特許第5883722号(P5883722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5883722フタロシアニン誘導体、これを用いた色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタ
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  • 特許5883722-フタロシアニン誘導体、これを用いた色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタ 図000034
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883722
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】フタロシアニン誘導体、これを用いた色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/22 20060101AFI20160301BHJP
   C09B 47/067 20060101ALI20160301BHJP
   C09B 47/08 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20160301BHJP
   C07D 487/22 20060101ALN20160301BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160301BHJP
【FI】
   C07D495/22CSP
   C09B47/067
   C09B47/08
   H01L29/78 618B
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 250F
   !C07D487/22
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-110995(P2012-110995)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-237633(P2013-237633A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年10月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100131288
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 尚祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 睦
(72)【発明者】
【氏名】小林 克
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0018967(KR,A)
【文献】 特開2012−062256(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/127301(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0015388(US,A1)
【文献】 特開2008−247997(JP,A)
【文献】 MCKEOWN,N.B. et al.,Chem.Eur.J.,2007年,Vol.13,p.228-234
【文献】 MCKEOWN,N.B. et al.,Science of Synthesis,2004年,Vol.17,p.1237-1368
【文献】 HASSAN,B.M. et al.,J.Mater.Chem.,2000年,Vol.10,p.39-45
【文献】 KOBAYASHI,N. et al.,Chemistry Letters,1998年,No.5,p.423-424
【文献】 MIKHALENKO,S.A. et al.,Zhurnal Obshchej Khimii,1991年,Vol.61, No.4,p.996-1003
【文献】 SARKER,A.K. et al.,Dyes and Pigments,2012年,Vol.92,p.1160-1165
【文献】 JURICEK,M. et al.,Journal of Porphyrins and Phthalocyanines,2011年,Vol.15,p.898-907
【文献】 QUINTILIANI,M. et al.,Journal of Inorganic Biochemistry,2008年,Vol.102,p.388-394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/22
C07D 487/22
C09B 47/067
C09B 47/08
H01L 29/786
H01L 51/05
H01L 51/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式()で表されるフタロシアニン誘導体。
【化1】
[式中、Mは2Hまたは金属イオンを表す。XはSを表す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、カルボキシル基またはアルキルアミノ基を表す。
【請求項2】
記Rが炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数1〜30のアルキル基またはカルボキシル基である請求項に記載のフタロシアニン誘導体。
【請求項3】
下記式(3)で表されるフタロシアニン誘導体の製造方法であって、
下記式(5)で表される化合物を原料中間体として用いて合成するフタロシアニン誘導体の製造方法。
【化2】
【化3】
[式中、Mは2Hまたは金属イオンを表す。Halはハロゲン原子を表す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、カルボキシルまたはアルキルアミノ基を表す。XはSをす。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフタロシアニン誘導体の少なくとも1種を感光層に含む色素増感太陽電池。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフタロシアニン誘導体の少なくとも1種を含む有機半導体材料。
【請求項6】
請求項5に記載の有機半導体材料を含んだ薄膜層を具備する有機薄膜太陽電池。
【請求項7】
