特許第5883357号(P5883357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883357
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20160301BHJP
   H03F 1/52 20060101ALI20160301BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   H03F3/45 A
   H03F1/52 Z
   H03F3/34 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-154205(P2012-154205)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-17680(P2014-17680A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】新井 義明
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−183206(JP,A)
【文献】 特開平02−033210(JP,A)
【文献】 特開昭63−274169(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0013439(US,A1)
【文献】 米国特許第06388496(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を電圧/電流変換するGm増幅器と、該Gm増幅器の能動負荷として接続された第1の導電型のラテラルの第1および第2のトランジスタを有するカレントミラー回路と、該カレントミラー回路の出力を入力する第2の導電型の第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタのエミッタに接続された電流源をもつ出力バッファ回路と、を備えた演算増幅器において、
コレクタとベースを前記第3のトランジスタのベースに接続し、エミッタを前記第3のトランジスタのエミッタに接続した第1の導電型のラテラルの第4のトランジスタを設けたことを特徴とする演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテラルバイポーラトランジスタを少なくとも一部に使用した演算増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイポーラトランジスタQA1のベース・エミッタ間に逆バイアスが印加された際の保護手法として、図5に示すように、そのバイポーラトランジスタQA1のベース・エミッタ間にダイオードD1を接続することが行われる。このダイオードD1によって、ベース・エミッタ間に印加した逆バイアスをバイパスさせることができる。
【0003】
一方、ラテラルPNPトランジスタは、高温になるとベースと基板との間にリーク電流が流れ出し、特に低消費電流用の半導体装置では、このリーク電流が回路特性に影響を及ぼす。図6はラテラルPNPトランジスタの断面構造を示す図であり、51はp型基板、52はn型エピタキシャル層、53は高濃度n型埋め込み層、54は高濃度n型のベース拡散領域、55,56はp型コレクタ拡散領域、57はp型エミッタ拡散領域である。
【0004】
このラテラルPNPトランジスタが高温になると、n型エピタキシャル層52とp型基板51との間のpn接続面にリーク電流ILが流れる。n型エピタキシャル層52はn型ベース拡散領域54に接続されているため、このリーク電流ILは、回路上、ベースから基板に流出する電流となる。
【0005】
このリーク電流の補償方法として、特許文献1に記載がある。これは、図7に示すように、ラテラルPNPトランジスタQB2,QB3によるカレントミラー回路61を構成し、そのカレントミラー回路61のリーク電流IL4をトランジスタQB1のベースに供給するようにしたものである。
【0006】
その動作は、トランジスタQB2,QB3のベースから基板に向けてリーク電流IL4が発生すると、そのリーク電流IL4はトランジスタQB2のコレクタ電流となり、この電流がトランジスタQB3のコレクタ電流にミラーされて、トランジスタQB1のベースに供給される。そこで、トランジスタQB2,QB3をトランジスタQB1の半分のサイズ比で構成し、トランジスタQB1のベース電流を無視すれば、トランジスタQB3のコレクタ電流(=リーク電流IL4)がトランジスタQB1のリーク電流IL3と等しくなるので、トランジスタQB1のリーク電流IL3がリーク電流IL4によって相殺されることになる。
【0007】
