(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や廃棄物の減量化が求められており、バイオマスや廃棄物が発電設備の燃料などに用いられている。このようなバイオマスの一形態として、下水処理場で生じる下水汚泥を処理した汚泥処理物が知られている(例えば、特許文献1参照)。汚泥処理物とは、下水汚泥を乾燥した汚泥乾燥物や、炭化した汚泥炭化物などがある。
【0003】
汚泥処理物は、ガス化によりガス化ガスとなり、そのガス化ガスを燃焼するなどして有効利用される。このガス化に際しては、例えば非特許文献1のような流動床ガス化炉がある。しかし、汚泥処理物にはさまざまな重金属が多く含有するため、出灰からの重金属の溶出について、産廃処理には非常に注意を要する。そのため、積極的に重金属を溶融スラグにて排出でき、さらにタール分解性能に優れる噴流床ガス化炉を用いることが、重金属処理の安定化やガス化炉以降の設備への影響、さらには残留物の減容化を考慮すると望ましいと考えられる。
【0004】
噴流床ガス化炉による汚泥処理物のガス化には、次のような要求がある。すなわち、(1)汚泥処理物中の灰分の融点よりも高い温度に維持し、スラグを溶融して安定排出できること、(2)ガス化ガスを燃焼する内燃機関、例えばガスタービンを用いて発電できる程度の発熱量を有するガス化ガスを生成することである。
【0005】
汚泥処理物は、灰分を多く含むものであり、その発熱量は比較的少ない。このため、単に汚泥処理物を噴流床ガス化炉でガス化しても上記(2)の要求を満たせない。また、噴流床ガス化炉内の酸素比を低くすることで燃焼反応を少なくすると、ガス化ガスの発熱量は高まるが、噴流床ガス化炉内の温度が灰分の融点以下となり、スラグを溶融して安定排出できなくなる場合がある。つまり、上記(1)の要求を満たせない。
【0006】
汚泥処理物は、コストが非常に安価であり、特に都市部では安定した供給が見込めることから有効利用が望まれているものの、汚泥処理物のみでは、噴流床ガス化でのガス化及びそのガス化ガスを用いた発電が困難である。
【0007】
なお、汚泥処理物に灰分が少なく、発熱量が高い木質バイオマスを混合した混合燃料をガス化して用いることが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1は、流動床ガス化炉を用いているものであり、積極的にスラグを溶融する必要がない。すなわち、噴流床ガス化炉での上記(1)(2)の要求を考慮したものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、発熱量が高くかつ安価であり、噴流床ガス化炉でのガス化に好適な混合燃料を用いることができるプラントの運転方法、該混合燃料の製造方法、及び該混合燃料を用いることができるプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための第1の態様は、
バイオマスと下水汚泥を処理した汚泥処理物とを混合した混合燃料及び酸素からガス化ガスを製造する噴流床ガス化炉と、当該ガス化ガスを燃料として動力を得る内燃機関とを備えるプラントの運転方法であって、
前記バイオマス及び前記汚泥処理物を所定の混合比率で混合した混合燃料の灰分組成に基づいて熱力学平衡計算により当該混合燃料の灰分の融点TAmを求める第1工程と、前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときの温度を燃焼計算により求め、当該温度を前記噴流床ガス化炉の炉内温度Tgとし、前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときに生じるガス化ガスの発熱量を燃焼計算により求める第2工程と、前記炉内温度Tgが前記融点TAm以上となり、かつ前記発熱量が前記内燃機関を運転可能であるという条件を満たす酸素比を求める第3工程と、複数の異なる前記混合比率ごとに前記第1工程から前記第3工程を実行して前記酸素比を求め、複数の異なる前記混合比率から選択した混合比率の前記混合燃料、及び当該混合比率に対応した酸素比に相当する量の酸素を前記噴流床ガス化炉に供給する第4工程とを有することを特徴とするプラントの運転方法にある。