請求項5に記載の有機半導体材料を含んだ活性層をもつ有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン誘導体、これを用いた色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン誘導体は、顔料・染料といった従来の用途の他に、IR域の長波長の吸収、比較的高いキャリア移動度を活かし、有機電子材料としての有用性が注目されている。例えば、色素増感太陽電池ではIR域の光を利用する為の長波長色素として有望である(例えば、特許文献1〜4参照)。また、これとともに、電解液の固体化のためのホール輸送材料としての用途も期待されている。さらに、有機半導体材料として、有機薄膜太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの有機半導体デバイスへの応用研究が検討されいている。例えば、フタロシアニン誘導体からなるn型半導体を示したものとして特許文献5,6が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/017868号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2012/017871号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2012/017873号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2012/017874号パンフレット
【特許文献5】特開2007−288151号公報
【特許文献6】特開2008−303383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気化学特性に関与する電荷分離効率やキャリア移動度などの性能発現をもたらしている比較的動きやすいπ電子雲は、これに基づく強い分子間力により分子間会合の原因となる。また、有機溶媒などへの溶解性を低下させる原因となり、これをコントロールすることが難しかった。そこで、本発明者は、分子間の相互作用を適度にコントロールしつつ、高い電荷分離効率やキャリア移動度を示すフタロシアニン誘導体の分子設計が求められると考えた。
以上の点に鑑み、本発明は、優れた光電変換特性あるいは高いキャリア移動度を示すフタロシアニン誘導体、これを用いた色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕下記式()で表されるフタロシアニン誘導体。
【化1】
[式中、Mは2Hまたは金属イオンを表す。XSを表す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、カルボキシル基またはアルキルアミノ基を表す。
〕前記Rが炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数1〜30のアルキル基またはカルボキシル基である〔〕に記載のフタロシアニン誘導体。
下記式(3)で表されるフタロシアニン誘導体の製造方法であって、
下記式(5)で表される化合物を原料中間体として用いて合成するフタロシアニン誘導体の製造方法。
【化2】
【化3】
[式中、Mは2Hまたは金属イオンを表す。Halはハロゲン原子を表す。Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、カルボキシルまたはアルキルアミノ基を表す。XはSをす。
〔1〕または2〕に記載のフタロシアニン誘導体の少なくとも1種を感光層に含む色素増感太陽電池。
〔1〕または2〕に記載のフタロシアニン誘導体の少なくとも1種を含む有機半導体材料。
〕に記載の有機半導体材料を含んだ薄膜層を具備する有機薄膜太陽電池。
〕に記載の有機半導体材料を含んだ活性層をもつ有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフタロシアニン誘導体は、優れた光電変換特性あるいは高いキャリア移動度を示し、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、および有機薄膜トランジスタの材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本発明の式(3)で表されるフタロシアニン誘導体を包含するフタロシアニン誘導体(以下、「特定フタロシアニン誘導体」ということがある)を説明する。
特定フタロシアニン誘導体は下記式(1)または(2)で表される
【0009】
【化5】
【0010】
Mは、2Hまたは金属イオンである。金属イオンとしては、Cu2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Ti4+、Cr3+、Mn2+、Zr4+、Cd3+、Ru3+、Co3+、Ni2+、Pb3+、Ti=O、V=Oなどが挙げられ、Cu2+、Zn2+、Fe3+、Pb3+、Ti=Oなどがより好ましい。なお、Mが2Hとは、金属錯体になっていないフタロシアニン誘導体であり、式(1)、(2)ではMの左上と右下の窒素原子がNHになることを意味する。
【0011】
Zは、a−b位の炭素、b−c位の炭素、またはc−d位の炭素を共有する縮環した5員環構造を表す。Zはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Zによって形成される5員環として好ましくは、チオフェン環、セレノフェン環、ピロール環、フラン環、シクロペンタン環、シクロペンタジエン環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、トリアザール環、チアジアゾール環などが挙げられる。これらは更にベンゼン環などで縮環していてもよい。
【0012】
4つのZのうち少なくとも1つが存在すればよいが、2つ以上のZが存在することが好ましく、3つ以上のZが存在することがより好ましく、4つのZが存在することが特に好ましい。
【0013】
Zで表される5員環は置換基を有していてもよい。また、同様に、式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物の置換可能な炭素原子には置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヘテロアリール基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のカルボキシル基を含む基、および炭素数1〜30のアミノ基から選ばれる基を含む置換基を表す。なお、前記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基の好ましいものとしては、下記置換基Tの例が挙げられる。
【0014】
<置換基T>
炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のヘテロアリール基、または6〜30のアリール基、炭素数6〜30のカルボキシル基を含む基、炭素数1〜30のアミノ基が挙げられる。より好ましくは、炭素数3〜30のアルキル基、炭素数3〜30のアルキル基が置換した炭素数1〜30のヘテロアリール基、炭素数3〜30のアルキル基が置換した6〜30のアリール基、炭素数3〜30のアルコキシ基が置換した炭素数1〜30のヘテロアリール基、炭素数3〜30のアルコキシ基が置換した炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアリール基が置換したアミノ基、カルボキシル基、または炭素数1〜30のアルキル基が置換したアミノ基が挙げられる。更に好ましくは、炭素数4〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアルキル基が置換した炭素数1〜30のヘテロアリール基、炭素数4〜30のアルキル基が置換した6〜30のアリール基、炭素数4〜30のアルコキシ基が置換した炭素数1〜30のヘテロアリール基、カルボキシル基、または炭素数4〜30のアルコキシ基が置換した炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。特に好ましくは、炭素数4〜30のアルキル基、またはカルボキシル基である。
