【文献】
NCBI, Influenza A virus (St Jude H5N1 influenza seed virus 163222) hemagglutinin (HA) gene, complete cds,01-DEC-2008, [検索日:2015年9月7日],Accession No. DQ659327 ,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/DQ659327
【文献】
NCBI, Influenza A virus (A/California/07/2009(H1N1)) segment 4 hemagglutinin (HA) gene, complete cds,Accession No.FJ969540 ,01-JUN-2009,[検索日:2015年9月7日],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/FJ969540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる組換えワクシニアウイルス及びその用途について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。なお、本明細書において引用した特許文献、非特許文献その他の刊行物は、参照として本明細書に組み込まれるものとする。
【0016】
1.本発明の概要
各種ワクチンの中でも、生ワクチンは特に有効なものの一つであるが、一般に、新興ウイルスの弱毒性ワクチンを開発するには非常に長い期間が必要となることが知られており、このことは新型インフルエンザに関しても同様であるといえる。
【0017】
このような場合に採られる手法の一つとして、生ワクチンとして組換えワクシニアウイルス(RVV)を作製するという遺伝子工学的手法が知られている。RVVの作製に用いる組換え母体となるワクシニアウイルスとしては、安全性の確立されているワクチン株である必要があるが、そのようなワクチン株として、ワクシニアウイルスDIs株がある。ワクシニアウイルスDIs株は、ワクシニアウイルス大連株(DEI株)を鶏卵胚にて継代培養することによって分離された高度に弱毒化したワクシニアウイルス株であり(Tagaya I, et al., A new mutant of dermovaccinia virus. Nature, 1961, vol. 192, p. 1187-1188)、ニワトリ胎児繊維芽細胞(CEF)では増殖できるが、他の哺乳動物細胞内では非増殖性であり、安全性が高い。そのため、免疫不全又は免疫抑制者へ接種させた場合にも安全性が担保される可能性が高く、また接種痕もできないなどの長所を有する組換えインフルエンザ生ワクチンの開発が可能となる。そこで、このDIs株を母体として用いた組換え新型インフルエンザワクチンを樹立し、急激な新型インフルエンザの流行に対して、単回接種かつ短期間で有効性を示す新規ワクチンによる予防及び治療法の確立を目指した。
【0018】
その結果、H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1 HPAIV)又はH1N1パンデミックインフルエンザウイルス(H1N1(2009) pdm)のヘマグルチニン(HA)タンパク質をコードする遺伝子を、発現プロモーターとともにワクシニアウイルスDIs株に組み込むことにより、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdm由来HAタンパク質を発現する組換えワクシニアウイルスを作製することに成功したものである。詳しくは、ワクシニアウイルスDIs株のゲノム中に、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質をコードするcDNA(当該cDNAの全部又は一部)が組み込まれたものが、本発明の組換えワクシニアウイルスである。H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質をコードするcDNA(当該cDNAの全部又は一部)をそれぞれ発現ユニットとし、それぞれワクシニアウイルスベクターに導入した。この発現ユニットをワクシニアウイルスDIs株のHA遺伝子領域に導入した。HA遺伝子領域に外来遺伝子を導入してもワクシニアウイルスの増殖活性には影響を与えないので増殖能の弱い安全なワクチン株を組換え母体ウイルスとして使用することができる(Vaccine, vol. 12, p. 675-681, 1994 参照)。
【0019】
作製したDIs株由来組換えワクシニアウイルスは、ニワトリ胚繊維芽細胞に感染させることにより、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質を十分量発現することが確認され、また動物個体に接種することでH5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質に対する高力価の抗体が早期に産生することが併せて確認され、本発明を完成した。
【0020】
2.新型インフルエンザウイルスのHAタンパク質遺伝子を有する組換えワクシニアウイルスの作製