図8に、ラテラルPNPカレントミラーによる差動−シングルエンド変換部とラテラルNPNトランジスタによるバッファ回路を構成した演算増幅器を示す。11は電圧/電流変換を行うGm増幅器(トランスコンダクタンス増幅器)、12はラテラルのPNPトランジスタQ1,Q2により構成されたGm増幅器11の能動負荷としてのカレントミラー回路、13はNPNトランジスタQ3と電流源I1による出力バッファ回路である。
【0008】
この演算増幅器では、トランジスタQ3の出力側に接続される回路構成によって、そのトランジスタQ3のエミッタの電位が上昇して、ベース・エミッタ間に大きな逆バイアスが印加することがある。そこで、これを防止するためには、図5で説明したようなダイオードを接続すればよい。また、高温になると、トランジスタQ1,Q2のベースから基板にリーク電流IL1が流れ、トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1は、トランジスタQ1,Q2のベース電流が小さいとして無視しすると、
Ic1=Iogm1+IL ・・・(1)
となる。一方、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は、トランジスタQ3のベース電流が小さいとして無視すると、
Ic2=Iogm2 ・・・(2)
となる。ただし、Iogm1,Iogm2はGm増幅器11の出力端子に流入する電流である。
【0009】
トランジスタQ1,Q2のサイズ比が1:1であるとすると、
Ic1=Ic2 ・・・(3)
であるため、
Iogm1≠Iogm2 ・・・(4)
となり、電流Iogm1,Iogm2にリーク電流IL1分の差分が発生してGm増幅器11のバランスが崩れ、その入力オフセット電圧が変動してしまう。そこで、この特性変動を抑えるためには、図7で説明したような対策を採ればよい。
【0010】
図8で説明した演算増幅器において、上記した対策を施すと、図9に示すような回路構成となる。この回路では、ダイオードD1によってトランジスタQ3のベース・エミッタ間の逆バイアス対策を行うことができる。
【0011】
また、トランジスタQ1,Q2,QB2,QB3のサイズ比を1:1:1:1とし、トランジスタQ1,Q2,QB2,QB3のベース電流が小さいとして無視すると、トランジスタQB3のコレクタ電流(=リーク電流IL4)がリーク電流IL1に等しくなるので、リーク電流IL1がリーク電流IL4によって補償され、
Iogm1=Ic1 ・・・(5)
となり、トランジスタQ3のベース電流が小さいとして無視すると、
Iogm2=Ic2 ・・・(6)
となる。ここで、前記した式(3)のように、
Ic1=Ic2 ・・・(7)
であるので、
Iogm1=Iogm2 ・・・(8)
となって、カレントミラー回路12のリーク電流IL1をカレントミラー回路61のリーク電流IL4によって補償することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平5−87150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これによれば、トランジスタQB2,QB3、およびダイオードD1を追加する必要があり、素子数が増大する問題がある。
【0014】
本発明の目的は、少ない素子数追加によって、出力バッファ回路のトランジスタを保護でき、同時にリーク電流による入力オフセット電圧変動が生じないようにした演算増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、入力電圧を電圧/電流変換するGm増幅器と、該Gm増幅器の能動負荷として接続された第1の導電型のラテラルの第1および第2のトランジスタを有するカレントミラー回路と、該カレントミラー回路の出力を入力する第2の導電型の第3のトランジスタおよび該第3のトランジスタのエミッタに接続された電流源をもつ出力バッファ回路と、を備えた演算増幅器において、コレクタとベースを前記第3のトランジスタのベースに接続し、エミッタを前記第3のトランジスタのエミッタに接続した第1の導電型のラテラルの第4のトランジスタを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、図8で説明した従来回路に対して1個のトランジスタを追加するのみで、出力バッファ回路のトランジスタの逆バイアス保護とリーク電流による入力オフセット電圧変動防止を同時に達成することができ、また、チップ面積削減が可能となり回路の製作費用を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例の演算増幅器の回路図である。
図2】演算増幅器の温度に対する入力オフセット電圧変動の特性図である。
図3図1の演算増幅器の一部の回路構造を断面で表した回路図である。
図4図3の回路構造の平面図である。
