特許第5882947号(P5882947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5882947化学機械的研磨のための透明な多孔性材料
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  • 特許5882947-化学機械的研磨のための透明な多孔性材料 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5882947
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】化学機械的研磨のための透明な多孔性材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160225BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20160225BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20160225BHJP
【FI】
   H01L21/304 622F
   H01L21/304 622S
   B24B37/00 P
   B24B37/04 K
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-116652(P2013-116652)
(22)【出願日】2013年6月3日
(62)【分割の表示】特願2010-66030(P2010-66030)の分割
【原出願日】2003年10月6日
(65)【公開番号】特開2013-201452(P2013-201452A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2013年6月28日
【審判番号】不服2015-11583(P2015-11583/J1)
【審判請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】10/282,489
(32)【優先日】2002年10月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,アバネシュワー
【合議体】
【審判長】 平岩 正一
【審判官】 久保 克彦
【審判官】 西村 泰英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−105299(JP,A)
【文献】 特表平11−512977(JP,A)
【文献】 特表平11−320373(JP,A)
【文献】 特開2002−124491(JP,A)
【文献】 特表2001−522316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔の平均サイズが0.01ミクロン〜1ミクロンの多孔性材料を含む化学機械的研磨用の研磨パッド用基板において、200nm〜35,000nmの範囲の少なくとも1つの波長において光透過率が50%以上であり、多孔性材料は、密度が0.5g/cm3以上であり、細孔容積が25%以下であり、又、70%以上の閉じたセルを含多孔性材料が三次元金属酸化物ネットワークを含み、多孔性材料がポリマー樹脂を含み、ポリマー樹脂が、350MPa〜1000MPaのASTM D790に拠る曲げ弾性率、7%以下の平均圧縮率、35%以上の平均リバウンド率、および40〜90のASTM D2240-95に拠るショアD硬度を有する熱可塑性ポリウレタンである、研磨パッド用基板。
【請求項2】
細孔の平均サイズが0.1ミクロン〜0.7ミクロンである、請求項1に記載の研磨パッド用基板。
【請求項3】
多孔性材料の密度が0.7g/cm3以上である、請求項1に記載の研磨パッド用基板。
【請求項4】
基板が研磨パッドである、請求項1に記載の研磨パッド用基板。
【請求項5】
基板が研磨パッドのウインドウである、請求項1に記載の研磨パッド用基板。
【請求項6】
加工部品を研磨する方法であって、
(a)請求項1に記載の研磨パッド用基板を備える研磨パッドを用意するステップと、
(b)加工部品をその研磨パッドと接触させるステップと、
(c)その研磨パッドをその加工部品に対して移動させてその加工部品を研削することによりその加工部品を研磨するステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械的研磨をその場で検出する方法で使用する透明な多孔性材料を含む研磨パッド用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス・デバイスの製造では、半導体ウエハ、電界放射ディスプレイ、あるいは他の多くのマイクロエレクトロニクス基板に平坦な表面を形成するため、化学機械的研磨“CMP”法が利用されている。例えば半導体デバイスの製造には、一般に、さまざまなプロセス層を形成し、その層の一部を選択的に除去またはパターニングし、さらに別のプロセス層を半導体基板の上に堆積させて半導体ウエハを形成する操作が含まれる。プロセス層としては、例えば絶縁層、ゲート酸化物層、導電層、金属またはガラスからなる層などが挙げられる。ウエハ製造プロセスのいくつかのステップにおいては、次の層を堆積させるため、プロセス層の最も上にある表面が平坦になっていることが一般に望ましい。プロセス層を平坦にするのにCMP法を利用する。その場合、堆積された材料(例えば導電材料または絶縁材料)を続く処理ステップのために研磨してウエハを平坦化する。
【0003】