H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子は、すでに米国生物工学情報センター(NCBI; National Center for Biotechnology Information)により提供されるGenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)において、所定のアクセッション番号(Accession No.)により登録されている。例えば、GenBankアクセッション番号:EF541402に、H5N1 HPAIVのクレード1(H5亜型クレード1に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA:配列番号1)が登録され、GenBankアクセッション番号:EF541394に、H5N1 HPAIVのクレード2.1(H5亜型クレード2.1に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA:配列番号2)が登録され、GenBankアクセッション番号:DQ371928に、H5N1 HPAIVのクレード2.3(H5亜型クレード2.3に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA:配列番号4)が登録されている。また、GenBankアクセッション番号:FJ969540に、H1N1(2009) pdm(H1亜型に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA:配列番号5)が登録されている。
【0021】
本発明の組換えワクシニアウイルスに含まれるHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA)としては、上記各遺伝子のほか、その一部やその変異配列も用いることができる。例えば、H5N1 HPAIVのクレード1のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA)としては、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAの一部を欠損させたDNA(具体的には、配列番号9に示される塩基配列からなるDNA)、H5N1 HPAIVのクレード2.1のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA)としては、配列番号2に示される塩基配列からなるDNAの一部を欠損させたDNA(具体的には、配列番号10に示される塩基配列からなるDNA)、H5N1 HPAIVのクレード2.3のHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA)としては、配列番号4に示される塩基配列からなるDNAの一部を欠損させたDNA(具体的には、配列番号11に示される塩基配列からなるDNA)を用いることができる。また、H1N1(2009) pdmのHAタンパク質をコードする遺伝子(cDNA)としては、配列番号5に示される塩基配列からなるDNAの一部の塩基を変異(置換変異)させたDNA(具体的には、配列番号12に示される塩基配列からなるDNA)を用いることができる。なお、H5N1 HPAIVのクレード2.2(H5亜型クレード2.2に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子に関しては、当該遺伝子(cDNA)の一部を欠損させた遺伝子(cDNA:配列番号3)が、GenBankアクセッション番号:DQ659327に登録されている。
【0022】
これらHAタンパク質遺伝子(一部欠損・変異させた遺伝子も含む)は、すでにクローニングされ、プラスミドに挿入されている。従って、本発明の組換えワクシニアウイルスに含まれる遺伝子、すなわちH5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質をコードするcDNAの全部(変異配列も含む)又はその一部は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、遺伝子工学的手法として一般的に用いられているDNA合成装置を用いた核酸合成法を使用することができる。また、鋳型となる遺伝子配列を単離又は合成した後に、それぞれの遺伝子に特異的なプライマーを設計し、PCR装置を用いてその遺伝子配列を増幅するPCR法、又はクローニングベクターを用いた遺伝子増幅法を用いることができる。上記方法は、「Moleculer cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等を参照して行うことができる。得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。また、変異配列、特に変異置換型のDNAについては、例えば、上記「Moleculer cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」や「Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)」等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、当該キットとしては、例えば、QuickChange
TM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailor
TM Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、上記プラスミドに挿入されているH5N1 HPAIVのHAタンパク質遺伝子又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子を、上記PCRの鋳型に用いることができる。そして、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子のcDNAを鋳型とし、各遺伝子特異的なプライマーを用いてPCRを行うことにより、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子領域を調製することができる。