(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882767
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20160225BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J29/46 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-22067(P2012-22067)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158996(P2013-158996A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】宇田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】連 国男
(72)【発明者】
【氏名】西垣内 善行
【審査官】
金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−285998(JP,A)
【文献】
特開平09−288531(JP,A)
【文献】
特開2008−228187(JP,A)
【文献】
特開平11−192695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 29/46
G03G 21/00
G06F 1/26 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙に対してインク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット印刷装置において、
入力された電気信号に応じて前記印刷用紙に対して同時にインク滴を吐出可能であって、前記印刷用紙が搬送される方向に対して直交する方向に配設された少なくとも3個のインクジェットヘッドと、
前記各インクジェットヘッドに駆動電圧を供給する少なくとも3個の電源回路と、
前記各インクジェットヘッドと前記各電源回路との間に介在し、前記各電源回路と前記各インクジェットヘッドとをそれぞれ電気的に接続するとともに、前記各電源回路のうちの1個が故障した際には、前記故障した電源回路に対応する前記インクジェットヘッドに前記故障した電源回路以外の電源回路を電気的に接続することにより、前記各インクジェットヘッドに駆動電圧を供給できるように電気的な接続を切り換える切り換えスイッチであって、
前記電源回路に故障がないとき、前記各電源回路と前記各インクジェットヘッドとを1対1で電気的に接続し、前記電源回路の1個が故障したとき、前記故障した電源回路に対応する前記インクジェットヘッドを含む全てのインクジェットヘッドと前記故障した電源回路以外の全ての電源回路とを電気的に接続する切り換えスイッチと、
を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置において、
前記各電源回路の異常動作を監視する電源監視回路と、
前記電源監視回路が前記電源回路の1個に故障を検出した場合、前記故障した電源回路を前記インクジェットヘッドから切り離し、前記故障した電源回路以外の電源回路と、前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドとを電気的に接続するように前記切り換えスイッチを操作する制御部と、
をさらに備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置において、
前記各電源回路のうちの1個が故障した際には、前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッド及び前記インクジェットヘッドを除いた残りのインクジェットヘッドからのインク滴の吐出速度を遅くさせる吐出制御回路をさらに備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記各電源回路のうちの1個が故障した際には、印刷用紙と前記各インクジェットヘッドとの相対移動速度を遅くさせる移動制御回路をさらに備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記切り換えスイッチは、前記電源回路の1個が故障した後で装置が起動された場合、前記故障した電源回路以外の電源回路と、前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドとの電気的接続から、前記各電源回路と前記各インクジェットヘッドとをそれぞれ電気的に接続する状態に切り換えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