典型的なCMP法では、CMP工具内の支持体にウエハを上下逆さまに取り付ける。力によって支持体とウエハが下方に押されて研磨パッドに向かう。支持体とウエハは、CMP工具の研磨盤上で回転している研磨パッドの上方で回転する。一般に、研磨プロセスの間、回転しているウエハと回転している研磨パッドの間に研磨組成物(研磨スラリーとも呼ばれる)を導入する。典型的な研磨組成物は、最上部のウエハ層の一部と相互作用する化学物質または最上部のウエハ層の一部を溶かす化学物質と、層の一部を物理的に除去する研磨材料とを含んでいる。ウエハと研磨パッドは、特定の研磨プロセスを実施する上でどの回転方向が望ましいかに応じ、同じ方向または異なる方向に回転させることができる。支持体は、研磨盤上の研磨パッドを横断して往復させることができる。
【0004】
ウエハの表面を研磨する際には、その場で研磨プロセスをモニターすると望ましいことがしばしばある。その場で研磨プロセスをモニターする1つの方法は、開口部またはウインドウを有する研磨パッドを使用する操作を含んでいる。その開口部またはウインドウを光が通過できるため、研磨プロセスの間にウエハ表面を検査することができる。開口部またはウインドウを有する研磨パッドは公知であり、基板(例えば半導体デバイスの表面)を研磨するのに用いられてきた。例えばアメリカ合衆国特許第5,605,760号には、元々スラリーを吸収したり運んだりする性能を持たない均一な固体ポリマーで形成した透明な窓を有するパッドが提示されている。アメリカ合衆国特許第5,433,651号には、一部を除去して開口部を設けることにより光が通過できるようにした研磨パッドが開示されている。アメリカ合衆国特許第5,893,796号と第5,964,643号には、研磨パッドの一部を除去して開口部を設け、透明なポリウレタンまたは石英からなる栓をその開口部に嵌めて透明なウインドウにすること、あるいは研磨パッドの背面の一部を除去してパッドに半透明な部分を形成することが開示されている。アメリカ合衆国特許第6,171,181号と第6,387,312号には、流動材料(例えばポリウレタン)を急冷して固化させることによって形成した透明な領域を有する研磨パッドが開示されている。
【0005】
研磨パッドのウインドウとして役に立つ材料は、これまでにほんのわずかしか開示されていない。アメリカ合衆国特許第5,605,760号には、固体ポリウレタン部材の使用が開示されている。アメリカ合衆国特許第5,893,796号と第5,964,643号には、ポリウレタン製の栓または石英製挿入物の使用が開示されている。アメリカ合衆国特許第6,146,242号には、ポリウレタンまたは透明なプラスチック(例えばウエストレイク社から市販されているクラリフレックス(登録商標)テトラフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン-コ-ビニリデンフルオリドターポリマー)を含むウインドウを有する研磨パッドが開示されている。固体ポリウレタンからなる研磨パッド・ウインドウは、化学機械的研磨の間に簡単に傷つくため、研磨パッドの寿命が来るまでの間に光透過率が着実に低下する。これは特に不利な点である。というのも、光透過率の低下を補償するために終点検出システムの設定を常に調節しなくてはならないからである。しかもパッドのウインドウ(例えば固体ポリウレタンの窓)は一般に研磨パッドの残りの部分と比べて摩耗速度が小さいため、研磨パッドに“凸部”が形成される。その結果、望ましくない研磨上の欠陥が生じる。これら問題点のいくつかに対処するため、WO 01/683222には、CMPの間はウインドウの摩耗速度を大きくするという不連続性を有するウインドウが開示されている。不連続性は、ウインドウ材料に互いに混和しない2つのポリマー混合物を組み込むことによって、あるいは固体、液体、ガスいずれかの分散物を組み込むことによって意図的に生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知のウインドウ材料の多くが目的とする用途に適しているとはいえ、効果的で安価な方法を利用して作り出すことができ、しかも研磨パッドの寿命が来るまで光透過率が一定である半透明な領域を有する効果的な研磨パッドが相変わらず必要とされている。本発明により、そのような研磨パッドとその利用法が提供される。本発明のこれらの利点と他の利点、ならびに本発明の他の特徴は、この明細書における本発明の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、細孔の平均サイズが0.01ミクロン〜1ミクロンの多孔性材料を含む化学機械的研磨用の研磨パッド用基板において、200nm〜35,000nmの範囲の少なくとも1つの波長において光透過率が10%以上である研磨パッド用基板が提供される。本発明により、化学機械的研磨装置と、加工部品の研磨方法がさらに提供される。CMP装置は、(a)回転するテーブルと、(b)本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドと、(c)研磨する加工部品を回転する研磨パッドと接触状態に保持する支持体とを備えている。研磨方法は、(i)本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドを用意するステップと、(ii)加工部品をその研磨パッドと接触させるステップと、(iii)その研磨パッドをその加工部品に対して移動させてその加工部品を研削することによりその加工部品を研磨するステップを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施態様による化学機械的研磨(CMP)装置である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、多孔性材料を含んでいて少なくともある程度の透明度を有する化学機械的研磨パッド用基板に関するものである。研磨パッド用基板は、研磨パッドの一部または全部を占めるようにすることができる(例えば研磨パッド全体または頂部の研磨パッドを透明にする)。いくつかの実施態様では、研磨パッド用基板は、多孔性材料だけで、あるいは多孔性材料を中心として構成されている。研磨パッド用基板は、研磨パッドを少なくとも0.5cm3(例えば少なくとも1cm3)含んでいる。
【0010】