【0012】
かかる第1の態様では、安価な汚泥処理物と発熱量が高いバイオマスを混合して混合燃料とすることで、コストを下げるとともに、全体として汚泥処理物よりも発熱量が向上した混合燃料を用いることができる。混合燃料は、噴流床ガス化炉においてガス化されるが、バイオマスの混合により灰分割合が減少しているので、灰を溶融させて外部に排出しやすくなる。これにより、噴流床ガス化炉においてスラグを溶融及び外部に排出して安定的に運転継続が可能となり、また、発熱量が高く安価にガス化ガスを生成し、このガス化ガスを燃焼して内燃機関による発電を行うことができる。
さらに、内燃機関による発電を行うのに十分な発熱量を有し、かつ、噴流床ガス化炉においてガス化ガスの灰分を溶融スラグとして外部に排出することができる。
【0015】
本発明の第
2の態様は、第
1の態様に記載するプラントの運転方法であって、前記第4工程では、
複数の異なる前記混合比率について前記第1工程から前記第3工程を実行し
て前記酸素比を求め、前記汚泥処理物の比率が最も高い前記混合燃料、及び当該混合燃料の混合比率に対応した酸素比に相当する量の酸素を前記噴流床ガス化炉に供給することを特徴とするプラントの運転方法にある。
【0016】
かかる第
2の態様では、混合燃料は最も安価なものとなるので、プラントの運転コスト
を低減することができる。
【0017】
本発明の第
3の態様は、第1
又は第2の態様に記載するプラントの運転方法において、前記内燃機関は、ガスタービン、ガスエンジン及びディーゼルエンジンの少なくとも一つであることを特徴とするプラントの運転方法にある。
【0018】
かかる第
3の態様では、内燃機関としてガスタービン、ガスエンジン及びディーゼルエンジンを用いることができる。
【0019】
本発明の第
4の態様は、
バイオマスと下水汚泥を処理した汚泥処理物とを混合した混合燃料をガス化してガス化ガスを製造する噴流床ガス化炉と、当該ガス化ガスを燃焼する内燃機関とを備えるプラント用の混合燃料の製造方法であって、
前記バイオマス及び前記汚泥処理物を所定の混合比率で混合した混合燃料の灰分組成に基づいて熱力学平衡計算により当該混合燃料の灰分の融点TAmを求める第1工程と、
前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときの温度を燃焼計算により求め、当該温度を前記噴流床ガス化炉の炉内温度Tgとし、前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときに生じるガス化ガスの発熱量を燃焼計算により求める第2工程と、前記炉内温度Tgが前記融点T
Am以上となり、かつ前記発熱量が前記内燃機関を運転可能であるという条件を
満たす酸素比を求める第3工程と、
複数の異なる前記混合比率ごとに前記第1工程から前記第3工程を実行し
て前記酸素比を求め、複数の異なる前記混合比率から選択した混合比率の前記混合燃料を前記バイオマス及び前記汚泥処理物から製造する第4工程とを有することを特徴とする混合燃料の製造方法にある。
【0020】
かかる第
4の態様では、内燃機関を動作させるのに必要な熱量を有するガス化ガスを生成できるとともに、噴流床ガス化炉において灰が溶融するのに十分な炉内温度となる混合燃料を製造することができる。
【0021】
本発明の第
5の態様は、バイオマス、及び下水汚泥を処理した汚泥処理物を混合して混合燃料を製造する混合燃料製造装置と、前記混合燃料をガス化してガス化ガスを製造する噴流床ガス化炉と、当該ガス化ガスを燃焼して動力を得る内燃機関とを備えるプラントであって、前記混合燃料製造装置は、