少なくとも3個の前記インクジェットヘッドによって一つの吐出モジュールを構成していることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドからインク滴を吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェット印刷装置に係り、特に、インクジェットヘッドに電圧を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、インク滴を吐出する複数個のインクジェットヘッドと、各インクジェットヘッドを駆動するための電圧を供給する複数個の電源回路とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)具体的には、各インクジェットヘッドは、いずれか一つの電源回路に接続され、接続された電源回路だけから電圧を供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−285998号公報(
図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、各インクジェットヘッドが、複数個の電源回路のうちいずれか一つだけから電圧の供給を受けている。そのため、一つの電源回路が故障した場合には、その電源回路に接続されたインクジェットヘッドがインク滴を吐出することができない。このような事態が生じると、電源回路を交換するまでの間、インクジェット印刷装置による印刷を停止させざるを得ず、電源回路のトラブルに起因してスループットが低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電源回路の一部を共有可能に切り換えられる構成を採用することにより、電源回路のトラブルに起因するスループットの低下を防止できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、印刷用紙に対してインク滴を吐出させて印刷を行うインクジェット印刷装置において、入力された電気信号に応じて
前記印刷用紙に対して同時にインク滴を吐出
可能であって、前記印刷用紙が搬送される方向に対して直交する方向に配設された少なくとも
3個のインクジェットヘッドと、前記各インクジェットヘッドに駆動電圧を供給する少なくとも
3個の電源回路と、前記各インクジェットヘッドと前記各電源回路との間に介在し、前記各電源回路
と前記各インクジェットヘッドとをそれぞれ電気的に接続するとともに、前記各電源回路のうちの1個が故障した際には、前記故障した電源回路に対応する前記インクジェットヘッドに前記故障した電源回路以外の電源回路を電気的に接続することにより、前記各インクジェットヘッドに駆動電圧を供給できるように電気的な接続を切り換える切り換えスイッチ
であって、前記電源回路に故障がないとき、前記各電源回路と前記各インクジェットヘッドとを1対1で電気的に接続し、前記電源回路の1個が故障したとき、前記故障した電源回路に対応する前記インクジェットヘッドを含む全てのインクジェットヘッドと前記故障した電源回路以外の全ての電源回路とを電気的に接続する切り換えスイッチと、を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、電源回路の
1個に故障が生じた場合には、切り換えスイッチが
故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドに故障した電源回路以外の電源回路を電気的に接続するように接続を切り換える。したがって、電源回路の一部を
3個のインクジェットヘッドで共有することができるので、1個の電源回路に故障が生じても電源回路の交換のために装置を停止させる必要がない。その結果、装置のスループットの低下を防止することができる。
【0008】
また、本発明において、前記各電源回路の異常動作を監視する電源監視回路と、前記電源監視回路が
前記電源回路の1個に故障を検出した場合、前記故障した電源回路を前記インクジェットヘッドから切り離し、前記故障した電源回路以外の電源回路と、前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドとを電気的に接続するように前記切り換えスイッチを操作する制御部と、をさらに備えていることが好ましい(請求項2)。
【0009】
各電源回路の異常動作を電源監視回路が監視するので、いずれかの電源回路に故障が生じたことを確実に検出できる。その結果を受けて制御部が切り換えスイッチを操作するので、確実に駆動電圧を切り換えることができる。
【0010】
また、本発明において、前記各電源回路のうちの
1個が故障した際には、
前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッド及び前記インクジェットヘッドを除いた残りのインクジェットヘッドからのインク滴の吐出速度を遅くさせる吐出制御回路をさらに備えていることが好ましい(請求項3)。
【0011】
電源回路の一部を共有するので、電源回路の電源容量を超える恐れがある。そのため、通常動作を継続すると動作が不安定になる可能性があるが、吐出制御回路によりインク滴の吐出速度を遅くさせるので、電源回路の電源容量の範囲内で動作を継続させることができる。したがって、印刷速度が低下するものの、印刷動作を安定して継続させることができる。
【0012】
