(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5883905
(24)【登録日】2016年2月12日
(45)【発行日】2016年3月15日
(54)【発明の名称】チーズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 19/09 20060101AFI20160301BHJP
【FI】
A23C19/09
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-167608(P2014-167608)
(22)【出願日】2014年8月20日
(62)【分割の表示】特願2010-520897(P2010-520897)の分割
【原出願日】2009年7月16日
(65)【公開番号】特開2014-209928(P2014-209928A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2008-186323(P2008-186323)
(32)【優先日】2008年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 茂
(72)【発明者】
【氏名】清水 信行
(72)【発明者】
【氏名】西尾 智子
(72)【発明者】
【氏名】山倉 愼一
【審査官】
松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−299026(JP,A)
【文献】
特開昭58−040041(JP,A)
【文献】
特開昭53−086071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たんぱく質と炭水化物の合計重量が18重量%以上であるチーズを粉砕し、50℃以下の温度で該チーズ同士を、得られるチーズが口中で砕ける圧力で加圧し、再結着することを含む、口中で砕けるチーズの製造方法。
【請求項2】
得られるチーズの水分重量が52重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載のチーズの製造方法。
【請求項3】
溶融塩を使用しない請求項1または2に記載のチーズの製造方法。
【請求項4】
目皿の穴が4.8mmφ以下であるチョッパーで粉砕することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項5】
チーズが特別硬質チーズ、硬質チーズ及び半硬質チーズのうちの1種またはそれ以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項6】
粉砕したチーズに結着剤を添加した後に加圧して再結着することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項7】
結着剤が、デキストリン、澱粉、加工澱粉、卵白、卵白粉、ゼラチン、寒天、増粘多糖類、カゼイン、プロセスチーズ、軟質チーズ、ホエイ粉、ホエイたんぱく質濃縮物、ホエイたんぱく質分離物、大豆たんぱく質及びグルテンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のチーズの製造方法。
【請求項8】
粉砕したチーズに副原料を加えて混合し、その後で再結着することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項9】
副原料が食品である請求項8に記載のチーズの製造方法。
【請求項10】
副原料が栄養強化剤である請求項8に記載のチーズの製造方法。
【請求項11】
チーズを凍結した状態で、チーズの粉砕及び/又は粉砕したチーズと副原料の混合を行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項12】
脱気しながら成形することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項13】
チーズがナチュラルチーズのみからなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のチーズの製造方法。
【請求項14】
たんぱく質と炭水化物の合計重量が18重量%以上であるチーズの粉砕物同士が再結着した状態である、口中で砕けるチーズ。
【請求項15】