前記バイオマス及び前記汚泥処理物を所定の混合比率で混合した混合燃料の灰分組成に基づいて熱力学平衡計算により当該混合燃料の灰分の融点TAmを求め、
前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときの温度を燃焼計算により求め、当該温度を前記噴流床ガス化炉の炉内温度Tgとし、前記混合燃料を所定の酸素比で燃焼したときに生じるガス化ガスの発熱量を燃焼計算により求め、前記炉内温度Tgが前記融点T
Am以上となり、かつ前記発熱量が前記内燃機関を運転可能であるという条件を
満たす酸素比を求め、複数の異なる前記混合比率から選択した混合比率の前記混合燃料を前記バイオマス及び前記汚泥処理物から製造し、前記噴流床ガス化炉は、
前記混合燃料製造装置で求められた前記酸素比で前記混合燃料製造装置から供給される前記混合燃料をガス化することを特徴とするプラントにある。
【0022】
かかる第
5の態様では、安価な混合燃料を用いながらも、内燃機関を動作させることができるとともに、噴流床ガス化炉内で灰を溶融させて外部に確実に排出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発熱量が高くかつ安価であり、噴流床ガス化炉でのガス化に好適な混合燃料を用いることができるプラントの運転方法、該混合燃料の製造方法、及び該混合燃料を用いることができるプラントが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〈実施形態1〉
本実施形態では、プラントの一例としてガス化発電設備を例とし、バイオマス及び汚泥処理物を混合した混合燃料の製造方法及び該混合燃料を用いるガス化発電設備の運転方法に関して説明する。
【0026】
本発明でいう混合燃料とは、バイオマスと、汚泥処理物とを混合したものである。
一般に、バイオマスとは、「再生可能な、生物由来の有機性資源(化石資源を除く)」をいう。例えば、資源利用を目的として生産される資源植物、農作物及び木材等に加えて、農林残渣、廃材などの産業廃棄物、さらに畜産業から排出される家畜排泄物、水産業廃棄物、都市からでる古紙、下水汚泥、生ゴミなどである。
【0027】
本発明に係るバイオマスとは、上述したバイオマスのうち下水汚泥以外のものをいう。特に、本発明に係るバイオマスとしては、木材からなる木質バイオマスであることが好ましい。木質バイオマスの形態としては、小片に破砕してチップ状としたものや、微細な粉末状にしたものがあげられる。
【0028】
汚泥処理物とは、下水汚泥を処理したものであり、例えば、汚泥炭化物や汚泥乾燥物が挙げられる。
【0029】
汚泥炭化物は、下水処理場などで生じた下水汚泥を炭化したものである。下水汚泥を炭化する手段は特に限定されず、公知の手法を採用することができる。例えば、下水汚泥を脱水したのち、炭化機において蒸し焼きとすることで汚泥炭化物が製造される。汚泥炭化物の性状は、粉末状であり、そのまま燃焼することが可能である。
【0030】
汚泥乾燥物は、下水処理場などで生じた下水汚泥を乾燥したものである。下水汚泥を乾燥する手段は特に限定されず、公知の手法を採用することができる。
【0031】
図1は、ガス化発電設備の概略構成図である。本実施形態に係るガス化発電設備は、混合燃料をガス化してガス化ガスを生成し、当該ガス化ガスを燃焼して得られた動力や熱エネルギーを用いて発電するものである。
【0032】
ガス化発電設備1は、空気分離装置8を備えている。空気分離装置8は、極低温の冷媒で原料空気を冷却し、当該原料空気中に含まれる窒素、酸素、アルゴン等の各種ガスの沸点に応じて、それらのガスを分離するものである。空気分離装置8で製造された窒素ガス及び酸素ガスは、ガス化設備3に供給される。なお本実施形態では、空気分離装置8を設けたが、窒素及び酸素をガスボンベなどにより供給してもよい。
