(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883527
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】インプリント・リソグラフィ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20160301BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 564Z
B29C59/02 Z
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-76523(P2015-76523)
(22)【出願日】2015年4月3日
(62)【分割の表示】特願2014-41529(P2014-41529)の分割
【原出願日】2005年12月21日
(65)【公開番号】特開2015-128190(P2015-128190A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】11/019,521
(32)【優先日】2004年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】クラウス サイモン
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−504714(JP,A)
【文献】
特表2004−523906(JP,A)
【文献】
特開平02−185743(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/086471(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/070823(WO,A1)
【文献】
特表2007−531985(JP,A)
【文献】
特開2005−116022(JP,A)
【文献】
特開2005−286062(JP,A)
【文献】
特開2003−287605(JP,A)
【文献】
Ian McMackin, Jin Choi, Philip Schumaker, Van Nguyen, Frank Xu, Ecron Thompson, Daniel Babbs, S. V.,STEP AND REPEAT UV NANOIMPRINT LITHOGRAPHY TOOLS AND PROCESSES,Proceedings of SPIE,2004年 2月24日,Vol. 5374(Part.1),pp.222-231
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76
39/26−39/36
41/38−41/44
43/36−43/42
43/50
45/26−45/44
45/64−45/68
45/73
49/48−49/56
49/70
51/30−51/40
51/44
53/00−53/84
57/00−59/18
B41F16/00−19/08
B81B1/00−7/04
B81C1/00−99/00
G11B7/24−7/24027
7/24035−7/24041
7/24047−7/2405
7/24062
7/2407−7/24085
7/24091
7/24097−7/243
7/244
7/253
7/2533−7/2535
7/2537
7/254
7/2548−7/257
7/258
7/26
H01L21/027
21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板テーブルと、
複数のテンプレートを支持するテンプレート支持体であり、前記テンプレートの少なくともいくつかを前記基板上のインプリント可能媒体の第一セットのターゲット領域にそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第一セットのそれぞれのインプリントを形成し、また、前記テンプレートの少なくともいくつかを前記基板上のインプリント可能媒体の前記第一セットのターゲット領域から変位した第二セットのターゲット領域にそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第二セットのそれぞれのインプリントを形成する、テンプレート支持体と、
前記第二セットのターゲット領域を形成するために、前記テンプレート支持体が前記テンプレートの前記少なくともいくつかを前記第一セットのターゲット領域に接触させる最中またはその後であってしかし前記テンプレート支持体が前記テンプレートの前記少なくともいくつかを前記第二セットのターゲット領域に接触させる前に、前記テンプレートの前記少なくともいくつかから所定の距離で、ある分量のインプリント可能媒体を前記基板に投与する複数の投与器と
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント装置。
【請求項2】
