(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883035
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月9日
(54)【発明の名称】熱分解ガソリンから水を除去する方法
(51)【国際特許分類】
C10G 33/06 20060101AFI20160225BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20160225BHJP
B01D 17/00 20060101ALI20160225BHJP
【FI】
C10G33/06
B01D17/04 501D
B01D17/04 501G
B01D17/00 501Z
B01D17/00 503C
B01D17/00 503B
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-552298(P2013-552298)
(86)(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公表番号】特表2014-518901(P2014-518901A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】IB2012050417
(87)【国際公開番号】WO2012104769
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】11000809.1
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ノイマン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ボーデ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】プファイファー,ダーニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリヒス,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ルティア,ケスハフ
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ハウネルト,アンドレア
【審査官】
▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−213419(JP,A)
【文献】
特開2007−326955(JP,A)
【文献】
特開2003−010602(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0133577(US,A1)
【文献】
特開2004−175729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 33/06
B01D 17/00
B01D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリン中の水分率を低下させる方法であって、
熱分解ガソリンから主に水を含む相が除かれる相分離工程の後では、熱分解ガソリンに最大3重量%の水が含まれており、
金属製、繊維ガラス製または金属及び繊維ガラスの複合物製の少なくとも一台のコアレッサーにより、前記相分離工程の後であって、熱分解ガソリンを水素化する水素化工程の前に、熱分解ガソリンから水を分離することを特徴とする方法において、
前記コアレッサーは、第一の水素化工程の前で用いられるコアレッサー(A)であり、かつ、第二の水素化工程の前で用いられるコアレッサー(B)である方法。
【請求項2】
上記熱分解ガソリンが、上記相分離工程の後で、0.3〜2.5重量%の水を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記相分離工程が、沈降器と、充填物または詰め物の入った容器またはカラム、メッシュ、遠心器、分離器または膜からなる群から選ばれる相分離ユニット中で行われる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記コアレッサーが、コアレッセンスフィルターカートリッジ、コアレッセンスフィルターまたはコアレッセンスチューブである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記コアレッサーがさらに充填材料を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記充填材料がコアレッサーと同じ材料からできている請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記コアレッサー中での水分離は、熱分解ガソリンが≦40℃の温度で行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)熱分解ガソリン混合物をクエンチする工程と;
(b)熱分解ガソリンから主に水を含む相を分離する相分離工程と;
