送の場合、発生する臭気障害により誤認警報が作動することがある。最悪の場合、燃焼性ガスの輸送時に、爆発性の混合ガスが形成することがある。
【0011】
したがって、本発明の基礎をなす課題は、公知の配管系と比べて気密性が高い、ガスの導通のための配管系のための自立式成形部材を提供することにある。さらに、この自立式成形部材は、先行技術に記載された自立式成形部材に匹敵する、または改善された機械的材料特性を有しているものである。
【0012】
前記課題は、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含む熱可塑性成形材料の、ガスの導通のための自立式成形部材を製造するための本発明による使用により解決される。
【0013】
驚くべきことに、前記熱可塑性成形材料の本発明による使用の場合に、ガスの導通のための配管系の構成に好適な自立式成形部材が得られることが判明した。この自立式成形部材およびそれから構成される成形部材は、先行技術に記載された系と比べて気密性が高い。さらに、この自立式成形部材は、きわめて優れた機械的材料特性を有している。前記成形部材は、優れた衝撃靭性および優れた耐化学薬品性によって特に際立っている。さらに、ガスのための配管系を構成するための自立式成形部材を使用する場合、誤認警報の作動および爆発性の混合ガスの形成を確実に防ぐことができる。
【0014】
本発明により使用される成形材料は、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含んでいる。
【0015】
好ましい成形材料は、少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物を含む成分(a1)と、2つのハロゲン置換基を有する、少なくとも1種の芳香族スルホン化合物を含む成分(a2)とを反応させる工程(a)を含む重縮合により製造される、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含んでおり、前記成分(a1)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを含んでいる。
【0016】
ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーとは、本発明の範囲において、4,4’−ジヒドロキシビフェニルをモノマー単位として含むポリアリーレンエーテルスルホンと理解される。ポリビフェニルエーテルスルホンそれ自体は、ポリフェニルスルホンとしても公知のものであり、PPSUと表され、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモノマー単位から構成されている。
【0017】
前述のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーが得られる製造方法は、当業者に自体公知である。製造方法は、例えば、WO2010/142585、WO2011/020823およびWO2010/112508に記載されている。
【0018】
好ましいポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、以下に記載される。
【0019】
本発明の範囲では、ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーの構造の特性化のためには、使用されるモノマー単位が参照される。モノマー単位が、反応した形態でポリマー中に存在していること、およびモノマー単位の反応が、求核芳香族重縮合により、脱離基のハロゲン水素の1つの単位を計算上排除して行われることは当業者に明らかである。したがって、結果的に生じるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーの構造は、脱離基の正確な種類によるものではない。
【0020】
有機溶媒の存在下の、成分a1)と成分a2)との反応により得られるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーが好ましい。前記有機溶媒は、N−メチルピロリドンを含んでいるのが好ましい。N−メチルピロリドンのみが溶媒として殊に好ましい。N−メチルピロリドンは、同時に、成分(a1)および成分(a2)の高い変換率に寄与するものである、それというのは、本発明により使用されるモノマーの反応が、特に効率的に進行するからである。
【0021】
成分(a1)と成分(a2)とのポリビフェニルエーテルスルホンポリマーへの反応は、温度、溶媒および時間に関して当業者に自体公知である。出発化合物(a1)と(a2)との反応は、80〜250℃、好ましくは100〜220℃の温度で実施され、周囲圧力下での合成における上限温度は、前記溶媒の沸点によって制限される。この反応は、2〜12時間、特に3〜8時間の時間間隔で行われるのが好ましい。
【0022】
使用される成分(a1)の成分(a2)に対するモル比は、1.00:1.10〜1.10:1.00の範囲に、好ましくは1.00:1.05〜1.05:1.00の範囲に、より好ましくは1.00:1.02〜1.02:1.00の範囲にあってよい。