【0033】
ガス化設備3は、混合燃料をガス化してガス化ガスを製造するものである。ガス化設備3の詳細は後述する。
【0034】
ガス化ガスには、一酸化炭素や水素ガスなどの可燃成分が含まれ、また、水溶性不純物、凝縮性不純物、粒子状不純物、及びガス状不純物が含まれている。ガス化炉で生成されたガス化ガスは、除塵手段(特に図示せず)により除塵され、熱交換器(特に図示せず)で所定温度に調整され、ガス精製設備4に供給される。
【0035】
ガス精製設備4は、ガス化ガスの不純物を除去するものである。ガス精製設備4では、ガス化ガス中の不純物が除去され、燃料ガスが得られる。不純物の除去方法は、露点を上回る温度にガス化ガスの温度を維持して運転する乾式法や、湿式法によりガス化ガスの不純物を除去するものがある。上述の各種不純物を除去できるものであれば特に構成は限定されないが、例えば、ガス精製設備4として、ハロゲン化物除去装置、脱硫装置、アンモニア除去装置、水銀除去装置などの不純物除去装置を用いることができる。
【0036】
ガスタービン5には、ガス精製設備4で精製された燃料ガスが供給される。ガスタービン5は内燃機関の一例であり、他にもガスエンジンやディーゼルエンジンなどを用いることができる。すなわち、燃料ガスはガスエンジンやディーゼルエンジンの燃料として供給される。ディーゼルエンジンの場合、液体燃料と共に燃料ガスが混焼されて用いられる。
【0037】
ガスタービン5には、特に図示しないが燃焼器、圧縮機が接続されており、燃焼器に燃料ガスが送られる。ガスタービン5は、燃焼器での燃焼により生じた燃焼ガスの膨張で動力を得る。なお、排熱回収ボイラ6で熱回収された排ガスの一部は圧縮機で圧縮され、燃焼器に投入されるようになっている。
【0038】
ガスタービン5で仕事を終えた排ガスは排熱回収ボイラ6に送られる。排熱回収ボイラ6は、排ガスの熱回収を行い、この熱で生じた蒸気を蒸気タービン7に供給する。蒸気タービン7は、排熱回収ボイラ6から供給された蒸気の膨張で動力を得る。
【0039】
上述した圧縮機、ガスタービン5、蒸気タービン7及び発電機(特に図示せず)は、同軸状態で接続されており、直列に接続されたガスタービン5及び蒸気タービン7の動力により発電機が駆動され、ガスタービン5と蒸気タービン7による複合発電が行われる。
【0040】
図2は、ガス化設備の概略構成図である。ガス化設備3は、混合燃料を貯留する容器10、炭化機11、ガス化炉20、スラグホッパ21、チャー回収装置22を備えている。
【0041】
ガス化炉20には、炭化機11が接続され、炭化機11には容器10が接続されている。 後述する方法により定められた混合比率でバイオマスと汚泥処理物が混合された混合燃料が容器10に収容されており、容器10から混合燃料が適量ずつ炭化機11に投入されるようになっている。
【0042】
炭化機11は、混合燃料を高温のガスで炭化するものである。炭化機11内で炭化された混合燃料は、揮発ガス(混合燃料中の揮発分や水分など)と炭化物(固定炭素や灰分など)に分解され、揮発ガスはリダクタ24に、炭化物はコンバスタ23に供給されるようになっている。
【0043】
ガス化炉20は、噴流床型のガス化炉であり、コンバスタ23とリダクタ24を有している。コンバスタ23は、容器10から粉末状の混合燃料が搬送用の窒素とともに投入されるように構成されている。また、コンバスタ23には、空気分離装置8から酸素が投入される。リダクタ24は、コンバスタ23と同様に、粉末状の混合燃料が搬送用の窒素とともに投入されるように構成されている。
【0044】
コンバスタ23内では、混合燃料は、空気分離装置8から投入された酸素で一部が燃焼すると共に、残りは熱分解により揮発分(一酸化炭素、水など)を放出する。また、コンバスタ23で混合燃料が燃焼して生じた灰分は、溶融スラグとしてスラグホッパ21に排出され、回収される。