(c)最大で3重量%の水を含む熱分解ガソリンをコアレッサーに導く工程と;
(d)同伴水を持たない熱分解ガソリンを水素化工程にかける工程と、を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コアレッサー(A)が金属製であり、及び/又はコアレッサー(B)が金属製である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
金属製、繊維ガラス製または金属及び繊維ガラスの複合物製の少なくとも一台のコアレッサーと一台の水分離ユニットと少なくとも一台の水素化ユニットを含む装置であって、
前記水分離ユニットにコアレッサー(A)が連結され、当該コアレッサー(A)に第一の水素化ユニットが連結され、当該第一の水素化ユニットにコアレッサー(B)が連結され、次いで、コアレッサー(B)に第二の水素化ユニットが連結され、
コアレッサー(A)及び/又はコアレッサー(B)が、金属製、繊維ガラス製または金属及び繊維ガラスの複合物製である装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置を熱分解ガソリンの水分離のために使用する方法。
【請求項12】
コアレッサー(A)及び/又はコアレッサー(B)が金属製である請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分離用のコアレッサーを用いて、水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリンから水を除去する方法に関する。本発明は、熱分解ガソリンから水を除くためのコアレッサーを含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コアレッサーは、コアレッセンス(微細液滴の合体)を行う技術的装置である。コアレッサーは、主に、分散液や乳化液などの二つの液相からなる系を、いろいろなプロセスによりその成分に分離するのに用いられる。コアレッサーは、乳化機と逆の方向に働く。汎用されている電子的なコアレッサーとともに、コアレッサーの一つの大きなグループが、機械的コアレッサーである。機械的コアレッサーは、そのうえで液滴が合体する表面を使用している。よく用いられている装置は、フィルターカートリッジ、メッシュ状材料、あるいはいろいろな充填物の入った容器である。機械的コアレッサーの利用は、例えば、“Siemens Miltronics Process Instruments Inc., Case Study, 2006”と“Chem.−Ing.−Tech., 1976, No 3, pages 177 to 189”に記載されている。
【0003】
水蒸気分解は、飽和炭化水素がより小さな、多くが不飽和である炭化水素に分解される石油化学プロセスである。例えばEP−A1302525に開示されているように、水蒸気分解は、エチレンやプロピレンなどの軽質オレフィンの製造のための主たる工業的方法である。熱分解ガソリンが水蒸気分解プロセスから得られる代表的な製品である。しかしながら熱分解ガソリンは、通常水素化及び/又はその成分への分離などの他の加工工程にかけられるため、中間体と考えることもできる。
【0004】
DGMK会議「選択的水素化と脱水素」、1993年11月11/12、カッセル/ドイツでのH.−M. Allmannらの論文(合計で29頁)には、水蒸気分解機の下流での処理における選択的水素化と精製についての概要が述べられている。しかしながら、この論文は、水蒸気分解プロセスまたはこれに続く精製および水素化工程の間の水の存在については言及していない。
【0005】
有機熱分解ガソリン流中に(自由)水が存在すると、その水素化触媒が、部分的あるいは完全に不活性化されることがある。一般的に熱分解ガソリン水素化用の固定床触媒の活性と寿命は、触媒表面に接触する水の量に依存する。このため熱分解ガソリン流中に水が存在すると、水素化触媒の活性の回転数が減少し、この水素化触媒をより頻度高く再生することが必要となる。これは、経済的また環境的な欠点を意味する。また、熱分解ガソリン流中ではこの小量の水が小さな水滴として存在するため、通常の方法で、例えば重力相分離でこの小量の水を分離することができない。例えば蒸留などの方法も、水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリン中の水の量の低減には不効率である。
【0006】
Lee Siang Huaの論文(「物理的分離装置におけるタイタンの経験」; 15th Symposium of Chemical Engineers, Hyatt Hotel, Johor Bahru, Malaysia, September 12, 2001;合計で7頁)には、水蒸気分解プロセスから得られる有機化合物流から水を除去するのに用いられる分離装置の概要が述べられている。4個の異なる種類の物理的分離装置が検討されている。液液分離を行うためには、クエンチ水中に溶解した炭化水素を除くためには、あるいは原料の熱分解ガソリンから水を除くためには、運転が、重力分離であっても、油−水コアレッサー中でのコアレッセンス分離であってもよい。ある液相の微粒子を多量のもう一つの液相から分離あるいは除去する必要がある場合に、このコアレッセンス分離を用いることができる。開示されているコアレッサーは、横型容器に納められたメッシュ型のコアレッサーである。