【0023】
しかし、ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーであって、その製造のために過剰の成分(a1)が使用されるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーが特に好ましい。これは、特に高い変換率において、ポリマー結合した塩素の含有量を減少させるのに寄与するものである。使用される成分(a1)の成分(a2)に対するモル比は、好ましくは1.005〜1.1、より好ましくは1.005〜1.05である。特に好ましい実施態様では、成分(a1)の成分(a2)に対するモル比は、1.005〜1.035、特に1.01〜1.03、殊に好ましくは1.015〜1.025である。これによって、分子量を、特に有効に操作および制御することができる。
【0024】
ポリビフェニルエーテルスルホンであって、その製造において、変換率(U)が少なくとも90%、特に少なくとも95%、殊に好ましくは少なくとも98%であるように反応条件が選択されるポリビフェニルエーテルスルホンが好ましい。変換率Uとは、本発明の範囲において、反応した反応基(つまり、ヒドロキシ基およびハロゲン基)のモル割合と理解される。このようにして得られたポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、場合によりオリゴマーを含めて、多少の差はあれ幅広い分子量分布を有しており、ここで、末端基は、ハロゲン基、好ましくは塩素基か、またはヒドロキシ基である、もしくはさらなる反応の場合にはアルキル基またはアリールオキシ基であり、計算上、100%とは異なる変換率に相当する。
【0025】
ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーであって、その製造において、成分(a1)が、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを含んでいる、少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物からなるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーが好ましい。さらに、成分(a1)は、特に以下の化合物を含んでいてよい:
・ジヒドロキシベンゾール、特にヒドロキノンおよび/またはレゾルシン、
・ジヒドロキシナフタリン、特に1,5−ジヒドロキシナフタリン、1,6−ジヒドロキシナフタリン、1,7−ジヒドロキシナフタリン、および/または2,7−ジヒドロキシナフタリン、
・4,4’−ジヒドロキシビフェニルの別のジヒドロキシビフェニル、特に2,2’−ジヒドロキシビフェニル、
・ビフェニルエーテル、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルおよびビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、
・ビスフェニルプロパン、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および/または2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
・ビスフェニルメタン、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
・ビスフェニルシクロヘキサン、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)―2,2,4ートリメチルシクロヘキサン、
・ビスフェニルスルホン、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、
・ビスフェニルスルフィド、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、
・ビスフェニルケトン、特にビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、
・ビスフェニルヘキサフルオロプロパン、特に2,2−ビス(3,5―ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、および/または
・ビスフェニルフルオレン、特に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン。
【0026】
成分(a1)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを、成分(a1)の総質量に対してそれぞれ、少なくとも50質量%、特に少なくとも60質量%、殊に好ましくは少なくとも80質量%含んでいるのが好ましい。成分(a1)が、4,4’−ジヒドロキシビフェニルからなるのが殊に好ましい。
【0027】
ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーであって、その製造において、成分(a2)として、ジハロゲンジフェニルスルホン、例えば、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジブロモジフェニルスルホン、ビス(2−クロロフェニル)スルホン、2,2’−ジクロロジフェニルスルホンおよび2,2’−ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択される、2つのハロゲン置換基を有する、少なくとも1種の芳香族スルホン化合物が使用されるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーがさらに好ましい。
【0028】
成分(a2)は、4,4’−ジハロゲンジフェニルスルホン、特に4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよび/または4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンから選択されるのが好ましい。
【0029】
殊に好ましい実施態様では、成分(a2)は、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンである。
【0030】
好ましいポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、一般式(I)
【化1】
の単位を有している。
【0031】
さらに、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、一般式(II)
【化2】
および一般式(III)
【化3】
の単位から選択されるさらなる単位を含んでいてよい。
【0032】
前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、ポリビフェニルエーテルスルホンポリマー中に含まれている一般式(I)、一般式(II)および一般式(III)の単位の総数に対してそれぞれ、一般式(I)の単位を少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%含んでいるのが好ましい。
【0033】
4,4’−ジヒドロキシビフェニル(a1)と4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(a2)との重縮合により製造可能なポリビフェニルエーテルスルホンポリマーが、特に好ましい。
【0034】
成分(a1)と成分(a2)との反応は、出発化合物(a2)のハロゲン置換基に対する反応性を高めるために、塩基(B)の存在下に行われるのが好ましい。前記芳香族ジヒドロキシ化合物(a1)から出発して、塩基(B)の添加によりそのジカリウム塩またはジナトリウム塩を製造し、成分(a2)と反応させるのが好ましい。好適な塩基(B)は、当業者に公知である。好ましい塩基は、特にアルカリ金属炭酸塩である。
【0035】
前記塩基は、無水であるのが好ましい。好適な塩基は、特に無水アルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、またはそれらの混合物であり、炭酸カリウムが、殊に好ましい。溶媒のN−メチル−2−ピロリドンと、塩基の無水炭酸カリウムとの組合せが特に好ましい。
【0036】
さらに、工程(a)の範囲において、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーの量を、ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーと溶媒とからの混合物の総質量に対して10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%に調節することがさらに有利であることが示された。
【0037】
さらなる実施態様では、前記反応の間または後に、少なくとも1種の芳香族有機モノクロロ化合物が成分(a3)として添加される。この芳香族有機モノクロロ化合物は、鎖調節剤の働きをするものと理解される。前記芳香族有機モノクロロ化合物は、前記反応の範囲において成分(a2)と類似の反応性を有しているのが好ましい。
【0038】
成分(a3)は、芳香族モノクロロスルホン、特にモノクロロジフェニルスルホンであるのが好ましい。好ましい実施態様では、過剰の成分(a1)は、成分(a1)と成分(a2)との反応の条件下に反応性の塩素基を含む芳香族有機モノクロロ化合物(a3)により調節される。
【0039】
成分(a3)のモル量は、成分(a2)のモル量に対する成分(a1)のモル量の過剰量の倍数の、成分(a3)のモル量に対する比が、0.98〜1.02、特に0.99〜1.01であるように選択されるのが好ましい。したがって、2×((a1)−(a2))/(a3)は、好ましくは0.98〜1.02、特に0.99〜1.01であり、(a1)、(a2)および(a3)は、それぞれの成分の使用されるモル量を表している。
【0040】
ここで、前記比率((a1)−(a2)/(a3))の倍数が、1であるのが好ましい。