【0015】
前記特定フタロシアニン誘導体は、それぞれ下記式(3)または(4)で表されるものであることが好ましい。
【0016】
【化6】
【0017】
Mは前記式(1)または(2)と同義である。
【0018】
XはS、Se、NH、O、C(Rを表し、は、炭素数1〜30のアルキル基を表すが、本発明では、XはSである
【0019】
式中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、複素環基、酸性基、アルキルアミノ基を表す。Rとして好ましくは、炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数1〜30のアルキル基、または酸性基である。なお、前記式(3)および(4)の置換可能な炭素原子には、先にも述べたように置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記置換基Tが挙げられる。
前記置換基Rとして好ましい有機基を選定することで、本発明における顕著な効果を発揮させることができ好ましい。例えば、色素増感太陽電池の増感色素とする場合には、半導体微粒子への吸着性を確保するために、酸性基(好ましくはカルボキシル基ないしこれを有する置換基)とすることが好ましい。半導体材料とする場合には、溶剤溶解性を確保しつつ良好なキャリア移動度を達成する観点から、上記の有機基を選定することが好ましい。なお、酸性基とは酸性の置換基(カルボキシル基、スルホン酸基等)そのもののほか、特定の連結基(アルキレン基、アリーレン基等)をして置換したその連結基を含む意味であるが、本発明では、カルボキシル基である
【0020】
さらに、Xの好ましいものと置換基Rの好ましいものとの組合せを述べておくと下記のとおりである。なお、本発明では、XはSである。
XがSのとき:
Rは、炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数1〜30のアルキル基、または酸性基であることが好ましく、炭素数7〜20のアルキルアリール基、または炭素数1〜20のアルキル基、または酸性基であることがより好ましい。なかでも、炭素数7〜20のアルキルアリール基、または酸性基であることが更に好ましい。
XがNHのとき:
Rは、炭素数7〜30のアルキルアリール基、または炭素数1〜30のアルキル基、または酸性基であることが好ましく、炭素数7〜20のアルキルアリール基、または炭素数1〜20のアルキル基、または酸性基であることがより好ましい。なかでも、炭素数7〜20のアルキルアリール基、または酸性基であることが更に好ましい。
【0021】
以下に特定フタロシアニン誘導体の好ましい具体例を示す
このうち、本発明の式(3)で表されるフタロシアニン誘導体は、下記化合物番号1b〜7bの化合物であるが、本発明これに限定されるものではない。
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0025】
前記特定フタロシアニン誘導体は、下記式(5)または(6)で表される化合物を原料中間体として用いて合成することができる。
【0026】
【化10】
[式中、Halはハロゲン原子を表す。Rは前記式(3)または(4)と同様である。]
【0027】
したがって、特定フタロシアニン誘導体は、例えば以下のスキーム1または2に従い合成することができる。式中のR,Mは前記式(1)〜(4)と同義である。
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
Mが金属イオンである化合物は、金属イオンの有機溶媒に可溶な塩(例えば有機金属化
合物)をM=2Hである式(I)の化合物と有機溶媒中で混合することにより、得ることができる。
【0031】
[色素増感太陽電池(光電変換素子)に係る実施形態]
前記特定フタロシアニン誘導体からなる色素を用いることができる光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、その上に次の順序で配された、感光体層2、電荷移動体層3、及び対極4からなる。前記導電性支持体1と感光体2とにより受光電極5を構成している。その感光体2は導電性微粒子22と増感色素21とを有しており、色素21はその少なくとも一部において導電性微粒子22に吸着している(色素は吸着平衡状態になっており、一部電荷移動体層に存在していてもよい。)。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で作動手段Mに仕事をさせるようにして、光電気化学電池システム100として作動させることができる。
【0032】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22を含む感光体層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体層(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら、励起されて酸化された色素は電解質中の還元剤(例えば、I−)から電子を受け取り、基底状態の色素に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0033】
本実施形態の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の色素が吸着された多孔質半導体微粒子の層を有する感光体を有する。このとき色素において一部電解質中に解離したもの等があってもよい。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。本実施形態の光電変換素子の感光体には、特定の増感色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができる。
なお、光電変換素子の上下は特に定めなくてもよいが、本明細書において、図示したものに基づいて言えば、対極4の側を上部(天部)の方向とし、支持体1の側を下部(底部)の方向とする。
【0034】
本発明においては、前記式(3)で表されるフタロシアニン誘導体を含有する色素吸着組成液を調製して、前記色素吸着電極を製造することが好ましい。このような色素吸着組成液には、前記式(3)で表されるフタロシアニン誘導体が溶媒に溶解されてなり、必要により共吸着剤や他の成分を含んでもよい。このような溶媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが特に限定されない。本発明においては有機溶媒が好ましく、さらにアルコール類、アミド類、ニトリル類、アルコール類、炭化水素類、および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混用溶媒としては、アルコール類と、アミド類、ニトリル類、アルコール類または炭化水素類から選択される溶媒との混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはアルコール類とアミド類、アルコール類と炭化水素類の混合溶媒、特に好ましくはアルコール類とアミド類の混合溶媒である。
