特許第5883772号(P5883772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883772
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20160301BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 43/12 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 21/8246 20060101ALI20160301BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20160301BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
   H01L43/08 Z
   H01L43/12
   H01L27/10 447
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-258087(P2012-258087)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107364(P2014-107364A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 篤
(72)【発明者】
【氏名】山本 直広
(72)【発明者】
【氏名】須山 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大介
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−014881(JP,A)
【文献】 特開2005−314791(JP,A)
【文献】 特開2003−078184(JP,A)
【文献】 特開2002−038285(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/032745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/8246
H01L 27/105
H01L 43/08
H01L 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TaまたはTiNを含むハードマスクを用いて第一の磁性膜と絶縁膜である障壁層と第二の磁性膜とを含有する積層膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
2ガスを用いて前記積層膜をテーパー形状にプラズマエッチングする第一の工程と、
前記第一の工程後、N2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記積層膜の側壁に堆積した反応生成物を除去し、前記テーパー形状が垂直形状となるようにプラズマエッチングする第二の工程とを有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
TaまたはTiNを含むハードマスクを用いて第一の磁性膜と絶縁膜である障壁層と第二の磁性膜とを含有する積層膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記積層膜をテーパー形状にプラズマエッチングする第一の工程と、
前記第一の工程後、N2ガスを用いて前記積層膜の側壁に堆積した反応生成物をプラズマエッチングする第二の工程と、
前記第二の工程後、N2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記テーパー形状が垂直形状となるように前記積層膜をプラズマエッチングする第三の工程とを有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記炭素を含有するガスがCH4ガスであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理方法において、
前記第二の工程は、さらにHeガスを用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記第一の工程と前記第三の工程は、さらにHeガスを用いることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記第一の磁性膜と前記第二の磁性膜は、Fe、Co、Ni、Pt,Mnの中から選ばれた少なくとも一つの元素を含有する膜であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング方法に係り、特に磁性材料をプラズマエッチングするプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto Resistive effect)やトンネリング磁気抵抗効果(TMR効果:tunnel Magneto−Resistance Effect)により磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子(以下、MTJ素子と称する)で記憶させる磁気抵抗メモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)の開発が行われており、磁性材料を有するMTJ素子をプラズマエッチングにより形成する手段が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高周波を用いて、炭化水素化合物のガスと、酸素原子を有する化合物のガスと、窒素原子を有する化合物のガスとを含有する反応ガスからプラズマを生成させ、このプラズマにより金属磁性体膜のエッチングを行うことが開示されている。また、エッチングガスとして、フッ化炭化水素化合物を用いることも開示されている。