研磨パッド用基板の多孔性材料は、細孔の平均サイズが0.01ミクロン〜1ミクロンである。細孔の平均サイズは、0.05ミクロン〜0.9ミクロンであることが好ましい(例えば0.1ミクロン〜0.8ミクロン)。特別な理論があるわけではないが、1ミクロンよりも大きなサイズの細孔は入射光を散乱させるのに対し、1ミクロンよりも小さなサイズの細孔は入射光の散乱がより少ないか、入射光をまったく散乱させないため、望む程度の透明度を持った研磨パッド用基板が得られると考えられている。
【0011】
研磨パッド用基板の多孔性材料は、細孔のサイズ(すなわちセル・サイズ)分布が非常に一様である。一般に、多孔性材料に含まれる細孔(例えばセル)の75%を超える割合(例えば80%超、または85%超)は、細孔のサイズ分布が±0.5μm以下(例えば±0.3μm以下、または±0.2μm以下)である。言い換えるならば、多孔性材料に含まれる細孔(例えばセル)の75%を超える割合(例えば80%超、または85%超)は、細孔のサイズが、細孔のサイズの平均値から0.5μm以内(例えば0.3μm以内、または0.2μm以内)の範囲に含まれる。多孔性材料に含まれる細孔(例えばセル)の90%を超える割合(例えば93%超、または95%超)は、細孔のサイズ分布が±0.5μm以下(例えば±0.3μm以下、または±0.2μm以下)であることが好ましい。
【0012】
一般に、研磨パッド用基板の多孔性材料は、閉じたセル(すなわち細孔)を主として含んでいるが、開いた細孔も含むことができる。多孔性材料は、閉じたセルを少なくとも10%以上(例えば少なくとも20%以上)含むことが好ましい。より好ましいのは、多孔性材料が、閉じたセルを少なくとも30%以上(例えば少なくとも50%以上、または少なくとも70%以上)含むことである。
【0013】
研磨パッド用基板の多孔性材料は、密度または細孔容積を適切な任意の値にすることができる。一般に、多孔性材料の密度は0.2g/cm3以上(例えば0.3g/cm3以上、場合によっては0.4g/cm3以上)であるが、0.5g/cm3以上(例えば0.7g/cm3以上、場合によっては0.9g/cm3以上)であることが好ましい。細孔容積は、一般に90%以下(例えば75%以下、場合によっては50%以下)であるが、25%以下(例えば15%以下、または10%以下、場合によっては5%以下)であることが好ましい。多孔性材料は、一般にセルの密度が105個/cm3以上(例えば106個/cm3以上)である。セルの密度は、多孔性材料の断面画像(例えばSEM画像)を、分析用ソフトウエア・プログラム(例えばオプティマス(登録商標)イメージング・ソフトウエアやイメージプロ(登録商標)イメージング・ソフトウエア(どちらもメディア・サイバネティクス社)、あるいはクレメックス・ビジョン(登録商標)イメージング・ソフトウエア(クレメックス・テクノロジー社))を用いて分析することによって測定する。
【0014】
研磨パッド用基板の多孔性材料は、適切な任意の材料を含むことができ、一般にポリマー樹脂を含んでいる。多孔性材料は、以下に示すグループの中から選択したポリマー樹脂を含んでいることが好ましい。そのグループは、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート。ポリビニルアルコール、ナイロン、弾性ゴム、スチレンポリマー、ポリ芳香族、フルオロポリマー、ポリイミド、架橋したポリウレタン、架橋したポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアリーレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、これらのコポリマーとブロック・コポリマー、これらの混合物とブレンドからなる。ポリマー樹脂は熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。
【0015】
一般にポリマー樹脂は、予備成形したポリマー樹脂である。しかしポリマー樹脂は適切な任意の方法でその場で形成することもできる。その方法の多くは従来技術において公知である(例えば『Szycherのポリウレタン・ハンドブック』(CRC出版、ニューヨーク、1999年、第3章)を参照のこと)。例えば熱可塑性ポリウレタンは、ウレタン・プレポリマー(例えばイソシアナート・プレポリマー、ジ-イソシアナート・プレポリマー、トリ-イソシアナート・プレポリマー)を、イソシアナートの反応部分を含むプレポリマーと反応させることによってその場で形成することができる。イソシアナートと反応する適切な部分としては、アミンやポリオールがある。
【0016】
ポリマー樹脂を選択する際には、ポリマー樹脂のレオロジーを考慮する。レオロジーは、溶融ポリマーの流動特性である。ニュートン流体に関しては、粘性率は、剪断応力(すなわち接線方向の応力σ)と剪断速度(すなわち速度勾配dγ/dt)の比によって決まる一定値である。しかし非ニュートン流体に関しては、剪断速度の濃密化(膨張)または剪断速度の希薄化(擬プラスチック化)が起こる可能性がある。剪断速度が希薄化する場合には、剪断速度が大きくなるにつれて粘性率が小さくなる。この性質があるため、ポリマー樹脂を溶融製造(例えば押し出し、射出成形)プロセスで使用することができる。剪断速度の低下が起こる臨界範囲を特定するため、ポリマー樹脂のレオロジーを明らかにする必要がある。レオロジーは、毛細管技術を利用し、溶融したポリマー樹脂を固定した圧力下で所定の長さの毛細管を通過させることによって測定できる。見かけの剪断速度と粘性率をさまざまな温度にてプロットすることにより、粘性率と温度の関係を明らかにすることができる。レオロジー処理インデックス(RPI)は、ポリマー樹脂の臨界範囲を特定するパラメータである。RPIは、(基準温度における粘性率)/(剪断速度を固定して温度を20℃変化させた後の粘性率)という比の値である。ポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンである場合には、剪断速度を150/秒、温度を205℃にして測定したときにRPIが2〜10(例えば3〜8)であることが好ましい。