基板上のインプリント可能媒体の第一セットのターゲット領域の各々を複数のテンプレートの各々にそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第一セットのそれぞれのインプリントを形成し、
前記基板上のインプリント可能媒体の第二セットのターゲット領域の各々を複数のテンプレートの各々にそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第二セットのそれぞれのインプリントを形成し、
前記第一セットのターゲット領域を接触させる最中またはその後であってしかし前記第二セットのターゲット領域を接触させる前に、複数の投与器を用いて、前記複数のテンプレートから所定の距離で、ある分量の前記インプリント可能媒体を前記基板に投与して、前記第二セットのターゲット領域を形成すること
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント方法。
【請求項3】
基板を保持する基板テーブルと、
複数のテンプレートを支持するテンプレート支持体であり、前記複数のテンプレートを前記基板上のインプリント可能媒体のそれぞれ離隔したターゲット領域に接触させて、前記インプリント可能媒体に複数のインプリントを形成する、テンプレート支持体と、
前記インプリント可能媒体を前記複数のテンプレートの少なくとも2つの異なる側から、前記複数のテンプレートから所定の距離で前記基板に投与する複数の投与器と
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント装置。
【請求項4】
基板を保持する基板テーブルと、
複数のテンプレートを支持するテンプレート支持体であり、前記複数のテンプレートを前記基板上のインプリント可能媒体のそれぞれ離隔したターゲット領域に接触させて、前記インプリント可能媒体に複数のインプリントを形成する、テンプレート支持体と、
各テンプレートのために前記インプリント可能媒体を前記基板に投与する投与器であって、各投与器はそのテンプレートの前記対応するターゲット領域のためにそのテンプレートに接触する直前にそのテンプレートから所定の距離で前記インプリント可能媒体を投与する、複数の投与器と
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント装置。
【請求項5】
基板の複数の離隔したターゲット領域に、インプリント可能媒体を、複数の投与器を用いて複数のテンプレートの少なくとも2つの異なる側から、前記複数のテンプレートから所定の距離で投与し、
前記ターゲット領域の各々を対応するテンプレートに接触させて、前記インプリント可能媒体に対応するインプリントを形成すること
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント方法。
【請求項6】
基板のインプリント可能媒体の複数の離隔したターゲット領域を複数のテンプレートのうちの対応するテンプレートに接触させて、インプリント可能媒体に対応するインプリントを形成し、
前記対応するテンプレートに接触させる直前に、前記それぞれのテンプレートの前記それぞれのターゲット領域の各々に、前記それぞれのテンプレートから所定の距離で、インプリント可能媒体を、複数の投与器のうちの対応する複数の投与器を用いて投与すること
を含み、
各投与器は、一列の開口を含む、
インプリント方法。
【請求項7】
前記インプリント可能媒体は、前記テンプレート支持体がインプリント位置の間を移動するときに投与される、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記インプリント可能媒体は、前記複数のテンプレートを支持するテンプレート支持体がインプリント位置の間を移動するときに投与される、請求項2、5及び6のいずれか一項に記載のインプリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプリント・リソグラフィに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、基板のターゲット領域に所望パターンを付与する機械である。リソグラフィ装置は、従来より、例えば集積回路(IC)、フラット・パネル・ディスプレー、および微細構造を必要とするその他のデバイスの製造で用いられている。
【0003】
所定の基板面積部分におけるフィーチャー密度を大きくできるという理由から、リソグラフィ・パターンのフィーチャー寸法を小さくすることが望ましい。フォトリソグラフィでは、高い解像度は短い波長の放射光を使用することにより達成される。しかしながら、そのような縮小化に伴う問題がある。193nm波長の放射光を使用するリソグラフィ装置が採用され始めたが、このレベルにおいても回折による限界が障壁となっている。短い波長では、投影系材料の透明性が低下する。したがって、高解像度の可能な光学リソグラフィは複雑な光学系および希少材料を必要とするようになり、したがって高価となる。
【0004】
