(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883567
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】焼き菓子類用ミックス及び焼き菓子類
(51)【国際特許分類】
A21D 10/00 20060101AFI20160301BHJP
A21D 13/00 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D13/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-41372(P2011-41372)
(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公開番号】特開2012-175940(P2012-175940A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2013年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】高宮 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小野崎 博
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−075125(JP,A)
【文献】
特公平01−021730(JP,B2)
【文献】
特開2008−136481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ミックス中に、粗蛋白含量が11.5質量%以上の強力粉を80質量%以上含む穀粉類を50〜80質量%含有し、且つ小麦蛋白(ただし生グルテンと油脂を混練、乾燥させたものを除く)を0.5〜10質量%さらに含有することを特徴とするワッフル用ミックス。
【請求項2】
前記小麦蛋白の量が1〜5質量%である請求項1記載のミックス。
【請求項3】
前記穀粉類の全量が前記強力粉である請求項1又は2記載のミックス。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のミックスから生地を調製することを含む焼き菓子類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワッフルなどの焼き菓子類用ミックスに関する。詳細には、表面がサクサクとした食感でクリスピー感に優れ、かつ内部がしっとりとして口溶けのよい焼き菓子類を簡単に製造することができ、しかも焼成時にボリュームが出て焼きムラが生じにくい焼き菓子類用ミックスに関する。本発明はまた、当該焼き菓子類用ミックスを用いて得られた焼き菓子類に関する。
【背景技術】
【0002】
ワッフルは、小麦粉として薄力粉か、薄力粉と強力粉を1:1で混合したものに、油脂、卵、牛乳、砂糖などの原料を添加して混捏し、得られた生地を、格子模様などを刻んだ2枚の鉄板に挟んで焼き上げた焼き菓子である。特に、クリスピーワッフルは、外側がサクサクとしたクリスピーで、中がふんわりとした食感の人気のある焼き菓子である。しかし、焼きムラが生じたり、クリスピーな外部の食感とふんわりとソフトな内部の食感とを両立することが難しく、専門店以外、例えば家庭や喫茶店、フードコートなどではなかなか手軽に作れないという問題があった。
【0003】
一方、特許文献1には、菓子類にしっとりしたソフトで口どけのよい食感を付与するために、置換度がDS0.01〜0.15のヒドロキシプロピル澱粉及び/又はアセチル澱粉で小麦粉の2〜80重量%を置き換えて使用することが記載されている。
また、特許文献2には、体積が大きく、沈みなどの変形がなく、しかもソフトで、外観、内相、食感に優れる菓子類を得ることを目的として、小麦粉100重量部に対して、卵白粉末を0.1〜10重量部、糊化澱粉を0.1〜10重量部およびクエン酸を0.01〜1重量部の割合で含有させることが提案されている。
【0004】
しかし、上記の菓子類は、いずれも、焼きムラや、クリスピーな外部の食感とふんわりとソフトな内部の食感との両立という点においては、未だ十分満足できるものではないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−242752号公報
【特許文献2】特開平9−224551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、焼成時にボリュームが出て焼きムラが生じにくく、且つ表面はサクサクとしてクリスピー感に優れる一方、内部はしっとりとして口溶けのよい食感を有する焼き菓子類を簡単に製造することができる、焼き菓子類用ミックスを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決すべく種々研究を重ねた結果、穀粉類として、主に強力粉を用い、且つさらに小麦蛋白を全ミックス中に0.5〜10質量%含有する焼き菓子類用ミックスを用いれば、焼きムラが生じにくく、且つ表面はサクサクとしてクリスピー感に優れる一方、内部はしっとりとして口溶けのよい食感を有する焼き菓子類が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、全ミックス中に、粗蛋白含量が11.5質量%以上の強力粉を80質量%以上含む穀粉類を50〜80質量%含有し、且つ小麦蛋白を0.5〜10質量%さらに含有することを特徴とする焼き菓子類用ミックスにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、当該ミックスを用いて製造された焼き菓子類により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の焼き菓子類用ミックスを用いれば、表面はサクサクとしてクリスピー感に優れる一方、内部はしっとりとして口溶けのよい食感を有し、且つ焼きムラのない良好な外観を有する焼き菓子類を、簡単に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の焼き菓子類用ミックスは、全ミックス中に穀粉類を50〜80質量%の範囲の量で含有する。当該穀粉類としては、粗蛋白含量が11.5質量%以上、好ましくは12〜14質量%の強力粉を主として用いる。上記穀粉類中における上記強力粉の含有量は、80質量%以上であればよいが、90質量%以上が好ましい。より好ましくは、上記穀粉類の全量が上記強力粉である。