【0041】
前記実施態様と有利に結び合わせることができる、さらなる好ましい実施態様では、工程(a)に続いて、少なくとも1種の脂肪族有機ハロゲン化合物と反応させる工程(b)が行われる。これにより、反応性のヒドロキシ末端基がさらに反応して、このようにしてポリマー鎖の分解が阻止される。
【0042】
好ましい脂肪族有機ハロゲン化合物は、ハロゲン化アルキル、特に1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を有する塩化アルキルであり、特に第一塩化アルキル、特に好ましくはハロゲン化メチル、特に塩化メチルである。
【0043】
工程(b)による反応は、90℃〜160℃、特に100℃〜150℃の温度で実施されるのが好ましい。時間は、広範囲な時間にわたって変化してよく、通常、少なくとも5分、特に少なくとも15分である。工程(b)による反応の時間は、15分〜8時間、特に30分〜4時間であるのが好ましい。
【0044】
前記脂肪族有機ハロゲン化合物の添加は、種々の方法で行われてよい。さらに、脂肪族有機ハロゲン化合物の添加は、化学量論的または過剰に行われてよく、過剰は、例えば、5倍までであってよい。好ましい実施態様では、前記脂肪族有機ハロゲン化合物の添加は、連続的に行われ、特にガス流としての連続的な供給により行われる。
【0045】
工程(a)および場合により工程(b)に引き続いて前記ポリマー溶液のろ過を実施することが有利であることが証明された。これによって、重縮合で形成された塩含分ならびに場合により形成されるゲル体が除去される。
【0046】
純粋な形態のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを獲得するために、前記ポリマー溶液はさらに後処理されてよい。例えば、公知の方法、例えば、スプレードライによる前記溶媒の分離により、または前記ポリマーの沈殿、例えば、前記ポリマー溶液を水に滴下しながら入れることにより後処理される。
【0047】
本発明により使用される成形材料中に含まれるポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、一般に、20,000〜90,000g/molの範囲、好ましくは30,000〜70,000g/molの範囲、特に好ましくは40,000〜50,000g/molの範囲の重量平均分子量M
wを有している。分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて行われてよく、好ましくは、溶媒として0.5%LiBrを有するDMAcもしくは移動相が使用され、定義された分子量のポリメチルアクリレート(PMMA)に対して80℃で測定される。
【0048】
さらに、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、ISO527−2に準拠した排出速度(v)50mm/minでの引張試験の公称破断伸びが、40%超であることにより際立っている。
【0049】
前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、23℃にて、ISO179−1eAに準拠するノッチ付き衝撃強さ(Kerbschlagzaehigkeit)を少なくとも35kJ/m
2、好ましくは少なくとも45kJ/m
2、特に好ましくは少なくとも60kJ/m
2有している。
【0050】
さらに、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、きわめて優れた耐化学薬品性により際立っている。
【0051】
驚くべきことに、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーは、先行技術に記載されたプラスチックと比べてガス透過性が明らかに減少しており(ガス透過性はDIN536380に準拠してBrugger社製機器で測定)、さらに、卓越した機械的特性を有していることが判明した。
【0052】
本発明により使用される熱可塑性成形材料は、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーの他にさらなるポリマーを含んでいてよい。好適なさらなるポリマーは、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ならびにポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドおよびポリ−p−フェニレンからなる群から選択される。
【0053】
さらなるポリマーとして、ポリスルホン(PSU)および/またはポリエーテルスルホン(PESU)が特に好ましい。
【0054】
本発明により使用される成形材料中のさらなるポリマーの含有量は、一般に、この成形材料中に含まれているポリマーの総質量に対してそれぞれ、最大30質量%、好ましくは最大20質量%、特に好ましくは最大10質量%である。
【0055】