本発明においては、H5N1 HPAIVのクレード1(H5亜型クレード1に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子として、配列番号9に示す塩基配列からなるDNAによりコードされる遺伝子を「mCl 1」と称し、H5N1 HPAIVのクレード2.1(H5亜型クレード2.1に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子として、配列番号10に示す塩基配列からなるDNAによりコードされる遺伝子を「mCl 2.1」と称し、H5N1 HPAIVのクレード2.2(H5亜型クレード2.2に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子として、配列番号3に示す塩基配列からなるDNAによりコードされる遺伝子を「mCl 2.2」と称し、H5N1 HPAIVのクレード2.3(H5亜型クレード2.3に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子として、配列番号11に示す塩基配列からなるDNAによりコードされる遺伝子を「mCl 2.3」と称し、H1N1(2009) pdm(H1亜型に属するウイルス株)由来のHAタンパク質をコードする遺伝子として、配列番号12に示す塩基配列からなるDNAによりコードされる遺伝子を「mIVR153」と称する。
【0024】
本発明においては、配列番号1〜5及び9〜12に示される塩基配列からなるDNAのほか、以下の各DNAも、上記各HAタンパク質遺伝子(例えばmCl 1、mCl 2.1、mCl 2.2、mCl 2.3及びmIVR153等)のDNAとして使用することができる。
配列番号1に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード1由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)。
配列番号9に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード1由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl 1の変異型DNA)。
配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.1由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)。
【0025】
配列番号10に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.1由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl 2.1の変異型DNA)。
配列番号3に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.2由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl 2.2の変異型DNA)。
配列番号4に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.3由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)。
配列番号11に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.3由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl 2.3の変異型DNA)。
【0026】
配列番号5に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H1N1(2009) pdm由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)。
配列番号12に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、H1N1(2009) pdm由来のHAタンパク質をコードするDNA(mIVR153の変異型DNA)。
【0027】
上記の各変異型DNAは、化学合成により得ることができ、あるいは、配列番号1〜5及び9〜12に示される塩基配列からなるDNA又はその断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることもできる。上記ハイブリダイゼーションにおけるストリンジェントな条件としては、例えば、0.1×SSC〜10×SSC、0.1%〜1.0%SDS及び20℃〜80℃の条件が挙げられ、より詳細には、37℃〜56℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを行った後、0.1×SSC、0.1%SDS中、室温で10〜20分の洗浄を1〜3回行う条件が挙げられる。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press (1989))等を参照することができる。
【0028】
また、配列番号1に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード1由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)、配列番号9に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード1由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl1の変異型DNA)、配列番号2に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.1由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)、配列番号10に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.1由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl2.1の変異型DNA)、配列番号3に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.2由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl2.2の変異型DNA)、配列番号4に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.3由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)、配列番号11に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H5N1 