【0004】
しかし、MTJ素子の側壁に導体である磁性膜が付着するために絶縁体の上部と下部に配された磁性膜が電気的にショートしてしまい、大きな磁気抵抗効果が得られないという問題があった。
【0005】
この問題の解決手段として特許文献2には、第1の磁性層、非磁性層、第2の磁性層の順にドライエッチングする。このとき加工断面つまり素子側壁に再付着物によるフェンスが形成されるが、エッチングガスに窒素を用い、再付着物の電気抵抗を高くして膜の磁気抵抗効果の減少を軽減させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−314791号公報
【特許文献2】特開2003−78184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、パターン側壁へ付着物を堆積させることが前提であり、パターン側壁へ付着物が堆積するため、垂直形状を得ることが困難になる。
【0008】
このため、本発明は、磁性膜のプラズマエッチング方法において、デバイス特性を劣化させずに、垂直形状を得ることができるプラズマエッチング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、TaまたはTiNを含むハードマスクを用いて第一の磁性膜と絶縁膜である障壁層と第二の磁性膜とを含有する積層膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、N2ガスを用いて前記積層膜をテーパー形状にプラズマエッチングする第一の工程と、前記第一の工程後、N2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記積層膜の側壁に堆積した反応生成物を除去し、前記テーパー形状が垂直形状となるようにプラズマエッチングする第二の工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、TaまたはTiNを含むハードマスクを用いて第一の磁性膜と絶縁膜である障壁層と第二の磁性膜とを含有する積層膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、N2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記積層膜をテーパー形状にプラズマエッチングする第一の工程と、前記第一の工程後、N2ガスを用いて前記積層膜の側壁に堆積した反応生成物をプラズマエッチングする第二の工程と、前記第二の工程後、N2ガスと炭素元素を含有するガスとの混合ガスを用いて前記テーパー形状が垂直形状となるように前記積層膜をプラズマエッチングする第三の工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、磁性膜のプラズマエッチング方法において、デバイス特性を劣化させずに、垂直形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るプラズマエッチング装置の概略断面図である。
図2】実施例1におけるプラズマエッチング方法のフロー図である。
図3】バイアスRFパワーに対するMTJ素子形状の角度依存性を示す図である。
図4】Ta膜に対するCoFeB膜の選択比の、HeガスとCH4ガスの混合ガスの流量依存性を示す図である。
図5】エッチング時間に対するMTJ形状の角度依存性を示す図である。
図6】実施例2におけるプラズマエッチング方法のフロー図である。
図7】実施例3におけるプラズマエッチング方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る磁性材料のプラズマエッチング方法に関する一実施例を、図1ないし図7を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明で用いたプラズマエッチング装置の概略断面図である。プラズマエッチング装置は、石英(SiO2)またはセラミック(Al23)の非導電性材料からなり、プラズマ生成部を形成する放電部2と、プラズマ7と誘導結合する誘導結合アンテナ1と、プラズマ7と容量結合するファラデーシールド9と、整合器4を介して誘導結合アンテナ1およびファラデーシールド9に高周波電力を供給する第一の高周波電源10と、被処理体である試料12を載置し、処理部3内に配置された電極6と、電極6に高周波電力を供給する第二の高周波電源11と、放電部2内に処理ガスを供給するガス供給装置5と、処理部3内を排気する排気装置8とを備える。
【0015】
処理部3はアースに設置されており、電極6は絶縁材を介して処理部3に取り付けられる。誘導結合アンテナ1は、コイル状の第一の誘導アンテナ1aと第一の誘導アンテナ1aの直径より大きくコイル状の第二の誘導アンテナ1bからなる。
【0016】
処理部3内には、ガス供給装置5から処理ガスが供給される一方で、排気装置8によって所定の圧力に減圧排気される。ガス供給装置5より処理部3内部に処理ガスを供給し、該処理ガスを誘導結合アンテナ1により発生する誘導磁場によりプラズマ化する。
【0017】
また、プラズマ7中に存在するイオンを試料12上に引き込むために電極6に第2の高周波電源11によりバイアス電圧を印加する。本プラズマエッチング装置は、不揮発性エッチング材料のエッチングに応じた構造を有しており、ファラデーシールド9へ高周波電圧を印加することによって、放電部2への反応生成物の付着抑制ならびに除去が可能である。