さらに、本発明により使用される成形材料は、充填剤、特に繊維、特に好ましくはガラス繊維を含んでいてよい。相応の充填剤は、当業者に公知である。充填剤が使用される場合、この充填剤は、ポリマー100重量部に対して5〜150重量部の量で添加されるのが好ましい。
【0056】
本発明による熱可塑性成形材料中には、特に当業者に公知のあらゆる、かつ熱可塑性成形材料における使用に好適なガラス繊維が存在していてよい。これらのガラス繊維は、当業者に公知の方法で製造することができ、場合により表面処理されてよい。前記ガラス繊維は、例えば、DE10117715に記載の通り、母材材料とのより優れた適合性のために、サイズ剤で加工されていてよい。
【0057】
好ましい実施態様では、直径5〜15μm、好ましくは7〜13μm、特に好ましくは9〜11μmのガラス繊維が使用される。
【0058】
前記ガラス繊維の混入は、カットガラス繊維の形状で行われてもよく、連続ストランド(ロービング)の形状で行われてもよい。使用可能なガラス繊維の長さは、一般に、カットガラス繊維として前記熱可塑性成形材料に混入する前に一般的に4〜5mmである。前記ガラス繊維の加工、例えば、共押出による加工後、前記ガラス繊維は、別の成分と一緒に、通常、平均長さ100〜400μm、好ましくは150〜250μmで存在している。
【0059】
本発明による成形材料は、さらなる成分Kとして助剤、特に加工助剤、顔料、安定化剤、防火剤または多様な添加剤の混合物を含んでいてよい。通常の添加剤は、例えば、酸化遅延剤、熱分解およびUV光による分解の防止剤、潤滑剤および離型剤、染料、ならびに可塑剤でもある。
【0060】
前記さらなる成分Kの本発明による成形材料中の割合は、前記熱可塑性成形材料の総質量に対して特に0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、特に0〜15質量%である。前記成分Kが、安定化剤である場合、この安定化剤の割合は、前記熱可塑性成形材料の総質量に対して、通常、2質量%まで、好ましくは0.01〜1質量%、特に0.01〜0.5質量%である。
【0061】
顔料および染料は、一般に、前記熱可塑性成形材料の総質量に対して、0〜10質量%、好ましくは0.05〜7質量%、特に0.1〜5質量%の量で含まれている。
【0062】
熱可塑性物質を着色するための顔料は、一般に公知である(例えば、R.Gaechter und H.Mueller、Taschenbuch der Kunststoffadditive、Carl Hanser Verlag、1983、494〜510ページ参照)。顔料の第一の好ましい群として、白色顔料、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白[2PbCO
3・Pb(OH)
2]、リトポン、三酸化アンチモンおよび二酸化チタンが挙げられる。二酸化チタンの一般に最も用いられている両方の結晶変態(ルチル型およびアナターゼ型)のうち、特にルチル型が、本発明による成形材料の白色着色に使用される。本発明により使用されてよい黒色着色顔料は、酸化鉄黒(Fe
3O
4)、スピネル黒(Spinellschwarz)[Cu(Cr、Fe)
2O
4]、マンガン黒(二酸化マンガン、二酸化ケイ素と酸化鉄とからの混合物)、コバルト黒およびアンチモン黒、ならびに特に好ましくは、多くの場合ファーネスブラックまたはガスブラックの形態で使用されるカーボンブラックである。これに関して、G.Benzing、Pigmente fuer Anstrichmittel、Expert−Verlag(1988)、78ページ以下を参照のこと。
【0063】
一定の色調を調節するために、無機有色顔料、例えば、酸化クロム緑、または有機有色顔料、例えば、アゾ顔料またはフタロシアニンが使用されてよい。このような顔料は、一般に市販されている。
【0064】
本発明により前記熱可塑性材料に添加してよい酸化遅延剤および熱安定化剤は、例えば、周期表の第I族金属のハロゲン化物、例えば、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化リチウム、例えば塩化物、臭化物またはヨウ化物である。さらに、フッ化亜鉛および塩化亜鉛が使用されてよい。さらに、立体障害フェノール、ヒドロキノン、これらの群の置換された代表物質、第二級芳香族アミン(場合により、リン含有酸と結合して、もしくはこれらの塩として)、およびこれらの化合物の混合物は、前記熱可塑性成形材料の総質量に対して1質量%までの濃度で使用可能であるのが好ましい。
【0065】
UV安定化剤の例は、種々の置換されたレゾルシン、サリチル酸、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンであり、一般に2質量%までの量で使用される。
【0066】
前記熱可塑性成形材料の総質量に対して、通常、1質量%までの量で添加される潤滑剤および離型剤は、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキルエステル、およびステアリン酸アルキルアミド、ならびに長鎖脂肪酸を有するペンタエルトリトールのエステルである。ジアルキルケトン、例えば、ジステアリルケトンが使用されてもよい。
【0067】