たんぱく質と炭水化物の合計重量が18重量%以上であるチーズを粉砕し、50℃以下の温度で該チーズ同士を、得られるチーズが口中で砕ける圧力で加圧し、再結着することを含む、口中で砕けるチーズへの物性の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチーズ及びその製造方法に関する。詳しくは、特別硬質チーズ、硬質チーズ、半硬質チーズなどの硬くて食べにくいナチュラルチーズを食べ易くしたチーズとその製造方法に関する。逆にチーズを細い棒状にした場合でも折れにくくなるように硬くするなど、テクスチャーを調整したチーズとその製造方法に関する。また食品や栄養強化剤を添加したり、各種チーズをブレンドしたり、キャラクターなど独特の形状に成形したりできる新規なチーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チェダーチーズやゴーダチーズなどのハード系やセミハード系の熟成型ナチュラルチーズをカットしたものと、6Pチーズやベビーチーズなどのプロセスチーズを一般の消費者に喫食させて嗜好を聞くと、プロセスチーズの方が好まれる調査結果になる。その主な理由は、ハード系やセミハード系のナチュラルチーズは口中でべたつかないものの、ごつごつ、ボロボロした硬い食感があり、その点が好まれないためである。水と溶融塩を加えて溶融、乳化したプロセスチーズは、口中でべたつく食感はあるものの滑らかで軟らかいので、ハード系やセミハード系のナチュラルチーズに比して好まれている。ハード系やセミハード系のナチュラルチーズを、溶融塩を使用してプロセスチーズ化するのではなく、そのままで食べても口中で砕けやすく食べやすい組織にすれば、ナチュラルチーズの需要は大幅に拡大するものと考えられる。
【0003】
ハード系やセミハード系の熟成型ナチュラルチーズの組織を調整する技術として、チーズブロックを一旦凍結したのち解凍する方法が提案されている(特許文献1)。この方法によれば一定の効果は得られるものの、その目的はチーズブロックをさらに小さく粉砕するのを容易にすることであり、対象も砕かれた小さい不定形のチーズであり、食感に与える効果も小さい。
【0004】
従って、従来のハード系やセミハード系のナチュラルチーズにおいて、水分を増やしたり脂肪を増やしたりして組成を変えたり(ハード系やセミハード系のナチュラルチーズではなくなる)、プロセスチーズにする以外に、食べ易いように食感をもろくするような技術はなかった。
【0005】
一方、ナチュラルチーズブロックをカットして、例えばプリッツェルのように細い棒状の製品にする場合、例えば、チェダーチーズを使用すると折れやすい製品となり、また、ゴーダチーズを使用するとクニャクニャして持ちにくい製品となってしまう。また、チーズをクラッカーのように薄い盤状にカットしたときも、カットされたチーズ同士がくっつきあったり、あるいは割れやすかったりする。従って、細い棒状でも持ちやすく、盤状でも割れにくく、食べやすい形状にナチュラルチーズを調整できれば、ナチュラルチーズを利用するシーンを広げることができる。
【0006】
また、ナチュラルチーズにクミンシードやキャラウェイシードなどの香辛料等の食品を加えることがあるが、ホエイ排出が終了していないカード成形前に添加するため、添加した食品の一部やその風味がホエイに移行しそのホエイは利用価値がなくなる。また、添加するものが高額な場合、カードに取り込まれないロスも問題になる。従って、ホエイを廃棄しなくても香辛料等の食品をナチュラルチーズに添加できる製造法が望まれている。
【0007】
さらには、カルシウムなどの栄養が強化されたナチュラルチーズは市場に存在していない。それはカルシウムはカード形成に大きく影響して製造条件やチーズ物性に大きく影響すること、ホエイへのロスが大きいことなどの理由による。プロセスチーズでは商品化されている栄養強化をナチュラルチーズでも実現できれば、ナチュラルチーズの需要拡大に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−275563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような技術背景のもと、ハード系やセミハード系のナチュラルチーズにおいて、水分を増やしたり脂肪を増やしたりして成分組成を大きく変更することなく、食べ易いように食感をもろくする加工方法を提供することを目的とするものである。
さらには香辛料などの食品やカルシウムなどの栄養強化剤などをナチュラルチーズに添加する場合、添加食品のロスが少なく、ホエイに影響を与えず、カード製造に影響しない製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ハード系やセミハード系のナチュラルチーズは、ミートチョッパーやグラインダーなどで粉砕するとカゼインで構成された組織が壊されるため、口中で組織が崩れやすく食べやすくなる。また、ハード系やセミハード系のナチュラルチーズは、ミートチョッパーなどで粉砕しても、水分に対するたんぱく質含量が高いことから(粘土のように)ある程度の再結着性、再成形性があり、食べやすい適当な大きさや形に比較的容易に再成形することができる。
【0011】
本発明者等は以上のハード系やセミハード系のナチュラルチーズの特性に着目し、鋭意研究の結果、チーズを一旦粉砕した上で、結着剤を添加するかまたは添加せず、圧力をかけて再成形することによって、一定の固体状の形状を維持しながら、口中で砕けやすく食べやすいハード系やセミハード系のナチュラルチーズを提供できることを見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(11)を提供する。
(1) チーズを粉砕し、加圧して再成形することを含むチーズの製造方法。