【0018】
次に、上記プラズマエッチング装置を用いた本発明のプラズマエッチング方法について説明する。
【実施例1】
【0019】
最初に、本発明で使用する試料12の膜構造を図2(a)に示す。これは、MTJ素子形成用の試料12であり、シリコン基板18上に順次、下から下部電極であるTa膜17と、固定層であるCoFeB膜16と、障壁層であるMgO膜15と、可変層であるCoFeB膜14と、上部電極であるTa膜13とが積層されている。
【0020】
【表1】
【0021】
表1のステップ1に示すように、N2ガスを80ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを450W、処理時間を115秒とし、Ta膜13をマスクとして、CoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をエッチングすると、図2(b)のようにテーパ形状となり、Ta膜13からCoFeB膜16までの側壁にTa成分を含有する反応生成物19が堆積する。ここで、ソースRFパワーとは、第一の高周波電源10から誘導結合アンテナ1に供給される高周波電力のことであり、バイアスRFパワーは、第二の高周波電源11から電極6に供給される高周波電力のことである。
【0022】
また、ステップ1の形状は、N2ガスの化学的反応が乏しいため、バイアスRFパワーに依存する。図3に示すようにバイアスRFパワーを200Wから450Wに増加させると、MTJ素子の形状の角度は、55度から73度へ向上する。しかし、バイアスパワーを450Wから700Wに増加させると、MTJ素子の形状の角度は、73度から75度となり、ほとんど向上していない。
【0023】
450Wから700Wの範囲のバイアスRFパワーにてMTJ素子の形状の角度があまり改善しない理由は、バイアスRFパワーを増加させると、マスクのTa膜13のエッチング速度が上昇し、マスクのTa膜13から発生した反応生成物のパターン近傍への付着量が増加したためと考えられる。
【0024】
図3の結果から、MTJ素子のエッチングは、低バイアスRFパワーより高バイアスRFパワーの方が垂直形状を得られ易いため、主にスパッタエッチングにて加工されていることがわかる。また、バイアスRFパワーが高すぎると、Ta膜13のマスクからの反応生成物の影響を受けてMTJ素子の形状の角度の改善がほとんど見られなくなったと考えられる。このようなことを考慮して、本実施例のステップ1では、バイアスRFパワーを450Wとした。
【0025】
また、バイアスRFパワー以外のエッチングパラメータとして、処理圧力は、試料12上に発生する反応生成物を効率よく排気するために、0.5Pa以下とするのが望ましい。N2ガス及びソースRFパワーは、Ta膜13のマスクとの選択性が高いエッチングを実現するために、N2ガスを50ml/min以上、ソースRFパワーを1500W以上にすることが望ましい。
【0026】
次に表1のステップ2に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガス3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を60秒として、図2(c)に示すようにTa膜13とCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16の側壁に付着した反応生成物19の除去をする。
【0027】
反応生成物19は、ステップ1のエッチングによって生じたものであるため、マスクのTa膜13やCoFeB膜14とCoFeB膜16等を含んでいる。このため、反応生成物19を除去するには、スパッタエッチングが有効となる。しかし、主にスパッタエッチングにより反応生成物19を除去しようとすると、マスクのTa膜13も除去され易くなる。このようなことから、反応生成物19を除去するとともにマスクのTa膜13をあまり除去されないようにするために、炭素元素を含有する堆積性のガスをN2ガスに添加しながら、反応生成物19を除去した。
【0028】
本実施例では、炭素元素を含有するガスとして、CH4(メタン)ガスを用い、さらにHeガスを添加した。He(ヘリウム)ガスを添加することにより、N2(窒素)ガスの分圧が下がり、反応生成物19を効率良く除去することができた。
【0029】
2ガスとHeガスとCH4ガスの混合ガスを用いて、Heガスの流量とCH4ガスの流量をそれぞれ変化させた場合のTa膜に対するCoFeB膜の選択比を求めた。N2ガスの流量を80ml/minと固定し、Heガスの流量とCH4ガスの流量をそれぞれ、0と0ml/min、77と3ml/min、154と6ml/minとした場合のTa膜に対するCoFeB膜の選択比を図4に示す。
【0030】
図4に示すようにN2ガスとHeガスとCH4ガスの流量がそれぞれ、80ml/min、77ml/min、3ml/minの場合に、CoFeB膜のエッチング速度を維持したまま、Ta膜のエッチング速度をほぼ0ml/minとすることができた。
【0031】
次に表1のステップ3に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガスを3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を120秒として、図2(c)に示すようなCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16のテーパ形状を図2(d)に示すような垂直形状とするためにCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をプラズマエッチングする。