【0017】
ポリマーの粘性率を測定する別の方法は、メルト・フロー・インデックス(MFI)の測定である。このMFIは、所定の温度と圧力のもとで所定の時間に毛細管から押し出される溶融ポリマーの量(単位はグラム)を記録した値である。例えばポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンまたはポリウレタン・コポリマー(例えばポリカーボネートシリコーンをベースとしたコポリマー、ポリウレタンフッ素をベースとしたコポリマー、ポリウレタンシロキサンをセグメント化したコポリマー)である場合には、10分間にわたって温度210℃にて負荷を2160gにしたときにMFIが20以下(例えば15以下)であることが好ましい。ポリマー樹脂が弾性ポリオレフィンまたはポリオレフィン・コポリマー(例えばエチレンα-オレフィン(弾性エチレン-プロピレン、通常のエチレン-プロピレン、エチレン-ヘキセン、エチレン-オクテンなど)を含むコポリマー、メタロセンをベースとした触媒から作った弾性エチレン・コポリマー、ポリプロピレン-スチレン・コポリマー)である場合には、10分間にわたって温度210℃にて負荷を2160gにしたときにMFIが5以下(例えば4以下)であることが好ましい。ポリマー樹脂がナイロンまたはポリカーボネートである場合には、10分間にわたって温度210℃にて負荷を2160gにしたときにMFIが8以下(例えば5以下)であることが好ましい。
【0018】
ポリマー樹脂のレオロジーは、分子量、多分散指数(PDI)、長鎖の分岐または架橋の程度、ポリマー樹脂のガラス転移温度(Tg)、ポリマー樹脂の融点(Tm)に依存する可能性がある。ポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンまたはポリウレタン・コポリマー(例えば上記のコポリマー)である場合には、平均分子量(Mw)は一般に50,000g/モル〜300,000g/モル、好ましくは70,000g/モル〜150,000g/モルであり、PDIは1.1〜6、好ましくは2〜4である。一般に熱可塑性ポリウレタンは、ガラス転移温度が20℃〜110℃であり、融点が120℃〜150℃である。ポリマー樹脂が弾性ポリオレフィンまたはポリオレフィン・コポリマー(例えば上記のコポリマー)である場合には、平均分子量(Mw)は一般に50,000g/モル〜400,000g/モル、好ましくは70,000g/モル〜300,000g/モルであり、PDIは1.1〜12、好ましくは2〜10である。ポリマー樹脂がナイロンまたはポリカーボネートである場合には、平均分子量(Mw)は一般に50,000g/モル〜150,000g/モル、好ましくは70,000g/モル〜100,000g/モルであり、PDIは1.1〜5、好ましくは2〜4である。
【0019】
多孔性材料のために選択したポリマー樹脂は、所定の力学的特性を有することが好ましい。例えばポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンである場合には、曲げ弾性率(ASTM D790)が350MPa(約50,000psi)〜1000MPa(約150,000psi)であり、平均圧縮率が7%以下であり、平均リバウンド率が35%以上であり、ショアD硬度(ASTM D2240-95)が40〜90(例えば50〜80)であることが好ましい。
【0020】
研磨パッド用基板は、200nm〜35,000nmの範囲の少なくとも1つの波長において光透過率が10%以上(例えば20%以上)である。多孔性材料は、200nm〜35,000nmの範囲(例えば200nm〜10,000nmの範囲、または200nm〜1,000nmの範囲、場合によっては200nm〜800nmの範囲)の少なくとも1つの波長において光透過率が30%以上(例えば40%以上、場合によっては50%以上)であることが好ましい。研磨パッド用基板の光透過率は、密度、細孔容積、曲げ弾性率、ならびにこれらの組み合わせの中から選択した多孔性材料制御特性によって少なくとも一部が決まる。
【0021】
本発明の研磨パッド用基板では、その研磨パッド用基板の全寿命を通じて光透過率の一様性が改善されている。この特徴は、細孔が研磨パッド用基板の厚さ全体に存在していることによって生じる。したがって表面層を研磨中に除去すると、その表面の下にある次の層も実質的に同じ細孔度と粗さであるため、研磨特性と光透過特性が表面層と実質的に同じになる。さらに、研磨パッド用基板は、細孔のない同じ材料よりも粗いために平均して透過率が小さい。そのため研磨中に研磨パッド用基板を研削することによる何らかの変化に起因する光散乱の変化率も小さくなる。研磨パッド用基板の光透過率の低下は、研磨パッド用基板の寿命が来るまでに20%以下(例えば10%以下、場合によっては5%以下)であることが望ましい。変化は合計でもこの程度であるため、研磨パッド用基板の全寿命を通じて終点検出システムのゲインを調節する必要性が少なくなる。あるいはその必要がないことさえあろう。例えば本発明による研磨パッド用基板の光透過率の一様性を、従来技術による固体またはほぼ固体のポリウレタン製ウインドウと比較することができる。研磨前には、固体のポリウレタン製ウインドウは表面特性が一様であるが、研磨中にウインドウが研削され、引っかかれて表面特性が一様ではなくなる。したがって終点検出システムは、研磨中に引っかきパターンが新たに発生するごとに常に調節する必要がある。それとは対照的に、本発明の研磨パッド用基板は、粗い表面から出発し、研磨中に研削されている間も研削後もその粗さが実質的に変化しないため、終点検出システムの設定を研磨パッド用基板の全寿命を通じて実質的に変えなくて済む。
【0022】