図5】ベース・エミッタ間逆バイアス保護対策を施したトランジスタの回路図である。
図6】ラテラルPNPトランジスタの回路構造を示す断面図である。
図7図3のラテラルPNPトランジスタのリーク電流補償対策を施した回路図である。
図8】従来のラテラルPNPトランジスタを使用した演算増幅器の回路図である。
図9図8の演算増幅器に出力バッファ回路のトランジスタの逆バイアス保護およびリーク電流補償を施した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に本発明の実施例の演算増幅器を示す。本実施例では、Gm増幅器11がNPNトランジスタQ5,Q6と電流源I2で構成されている。カレントミラー回路12はGm増幅器11の能動負荷として、ラテラルPNPトランジスタQ1,Q2で構成されている。そして、Gm増幅器11とカレントミラー回路12とで差動−シングルエンド変換部が構成されている。出力バッファ回路13は、トランジスタQ3と電流源I1で構成されている。そのトランジスタQ3には、そのベースにラテラルPNPトランジスタQ4のベースとコレクタが、そのエミッタにラテラルPNPトランジスタQ4のエミッタが接続されている。
【0019】
本実施例では、トランジスタQ4によってダイオードが構成されているので、出力電圧Voutの電位がトランジスタQ3のベース電位よりも高くなりかけると、トランジスタQ4によってトランジスタQ3のベース・エミッタ間に印加する逆方向電圧に制限がかかり、トランジスタQ3が保護される。
【0020】
また、高温になると、トランジスタQ1,Q2のベースと基板との間にリーク電IL1が流れ、トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1は、
Ic1=Iogm1+IL1 ・・・(11)
となる。このとき、トランジスタQ4においてもそのベースと基板との間にリーク電流IL2が流れるので、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2は、トランジスタQ3のベース電流を無視すると、
Ic2=Iogm2+IL2 ・・・(12)
となる。
【0021】
そして、トランジスタQ4のサイズ比をトランジスタQ1,Q2の2倍に設定しておけば、
IL1=IL2 ・・・(13)
となる。また、
Ic1=Ic2 ・・・(14)
である。したがって、
Iogm1=Iogm2 ・・・(15)
となり、トランジスタQ5,Q6のコレクタ電流Iogm1,Iogm2のバランスが保たれ、高温での入力オフセット電圧の変動が抑えられる。
【0022】
図2に、温度に対する入力オフセット電圧の変化のシミュレーション結果を示した。図8で説明した演算増幅器では、特性P2に示すように、温度が100℃をこえると急激に入力オフセット電圧が高くなっていたが、図1に示す演算増幅器では、特性P1に示すように、温度が100℃を超えても入力オフセット電圧の変動が抑えられていることが分かる。
【0023】
図3はラテラルPNPトランジスタQ1,Q2,Q4の半導体構造を示す断面図である。21はp型基板、22,23はn型エピタキシャル層、24,25は高濃度n型の埋め込み層、26はトランジスタQ1,Q2の共通の高濃度n型拡散のベース拡散領域、27はトランジスタQ1のp型のコレクタ拡散領域、28はトランジスタQ1,Q2の共通のp型のエミッタ拡散領域、29はトランジスタQ2のp型のコレクタ拡散領域、30はトランジスタQ4の高濃度n型のベース拡散領域、31,32はトランジスタQ4のp型のコレクタ拡散領域、33はトランジスタQ4のp型のエミッタ拡散領域である。このように、トランジスタQ1,Q2とトランジスタQ4は同じサイズ比、つまりトランジスタQ4はトランジスタQ1又はQ2のサイズ比の2倍のサイズ比で構成されている。
【0024】
図4はラテラルPNPトランジスタQ1,Q2,Q4の表面図である。41はトランジスタQ1、Q2の共通のベース電極、42はトランジスタQ1のコレクタ電極、43はトランジスタQ1,Q2の共通のエミッタ電極、44はトランジスタQ2のコレクタ電極、45はトランジスタQ4のベース電極、46,47はトランジスタQ4のコレクタ電極、48はトランジスタQ4のエミッタ電極である。
【0025】
なお、カレントミラー回路12は、リーク電流が流れる一対のトランジスタがラテラル構造であれば、エミッタ帰還抵抗を有するカレントミラー回路、電流ゲイン補助トランジスタを有するカレントミラー回路、カスコードカレントミラー回路、ウイルソンカレントミラー回路であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
11:Gm増幅器、12:カレントミラー回路、13:出力バッファ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9