【0035】
本発明においては、上記組成液を用いて、半導体電極が備える半導体表面に金属錯体色素を担持させてなる色素増感太陽電池用半導体電極とすることが好ましい。また、上記組成液を用いて、半導体電極が備える半導体表面に金属錯体色素を担持させることにより色素増感太陽電池を製造することが好ましい。
【0036】
本発明の好ましい実施形態ないしその応用例については、特許第4260494号公報、特開2004−146425号公報、特開2000−340269号公報、特開2002−289274号公報、特開2004−152613号公報、特開平9−27352号公報に記載の光電変換素子、色素増感太陽電池などを参照することができる。
【0037】
[有機半導体材料に係る実施形態]
前記特定フタロシアニン誘導体を有機半導体材料として用いる場合、該有機半導体材料には、性能を低下させない範囲で、上記の特定フタロシアニン誘導体以外の有機半導体材料を任意の配合で含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態の有機半導体材料は、少なくとも基板、有機半導体層、絶縁層及び電極を有する有機半導体素子において、有機半導体層を構成する材料として好ましく使用することができる。有機半導体層は、真空蒸着等のドライプロセス、あるいはスピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、インクジェット法等のウエットプロセスを用いて、基板、絶縁層又は電極上に形成される。有機半導体層の膜厚は、10〜500nmが好ましく、50〜300nmがより好ましい。
【0039】
基板は、絶縁性の材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン、タンタル、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリイミド膜、ポリエステル膜、ポリエチレン膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリパラキシレン膜等の有機材料を挙げることができる。無機材料の場合はシリコンが多用され、軽量でフレキシブルな有機半導体素子を得るためには有機材料を用いることが好ましい。基板の厚さは、100nm以上が望ましい。
【0040】
絶縁層に用いる絶縁材料は特に限定されるものではないが、例えば、二酸化シリコン(SiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(La)、酸化アルミニウム(Al)等の酸化物、窒化シリコン等の窒化物等の無機絶縁材料、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリオキシメチレン、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、ポリイミド(PI)、ポリビニルアルコール(PVA)等の有機絶縁材料が用いられる。これらのうち、誘電率が高く、金属電極間のリーク電流を抑制するため、伝導度約10−12S/cm以下の材料であることが好ましい。これらの材料は、2種以上組合せて使用してもよい。
【0041】
絶縁層は、無機絶縁材料の場合には、熱酸化法、CVD法、ゾルゲル法等の公知の方法で形成することができ、有機絶縁材料の場合には、スピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、インクジェット法等のウエットプロセスを用いて、基板、有機半導体層又は電極上に形成される。膜厚は、100〜1000nmであることが望ましい。
【0042】
電極は、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を含むものである。電極の素材として、例えば、金、銀、クロム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、白金又はマグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−銀合金等アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と金属の合金、PEDOT/PSS等の導電性高分子等が挙げられ、2種以上を組合せて使用してもよい。これらのうち、仕事関数が大きい素材が好ましく、特に仕事関数が有機半導体のイオン化エネルギーに近い金、白金、ITOが好ましい。なお、仕事関数とは、真空順位とフェルミ順位とのエネルギー差をいい、4.6〜5.2eVが好ましい。また、基板としてシリコン、タンタルを用いた場合には、当該基板をゲート電極として使用することもできる。
【0043】
電極は、用いる素材によって異なるが、金属や酸化膜等の場合は真空蒸着法、導電性高分子の場合は塗布法によって、基板、絶縁層又は有機半導体層に接して形成される。電極厚は、10〜300nmとするのが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
【0044】
本実施形態の有機半導体素子は、少なくとも基板、有機半導体層、絶縁層及び電極で構成されるが、その具体的な構成例を示せば、例えば、(1)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/ソース・ドレイン電極/有機半導体層、(2)基板/ゲート電極/ゲート絶縁層/有機半導体層/ソース・ドレイン電極、(3)基板/ソース・ドレイン電極/有機半導体層/ゲート絶縁層/ゲート電極、とすることができる。
【0045】
本実施形態の有機半導体素子は、例えば、絶縁層を有する基板である熱酸化膜付きのシリコンウエハ等に、上記有機半導体材料を高真空度下、室温、一定の蒸着速度で真空蒸着させて有機半導体層を製膜し、さらに同様に、真空下、蒸着速度で電極を作製することにより製造することができる。
【0046】
有機半導体材料の製膜方法としては、真空蒸着の他、スピンコート法、キャスト法、引き上げ法等の塗布法や溶媒を用いない溶融法等を用いることが可能であるが、本実施形態の有機半導体材料は有機溶媒に可溶であることから、より簡便で安価な塗布法が好ましい。塗布法により作製した有機薄膜が製膜性不良となる場合は有機半導体材料を融点以上に加熱溶融したのちに徐冷して製膜する溶融法が好ましい。
【0047】
有機半導体層の製膜及び電極の作製いずれの場合においても、真空蒸着の際は、真空度が10−5Torr以上の高真空下であることが望ましく、製膜温度(真空蒸着あるいは塗布製膜時における基板の温度)は、有機半導体薄膜の場合、基板の種類と有機半導体の融点あるいは透明点にもよるが、20℃以上であることが望ましい。蒸着速度は、0.1〜5.0Å/sが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0Å/sである。有機半導体層及び電極の膜厚は前記のとおりである。