100nm未満のフィーチャーをプリントする代替方法はインプリント・リソグラフィとして知られており、有形のモールドやテンプレートを使用してパターンをインプリント可能媒体へインプリントすることにより、基板にパターンを移転(転写)することを含む。インプリント可能媒体は、基板、または基板表面に被覆された材料とすることができる。インプリント可能媒体は、パターンを下側に位置する表面に対して移転するための機能部材とすることができ、または「マスク」として使用することができる。インプリント可能媒体は、例えば、テンプレートの定めるパターンが転写される半導体材料のような基板上に付着されたレジストとして備えることができる。したがって、インプリント・リソグラフィは本質的にテンプレートの表面形状(トポグラフィ)が基板上に形成されるパターンを定めるような、ミクロメータまたはナノメータ規模のモールド加工処理である。パターンは光学的リソグラフィ処理によるなどの方法で層状に形成することができ、したがって基本的にインプリント・リソグラフィは集積回路構造のような応用例に使用することができる。
【0005】
インプリント・リソグラフィの解像度はテンプレート製造処理の解像度によってのみ制限を受ける。例えば、インプリント・リソグラフィは50nm未満の範囲のフィーチャーを良好な解像度およびライン・エッジ粗さにて形成するために使用される。さらに、光学リソグラフィ処理で典型的に必要とされる高価な光学系、先進の照射光源または特別なレジスト材料をインプリント処理は必要としない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一観点によれば、以下のインプリント方法が提供される。
基板の離隔した第一および第二ターゲット領域にインプリント可能媒体を投与する段階と、
前記離隔した第一および第二ターゲット領域を第一および第二テンプレートにそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第一および第二インプリントをそれぞれ形成する段階と、
前記第一および第二テンプレートをインプリントされた前記インプリント可能媒体から分離する段階と、
基板の離隔した第三および第四ターゲット領域にインプリント可能媒体を投与する段階と、
前記インプリント可能媒体の第一領域から第三領域に、第一方向で前記第一テンプレートを動かし、また、前記インプリント可能媒体の第二領域から第四領域に、第二方向で前記第二テンプレートを動かす段階と、
前記第三および第四ターゲット領域を前記第一および第二テンプレートにそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第三および第四インプリントをそれぞれ形成する段階とを含むインプリント方法。
一例によれば、インプリント可能媒体の離隔したターゲット領域を形成するために、別々の第一、第二、第三および第四分量のインプリント可能媒体を基板上に投与することができる。
【0007】
第一方向は、第二方向に対していずれかの望ましい方向にすることができる。例えば、第一方向は、インプリント可能媒体のあらゆる領域が、所定のインプリント・システムで最適態様でインプリントされる得るように、適切な角度で第二方向から角度偏向可能である。一例では、第一方向が第二方向と実質的に平行である。
【0008】
一例では、第一および第二テンプレートが同時にインプリント可能媒体に接触する。これに代えて、第一および第二テンプレートがインプリント可能媒体に順番に接触してもよい。インプリント可能媒体に順番に接触する場合、順次の各接触段階の間のタイミングが監視され、および/または制御されて、特定基板に特定パターンをインプリントするために最適なプロセスを与えるようになされる。
【0009】
本発明の第二観点によれば、以下のインプリント装置が提供される。
基板を保持するようになされた基板テーブルと、
第一および第二テンプレートを支持するようになされたテンプレート支持体であり、前記第一および第二テンプレートを基板上のインプリント可能媒体の離隔した第一および第二ターゲット領域にそれぞれ接触させて、前記インプリント可能媒体に第一および第二インプリントをそれぞれ形成するように構成され、かつ、前記第一および第二テンプレートをインプリントされた前記インプリント可能媒体から分離するように構成された前記テンプレート支持体と、
離隔した前記第一および第二ターゲット領域を形成するために、第一分量の前記インプリント可能媒体を投与するように構成された第一投与器と、
第二分量の前記インプリント可能媒体を投与するように構成された第二投与器とを含むインプリント装置。
【0010】
一例によれば、第一および第二投与器は、第一および第二テンプレートとそれぞれ組合される。第一および第二投与器は、第一および第二テンプレートに対してそれぞれ固定関係になされるか、または、第一および第二テンプレートとは無関係に動かすことができる。
【0011】
一例では、第一および第二投与器が複数の開口を有する。それらの複数の開口は、二次元的に配列された開口を含むことができる。これに代えて、それらの複数の開口は、一列の開口を含むことができる。投与器は、テンプレートの2以上の側辺と組合せることができる。
【0012】