また、本発明において、前記各電源回路のうちの
1個が故障した際には、印刷用紙と前記各インクジェットヘッドとの相対移動速度を遅くさせる移動制御回路をさらに備えていることが好ましい(請求項4)。
【0013】
電源回路の一部を共有するので、電源回路の電源容量を超える恐れがある。そのため、通常動作を継続すると動作が不安定になる可能性があるが、移動制御回路により相対移動速度を遅くさせるので、インクジェットヘッドからのインク滴の吐出も遅くされ、電源回路の電源容量の範囲内で動作を継続させることができる。したがって、印刷速度が低下するものの、印刷動作を安定して継続させることができる。
【0014】
また、本発明において、前記切り換えスイッチは、
前記電源回路の1個が故障した後で装置が起動された
場合、前記故障した電源回路以外の電源回路と、前記故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドとの電気的接続から、前記各電源回路と前記各インクジェットヘッドとをそれぞれ電気的に接続する状態に切り換えることが好ましい(請求項5)。
【0015】
電源回路に異常が生じて切り換えスイッチが切り換えられた後、印刷動作を継続させるが、印刷処理に支障が生じないタイミングで装置を停止させる。そして、故障した電源回路を新たなものに交換し、装置を起動する。その時点では、切り換えスイッチが各電源回路と各インクジェットヘッドとを一対一で電気的に接続した状態となるので、装置を起動した直後から、電源回路に異常が生じた際の電源回路の一部共有に備えることができる。
【0016】
また、本発明において、少なくとも3個の前記インクジェットヘッドによって一つの吐出モジュールを構成していることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、電源回路の
1個に故障が生じた場合には、切り換えスイッチが
故障した電源回路に対応するインクジェットヘッドに故障した電源回路以外の電源回路を電気的に接続するように接続を切り換える。したがって、電源回路の一部を
3個のインクジェットヘッドで共有することができるので、1個の電源回路に故障が生じても電源回路の交換のために装置を停止させる必要がない。その結果、装置のスループットの低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【
図2】印刷ヘッドの周辺回路を含むブロック図である。
【
図3】第1の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図である。
【
図4】第2の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図である。
【
図5】第3の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【0020】
本実施例に係るインクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。
【0021】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。インクジェット印刷装置3は、連続紙WPに対して印刷を行う。排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0022】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。
【0023】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ユニット13と、乾燥部15と、検査部17とを上流側からその順で備えている。乾燥部15は、印刷ユニット13によって印刷された部分の乾燥を行う。検査部17は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。
【0024】
印刷ユニット13は、インク滴を吐出する印刷ヘッド19を備えている。印刷ユニット13は、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個配置されているのが一般的である。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)について個別に4個の印刷ユニット13を備えている。しかし、以下においては、発明の理解を容易にするために、1個の印刷ユニット13だけを備えているものとして説明する。また、印刷ユニット13は、連続紙WPの幅方向(紙面の奥手前方向)における印刷領域を移動することなく印刷できるだけの印刷ヘッド19を複数個備えている。つまり、本実施例におけるインクジェット印刷装置3は、印刷ヘッド19が連続紙WPの搬送方向に直交する方向に主走査のために移動することがなく、位置固定のままで連続紙WPを副走査方向に送りながら連続紙WPに対して印刷を行う。なお、このような構成は、1パス機と呼ばれる。
【0025】