【0048】
塗布製膜法の場合には、有機半導体材料を溶解する溶剤が必要となるが、有機半導体溶液の調製に用いることができる溶剤であり、有機半導体を所定の濃度で溶かすことができる有機溶剤であれば特に限定されない。例えば、メシチレン、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、2−ブタノン、3−ペンタノン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノ−ル等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素系溶媒等を用いることができる。これらの有機溶媒は、2種以上組合せて使用してもよい。このとき、有機半導体溶液の濃度は、塗布製膜の方法と有機半導体の種類によって異なるが、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0049】
絶縁層として無機絶縁材料を用いる場合であって、当該絶縁層の上に有機半導体層を製膜する場合には、有機半導体層の製膜性を上げるために、絶縁層表面を疎水化することが好ましい。疎水化は、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)雰囲気下、基板を約12時間さらすことで行うことができる。シリル化剤は、HMDSの他、オクタデシルトリクロロシラン(0TS)、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)等も用いることができる。絶縁層表面の疎水化反応に要する時間は基板表面を均一に処理する観点から少なくとも12時間以上が望ましい。このとき反応温度は、10〜35℃が好ましい。絶縁層表面を疎水化することにより、キャリア移動度を向上させ、閾値を低下させることができ、低電圧、高性能化に資することができる。
【0050】
有機半導体素子のさらなるキャリア移動度の向上又は閾値電圧の低下のために、絶縁層又は有機半導体層を配向処理することが好ましい。
【0051】
配向処理の方法としては、(a)ゲート絶縁層の上にソース・ドレイン電極に対して垂直にラビングしたポリイミド配向膜を形成してその上に有機半導体層を形成する方法、(b)有機半導体層形成後に赤外自由電子レーザーを照射することによって有機半導体分子を配向する方法、(c)有機半導体素子を作製後、有機半導体層に用いた化合物が液晶相もしくは中間相を示す温度において、一定時間熱処理(アニール)する方法等が挙げられる。熱処理時間は、有機半導体分子の自己組織化を十分に促すために0.5時間以上が望ましい。熱処理時の雰囲気は、湿度が80%以上と高い場合は大気中の水分が有機半導体材料を劣化させる可能性があるため不活性ガス雰囲気下もしくは真空下が好ましいが、湿度が80%より低い場合は大気中でよい。
【0052】
また、特定フタロシアニン誘導体は、ホール及び電子ともに高いキャリア移動度を有することが好ましい。一般に、有機半導体材料のキャリア移動度は、有機半導体トランジスタ素子の高い動作周波数を確保するためには、10−2cm/Vs以上であるのが好ましく、10−2cm/Vs以上であることが特に好ましい。上限は特にないが、1cm/Vs以下であることが実際的である。特定フタロシアニン誘導体またはその金属錯体の一部は、高いキャリア移動度に加えて有機溶媒に可溶、かつ適切な配向処理を施すことによって自己組織化を促すことが可能となり有機半導体素子に好ましく用いることができる。
【0053】
前記特定フタロシアニン誘導体は、p型半導体として利用することが好ましいが、さらなる分子就職や半導体溶液の成分の調節により、n型半導体として利用することも好ましい。
【0054】
[電子写真感光体に係る実施形態]
前記特定フタロシアニン誘導体は、電子写真感光体の感光層に適用することも好ましい。電子写真感光体は導電性支持体上に感光層を有していればよく、特にその具体的な構造は限定されない。好ましい実施形態としては、前記透明支持体が筒状の支持体であり、その外周に、前記感光層として電化発生層と電荷輸送層とを具備するものが挙げられる。さらに、本実施形態では、前記筒状支持体と電荷発生層との間に下引き層を配設していてもよい。前記感光層の電荷発生層及び電荷輸送層は、電荷発生剤もしくは電荷輸送剤とをそれぞれ含有している。
【0055】
前記特定フタロシアニン誘導体は、電子写真感光体における電荷輸送層の電荷発生剤として適用することが好ましい。これを、任意のバインダー樹脂とともに有機溶剤中に溶解し、これを用い、たとえば浸漬法、スプレー法、塗布など公知の方法により、電荷輸送層として形成することができる。あるいは、同様にして、前記特定フタロシアニン誘導体を、電荷発生層の電荷発生剤として利用してもよい。
【0056】
本実施形態の有機半導体素子は、有機薄膜太陽電池、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、RFID(Radio Frequency Identification)、センサー、発光型トランジスタ等の有機光電子デバイスに使用することができ、特に電子ペーパー、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、RFID等の駆動回路等に好ましく用いられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定さ
れるものではない。
【0058】
(合成例1)
4−クロロ−5−(4−ヘキシルフェニルエチニル)フタロニトリルの合成
【0059】
【化13】
【0060】
窒素気流下で反応を行った。反応容器に、4,5−ジクロロフタロニトリル0.86g(4.37×10−3mol)、1−エチニル−4−ヘキシルベンゼン1.0ml(4.78×10−3mol)、トリエチルアミン6.0ml、トルエン3.0ml、ヨウ化銅(I)17mg(8.93×10−5mol)、トリフェニルホスフィン23mg(8.77×10−5mol)を順に加え、脱気し、50℃で10分撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)100mg(8.65×10−5mol)、を加え脱気し、80℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を水に注ぎ入れ、有機層を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮を行った。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)を行い減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0061】
収率:0.769g(51%)
【0062】
H NMR(CDCl,400.13MHz):δ=7.92(s,1H,ArH),7.84(s,1H,ArH),7.50(d,J=8.4Hz,2H,ArH),7.22(d,J=8.4Hz,2H,ArH),2.67−2.63(m,2H,−CH−),1.66−1.58(m,2H,−CH−),1.35−1.28(m,6H,−CH−),0.903−0.867(m,3H,−CH).