本発明装置および方法は、ドロップ・オン・デマンド・プロセス(すなわち、要求に応じて滴下する方法)(例えば、ステップ・アンド・フラッシュ・インプリント・リソグラフィ−SFIL)における適用例に好適である。したがって、一例では、このプロセスを可能にするための方法および/または装置が提供される。
【0013】
好適には、投与器は、離隔した第三および第四ターゲット領域を形成するために第三および第四分量のインプリント可能媒体を基板上に投与するように構成できる。
【0014】
第二方向に対して第一方向は望まれるあらゆる方向に配向することができるが、一例では、第一方向が第二方向と実質的に平行になされる。
【0015】
第一および第二テンプレートが、媒体の第一および第二領域に同時に接触するようにテンプレート支持体を動かすことができるが、これに代えて、第一および第二テンプレートが媒体の第一および第二領域に順番に接触するようにテンプレート支持体を動かしてもよい。
【0016】
好適には、テンプレート支持体を、第一テンプレートが第二テンプレートに対して固定関係にあるように構成できる。この代わりに、テンプレート支持体は、第一テンプレートを第二テンプレートに対して動かすことができるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下、添付図を見ながら、単なる例示として本発明の実施例について説明する。図中、同一符号は同一部分を示す。
【0018】
【
図1a】従来のソフト・リソグラフィ方法の例を示す。
【
図2】レジスト層をパターン形成するために高温およびUVリソグラフィが使用されたときの二段階エッチング方法を示す。
【
図3】基板に付着された典型的なインプリント可能なレジスト層の厚さに対して比較されるテンプレートフィーチャーの相対寸法を示す。
【
図4】本発明の実施例による複数刻印のプリント構造を示す。
【
図5】インプリント可能媒体が要求に応じて滴下することで供給される本発明の一実施例による代替の複数刻印のプリント構造を示す。
【
図6】インプリント可能媒体が要求に応じて滴下することで供給される本発明の一実施例によるその他の代替の複数刻印のプリント構造を示す。
【
図7】インプリント可能媒体が要求に応じて滴下することで供給される本発明の一実施例によるさらに別の代替の複数刻印のプリント構造を示す。
【実施例1】
【0019】
高温インプリント・リソグラフィおよびUVインプリント・リソグラフィと一般に称されることになるインプリント・リソグラフィの二つの基本的な方法がある。また、ソフト・リソグラフィとして知られている第三形式の「プリンティング」リソグラフィもある。それらの例が
図1a〜
図1cに示されている。
【0020】
図1aは、可撓テンプレート10(ポリジメチルシロキサン(PDMS)から典型的に製造される)から分子11(典型的にはチオールのようなインク)の層を、基板12ならびに平坦化および転写用の層12’に支持されているレジスト層13へ転写することを伴うソフト・リソグラフィ処理を模式的に示す。テンプレート10は表面上にフィーチャーパターンを有し、分子層はフィーチャーの上に配置される。テンプレートがレジスト層に押圧されると、分子11の層はレジスト層に付着される。テンプレートをレジストから取外すことで分子11の層はレジストに付着され、それ以外のレジスト層は、転写分子層で覆われていないレジスト面積部分が基板までエッチング加工されるように、エッチングされる。
【0021】
ソフト・リソグラフィで使用されるテンプレートは容易に変形するので、高分解能の適用例、例えば、ナノメートル規模の適用例には適当でない。何故なら、テンプレートの変形はインプリントされたパターンに悪影響を及ぼすからである。さらに、同じ面積範囲に何度も重ねて形成される複層構造を製造する場合、ソフト・インプリント・リソグラフィはナノメートル規模の精度で重ね合わせることができない。
【0022】
高温インプリント・リソグラフィ(すなわち、ホツト・エンボスィング)はナノメートル規模で使用される場合にはナノインプリント・リソグラフィ(NIL)としても知られている。この方法は、例えば、摩耗および変形に対して一層強いシリコンまたはニッケルで形成された硬いテンプレートを使用する。これは、例えば米国特許第6482742号に記載され、
図1bに示されている。典型的な高温インプリント方法では、基板表面上に型枠形成された熱硬化性または熱可塑性のポリマー樹脂15に対して固形テンプレート14がインプリントされる。この樹脂は、例えばスピン被覆されて、基板表面上に、さらに典型的には(図示実施例におけるように)平坦化および転写用の層12’上に戻される。「硬い(ハード)」という用語はインプリント・テンプレートを説明する場合には、一般に「硬い(ハード)」材料と「軟らかい(ソフト)」材料との間の材料、例えば「硬い(ハード)」ゴムを含むと理解しなければならない。インプリント・テンプレートとして使用する特別な材料が適当であるかどうかは適用例の条件によって決定される。
【0023】
熱硬化性ポリマー樹脂が使用される場合、その樹脂はテンプレートとの接触によって、そのテンプレートに形成されているパターンフィーチャーの中へ流入できる十分な流動状態を得る温度にまで加熱される。その後、樹脂温度は熱硬化(例えば、クロスリンク)するまで高められて固体化され、不可逆的に所望パターンを形成する。テンプレートはその後に取外され、パッケージされた樹脂は冷却される。