【0045】
リダクタ24内では、容器10から投入された混合燃料がコンバスタ23からの高温ガスで乾留され、揮発分を放出する。揮発分を放出した混合燃料の粒子(チャー)は、高温ガスにより水と反応して一酸化炭素や水素などのガス化ガスにガス化される。
【0046】
このガス化により得られたガス化ガスは、図示しない熱交換器に送られて所定の温度まで冷却された後、チャー回収装置22に送られる。チャー回収装置22では、ガス化ガスと共に排出されたチャーを回収する装置である。回収されたチャーは、コンバスタ23に供給される。これにより、回収したチャーに含まれる未燃の炭素分をコンバスタ23での燃焼に用いることができる。このようにしてチャーが除去されたガス化ガスはガス精製設備4に送られる。
【0047】
なお、本実施形態では、チャー回収装置22を設けた構成としたが、このような態様に限定されない。すなわち、チャー回収装置22を設けず、回収したチャーをコンバスタ23に供給しない構成としてもよい。
【0048】
上述したガス化設備3で製造されたガス化ガスは、ガスタービン5を動作させるのに十分な熱量を有していることが求められる。また、そのガス化ガスを製造する原料となる混合燃料は、コンバスタ23内での灰の溶融温度を極力抑えたものであることが求められる。そして、混合燃料は、コストの面から比較的安価である汚泥処理物を多く用いたものであることが好ましい。
【0049】
このような条件を満たす混合燃料となるように、バイオマスと汚泥処理物との比率を求めてこれらを混合する。以下、上述した条件を満たす混合燃料の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
ここでは例として、キーボードやディスプレイなどの入出力手段、CPU等の計算手段、RAMやハードディスクなどの記憶手段を備えた一般的な計算機を用いて混合比率を求める。
図3は、混合燃料の混合比率を求めるステップを表すフロー図である。当該計算機に各種情報を入出力し、フロー図に示す各ステップを計算機に実行させることで混合比率を求める。
【0051】
まず、混合燃料の基礎性状を求めるとともに、混合燃料の灰分の融点T
Amを求める(第1工程)。具体的には、計算機にバイオマスと汚泥処理物の基礎性状を入力する(ステップS1)。基礎性状とは、バイオマスや汚泥処理物を工業分析して得られたもの、元素分析して得られたもの、灰分組成を分析して得られたものなどである。工業分析、元素分析、灰分組成分析により得られる項目及びその方法は表1のとおりである。
【0053】
上述した各分析方法を用いて、バイオマス及び汚泥処理物のそれぞれについて各分析項目の分析値を得る。そして、その分析値を計算機に入力する。
【0054】
次に、バイオマスと汚泥処理物の混合比率を設定する(ステップS2)。具体的には、混合比率を計算機に入力する。ここで設定する混合比率は、暫定的なものである。計算機は、その混合比率の混合燃料の各基礎性状を計算する。例えば、バイオマスの混合比率をX(0<X<1)、汚泥処理物の混合比率を1−Xとし、バイオマス及び汚泥処理物のある分析項目の基礎性状をそれぞれA、Bとすれば、混合燃料のその分析項目の基礎性状はAX+(1−X)Yとなる。これを全ての分析項目について行うことで、混合燃料の基礎性状を得ることができる。なお、バイオマスを複数種類、汚泥処理物を複数種類用いる場合では、それぞれに混合比率を設定することで混合燃料の基礎性状を計算することができる。
【0055】
次に、上述した計算結果である分析値を有する混合燃料の灰分の融点T
Amを計算する(ステップS3)。この融点T
Amは、混合燃料の灰分組成に基づいて熱力学平衡計算により求めることができる。
【0056】
具体的な計算は、混合燃料の基礎性状をパラメータとし、熱力学平衡計算を実装したプログラム(例えば、株式会社計算力学研究センター製 FactSage)を計算機で実行することにより行う。この計算により、上述した混合比率の混合燃料の融点T