好ましい構成成分として、本発明による成形材料は、ステアリン酸および/またはステアリン酸塩を(前記熱可塑性成形材料の総質量に対して)0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜1.75質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%、特に0.1〜0.9質量%含んでいる。原則的に、別のステアリン酸誘導体、例えば、ステアリン酸のエステルを使用してもよい。
【0068】
ステアリン酸は、脂肪の加水分解により製造されるのが好ましい。ここで得られる生成物は、通常、ステアリン酸とパルミチン酸とからの混合物である。したがって、このような生成物は、生成物の組成に応じて、例えば50〜70℃の幅広い軟化範囲を有している。ステアリン酸の割合を有する生成物が、40質量%超、特に好ましくは60質量%超使用されるのが好ましい。純粋なステアリン酸(98%超)が使用されてもよい。
【0069】
さらに、本発明による成形材料は、ステアリン酸塩を含んでいてもよい。ステアリン酸塩は、相応のナトリウム塩と金属塩溶液(例えば、CaCl
2、MgCl
2、アルミニウム塩)との反応によるか、または脂肪酸と金属水酸化物との直接的な反応により製造することができる(例えば、Baerlocher Additives、2005参照)。トリステアリン酸アルミニウムが使用されるのが好ましい。
【0070】
本発明による熱可塑性成形材料の構成成分が混合される順序は、任意である。
【0071】
本発明により使用される成形材料は、自体公知の方法、例えば、押出法により製造することができる。前記成形材料は、例えば、前記出発成分を、一般的な混合装置、例えば、スクリュー押出機、好ましくは、二軸押出機、ブラベンダーミキサーまたはバンバリーミキサーならびに混練機内で混合して、引き続き押し出して製造することができる。押出した後、この押出成形品を冷却されて細片にされる。前記成分の混合の順序は、変化させてよく、したがって、2つまたは場合により3つの成分が予混合されてよいが、すべての成分を一緒に混合してもよい。
【0072】
できる限り均一な混合を得るために、強く混合することが有利である。そのためには、一般に、280〜380℃の温度、好ましくは290〜370℃の温度で0.2〜30分の平均混合時間が必要である。押出した後、前記押出成形品は、一般に、冷却されて細片にされる。
【0073】
本発明により使用される成形材料および本発明による自立式成形部材は、優れた流動性、高い強靱性、とりわけ破断点伸びおよびノッチ付き衝撃強さにより、ならびに高い表面品質により際立っている。破断点伸び、伸び率、ノッチ付き衝撃強さおよび耐化学薬品性に関して、前記成形材料およびそれから製造される成形部材は、前記ポリビフェニルエーテルスルホンポリマーに示された値の範囲にある値を有しているため、その実施態様および優先性が相応に適用される。
【0074】
本発明により使用される自立式成形部材の製造は、自体公知の方法、例えば、押出法、射出成形法、射出ブロー成形法、または射出延伸ブロー成形法により行われる。
【0075】
驚くべきことに、前述の成形材料から作り出された自立式成形部材が、ガスの導通のための配管系の構成に好適であることが判明した。このようにして得られた自立式成形部材は、きわめて優れた気密性によって際立っている。この自立式成形部材は、先行技術に記載されたガスの導通のための自立式成形部材と比べて、ガス透過性が明らかに減少していることを示している(ガス透過率は、DIN53380に準拠してBrugger社製機器で測定)。前記自立式成形部材およびそれから構成される配管系は、特にメタン含有ガスおよびエタン含有ガス、例えば天然ガスの導通に好適である。
【0076】
「自立式」という概念は、本発明において、前記自立式成形部材が、実質的に、前記製造に使用される熱可塑性成形材料からなることを意味する。
【0077】
「実質的に〜からなる」とは、前記自立式成形部材が、前記製造に使用される熱可塑性成形材料を少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%、殊に好ましくは少なくとも99質量%含んでいると理解される。質量%は、それぞれ前記自立式成形部材の総質量に対するものである。さらなる特に好ましい実施態様では、前記自立式成形部材は、前記製造に使用される熱可塑性成形材料からなる。
【0078】
さらに、「自立式」という概念は、前記自立式成形部材が、前記製造に使用される熱可塑性成形材料の他に、前記自立式成形部材の機械的安定性またはガスに対する気密性を高めるために寄与するさらなる補強材(Verstaerkungsmittel)を含んでいないことを意味する。特に好ましい実施態様では、前記自立式成形部材は、ジャケットを含んでいない。前記自立式成形部材は、金属材料製ジャケットを含んでいないことが特に好ましい。
【0079】