【0007】
ポール社の記事(「液体/液体コアレッサーの用途:エチレン加工希釈水蒸気システム」;ポール社編、199;合計で2頁)には、熱分解ガソリンからエチレンを得る方法が開示されている。このエチレンプロセス中では、合計で4台のコアレッサーが異なる位置で異なる目的のために使用されている。一台のコアレッサーは、例えば、油/水分離器から得られる第一の流体からの水からガソリンを除くのに用いられる。もう一台のコアレッサーは、上記の油/水分離器から得られる第二の流体からのガソリンから水を除くのに用いられる。しかしながら、このポール社の記事にはこのコアレッサーの材料についての記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP−A1302525
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Siemens Miltronics Process Instruments Inc., Case Study, 2006”
【非特許文献2】“Chem.−Ing.−Tech., 1976, No 3, pages 177 to 189”
【非特許文献3】DGMK会議「選択的水素化と脱水素」、1993年11月11/12、カッセル/ドイツでのH.−M. Allmannらの論文(合計で29頁)
【非特許文献4】Lee Siang Huaの論文(「物理的分離装置におけるタイタンの経験」; 15th Symposium of Chemical Engineers, Hyatt Hotel, Johor Bahru, Malaysia, September 12, 2001;合計で7頁)
【非特許文献5】ポール社の記事(「液体/液体コアレッサーの用途:エチレン加工希釈水蒸気システム」;ポール社編、199;合計で2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的は、水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリンから水を効率的に除く方法、特に従来の相分離工程の後で放置されている残留水を除く方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の問題は、水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリン中の水分率を低下させる方法であって、熱分解ガソリンから水を、少なくとも一台の金属製、繊維ガラス製または金属と繊維ガラスの複合物製のコアレッサーにより除去する方法を提供することで解決される。
【発明の効果】
【0012】
水蒸気分解工程から得られる熱分解ガソリンから水を分離するための金属製及び/又は繊維ガラス製のコアレッサーの使用の利点は、非常に効率的に水を除去できることである。熱分解ガソリン流中の総水分率は、溶解水と同伴水の合計である。コアレッセンスにより同伴水のみを熱分解ガソリンから除くことができる。主な水分離のための従来の相分離工程の後でこのコアレッサーを用いると、この長所が増幅される。
【0013】
また水素化工程の前でこのコアレッサーを用いると、この水素化工程の変換率が増加する。このため、再生の必要性が低下し、水素化触媒が長寿命となる。また触媒の化学構造が同伴水で変化するが、水素化の前に水分離することでこれを防止することができる。
【0014】
第二の水素化工程の前に、購入した部分水素化熱分解ガソリンの流体や改質器からの流体などの他の流体を熱分解ガソリンに添加することがよくある。このような場合には、水素化工程の前に水分離することにより、第一の水素化工程の前の分離と同様に触媒を保護できるという長所が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】総水分率とカートリッジを通過する質量流との関係を示すグラフである。
【
図2】総水分率と第二の水素化工程前でカートリッジを経由する質量流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の方法をより詳細に説明する。
【0017】
本発明において「コアレッサー」は、コアレッセンス(液滴の合同)を起こすために、例えばコアレッセンス工程またはコアレッセンス分離を行うために使用できるいずれかの装置または器具を意味する。このコアレッサーは、ハウジングや容器などより大きなユニットに納められたものであってもよいし、その一部であってもよい。このより大きなユニットは、コアレッサー以外に、プレフィルターやパイプ、供給口、排出口または分離器などの他の装置を有していてもよい。これらの他の装置は、通常相互に連結されており、またコアレッサーに、例えば上記のパイプにより連結されている。しかしながら本発明では、これらの他の装置は、コアレッサーの一部であるとは考えない。
【0018】