上記強力粉を上記の量で用いることで、得られる焼き菓子が、焼成時に生地が十分に膨らみボリュームが大きいものとなるため、焼きムラがなくなり、外観の点で優れたものとなる。また、焼き上がった焼き菓子は、その表面がよりサクサクとしてクリスピー感に優れ、かつ内部がしっとり口どけのよい食感となり、しかも表面と内部の食感のバランスが好ましいものとなる。他方、全穀粉類中の上記強力粉の量が80質量%未満であると、得られる焼き菓子のボリュームや表面の食感(サクサク感)が十分でなくなる。
本発明の焼き菓子類用ミックスに配合される上記強力粉以外のその他の穀粉類としては、薄力粉、中力粉、全粒粉などのその他の小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、各種澱粉類が挙げられる。
【0011】
本発明の焼き菓子類用ミックスはさらに、上記穀粉類由来の蛋白とは別に、小麦蛋白を全ミックス中に0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%含有する。小麦蛋白をこの量で用いることにより、外観としても生地が十分に膨らみボリュームが大きいものとなり、また、焼き菓子の表面の食感がよりサクサクとしたものとなる。小麦蛋白の量が0.5質量%未満であると、これらの効果が得られず、得られる焼き菓子の表面と内部の食感の好ましいバランスが失われることとなり、他方10質量%を超えると、表面の食感が硬くなり、内部の食感も重たいものとなるため、いずれも好ましくない。
小麦蛋白としては、活性グルテン、ウェットグルテン、凍結乾燥グルテンなどが挙げられるが、活性グルテン、凍結乾燥グルテンが好ましい。
【0012】
本発明の焼き菓子類用ミックスは、上記の原料の他に、大豆蛋白質、卵粉末、脱脂粉乳などの蛋白素材;動植物油脂、粉末油脂などの油脂類;食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、を含有していてもよい。
【0013】
本発明の焼き菓子類用ミックスの形態は、焼き菓子類用ミックスとして通常提供される形態であればよく、例えば、粉末、顆粒、液体、等が挙げられるが、粉末及び顆粒が好ましい。
【0014】
上記本発明の焼き菓子類用ミックスから生地を調製し、これを焼き上げることにより、本発明の焼き菓子類を製造することができる。例えば、本発明の焼き菓子類用ミックスが粉状である場合、これを適量の水、又は必要に応じて卵、糖類、乳、若しくはその他の材料等と混合して生地を調製し、これをそのまま焼き上げることによって、表面はサクサクとし、内部はしっとりとして口溶けのよい食感を有し、且つ焼きムラのない良好な外観を有する焼き菓子類を、簡単に製造することができる。
【0015】
本発明の焼き菓子類用ミックスとしては、ワッフル、焼きドーナツ、ホットケーキ、パンケーキ、どら焼き、鯛焼き等に対応した配合のミックスを挙げることができるが、ワッフル、特にクリスピータイプのワッフルを好適に例示することができる。
【0016】
一例として、本発明によるクリスピータイプワッフル焼き菓子用ミックスとしては、ミックス100g中に:穀粉類50〜80g(そのうち、強力粉(粗蛋白11.5質量%以上)80質量%以上);小麦蛋白0.5〜10g、好ましくは1〜5gを含有し得、さらに残りの成分として、糖類、油脂類、膨張剤、食塩、小麦蛋白以外の蛋白質(卵粉末や乳成分)等をあわせて20〜40g、を含有するミックス粉が挙げられる。
このミックス粉100gに対し、水80〜120gを添加し、必要に応じてさらに糖類、油脂類、膨張剤、食塩、蛋白質(卵、乳等)を添加、混合することによって、クリスピータイプワッフル用の生地を調製することができる。この生地をそのまま型に流し入れ焼き上げることにより、本発明のクリスピータイプワッフル焼き菓子が製造される。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0018】
実施例1〜3及び比較例1〜2
下記の表1に示す組成を有するミックス粉100gに、水100gを添加し、ついでホイッパーを用いて2分間ミックスして、焼き菓子用生地を得た。この生地を、ワッフル用プレートに適量流し込み、185℃で5分間加熱して、クリスピータイプワッフル焼き菓子を製造した。
【0019】
試験例1
上記実施例1〜3及び比較例1〜2の焼き菓子について、10名のパネラーにより、表面と内部の食感及び外観を下記の表2に示す評価基準により評価した。得られた結果の平均を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
実施例4〜7及び比較例3〜5
下記の表3に示す組成を有するミックス粉を用いた以外は、試験例1と同様にしてワッフル焼き菓子を製造した。
【0023】
試験例2
上記実施例4〜7及び比較例3〜5の焼き菓子について、表面と内部の食感及び外観を下記の表2に示す評価基準により評価した。得られた結果の平均を表3に示す。
【0024】
【表3】