本発明の研磨パッド用基板に細孔が存在していることで、研磨特性に顕著な効果をもたらすことができる。例えば細孔は、研磨用スラリーを吸収または運搬できる場合がある。したがって透過領域は、研磨パッドの残りの部分により似た研磨特性を持つことができる。いくつかの実施態様では、透過性研磨パッドの表面の粗さは、研磨パッド用基板を研磨表面として用いるのに十分であり、研磨パッドが研磨だけに用いられる第2の不透明な部分を備える必要はない。
【0023】
本発明の研磨パッド用基板は、さらに染料を含んでいてもよい。染料により、基板は特定の波長の光だけを選択的に透過させることができる。染料は、望ましくない波長の光(例えば背景光)のフィルターとなるため、検出の信号対雑音比が向上する。研磨パッド用基板は、適切な任意の染料、または染料の組み合わせを含むことができる。適切な染料としては、ポリメチン染料、ジ-アリールメチン染料、トリ-アリールメチン染料、ジ-アリールメチン染料のアザ類似体、アザ(18)アヌレン染料、天然の染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、アゾ染料、アントラキノン染料、イオウ染料などがある。染料の透過スペクトルは、その場での終点検出に用いる光の波長と一致または重複していることが望ましい。例えば終点検出(EPD)システムの光源が540〜570nmの可視光を発生させるHeNeレーザーである場合には、染料は赤い染料であることが好ましい。
【0024】
本発明の研磨パッド用基板は、従来技術で知られている多数の方法のうちの適切な任意の方法で製造することができる。研磨パッド用基板は、例えば(a)ミューセル法、(b)ゾル-ゲル法、(c)転相法、(d)スピノーダル分解法またはバイノーダル分解法、(e)加圧ガス注入法のうちのいずれかの方法で製造することができる。
【0025】
ミューセル法は、(a)ポリマー樹脂と超臨界ガスを組み合わせて単相溶液を生成させ、(b)その単相溶液から本発明の研磨パッド用基板を形成する操作を含んでいる。ポリマー樹脂としては、上記のポリマー樹脂のうちの任意のものが可能である。超臨界ガスは、あるガスを、そのガスが流体のように振る舞う超臨界状態(すなわち超臨界流体、SCF)を生成させるのに十分な高温(例えば100℃〜300℃)と高圧(例えば5MPa(約800psi)〜40MPa(約6000psi))にすることによって生成させる。ガスとしては、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン(例えばフレオン)、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、あるいはこれらの組み合わせが可能である。ガスは不燃性ガス(例えばC-H結合を含まないガス)であることが好ましい。ポリマー樹脂と超臨界ガスの単相溶液は、一般に、機械バレルの中で超臨界ガスを溶融ポリマー樹脂と混合することによって調製する。次に、単相溶液を鋳型の中に注入する。するとガスが膨張し、溶融ポリマー樹脂の内部に細孔のサイズが非常に均一な細孔構造が形成される。単相溶液中の超臨界ガスの濃度は、一般に、単相溶液の全体積の0.01%〜5%(例えば0.1%〜3%)である。この方法に関する上記の特徴ならびに他の特徴は、アメリカ合衆国特許第6,284,810号にさらに詳しく説明してある。マイクロセル構造は、単相溶液に、その溶液1cm3につき105個よりも多い核生成部位を生成させるのに十分な熱力学的不安定性を発生させることによって(例えば温度および/または圧力を急速に変化させることによって)形成される。核生成部位は、溶けた超臨界ガス分子が、多孔性材料の中でセルが成長する元になるクラスターを形成する部位である。核生成部位の数の推定は、核生成部位の数が、ポリマー材料の中に形成されるセルの数とほぼ等しいと仮定して行なう。一般に、熱力学的不安定性は、単相溶液を入れた鋳型またはダイの出口において誘起される。多孔性材料は、適切な任意の方法(例えばポリマー・シートの中への押し出し、多層シートの共押し出し、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、吹き込みによるフィルム、吹き込みによる多層フィルム、鋳造フィルム、熱成形、ラミネーション)を利用して単相溶液から形成することができる。研磨パッド用基板(例えば多孔性材料)は、押し出しまたは射出成形によって形成することが好ましい。多孔性材料の細孔のサイズは、少なくとも一部が、温度、圧力、超臨界ガスの濃度、ならびにこれらの組み合わせによって制御される。
【0026】
ゾル-ゲル法は、細孔のサイズ、表面積、細孔分布を制御できる三次元金属酸化物ネットワーク(例えばシロキサン・ネットワーク)を調製する操作を含んでいる。このような三次元ネットワーク(すなわちゾル-ゲル)は、さまざまな方法で調製することができる。そのうちの多くは従来技術で知られている方法である。適切な方法として、1ステップ(例えば“1ポット”)法と2ステップ法がある。ある方法では、シリカ(例えばケイ酸ナトリウム)の希釈水溶液を調製すると、適切なpHと塩濃度の条件下で自発的に凝縮し、ケイ素をベースとしたネットワークを形成する。別の典型的な方法は、金属アルコキシド前駆体(例えばM(OR)4(ただしMは、Si、Al、Ti、Zr、またはこれらの組み合わせであり、Rは、アルキル、アリール、またはこれらの組み合わせである))を用いる操作を含んでいる。水とアルコールを含む溶液の中にこの金属アルコキシド前駆体を入れると、アルコキシド・リガンドが加水分解されて凝縮し(多重凝縮)、M-O-M結合(Si-O-Siシロキサン結合)が形成される。必要に応じて触媒(例えばプロトン性の酸(例えばHCl)と塩基(例えばアンモニア)を用いることにより、加水分解反応と凝縮反応の速度を大きくすることができる。2ステップ法は、一般に、あらかじめ重合させた前駆体(例えばあらかじめ重合させたオルトケイ酸テトラエチル(TEOS))を使用する操作を含んでいる。M-O-M結合の数が増大するにつれ、溶媒(例えば水)で満たされた細孔を含む三次元ネットワークが形成される。