Amが求まる。
【0057】
次に、コンバスタ23のコンバスタ温度T
g(請求項の炉内温度に相当する)をコンバスタ23内の酸素比ごとに燃焼計算により求めるとともに、ガス化ガスの発熱量を計算する(第2工程)。
【0058】
コンバスタ温度T
g(請求項の炉内温度に相当する。)とは、混合燃料を燃焼した際のコンバスタ23内部の温度である。酸素比とは、コンバスタ23内に投入される気体中の酸素量がガス化炉20へ投入された燃料の理論燃焼酸素量に占める割合である。
【0059】
まず、コンバスタ温度T
gを計算する(ステップS4)。具体的には、第1工程で求められた混合燃料の基礎性状と酸素比をパラメータとして、混合燃料がコンバスタ23で燃焼された際のコンバスタ温度T
gを燃焼計算により求める。この燃焼計算は、適宜、複数の酸素比を設定して行う。
【0060】
図4は、燃焼計算により得られたコンバスタ温度T
gの計算結果を概念的に示すグラフである。横軸は酸素比であり、縦軸はコンバスタ温度T
gである。特性L
1〜L
6は、バイオマスを0%、20%、40%、60%、80%、100%、汚泥処理物を100%、80%、60%、40%、20%、0%の混合比率で混合したものに関するコンバスタ温度T
gと酸素比との関係を表している。
【0061】
図示するように、バイオマス20%、汚泥処理物80%とした汚泥混合物について燃焼計算した場合、特性L
2のような計算結果が得られる。後述するように混合比率を変えて燃焼計算すると特性L
1〜L
6のような計算結果が得られる。特性L
1〜L
6の何れも、コンバスタ温度T
gは酸素比に比例していることが分かる。また、同じ酸素比であっても、バイオマスの比率が多いものほどコンバスタ温度T
gが高いことが分かる。なお、図中の点線は、混合燃料の灰分の融点T
Am+100℃(以下、判定温度)を表している。これについては後述する。
【0062】
次に、ガス化ガスの発熱量を計算する(ステップS5)。発熱量は、コンバスタ23内で燃焼したガス化ガスの組成及び量と、酸素比から求まるガス化炉投入空気量から燃焼計算により求めることができる。
【0063】
図5は、燃焼計算により得られたガス化ガスの発熱量の計算結果を概念的に示すグラフである。横軸は酸素比であり、縦軸はガス化ガスの発熱量である。特性L
1〜L
6は、
図4に示したものと同じ混合燃料からガス化ガスを生成したときの発熱量と酸素比の関係を表している。
【0064】
図示するように、バイオマス20%、汚泥処理物80%とした汚泥混合物について燃焼計算した場合、特性L
2のような計算結果が得られる。後述するように混合比率を変えて燃焼計算すると特性L
1〜L
6のような計算結果が得られる。特性L
1〜L
6の何れも、発熱量は酸素比に反して減少していることが分かる。また、同じ酸素比であっても、バイオマスの比率が多いものほど発熱量が高いことが分かる。
【0065】
次に、コンバスタ温度T
g、及び発熱量が所定の条件を満たすかを判断する(第3工程)。
【0066】
具体的には、コンバスタ温度T
gが灰分の融点T
Am以上であるか否かを判定し、かつ、
発熱量が、ガスタービン5を動作させるのに必要な熱量(以下、必要熱量H
0)を充たすかを判断する(ステップS6)。
【0067】
ここでは、コンバスタ温度T
gが融点T
Am+100℃以上(以下、融点T
Am+100℃を判定温度と称する)であるか否かを判定する。コンバスタ温度T
gが判定温度以上であれば、コンバスタ温度T
gは、混合燃料が燃焼して生じた灰分が溶融するのに十分な温度であることを意味する。
【0068】
なお、理論的には、コンバスタ温度T
gが融点T
Amよりも高ければ灰が溶融するので、コンバスタ温度T
gは融点T
Amより大きいか否かを判定すればよい。融点T