この水分率を低下させるために熱分解ガソリンから水を除去するのに用いられるコアレッサーは、当業界の熟練者には既知のいずれのタイプのコアレッサーであってもよい。このコアレッサーが、コアレッセンスフィルターカートリッジ、コアレッセンスフィルターまたはコアレッセンスチューブであることが好ましい。
【0019】
このコアレッサーは、金属製、繊維ガラス製、または金属繊維ガラス複合物製である。 このコアレッサーは、金属製または金属繊維ガラス複合物製であることが好ましい。このコアレッサーが金属製であることがより好ましい。金属と繊維ガラスの複合物として作られたコアレッサーは、複合物または複合キャンドルと呼ばれることもある。コアレッサーが繊維ガラス製の場合、繊維径(繊度)が≧40μmである繊維ガラスを用いることが好ましい。コアレッサーが金属製の場合、この金属がステンレス鋼であることが好ましい。
【0020】
本発明では、「製」は、コアレッサーの製造に用いられる材料が、それぞれ金属または繊維ガラスを含むことを意味する。しかしながら、用いる材料が、金属または繊維ガラス以外の他の成分を含んでいてもよい。用いる材料が、金属または繊維ガラスを、それぞれ少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%含むことが好ましい。金属繊維ガラス複合物製のコアレッサーは、それぞれのコアレッサーの一部が金属製であり、他の部分が繊維ガラス製であることを意味する。しかしながら、用いる材料が金属と繊維ガラス以外の他の成分を含んでいてもよい。もちろん、これらの材料は、上記いずれのタイプのコアレッサーの製造にも、例えばコアレッセンスフィルターまたはコアレッセンスチューブの製造にも使用できる。
【0021】
本発明の方法では、一台以上の、金属製、繊維ガラス製または複合材製コアレッサーを使用できる。しかしながら本発明の方法中で、金属または繊維ガラス以外の材料性の他のコアレッサーを使用することもできる。上記の他のコアレッサーは、例えば、綿、アクリル/フェノール樹脂または金網でできている。以下、いずれかの材料製の、特に金属または繊維ガラスとは異なる材料製のコアレッサーを具体的に述べる。
【0022】
熱分解ガソリンを得るための水蒸気分解プロセスや水蒸気分解工程は、当業界の熟練者には既知である。本発明の方法で用いる熱分解ガソリンは、当業界の熟練者には既知である。本発明の方法で用いられる熱分解ガソリンの適当な例が、例えば、上記のH.−M. Allmannらの、DGMK会議1993での論文に見いだされる。この熱分解ガソリンは、少なくとも5個の炭素原子をもつ炭化水素(「留分」)を含むことが好ましい。ある好ましい熱分解ガソリンは、29〜36重量%のベンゼンと、14〜19重量%のトルエン、3〜7重量%のキシレン、多くて1.5重量%のブタジエン、他の成分を含む。他の成分の例は、エチルベンゼン、スチレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、インデン、ビニルトルエン、ノルマルヘキサン、2−メチル−1,3−ブタジエン、イソペンタン、ペンタン、及び/又はナフテンである。
【0023】
水蒸気分解プロセスから得られる熱分解ガソリンは水を、最大で約1.2kg−水/kg−熱分解ガソリンの量で含んでいてもよい。上記熱分解ガソリン混合物(水との)は、クエンチ工程から得られるものであることが好ましく、熱分解ガソリンの水中分散液であっても、この逆であってもよい。
【0024】
熱分解ガソリンが多量の水を含む場合、例えば3重量%を超える水(炭化水素の量に対して)を含む場合、コアレッサーを用いる水分離に先立って一つ以上の他の水分離工程を行うことが好ましい。
【0025】
ある好ましい実施様態においては、このコアレッサーが、熱分解ガソリンから主に水を含む相が分離する相分離工程(主相分離工程とも呼ばれる)の後で用いられる。
【0026】
相分離工程の直後にコアレッサーを使用することが、経済的また環境的な面から好ましい。その段階では、熱分解ガソリン流は通常純粋であり、熱分解ガソリンストリッピングや脱ブタン化からくる他の流体で希釈されてない。これらの流体は、必要なら水素化工程の直前で、好ましくは後述の第一の水素化工程の前で添加してもよい。
【0027】
この相分離工程は通常、(従来の)重力分離型相分離ユニット中で行われる。このような相分離ユニットは、プロセスのスケールにもよるが当業界の熟練者には既知である。好ましい相分離ユニットは、沈降器や、充填物または詰め物の入った容器またはカラム、メッシュ、遠心器、分離器または膜からなる群から選ばれる。
【0028】
この相分離工程の後でも、熱分解ガソリン相は小量の水を含んでいる。この熱分解ガソリン相は、この相分離工程の後で、最大3重量%の水を、好ましくは相分離工程の後で0.3〜2.5重量%の水を含んでいてもよい。
【0029】
本発明のある好ましい実施様態では、水素化工程の前で、好ましくは第一の水素化工程の前でこのコアレッサーが用いられる。さらに好ましくは、このコアレッサーが、相分離工程の後で、水素化工程の前、特に第一の水素化工程の前で用いられる。コアレッサーを第一の水素化工程の前で用いる場合、他のコアレッサーを第一の水素化工程の後で、例えば第二の水素化工程の前に用いることができる。
【0030】