【0024】
高温インプリント・リソグラフィ法に使用される熱可塑性ポリマー樹脂の例は、ポリ(メチル・メタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ベンジル・メタクリレート)またはポリ(シクロヘキシル・メタクリレート)である。熱可塑性樹脂は、テンプレートでインプリントされる直前に自由流動状態となるように加熱される。熱可塑性樹脂をそのガラス転移温度よりもかなり高い温度にまで加熱することが典型的に必要である。テンプレートは流動可能状態の樹脂に押しつけられて、テンプレートに形成された全パターン・フィーチャー内に確実に樹脂が流入するように十分な圧力が加えられる。その後、樹脂は不可逆的に所望パターンを形成するのに適当な温度でガラス転移温度よりも低い温度まで冷却される。パターンは、残余の樹脂層に対して浮き彫り状のフィーチャーで構成され、残余樹脂層は、その後の適当なエッチング処理によって除去されてパターン・フィーチャーのみが残される。
【0025】
凝固した樹脂からテンプレートを取外すことにより、
図2(a)〜
図2(c)に示されるように二段階のエッチング処理が典型的に遂行される。
図2(a)に示されるように基板20はその直ぐ上に平坦化および転写用の層21を有する。平坦化および転写用の層の目的は二重化にある。この層は以下に説明するように、テンプレートと樹脂との接触が平行状態で行われることを保証する助けとなるようなテンプレート表面と実質的に平行な表面を形成するように作用し、またプリント済みフィーチャーのアスペクト比を改善するように作用する。
【0026】
テンプレートが取外された後、所望のパターンに形成されて凝固した樹脂の残存層22が平坦化および転写用の層21の上に残される。一回目のエッチングは等方的(isotropic)に行われ、残存層22の部分を除去する結果、
図2(b)に示されるようにL1をフィーチャー23の高さとして小さなアスペクト比のフィーチャー23が形成される。二回目のエッチングは非等方的(anisotropic)(または選択的)に行われ、アスペクト比を改善する。この非等方的なエッチングは凝固した樹脂で覆われていない平坦化および転写用の層21の部分を除去し、
図2(c)に示されるようにフィーチャー23のアスペクト比を(L2/D)まで増大させる。こうして形成されてエッチング後に基板上に残存するポリマーの厚さの差異は、インプリント済みポリマーが十分な抵抗力を有するならば例えば増高(リフトオフ)段階として例えばマスクのドライ・エッチングに使用できる。
【0027】
高温リソグラフィは、パターン転写を高温で行わなければならないのみならず、テンプレートの取外し前に樹脂の適当な凝固が行われることを保証するために比較的大きな温度差が要求されるという欠点がある。35〜100゜Cの温度差は必要となる。例えば基板とテンプレートとの間の熱膨張差が転写済みパターンに変形をもたらしかねない。これは、インプリント可能材料の粘性のためにインプリント段階に要求される比較的高い圧力によってさらに悪化し、パターンの歪みに対して基板の機械的変形をもたらす。
【0028】
一方、UVインプリント・リソグラフィは、そのような高温および温度変化を伴わないだけでなく、そのようなインプリント可能材料を必要としない。むしろUVインプリント・リソグラフィは、部分的または全体的な透明テンプレートおよびUV硬化性液体、典型的にはアクリレートやメタクリレートのようなモノマーの使用を伴う。一般に、いずれの光重合可能な材料(例えば、モノマーとイニシエータ(重合開始剤)との混合物)を使用できる。硬化性液体はまた、例えば、ジメチル・シロキサン誘導体を含む。このような材料は,高温インプリント・リソグラフィで用いられる熱硬化性および熱可塑性の樹脂よりも粘性が小さく、したがってテンプレートのパターン形成されたフィーチャーを充填するために一層速く移動する。低温および低圧の作業も処理能力を高めるのに有利である。
【0029】
UVインプリント処理の一例が、
図1cに示されている。石英製テンプレート16が
図1bの方法と同様にUV硬化性樹脂17に与えられる。熱硬化性樹脂を使用する高温エンボス処理におけるように温度を高める代わりに、または熱可塑性樹脂を使用する場合の温度サイクルを行う代わりに、重合および硬化させるために石英製テンプレートを通してUV照射は樹脂に与えられる。テンプレートを取外すことで、レジスト残存層をエッチングする残りの段階は上述した高温エンボス処理と同じまたは同等に行われる。典型的に使用されるUV硬化性樹脂は、典型的な熱可塑性樹脂よりも粘性が大幅に小さく、したがって低いインプリント圧力を使用することができる。圧力が低いことによる物理的変形の軽減、および高温および温度変化による変形の軽減が、UVインプリント・リソグラフィを高度な重ね合わせ精度の要求される応用例に対して適当な方法となす。さらに、UVインプリント・テンプレートの透明性はインプリントと同時に光学的整合技術に適用することができる。
【0030】