Amに100℃加算した判定温度を用いたのは、経験則上の理由であり、より確実にコンバスタ23から灰を溶融させて排出できるからである。
【0069】
また、必要熱量H
0は、ガスタービン5の仕様や実測などにより定める。
【0070】
図4に示した例では、バイオマス20%、汚泥処理物80%とした汚泥混合物について燃焼計算した場合、特性L
2に示すように、酸素比がR
2以上(以下、酸素比レンジA)であればコンバスタ温度T
gは判定温度を上回っていることが分かる。後述するように混合比率を変えて燃焼計算すると、特性L
1〜L
6についても計算結果が得られる。特性L
3〜L
5に関する混合比率の混合燃料は、酸素比がR
3〜R
5以上であればコンバスタ温度T
gが判定温度を上回ることを示している。特性L
1、L
6については混合燃料ではないが、同様のことが言える。
【0071】
一方、
図5に示した例では、特性L
2と必要熱量H
0とが交わるときの酸素比をR
Xとすると、特性L
2の混合燃料は、酸素比が0より大きくR
x以下(以下、酸素比レンジB)であれば必要熱量H
0以上の発熱量であることが分かる。
【0072】
したがって、特性L
2の混合比率の混合燃料については、酸素比レンジA及び酸素比レンジBの双方を満たす範囲であるR
2以上R
x以下であれば、必要熱量H
0以上の熱量が得られるとともに、コンバスタ温度T
gが判定温度以上となるという計算結果が得られる。
【0073】
このようにして、コンバスタ温度T
gが判定温度以上であり、かつ発熱量が必要熱量H
0以上であるという条件を満たすならば(ステップS6:Yes)、その混合比率の混合燃料とその酸素比とを記録する(ステップS7)。そして、第4工程として、まだ未計算の異なる混合比率が存在するならば(ステップS8:Yes)、その中(例えば、特性L
1、L
3〜L
6の混合比率)から混合比率を設定して第1工程〜第3工程(ステップS2〜ステップS7)を実行する。上記条件を満たさない場合(ステップS6:No)、未計算の異なる混合比率に設定して第1工程〜第3工程(ステップS2〜ステップS7)を実行する。
【0074】
このように混合比率を変えて第1工程〜第3工程を繰り返すことにより、異なる混合比率である特性L
1、L
3〜L
6の混合燃料について上述した条件を満たすか否かについて判定される。
【0075】
例えば、特性L
3については、バイオマス40%下水汚泥60%の混合比率、酸素比R
3以上R
y以下であれば上記条件を満たす結果として出力される。
【0076】
特性L
4の混合燃料については、
図4より、酸素比がR
3以上であればコンバスタ温度T
gが判定温度を満たすとしても、
図5より、酸素比がR
3以上であると発熱量が必要熱量を満たさないものとして計算される。すなわち、特性L
4の混合燃料は不適であるとの結果が得られる。
【0077】
未計算の混合比率がなくなったら(ステップS8:No)、上記条件を満たす混合燃料の混合比率のうち、汚泥処理物の割合が最も高いものを選択する(ステップS9)。
図4及び
図5の例であれば、特性L
2の混合比率の混合燃料が選択される(ただし、酸素比がR
2以上R
x以下である)。
【0078】
このようにして得られた混合比率(特性L
2)でバイオマスと汚泥処理物とを混合することにより、混合燃料を製造することができる。汚泥処理物の比率が最も多いものを選択することで、最も安価な混合燃料を製造することができる。なお、上記条件を満たすのであれば、必ずしも汚泥処理物の割合が高い混合比率を採用しなくてもよい。
図4及び
図5の例であれば、特性L
3の混合比率の混合燃料を選択してもよい(ただし、酸素比がR
3以上R
y以下である)。
【0079】
以上に説明した混合燃料の製造方法によれば、噴流床型のガス化炉20及びガスタービン5を備えるガス化発電設備1に用いる燃料として、ガスタービン5を動作させるのに必要な熱量を有するガス化ガスを生成できるとともに、コンバスタ23において灰が溶融するのに十分なコンバスタ温度となる混合燃料を製造することができる。