溶媒の代わりにアルコールを用いてアルコゲルと呼ばれる構造を形成することができる。単に溶媒を蒸発させるだけで固体三次元ネットワークがかなり破壊され、キセロゲルが形成される。より好ましい乾燥法は、固体三次元ネットワークを実質的に破壊しない超臨界抽出である。超臨界抽出法は、一般に、固体三次元ネットワークを低分子量の適切な膨張剤(例えばアルコゲルの中に存在しているアルコール(特にメタノール)またはガス/溶媒の交換によって得られるCO2ガス)と組み合わせ、その混合物に、膨張剤の臨界点を超える温度と圧力にする操作を含んでいる。このような条件下において、固体材料をガラス化、または架橋、または重合させることができる。次に圧力をゆっくりと低下させると、膨張剤をガラス化した構造から逃がすことができる。得られるゾル-ゲル材料(エーロゲルと呼ばれる)は、マイクロセル状の細孔構造を持っている。この細孔構造では、細孔の平均サイズと細孔分布を制御することができる。このようなエーロゲル材料は、250nmを超える波長の可視光や紫外光に対して透明にすることができる。ハイブリッド有機-無機ゾル-ゲル材料も、透明にすること、あるいは少なくとも一部を透明にすることができる。ハイブリッド・ゾル-ゲル材料は、一般に、無機基と有機基の両方を含む前駆体化合物を用いて調製される。三次元M-O-Mネットワークがこのような前駆体から形成されると、有機基を細孔構造の内部に捕獲することができる。細孔のサイズは、適切な有機基を選択することによって制御できる。ハイブリッド・ゾル-ゲル材料の具体例としては、粘土-ポリアミド・ハイブリッド材料と金属酸化物-ポリマー・ハイブリッド材料が挙げられる。
【0027】
転相法は、激しく撹拌している溶媒の中にポリマーのTmまたはTgよりも高温に加熱したポリマー樹脂の超微粒子を分散させる操作を含んでいる。ポリマー樹脂としては、上記の任意のポリマー樹脂が可能である。非溶剤としては、フロリー-ヒギンズ・ポリマー-溶媒相互作用パラメータが大きい(例えばフロリー-ヒギンズ・ポリマー-溶媒相互作用パラメータが0.5よりも大きい)適切な任意の溶媒が可能である。そのようなポリマー-溶剤相互作用は、Ramanathanらによる『ポリマー・データ・ハンドブック』(James E. Mark編、オックスフォード大学出版、ニューヨーク、874ページ、1999年);Oberth Rubber Chem. and Technol.、第63巻、56ページ、1984年;『溶解パラメータと他の凝集パラメータに関するCRCハンドブック』(CRC出版、ボカ・レイトン、フロリダ州、1983年、256ページ)の中のBartonによる部分;Prasad他、Macromolecules、第22巻、914ページ、1989年)といった参考文献に、より詳細に記載されている。例えばポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンである場合には、芳香族エーテルをベースとしたポリウレタン、極性の大きな溶媒(例えばエーテル、ケトン、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなど)が、0.3未満の相互作用パラメータを持っているため、ポリマーの“よい溶媒”として機能するであろう。他方、炭化水素溶媒(例えばシクロヘキサン、シクロブタン、n-アルカンなど)は相互作用パラメータが0.5よりも大きく、よくない溶媒または“非溶剤”として機能する。フロリー-ヒギンズ・ポリマー-溶媒相互作用パラメータは温度に敏感であるため、高温でよい溶媒は、低温では非溶剤になる可能性がある。非溶剤に添加する細かいポリマー樹脂粒子の数を増やすにつれて、細かいポリマー樹脂粒子がつながって最初は巻きひげ状のものを形成し、最終的に三次元のポリマー・ネットワークになる。次に、非溶剤混合物を冷却すると、三次元のポリマー・ネットワーク内に分散した液滴になる。得られる材料は、細孔がミクロン未満のサイズのポリマー材料である。
【0028】
スピノーダル分解法またはバイノーダル分解法は、ポリマー-ポリマー混合物またはポリマー-溶媒混合物の温度および/または容積分率を制御してその混合物を単相領域から2相領域に移動させる操作を含んでいる。2相領域内では、ポリマー混合物のスピノーダル分解またはバイノーダル分解が起こる。分解とは、ポリマー-ポリマー混合物が非平衡相から平衡相へと変化するプロセスを意味する。スピノーダル領域では、混合曲線の自由エネルギーが負であるため、容積分率の小さなゆらぎによってポリマーの相分離(すなわち2相材料の形成)またはポリマーと溶媒の相分離が自発的に起こる。バイノーダル領域では、ポリマー混合物は、容積分率の小さなゆらぎに対して安定であるため、相分離された材料を得るには核生成と成長が必要とされる。2相領域(すなわちバイノーダル領域またはスピノーダル領域)内の温度と容積分率のときにポリマー混合物が沈殿すると、2つの相を持つポリマー材料が形成される。ポリマー混合物が溶媒またはガスを含んでいる場合には、2相ポリマー材料は、相分離の境界部にミクロン未満の細孔を含むことになろう。ポリマーは、上記のポリマー樹脂を含んでいることが好ましい。
【0029】
加圧ガス注入法は、ポリマー樹脂を含む固体ポリマー・シートの中に超臨界流体ガスを強制的に入れるために高温と高圧を用いる操作を含んでいる。ポリマー樹脂としては、上記のポリマー樹脂のうちの任意のものが可能である。押し出された固体シートは、圧力容器の中で室温にする。超臨界ガス(例えばN2またはCO2)を容器に添加して加圧し、適量のガスをポリマー・シートの自由空間に入れるのに十分なレベルの圧力にする。ヘンリーの法則によると、ポリマーに溶けるガスの量は、加えた圧力に正比例する。ポリマー・シートの温度を上げるとポリマーの中に拡散するガスの速度が大きくなるが、ポリマー・シートに溶けることのできるガスの量は減る。ポリマーがガスで完全に飽和すると、シートを加圧容器から取り出す。得られるポリマー・シートは、一般に、セルのサイズが0.5ミクロン〜1ミクロンである。望むのであれば、ポリマー・シートを急速に加熱して柔らかい状態または溶融状態にすることができる。ミューセル法と同様、多孔性材料の細孔のサイズは、少なくとも一部が、温度、圧力、超臨界ガスの濃度、ならびにこれらの組み合わせによって制御される。