(2) チーズが特別硬質チーズ、硬質チーズ及び半硬質チーズのうちの1種またはそれ以上を含むことを特徴とする前記(1)に記載のチーズの製造方法。
(3) 粉砕したチーズに結着剤を添加した後に加圧して再成形することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のチーズの製造方法。
(4) 再成形する際の(結着剤を含む)チーズの組成は、水分が52重量%未満であり、たんぱく質と炭水化物の合計含量が18重量%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のチーズの製造方法。
(5) 結着剤が、デキストリン、澱粉、加工澱粉、卵白、卵白粉、ゼラチン、寒天、増粘多糖類、カゼイン、プロセスチーズ、軟質チーズ、ホエイ粉、ホエイたんぱく質濃縮物、ホエイたんぱく質分離物、大豆たんぱく質及びグルテンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(3)又は(4)に記載のチーズの製造方法。
(6) 粉砕したチーズに副原料を加えて混合し、その後で成形することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のチーズの製造方法。
(7) 副原料が食品である前記(6)に記載のチーズの製造方法。
(8) 副原料が栄養強化剤である前記(6)に記載のチーズの製造方法。
(9) チーズを凍結した状態で、チーズの粉砕及び/又は粉砕したチーズと副原料の混合を行うことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載のチーズの製造方法。
(10) 脱気しながら成形することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載のチーズの製造方法。
(11) 前記(1)〜(10)のいずれかに記載のチーズの製造方法で製造されるチーズ。
【発明の効果】
【0013】
ハード系やセミハード系ナチュラルチーズにおいて、固体としてのチーズの組織はカルシウムパラカゼイネートのネットワークで構成されており、このカゼインたんぱく質は水に不溶性であるため、食したときに口中でべたつかないもののごつごつ、ボロボロした食感を苦手とする人は多い。一方、これらナチュラルチーズを原料として、カルシウムをキレートするものとして溶融塩(リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩)を加えて加熱殺菌し、溶融し、乳化したものとしてプロセスチーズがある。プロセスチーズのカゼインたんぱく質は水に可溶性であるため口中でなめらかな口溶けを示すが、口蓋や歯にべたつく食感は好まれていない。
【0014】
本発明によれば、ごつごつした食感のナチュラルチーズを一旦細かく粉砕し、それをプロセスチーズ化するほどの高温に加熱したり溶融塩を加えたりすること無しに、圧着により再成形するため、口中でべたつかず、しかも砕けやすい(口溶けが良い)良好な食感のチーズが得られる。特に硬い食感である脂肪含量の少ない(相対的にたんぱく質含量の高い)チーズや低水分のチーズでも、特徴である組成を大きく変更せず、食べやすい食感に調整できる。
【0015】
また、本発明によれば、加熱溶融しなくても、数種類のチーズを組み合わせることができ、風味や食感の調整も可能である。
【0016】
さらに、場合によっては結着剤として各種安定剤、ゲル化剤、例えば澱粉、卵白等を使用するが、基本的にリン酸塩等の溶融塩を使用しないため健康面でも優れている。加えて、再成形するため、単にナチュラルチーズブロックをカッティングする以上の商品形状の自由度がある。例えば動物の形、星型、ハート型、キャラクターものなど複雑な形状にカットロスなしで成形できる。また、適当な結着剤や賦形剤を添加して再成形することで、細い棒状でも折れにくく、あるいは盤状でも割れにくい、利用しやすく食べやすい形状に調整することができる。
【0017】
通常、香辛料、ハーブ、ナッツ、その他乾燥食品等が添加されたナチュラルチーズを製造する場合、カード成形前に食品を添加してカードと混合しその後成形する。食品添加時、カードは完全にはホエイ排出が終了していない状態なので、ホエイに食品の一部や風味が移行してホエイが利用できないものになってしまう。一方、本発明によれば、食品が添加されたナチュラルチーズを製造してもホエイに影響することがない。また、食品が高価なものでもロスがなくチーズ中に取り込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用するチーズはナチュラルチーズであり、特別硬質チーズ、硬質チーズ及び半硬質チーズからなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでいることが好ましい。
ここで、特別硬質チーズの例としては、パルメザンチーズやグラナチーズ等が挙げられる。
また、硬質チーズの例としては、ゴーダチーズ、エダムチーズ、エメンタールチーズ、チェダーチーズ等が挙げられる。
さらに、半硬質チーズの例としては、ポールデュサリュ、セントポーリン、ブリックチーズ、ロックフォールチーズ、等が挙げられる。