【0080】
混合燃料は、バイオマスの他に汚泥処理物を含むため、バイオマス単体よりも単位重量当たりの費用が安価である。そして、混合燃料は、コンバスタ23内で灰の排出不良を防止することができるとともに、ガスタービン5を動作させることができるというガス化発電設備1を円滑に動かすことができる要件を満たすものとなる。
【0081】
特に汚泥処理物は、その基礎性状のばらつきが大きいので安定した混合燃料を得づらいものであるが、上述した製造方法により、基礎性状さえ得られれば、ガス化発電設備1に好適な混合燃料を速やかに得ることができる。
【0082】
さらに、混合燃料とすることで価格を低く抑えられることから混合燃料の利用が促進されると期待される。このため、混合燃料に供されるバイオマスの使用量も増大し、バイオマスの有効利用を促進することができる。
【0083】
上述のようにして製造した混合燃料は、
図2に示したように炭化機11に供給して揮発ガスと炭化物にした上でガス化炉20に供給する。そして、ガス化炉20のコンバスタ23の酸素比を上述した計算により求めたものに設定した状態で混合燃料をガス化する。
【0084】
このように混合燃料をガス化発電設備1に供給して運転することで、安価な混合燃料を用いながらも、ガスタービン5を動作させることができるとともに、コンバスタ23内で灰を溶融させて外部に確実に排出することができる。
【0085】
なお、混合燃料は、製造した場所から離れた位置にあるガス化発電設備1に搬送してもよい。この場合、混合燃料は、ペレット状やブリケット状などの固形状にすることが好ましい。混合燃料は、固形状にすることで混合燃料が高密度になるので、搬送時などの取り扱いが容易になり、また、大量輸送にも好適なものとなる。
【0086】
〈実施形態2〉
実施形態1に係るガス化発電設備は、混合燃料自体を製造するものではなかったが、混合燃料の製造を含む一体的なガス化発電設備であってもよい。
図6は、実施形態2に係るプラントの一例であるガス化発電設備の概略構成図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0087】
図示するように、ガス化発電設備30は、混合燃料製造装置9を備えている。混合燃料製造装置9は、原料となるバイオマス及び汚泥処理物が供給され、これらを所定の混合比率で混合して混合燃料を製造する装置である。製造された混合燃料は、実施形態1と同様に炭化機(図示せず)に供給され、ガス化設備3に揮発ガスや炭化物として供給される。
【0088】
混合燃料製造装置9には、実施形態1で説明した製造方法により計算された混合比率が設定され、その混合比率でバイオマス及び汚泥処理物を混合する。なお、混合燃料製造装置9は、それ自体に実施形態1で説明した製造方法の各ステップを実行する計算機能を持たせ、その計算により得られた混合比率に基づいて混合燃料を製造するようにしてもよい。
【0089】
そして、このガス化発電設備30のガス化設備3において、コンバスタ内を上記製造方法により得られた酸素比にした状態で混合燃料をガス化する。
【0090】
このようなガス化発電設備30においても、実施形態1と同様に、安価な混合燃料を用いながらも、ガスタービン5を動作させることができるとともに、コンバスタ23内で灰を溶融させて外部に確実に排出することができる。
【0091】
〈他の実施形態〉
実施形態1及び実施形態2では、プラントの一例としてガス化発電設備を説明したが、これに限定されない。例えば、排熱回収ボイラ6及び蒸気タービン7を設置する必要はないし、ガスタービンの代わりにガスエンジンやディーゼルエンジンを用いた構成としてもよい。
【0092】
また、混合燃料は、炭化機11により分解されてガス化炉20に供給されたが、これに限定されない。混合燃料の性状次第で混合燃料を直接ガス化炉20に供給してもよい。