HPAIVのクレード2.3由来のHAタンパク質をコードするDNA(mCl2.3の変異型DNA)、配列番号5に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H1N1(2009) pdm由来のHAタンパク質をコードするDNA(変異型DNA)配列番号12に示す塩基配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の相同性を有し、かつ、H1N1(2009) pdm由来のHAタンパク質をコードするDNA(mIVR153の変異型DNA)を用いることができる。
【0029】
本発明の組換えワクシニアウイルスに含まれる発現プロモーターは、ワクシニアウイルスのヘマグルチニン(HA)遺伝子領域内に挿入されるものであればよく、限定はされず、例えば、ワクシニアウイルスプロモーターmH5等が挙げられる。また、当該発現プロモーターとしては、例えば、ポックスウイルスA型封入体(ATI)プロモーター及び複数反復するワクシニアウイルス7.5 kDaタンパク質(p7.5)前期発現プロモーターにより構成されるハイブリットプロモーターを用いることもできる。このプロモーターは、適当なプラスミドに連結することができ、例えばpBMSF7Cが知られている(Arch. Virol. vol. 138, p. 315-330, 1994;特開平6-237773号公報 参照)。
本発明において使用可能なハイブリッドプロモーターの塩基配列を配列番号6に示す。但し、本発明においては、配列番号6に示す塩基配列からなるDNAのほか、配列番号6に示す塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロモーター活性を有するDNAも、発現プロモーター(特にハイブリッドプロモーター)として使用することができる。「ストリンジェントな条件」は前記と同様である。「プロモーター活性を有する」とは、構造タンパク質又は非構造タンパク質をコードする遺伝子の転写活性を有することを意味する。上記ハイブリットプロモーターにより発現されるタンパク質は、ワクシニアウイルス感染前期から後期まで完全な糖修飾を受けた形で大量に発現することができる。
【0030】
上記発現プロモーター及びHAタンパク質をコードするDNAを挿入して得られたプラスミドベクターを、宿主であるワクシニアウイルスに導入することで、組換えワクシニアウイルスを作製することができる。プラスミドベクターの宿主への導入は、公知の任意の手法を採用することができ、例えば弱毒ワクシニアウイルスDIs株を感染した動物細胞中に得られたプラスミドベクターを導入することにより、ワクシニアウイルスのヘマグルチニン(HA)遺伝子領域において相同組換えを引き起こし、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子をそれぞれ発現する組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153)を作製することができる。
【0031】
作製したDIs株由来の組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153)は、ワクシニアウイルスのHAタンパク質遺伝子領域にH5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子が挿入されるため、ワクシニアウイルス由来のHAタンパク質の発現が欠如する。インフルエンザウイルス由来のHAタンパク質は、モルモット赤血球に対して凝集反応を示すが、ワクシニアウイルス由来のHAタンパク質はモルモット赤血球に対して凝集反応を起こさない。従って、rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153を動物細胞に感染させ、これにより形成するプラークへのモルモット赤血球の凝集反応を指標にして、RVVのスクリーニングを行う。目的のRVVは、赤血球凝集活性を持つレッドプラークを選別すればよい。
【0032】
レッドプラークより得られたウイルスは、ウイルスゲノムを鋳型としてH5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子特異的なプライマーによりPCRを行い、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子の導入を確認することができる。
H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質の発現は、rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153を感染させた後の動物細胞をサンプルとして、ウエスタンブロット法により確認することができる。なお、抗体は、H5N1 HPAIVのHAタンパク質由来のHAペプチド(a.a. 198-217(配列番号7)等)、又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質由来のHAペプチド(a.a. 223-234(配列番号8)等)を免疫して作製したウサギ抗血清を用いることができる。
【0033】