【0030】
本発明の研磨パッド用基板が研磨パッドの一部だけを構成している場合には、適切な任意の方法で研磨パッド用基板を研磨パッドに取り付けることができる。例えば研磨パッド用基板は、接着剤を用いて研磨パッドに取り付けることができる。研磨パッド用基板は、研磨パッドの頂部(例えば研磨面)に取り付けること、あるいは研磨パッドの底部(例えばサブパッド)に取り付けることができる。研磨パッド用基板は、適切な任意の形状にすることができ、円、楕円、正方形、長方形、三角形などが可能である。研磨パッド用基板は、研磨パッドの研磨面と同じ高さになるように配置すること、あるいは研磨パッドの研磨面から引っ込んだ状態に配置することができる。研磨パッドは、本発明による研磨パッド用基板を1つ以上備えることが可能である。研磨パッド用基板は、研磨パッド上で中心部および/または周辺部に対して適切な任意の位置に配置することができる。
【0031】
研磨パッド用基板を組み込む研磨パッドは、従来技術で知られている多数の研磨パッド材料のうちの適切な任意のものから製造することができる。研磨パッドは、一般に、不透明であるか、一部だけが半透明である。研磨パッドは、適切な任意のポリマー樹脂を含むことができる。例えば研磨パッドは、一般に、以下のグループの中から選択したポリマー樹脂を含んでいる。そのグループは、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ナイロン、弾性ゴム、弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアリーレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、これらのコポリマー、これらの混合物からなる。研磨パッドは、適切な任意の方法(焼結、射出成形、ブロー成形、押し出しなど)で製造することができる。研磨パッドとしては、固体で細孔がないもの、閉じた小さなセルを含むもの、開いたセルを含むもの、成形したポリマーを表面に備える繊維状のウェブを含むものが可能である。
【0032】
本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、研磨面を有する。その研磨面は、研磨組成物が研磨パッド表面を横断する横方向の移動が容易になるよう、必要に応じて溝、および/またはチャネル、および/または貫通孔をさらに備えている。そのような溝、チャネル、貫通孔は、適切な任意のパターンのものが可能であり、適切な任意の深さと幅を持つことができる。研磨パッドは、異なる2つ以上のパターンの溝を備えることができる。例えばアメリカ合衆国特許第5,489,233号に記載されているように、大きな溝と小さな溝を組み合わせることができる。溝の形態は、傾斜した溝、同心の溝、螺旋状の溝、円形の溝や、XY方向の網状パターンにすることができ、連続していても不連続でもよい。研磨パッドは、標準的なパッド調節法によって作った少なくとも小さな溝を備えることが好ましい。
【0033】
本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、研磨パッド用基板に加え、1つ以上の他の特徴または要素を備えることができる。例えば研磨パッドは、場合によっては、密度、硬度、多孔度、化学的組成が異なる領域を含むことができる。研磨パッドは、場合によっては、研磨粒子(例えば金属酸化物粒子)、ポリマー粒子、水溶性粒子、水を吸収する粒子、中空粒子などの固体粒子を含むことができる。
【0034】
本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、化学機械的研磨(CMP)装置と組み合わせて使用するのに特に適している。図1に示したように、この装置は、一般に、テーブル5と支持体2を備えている。テーブル5は、使用中は運動しており、楕円運動、直線運動、円運動のいずれかによって生じる速度を持っている。本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッド1がテーブル5と接触しており、運動中はテーブルとともに動く。支持体2は加工部品3を保持しており、研磨パッド1の表面と接触してその表面上を移動することによって加工部品が研磨される。加工部品の研磨は、その加工部品を研磨パッドと接触させた後、一般に両者の間に研磨組成物を入れて研磨パッドを加工部品に対して移動させることによってなされる。すると加工部品の少なくとも一部が研削されて加工部品が研磨される。研磨組成物は、一般に、液体基剤(例えば水性基剤)とpH調節剤を含んでおり、必要に応じて研磨材をさらに含んでいる。研磨する加工部品のタイプに応じ、研磨組成物は必要な場合にはさらに、酸化剤、有機酸、錯化剤、pH緩衝剤、界面活性剤、腐食防止剤、消泡剤などを含むことができる。CMP装置としては、従来技術で多数知られているCMP装置のうちの適切な任意のものが可能である。本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、直線状研磨具でも使用できる。
【0035】
CMP装置は、その場で研磨の終点を検出するシステム4をさらに備えていることが望ましい。そのようなシステムは、従来技術において多くのものが知られている。加工部品の表面で反射した光またはそれ以外の輻射を分析することによって研磨プロセスを検査またはモニターする方法は、従来から知られている。そのような方法は、例えば、アメリカ合衆国特許第5,196,353号、第5,433,651号、第5,609,511号、第5,643,046号、第5,658,183号、第5,730,642号、第5,838,447号、第5,872,633号、第5,893,796号、第5,949,927号、第5,964,643号に記載されている。研磨する加工部品の研磨プロセスを検査またはモニターすることにより、研磨の終点を決定できること、すなわち個々の加工部品に関していつ加工プロセスを止めるかを決定できることが望ましい。