第一の水素化工程の前でコアレッサーを使わず、第一の水素化工程の後、第二の水素化工程の前でこのコアレッサーを使用するのでなく、第一の水素化工程の前でコアレッサーを使用する利点は、第一の水素化触媒の急速な触媒失活を避けることができることである。
【0031】
このコアレッサーは、さらに充填材料を含んでいてもよい。この充填材料は、独立して、金属であっても、繊維ガラス、プラスチックまたはセラミック、あるいはいずれか他の熟練者には既知の材料であってもよい。この充填材料が、コアレッサーと同じ材料でできていることが好ましい。したがって、好ましい材料は、金属、繊維ガラスまたはこれらの組み合わせであり、特に金属である。複数のコアレッサーを使用する場合、用いる各コアレッサーの充填材料は独立して選択できる。用いる各コアレッサーが充填材料として金属を含むことが好ましい。
【0032】
本発明のある好ましい実施様態では、コアレッサー中での水分離が、熱分解ガソリンの≦40℃の温度で行われる。第一の水素化工程の前に位置するコアレッサー中で、この実施様態を行うことが好ましい。温度範囲は、20〜40℃であることがより好ましい。≦40℃の温度は、このコアレッサーに入る前に熱分解ガソリンを冷却することで得ることができる。この熱分解ガソリンを、80℃を超える温度から≦40℃の温度に冷却することが好ましい。複数のコアレッサーを用いる場合、用いる各コアレッサー中で上記条件とすることが好ましい。
【0033】
本発明のある実施様態においては、少なくとも一台のコアレッサーの前で、好ましくは第一の水素化工程の前に用いられるコアレッサーの前でプレフィルターを用いてもよい。プレフィルターは当業界の熟練者には既知である。例えば、固体プレフィルターを使用できる。
【0034】
本発明の他の好ましい実施様態は、熱分解ガソリンから水が除かれる水蒸気分解方法であって、
(a)熱分解ガソリン混合物をクエンチする工程と;
(b)熱分解ガソリンから主に水を含む相を分離する相分離工程と;
(c)最大で3重量%の水を含む熱分解ガソリンをコアレッサーに導く工程と;
(d)同伴水を持たない熱分解ガソリンを水素化工程にかける工程とを含む方法である。
【0035】
本発明の方法の水素化工程を実施するための条件と使用する触媒は、当業界の熟練者には既知である。例えば、EP−A0885273とEP−A0881275、EP−A1302525、DE−A19911094に、不飽和炭化水素の選択的水素化方法が記載されている。熱分解ガソリンの選択的水素化用の触媒が、例えばWO−A2008/138785に記載されている。熱分解ガソリンの選択的水素化用の特別な装置(たとえば、水素化装置)が、例えばDE−A19911094に記載されている。
【0036】
本発明のある実施様態においては、本方法が、熱分解ガソリンが水素化される二つの水素化工程で行われる。第1の液相水素化工程には、通常固定床の、パラジウムまたはニッケルを担持するアルミナ触媒が用いられる。第1の液相水素化工程の前に、この熱分解ガソリン流を、必要なら、熱分解ガソリンストリッピングから及び/又は脱ブタン化からの他の流体と混合してもよい。
【0037】
この一段階目の水素化では、主にジエンとスチレンが水素化される。この水素化段階の生成物は、部分水素化熱分解ガソリンと呼ばれる。第二の水素化工程では、残留する二重結合のほとんどが水素化され、水素化脱硫が行われる。この二段階目の水素化は、通常気相で、コバルト/モリブデンまたはニッケル/モリブデンを担持するアルミナ触媒上で行われる。また、液相水素化も可能である。
【0038】
上述のように、本発明の方法では、複数のコアレッサー及び/又は金属または繊維ガラス以外の材料製のコアレッサーを使用できる。二台以上のコアレッサーを使用する場合、第一の水素化工程の前に一台のコアレッサーを使用し、第二の水素化工程の前に一台のコアレッサーを使うことが好ましい。両方のコアレッサーは、金属製、繊維ガラス製またはその組合せであることが好ましい。
【0039】
本発明のある好ましい実施様態では、本発明の方法中で二台のコアレッサー(A)と(B)が用いられる。上述のように、コアレッサー(A)は、金属製、繊維ガラス製またはこれらの組み合わせである。コアレッサー(A)とは異なり、コアレッサー(B)は、当業界の熟練者には既知のいずれのコアレッサーであってもよい。コアレッサー(B)は、コアレッセンスフィルターカートリッジ、コアレッセンスフィルターまたはコアレッセンスチューブであることが好ましい。
【0040】
このコアレッサー(B)は、当業界の熟練者には既知のいずれの材料あるいは材料混合物からできていてもよい。好ましくは、このコアレッサー(B)は、金属製であり、あるいは複合物、繊維ガラス、金網、綿またはアクリル/フェノール樹脂製である。コアレッサー(B)のより好ましい材料は金属である。コアレッサー(B)に関する「製」は、コアレッサー(A)に関して定義した意味と同じである。いずれの場合も、各材料が少なくとも50重量%の量で用いられることが好ましい。
【0041】
上記の実施様態では、コアレッサー(A)は主相分離相の後で第一の水素化工程の前で用いられるが、コアレッサー(B)は第一の水素化工程の後で第二の水素化工程の前で用いられる。コアレッサー(A)が、金属製、繊維ガラス製またはこれらの組み合わせであり、コアレッサー(B)が金属製であることが好ましい。コアレッサー(A)と(B)の両方が金属製であることが最も好ましい。コアレッサー(A)と(B)の両方が充填材料を含み、この充填材料が各コアレッサーと同じ材料でできていることも好ましい。