【0063】
1aの合成
【0064】
【化14】
【0065】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4−クロロ5−(4−ヘキシルフェニルエチニル)フタロニトリル100mg(2.88×10−4mol)、尿素35mg(5.83×10−4mol)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素3.0mlを加え、脱気し、60℃で15分撹拌した。酢酸銅一水和物14mg(7.01×10−5mol)を加え、脱気し、160℃で12時間撹拌還流した。60℃まで冷却し、メタノール3.0mlを加え10分撹拌した後、目的物を濾取した。これをメタノールで洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0066】
収率:51mg(49%)
【0067】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1449.23,caluculated for C8876ClCuN; 1450.96.
【0068】
1bの合成
【0069】
【化15】
【0070】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に1a 50mg(3.45×10−5mol)、N−メチルピロリドン10mlを加え、脱気し、撹拌した。硫化ナトリウム九水和物66mg(2.75×10−4mol)を加え、脱気し、190℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液100mlに注ぎ入れ、30分撹拌した後、目的物を濾取した。これを水、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0071】
収率:18mg(36%)
【0072】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1441.43,caluculated for C8876CuN; 1441.44.
【0073】
(合成例2)
4−クロロ−5−(4−ドデシルフェニルエチニル)フタロニトリルの合成
【0074】
【化16】
【0075】
窒素気流下で反応を行った。反応容器に、4,5−ジクロロフタロニトリル0.38g(1.93×10−3mol)、1−エチニル−4−ドデシルベンゼン0.79g(2.92×10−3mol)、トリエチルアミン6.0ml、トルエン3.0ml、ヨウ化銅(I) 7mg(3.68×10−5mol)、トリフェニルホスフィン10mg(3.81×10−5mol)を順に加え、脱気し、50℃で10分撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)45mg(3.89×10−5mol)、を加え脱気し、80℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を水に注ぎ入れ、有機層を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮を行った。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)を行い減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0076】
収率:0.412g(51%)
【0077】
H NMR(CDCl,400.13MHz):δ=7.90(s,1H,ArH),7.82(s,1H,ArH),7.48(d,J=8.0Hz,2H,ArH),7.22(d,J=8.4Hz,2H,ArH),2.66−2.62(m,2H,−CH−),1.66−1.58(m,2H,−CH−),1.32−1.26(m,18H,−CH−),0.895−0.861(m,3H,−CH).
【0078】
2aの合成
【0079】
【化17】
【0080】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4−クロロ5−(4−ドデシルフェニルエチニル)フタロニトリル100mg(2.32×10−4mol)、尿素28mg(4.66×10−4mol)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素3.0mlを加え、脱気し、60℃で15分撹拌した。酢酸銅一水和物12mg(6.01×10−5mol)を加え、脱気し、160℃で12時間撹拌還流した。60℃まで冷却し、メタノール3.0mlを加え10分撹拌した後、目的物を濾取した。これをメタノールで洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0081】
収率:53mg(51%)
【0082】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1786.04,caluculated for C112124l4CuN; 1787.59.
【0083】
2bの合成
【0084】
【化18】
【0085】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に2a 27mg(1.51×10−5mol)、N−メチルピロリドン5.0mlを加え、脱気し、撹拌した。硫化ナトリウム九水和物29mg(1.21×10−4mol)を加え、脱気し、190℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液50mlに注ぎ入れ、30分撹拌した後、目的物を濾取した。これを水、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0086】
収率:15mg(56%)
【0087】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1778.23, caluculated for C112128CuN; 1778.07.
【0088】
(合成例3)
4−クロロ−5−(1−オクチニル)フタロニトリルの合成
【0089】
【化19】
【0090】
窒素気流下で反応を行った。反応容器に、4,5−ジクロロフタロニトリル0.40g(2.03×10−3mol)、1−オクチン0.45ml(3.06×10−3mol)、トリエチルアミン5.0ml、トルエン3.0ml、ヨウ化銅(I)12mg(6.30×10−5mol)、を順に加え、脱気し、50℃で10分撹拌した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)43mg(6.13×10−5mol)、を加え脱気し、80℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を水に注ぎ入れ、有機層をジクロロメタンで抽出し、減圧濃縮を行った。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)を行い減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0091】
収率:0.304g(55%)
【0092】
H NMR(CDCl,400.13MHz):δ=7.80(s,1H,ArH),2.54−2.50(m,2H,−CH−),1.69−1.61(m,2H,−CH−),1.51−1.45(m,2H,−CH−),1.35−1.31(m,4H,−CH−),0.926−0.892(m,3H,−CH).
【0093】
3aの合成
【0094】
【化20】
【0095】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4−クロロ5−(1−オクチニル)フタロニトリル150mg(5.54×10−4mol)、尿素66mg(1.10×10−3mol)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素3.0mlを加え、脱気し、60℃で15分撹拌した。酢酸銅一水和物28mg(1.40×10−4mol)を加え、脱気し、160℃で12時間撹拌還流した。60℃まで冷却し、メタノール3.0mlを加え10分撹拌した後、目的物を濾取した。これをメタノールで洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0096】
収率:53mg(33%)
【0097】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1146.53, caluculated for C6460ClCuN; 1146.57.