【0036】
本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、単独で使用すること、あるいは多層研磨パッドの1つの層として用いることができる。例えば研磨パッドは、サブパッドと組み合わせて使用することができる。サブパッドとしては、適切な任意のサブパッドが可能である。適切なサブパッドとしては、ポリウレタン・フォーム製サブパッド(例えばロジャース社のポロン(登録商標)フォーム・サブパッド)、含漬フェルト・サブパッド、多孔性ポリウレタン製サブパッド、焼結ウレタン製サブパッドなどがある。サブパッドは、一般に、本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドよりも柔らかいため、より圧縮しやすく、ショア硬度が研磨パッドよりも小さい。サブパッドは、例えばショアA硬度が35〜50である。いくつかの実施態様では、サブパッドはより硬く、より圧縮しにくいため、ショア硬度が研磨パッドよりも大きい。サブパッドは、必要に応じ、溝、チャネル、中空区画、ウインドウ、開口部などを備えている。本発明の研磨パッドをサブパッドと組み合わせるときには、一般に、研磨パッドとサブパッドの間に同じ大きさの中間支持層(例えばポリテレフタル酸エチレン・フィルム)が存在している。
【0037】
本発明の研磨パッド用基板を備える研磨パッドは、多くのタイプの加工部品(例えば基板またはウエハ)や加工部品材料の研磨に用いるのに適している。例えばこの研磨パッドを利用し、メモリ・デバイス、半導体基板、ガラス基板などの加工部品を研磨することができる。この研磨パッドを用いて研磨するのに適した加工部品としては、メモリ・ディスク、ハードディスク、磁気ヘッド、MEMSデバイス、半導体ウエハ、電界放射ディスプレイ、他のマイクロエレクトロニクス用基板(特に絶縁層(例えば二酸化ケイ素、窒化ケイ素、誘電率の小さな材料)および/または金属含有層(例えば銅、タンタル、タングステン、アルミニウム、ニッケル、チタン、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、他の貴金属)を含むマイクロエレクトロニクス用基板)などが挙げられる。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態を列挙する。
[実施形態1]
細孔の平均サイズが0.01ミクロン〜1ミクロンの多孔性材料を含む化学機械的研磨用の研磨パッド用基板において、200nm〜35,000nmの範囲の少なくとも1つの波長において光透過率が10%以上である研磨パッド用基板。
[実施形態2]
200nm〜35,000nmの範囲の少なくとも1つの波長において光透過率が30%以上である、実施形態1の研磨パッド用基板。
[実施形態3]
細孔の平均サイズが0.1ミクロン〜0.7ミクロンである、実施形態1の研磨パッド用基板。
[実施形態4]
多孔性材料の密度が0.5g/cm3以上である、実施形態1の研磨パッド用基板。
[実施形態5]
多孔性材料の密度が0.7g/cm3以上である、実施形態4に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態6]
多孔性材料の細孔容積が90%以下である、実施形態1に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態7]
多孔性材料の細孔容積が25%以下である、実施形態6に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態8]
多孔性材料が、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ナイロン、弾性ゴム、弾性ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアラミド、ポリアリーレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、これらのコポリマー、これらの混合物からなるグループの中から選択したポリマー樹脂を含む、実施形態1に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態9]
ポリマー樹脂が熱可塑性ポリウレタンである、実施形態8に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態10]
多孔性材料が三次元金属酸化物ネットワークを含む、請求項1に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態11]
基板が研磨パッドである、実施形態1に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態12]
基板が研磨パッドのウインドウである、実施形態1に記載の研磨パッド用基板。
[実施形態13]
(a)回転するプラテンと、
(b)実施形態1に記載の研磨パッド用基板を備える研磨パッドと、
(c)研磨する加工部品を回転する研磨パッドと接触状態に保持する支持体とを備える化学機械的研磨装置。
[実施形態14]
その場で研磨の終点を検出するシステムをさらに備える、実施形態13に記載の化学機械的研磨装置。
[実施形態15]
加工部品を研磨する方法であって、
(a)請求項1に記載の研磨パッド用基板を備える研磨パッドを用意するステップと、
(b)加工部品をその研磨パッドと接触させるステップと、
(c)その研磨パッドをその加工部品に対して移動させてその加工部品を研削することによりその加工部品を研磨するステップを含む方法。
図1