【0042】
もう一つの好ましい実施様態では、コアレッサー(B)がメイン相分離相の後で第一の水素化工程の前に用いられ、コアレッサー(A)が第一の水素化工程の後で第二の水素化工程の前に用いられる。この好ましい実施様態では、コアレッサー(A)は金属製であることが好ましい。コアレッサー(A)と(B)の両方が充填材料を含み、この充填材料が各コアレッサーと同じ材料からできていることも好ましい。
【0043】
一つ以上の他の流体を、本発明の熱分解ガソリン流に添加してもよい。これらの他の流体は、相互に独立して、例えば部分水素化熱分解ガソリンであっても、改質器から得られる流体であってもよい。本発明の方法で二台のコアレッサーが使用される場合には、これらの他の流体を添加することが好ましい。
【0044】
一つ以上の流体、特に一つの他の流体を第一の水素化工程の後でコアレッサーの前に添加し、これを次いで第二の水素化工程の前で使用することがより好ましい。
【0045】
本発明のもう一つの対象は、金属製、繊維ガラス製または金属繊維ガラス複合物製の少なくとも一台のコアレッサーと、一台の水分離ユニット、少なくとも一台の水素化ユニットを有する装置である。この装置は、上述の本発明の方法を実施するのに使用できる。
【0046】
相分離用の水分離ユニットは、当業界の熟練者には既知のいずれの分離ユニットであってもよい。分離ユニットの例は、沈降器、充填物または詰め物の入った容器またはカラム、メッシュ、遠心器、分離器または膜である。
【0047】
水素化ユニットは、当業界の熟練者には既知である。反応の規模と必要な圧力にもよるが、水素化ユニットは通常、耐圧性反応器である。
【0048】
本発明の一つの実施様態は、水分離ユニットがコアレッサー(A)に連結され、コアレッサー(A)が第一の水素化ユニットに連結され、この第一の水素化ユニットがコアレッサー(B)に、次いで第二の水素化ユニットに連結されている装置であって、コアレッサー(A)及び/又はコアレッサー(B)が金属製、繊維ガラス製または金属と繊維ガラス製であるものである。
【0049】
本発明のもう一つの対象は、上記装置を熱分解ガソリンの水分離への利用することである。コアレッサーが金属製である装置の使用が好ましい。
【実施例】
【0050】
コアレッサーのスクリーニング
系の相分離は、ほとんどがコアレッセンスにより決まる。最適のコアレッサー材料を決めるために、40℃で0.4重量%の水相を含む水蒸気分解生成物を用いてコアレッサーのスクリーニングを行った。可能なコアレッセンスカートリッジ材料のスクリーニングでは、各材料で、同伴水を含まない場合のコアレッサーカートリッジの最大負荷量[kg/cm
2h]を測定した。
【0051】
コアレッサーのスクリーニングでは、ラボスケールの撹拌容器を用いて、0.4重量%の水を含む熱分解ガソリン分散液を製造した。この分散液を、小さなフィルターカートリッジを通して、小さな負荷量から初めてポンプ輸送した。流動方向は、フィルターカートリッジ内部からカートリッジメッシュを経由して外に向かう方向である。このフィルターカートリッジを、小さなガラス容器に供給口チューブの所で固定した。カートリッジを通過する負荷量を上げると、ある点でこの熱分解ガソリンが透明から濁りに変化した。この点では、排出される熱分解ガソリンの水分率が、溶解度の750ppm(40℃)より高い。試験中(負荷量を上げながら)、濁度を測定し、試料の水分率をカールフィッシャー滴定で測定した。
【0052】
以下の表1に記載のコアレッセンスカートリッジ材料を試験した。それぞれの結果を、それぞれ
図1または
図2に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
繊維ガラスには、二つの」メッシュサイズ25μmと50μmを試験する。
【0055】
図1に、総水分率とカートリッジを通過する質量流との関係を示す。750ppmの線が、40℃での熱分解ガソリン中の水の溶解度であり、したがってベースライン(「溶解水」)である。各材料に対する負荷を上げると、ある点で水濃度が上昇する。この特徴的な点によりこれらの材料をランクづけることができる。最大質量流の値が大きいほど、材料が優れている。
【0056】
総水分率は、溶解水と同伴水の合計である。同伴水のみが、コアレッセンスにより熱分解ガソリンから除かれる。
【0057】
金属製および複合物製のキャンドルが、高負荷量で最高のコアレッセンス性能を示す。
【0058】
繊維ガラスを使用する場合、繊度が50μmでは中間的な性能を示し、繊度が25μmでは低い性能を示す。綿は低い性能を示し、アクリル/フェノール樹脂は最も低い性能を示す。
図1の測定は、(第一の)水素化工程の前で実施した。
【0059】
図2は、総水分率と第二の水素化工程前でカートリッジを経由する質量流との関係を示す。なお、第一の水素化工程はこの測定の前に実施されている。ここでも金属が最高のコアレッセンス性能を示し、繊維ガラスの性能は、第一の水素化工程の前の性能と比べて低下している。