【0032】
ステップ3後のエッチング形状は、図5に示すようにステップ3の処理時間を増加させるに従ってテーパ形状から垂直形状に近づき、処理時間が60秒の場合、エッチング形状の角度が82度、処理時間が120秒の場合、エッチング形状の角度が85度となる。
【0033】
以上、表1に示すステップ1ないしステップ3の処理を行うことにより、可動層と固定層を電気的にショートさせることなくMTJ素子を垂直にプラズマエッチングすることができた。
【0034】
また、図4に示すようにTa膜に対するCoFeB膜の選択比を高くするためには、ステップ2及び3で用いるCH4ガスの流量を3ml/min以上にすることが望ましい。また、本実施例のステップ2及び3にてN2ガスとHeガスとCH4ガスの混合ガスを用いたが、N2ガスとCH4ガスの混合ガスを用いても、本実施例と同様な効果を得ることができる。
【0035】
さらに、本実施例では、炭素元素を含有するガスとしてCH4ガスを用いたが、C26(エタン)ガス、C38(プロパン)ガス、C410(ブタン)ガス、C512(ペンタン)ガス、C24(エチレン)ガス、C22(アセチレン)ガスの中で少なくともいずれか一つのガスを用いても良い。
【0036】
次に本実施例で用いたTa膜13のマスクの厚さを薄くしたMTJ素子形成用の試料12に本発明を適用した例について説明する。
【実施例2】
【0037】
最初に、本発明で使用する試料12の膜構造を図6(a)に示す。これは、MTJ素子形成用の試料12であり、シリコン基板18上に順次、下から下部電極であるTa膜17と、固定層であるCoFeB膜16と、障壁層であるMgO膜15と、可変層であるCoFeB膜14と、上部電極であるTa膜21とが積層されている。尚、本実施例のTa膜21の厚さは、実施例1におけるTa膜13の厚さの半分としている。
【0038】
【表2】
【0039】
先ず、表2のステップ1に示すように、N2ガスを80ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを450W、処理時間を115秒とし、Ta膜21をマスクとして、CoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をエッチングすると、図6(b)のようにテーパ形状となり、Ta膜21からCoFeB膜16までの側壁にTa成分を含有する反応生成物19が堆積する。ここで、ソースRFパワーとは、第一の高周波電源10から誘導結合アンテナ1に供給される高周波電力のことであり、バイアスRFパワーは、第二の高周波電源11から電極6に供給される高周波電力のことである。
【0040】
次に表2のステップ2に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガスを3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を30秒として図6(c)に示すように反応生成物19を除去する。
【0041】
また、実施例1におけるステップ2の処理時間の60秒に対して本実施例のステップ2では、30秒に短縮することができた。これは、実施例1のTa膜13の厚さに対して本実施例のTa膜21の厚さが半分となったことにより、反応生成物19のTa膜13とCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16の側壁への付着量が実施例1の場合より減少したためと考えられる。
【0042】
次に表2のステップ3に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガスを3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を120秒としてテーパ形状のCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をプラズマエッチングすることにより、図6(d)に示すようにCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16を垂直にエッチングすることができた。
【0043】
以上、表2に示すステップ1ないしステップ3の処理を行うことにより、可動層と固定層を電気的にショートさせることなくMTJ素子を垂直にプラズマエッチングすることができた。また、ステップ1からステップ3までの合計の処理時間も実施例1より短縮することができた。
【0044】
また、図4に示すようにTa膜に対するCoFeB膜の選択比を高くするためには、ステップ2及び3で用いるCH4ガスの流量を3ml/min以上にすることが望ましい。また、本実施例のステップ2及び3にてN2ガスとHeガスとCH4ガスの混合ガスを用いたが、N2ガスとCH4ガスの混合ガスを用いても、本実施例と同様な効果を得ることができる。
【0045】
さらに、本実施例では、炭素元素を含有するガスとしてCH4ガスを用いたが、C26(エタン)ガス、C38(プロパン)ガス、C410(ブタン)ガス、C512(ペンタン)ガス、C24(エチレン)ガス、C22(アセチレン)ガスの中で少なくともいずれか一つのガスを用いても良い。
【0046】
次に、実施例1と同じ膜構造の試料12に実施例1と異なるプラズマエッチングを適用した例について説明する。
【実施例3】
【0047】
最初に、本発明で使用する試料12の膜構造を図7(a)に示す。これは、MTJ素子形成用の試料12であり、シリコン基板18上に順次、下から下部電極であるTa膜17と、固定層であるCoFeB膜16と、障壁層であるMgO膜15と、可変層であるCoFeB膜14と、上部電極であるTa膜13とが積層されている。