駆動ローラ7,11、印刷ユニット13、乾燥部15、検査部17は、制御部21によって統括的に制御される。制御部21は、CPUやメモリなどを備えており、連続紙WPに印刷する画像のデータを印刷ユニット13に送るとともに、印刷速度や印刷ユニット13におけるインク滴の吐出速度等に応じて駆動ローラ7,11の駆動速度を操作する。
【0026】
次に、
図2〜
図5を参照して、印刷ヘッド19について説明する。なお、
図2は、印刷ヘッドの周辺回路を含むブロック図である。また、
図3は、第1の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図であり、
図4は、第2の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図であり、
図5は、第3の電源回路が故障した際の動作を示すブロック図である。
【0027】
印刷ヘッド19は、吐出モジュール23と、駆動信号モジュール25と、切り換えスイッチ27と、第1の電源回路29と、第2の電源回路31と、第3の電源回路33と、電源監視回路35とを備えている。
【0028】
吐出モジュール23は、インク滴を吐出するための複数個のノズルを備えたノズルユニットM1〜M20を主走査方向に配置され、かつ、一つおきに副走査方向にずらして配置された千鳥配列で構成されている。ここでは、ノズルユニットM1〜M4,M11〜M14をインクジェットヘッドIH1とし、ノズルユニットM5〜M8,M15,M16をインクジェットヘッドIH2とし、ノズルユニットM9,M10,M17〜M20をインクジェットヘッドIH3とする3個のインクジェットヘッドIH1〜IH3で構成されているものとする。
【0029】
駆動信号モジュール25は、インクジェットヘッドIH1に対して画像のデータに応じた信号を出力する駆動信号基板DRB1〜DRB4と、インクジェットヘッドIH2に対して画像のデータに応じた信号を出力する駆動信号基板DRB5〜DRB7と、インクジェットヘッドIH3に対して画像のデータに応じた信号を出力する駆動信号基板DRB8〜DRB10とを備えている。
【0030】
駆動信号基板DRB1は、ノズルユニットM1,M2に接続され、駆動信号基板DRB2は、ノズルユニットM11,M12に接続され、駆動信号基板DRB3は、ノズルユニットM3,M4に接続され、駆動信号基板DRB4は、ノズルユニットM13,M14に接続されている。また、駆動信号基板DRB5は、ノズルユニットM5,M6に接続され、駆動信号基板DRB6は、ノズルユニットM15,M16に接続され、駆動信号基板DRB7は、ノズルユニットM7,M8に接続されている。また、駆動信号基板DRB8は、ノズルユニットM17,M18に接続され、駆動信号基板DRB9は、ノズルユニットM9,M10に接続され、駆動信号基板DRB10は、ノズルユニットM19,M20に接続されている。
【0031】
第1の電源回路29と、第2の電源回路31と、第3の電源回路33とは、駆動信号モジュール25に対して、その動作に必要な電圧を供給する。具体的には、第1の電源回路29は、インクジェットヘッドIH1に信号を出力する駆動信号基板DRB1〜DRB4に対して電圧を供給する。第2の電源回路31は、インクジェットヘッドIH2に信号を出力する駆動信号基板DRB5〜DRB7に対して電圧を供給する。第3の電源回路33は、インクジェットヘッドIH3に信号を出力する駆動信号基板DRB8〜DRB10に対して電圧を供給する。
【0032】
切り換えスイッチ27は、第1の電源回路29と、第2の電源回路31と、第3の電源回路33と、駆動信号モジュール25との間に配置されている。切り換えスイッチ27は、第1の切り換えスイッチ群41と、第2の切り換えスイッチ群43と、第3の切り換えスイッチ群45とを備えている。
【0033】
第1の切り換えスイッチ群41は、第1の電源回路29が正常動作している場合には、第1の電源回路29を、インクジェットヘッドIH1の駆動信号基板DRB1〜DRB4だけに電気的に接続する(
図2)。一方、第1の電源回路29だけが異常動作となった場合には、第2の電源回路31を駆動信号基板DRB1,DRB2にも接続し、第3の電源回路33を駆動信号基板DRB3,DRB4にも接続する(
図3)。
【0034】
第2の切り換えスイッチ群43は、第2の電源回路31が正常動作している場合には、第2の電源回路31とインクジェットヘッドIH2の駆動信号基板DRB5〜DRB7とを電気的に接続する(
図2)。一方、第2の電源回路31だけが異常動作となった場合には、第1の電源回路29を駆動信号基板DRB5にも接続し、第3の電源回路33を駆動信号基板DRB6,DRB7にも接続する(
図4)。
【0035】
第3の切り換えスイッチ群45は、第3の電源回路33が正常動作している場合には、第3の電源回路33とインクジェットヘッドIH3の駆動信号基板DRB8〜DRB10とを電気的に接続する(
図2)。一方、第3の電源回路33だけが異常動作となった場合には、第1の電源回路29を駆動信号基板DRB8にも接続し、第2の電源回路31を駆動信号基板DRB9,DRB10にも接続する(
図5)。
【0036】