この形式のインプリント・リソグラフィは主としてUV硬化性材料を使用し、したがって一般にUVインプリント・リソグラフィと称されているが、適当に選択された材料を硬化させる(例えば、重合または架橋反応を起こさせる)ために、その他の波長の放射光も使用できる。一般に、適当なインプリント可能材料を使用できるならば、このような化学反応を開始させることのできるいかなる放射光も使用できる。勿論のことこれに替わる「活性化放射光」は可視光、赤外線、X線および電子ビーム放射光を含む。上述および以下の一般的な説明において、UVインプリント・リソグラフィとUV放射光の使用とに関する引用は、これらのおよびその他の活性化放射光の可能性を排除することを意図するものではない。
【0031】
基板表面に実質的に平行に保持される平坦なテンプレートを使用するインプリント・システムの一つの代替例として、ローラー・インプリント・システムが開発された。高温およびUV用のローラー・インプリント・システムが共に提供された。それにおいてテンプレートはローラー上に形成されるが、それ以外のインプリント方法は平坦なテンプレートを使用するインプリントと非常に似ている。特別に要求されない限りインプリント・テンプレートの言及はローラー・テンプレートの言及を含む。
【0032】
IC製造において従来より使用されている光学的ステッパに似た方法で小さな段階で基板をパターン形成するために使用されるステップ・アンド・フラッシュ・インプリント・リソグラフィ(SFIL)として知られるUVインプリント技術が特別に開発された。これは、テンプレートをUV硬化性樹脂にインプリントし、テンプレート下側の樹脂を硬化させるためにテンプレートを通してUV放射光を「フラッシング」照射し、テンプレートを取外し、基板の隣接部分へステップ移動し、そして前述の作動を繰返すことによって一度に基板の小さな面積部分をプリントすることを含む。このような段階でのフィールド寸法の小さいことおよび処理の繰返しがパターン変形およびCD変化を減少させることの助けとなり、したがってSFILは高度な重ね合わせ精度を必要とするICおよびその他のデバイスの製造に特に適当な方法となる。
【0033】
基本としてUV硬化性樹脂は、例えばスピン被覆によって基板の全表面に投与できるが、これはUV硬化性樹脂の揮発性のために問題がある。
【0034】
この問題に対処する一つの方法は、いわゆる「ドロップ・オン・デマンド」プロセスである。これにおいては、樹脂はテンプレートによるインプリントの直前に液滴として基板のターゲット領域に投与される。所定量の液体が基板の特定のターゲット領域に付着されるようにこの液体の投与が制御される。この液体は、各種パターンで投与され、ターゲット領域に対するパターン形成を制限するために注意深い液体量の制御とパターンの配置との組合せを使用できる。
【0035】
説明したような要求に応じた樹脂の投与は些細な問題ではない。液滴の寸法および間隔は、テンプレートのフィーチャーを十分な量の樹脂が満たす一方、隣接し合う液滴が接触したとたんに樹脂の流れる場所が無くなるために望ましくない厚さや不均一な残存層がロール付与されることになりかねない過剰量の樹脂を最少限に抑制することを保証するように注意深く制御される。
【0036】
上述ではUV硬化性液体を基板に投与することに言及したが、この液体はテンプレートに付与することもでき、一般に同じ技術および考慮が適用される。
【0037】
図3はテンプレート、インプリント可能材料(硬化性モノマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性材料など)および基板の相対的な寸法を説明した。硬化性樹脂層の厚さtに対する基板の幅Dの比率は106の程度である。テンプレートから突出するフィーチャーが基板を損傷させることを避けるために、寸法tはテンプレートの突出したフィーチャーの深さよりも大きくなければならないことが認識されるであろう。
【0038】
刻印加工(スタンピング)後のインプリント可能材料の残存層は、その下側の基板を保護するために有用であるが、高い解像度および/または重なり精度を得るために衝撃を与える。一回目「突破口」となるエッチングは等方的(非選択的)に行われ、インプリントされたフィーチャーおよび残存層を或る範囲で侵食する。これは、残存層が非常に厚い場合および/または均等でない場合には悪い結果をもたらす。
【0039】
このエッチングは、例えば、下側の基板に最終的に形成されるフィーチャーの厚さに変動(すなわち、重要寸法(クリティカル・ディメンション)の変動)をもたらす。二回目の非等方的なエッチングにおける転写層のエッチングされたフィーチャーの厚さの均一性は、樹脂に残されたフィーチャーの形状のアスペクト比および一体性によって決まる。残存層が均等でないと非選択的な一回目のエッチングは幾つかの「丸みのある」頂部を有するフィーチャーを残し、これによりそれらのフィーチャーが二回目およびその後の何れかのエッチングにおいて良好なフィーチャー厚さの均一性を保証するとは十分に定めることができない。
【0040】
基本的に上述した問題点は、残存層ができるだけ薄いことを保証することで軽減できるが、これには望ましくない大きさの圧力(恐らく基板の変形を増大させる)の付与および比較的長いインプリント時間(恐らく処理量を減少させる)を必要とする。