【0098】
3bの合成
【0099】
【化21】
【0100】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に3a 27mg(2.35×10−5mol)、N−メチルピロリドン5.0mlを加え、脱気し、撹拌した。硫化ナトリウム九水和物45mg(1.87×10−4mol)を加え、脱気し、190℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液50mlに注ぎ入れ、30分撹拌した後、目的物を濾取した。これを水、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0101】
収率:11mg(41%)
【0102】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1135.11, caluculated for C6464CuN; 1137.65.
【0103】
(合成例4)
4−クロロ−5−(5−ヘキシルチオフェン−2−エチニル)フタロニトリルの合成
【0104】
【化22】
【0105】
窒素気流下で反応を行った。反応容器に、4,5−ジクロロフタロニトリル0.558g(2.83×10−3mol)、2−エチニル−5−ヘキシルチオフェン0.817g(4.25×10−3mol)、トリエチルアミン6.0ml、THF4.0ml、ヨウ化銅(I)16mg(8.40×10−5mol)、を順に加え、脱気し、50℃で10分撹拌した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)80mg(1.14×10−4mol)、を加え脱気し、80℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を水に注ぎ入れ、有機層をジクロロメタンで抽出し、減圧濃縮を行った。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)を行い減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0106】
収率:0.418g(42%)
【0107】
H NMR(CDCl,400.13MHz):δ=7.88(s,1H,ArH),7.83(s,1H,ArH),7.27(d,J=3.6Hz,1H,ArH),6.76(d,J=3.6Hz,1H,ArH),2.84(t,J=7.6Hz,2H,−CH−),1.73−1.65(m,2H,−CH−),1.40−1.29(m,6H,−CH−),0.894(t,J=6.8Hz,3H,−CH).
【0108】
4aの合成
【0109】
【化23】
【0110】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4−クロロ−5−(5−ヘキシルチオフェン−2−エチニル)フタロニトリル100mg(2.83×10−4mol)、尿素34mg(5.66×10−4mol)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素3.0mlを加え、脱気し、60℃で15分撹拌した。酢酸銅一水和物14mg(7.01×10−5mol)を加え、脱気し、160℃で12時間撹拌還流した。60℃まで冷却し、メタノール3.0mlを加え10分撹拌した後、目的物を濾取した。これをメタノールで洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0111】
収率:57mg(54%)
【0112】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1472.67, caluculated for C8068l4CuN; 1475.07.
【0113】
4bの合成
【0114】
【化24】
【0115】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4a 14mg(9.49×10−5mol)、N−メチルピロリドン3.0mlを加え、脱気し、撹拌した。硫化ナトリウム九水和物18mg(7.49×10−5mol)を加え、脱気し、190℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液30mlに注ぎ入れ、30分撹拌した後、目的物を濾取した。これを水、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0116】
収率:7mg(50%)
【0117】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1463.27, caluculated for C8072CuN; 1465.55.
【0118】
(合成例5)
4−クロロ−5−(3−ヘキシルチオフェン−2−エチニル)フタロニトリルの合成
【0119】
【化25】
【0120】
窒素気流下で反応を行った。反応容器に、4,5−ジクロロフタロニトリル0.567g(2.88×10−3mol)、2−エチニル−3−ヘキシルチオフェン0.826g(4.29×10−3mol)、トリエチルアミン6.0ml、THF4.0ml、ヨウ化銅(I)17mg(8.93×10−5mol)、を順に加え、脱気し、50℃で10分撹拌した。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)61mg(8.69×10−5mol)、を加え脱気し、80℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を水に注ぎ入れ、有機層をジクロロメタンで抽出し、減圧濃縮を行った。シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)を行い減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0121】
収率:0.256g(25%)
【0122】
H NMR(CDCl,400.13MHz):δ=7.89(s,1H,ArH),7.85(s,1H,ArH),7.37(d,J=5.2Hz,1H,ArH),6.96(d,J=5.2Hz,1H,ArH),2.81(t,J=7.6Hz,2H,−CH−),1.70−1.63(m,2H,−CH−),1.37−1.28(m,6H,−CH−),0.877(t,J=6.8Hz,3H,−CH).
【0123】
5aの合成
【0124】
【化26】
【0125】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に4−クロロ−5−(3−ヘキシルチオフェン−2−エチニル)フタロニトリル100mg(2.83×10−4mol)、尿素34mg(5.66×10−4mol)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素3.0mlを加え、脱気し、60℃で15分撹拌した。酢酸銅一水和物14mg(7.01×10−5mol)を加え、脱気し、160℃で12時間撹拌還流した。60℃まで冷却し、メタノール3.0mlを加え10分撹拌した後、目的物を濾取した。これをメタノールで洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0126】
収率:69mg(66%)
【0127】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1473.70, caluculated for C8068l4CuN; 1475.07.