RVVの作製において目的遺伝子の挿入部位としては、HAタンパク質遺伝子領域以外として、一般にはチミジンキナーゼ(TK)遺伝子領域が用いられるが、TK遺伝子領域に目的遺伝子を挿入することによるTKの発現欠損によりRVVの増殖性が低下することが知られている。一方、HAタンパク質発現欠損によるRVVの増殖性はほとんど影響がないことが報告されている(Vaccine, vol. 12, p. 675-681, 1994 参照)。従って、本発明においては、目的遺伝子の挿入部位としてHAタンパク質遺伝子領域が好ましい。
【0034】
3.新型インフルエンザの予防用及び治療用医薬組成物
本発明は、DIs株由来の上記組換えワクシニアウイルスを含む、新型インフルエンザ(すなわちH5N1高病原性鳥インフルエンザ及びH1N1パンデミックインフルエンザ)の予防薬及び治療薬(予防用及び治療用医薬組成物)を提供する。また本発明は、上記組換えワクシニアウイルスを患者(被験者)に投与することを含む、上記新型インフルエンザの予防及び治療方法や、上記新型インフルエンザの予防及び治療のための上記組換えワクシニアウイルスの使用や、上記新型インフルエンザの予防薬及び治療薬を製造するための上記組換えワクシニアウイルスの使用等も提供することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、あらゆる公知の方法、例えば、筋肉、腹腔内、皮内又は皮下等の注射、あるいは鼻腔、口腔又は肺からの吸入、経口投与により生体に導入することができる。さらに、本発明の医薬組成物に含まれる組換えワクシニアウイルスと、既存の抗ウイルス薬(例えば、タミフル、リレンザ)を併用することも可能である。併用の態様は特に限定されるものではなく、本発明の組換えワクシニアウイルスと既存の抗ウイルス薬とを同時に投与することもでき、また、一方を投与後、一定時間経過後に他方を投与する方法により生体に導入することもできる。
【0036】
また本発明の医薬組成物は、さらにインターロイキン-15タンパク質(hIL-15)遺伝子(GenBankアクセッション番号:U14407、塩基配列:配列番号13、アミノ酸配列:配列番号14)を有するDIs株由来の組換えワクシニアウイルスを合わせて含んでいてもよい。あるいは、本発明の医薬組成物は、hIL-15をコードするcDNAを含む組換えワクシニアウイルス(好ましくはDIs株由来の組換えワクシニアウイルス)と共に使用される(投与又は接種される)ものであってもよい。本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153)と、上記のhIL-15遺伝子を有する組換えワクシニアウイルス(好ましくはDIs株由来の組換えワクシニアウイルス)とを併用接種することにより、本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルスのみ接種する場合に比べて、免疫増強効果や感染防御能増強効果等の効果が得られ、具体的には、例えば、本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルスの接種量が少ない場合でも当該効果が十分に得られたり、本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルスのみの接種よりも早期に免疫増強効果が得られるなどの併用効果がある。
【0037】
よって、本発明は、本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルスと上記hIL-15をコードするcDNAを含む組換えワクシニアウイルスとを患者(被験者)に投与することを含む、新型インフルエンザ(すなわちH5N1高病原性鳥インフルエンザ及びH1N1パンデミックインフルエンザ)の予防及び治療方法や、上記新型インフルエンザの予防及び治療のための本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルス及び上記hIL-15をコードするcDNAを含む組換えワクシニアウイルスの使用や、上記新型インフルエンザの予防薬及び治療薬を製造するための本発明のDIs株由来の組換えワクシニアウイルス及び上記hIL-15をコードするcDNAを含む組換えワクシニアウイルスの使用等も提供することができる。
【0038】
本発明の医薬組成物は、賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤等公知の薬学的に許容される担体、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等と混合することができる。
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤等の経口投与剤、注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤等の非経口投与剤などの形態に応じて、経口投与又は非経口投与することができる。好ましくは、皮内、筋肉、腹腔等への局部注射等が例示される。
【0039】
投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象、患者の年齢、体重、性別、症状その他の条件により適宜選択されるが、ウイルスの一日投与量としては、経口の場合は1000〜1000000000 PFU(plaque forming units)程度、好ましくは100000〜100000000 PFU程度であり、非経口の場合は100〜1000000000 PFU程度、好ましくは1000〜100000000 PFU程度である。ウイルスは、1日1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。なお、前述したhIL-15遺伝子を有するDIs株由来の組換えワクシニアウイルスとの併用接種の場合についても、ウイルスの一日投与量及び投与回数は上記と同様に設定することができる。