【0041】
上述で留意したように、テンプレート表面のフィーチャーの解像度は基板上にプリントされるフィーチャーの達成できる解像度の制限要因である。高温およびUVインプリント・リソグラフィに使用されるテンプレートは一般に二段階処理で形成される。まず最初に、レジストに高解像度のパターンを与えるために、例えば電子ビーム・ライティングを使用して要求されるパターンが書込まれる。このレジスト・パターンはその後薄いクロム層に転写され、これは、そのパターンをテンプレートの基材に移転するために最終の非等方エッチング段階で使用されるマスクを形成する。例えばイオン・ビーム・リソグラフィ、X線リソグラフィ、極UVリソグラフィ、エピタキシャル成長、薄膜付着、化学エッチング、プラズマ・エッチング、イオン・エッチングまたはイオン研削のようなその他の技術も使用できる。一般に、テンプレートが効果的に倍率1のマスクとされて転写パターンの解像度がテンプレートのパターンの解像度によって制限されるならば、非常に高い解像度を可能にする技術が望ましい。
【0042】
テンプレートの取外し特性も考慮される。例えば、表面エネルギーの小さいテンプレート上の薄い取外し層(薄い取外し層は基板上にも付着される)を形成するために、テンプレートは表面処理材料で処理される。
【0043】
インプリント・リソグラフィの開発におけるその他の考慮点は、テンプレートの機械的な耐久性である。テンプレートはインプリント可能媒体の刻印加工時に大きな力を受け、高温インプリント・リソグラフィの場合には、さらに高圧および高温を受ける。その力、圧力および/または温度はテンプレートの摩耗を引き起こし、基板上にインプリントされるパターンの形状に悪影響を及ぼすことになる。
【0044】
高温インプリント・リソグラフィでは、基板とテンプレートとの熱膨張差の減少を助成するために、パターン形成される基板と同じまたは同様の材料のテンプレートを使用することで潜在的な利点が実現される。UVインプリント・リソグラフィでは、テンプレートは活性化させる放射光に対して少なくとも部分的に透明となされ、したがって石英製テンプレートが使用される。
【0045】
本明細書ではIC製造におけるインプリント・リソグラフィの使用を特別に言及したが、ここに記載したインプリント装置および方法は一体型光学系、磁気定義域メモリのガイドおよび検出パターン、ハード・ディスク磁気媒体、平坦なパネル表示装置、薄膜磁気ヘッドなどのその他の応用例があることを理解しなければならない。
【0046】
前記において、特にテンプレート・パターンをレジストとして効果的に作用するインプリント可能樹脂を介して基板に転写するためにインプリント・リソグラフィを使用することに言及したが、或る環境においては、インプリント可能材料自体が、例えば導電率、光に対する線形または非線形の応答等の機能を有する機能的材料とされ得る。例えば、この機能的材料は導電層、半導体層、誘電層、またはその他の望ましい機械的、電気的または光学的な特性を有する層を形成することができる。幾つかの有機的な基板も適当な機能的材料とされ得る。そのような例は本発明の一つ以上の実施例の範囲に含まれる。
【0047】
インプリント・リソグラフィ・システムはフィーチャー幅の減少に関して光学的リソグラフィに優る利点を与える。しかしながら、基板上の各箇所における樹脂の刻印および硬化に要する時間はインプリント・リソグラフィ・システムの処理量を制限し、したがってインプリント・リソグラフィを採用することで可能とされる経済的な利点を制限することになる。
【0048】
本発明の一実施例では、インプリント装置で単一のテンプレートを使用する代わりに、同じインプリント装置に配置されて各々並行して働く複数のテンプレートを用いる。
【0049】
図4は、インプリント可能媒体で実質的に覆われた基板40を示す。第一および第二テンプレート41,42が、平行、かつ、互いに隣接して動かされて、テンプレート41,42で定められたパターンをインプリント可能媒体にインプリントし、これはその後に一回以上のエッチング段階でパターン・フィーチャー間に残留するインプリント可能媒体の残存層を除去し、残存層の下側に位置する基板の露出面をエッチングすることで基板に複製される。
【0050】
一例では、テンプレートが相互に固定化され、これによりそれらのテンプレートは常に固定的な間隔を有して領域をプリントするようになされる。別例によれば、テンプレートは相互に自由に動いて、プリントされるべき表面の面積部分を良好または最適にカバーできるようになされる。この実施例の改善は、その他のテンプレート(単数または複数)よりも面積部分の小さい少なくとも一つのテンプレートを使用する。そのようなシステムでは、大きなテンプレート(単数または複数)が基板の主面積部分をインプリントできるのに対して、小さなテンプレート(単数または複数)はプリント面積部分の縁部の周囲または大きなテンプレート(単数または複数)でプリントされた面積部分の間の空隙間を移動できる。
【0051】