【0128】
5bの合成
【0129】
【化27】
【0130】
窒素気流下で以下の反応を行った。反応容器に5a 33mg(2.24×10−5mol)、N−メチルピロリドン5.0mlを加え、脱気し、撹拌した。硫化ナトリウム九水和物43mg(1.79×10−4mol)を加え、脱気し、190℃で12時間撹拌還流した。室温まで冷却し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液50mlに注ぎ入れ、30分撹拌した後、目的物を濾取した。これを水、メタノールの順に洗浄し、クロロホルムに溶解させ減圧濃縮した。アルミナのカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を行い、減圧濃縮した。さらに高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製を行い、減圧乾燥で目的物を得た。
【0131】
収率:14mg(43%)
【0132】
MALDI−TOF−Ms: m/z=1464.74, caluculated for C8072CuN; 1465.55.
【0133】
(実施例1)光電池の初期性能評価
20mm×20mmの、フッ素をドープした酸化スズ層を有する透明導電性ガラス(日本板硝子(株)製、表面抵抗約10Ω/cm)の導電面側にダイソル社製DSL 18NR−Tをスクリーン印刷で塗布した。塗布後25℃で30分間乾燥し、ホットプレートにて、500℃にて30分間焼成した。二酸化チタンの塗布量は15.5g/mであり、膜厚は9μmであった。同様にダイソル製WER2−0を用いて印刷、焼成し、膜厚4μmの散乱層を作成した。焼成終了後、冷却し、本発明の金属錯体色素、及び比較の比較化合物1の0.2mmol/l(溶媒:エタノールとアセトニトリルの1:1混合物)にそれぞれ20時間浸漬した。比較化合物1の構造を以下に示す。続いて色素の染着した二酸化チタン電極をエタノールおよびアセトニトリルで順次洗浄し、窒素気流下暗所において乾燥して二酸化チタン電極を作製した。
【0134】
上述のようにして作製した色素増感TiO電極基板(20mm×20mm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解液A(アセトニトリルにヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム(0.65mol/l)およびヨウ素(0.05mol/l)を溶解した溶液)をしみこませTiO電極中に導入して、表1に示す各光電池を得た。本実施例により、図1に示すように導電性ガラスからなる導電性支持体層1、色素増感21とチタニア半導体層22からなる感光層2、上記電解液からなる電荷移動層3、及び白金からなる対極導電層基板4を順に積層しエポキシ系封止剤で封止された光電池を作製した。
【0135】
[長波長IPCEの評価]
オプテル社製のIPCE(Incident Photon to Current Conversion Efficiency)測定装置を用いて、上記各光電池の400〜900nmの単色光変換効率(IPCE)を10nm間隔で測定したところ、いずれの光電池も550〜650nmの波長範囲にIPCEの極大値を有し700nmより長波長側で徐々に減衰する曲線を示した。表1に各光電池の800nmにおけるIPCE値(IPCE(%)=(発生した電子数/照射された光子数)×100)をピーク波長でのIPCEを100として規格化した値を示す。この値が大きい光電池ほど長波長光の変換効率が高く、本発明の目的に適うものであるといえる。
【0136】
[変換効率等の評価]
上記各光電池の導電性ガラスの端部に銀ペーストを塗布して負極とし、この負極と白金蒸着ガラス(正極)を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。これらの光電池に、500Wのキセノンランプ(ウシオ電気(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製AM1.5)を通すことにより発生させた模擬太陽光を垂直に照射しながら発生電流を測定した。光の強度は垂直面において100mW/cmであった。各光電池の太陽電池特性(短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、形状因子(FF)および変換効率(η))を併せて表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1より、本発明の光電池(試験No.)101は比較化合物C−1を用いた光電池(試験No.)C01に比べて800nmにおけるIPCEが高く、長波長光の増感効率に優れていることがわかる。また、本発明によれば、形状因子を良好な範囲に維持し、開放電圧、短絡電流、変換効率のすべてにおいて性能の向上が見られることが分かる。
【0139】
【化28】
【0140】
(実施例2)
下記の表2に記載の化合物をITOをコートしたガラス板を両電極としたサンドイッチ型セルのセルギャップ(約15ミクロン)に液体温度で毛細管現象を利用して注入、注意深く冷却した。
【0141】
これを温度制御機構付きステージにセットして電場を印加、正極及び負極にそれぞれパルスチッソガスレーザ(波長:337nm、 パルス幅:800ピコ秒)を照射することにより光電流を発生させ、その光電流過渡減衰波形をオシロスコープにて検出して得た光電流の減衰波形より電極間を走行したキャリアの走行時間を求め、そのキャリア移動度を求めたところ表2に示すようなキャリア移動度の温度特性を得た。正負両電荷(正極照射時に得られた電流は正電荷により、負極照射時に得られた電流は負電荷による)はいずれも高いキャリア移動度を示した。
【0142】
【表2】
【0143】
【化29】
【0144】
上記の結果より、本発明の有機半導体材料は、ホール及び電子のキャリア移動度が、いずれも10−1cm2V−1−1以上と非常に高く、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池及び電子写真感光体などの用途に好適に用いることができることが分かる。
【0145】
(実施例3)
該化合物をクロロホルムに溶解させ、スピンコータでガラス基板上に塗布し製膜したところ、良好な製膜性を示すことが分かった。
【符号の説明】
【0146】
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池システム
図1