【0040】
本発明の組換えワクシニアウイルスは、新型インフルエンザ予防用及び治療用ワクチンとして使用される。また、これまでに、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmに対するワクチンの開発では、H5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmに対する抗体と細胞障害性T細胞(CTL)に着目した研究が行われている。従って、予めワクチンとしての抗体価又は細胞性免疫活性を測定しておくことが好ましい。
【0041】
例えば、作製した組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153)又は親株であるDIs株に対する抗体価は、これらのウイルス株をマウスに接種後、経時的に血清を回収し、血清のH5N1 HPAIV又はH1N1(2009) pdmのHAタンパク質遺伝子に対するELISA価を測定することで得ることができる。rDIs/mCl2.2やrDIs/mCl2.3を接種したマウスの血清では、接種1週後からH5N1 HPAIVのHAタンパク質に対する抗体価の上昇が認められ、rDIs/mIVR153を接種したマウスの血清は、接種1週後からH1N1(2009) pdmのHAタンパク質に対する抗体価の上昇が認められる。
以上のとおり、本発明者らが作製した組換えワクシニアウイルスは、新型インフルエンザに対する液性免疫を誘導し得るものである。
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0043】
<方法>
1) インフルエンザウイルスヘマグルチニンタンパク質遺伝子を導入したDIs株由来組換えワクシニアウイルスの作製
ワクシニアウイルスプロモーターmH5配列の下流に人工合成したH5N1 HPAIV及びH1N1(2009)pdmの抗原であるヘマグルチニンタンパク質(HA)遺伝子を連結させ、相同組換え用プラスミドベクターへ挿入した(
図1)。この際、H5N1亜型HA配列を挿入する場合には、制限酵素部位としてHind III部位を使用し、H1N1亜型HA配列を挿入する場合には、MluI部位を使用した。予めDIs株を感染させておいたCEFへ作製した相同組換え用プラスミドベクター(制限酵素により一箇所切断し、線状化した。)を遺伝子導入することによって、DIs株の遺伝子欠損部位の隣接領域にて相同組換えを起こさせてワクシニアウイルスのゲノム中にmH5プロモーター及びインフルエンザウイルスHAタンパク質遺伝子を挿入した組換えワクシニアウイルス(RVV)、具体的には、rDIs/mCl1、rDIs/mCl2.1、rDIs/mCl2.2、rDIs/mCl2.3及びrDIs/mIVR153の各種RVVを作出した。インフルエンザウイルス由来のHAタンパク質は、モルモット赤血球に対して凝集反応を示すが、ワクシニアウイルス由来のHAタンパク質はモルモット赤血球に対して凝集反応を起こさない。従って、上記組換えウイルスをCEFに感染させ、これにより形成するプラークへのモルモット赤血球の凝集反応を指標にして、RVVのスクリーニングを行った。目的の組換えウイルスは、赤血球凝集活性を持つレッドプラークを形成するものを選別した。
【0044】
ヒトインターロイキン15(hIL-15)遺伝子発現組換えDIs株の作製は、ワクシニアウイルスプロモーターmH5配列の下流にhIL-15遺伝子をつなぎ、相同組換え用ベクターへ挿入した(
図2)。予めrDIs/mIVR153を感染させておいたCEFへ作製した相同組換え用プラスミドベクター(制限酵素により一箇所切断し、線状化した。)を遺伝子導入することによって、DIs株の遺伝子欠損部位の隣接領域にて相同組換えを起こさせてワクシニアウイルスのゲノム中にmH5プロモーター及びhIL-15遺伝子を挿入した組換えウイルス(rDIs/hIL-15)を作出した。インフルエンザウイルス由来のHAタンパク質は、モルモット赤血球に対して凝集反応を示すが、rDIs/hIL-15はモルモット赤血球に対して凝集反応を起こさないことから、赤血球凝集能を持たないホワイトプラークを選別した。
【0045】
2) DIs株由来組換えワクシニアウイルスによるインフルエンザウイルスHAタンパク質の発現確認
作製したDIs株由来の組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl2.2及びrDIs/mIVR153)を、ウイルス感染価(multiplicity of infection)10でCEFに感染させた。感染24時間後に、培地を除去し、PBS(-)で2回洗浄した。可溶化液を加えて、細胞可溶化液を調製した。細胞可溶化液中に含まれるタンパク質量を3〜30μgでSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行い、PVDF膜へ転写した。それぞれのRVV感染によるインフルエンザウイルスタンパク質発現の確認は、H1N1(2009)pdmに対しては、一次抗体にウサギ抗インフルエンザウイルスHAペプチド(Pep20)抗血清及び二次抗体にヒツジ抗ウサギIgG抗体-HRPOを使用した。H5N1 HPAIVに対しては、一次抗体にウサギ抗インフルエンザウイルスHAペプチド(Pep10)抗血清及び二次抗体にヒツジ抗ウサギIgG抗体-HRPOを使用した。Millipore社製発色試薬(Millipore;Immobilon western)を使用した。
【0046】
3) マウスへのRVV接種実験
各々の組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl2.2及びrDIs/mIVR153)を1x10
6 PFUまたは1x10
7PFUでマウスの背部皮内へ接種した。接種から3週間後に採血を行い、それぞれH1N1(2009)pdmまたはH5N1 mCL2.2のインフルエンザウイルスHA抗原に対する抗体産生能をELISA法により評価した。H5N1用RVVでは、hIL-15発現RVV(rDIs/hIL-15)との併用接種も行った。