第1の電源回路29と、第2の電源回路31と、第3の電源回路33の電圧出力ラインには、電源監視回路35が接続されている。この電源監視回路35は、電圧の信号レベルを監視しており、所定の信号レベルを電圧が下回った場合には、どの電源回路が異常動作となったかを制御部21に対して出力する。制御部21は、電源監視回路35からの異常動作通知を受けて、異常動作となった電源回路を停止させるとともに、切り換えスイッチ27を操作する。その操作は、上述した「異常動作となった場合」のように行われる。
【0037】
また、制御部21は、故障により「異常動作」となった場合には、上述したように切り換えスイッチ27を操作するとともに、次のような操作を行うことが好ましい。
【0038】
駆動信号基板DRB1〜DRB10に対して、インク滴の吐出速度を低下させる「吐出調整」を行わせる。また、駆動ローラ7,11の回転速度を低下させる「速度調整」を行わせる。
【0039】
なお、制御部21が本発明における「吐出制御回路」及び「移動制御回路」に相当する。
【0040】
上述した「異常動作」となった場合には、電源回路の一部を共有するので、電源回路の電源容量を超える恐れがある。そのため、印刷のために通常動作を継続すると動作が不安定になる可能性があるが、制御部21によりインク滴の吐出速度を遅くさせるので、電源回路の電源容量の範囲内で動作を継続させることができる。したがって、印刷速度が低下するものの、印刷動作を安定して継続させることができる。また、制御部21により相対移動速度を遅くさせるので、インク滴の吐出も遅くされ、電源回路の電源容量の範囲内で動作を継続させることができる。したがって、印刷速度が低下するものの、印刷動作を安定して継続させることができる。
【0041】
また、上述した切り換えスイッチ27は、装置が起動された直後には、第1の電源回路29がインクジェットヘッドIH1の駆動信号基板DRB1〜DRB4だけに接続され、第2の電源回路31がインクジェットヘッドIH2の駆動信号基板DRB5〜DRB7だけに接続され、第3の電源回路33がインクジェットヘッドIH3の駆動信号基板DRB8〜DRB10だけに接続されるように構成されている。換言すると、正常時における
図2の状態が起動時に設定されるようになっている。
【0042】
電源回路に異常が生じて切り換えスイッチ27が切り換えられた後、印刷動作をある程度は継続させるが、印刷処理に支障が生じないタイミングで装置を停止させる。そして、故障した電源回路を新たなものに交換し、装置を起動する。その時点では、切り換えスイッチ27が各第1〜第3の電源回路29,31,33と各インクジェットヘッドIH1〜IH3とを一対一で電気的に接続した状態となるので、装置を起動した直後から、電源回路に異常が生じた際の電源回路の一部共有に備えることができる。
【0043】
上述した実施例によると、第1〜第3の電源回路29,31,33のいずれか一つに故障が生じた場合には、第1〜第3の電源回路29,31,33のうちの正常なものから、故障した電源回路に接続されているインクジェットヘッドにも駆動電圧を供給できるように切り換えスイッチ27が電気的な接続を切り換える。したがって、電源回路の一部を複数個のインクジェットヘッドIH1〜IH3で共有することができるので、1個の電源回路に故障が生じても電源回路の交換のために装置を停止させる必要がない。その結果、装置のスループットの低下を防止できる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0045】
(1)上述した実施例では、インクジェット印刷装置3が3個のインクジェットヘッドIH1〜IH3で構成されているが、2個のインクジェットヘッドや4個以上のインクジェットヘッドを備えている場合であっても本発明を適用することができる。
【0046】
(2)上述した実施例では、切り換えスイッチ27を切り換えた後、「吐出調整」や「速度調整」を行っているが、各電源回路の電源容量に余裕がある場合には、これらの調整を行う必要はない。
【0047】
(3)上述した実施例では、起動時に切り換えスイッチ27が
図2の状態が設定されるとしているが、異常動作により切り換えられた状態のままとしてもよい。この場合には、手動で
図2の状態にリセットするようにすればよい。
【0048】
(4)上述した実施例では、ロール状の連続紙WPに印刷するインクジェット印刷装置を例にとって説明した。しかし、本発明はこのような連続紙WPに限定されるものではなく、枚葉用紙などの各種の印刷用紙に印刷するインクジェット印刷装置に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 … 給紙部
3 … インクジェット印刷装置
5 … 排紙部
7,11 … 駆動ローラ
WP … 連続紙
13 … 印刷ユニット
19 … 印刷ヘッド
23 … 吐出モジュール
25 … 駆動信号モジュール
27 … 切り換えスイッチ
29 … 第1の電源回路
31 … 第2の電源回路
33 … 第3の電源回路
35 … 電源監視回路
M1〜M20 … ノズルユニット
IH1〜IH3 … インクジェットヘッド
DRB1〜DRB10 … 駆動信号基板
41 … 第1の切り換えスイッチ群
43 … 第2の切り換えスイッチ群
45 … 第3の切り換えスイッチ群