前記実施例は、インプリントを行う前に基板全体を横断して投与されるのではなく、必要に応じて基板にインプリント可能媒体が与えられるドロップ・オン・デマンド・プロセス(例えば、SFIL)に特に適用されるようになされる。そのような構造が
図5に示されている。基板50の一部は第一および第二テンプレート51,52を使用してパターン形成され、これらのテンプレートは非平行状態に、また互いに隣接して移動される。各テンプレート51,52は組合わされた投与器53,54を有しており、この投与器はドロップ・オン・デマンドに基づいてテンプレート51,52の直ぐ前方(すなわち、次にインプリントされるべき基板のターゲット領域上)に或る量のインプリント可能媒体55,56を投与するように構成されている。ドロップ・オン・デマンド投与器は、例えばそれぞれのテンプレートと共に移動するように取付けられる。
【0052】
図6は、本発明の別例を示す。基板60の複数部分が第一および第二テンプレート61,62を使用してパターン形成される(それらの部分は点線で描かれている)。テンプレート保持具63,64はインプリント用テンプレート61,62を保持する。インプリント用テンプレート61,62およびテンプレート保持具63,64は矢印Aで示すように平行に、また互いに隣接して移動される。
【0053】
各テンプレート61,62は組合わされた複数の投与器65〜68を有する。指示される方向へ移動されるとき、インプリント用テンプレート61,62の前方に位置した投与器66,67は、或る量のインプリント可能媒体(図示せず)をインプリント用テンプレートの前方に投与するように構成される。これは、ドロップ・オン・デマンドに基づいて行われる。投与器66,67はテンプレート保持具63,64に固定され、またインプリント用テンプレート61,62から所定の距離だけ引離されている。これは、インプリント可能媒体の付着と、インプリント可能媒体に対するインプリント用テンプレートの取付けとの間に固定的なタイミングを設定することができるようにし、したがって基板の全ての部分が同じ固定的なタイミングを有し、基板の全ての部分に対して非常に均一な処理条件を与えることになり、このことが良好な生産性を与える。テンプレートに接近させて投与器を備えることにより、インプリント可能媒体の付着と、インプリント可能媒体に対するインプリント用テンプレートの取付けとの間の固定的なタイミングが非常に短縮され、これは処理量にとって有利であり、またインプリント用テンプレートをインプリント可能媒体に取付ける前にインプリント可能媒体の蒸発量を減少させることができる。
【0054】
幾つかの例において、インプリントを行う前にインプリント用テンプレート61,62をx方向(−x方向も含む)へ移動させることが望ましい。これが行われる場合、テンプレート63,64の適切な側方に備えられている投与器65,68が使用される。これらの投与器は必要とされるならばテンプレート保持具63,64の他側に備えることができることは認識されるであろう。
【0055】
投与器65〜68はそれぞれ複数の開口(例えばインク・ジェット・ノズルとされ得る)を含み、それらの開口は基板60に対してインプリント可能媒体の配列した液滴を投与するように構成される。複数の開口は、例えば
図6に示されるように二次元配列される。インプリント可能媒体の液滴配列は、例えばインプリント用テンプレート61,62の寸法と一致するように配列される。
【0056】
図7は本発明のその他の代替実施例を示す。
図7に示された実施例は大部分が
図6に示された実施例と同じであるが、インプリント可能媒体を投与する開口配列を含む各々の投与器の代わりに、各投与器71〜74は一列の開口を含む。開口は、例えばインク・ジェット・ノズルとされる。この形式の投与器が使用される場合、テンプレート保持具63,64がインプリント位置の間を移動するときにインプリント可能媒体が投与される。これは、例えばインプリントされる基板の一部を横断してインプリント可能媒体が投与されることを可能にする。
【0057】
本発明の前記実施例の幾つかにおいては投与器がテンプレート保持具に取付けられているとして言及したが、投与器は幾つかの例ではインプリント用テンプレートに直接取付けられ得ることは認識されるであろう。一般に、投与器はインプリント用テンプレートと組合わされ、またインプリント用テンプレートに対して固定的となされると言える。
【0058】
インプリント可能媒体の付着と、各々のテンプレートに関してのインプリントとの間のタイミングを、インプリントが同期または非同期で行われるように設定することでこのシステムの処理量は改善され最適化される。インプリントおよび硬化時間を適正に調整することで、二つのテンプレートを使用するシステムにおいて約30〜70%の処理量の向上が達成される。
【0059】
以上、本発明の特別な例について説明したが、本発明は記載した以外の方法でも実施できる。前記説明は、本発明を限定することを意図していない。例えば、適正な寸法および/または形状を有するあらゆる数のテンプレートも特定の適用例に適合するように使用できる。さらに、基板の周囲でのテンプレートの移動される速度は監視され、制御されて、特定の基板寸法およびパターン密度に関して良好または最適なインプリント速度が与えられる。