熱可塑性成形材料の本発明による使用により製造される自立式成形部材は、特に、例えば、金属材料製配管系内で腐食防止のために使用されるようなライナーではない。したがって、本発明の対象は、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含む熱可塑性成形材料の、ガスの導通のための自立式成形部材を製造するための使用でもあり、この自立式成形部材は、実質的に、前記製造に使用される熱可塑性成形材料からなるものである。
【0080】
したがって、さらに、本発明の対象は、少なくとも1種のポリビフェニルエーテルスルホンポリマーを含む熱可塑性成形材料の、ガスの導通のための自立式成形部材を製造するための使用でもあり、この自立式成形部材は、ジャケットを含んでいない、特に金属材料製ジャケットを含んでいない。
【0081】
したがって、本発明の対象は、前述の成形材料から製造されている、ガスの導通のための自立式成形部材の使用でもあり、前述の実施態様および優先性が、前記成形材料および前記成形材料中に含まれている1つ以上のポリマーに関して相応に適用される。
【0082】
さらに本発明の対象は、前述の成形材料製のガスの導通のための自立式成形部材の使用であり、前述の実施態様および優先性が、前記成形材料および前記成形材料中に含まれている1つ以上のポリマーに関して相応に適用される。
【0083】
さらに、本発明の対象は、ガスのための配管系を構成するための前述の自立式成形部材の使用である。
【0084】
ガスの導通のための配管系は、構成部材として、管部品、接続部品、端部部品および配管バルブ、例えば、弁、温度計および圧力計を含んでいる。
【0085】
本発明の範囲では、ガスの導通のための自立式成形部材は、前述の成形材料から製造されたプラスチック制作物と理解される。
【0086】
前記自立式成形部材は、管部品、接続部品および端部部品からなる群から選択されるのが好ましい。成形部材として、接続部品および端部部品、特に接続部品が特に好ましい。
【0087】
本発明の範囲では、管部品は、例えば、直線状の管部品および曲線状の管部品と理解される。直線状の管部品が好ましい。この管部品は、例えば、押出法、射出成形法、射出ブロー成形法、または射出延伸ブロー成形法により製造することができる。前記管部品の長さおよび直径は、広範囲に変化してよく、計画される使用領域次第である。
【0088】
接続部品および端部部品は、継手(Fittinge)とも表される。
【0089】
自立式成形部材として好ましい継手は、例えば、気密性、および機械的、熱的安定性を50年保証するために、例えば、DVGW W534に準拠して、その適性が試験される。設計もしくは寸法決定は、DIN ISO 9080から求められる曲線および材料特異的な寸法設計に基づいて行われる。前記継手は、例えば、押出法、射出成形法、射出ブロー成形法、または射出延伸ブロー成形法により製造することができる。前記継手の形態は、広範囲に変化してよい。
【0090】
2つまたは複数の管部品を上下に接続するための継手、ガス管バルブを有する管部品を接続するための継手、例えば、弁、シール、流量計、温度計または圧力計、およびガス配管系内の開口部を閉鎖するための端部部品、例えば、パイプエンドが例として挙げられる。前記成形部材は、プラスチック射出成形法により製造することができるため、前記成形部材の形態に関して大きな設計の自由度がある。さらに、前記製造法では、機能エレメント、例えば、ネジ、ばねフック(Schnapphaken)または戻り止め(Rastnasen)を、前記成形部材の後加工を必要とせずに、直接統合することができることが有利である。
【0091】
以下において、本発明を、実施例をもとに説明するが、本発明はこれに制限されない。
【0092】
例1
一般式(I)の単位のポリビフェニルエーテルスルホンポリマー100%である成形材料から製造されたシートの透過挙動の測定。重量平均分子量(Mw)は、41,000g/molで求めた。使用した成形材料は、BASF SF社から商品名Ultrason P3010で市販されている。
【0093】
前記成形材料から、厚さ50μm(Ultrason P3010 シート50μm)および厚さ100μm(Ultrason P3010 シート100μm)の試料シートを製造した。メタンおよびエタンに対する透過挙動を測定した。測定は、すべてDIN536380 Part1に準拠してBrugger社製機器で行われた。これは、ASTM規格D143482およびISO 15105 Part1に相応する。
【0094】
前記両方の試料で、それぞれの気体に対して二重測定を実施した。厚さの値は、それぞれの試験面積内の10つの測定点の平均値である。
【0095】
結果は、以下の第1表および第2表に表す。
【0096】
さらに、それぞれ厚さ約50μmのUltrason P3010、HDPE(高密度ポリエチレン(High Density Polyethylen))およびPE100(ポリエチレン)の試料シートを製造した。これらのシートを、前述の通り試験した。メタンに対する透過挙動を第3表に表す。測定結果は、本発明による使用によって、先行技術に記載された自立式成形部材と比べて気密性が高い自立式成形部材がもたらされることを示している。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】