【0047】
4) インフルエンザウイルス攻撃感染に対する防御効果の検討
各々の組換えワクシニアウイルス(rDIs/mCl2.2及びrDIs/mIVR153)の接種(ワクチン接種)から5週間後にインフルエンザウイルスの攻撃感染を行い、連日体重測定を行った後に剖検し、肺組織サンプル採取と採血を行った。(H1N1(2009)pdm感染実験では、感染から9日後に剖検を行い、H5N1 HPAIV(クレード2.3)感染実験では、感染から11日後に剖検を行った。)
【0048】
5) 病理所見
採取した肺組織を10%緩衝ホルマリン溶液に浸漬して、ウイルス不活化と組織固定を行った後、組織のパラフィンブロックを作製した。4μmの薄切を作製し、スライドガラスに張り付けた後、ヘマトキシリンとエオジン染色を行った。
【0049】
<結果>
作製したRVV(rDIs/mCl2.2及びrDIs/mIVR153)によるインフルエンザウイルスHAタンパク質発現を確認した。H1N1(2009)pdmのHAタンパク質、H5N1HPAIVのHAタンパク質ともに電気泳動に使用した細胞可溶化液のタンパク質量に依存して発現量が増加した(
図3)。
【0050】
次に、H1N1(2009)pdm用RVV(rDIs/mIVR153)をBALB/cマウスの背部に接種し、免疫誘導効果の検討を行った。その結果、RVV接種量に依存して、H1N1(2009)pdm HAタンパク質特異的な抗体産生が認められた(
図4A、
図4B)。そこで、このRVV接種マウスにH1N1(2009)pdmによる攻撃感染をし、感染防御効果を検討した。1x10
6 PFU、1x10
7 PFUのRVVを接種したマウスは、いずれもインフルエンザウイルスによる攻撃感染後速やかに体重が回復したのに対して、コントロール群(mH5プロモーター配列は相同組換えにより挿入されているがインフルエンザウイルスHA遺伝子は挿入されていないDIs株(DIs/Empty)を接種したマウス群)では、感染9日後においても約20%程度の体重減少が認められた(
図4C)。この時の肺病理所見をHE染色により解析したところ、コントロール群(DIs/Empty)では、炎症性細胞の浸潤や間質部分の肥厚化といった局所的な肺炎が認められたのに対して、1x10
6 PFU、1x10
7 PFUのRVVを接種したマウスは、いずれも肺胞腔はしっかりと維持されており、肺炎が顕著に軽減されていることが判明した(
図5)。
【0051】
他方、H5N1 HPAIV用RVV(rDIs/mCl2.2)では、1x10
7 PFU量で接種した群において、H5N1 HPAIV HAタンパク質に対する特異的抗体の誘導が確認された(
図6A、
図6B)。RVV接種から5週後にH5N1 HPAIV(クレード2.3)による攻撃感染を行ったところ、1x10
7 PFU接種群では、インフルエンザウイルス感染後に速やかな体重の回復と100%の生存率を示した(
図6C)。また、コントロール群(DIs/Empty)では、著しい体重減少と100%の致死性を示した。さらに、感染11日後の肺病理所見からも、1x10
7 PFU接種群では、肺炎の顕著な軽減が認められた(
図7)。
【0052】
次に、宿主に内因的に産生される免疫増強因子の一つであり、免疫応答の担当細胞であるナチュラルキラー細胞、B細胞、T細胞の増殖・分化に効果を示すだけでなく、長期免疫記憶に重要である記憶T細胞の維持にも重要であることが報告されているヒトインターロイキン-15(hIL-15)(
図8)を発現するDIs株由来RVV(rDIs/hIL-15)と、H5N1 HPAIV用RVV(rDIs/mCl2.2)とを併用接種した(
図9A)。その結果、1x10
6 PFU量のH5N1 HPAIV用RVV接種群では、rDIs/hIL-15を併用接種することで、1x10
7 PFU接種群と同等にまでH5N1 HPAIV HAタンパク質に対する特異的抗体を産生できることが認められた(
図9B)。
【0053】
H5N1 HPAIV攻撃感染後の体重減少と生存率においても、1x10
6 PFU量のH5N1 HPAIV用RVV(rDIs/mCl2.2)とrDIs/hIL-15との併用接種群では、速やかな体重の回復と100%の生存率が認められた(
図10)。肺病理所見においても、当該併用接種群では、顕著な肺炎軽減効果が示され、間質細胞の肥厚化やリンパ球などの免疫担当細胞肺胞腔や間質部分への著しい浸潤、粘液の滲出など重篤な肺炎像といった肺炎病理は顕著に軽減されていた(
図11)。
【0054】
<考察>
インフルエンザウイルスHAタンパク質遺伝子を発現するDIs株由来RVVは、H1N1(2009)pdm用ワクチン(rDIs/mIVR153)としては、1x10
6 PFUの単回接種にて十分なワクチン効果を示すことが判明した。他方、H5N1 HPAIV用ワクチン(rDIs/mCl2.2)としては、1x10
7 PFU量のRVVを単回接種することで、致死性のH5N1 HAPIV攻撃感染に対しても速やかな体重回復と100%の生存率を示した。よって、DIs株由来RVVは、H1N1(2009)pdm用ワクチン及びH5N1 HPAIV用ワクチンのいずれのワクチンとしても十分な効果を有するものである。さらに、本実施例においては、全粒子不活化ワクチンでは困難であった、ワクチンとは異なるクレードのウイルス株の攻撃感染(ワクチンがクレード2.2、攻撃ウイルスがクレード2.3の場合)であっても、100%の生存率を認めた。また、仮にRVVの単回接種によるワクチン効果が低くなる可能性がある場合があっても、rDIs/hIL-15との併用接種により、十分なワクチン効果を発揮できることが判明した。
【0055】
以上の結果より、本発明のインフルエンザウイルスHAタンパク質遺伝子発現DIs株由来RVVは、急激な流行を示すインフルエンザウイルスに対して、安全かつ有効なワクチンとなることが分かった。