【0019】
本発明で使用するチーズは、結着剤を含めた組成において、水分が52重量%未満であり、たんぱく質と炭水化物の合計含量が18重量%以上であることが好ましく、より好ましくは水分が48重量%以下、たんぱく質と炭水化物の合計重量が21重量%以上であり、さらに好ましくは水分が45重量%以下、たんぱく質と炭水化物の合計重量が24重量%以上である。それは水分が多かったりたんぱく質と炭水化物の合計含量が少ない場合はチーズ自身が軟らかく、当該技術を適用した効果が小さいこと、また一定量以上のたんぱく質や炭水化物がないと再結着性が得がたいためである。
【0021】
また、チーズの成分を調整するために、低脂肪チーズ、脱脂チーズなどの脂肪の少ないチーズや、逆にクリームチーズなどの脂肪の多いチーズを組み合わせることができる。パルメザンチーズ、乾燥した粉チーズなどの水分の低いチーズとクリームチーズ、カマンベール、クワルク、カッテージなど水分の多いチーズを組み合わせることもできる。ナチュラルチーズだけでなく、一部にプロセスチーズを使用して結着性と食感を調整することもできる。
【0022】
ただし上記範囲外の水分、たんぱく質含量であっても、結着剤によって再結着性を補うことができる。
結着剤としてはたんぱく質主体のもの、あるいは炭水化物主体のものが考えられる。具体的には、デキストリン、澱粉(加工澱粉を含む)、卵白、卵白粉、ゼラチン、寒天、増粘多糖類(ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、トラガントガム、タマリンドシードガム、ペクチン、アラビアガム、カードラン、タラガム、ジェランガム、CMC、アルギン酸ナトリウム、プルランなど)、カゼイン、プロセスチーズ、クリームチーズやカマンベールチーズなどの軟質チーズ、ホエイ粉、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質分離物、大豆タンパク質、グルテンなどが例示される。
それらを単独、または組み合わせて、粉末のまま、あるいは水溶液にして粉砕したチーズに混合する。混合及び分散が良好にいくように、これら結着剤を添加するに当たって、油脂やデキストリンを分散媒として使用しても良い。
【0023】
本発明のチーズの製造方法は、チーズを粉砕し、加圧して再成形することを含むものである。
【0024】
本発明によれば、まずチーズを適宜な装置によって粉砕する。チーズを粉砕する装置としては、ミートチョッパーなどの各種チョッパー、フローズンカッター、サイレントカッターなどの各種カッター、カッターミル、フェザーミルなどの各種ミル、グラインダー、コミトロールなどが利用できる。細かく粉砕するほど口溶けは良くなる。例えばミートチョッパーの目皿の穴として、6.5mmφ→4.8mmφ→3mmφと小さくするほど、再成形したチーズの口溶けは良い。
【0025】
つづいて、粉砕したチーズに、必要に応じて上述の結着剤を添加し、また必要に応じて副原料を添加して混合した後、加圧して再成形する。ここで、加圧して再成形するための装置としては、各種打錠機、加圧成形機、寿司ロボット、海苔巻きロボット、エクストルーダーによる押し出し成形機などが利用できる。
【0026】
ここで、本発明において再成形する際の加圧の条件は、使用するチーズの種類や分量、必要に応じて添加される結着剤や副原料の種類や分量、また、得られる製品に求められる保形性や食感などの特性等により適宜選択されるものであり、特に限定されるものではないが、概ね10〜200g/cm
2の圧力を用いることが好ましく、20〜100g/cm
2の圧力を用いることがさらに好ましい。
【0027】
また、粉砕したチーズに必要に応じて添加、混合される副原料としては、食品や栄養強化剤などが挙げられる。
ここで、副原料としての食品としては、例えば、香辛料、ハーブ、ナッツ、その他の乾燥食品等が例示される。
香辛料の具体例としては、クミンシード、キャラウェイシード、ペッパー、パプリカ等が挙げられる。
ハーブの具体例としては、バジル、パセリ等が挙げられる。
ナッツの具体例としては、アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ピーナッツ等が挙げられる。
また、栄養強化剤としては、カルシウム剤、鉄剤、ビタミン剤等が例示される。
【0028】
本発明は基本的には溶融塩を使用しないし、加熱溶融もしない。ただし結着性の調整のため、リン酸塩、クエン酸塩等の溶融塩を使用することはできるし、多少の加温も可能である。但し本発明の食感上の利点を損なわないためには、溶融塩は少量の方が良く、加温したとしても50℃以下が好ましい。またチーズを粉砕し、粉砕したチーズと副原料を混合するに当たって、粉砕装置や混合装置によっては、装置内部にべたつかないようにチーズを凍結した状態で粉砕、混合することが好ましい。
【0029】