【0048】
【表3】
【0049】
先ず表3のステップ1に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガスを3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを450W、処理時間を125秒とし、Ta膜13をマスクとして、CoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をエッチングすると、図7(b)のようにテーパ形状となり、Ta膜13からCoFeB膜16までの側壁に反応生成物20が堆積する。
【0050】
この場合の反応生成物20は、実施例1の反応生成物19と異なり炭素成分を含有する。ここで、ソースRFパワーとは、第一の高周波電源10から誘導結合アンテナ1に供給される高周波電力のことであり、バイアスRFパワーは、第二の高周波電源11から電極6に供給される高周波電力のことである。
【0051】
次に表3のステップ2に示すように、N2ガスを80ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を20秒として、図7(b)に示すようにTa膜13とCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16の側壁に付着した反応生成物20の除去を行う。
【0052】
ここで、ステップ2の条件にてレジスト材料(炭素系材料)をエッチングした結果、200nm/min以上のエッチング速度が得られた。また、ステップ2の条件でのCoFeB膜のエッチング速度は、図4に示すように6nm/min程度であるため、レジスト材料(炭素系材料)の方がCoFeB膜のエッチング速度より大幅に速い。
【0053】
このため、本実施例の反応生成物20は、磁性材料に比べて炭素成分を含有する反応生成物が多くパターン側壁に付着しているため、ステップ2により容易に除去することができる。また、炭素成分を含有する反応生成物中に磁性材料が含まれていれば、リフトオフの作用で、炭素成分を含有する反応生成物が除去されるとともに磁性材料も除去される。
【0054】
次に表3のステップ3に示すように、N2ガスを80ml/min、Heガスを77ml/min、CH4ガスを3ml/min、処理圧力を0.3Pa、ソースRFパワーを1600W、バイアスRFパワーを200W、処理時間を120秒として、テーパ形状のCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16をプラズマエッチングすることにより、図7(d)に示すようにCoFeB膜14とMgO膜15とCoFeB膜16を垂直にエッチングすることができた。
【0055】
以上、表3に示すステップ1ないしステップ3の処理を行うことにより、可動層と固定層を電気的にショートさせることなくMTJ素子を垂直にプラズマエッチングすることができた。
【0056】
また、本実施例のステップ2では、N2ガスを用いたが、表4のステップ2に示すようにN2ガスを130ml/min、Heガスを29ml/min、CH4ガスを1.0ml/minとする混合ガスを用いても本実施例と同等の効果を得ることができる。
【0057】
【表4】
【0058】
また、図4に示すようにTa膜に対するCoFeB膜の選択比を高くするためには、ステップ1及び3で用いるCH4ガスの流量を3ml/min以上にすることが望ましい。また、本実施例のステップ2及び3にてN2ガスとHeガスとCH4ガスの混合ガスを用いたが、N2ガスとCH4ガスの混合ガスを用いても、本実施例と同様な効果を得ることができる。
【0059】
さらに、本実施例では、炭素元素を含有するガスとしてCH4ガスを用いたが、C26(エタン)ガス、C38(プロパン)ガス、C410(ブタン)ガス、C512(ペンタン)ガス、C24(エチレン)ガス、C22(アセチレン)ガスの中で少なくともいずれか一つのガスを用いても良い。
【0060】
上述した実施例1ないし実施例3は、可動層および固定層にCoFeB膜を用いた例で説明したが、本発明としては、Fe、Co、Ni、Pt,Mnの元素の中で少なくともいずれか一つの元素を含有する磁性膜であればよい。また、上述した実施例1ないし実施例3は、上部電極および下部電極にTa膜を用いた例で説明したが、本発明としては、Ta膜、TiN膜のいずれかの膜を少なくとも一つ含む膜であれば良い。
【0061】
さらに上述した実施例1ないし実施例3は、可動層が固定層の上方に配置されたMTJ素子の例について説明したが、本発明としては、固定層が可動層の上方に配置されたMTJ素子でも良い。
【0062】
上述した実施例1ないし実施例3では、誘導結合型プラズマ源のプラズマエッチング装置を用いた例で説明したが、本発明はこれに限らず、マイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマエッチング装置、容量結合型プラズマ源のプラズマエッチング装置、ヘリコン型プラズマエッチング装置を用いても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 誘導結合アンテナ
2 放電部
3 処理部
4 整合器
5 ガス供給装置
6 電極
7 プラズマ
8 排気装置
9 ファラデーシールド
10 第一の高周波電源
11 第二の高周波電源
12 試料
13 Ta膜
14 CoFeB膜
15 MgO膜
16 CoFeB膜
17 Ta膜
18 シリコン基板
19 反応生成物
20 反応生成物
21 Ta膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7