一旦粉砕したチーズは粒状になるので、砕けたチーズを集めて再成形する際に内部に空隙を生じる。この空隙に酸素がある場合、再成形したチーズにカビが生えることがある。粉砕し再成形したチーズに商品として数ヶ月の賞味期間を持たせたい場合、内部に酸素の無い密封包装にする必要がある。包装形態として、ガス置換包装、脱酸素剤内封包装が考えられるが、安価なガス置換包装においては、成形されたチーズ内部に酸素が残らないよう成形中に脱気することにより、製品の保存性を高めることができる。
(試験例)
【0030】
本発明を使用した再成形後のチーズの硬度と粉砕前のチーズの硬度を比較した一例を以下に示す。
・試供チーズ:オーストラリアチェダーチーズ(6ヶ月熟成品)。
・針入硬度測定時チーズ品温:10℃
・針入硬度測定時チーズ形状:28mm×43mm×15mm
・チーズ粉砕:目皿(穴直径4.8mmφ)を使用してミートチョッパーで粉砕
・チーズ成形:28mm×43mmの底面の型に粉砕したチーズを入れ、上から金具で75g/cm
2の圧力をかけて成形する。
・針入硬度測定
レオメーター(不動工業(株)社製)を使用
プランジャー:直径3mmの棒型プランジャー
試料台上昇速度:2.5mm/sec
降伏点までの応力を針入硬度とする。
粉砕前チーズの針入硬度:583g
再成形後チーズの針入硬度:357g
試作サンプルを試食すると、再成形チーズは形状はしっかりしているが歯ざわりも柔らかく口の中で砕けやすく食べやすいものであった(相対的に粉砕前チーズはゴツゴツして硬く、食べにくかった。)。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
凍結したゴーダチーズ5kgとチェダーチーズ5kgをフローズンカッターで粉砕した。両者合わせたチーズの組成は水分38重量%、脂肪含量31重量%、たんぱく質含量26重量%である。そこに卵白粉50gとデキストリン50gを加えて良く混合し、室温に戻した後、簡易型打錠成形機を使用して2cm×4cm×1.5cmの直方体に成形し冷却した。直方体のチーズは50個試作された。その直方体のチーズは手で持っても形をしっかり維持していたが、食べると口中で崩れやすく、口溶けが良く、しかもべとつかず、良好な食感であった。
【0033】
[実施例2]
ゴーダチーズ8kgとプロセスチーズ2kgをミートチョッパー(目皿穴4.8mmφ)で粉砕したのち良く混合し、簡易型打錠成形機を使用して2cm×4cm×1.5cmの直方体に成形し冷却した。直方体のチーズは50個試作された。合わせたチーズの組成は水分41重量%、脂肪含量28重量%、たんぱく質含量26重量%である。その直方体のチーズは手で持っても形をしっかり維持していたが、食べると口中で崩れやすく、口溶けが良く、しかもべとつかず、良好な食感であった。
【0034】
[実施例3]
チェダーチーズ9kgをミートチョッパー(目皿穴3mmφ)で粉砕し、粉チーズ1kgと良く混合し、簡易型打錠成形機を使用して直径3cm、厚さ7mmの円盤状に成形した。円盤状チーズは50個試作された。両者合わせたチーズの組成は水分33重量%、脂肪含量35重量%、たんぱく質含量26重量%である。その円盤状チーズは手で持っても形をしっかり維持していたが、食べると口中で崩れやすく、口溶けが良く、しかもべとつかず、良好な食感であった。
【0035】
[実施例4]
チェダーチーズ10kgをミートチョッパー(目皿穴3mmφ)で粉砕し、アーモンドクラッシュを450g添加してよく混合し、寿司ロボットを使用して2cm×2cm×5cmの直方体に成形した。直方体のチーズは50個試作された。試作チーズの組成は水分33重量%、脂肪含量33重量%、たんぱく質含量25重量%である。その直方体チーズは手で持っても形をしっかり維持していたが、食べると口中で崩れやすく、口溶けが良く、しかもべとつかず、アーモンド風味と良くマッチした良好な風味・食感であった。
【0036】
[実施例5]
チェダーチーズ10kgをミートチョッパー(目皿穴3mmφ)で粉砕し、カルシウム強化剤として乳清カルシウム250gを加えて良く混合し、寿司ロボットを使用して2cm×2cm×5cmの直方体に成形した。直方体のチーズは50個試作された。試作チーズの組成は水分34重量%、脂肪含量32重量%、たんぱく質含量25重量%であり、カルシウム含量はもとのチェダーチーズが680mg%であるのに対し試作品のカルシウム含量は1100mg%で約1.6倍にカルシウム強化されていた。その直方体チーズは手で持っても形をしっかり維持していたが、食べると口中で崩れやすく、口溶けが良く、しかもべとつかず、良好な食感であった。
【0037】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2008年7月17日付けで出願された日本特許出願(特願2008−186323)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、口溶け、食感が飛躍的に改善されたチーズ類が得られた。また本発明により、リン過剰摂取に配慮したチーズ類の製造方法を提供することもできるし、ナチュラルチーズでありながら形状がバラエティに富んだ商品も提供できるし、香辛料、ナッツ等の風味物質の添加も容易にできる。またカルシウムなどの栄養成分を強化したチーズもホエイへの流出による添加成分歩留まりの低下や、カード性状への影響を気にせずに生産できる。